(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463842
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】電気的な加熱層を備えた透明なパネルならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/86 20060101AFI20190128BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20190128BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
H05B3/86
H05B3/02 B
B60S1/02 B
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-532932(P2017-532932)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公表番号】特表2018-501617(P2018-501617A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015079223
(87)【国際公開番号】WO2016096593
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】14198262.9
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シャル
(72)【発明者】
【氏名】ファレンティン シュルツ
【審査官】
沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−519121(JP,A)
【文献】
実開昭61−091889(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/86
B60S 1/02
H05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なパネル(1)であって、当該透明なパネル(1)は、少なくとも、
・電気的な加熱層(6)と、
・接続手段(10,11,12,13,13’)と、
・少なくとも1つの電気的な線状加熱要素(15,15’)と、
を含んでおり、
前記電気的な加熱層(6)は、少なくとも、パネル表面(III)の一部にわたって延在しており、かつ主要加熱領域(9)と、当該主要加熱領域(9)から電気的に絶縁されている付加加熱領域(14)とに分けられており、
前記接続手段(10,11,12,13,13’)は、電圧源(25)と電気的に接続可能であり、かつ少なくとも第1のバスバー(10)と第2のバスバー(11)とを含んでおり、前記バスバー(10,11)はそれぞれ、前記主要加熱領域(9)において、前記加熱層(6)と直接的に接触して導電接続されており、供給電圧の印加後に、加熱電流(16)が、前記加熱層(6)の前記主要加熱領域(9)によって形成された加熱領域(17)にわたって流れ、
前記少なくとも1つの電気的な線状加熱要素(15,15’)は、少なくとも部分的に、前記加熱層(6)の前記付加加熱領域(14)内に配置されており、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、前記加熱層(6)の前記付加加熱領域(14)と直接的に接触して導電接続されており、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、前記電圧源(25)または別の電圧源と電気的に接続可能であり、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、前記供給電圧の印加後に、前記付加加熱領域(14)が加熱可能であるような抵抗を有しており、
・前記供給電圧を印加した後に、前記線状加熱要素(15,15’)の部分(18a,18b)の間で、加熱電流が、前記加熱層(6)を通って、前記付加加熱領域(14)内を流れることができ、これによって前記付加加熱領域(14)が付加的に加熱可能であるように、前記線状加熱要素(15,15’)が形成されており、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、メアンダ状であり、かつ長方形状ではない、透明なパネル(1)。
【請求項2】
前記線状加熱要素(15,15’)は、正弦曲線状または三角形状に形成されている、請求項1項記載のパネル(1)。
【請求項3】
前記線状加熱要素(15,15’)は、前記加熱領域(17)に対して電気的に並列接続されて、前記接続手段(10,11,12,13,13’)と電気的に接続されている、請求項1または2記載のパネル(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの接続導体(23,23’,23’’,23’’’)が、前記線状加熱要素(15,15’)を、前記接続手段(10,11,12,13,13’)の少なくとも1つと導電接続する、請求項3記載のパネル(1)。
【請求項5】
前記接続導体(23,23’,23’’,23’’’)は、少なくとも部分的に、前記パネル(1)の加熱層のない縁部ストリップ(7)に、かつ/または少なくとも部分的に、前記主要加熱領域(9)と前記付加加熱領域(14)との間の加熱層のない分断領域(19)に配置されている、請求項4記載のパネル(1)。
【請求項6】
前記線状加熱要素(15,15’)の少なくとも1つの端子は、前記バスバー(10,11)の1つと直接的に電気的に接触している、請求項4または5記載のパネル(1)。
【請求項7】
前記接続手段(10,11,12,13,13’)は、前記バスバー(10,11)に接続された接続導体(12,13,13’)を含んでおり、前記線状加熱要素(15,15’)の少なくとも1つの端子は、前記接続導体(12,13,13’)の少なくとも1つと直接的に電気的に接触している、請求項4から6までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項8】
前記線状加熱要素(15,15’)および/または前記接続導体(23,23’,23’’,23’’’)は、加熱ワイヤーとしてまたは加熱線路として、印刷された導電性ペーストから形成されている、請求項4から7までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項9】
前記加熱線路は、6μmから14μmの厚さ、0.2mmから8mmの幅b、1000mmから10000mmの長さLおよび/または0.2Ohm/mから8Ohm/mの抵抗を有している、請求項8記載のパネル(1)。
【請求項10】
前記線状加熱要素(15,15’)は、12から48Vの範囲の電圧供給時に、400から1000W/m2パネル面積の範囲の解氷能力を供給することができるように構成されている、請求項8または9記載のパネル(1)。
【請求項11】
前記線状加熱要素(15,15’)は、0.5Ohm/mから4Ohm/mの抵抗を有している、請求項8から10までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項12】
前記線状加熱要素(15,15’)は台形状に形成されている、請求項8から11までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項13】
前記線状加熱要素(15,15’)の前記台形状の上下両辺の合計は、周期間隔の半分以下である、請求項12記載のパネル(1)。
【請求項14】
前記線状加熱要素(15,15’)は周期的な経路形状を有しており、1周期内で、前記線状加熱要素(15,15’)の複数の部分(18a,18b)同士は平行にではなく、かつ逆平行にではなく配置されている、請求項8から13までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項15】
1周期内で、前記加熱層(6)を通る電流の流れ方向に対して平行にではなく配置されている、前記線状加熱要素(15,15’)の複数の部分(18a,18b)同士は平行にではなく、かつ逆平行にではなく配置されている、請求項14記載のパネル(1)。
【請求項16】
前記線状加熱要素(15,15’)は周期的な経路形状を有しており、1周期内で、折り返し点(27)の前または折り返し領域(29)の前の前記線状加熱要素(15,15’)の前記部分(18a)と、前記折り返し点(27)の後または折り返し領域(29)の後の前記線状加熱要素(15,15’)の前記部分(18b)との間の間隔は、連続的に低減している、請求項8から15までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項17】
熱可塑性接着層(4)によって相互に接続されている2つの個別パネル(2,3)を備えた複合パネルとして構成されており、前記加熱層(6)は、前記個別パネルの少なくとも1つの表面(II,III)上に、かつ/または前記個別パネルの間に配置された担体の1つの表面上に位置している、請求項1から16までのいずれか1項記載のパネル(1)。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の透明なパネル(1)の製造方法であって、
a)電気的な加熱層(6)を、パネル表面(III)の少なくとも1つの部分上に析出し、
b)前記電気的な加熱層(6)を、主要加熱領域(9)と、当該主要加熱領域(9)から電気的に絶縁されている付加加熱領域(14)とに分け、
c)少なくとも1つの第1のバスバー(10)と1つの第2のバスバー(11)とを、前記加熱層(6)上に、前記主要加熱領域(9)において被着し、ここで前記バスバー(10,11)は、前記加熱層(6)と直接的に接触して導電接続され、前記バスバー(10,11)と接続可能な接続導体(12,13,13’)への電圧源(25)からの供給電圧の印加後に、加熱電流(16)が、前記加熱層(6)の前記主要加熱領域(9)によって形成されている加熱領域(17)にわたって流れることができ、
d)少なくとも1つの電気的な線状加熱要素(15,15’)を、少なくとも部分的に前記加熱層(6)の前記付加加熱領域(14)において被着し、
・前記線状加熱要素(15,15’)を、前記加熱層(6)の前記付加加熱領域(14)と直接的に接触して導電接続し、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、前記加熱領域(17)に対して電気的に並列接続されて、前記接続導体(12,13,13’)と電気的に接続可能である、または前記加熱層(6)の前記バスバー(10,11)と前記主要加熱領域(9)において電気的に接続され、
・前記線状加熱要素(15,15’)は、前記供給電圧の印加後に、前記付加加熱領域(14)が加熱可能であるような抵抗を有しており、
・前記供給電圧を印加した後に、前記線状加熱要素(15,15’)の部分(18a,18b)の間で、加熱電流が、前記加熱層(6)の前記付加加熱領域(14)内を流れることができ、これによって前記付加加熱領域(14)が付加的に加熱可能であるように、前記線状加熱要素(15,15’)が形成されており、該線状加熱要素(15,15’)がメアンダ状であり、かつ長方形状ではなく、
e)少なくとも1つの接続導体(23,23’,23’’,23’’’)を、前記パネル表面(III)上に被着し、当該接続導体(23,23’,23’’,23’’’)によって、前記線状加熱要素(15,15’)が前記バスバー(10,11)と接続され、かつ/または前記接続導体(12,13,13’)と接続可能であり、
f)接続導体(12,13,13’)を前記パネル表面(III)上に被着し、前記バスバー(10,11)、前記線状加熱要素(15,15’)および/または前記接続導体(23,23’,23’’,23’’’)と直接的に接触して電気的に接続する、透明なパネル(1)の製造方法。
【請求項19】
前記ステップb)において、前記電気的な加熱層(6)を、主要加熱領域(9)と、付加加熱領域(14)とにレーザーアブレーションによって分ける、請求項18記載の透明なパネル(1)の製造方法。
【請求項20】
前記バスバー(10,11)、前記線状加熱要素(15,15’)および前記接続導体(23,23’,23’’,23’’’)を導電性ペーストのシルクスクリーン印刷によって、前記パネル表面(III)上に被着する、請求項18または19記載の、透明なパネル(1)の製造方法。
【請求項21】
前記ステップc)、d)およびe)を同時に実施する、請求項20記載の、透明なパネル(1)の製造方法。
【請求項22】
請求項1から17までのいずれか1項記載の透明なパネル(1)の、機能的かつ/または装飾的な個別部材、ならびに家具、機器および建造物における組み込み部材、ならびに陸上、空中または水上もしくは水中移動のための移動手段における組み込み部材としての使用。
【請求項23】
請求項1から17までのいずれか1項記載の透明なパネル(1)の、自動車における、ウインドシールド、リヤウインド、サイドウインドおよび/またはルーフウインドとしての使用。
【請求項24】
前記パネル(1)を拭き取るために設けられているウインドワイパーの休止または停止位置の領域に前記パネル(1)の前記付加加熱領域(14)が配置されている、請求項1から17までのいずれか1項記載の透明なパネル(1)の、自動車における、ウインドシールド又はリヤウインドとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル技術の領域にあり、電気的な加熱層を備えた透明なパネルならびにその製造方法に関する。
【0002】
電気的な加熱層を備えた透明なパネルは、それ自体、良く知られており、既に幾度も、特許文献に記載されている。これに関しては、単なる例として、独国特許出願公開第102007008833号明細書(DE 10 2007 008 833 A1)、独国特許出願公開第102008018147号明細書(DE 10 2008 018147 A1)、独国特許出願公開第102008029986号明細書(DE 10 2008 029986 A1)、国際公開第2013/050233号(WO 2013/050233 A1)および国際公開第2014/044410号(WO 2014/044410 A1)を参照されたい。自動車では加熱層を備えた透明なパネルはしばしば、ウインドシールドとして使用される。なぜなら中央の視界は、法的な規準に基づいて、実質的な視覚制限を受けてはいけないからである。加熱層によって生成された熱によって、短時間のうちに、凝縮された湿気、氷および雪を除去することが可能である。
【0003】
加熱電流は通常、少なくとも、対になっているストリップ状もしくはバンド状の電極によって、加熱層内に導入される。これらの電極は、バスバー(集合導体)として、加熱電流をできるだけ均等に加熱層内に導入し、幅広の前面に分散させるべきである。加熱層の電気的なシート抵抗は、昨今、産業的な大量生産に使用されている材料において、比較的高く、面積単位あたり数オームのオーダーにあり得る。それにもかかわらず、実際の使用に十分な加熱能力を得るためには、供給電圧は相応に高くなければならない。しかし、例えば、自動車では通常は、12から24Vの搭載電源網電圧しか使用可能でない。加熱層のシート抵抗は、加熱電流の流路の長さとともに増大するので、極性が反対のバスバー同士の間隔は、できるだけ狭くあるべきである。したがって通常は横長である車両のパネルの場合には、これらのバスバーは、2つの長辺側のパネル縁部に沿って配置されており、加熱電流は、パネル高さの比較的短い経路を介して流れることができる。しかしこのような設計の結果、パネルを拭き取るために設けられているウインドワイパーの休止または停止位置の領域が通常は加熱領域外に位置することになってしまい、このような箇所では、十分な加熱能力はもはや得られず、ウインドワイパーが固く凍りついてしまうことがある。
【0004】
したがって、ウインドワイパーの休止または停止位置の領域に、付加的に、加熱手段を配置する必要がある。独国特許出願公開第10160806号明細書(DE 101 60 806 A1)では、例えば、この休止または停止位置の領域が、さらなるバスバーおよび付加的な外部端子によって接触される、電気的な加熱層の部分によって加熱可能である。
【0005】
国際公開第2012/110381号(WO 2012/110381 A1)では、これとは異なり、パネルが、休止および停止領域において、加熱ワイヤーによって暖められる。この加熱ワイヤーの欠点は、このワイヤーのすぐ近くでしかパネルが十分に加熱されない、ということである。これは、加熱能力および温度分布の均一性を低くする。加熱能力の低い均一性は、結果として、所望のまたは設定されている除霜時間のもとで、より高いエネルギー消費をもたらしてしまう。
【0006】
これに対して、本発明の課題は、電気的な加熱層を備えた透明なパネルを有利に改善することである。この課題およびさらなる課題は、本発明の提案に応じて、独立請求項の特徴を有する透明なパネルによって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項の特徴によって示される。
【0007】
本発明の透明なパネルは、
・電気的な加熱層と、
・接続手段と、
・少なくとも1つの電気的な線状加熱要素とを含んでおり、
電気的な加熱層は、少なくとも、パネル表面IIIの一部にわたって延在しており、かつ主要加熱領域と、主要加熱領域から電気的に絶縁されている付加加熱領域とに分けられており、
接続手段は、電圧源と電気的に接続可能であり、かつ少なくとも第1のバスバーと第2のバスバーとを含んでおり、これらのバスバーはそれぞれ、主要加熱領域において、加熱層と直接的に接触して導電接続されており、供給電圧の印加後に、加熱電流が、加熱層によって形成された加熱領域にわたって流れ、
少なくとも1つの電気的な線状加熱要素は、少なくとも部分的に、有利には少なくとも大部分、特に有利には完全に、加熱層の付加加熱領域内に配置されており、
・線状加熱要素は、加熱層と直接的に接触して導電接続されており、
・線状加熱要素は、電圧源と電気的に接続可能であり、
・線状加熱要素は、供給電圧の印加後に、付加加熱領域が加熱可能であるような抵抗を有しており、
・供給電圧を印加した後に、線状加熱要素の部分の間で、加熱電流が、加熱層を通って、付加加熱領域内を流れることができ、これによって付加加熱領域が付加的に加熱可能であるように、線状加熱要素が形成されている。
【0008】
加熱層は、電気的に加熱可能である、透明な層であり、少なくとも、パネル表面の大部分にわたって延在している。
【0009】
加熱層は、主要加熱領域と、主要加熱領域から電気的に絶縁されている付加加熱領域とに分けられている。
【0010】
主要加熱領域は、特に、パネルの(中央の)視界にわたって延在しており、電気的な接続手段によって電圧源と電気的に接続可能である。接続手段は、電圧源の2つの極との接続のために設けられている外部端子を有している。さらに、接続手段は、少なくとも2つのバスバーを含んでいる。これらのバスバーは、加熱層内に加熱電流を導入するために用いられ、加熱層と電気的に次のように接続されている。すなわち、供給電圧の印加後に、加熱電流が、加熱層によって形成された加熱領域にわたって流れるように接続されている。バスバーは、例えば、ストリップもしくはバンド状の電極(Bus bars)の形態で形成可能であり、これによって、加熱電流が幅広く分配されて加熱層内に導入される。有利には、バスバーはそれぞれ、自身の完全なバンド長さにわたって、加熱層と直接的に接触して導電接続されている。高オームの加熱層と比較して、バスバーは、比較的小さい、もしくは低オームの電気抵抗を有している。
【0011】
本発明のパネルは、さらに、少なくとも1つの付加加熱領域を有している。ここでは、加熱層は、主要加熱領域から電気的に絶縁されている。この付加加熱領域はしたがって、バスバーによって加熱層内に導入された加熱電流によっては、直接的には加熱可能ではない。
【0012】
付加加熱領域には、少なくとも1つの、線状の、電気的に加熱可能な加熱要素(以降では、「線状加熱要素」と称される)が配置されている。この線状加熱要素は、付加加熱領域において加熱層と直接的に接触し、これによって、加熱層と導電接続されている。
【0013】
線状加熱要素は少なくとも部分的に、付加加熱領域に配置されている。本発明のパネルの有利な構成では、線状加熱要素は、少なくとも大部分、加熱層の付加加熱領域内に配置されている。少なくとも大部分とは、線状加熱要素の長さの50%以上、有利には70%以上、特に有利には90%以上を意味している。
【0014】
線状加熱要素は特に、長方形状の、三角形状の、台形状の、正弦状のまたは一般的にメアンダ状の経過において、特に折り返し領域において、例えば、上方および/または下方の領域において、加熱層外で、加熱層のない領域、例えば、加熱層のない縁部領域または加熱層のない分断領域内に配置されている。これによって、加熱能力分布および温度分布の均一性がさらに上昇し、局部的なオーバーヒート、いわゆるホットスポットが低減または回避される。
【0015】
別の有利な実施形態では、線状加熱要素は、実質的に完全に、加熱層の付加加熱領域内に配置されている。これは特に、付加加熱領域において最大の加熱能力が望まれている場合に有利である。
【0016】
線状加熱要素は、線状加熱要素の端子に供給電圧を印加した後に、線状加熱要素が加熱され、これによって付加加熱領域が電気的に加熱可能であるような抵抗を有している。
【0017】
線状加熱要素は、直接的な接触によって、加熱層と導電接続されている。本発明の線状加熱要素は、次のように形成されている。すなわち、供給電圧を印加した後に、線状加熱要素の部分の間で、加熱電流が、加熱層を通って、付加加熱領域内を流れることができるように形成されている。これによって、付加加熱領域が付加的に加熱可能である。これは次のことを意味している。すなわち、線状加熱要素の2つの部分の間の電位差と、線状加熱要素と加熱層との間の電気的な接触とによって、局部的な加熱電流が、これらの部分の間で、加熱層の領域を通って流れ、加熱層がこの箇所で、局部的に付加的に加熱可能である、ということを意味している。
【0018】
線状加熱要素内を流れ、かつ線状加熱要素に沿って流れ、線状加熱要素を加熱する電流成分による線状加熱要素の加熱と、加熱層を通って流れ、加熱層を加熱する別の電流成分による加熱層の加熱との共同作用によって、加熱能力分布の特に高い均一性、ひいては、温度分布の特に高い均一性を、付加加熱領域において得ることができる。さらに、線状のレイアウトおよび線状加熱要素の抵抗の選択によって、加熱能力の格段の上昇と、付加加熱領域の所望の領域における加熱能力の所期の上昇とが得られる。
【0019】
線状加熱要素は、主要加熱領域の加熱層も電気的に接続されている電圧源と接続可能である。ここで特に有利には、線状加熱要素は、加熱領域に対して電気的に並列接続されて、加熱層の電気的な接続手段と、主要加熱領域において、電気的に接続されている。線状加熱要素は、この目的のために、例えば、バスバーまたはバスバーに接続されている接続導体に直接的に電気的に接触することができる。したがって、線状加熱要素に、主要加熱領域の加熱層の接続手段によって、主要加熱領域自体内の加熱層と同じ供給電圧を供給することができる。これは、付加加熱領域に対する別個の外部端子を省くことができるという特別な利点を有している。
【0020】
しかし、線状加熱要素を別個の外部端子、有利には別の電圧源と接続することが有利であり得る。これは例えば、パネル上の接続導体を回避するため、または線状加熱要素がより高いまたはより低い電圧で動作されるべき場合である。
【0021】
主要加熱領域および付加加熱領域の電気的な区分けは、有利には、加熱層のない分断領域によって行われる。この分断領域は有利には、レーザーアブレーション、析出中のマスキング、研磨または他の層剥離方法によって生成される。ここでレーザーアブレーションは、プロセス技術的に特に容易かつ迅速であり、したがって低コストである。さらに、レーザーアブレーションによって、パネルの外見は僅かにしか妨害されない、または全く妨害されない。分断領域の幅dは、0.02mmから5mmの間であり、有利には0.1mmから0.3mmである。分断領域内に接続導体が配置されている場合には、分断領域は有利には、5mmから30mmの幅を有する。
【0022】
本発明のパネルが、車両のウインドシールドとして構成されている場合、付加加熱領域は例えば、パネルを拭き取るために設けられているウインドワイパーの休止または停止位置の領域である。この場合には、本発明のパネルは特に有利には、パネルの下方縁部にある、線状加熱要素への別個のリード線を不要にすることができる。
【0023】
本発明のパネルでは、線状加熱要素は、線状加熱要素とは異なる接続導体によって、加熱層の接続手段と電気的に接続可能である。この措置によって、加熱層の接続手段と線状加熱要素との特に容易、かつ低コストの電気的な接続が可能になる。これは特に、接続導体が少なくとも部分的に、パネルの加熱層のない縁部領域に、または加熱層の主要加熱領域と付加加熱領域との間の加熱層のない分断領域に配置されている場合に、製造技術的な観点において有利であり得る。これによって、電気的に絶縁性の、接続導体の被覆部を省くことができる。接続導体自身が、接続導体が電圧の印加時に加熱され、これによって、例えば、加熱層のない分断領域を加熱することができるような抵抗を有していてよい。
【0024】
特に有利な構成では、本発明のパネルは、熱可塑性接着層によって相互に接続されている2つの個別パネルを備えた複合パネルとして構成されている。この場合に、加熱層は、個別パネルの少なくとも1つの表面上に、かつ/または個別パネルの間に配置された担体の1つの表面上に位置している。2つの個別パネルは、必ずしもガラスから製造されていなくてもよく、これらが、非ガラス材料、例えばプラスチックから製造されていてもよい、ということを理解されたい。
【0025】
本発明のパネルの有利な構成では、少なくとも1つの線状加熱要素は例えば、金属の加熱ワイヤーの形状または加熱バンドの形態で形成されている。これは特に容易であり、低コストの技術的な実現を可能にする。有利には、加熱ワイヤーは、35から150μmの範囲の直径を有しており、0.1から1Ohm/mの範囲の単位メーター当たりの抵抗を有するように構成されている。したがって、特に12から48Vの範囲の供給電圧の場合に、所望の加熱能力を得ることができる。有利には、加熱ワイヤーは、ここで、次のように構成されている。すなわち、これが特に、12から48Vの供給電圧の場合に、400から1000W/m
2パネル面積の範囲の加熱能力を供給することができるように構成されている。加熱ワイヤーが、少なくとも1つの湾曲したワイヤー部分を有している場合には、この湾曲したワイヤー部分が、4mmを超える曲率半径を有しているのは有利であり、したがって敷設の際の実際の操作性が改善され、破壊の危険性が低減される。
【0026】
本発明のパネルの択一的な有利な構成では、少なくとも1つの線状加熱要素は、加熱線路の形態で、印刷された導電性ペーストから形成されている。導電性ペーストは、例えば銀の粒子とガラスフリットとを含んでおり、例えば、シルクスクリーン印刷によってパネル表面上に被着可能である。次に、導電性ペーストが加熱され、焼成され、これによって固定される。有利には、接続導体は、同じように形成される。シルクスクリーン印刷ペーストの比導電率は、有利には5・10
6S/mから100・10
6S/mであり、特に有利には20・10
6S/mから50・10
6S/mである。
【0027】
加熱線路は有利には4μmから20μm、特に有利には6μmから14μmの厚さを有している。加熱線路は有利には
0.2mmから
8mm、特に有利には1mmから2.5mmの幅を有している。加熱線路は有利には1000mmから10000mm、特に有利には2000mmから70000mmの長さを有している。加熱線路は有利には、0.2Ohm/mから8Ohm/m、特に有利には、0.5Ohm/mから4Ohm/mの抵抗を有している。したがって、特に、12から48Vの範囲の供給電圧の場合に、所望の加熱能力を得ることができる。有利には、加熱線路は、ここで次のように構成されている。すなわち、これが特に、12から48Vの範囲の供給電圧において、400から1000W/m
2パネル面積の範囲の所望の加熱能力を供給することができるように構成されている。
【0028】
印刷された加熱線路から成る本発明の線状加熱要素は、次のような特別な利点を有している。すなわち、これが、印刷されたバスバーによって、場合によっては、印刷された接続導体によって、1つの製造ステップにおいて、例えばシルクスクリーン印刷方法を介して被着可能であるという特別な利点を有している。これは特に低コストであり、製造技術的に特に容易に実現される。
【0029】
本発明の線状加熱要素は有利には、メアンダ状の、正弦状の、三角形状の、台形状のまたは長方形状の経過を有して形成されている。この経過の周期間隔および振幅によって、線状加熱要素の隣接する部分の間の電位差が調整され、種々の加熱能力分布が得られる。加熱線路または加熱ワイヤーの種々の経過形状、周期間隔、振幅、厚さ、幅および比抵抗を、線状加熱要素の種々の部分内で変えることができ、これによって、加熱能力分布および温度分布における最適な均一性が得られる、ということを理解されたい。これは、加熱層の付加加熱領域が屈曲してまたは曲がって経過し、一定の幅を有していない場合、または領域が線状加熱要素によって覆われてはいけない、または線状加熱要素と交差してはいけない場合に特に有利である。これは例えば、パネルの下方の取り付け位置に、車両の識別番号が配置されるべき場合である。
【0030】
有利な本発明の線状加熱要素は、長方形状の経過を有していない。長方形状の経過の場合には、加熱層を通る電流の流れ方向に対して平行に配置されている、線状加熱要素の部分の領域において電位降下が生じてしまい、これは、加熱層を通る加熱電流の局部的な低下、ひいてはこの平行な部分のすぐ近くでの加熱電流密度の局部的な低下を引き起こす。この局部的な低下は、同様に、加熱能力分布の不所望な非均一性を生じさせる。
【0031】
本発明の別の有利な構成では、線状加熱要素は周期的な経過を有しており、ここでは周期内で、線状加熱要素の複数の部分同士は平行にではなく、かつ逆平行にではなく配置されている。特に有利には、周期内で、加熱層を通る電流の流れ方向に対して平行にではなく配置されている全ての部分同士は平行にではなく、かつ逆平行にではなく配置されている。これによって、加熱層を通って流れる電流による、加熱能力分布の特に有利な均一性が加熱層内で得られる。
【0032】
本発明の別の有利な構成では、線状加熱要素は台形状に形成されている。特に有利には、台形状の経過の底面の総計は、台形状の経過の周期間隔の半分以下である。この周期間隔は経過の長さであり、周期的な構造の1つがこれにわたって延在する。これによって、加熱層を通って流れる電流による、加熱能力分布の特に有利な均一性が加熱層内で得られる。
【0033】
本発明の別の有利な構成では、線状加熱要素は周期的な経過を有しており、ここで、折り返し点(または折り返し領域)、すなわち振幅極大値または振幅極小値の前の線状加熱要素の部分間と、折り返し点(または折り返し領域)の後の線状加熱要素の部分との間の間隔は、経過方向において連続的に低減している。折り返し点(または折り返し領域)の前の線状加熱要素の部分はここで、直接的に、折り返し点の後の部分に移行するか、または、折り返し領域内の別の部分(例えば、加熱層を通る電流方向に対して平行な部分、例えば、台形状の経過の場合の底面)が、これら2つの部分の間に存在する。線状加熱要素の導電性によって、折り返し点(または折り返し領域)の領域において、線状加熱要素の相応する部分の間で電圧降下が生じる。しかし電流の経路は、部分間の間隔が低減することによって短くなるので、この電圧降下は補償され、折り返し点からより離れている領域と比較して、ほぼ、同じ加熱能力密度が得られる。これは、加熱層の加熱能力分布の高い均一性を得るために特に有利である。本発明はさらに、透明なパネルの製造方法に関する。この方法では少なくとも、
a)電気的な加熱層が、パネル表面(III)の少なくとも1つの部分上に析出される、
b)電気的な加熱層が、主要加熱領域と、主要加熱領域から電気的に絶縁されている付加加熱領域とに、有利にはレーザーアブレーションによって分けられる、
c)少なくとも1つの第1のバスバーと1つの第2のバスバーとが、加熱層上に、主要加熱領域において被着され、ここでこれらのバスバーは、加熱層と直接的に接触して導電接続され、したがって、バスバーと接続可能な接続導体での電圧源からの供給電圧の印加後に、加熱電流が、加熱層によって形成されている加熱領域にわたって流れる、
d)少なくとも1つの電気的な線状加熱要素が、加熱層上に、付加加熱領域において被着され、ここで
・線状加熱要素は、加熱層と直接的に接触して導電接続される、
・線状加熱要素は、加熱領域に対して電気的に並列接続されて、接続導体と電気的に接続可能である、または加熱層のバスバーと主要加熱領域において電気的に接続される、
・線状加熱要素は、供給電圧の印加後に、付加加熱領域が加熱可能であるような抵抗を有している、
・供給電圧を印加した後に、線状加熱要素の部分の間で、加熱電流が、加熱層を通って、付加加熱領域内を流れることができ、これによって付加加熱領域が付加的に加熱可能であるように、線状加熱要素が形成される、
e)接続導体がパネル表面(III)上に被着され、この接続導体によって、線状加熱要素がバスバーと接続され、または接続導体と接続可能である、
f)接続導体がパネル表面(III)上に被着され、バスバー、線状加熱要素および/または接続導体と直接的に接触して電気的に接続される。
【0034】
本発明の方法の有利な実施形態では、バスバー、線状加熱要素および接続導体はシルクスクリーン印刷によってパネル表面(III)上に被着される。ここで、特に有利には、ステップc)、d)およびe)は同時に、1つのステップにおいて実施される。これは特に、低コストであり、製造技術的に特に容易に、実現される。
【0035】
さらに、本発明は、機能的かつ/または装飾的な個別部材、ならびに家具、機器および建造物における組み込み部材、ならびに陸上、空中または水上もしくは水中移動のための移動手段、特に自動車における、例えばウインドシールド、リヤウインド、サイドウインドおよび/またはルーフウインドとしての、上述した透明なパネルの使用に関する。
【0036】
ウインドシールドまたはリヤウインドとしての透明なパネルの特に有利な本発明の使用では、付加加熱領域は、パネルの拭き取りのために設けられたウインドワイパーの休止または停止位置の領域に配置されている。これは、この休止または停止位置の領域を特に迅速かつ効率的に解氷することができるという特別な利点を有している。
【0037】
種々の構成が、個別でもまたは任意の組み合わせでも実現可能である、ということを理解されたい。特に、上述した特徴および後述する特徴は、挙げられた組み合わせにおいてだけではなく、別の組み合わせでも、または単独でも、発明の枠組みを逸脱することなく使用可能である。
【0038】
次に本発明を、実施例に基づいて詳細に説明する。ここでは、添付図面を参照されたい。簡易化された、縮尺通りでない図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1B】
図1Aに示された本発明のパネルの切断線A−A’に沿った横断面図
【
図1D】本発明の線状加熱要素の択一的な実施例の拡大図
【
図1E】本発明の線状加熱要素の択一的な実施例の拡大図
【
図2】本発明のパネルの択一的な実施例の概略的な平面図
【
図3A】本発明のパネルの択一的な実施例の概略的な平面図
【
図3B】
図3Aに示された本発明のパネルの切断線A−A’に沿った横断面図
【
図3C】
図3Aに示された本発明のパネルの択一的な実施例の部分Cの拡大図
【
図3D】
図3Aに示された本発明のパネルの択一的な実施例の切断線A−A’に沿った横断面図
【
図5A】線状加熱要素の長方形の経過を有する付加加熱領域の加熱層における加熱能力分布のシミュレーションの等値線図
【
図5B】
図5Aに示されたシミュレーションのグレースケールチャート
【
図6A】線状加熱要素の三角形状の経過を有する付加加熱領域の加熱層における加熱能力分布のシミュレーションの等値線図
【
図6B】
図6Aに示されたシミュレーションのグレースケールチャート
【0040】
図1Aは、全体として参照番号1が付けられた車両ウインドシールドの例に即して本発明のパネルを示している。ウインドシールド1は、複合パネルとして形成されている。
【0041】
図1Bは、
図1Aに示された切断線A−A’に沿った横断面図を示している。ウインドシールド1は、外側パネル2と、堅い内側パネル3とを有している。これらは2つとも、個別パネルとして形成されており、熱可塑性の接着層4、ここでは例えばポリビニルブチラール(PVB)フィルム、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)フィルムまたはポリウレタン(PU)フィルムを介して相互に接続されている。当業者には、このような複合パネルの基本的な構造は、例えば、自動車の産業的な大量生産から良く知られている。したがって、ここでは、詳細にこれに関して言及する必要はない。2つの個別パネル2,3は、ほぼ同じ大きさであり、ほぼ台形を描く輪郭を有しており、例えばガラスから製造されている。ここでこれらが同様に、非ガラス材料、例えば、プラスチックから製造されていてもよい。ウインドシールドとは別の用途の場合には、2つの個別パネル2,3を柔軟な材料から製造することも可能である。
【0042】
ウインドシールド1の輪郭は、パネル縁部5によって規定されている。これは、台形の形状に相応して、2つの長辺側のパネル縁部5a,5a’(組み立てた状態において上方と下方)と、2つの短辺側のパネル縁部5b,5b’(組み立てた状態において左側と右側)とから成る。内側パネル3の、接着層4によって接続される面(「面III」)には、透明な、ウインドシールド1の電気的な加熱に用いられる加熱層6が析出されている。加熱層6は、実質的に全面で、内側パネル3上に被着されている。ここで、全面で包囲している、内側パネル3の縁部ストリップ7は積層されておらず、したがって、加熱層縁部8は、パネル縁部5に対して、幅rぶんだけ内側へ後退している。幅rは、例えば10mmである。この措置は、外部に対する加熱層6の電気的な絶縁に用いられる。さらに、加熱層6は、パネル縁部5から拡散する湿気から保護される。この湿気は、このような措置がない場合には、加熱層6の腐食を招き得る。
【0043】
それ自体公知の様式で、加熱層6は層列を有しており、この層列は、少なくとも1つの導電性の金属製の部分層、有利には銀と、場合によっては別の部分層、例えば、反射防止およびブロッカー層とを含んでいる。有利には、この層列は、高い熱負荷が可能であり、したがってこれは、典型的に600℃を超える、ガラスパネルを曲げるのに必要な高い温度に、損傷なく、耐える。しかしここで、それほど高い熱負荷が可能でない層列を設けることもできる。直接的に内側パネル3上に被着する代わりに、例えば、これを、プラスチックフィルム上に被着することもでき、これは次に、外側パネル2および内側パネル3と接着される。加熱層6は例えば、スパッタリング(マグネトロンスパッタリング)によって被着される。加熱層6のシート抵抗は、例えば、0.1から6Ohm/面積単位(Ω毎スクウェア)の範囲にある。
【0044】
加熱層6は、第1のバスバー10および第2のバスバー11と直接的に接触して、導電接続されている。2つのバスバー10,11はそれぞれ、バンド状もしくはストリップ状に形成されており、接続電極として、加熱層6内に供給電流を幅広く導入するために用いられる。このために、バスバー10,11は例えば、自身の完全なバンド長さにわたって、加熱層6上に配置されている。ここで第1のバスバー10は、上方の長辺側のパネル縁部5aに沿って延在しており、第2のバスバー11は、ほぼ、下方の長辺側のパネル縁部5a’に沿って延在している。2つのバスバー10,11は、例えば、同じ材料から製造されており、例えば、ペーストを加熱層6上に、例えばシルクスクリーン印刷方法において印刷することによって製造される。しかし択一的に、バスバー10,11を、例えば銅またはアルミニウムから成る、薄い金属フィルムストリップから製造することも可能である。これらは例えば、接着層4上に固定され、外側パネル2と内側パネル3とを接続する際に、加熱層6上に配置される。ここで、個別パネルの接続時に、熱と圧力の作用によって、電気的な接触が保証される。
【0045】
第1のバスバー10には、第1の接続導体12が電気的に接続されており、これはここでは例えば、フラットリボン導体(例えば薄い金属フィルム)として形成されている。接続導体12は例えば、第1の外部端子20を有している。これは、供給電圧を提供する電圧源25の極(例えば負極)との接続のために設けられている。第1の接続導体12は、上方の長辺側のパネル縁部5aのほぼ中央に配置されている。第2のバスバー11には、第2の接続導体13が電気的に接続されている。これはここでも、例えば、フラットリボン導体(例えば薄い金属フィルム)として形成されており、第2の外部端子21を有している。これは、電圧源25の別の極(例えば正極)との接続のために設けられている。接続導体12,13には例えば、有利にはポリイミドから成るプラスチック絶縁スリーブが設けられており、これによって電気的に絶縁されており、パネル1における別の導電性の構造体および/または電圧を案内する構造体との短絡が回避される。
【0046】
2つのバスバー10,11によって、加熱領域17が包囲される。ここでは、供給電圧の印加時に加熱電流16が流れる。加熱層6との比較において無視することができる抵抗によって、バスバー10,11はここでは僅かにしか加熱されず、加熱能力に重要な影響をもたらさない。パネル領域の所期の加熱がバスバー10,11によって可能であるように、バスバー10,11の抵抗が選択されてもよい、ということを理解されたい。
【0047】
冒頭で説明したように、加熱層6の接続抵抗は、加熱電流16の流路の長さとともに増大する。したがって、2つのバスバー10,11相互の間隔ができるだけ狭いことは、満足させる加熱能力の観点において有利である。このような理由から、もはや視界に属していないが、パネルの拭き取りのために設けられたウインドワイパーの休止または停止位置の領域に相当する下方のパネル領域を付加加熱領域14として形成することが提案される。この付加加熱領域は、主要加熱領域9から電気的に絶縁されている。それにもかかわらず、付加加熱領域14には、加熱層6が存在する。しかしこれは、2つのバスバー10,11の間に存在しているのではなく、加熱電流16は通ることができず、したがってバスバー10,11によって加熱することはできない。
【0048】
電気的な短絡を阻止するために、加熱層6の主要加熱領域9は、付加加熱領域14から電気的に、特に直流電気的に絶縁されており、例えば、例えば100μmの幅dを有する、加熱層のない分断領域19によって絶縁されている。分断領域19では、加熱層6は例えば、レーザーアブレーションによって除去されている。択一的に、加熱層6が機械的に除去されてもよく、または既に積層時に、シャドーイングによって除外されたままでもよい。
【0049】
付加加熱領域14を加熱するために、これは、電気的に加熱可能な線状加熱要素15を有している。この線状加熱要素15は例えば、正弦曲線を描く、線状の導電性構造体、以降では加熱線路と称する、によって形成されている。加熱線路は有利には、30から60、例えば50の反復周期性を有していて、20mmから70mm、例えば60mmの振幅を有しており、下方のパネル縁部5a’に沿って、パネル1の長辺側の幅の全体にわたって延在している。加熱線路は例えば、印刷された導電性ペーストから成り、有利には、バスバー10,11と同時に、シルクスクリーン印刷方法において、内側パネル3上に被着される。加熱線路はここで直接的に、加熱層6上に被着され、これによって、加熱層6と、自身の完全な長さにおいて、直接的に接触し、これと導電接続される。加熱線路の幅bは、有利には0.5mmから4mmの間であり、ここでは例えば、1mmである。加熱線路の厚さは例えば10μmであり、比抵抗は、2.3・10
−8Ohm・m(線の長さ)である。線状加熱要素15が別の導電性の構造体、例えば、タングステンワイヤー等の加熱ワイヤーによって形成されてもよい、ということを理解されたい。
【0050】
線状加熱要素15はこの例では、端子によって、直接的に、第2のバスバー11と、その外側の終端部で、電気的な線路接続部26’を介して接続されている。極めて簡単な場合には、印刷された加熱線路はここで、連続的に、印刷されたバスバー11に移行する。線状加熱要素15の別の端子は、この例では、接続導体23を介して、第1のバスバー10と接続されている。接続導体23は例えば、印刷された導体であり、これは、パネル縁部5bに沿った、加熱層のない縁部ストリップ7に沿って延在している。接続導体23は、付加加熱領域14における加熱線路と同じ寸法を有していてよく、パネル1を、縁部領域において、供給電圧の印加時に加熱することができる。通常、接続導体23は、低オームに構成されており、したがってここでは重大な電圧降下は生じず、加熱は生じない。上述した接続によって、線状加熱要素15は、加熱領域17に対する電気的な並列接続において、加熱層6の接続手段10,11,12,13と電気的に接続されており、これによって、付加加熱領域14における線状加熱要素15に対するさらなる接続が不要になる。
【0051】
図1Cは、
図1Aに示されている本発明のパネル1の実施例の付加加熱領域14の拡大された部分Bを示している。正弦状に延在する加熱線路は、それぞれ、加熱線路の直接的に隣接する2つの部分18aと18bとに分けられる。
【0052】
供給電圧の印加時に、加熱電流16は、バスバー10,11の間で、加熱領域17を通って流れる。加熱領域17のバスバー10,11に対する線状加熱要素15の電気的な並列接続によって、同様に、電流が、線状加熱要素15を流れる。線状加熱要素15は、付加加熱領域14において、加熱層6と直接的に電気接触しているので、電流の流れが分かれる。電流の一部I
Zは、線状加熱要素15自体を通る。すなわち、ここでは、印刷された導電性の加熱線路に沿って、例えば部分18aにおいて流れる。電位差によって、付加的に電流I
H1−3が、加熱層6の領域を流れる。これはそれぞれ、線状加熱要素15の隣接する2つの部分18a,18bの間に存在する。電流密度はここで、部分18aと18bの間の電位差に依存し、加熱線路の形状、加熱線路の比抵抗および加熱層6の比抵抗によって特定され、簡単なシミュレーションにおいて最適化される。2つの電流成分は、加熱電流としてつながり、これによって、各領域において、パネル1が加熱される。2つの電流成分I
Z、I
H1−3の組み合わせによって、付加加熱領域14において、例えば、付加的な加熱層のない加熱線路による場合よりも、加熱能力分布のより高い均一性と、ここから結果として生じる温度分布のより高い均一性とが得られる。これは当業者にとって予期せぬものであり、驚きであった。
【0053】
加熱能力分布のより高い均一性および温度分布のより高い均一性は、ここでは、付加加熱領域14が、この例で示されているように、ウインドワイパーの休止および停止位置の領域に配置されている場合に特に有利であり、これらを迅速かつ確実に解氷することができる。
【0054】
図1Dは、本発明の線状加熱要素15の択一的な実施例の拡大図を示している。加熱線路はここでは、三角形状を有している。ここでも、電流の流れが、加熱線路に沿った成分I
Zと加熱層6を通る成分I
H1−3とに分けられている。これは、加熱層6の付加加熱領域14における加熱能力の分布の均一性をもたらす。
【0055】
図1Eは、本発明の線状加熱要素15の別の択一的な実施例の拡大図を示している。加熱線路はここでは、長方形状を有している。ここでも、電流の流れが、加熱線路に沿った成分I
Zと加熱層6を通る成分I
H1−3とに分けられている。これは、加熱層6上に配置されていない線状加熱要素15と比べて、加熱層6の付加加熱領域14における加熱能力分布の均一化をもたらす。それにもかかわらず、本発明と相応に加熱層6上に配置されている、長方形状に延在する線状加熱要素15は、非長方形状に延在する線状加熱要素15と比べて、低い均一性を示す。
【0056】
加熱線路の周期性、幅bおよび厚さおよび延在形状は、パネル1にわたって変化してよく、このようにして所期のように、特定の領域がより強く加熱可能である、ということを理解されたい。
【0057】
加熱線路は、有利には、強制的にではないが、金属製の材料、特に銀およびガラスフリットを含んでいる。加熱線路は例えば、0.2Ohm/mから8Ohm/mの範囲の抵抗を有している。これは、12から48Vの自動車の通常の搭載電源網電圧では、実際の使用に適切な加熱能力を有している。有利には、400から1000W/m
2パネル面積の範囲の加熱能力が、付加加熱領域14において供給可能である。
【0058】
加熱層6の主要加熱領域9および付加加熱領域14は、別の、加熱層のない領域を、例えば、1つまたは複数の通信窓を形成するために有し得る。択一的に、線状加熱要素15が、付加加熱領域14において、これが、印刷された加熱線路を有していない1つまたは複数の部分を有するように形成されていてもよい。例えばこれによって、妨害されずに、パネル1の下方の車両識別番号が見えることが保証される。
【0059】
図2は、本発明のパネル1の択一的な実施例の概略的な平面図を示している。不必要な繰り返しを避けるために、
図1に示された実施例との違いだけを説明し、その他は、
図1に関する記載を参照されたい。これに相応して、ウインドシールド1は、既に
図1Aに示されているように、加熱領域17を有している。
【0060】
付加加熱領域14には、2つの線状加熱要素15,15’が配置されている。2つの線状加熱要素15,15’は、その寸法が、
図1Aのそれに相当する加熱線路から成る。しかし、2つの線状加熱要素15,15’は、ほぼパネル中央において、下方の第2のバスバー11の第2の接続導体13と、電気的な線路接続部26’において導電接続されている。接続導体13はここでは例えば、絶縁されていないフラットリボン導体(例えば薄い金属フィルム)として形成されていてよい。線状加熱要素15,15’の各外側の端子は、それぞれ、加熱層のない縁部ストリップ7において、パネル縁部5bおよび5b’に対して平行に延在している2つの接続導体23,23’を介して、パネル1の上方のパネル縁部5aにある第1のバスバー10の各終端部と導電接続されている。このようにして、供給電圧は、2つの線状加熱要素15,15’に供給される。これらはそれぞれ、付加加熱領域14の半分しか加熱しない。これによって、
図1Aの場合よりも、格段に高い加熱能力が得られる。
【0061】
図3Aは、本発明のパネル1の別の択一的な実施例の概略的な平面図を示している。
【0062】
図3Bは、
図3Aに示された本発明のパネルの切断線A−A’に沿った横断面図を示している。不必要な繰り返しを避けるために、
図1Aおよび1Bに示された実施例との違いだけを説明し、その他は、
図1Aおよび1Bに関する記載を参照されたい。
【0063】
この実施例では、第2のバスバー11に2つの第2の接続導体13,13’が電気的に接続されている。これらはここでも、例えば、絶縁されているフラットリボン導体(例えば薄い金属フィルム)として形成されており、それぞれ、2つの第2の外部端子21,21’を有している。これらは、電圧源25の別の極(例えば正極)との接続のために設けられている。
【0064】
付加加熱領域14には、
図2に示されているように、2つの線状加熱要素15,15’が配置されている。これらは、自身の外側の端子で、接続導体23,23’を介して、第1のバスバー10と接続されている。パネル中央に配置されている、線状加熱要素15,15’の2つの端子は、ここでは、別の接続導体23’’,23’’’を介して、第2のバスバー11の外側の終端部と、電気的な線路接続部26’’および26’’’を介して接続されている。さらに、3mmの幅dを有する分断領域19が形成されている。接続導体23’’および23’’’は、この分断領域19内に配置されており、例えば、シルクスクリーン印刷によって、直接的に、内側パネル3の面III上に印刷されている。
【0065】
分断領域19内の接続導体23’’,23’’’は、次のように寸法決めされている。すなわち、接続導体23’’,23’’’が、パネル1の外側の端子20,21,21’での供給電圧の印加によって加熱可能であるように、寸法決めされている。これは、これによって、分断領域19が所期のように加熱され、解氷可能であるという特別な利点を有している。
【0066】
図3Cは、
図3Aの拡大された部分Cにおいて、択一的な本発明の実施例を示している。
図3Aとは異なり、線状加熱要素15はここでは、台形状の経路を有している。ここでも、電流の流れが、加熱線路に沿った成分I
Zと加熱層6を通る成分I
H1−3とに分けられる。線状加熱要素15は、ここでは、部分的に、付加加熱領域14の加熱層6外に位置する。両辺、すなわち、台形状の平行に延在する辺は、ここでは、付加加熱領域14外に配置されている。すなわち、上方の上辺は、付加加熱領域14の上方に、加熱層のない分断領域19内に配置されている。下方の底辺は、付加加熱領域14の下方に、加熱層のない縁部領域7内に配置されている。このような措置によって、局部的な温度上昇(いわゆるホットスポット)が、ここでは台形状の経路の上方および下方の領域において低減される。これは、加熱能力分布のさらなる改善につながる。このような構成は、線状加熱要素15,15’の別の経路、例えば長方形状、メアンダ状、三角形状または正弦曲線状の経路に対しても、加熱能力分布および温度分布の均一性の改善をもたらす、ということを理解されたい。
【0067】
図3Dは、択一的な、本発明の実施例を示している。
図3Bの実施例とは異なり、ここでは分断領域19が、2つの分断領域19.1および19.2の形態で形成されている。これらの分断領域はそれぞれ、0.25mmの幅d
1,2しか有していない。分断領域19.1および19.2は、次のように形成されている。すなわち、これらが、取り囲んでいる加熱層6から電気的に絶縁されている、加熱層6の領域を形成するように、形成されている。接続導体23’’,23’’’は、この場合には、電気的に絶縁された領域上で、分断領域19.1,19.2の間に配置されている。
【0068】
図4は、本発明の透明なパネル1を製造する、例示的な本発明の方法の概略的な流れを示している。
【0069】
以降では、ウインドシールド1の例示的な製造方法が概略的に説明される。
【0070】
まずは、外側パネル2と内側パネル3が、所望の台形状の輪郭で、ガラス未加工品から切り出される。次に、内側パネル3に、加熱層6がスパッタリングによって積層される。この際に縁部ストリップ7は、マスクの使用によって積層されない。択一的に、はじめに未加工品が積層され、次いで、内側パネル3が切り出されてもよい。このようにして処理された内側パネル3は、縁部ストリップ7を形成するために、層が剥がされる。これは、産業的な大量生産において、例えば、機械的に除去する砥石車またはレーザーアブレーションによって行われ得る。
【0071】
これに続いて、またはこれと同時に、加熱層6が、主要加熱領域9と付加加熱領域14とに電気的に絶縁して分けられる。これは例えば、1つの分断領域19または複数の分断領域19.1,19.2の層剥離によって行われる。分断領域19.1,19.2は、有利には、レーザーアブレーションによって層剥離される。これは、確実な電気的な絶縁が得られ、同時に分断領域19,19.1,19.2が外観上、僅かにしか目立たない、という特別な利点を有している。
【0072】
次に、2つのバスバー10,11、線状加熱要素15,15’ならびに場合によって存在する接続導体23,23’,23’’,23’’’が例えばシルクスクリーン印刷方法において、内側パネル3上に印刷される。印刷ペーストとして、例えば、銀の印刷ペーストが使用される。次に、印刷ペーストが事前に焼成され(voreingebrannt)、これに続いて、高い温度のもとでパネル2,3が曲げ加工される。第1および第2の接続導体12,13,13’とバスバー10,11の電気的な接続は、例えば、はんだ付けまたは導電性の接着剤による固定によって、例えば、超音波溶接方法において行われる。次に、外側パネル2と内側パネル3との合体および接続が、接着層4を用いて行われる。
【0073】
本発明は、電気的な加熱層6を備えた透明なパネル1を提供する。ここでは、パネル1の付加加熱領域14に、少なくとも1つの線状加熱要素15,15’が配置されている。これは、加熱層6の電気的な接続手段10,11,12,13,13’に接続されている。線状加熱要素15,15’に対する別個の外部端子を、有利には省くことができる。加熱層6と電気的に接触している線状加熱要素15,15’の本発明の構成によって、加熱能力分布および温度分布の高い均一性が、電気的な加熱時に得られる。これは、当業者にとって、予期せぬものであり、驚きであった。
【0074】
図5Aおよび5Bは、線状加熱要素15の長方形状の経路を有する付加加熱領域14の加熱層6における加熱能力分布のシミュレーションを示している。
図5Aはここで、等値線図を示している。これは、加熱能力分布の同じ値を有する線の図である。
図5Bは、加熱能力分布のグレースケールチャートを示している。それぞれ、加熱能力分布が、単位W/m
2における加熱能力密度として示されている。
【0075】
図6Aおよび6Bは、線状加熱要素15の三角形状の経路を有する付加加熱領域14の加熱層6における加熱能力分布のシミュレーションを示している。
図6Aは、ここで、等値線図を示している。これは、加熱能力分布の同じ値を有する線図である。
図6Bは、加熱能力分布のグレースケールチャートを示している。それぞれ、加熱能力分布が、単位W/m
2における加熱能力密度として示されている。
【0076】
図5Aおよび5Bと、
図6Aおよび6Bとは、線状加熱要素15の経路の形状によって異なっている。
【0077】
シミュレーションに対してはそれぞれ、線状加熱要素15の2つの終端部での、0.9Ohm/sq.のシート抵抗と14Vの供給電圧とを有する加熱層6の長方形のストリップがベースとなる。線状経路の振幅はそれぞれ、ピーク間で80mmであり、周期間隔は80mmである。周期的な変化は、それぞれ9回、繰り返される。
【0078】
図5Aは、
図1Eに部分的に示されている、線状加熱要素15の長方形状の経路の等値線図を示しており、
図5Bは、そのグレースケールチャートを示している。
図5Aおよび5Bにおいて、部分18aにおける線状加熱要素15は、部分18bにおける線状加熱要素15に対して平行に延在している。すなわち、折り返し領域29の前の部分18aと、折り返し領域29の後の部分18bとの間の間隔は一定である。線状加熱要素15に沿った電流I
Z1は、部分18aにおいて、部分18bにおける線状加熱要素15を逆平行に流れる(すなわち、流れ方向が逆である)。同時に、電流I
Z1は、線状加熱要素15に沿って、部分18aおよび18bにおいて、全体の流れ方向に対して直交して、付加加熱領域14を通り、電流の流れI
H1,I
H2およびI
H3に対して直交して、加熱層6を通る。
【0079】
線状加熱要素15の別の部分28が線状加熱要素の部分18aおよび18bと直接的に接続している折り返し領域29では、電流I
Z2は、線状加熱要素15のこの別の部分28を通って流れる。電流の流れI
Z2によって、部分18aおよび18bにおける、線状加熱要素15の、部分28に隣接する領域間の電位差が低減する。この結果、加熱層6を通る電流の流れI
H3は、この隣接する領域において、より離れた領域における加熱層6を通る電流の流れI
H1およびI
H2よりも低くなる。部分18aおよび18bにおける線状加熱要素15の逆平行の配置によって、部分18aと部分18bとの間の相互の間隔は等距離になる。加熱層6を通る電流の流れI
H3がより少なくなることによって、部分28に隣接する領域における加熱能力密度が格段に低減し、離れた領域における加熱能力密度が格段に上昇する。
図5Aおよび5Bにおいて、加熱能力密度は、部分28に隣接する領域において150W/m
2になり、より離れた領域においては、950W/m
2までになる。ここでは950W/m
2である高い加熱能力密度は、加熱層6の経年変化および劣化を加速させ、不所望なものである。さらに、高い非均一性が、加熱層6の加熱能力分布において生じてしまう。これも、不所望なものである。
【0080】
図6Aは、
図1Dに部分的に示されている、線状加熱要素15の三角形状の経過の等値線図を示しており、
図6Bは、そのグレースケールチャートを示している。
図6Aおよび6Bにおいて、線状加熱要素15の部分18aと18bとは、折り返し点27において直接的に相互に接している。三角形状の経路に基づいて、部分18aの線状加熱要素15は、部分18bの線状加熱要素15に対して、平行にも逆平行にも配置されていない。部分18aと部分18bとの間の間隔は、延在方向において、連続的に低減している。すなわち、部分18aにおける線状加熱要素15に沿った電流I
Zは、部分18bにおける線状加熱要素15を通る電流I
Zに対して、平行にも逆平行にも延在していない。線状加熱要素15の部分18aと部分18bとが相互に接している折り返し点27、すなわち、三角形状の経過の極大振幅または極小振幅の点で、相応する部分18aと18bとにおける線状加熱要素15間の電位差が低減する。なぜなら、部分18aと18bとは折り返し点27で、相互に導電接続されているからである。
【0081】
同時に、部分18aと18bとにおける線状加熱要素15間の間隔は、三角形状の経過が理由で低減する。すなわち、部分18bにおける線状加熱要素15の箇所と、部分18aにおける線状加熱要素15の相応する箇所との間の間隔は、部分18aと部分18bとの間の折り返し点27にある接続箇所に近づくと、電位差が低減する程度にほぼ比例して、低減する。この結果、加熱層6を通る電流の流れはほぼ一定に保たれる。すなわち、I
H3はI
H2とほぼ等しく、かつI
H1とほぼ等しい。加熱層6のシート抵抗が一定の場合には、この一定の電流I
H1,2,3は、一定の加熱能力密度をもたらす。
【0082】
図6Aおよび6Bでは、最大の加熱能力密度は400W/m
2であり、最小の加熱能力密度は350W/m
2である。すなわち、加熱層6における加熱能力密度は極めて均一であり、加熱層6は最適な動作領域にある。これは、加熱層6のオーバーヒート、および経年変化および劣化の加速を回避するために特に有利である。これは、発明者にとって、予期せぬものであり、驚きであった。同時に、本発明の線状加熱要素15のこのような配置によって、付加加熱領域14の加熱能力を上昇させることができた。
【符号の説明】
【0083】
1 パネル、ウインドシールド、 2 個別パネル、外側パネル、 3 個別パネル、内側パネル、 4 接着層、 5 パネル縁部、 5a,5a’ 長辺側のパネル縁部、 5b,5b’ 短辺側のパネル縁部、 6 加熱層、 7 縁部ストリップ、 8 加熱層縁部、 9 主要加熱領域、 10 第1のバスバー、 11 第2のバスバー、 12 第1の接続導体、 13,13’ 第2の接続導体、 14 付加加熱領域、 15,15’ 線状加熱要素、 16 加熱電流、 17 加熱領域、 18a,18b 線状加熱要素15の部分、 19,19.1,19.2 分断領域、 20 第1の外部端子、 21,21’ 第2の外部端子、 23,23’ 接続導体、 24 リード線、 25 電圧源、 26,26’,26’’,26’’’’ 電気的な線路接続部、 27 折り返し点、 28 線状加熱要素15の別の部分、 29 折り返し領域、 A−A’ 横切断線、 B,C 部分、 b 線状加熱要素15,15’の幅、 d 分断領域19の幅、 g 付加加熱領域14の幅、 I
H1,I
H2,I
H3 付加加熱領域14において加熱層6を通る電流、 I
Z,I
Z1,I
Z2 線状加熱要素15,15’を通る電流、 r 縁部ストリップ7の幅、 II 外側パネル2のパネル表面、 III 内側パネル3のパネル表面