(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態であるプローバ装置の構成図である。
プローバ装置100は、Xステージ10と、Yステージ20と、θステージ40と、Zステージ30と、ステージコントローラ45と、柱状部材55と、チャック50と、撮像素子としてのCCDカメラ60と、ホース70と、ケーブル75と、チャンバ85と、閉口部材86と、本体筐体80と、制御装置90と、窒素ボンベ95とを備えて構成される。
【0012】
Xステージ10は、Yステージ20を上部に搭載し、Yステージ20をX軸方向に移動させるものである。Yステージ20は、θステージ40を上部に搭載し、θステージ40をY方向に移動させるものである。なお、Xステージ10及びYステージ20で、XYステージ5を構成する。θステージ40は、Zステージ30を上部に搭載し、Zステージ30をZ軸廻りに回転させるものである。Zステージ30は、柱状部材55を介してチャック50をZ方向に移動させるものである。
【0013】
Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30は、それぞれ、自身の制御位置を計測するリニアスケール15,25,35を内蔵している。ステージコントローラ45は、リニアスケール15,25,35の計測位置と制御装置90が設定する設定位置(目標位置)とが一致するように、Xステージ10と、Yステージ20と、θステージ40と、Zステージ30との位置を帰還制御する。これらの構成により、チャック50は、X,Y,Z,θ方向に移動させられる。
【0014】
チャック50は、ステージ校正時には、校正用マスク110を固定し、電気的特性又は温度特性の測定時には、半導体ウェハ120を固定するものである。柱状部材55は、円柱形状であり、Zステージ30の移動距離よりも長く形成されている。なお、柱状部材55は、角柱でも構わない。チャンバ85の底板85aには、円形状の開口部81が形成されている。開口部81の径は、柱状部材55がXY方向に移動しても、柱状部材55の側面と当接しない大きさに設定されている。
【0015】
閉口部材86は、円帯状(円環状)の板材であり、チャンバ85の底板85aの上面に載置され、開口部81を閉口する。但し、閉口部材86の内径は、柱状部材55の径よりも若干大きくなっている。これにより、閉口部材86は、柱状部材55が上下方向に移動しても、自重でチャンバ85の底板85aに当接する。なお、チャンバ85は、窒素やDRY AIRが充満する空間を形成し、半導体ウェハの結露を防止するものである。チャンバ85は、真空チャンバではないので、閉口部材86と柱状部材55との間の隙間からの窒素やDRY AIRの漏れを問題としない。
【0016】
チャック50とチャンバ85の側板85bとの間には、線状部材としてのホース70が設けられている。ホース70には、半導体ウェハ120に吹き付ける窒素やDRY AIRが供給される。ホース70は、フッ素樹脂パイプ(テフロン(登録商標)パイプ)であり、硬く、屈曲性が低い。また、チャック50とチャンバ85の側板85cとの間には、線状部材としてのケーブル75が設けられている。ケーブル75は、図示しないヒータやペルチェ素子に通電するものである。また、ケーブル75は、半導体ウェハ120の電気特性を計測するプローブと計測器(図示せず)とを接続するものでもある。
【0017】
また、チャンバ85及びXステージ10は、本体筐体80に固定されている。このため、ホース70及びケーブル75の取付時の撓みにより、チャック50は、ホース70及びケーブル75の復元力を受ける。また、ホース70及びケーブル75の屈曲状態により、チャック50が受ける復元力の方向や大きさが異なる。
【0018】
また、チャック50とXYステージ5との間には、θステージ40、Zステージ30及び柱状部材55が介挿されている。つまり、チャック50は、XYステージ5に対して、Z方向に高く配設されている。このため、チャック50は、傾倒し、X軸方向又はY軸方向に位置ズレする。したがって、チャック50の位置は、Xステージ10、Yステージ20が備えるリニアスケール15,25の測定位置とは異なる。
【0019】
なお、
図1では、Yステージ20、Zステージ30、θステージ40及びチャック50がX軸方向に微小変位した状態を破線で示している。また、
図1には、チャック50の変位量をΔXで示している。さらに、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30及びθステージ40の何れかのステージの移動により、ホース70及びケーブル75の反発力が変化し、チャック50の変位量(ΔX,ΔY,ΔZ)も変動する。
【0020】
CCDカメラ60は、XYステージ5の中心の上方であって、チャンバ85の上板85dの下部に設けられている。これにより、CCDカメラ60は、チャック50に固定された校正用マスク110の一部を拡大して撮像する撮像素子である。
【0021】
制御装置90は、PC(Personal Computer)であり、CPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより、図示しない位置制御部と画像計測部との機能を実現する。位置制御部は、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30、及びθステージ40を駆動するステージコントローラ45を制御する。画像計測部は、CCDカメラ60の撮像画像を用いて、チャック50の位置(画像計測位置)を計測する。
【0022】
また、制御装置90は、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30、及びθステージ40を移動させつつ、チャック50に生じる微小変位(例えば、ΔX)を計測し、ステージの校正を行う。また、制御装置90は、校正時に、チャック50の位置(画像計測位置)や微小変位を示す画像を表示装置(図示せず)に表示させる。なお、制御装置90と窒素ボンベ95とは、本体筐体80の外部に配置されている。
【0023】
図2は、校正用マスクのパターン図である。
校正用マスク110は、石英ガラスに酸化クロムのパターンを転写したものである。校正用マスク110のパターンは、平行且つ等間隔な複数の直線を縦横に配列したものであり、縦横一つづつの直線が中心点O(0,0)を通っている。校正用マスク110の中心点Oは、チャック50の位置を評価するためのものである。なお、方眼の間隔Dは、CCDカメラ60の撮像範囲(一点鎖線)よりも狭い。つまり、CCDカメラ60は、複数回の撮像で、全範囲を撮像する。
【0024】
図3は、ステージの校正方法を説明するためのフローチャートである。
このルーチンは、校正作業者が校正用マスク110をチャック50に固定し、制御装置90に格納されている校正用プログラムを起動したときに起動する。
【0025】
制御装置90は、CCDカメラ60の撮像画像を画像処理し、校正用マスク110の中心点Oを画像計測基準点に設定する(S11)。S11の処理後、制御装置90は、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を所定のピッチで移動させる(S12)。このとき、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30の設定位置が記憶部に記憶される。S12の処理後、制御装置90は、校正用マスク110の交点位置(初回は、中心点O)を画像計測し(S13)、交点の座標を記憶部に格納する。
【0026】
S13の処理後、制御装置90は、校正用マスク110の交点を追尾し、追尾した交点が撮像範囲内(画像計測範囲内)か否か判定する(S14)。追尾した交点が撮像範囲内であれば(S14で範囲内)、制御装置90は、交点の座標を記憶する(S16)。一方、追尾した交点が撮像範囲外に出たときには(S14で範囲外)、校正用マスク110の他の交点(例えば、座標(1,0)の交点)が撮像範囲内(画像計測範囲内)に入っている。この場合、制御装置90は、他の交点の座標を校正用マスクの方眼間隔Dで加算(例えば、X方向にシフト)し(S15)、加算した他の交点の座標(画像計測位置)を記憶する(S16)。
【0027】
S16の処理後、制御装置90は、XYZステージの設定位置が仕様範囲内(最大移動範囲内)であるか否か判定する(S17)。仕様範囲内であれば(S17で範囲内)、制御装置90は、処理をS12に戻し、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を所定のピッチで移動させる(S12)。一方、仕様範囲外になれば(S17で範囲外)、制御装置90は、XYZステージの設定位置Xsに対する画像計測位置Xmを最小二乗近似する(S18)。つまり、制御装置90は、画像計測位置(例えば、X軸)を下記のようなn次式(但し、1次式を除く。)で最小二乗近似する。
f(Xs)=a
0+a
1Xs+a
2Xs
2+a
3Xs
3+・・・・・ (1)
そして、近似式f(Xs)の係数a
0,a
1,a
2,a
3,・・・を記憶部に一時記憶する。
【0028】
なお、S11で、校正用マスク110の中心点Oを画像計測基準点に設定している。このため、ホース70及びケーブル75をチャック50に取り付けた取付時に生じる中心点Oの位置ズレはゼロと見なされる。
【0029】
図4は、本発明の第1実施形態におけるX軸方向の校正曲線を説明するための図である。
横軸は、S12で記憶されたXステージ10の設定位置Xsである。縦軸は、S16で記憶された校正用マスク110の交点のX座標(画像計測位置)Xmである。破線は、ステージ移動量と校正用マスクの位置とが一致(比例)する理想直線である。実線は、校正用マスク110の交点の計測値をn次式(例えば、2次式)で最小二乗近似した近似式である。
図4では、実線と破線との差分(微小変位ΔX:ズレ量)がXステージ10の設定位置に応じて変動している。
【0030】
この近似式f(Xs)は、Xステージ10の設定位置Xsと校正用マスク110の交点の画像計測位置Xmとの関係を示したものである。近似式f(Xs)は、原点を通る傾き1の直線なので、
f(Xs)=Xs+a
2Xs
2+a
3Xs
3+・・・・・ (2)
となる。また、
図4に示す近似式f(Xs)は、単調増加(df(Xs)/dXs>0)の条件を付している。これにより、校正用マスク110の中心点Oを目標位置(画像計測位置Xm)としたとき、2つのXステージ10の設定位置Xsが出てくることを防いでいる。
【0031】
次に、制御装置90は、Xステージ10の設定位置Xsにおけるズレ量ΔXを最小二乗近似する。つまり、制御装置90は、設定位置Xsとズレ量ΔX=(f(Xs)−Xs)との関係を示す校正式の係数b
0,b
1,b
2,b
3,・・・を演算する。
ΔX(Xs)=b
0+b
1Xs+b
2Xs
2+b
3Xs
3+・・・・ (3)
【0032】
なお、最小二乗近似は、ステージを移動させる全区間をn次式(n:2以上の整数)で近似させても構わないし、移動平均させても構わない。また、
図4の計測値や校正曲線は、校正時に、制御装置90が表示部に表示させても構わない。
【0033】
図3のフローチャートの説明に戻り、S18の処理後、制御装置90は、校正用マスク110の交点を画像計測した画像計測位置の各々と近似式の値とを差分演算し(S19)、差分値(残差)がプローバ位置精度の保証範囲内か否か判定する(S20)。精度保証範囲内であれば(S20で範囲内)、制御装置90は、(3)式で求めた校正式ΔX(Xs)の係数b
0,b
1,b
2,b
3,・・・をファイル出力する(S21)。このとき、(1)式で求めた近似式f(Xs)の係数a
0,a
1,a
2,a
3,・・・をファイル出力しても構わない。
【0034】
一方、保証範囲外であれば(S20で範囲外)、制御装置90は、ピッチ間隔を変化させて(S22)、残差を小さくする。S22の処理後、制御装置90は、ステージの設定位置を初期状態に戻してから(S23)、処理をS12に戻し、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を所定のピッチで移動させる。
【0035】
図5は、校正式を用いてステージ駆動する方法を説明するためのフローチャートである。このルーチン(S30)は、チャック50(
図1)に半導体ウェハ120を固定し、電気的特性や温度特性を測定する場合であって、ステージを駆動する毎に起動する。また、このときには、予め、S21(
図4)でファイル出力された校正式ΔX(Xs)の係数b
0,b
1,b
2,b
3,・・・が読み込まれており、ステージの目標位置(設定位置)が決定されているものとする。
【0036】
制御装置90は、ファイルに格納された校正式の係数b
0,b
1,b
2,b
3,・・・を用いて、画像計測位置Xs(目標値)におけるズレ量ΔX(Xs)を演算する(S31)。S31の後、目標値Xsにズレ量ΔX(Xs)を減算して、ステージ設定値Xsを演算する(S32)。S32の後、制御装置90は、ステージ設定値Xsをステージコントローラ45に出力し、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を駆動する(S33)。
【0037】
また、(1)式(近似式f(Xs))の増加・減少がある場合は、予め、極大点をファイルに格納しておき、Xステージ10の設定位置Xsが極大点から増加するときか、減少するときかの判定を行う。
【0038】
以上説明したように、プローバ装置100においては、線状部材としてのホース70、及びケーブル75がチャック50と本体筐体80との間に取り付けられている。このため、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を移動すると、チャック50は、ホース70及びケーブル75の復元力によって、位置ズレを起こす。プローバ装置100は、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を移動しつつ、チャック50に固定された校正用マスク110に形成された十字線の画像を撮像する。
【0039】
制御装置90は、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30の設定位置(目標位置)に対する画像計測した十字線の位置(画像計測位置)をn次式(n:2以上の整数)で最小二乗近似する。制御装置90は、画像計測位置と最小二乗近似した校正式との差分が精度保証範囲内になるまで、ピッチ間隔を変化させる。制御装置90は、精度保証範囲内になった近似式f(Xs)や校正式ΔX(Xs)をファイルに格納する。
【0040】
プローバ装置100は、読み出した校正式で補正し、補正した設定位置(目標位置)で、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30を位置制御する。これにより、Xステージ10、Yステージ20、Zステージ30の設定位置を変えたときに生じる弾性変位(位置ズレ)を補正することができる。
【0041】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、n次式(例えば、2次式)を用いて、ステージ移動量の全範囲を近似式で校正したが、ズレ量が点対称になる様な特別な場合は簡易的に校正することができる。
【0042】
図6は、本発明の第2実施形態におけるX軸方向の校正曲線を説明するための図である。
図4と同様に、
図6の横軸は、ステージ移動量であり、縦軸は、CCDカメラ60で撮像したマスク位置である。破線は、ステージ移動量と校正用マスク110の位置とが一致(比例)する理想直線である。実線は、校正用マスク110の交点座標の軌跡である。実線と破線との差分がチャック50に生じた微小変位ΔXである。
【0043】
図6では、微小変位ΔXがP点を中心に点対称のようになっている。つまり、画像計測位置Xmを近似する近似式f(Xs)は、ステージ移動量の3次式で近似することができる。また、P点を基準にステージ移動量Xを減少する減少時と増加する増加時とで、微小変位ΔXが逆方向になっている。このため、P点を基準に減少時と増加時との何れか一方を2次近似すれば、他方も近似することができる。
【0044】
また、前記第1実施形態と同様に、近似式f(Xs)に対して、単調増加(df(Xs)/dXs>0)の条件を付している。
【0045】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記実施形態のXステージ10、Yステージ20、Zステージ30は、それぞれ、リニアスケール15,25,35を内蔵し、計測位置と目標位置とが一致するように帰還制御されていた。ステッピングモータを用いて、ステージ位置をオープンループ制御しても構わない。
(2)前記実施形態のステージ装置100は、Xステージ10及びYステージ20と、Zステージ30との間に、θステージ40及び柱状部材55を介挿していたが、柱状部材55は無くても構わない。また、前記実施形態では、校正用マスク110を用いていたが、例えば、チャック50にマーク(目印)やスケールを付し、CCDカメラ60がマークやスケールを撮像して、チャック50の位置を画像計測しても構わない。
【解決手段】本体筐体80に固定されたXYステージ5と、XYステージ5により移動させられるZステージ30と、Zステージ30により移動させられるチャック50と、チャック50の上方に配設される撮像素子60とを備えたプローバ装置100であって、一端が本体筐体80に固定され、他端がチャック50に固定されたパイプ70と、XYステージ5の目標位置と撮像素子60で計測したチャック50の位置との関係を最小二乗近似した近似式(1次式を除く)を演算する制御装置90とを備える。