特許第6463874号(P6463874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6463874医学的適用用の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの新規な結晶性塩形態
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463874
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】医学的適用用の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの新規な結晶性塩形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20190128BHJP
   C07C 309/04 20060101ALI20190128BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C07D471/04 101
   C07C309/04CSP
   A61K31/496
   A61P35/02
   A61P35/00
【請求項の数】36
【全頁数】84
(21)【出願番号】特願2018-522977(P2018-522977)
(86)(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公表番号】特表2018-530598(P2018-530598A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】RU2017050025
(87)【国際公開番号】WO2017184032
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】2016114904
(32)【優先日】2016年4月18日
(33)【優先権主張国】RU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518130266
【氏名又は名称】リミテッド・ライアビリティ・カンパニー・《フュージョン・ファーマ》
【氏名又は名称原語表記】LIMITED LIABILITY COMPANY (FUSION PHARMA)
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チロフ,ゲルメス・グリゴリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティトフ,イリヤ・ユリエヴィッチ
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0213592(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/170774(WO,A1)
【文献】 特表2016−500118(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/108490(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104250253(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩。
【請求項2】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩である、請求項1記載の塩。
【請求項3】
結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩である塩。
【請求項4】
CuKα1線を使用して25±5℃で得られる以下

のいずれかのX線粉末パターンによって特徴づけられる、請求項3記載の塩。
【請求項5】
220℃に吸熱転移を有するDSC曲線によって特徴づけられる、請求項3記載の塩
【請求項6】
間群P21/nの単斜晶を含む、請求項3記載の塩。
【請求項7】
a=51.46±0.05Å;b=7.81±0.05Å;c=7.63±0.05Å;及びβ=108.9±0.1°のCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む、請求項記載の塩。
【請求項8】
V=2898.9±0.5ÅのCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む、請求項記載の塩。
【請求項9】
14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、及び/又は23.2から選択される20%以上の相対強度を有する少なくとも2個、3個、又は4個のピークを含む回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項10】
それぞれが20%以上の相対強度を有する14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、及び/又は23.2の回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項記載の塩。
【請求項11】
最も高い相対強度を有するピークとして18.7の回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項12】
7.2、11.8、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.5、25.4、及び27.1から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項13】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):7.2、11.8、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.5、25.4、及び27.1を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項12記載の塩。
【請求項14】
11.8;14.5;16.2;16.9;17.2;17.4;18.7;20.8;及び23.0から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、又は8個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項15】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):11.8;14.5;16.2;16.9;17.2;17.4;18.7;20.8;及び23.0を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項14記載の塩。
【請求項16】
14.5;16.9;17.2;17.4;18.7;及び20.8から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、又は6個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項17】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):14.5;16.9;17.2;17.4;18.7;及び20.8を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項16記載の塩。
【請求項18】
CuKα1線を使用して25±5℃で得られる以下

X線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項19】
CuKα1線を使用して25±5℃で得られる以下
【表1】

X線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩
【請求項20】
間群P21/cの単斜晶を含む、請求項3記載の塩。
【請求項21】
a=13.77±0.05Å;b=8.09±0.05Å及びc=30.83±0.05Å、並びにβ=117.8±0.1のCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む、請求項20記載の塩。
【請求項22】
V=3036.36±0.5ÅのCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む、請求項21記載の塩。
【請求項23】
11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.6から選択される20%以上の相対強度を有する少なくとも3個、4個、5個、又は6個のピークを含む回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項24】
最も高い相対強度を有するピークとして17.6及び21.2から選択される回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項23記載の塩。
【請求項25】
7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.6、及び26.1から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、又は8個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項26】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.6、及び26.1を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項25記載の塩。
【請求項27】
17.4;17.6;19.4;19.7;21.2;22.0;22.6、及び25.9から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3記載の塩。
【請求項28】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):17.4;17.6;19.4;19.7;21.2;22.0;22.6、及び25.9を有する少なくとも3個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項27記載の塩。
【請求項29】
17.4;17.6;19.7;21.2;22.0;及び22.6から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、又は6個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項3及び1723のいずれか一項記載の塩。
【請求項30】
特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):17.4;17.6;19.7;21.2;22.0;及び22.6を有する少なくとも3個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる、請求項29記載の塩。
【請求項31】
(1)3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド及びメタンスルホン酸を反応させて、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩を形成すること;及び
(2)アセトン及びエタノール(5:1v/v)に溶解している3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩の溶液を10℃の温度まで冷却して、その結晶性塩を形成すること
を含む、結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩を調製する方法
【請求項32】
1)3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド及びメタンスルホン酸を反応させて、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩を形成すること;及び
(2)アセトン及びエタノール(5:1v/v)の混合物に溶解されている3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩の溶液を濃縮し、次いで、該溶液を20〜25℃の温度まで冷却して、その結晶性塩を形成すること
を含む、結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩を調製する方法
【請求項33】
離されている、請求項1〜のいずれか一項記載の塩。
【請求項34】
請求項1〜のいずれか一項記載の塩と、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項35】
瘍性疾患を処置するための請求項34記載の組成物
【請求項36】
瘍性疾患が、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、又は消化管間質腫瘍である、請求項35記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年4月18日出願のロシア特許出願第RU2016114904号の利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
この開示は、有機化合物の化学、薬理学、及び医学に、特に化合物の塩形態に、そして、この化合物の遊離塩基と比べて改善された物理化学的特性並びに高い有効性及び安全性を有するそれらの結晶性(多形)形態に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
薬物生産の目的のために、その処理及び取り扱いに便利な形態の医薬物質(pharmaceutical substance)を有することが重要である。これは、商業的に実現可能な生産プロセスを生み出す観点からだけではなく、この活性物質を含有する医薬のその後の生産の観点からも、重要である。更に、活性成分の化学的安定性、それらの固体形態の安定性、及び保存中のそれらの安定性等の非常に重要な要因が存在する。医薬物質及びこれら物質を含有する医薬組成物は、それらの活性物質の物理化学的特徴、例えば、化学組成、密度、吸湿性、及び溶解度を著しく変化させることなく、許容可能な期間保存される能力を有するべきである。この点で、物質の非晶質形態を薬物として使用することは、一般的に、望ましくない。例えば、非晶質形態は、不安定な物理化学的特性、例えば、溶解度、吸湿性、破砕性、凝結性等を有する。したがって、商業的に実現可能でありかつ薬学的に許容し得る医薬組成物を生産するために、薬物をその結晶性で安定な形態(単数又は複数)として有することが望ましい。
【0004】
薬学的活性化合物を含む固体物質は、しばしば、1より多い結晶形態で存在することができ、そして、この現象は、多形として知られている。多形は、その結晶充填が互いに異なる複数の異なる固相として化合物が結晶化し得るときに生じる。通常、同質異像(多形)は、溶解度、並びに物理的及び/又は化学的な安定性を含む異なる物理的特徴を有する。同一の医薬物質の異なる固体塩形態、そして、更には、同一の固体塩形態の異なる多形は、物質の放出速度に加えて、塩形態の固体状態の安定性及び医薬の生産についての適合性が異なり得る。
【0005】
対応する医薬物質の生産に好適な塩形態の選択は、薬物開発の前臨床相の重要な事象である。活性物質の塩形態を変化させることは、該物質自体の化学構造を変化させることなく該物質の化学的及び生物学的な特徴を変化させる1つの方法である。特定の塩形態の選択は、この薬物の物理化学的特性(例えば、溶解速度、溶解度、安定性、及び吸湿性)に深く影響を与え得る。物質のある塩形態を別の塩形態で置換すると、最適な薬物組成物の大規模生産についての本質的に重要な検討事項である薬物の処置有効性及び/又は安定性を変化させることができる。それにもかかわらず、活性物質の塩形態の変化のその安全性及び/又は生物活性に対する効果を正確に予測するための信頼できる方法は存在しない。更に、活性物質の異なる塩形態の物理化学的特性を更に研究しても、所望の薬物動態特性、有効性、及び安全性を有している塩形態を明確に同定することができるようにはならない。簡潔に述べると、医薬中の元の化合物の挙動に対する特定の塩型の影響を予測するための信頼できる方法は存在しない(非特許文献1、2)。
【0006】
中でも、薬物動態パラメータは、医薬として使用するための固体塩形態(又は特定の同質異像)の適合性を規定する最も重要な特徴である。ヒト及び動物の血液中における薬物の日平均濃度及び最高濃度は、塩形態及びその同質異像の組成に依存して実質的に変動し得る。概して、より高い水への溶解度を有する物質の塩形態は、ヒト及び動物の血液及び組織中においてより高い最高薬物濃度を与えるものである。動物の血液中のより高い最高薬物濃度は、概して、該薬物によって引き起こされる毒性作用の増加と相関するので、物質の塩形態を変化させると、薬物の安全性プロファイルを変化させることができる。
【0007】
固体塩形態は、特に、最も望ましい物理的特性を示す傾向があるので、これら塩形態は、通常、経口薬に好ましい。塩基性物質の場合、塩形態は、好適な酸との反応によって得ることができる。上述のとおり、異なる酸は、対応する塩形態の特性(例えば、保存中の安定性、容易な生産及び精製のプロセス、薬物動態パラメータ等)に対する影響が異なり、そして、このような特性は、満足のいく精度で予測することができない。例えば、一部の塩は、周囲温度で固体物質であるが、一方、他の塩は、液体、粘性油、又は樹脂である。更に、一部の塩形態は、極限条件下において熱及び光の影響に対して抵抗性であるが、他の塩形態は、より穏やかな条件下で容易に分解する。薬物分子が1つを超える塩基性部位を保有しているとき、更なる不確実性が生じるので、所与の酸との複数の塩形態が生じる可能性がある。したがって、医薬組成物で使用するための塩基性物質の好適な塩形態の開発は、決して常に予測可能ではない非常に重要なプロセスである。
【0008】
タンパク質キナーゼは、重要な細胞プロセスの調節に関与する重要なタンパク質ファミリーを表す。タンパク質キナーゼの活性が障害されると、様々な疾患につながり得る。タンパク質キナーゼの活性の障害に関連する疾患を処置するための有望なアプローチは、低分子量化学化合物を使用してキナーゼ活性を阻害することである。診療で使用することが承認されているこのような阻害剤の例は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ラパチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、及びクリゾチニブを含む。多くのタンパク質キナーゼ阻害剤薬物の候補が、現在、臨床試験段階又は前臨床開発段階にある。
【0009】
BCR-ABLは、9番染色体と22番染色体との間の相互転座の結果として形成されるハイブリッド遺伝子BCR-ABL1の産物である融合タンパク質である(フィラデルフィア染色体)。BCR-ABLは、発がん性細胞の形質転換に関与する構成的活性チロシンキナーゼである(すなわち、オンコプロテイン)。このチロシンキナーゼの永続的活性によって、成長因子の影響なしに細胞が分割できるようになり、そして、過剰な増殖が引き起こされる。BCR-ABLは、慢性骨髄性白血病の大部分の症例及び成人急性B細胞リンパ芽球性白血病の症例の20〜50%の発現を引き起こす重要な病原性因子である。したがって、BCR-ABLハイブリッドタンパク質のキナーゼ活性の阻害は、様々な腫瘍性疾患、そして、具体的には、慢性骨髄性白血病と戦うための見込みのあるストラテジーである。
【0010】
特許文献1には、Ablキナーゼ及びその突然変異型に加えて他の処置的に重要なキナーゼの効率的かつ選択的な阻害剤である1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジンの誘導体について記載されている。記載されている化合物は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル)ベンズアミドを含んでいた。
【0011】
インビトロ及びインビボの研究を通して、特許文献1に開示されている化合物は、ヒト及び動物における腫瘍性疾患、具体的には、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、及び消化管間質腫瘍を処置するための薬物としての潜在性を有することが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開公報第2012/173521号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Berge et al., Pharmaceutical Salts, Journal Pharm. Sci., 1977, Vol. 66, No.1
【非特許文献2】Verbeeck et al. Generic substitution: The use of medicinal products containing different salts and implications for safety and efficacy European Journal Pharm. Sci., 28, 2006, 1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
概要
本開示は、メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩を提供する。
【0015】
幾つかの実施態様では、該塩は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩である。
【0016】
幾つかの実施態様では、該塩は、結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩である。
【0017】
幾つかの実施態様では、該塩は、実質的に図29に示されるとおりのCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0018】
幾つかの実施態様では、該塩は、220℃に吸熱転移を有するDSC曲線によって特徴付けられる。
【0019】
幾つかの実施態様では、該塩は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩(同質異像I)である。
【0020】
幾つかの実施態様では、該塩は、空間群P21/nの単斜晶を含む。
【0021】
幾つかの実施態様では、該塩は、a=51.46±0.05Å;b=7.81±0.05Å;c=7.63±0.05Å;及びβ=108.9±0.1°のCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む。
【0022】
幾つかの実施態様では、該塩は、V=2898.9±0.5ÅのCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む。
【0023】
幾つかの実施態様では、該塩は、16.9、17.2、17.4、18.7、及び/又は20.8から選択される約20%以上の相対強度を有する少なくとも1個のピーク、少なくとも2個のピーク、少なくとも3個のピーク、又は少なくとも2個、3個、若しくは4個のピークを含む回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0024】
幾つかの実施態様では、該塩は、それぞれが約20%以上の相対強度を有する16.9、17.2、17.4、18.7、及び/又は20.8の回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0025】
幾つかの実施態様では、該塩は、最も高い相対強度を有するピークとして18.7の回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0026】
幾つかの実施態様では、該塩は、7.2、11.8、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.5、25.4、及び27.1から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0027】
幾つかの実施態様では、該塩は、特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):7.2、11.8、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.5、25.4、及び27.1を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0028】
幾つかの実施態様では、該塩は、11.8;14.5;16.2;16.9;17.2;17.4;18.7;20.8;及び23.0から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも4個、5個、6個、7個、又は8個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0029】
幾つかの実施態様では、該塩は、特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):11.8;14.5;16.2;16.9;17.2;17.4;18.7;20.8;及び23.0を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0030】
幾つかの実施態様では、該塩は、以下から選択される回折角値(2θ):14.5;16.9;17.2;17.4;18.7;及び20.8を有する少なくとも3個、4個、5個、又は6個のピーク(又は少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個のピーク)を有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0031】
幾つかの実施態様では、該塩は、特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):14.5;16.9;17.2;17.4;18.7;及び20.8を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0032】
幾つかの実施態様では、該塩は、実質的に図49(a)に示されるとおりのCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0033】
幾つかの実施態様では、該塩は、実質的に表6に示されるとおりのCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0034】
幾つかの実施態様では、該塩は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩(同質異像II)である。
【0035】
幾つかの実施態様では、該塩は、空間群P21/cの単斜晶を含む。
【0036】
幾つかの実施態様では、該塩は、a=13.77±0.05Å;b=8.09±0.05Å及びc=30.83±0.05Å、並びにβ=117.8±0.1のCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む。
【0037】
幾つかの実施態様では、該塩は、V=3036.36±0.5Å3のCuKα1線を使用する25±5℃における粉末X線回折によって決定される単位格子パラメータを有する単斜晶を含む。
【0038】
幾つかの実施態様では、該塩は、11.9;14.7;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.6から選択される約20%以上の相対強度を有する少なくとも3個、4個、5個、又は6個のピークを含む回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0039】
幾つかの実施態様では、最も高い相対強度を有するピークとして17.6又は21.2から選択される回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0040】
幾つかの実施態様では、該塩は、7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.6、及び26.1から選択される回折角値(2θ)を有する少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、又は8個のピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0041】
幾つかの実施態様では、該塩は、7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.6、及び26.1から選択される回折角値(2θ)を有するピークを有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0042】
幾つかの実施態様では、該塩は、特徴的なピークとして以下の回折角値(2θ):17.4;17.6;19.4;19.7;21.2;22.0;22.6、及び25.9を有する少なくとも3個のピーク(又は少なくとも4個、5個、又は6個)を有するCuKα1線を使用して25±5℃で得られるX線粉末パターンによって特徴付けられる。
【0043】
また、以下を含む、結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩を調製する方法も提供される:
(1)3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド及びメタンスルホン酸を反応させて、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルナート塩を形成すること;及び
(2)アセトン及びエタノール(約5:1v/v)に溶解している3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩の溶液を、約10℃の温度まで冷却して、その結晶性塩を形成すること。
【0044】
更に、このような方法によって調製される又は入手可能である結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩が提供される。
【0045】
更に、以下を含む、結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホン酸塩を調製する方法が提供される:
(1)3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド及びメタンスルホン酸を反応させて、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩を形成すること;及び
(2)アセトン及びエタノール(約5:1v/v)に溶解している3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩の溶液を濃縮し、次いで、該溶液を約20〜25℃の温度まで冷却して、その結晶性塩を形成すること。
【0046】
また、このような方法によって調製される又は入手可能である結晶性3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドモノメタンスルホナート塩も提供される。
【0047】
幾つかの実施態様では、上記塩は、実質的に単離されている。幾つかの実施態様では、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%は、上に定義した形態のモノメタンスルホナート塩として、又はその実施態様のいずれかとして存在する。
【0048】
また、上に定義した塩又はその実施態様のいずれかと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とを含む組成物が提供される。
【0049】
更に、そのような処置を必要とする被験体における腫瘍性疾患を処置する方法であって、有効量の上に定義した塩又はその実施態様のいずれか、このような塩を含有する組成物を、該被験体に投与することを含む方法が提供される。
【0050】
幾つかの実施態様では、該腫瘍性疾患は、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、又は消化管間質腫瘍である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1-1】100mgのスケールにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩の結晶化。
図1-2】100mgのスケールにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩の結晶化。
図2】メチルtert−ブチルエーテルを添加した後の、100mgのスケールにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩の結晶化。
図3】遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-194-1(同質異像I);b)サンプル−HAL-G-194-2(同質異像II)。
図4】偏光顕微鏡法によって得られた遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(サンプル−HAL-G-194-1、同質異像I)のサンプル結晶の写真。
図5】遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのH核磁気共鳴スペクトル。a)サンプル−HAL-G-194-1(同質異像I);b)サンプル−HAL-G-194-2(同質異像II)。
図6】遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのサンプル(サンプル−HAL-G-194-1、同質異像I)のDSC(示差走査熱量測定)曲線。
図7】遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのサンプル(サンプル−HAL-G-194-1、同質異像I)のTGA(熱重量分析)曲線。
図8】重量吸湿によって分析された遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(サンプル−HAL-G-194-1、同質異像I)の吸湿性を示すプロット。
図9】塩酸及び遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-194-1(遊離塩基、同質異像I);b)サンプル−HAL-G-196-2(HCl塩、同質異像I);c)サンプル−HAL-G-196-3(HCl塩、同質異像II)。
図10】塩酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のH核磁気共鳴スペクトル。a)サンプル−HAL-G-196-2(同質異像I);b)サンプル−HAL-G-196-3(同質異像II)。
図11】塩酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-2、同質異像I)のTGA曲線。
図12(a)】塩酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプルのDSC曲線。a)サンプル−HAL-G-196-2(同質異像I);
図12(b)】b)サンプル−HAL-G-194-3(同質異像II)。
図13】重量吸湿によって分析された塩酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-2、同質異像I)の吸湿性を示すプロット。
図14】硫酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩(サンプル−HAL-G-196-6)のX線粉末回折パターン。
図15】硫酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-6)のH核磁気共鳴スペクトル。
図16】硫酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-6)のDSC曲線。
図17】臭化水素酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-7(同質異像I);b)サンプル−HAL-G-196-8(同質異像II)。
図18】臭化水素酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプルのH核磁気共鳴スペクトル。a)サンプル−HAL-G-196-7(同質異像I);b)サンプル−HAL-G-196-8(同質異像II)。
図19(a)】臭化水素酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプルのDSC曲線。a)サンプル−HAL-G-196-7(同質異像I);
図19(b)】b)サンプル−HAL-G-196-8(同質異像II)。
図20】臭化水素酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-7、同質異像I)のTGA曲線。
図21】リン酸及び遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-13;b)サンプル−HAL-G-198-3 (HAL-G-196-13の脱溶媒和後);
図22】リン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-13)のH核磁気共鳴スペクトル。
図23】リン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-13)のDSC曲線。
図24】リン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-13)のTGA曲線。
図25】酒石酸及び遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-16;b)サンプル−HAL-G-198-1 (HAL-G-196-16の脱溶媒和後)。
図26】酒石酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-16)のH核磁気共鳴スペクトル。
図27】酒石酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-16)のDSC曲線。
図28】酒石酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-16)のTGA曲線。
図29】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-19;b)サンプル−HAL-G-196-20;c)サンプル−HAL-G-196-21。
図30】偏光顕微鏡法によって得られたメタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(サンプル−HAL-G-196-21)との塩のサンプル結晶の写真。
図31】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(サンプル−HAL−G-196-19)のH核磁気共鳴スペクトル。
図32】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-21)のDSC曲線。
図33】4−メチルベンゼンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-23;b)サンプル−HAL-G-196-24。
図34】偏光顕微鏡法によって得られた4−メチルベンゼンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(サンプル−HAL-G-196-24)の塩のサンプル結晶の写真。
図35】4−メチルベンゼンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-24)のH核磁気共鳴スペクトル。
図36】4−メチルベンゼンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-24)のDSC曲線。
図37】重量吸湿によって分析された4−メチルベンゼンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-24)の吸湿性を示すプロット。
図38】リンゴ酸及び遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-25;b)サンプル−HAL-G-198-26。
図39】リンゴ酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-25)のH核磁気共鳴スペクトル。
図40】リンゴ酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-25)のDSC曲線。
図41】リンゴ酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-25)のTGA曲線(熱重量分析)。
図42】フマル酸及び遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のX線粉末回折パターン。a)サンプル−HAL-G-196-28;b)サンプル−HAL-G-198-29。
図43】フマル酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプル(サンプル−HAL-G-196-29)のH核磁気共鳴スペクトル。
図44(a)】フマル酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプルのDSC曲線。a)サンプル−HAL-G-196-28;
図44(b)】b)サンプル−HAL-G-198-29。
図45(a)】フマル酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩のサンプルのTGA曲線。a)サンプル−HAL-G-196-28;
図45(b)】b)サンプル−HAL-G-198-29。
図46】偏光顕微鏡法によって得られたフマル酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(サンプル−HAL-G-196-29)の塩の結晶の写真。
図47】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(同質異像I)の1H及び13C核磁気共鳴スペクトル:a)1H-NMRスペクトル(BrukerDRX500、13400、500.13MHz、DMSO-d6);b)13C-NMRスペクトル(BrukerDRX500、125.76MHz、DMSO-d6)。
図48】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(同質異像II)のH及び13C核磁気共鳴スペクトル:a)1H-NMRスペクトル(BrukerDRX500、13、500.13MHz、DMSO-d6);b)13C-NMRスペクトル(BrukerDRX500、13、125.76MHz、DMSO-d6)。
図49(a)】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のX線粉末回折パターン。a)同質異像I;
図49(b)】b)同質異像II。
図50】メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の単位格子の全体図。a)同質異像I;b)同質異像II。
図51】遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド、並びにメタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の同質異像の溶解速度を示すプロット。
図52(a)】単回経口投与後のC57BL/6マウスの血漿中の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの濃度の平均値。この平均値は、3匹の動物から得られた個々のデータに基づいて各時点毎に求めた。a)50mg/kgの投与量における遊離塩基の経口投与;
図52(b)】b)59mg/kg 塩の投与量(50mg/kg 遊離塩基の用量と等価)におけるメタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(同質異像I)の経口投与。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
本開示は、キナーゼ阻害剤の新規塩形態、具体的には、薬理学的に許容し得る対イオンを含有し、結晶性、水への高い溶解度、及び一定の組成を有し、生産及び精製のプロセスのスケーリングを可能にし、そして、様々なキナーゼの活性障害に関連する疾患を処置するための臨床応用の観点で有用であるAblキナーゼ阻害剤の新規塩形態について記載する。
【0053】
技術的結果は、キナーゼ阻害剤の新規塩形態、具体的には、水への高い溶解度、Ablキナーゼ(及びこの酵素の臨床的に重要な突然変異型)に対する高い阻害活性、高い日平均濃度、並びにヒト及び動物の血液中における高いAUCパラメータ(濃度対時間の曲線下面積)値に加えて、タンパク質キナーゼの活性障害に関連する疾患、具体的には、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、及び消化管間質腫瘍を処置するための好ましい安全性及び有効性のプロファイルを有する、その新規同質異像(結晶形態)を含むAblキナーゼ阻害剤の新規塩形態の開発及び生産である。
【0054】
また、技術的結果は、生産及び精製のプロセスの容易なスケーリング、低毒性溶媒の使用、並びに最小量の生成物精製段階しか含まない高い純度の最終生成物を特徴とするキナーゼ阻害剤の新規塩形態の開発及び生産である。
【0055】
示した技術的結果は、タンパク質キナーゼ、具体的には、Ablキナーゼの酵素活性を阻害する能力を有する、メタンスルホン酸と塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩
【化1】

又はその水和物、溶媒和物、及び同質異像を得ることによって実現される。
【0056】
本発明の好ましい実施の1つは、以下のとおりの、波長1.5406ÅのCuKα1線を使用する25℃±5℃における粉末X線回折法によって得られた単位格子のパラメータを有する結晶相である、メタンスルホン酸と塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の同質異像である:a=51.46±0.05Å;b=7.81±0.05Å;c=7.63±0.05Å;β=108.9±0.1°;V=2898.9±0.5Å3;空間群P21/n、並びに回折角値(2θ)3.6;7.2;11.4;11.8;12.5;13.4;14.5;16.2;16.5;16.9;17.2;17.4;17.8;18.1;18.4;18.7;20.8;21.4;22.7;22.8;23.0;23.2;23.4;24.1;24.5;25.4;25.9;26.0;26.2;26.7;27.1;28.4;33.0;33.3;及び36.7を有するデバイX線粉末パターンにおける特徴的なピーク。
【0057】
本発明の別の好ましい実施は、以下のとおりの、波長1.5406ÅのCuKα1線を使用する25℃±5℃における粉末X線回折法によって得られた単位格子のパラメータを有する結晶相である、メタンスルホン酸と塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の同質異像である:a=13.77±0.05Å;b=8.09±0.05Å;及びc=30.83±0.05Å;β=117.8±0.1;V=3036.36±0.5Å;空間群P21/c、並びに回折角値(2θ)7.1;7.3;11.6;11.8;12.7;12.9;13.1;14.2;14.6;16.9;17.2;17.4;17.6;18.1;18.3;19.4;19.7;20.8;21.2;21.6;22.0;22.5;22.6;23.2;23.4;23.8;24.9;25.1;25.6;25.9;26.1;26.6;28.3;28.8;29.6;及び30.1を有するデバイX線粉末パターンにおける特徴的なピーク。
【0058】
また、示した技術的結果は、本発明に係る塩又はその水和物、溶媒和物、若しくは同質異像を使用して、ヒト又は動物におけるキナーゼ活性に関連する疾病の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物を得ることによっても実現される。幾つかの実施では、該キナーゼは、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、及びセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ、具体的には、Ablキナーゼ、c-Src、Yes、Lyn、Lck、EGFR1 (Flt-1)、VEGFR2、VEGFR3、PDGFRキナーゼを含む群から選択される。
【0059】
また、本発明は、本発明に係る医薬組成物を身体に導入することによって、該身体におけるキナーゼ活性に関連する疾病を予防及び/又は治療する方法を含む。このキナーゼ活性に関連する疾病は、腫瘍性、慢性、炎症性、及び/又は他の疾患、具体的には、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、及び消化管間質腫瘍を含み得る。幾つかの実施では、処置される被験体は、ヒト又は動物であってもよい。幾つかの実施では、動物は、ネコ、イヌ、又はウマであってもよい。
【0060】
示した技術的結果は、以下の段階を含む、本発明に係る結晶性化合物を得る方法によって実現される:
a.有機溶媒又は溶媒の混合物中塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの懸濁液又は溶液に、(有機溶媒中)メタンスルホン酸又はその水和物の溶液を導入する。該メタンスルホン酸又はその水和物の溶液の導入は、室温で又は各成分を加熱若しくは冷却しながら行ってもよく;また、逆の試薬混合順序を使用してもよい。
b.得られた塩を該溶液から結晶化させる。
c.該塩の結晶を該溶媒から分離する。
【0061】
幾つかの実施では、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドを懸濁させるための媒体として段階(a)で使用される溶媒は、アセトンであり得る。
【0062】
実施では、メタンスルホン酸又はその水和物の溶液を調製するために段階(a)で使用される溶媒は、エタノールであり得る。
【0063】
幾つかの実施では、段階(c)後に該塩の更なる再結晶化を実施してもよい。
【0064】
幾つかの他の実施では、該塩が溶液から得られる場合、結晶形成を開始させる更なる段階を実施する。結晶形成の開始は、少量の同じ塩を該溶液に導入することによって、又は他の方法によって実現することができる。
【0065】
特定の場合、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩基を硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチル−ベンゼンスルホン酸、2−メチル−ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、クエン酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、又は別の酸との塩に転換し、その後該塩を使用して、メタンスルホン酸との塩を得るために使用される塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドを得ることによって、該塩基を精製する段階を更に適用してもよい。
【0066】
遊離塩基3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドは、公知であり、そして、国際公開公報第2012/173521号に記載されている。
【0067】
定義(用語)
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示によって提供される文脈を考慮して、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0068】
用語「例えば」及び「等」、並びにこれらの文法的等価物については、特に明示的に記載しない限り、語句「であるが、これらに限定されない」が後に続くと理解される。
【0069】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0070】
用語「約」は、「およそ」(例えば、示した値のプラス又はマイナスおよそ10%)を意味する。
【0071】
用語「℃」は、温度を参照して使用されるとき、摂氏温度又はセルシウス温度を意味する。
【0072】
用語「IC50」は、キナーゼ活性を最大の半分だけ阻害するのに十分な試験化合物の濃度を意味する。
【0073】
本願で使用される用語「調節」は、キナーゼの触媒活性の変化を指す。具体的には、調節は、キナーゼの触媒活性の活性化又は阻害を指す。
【0074】
用語「同質異像」は、結晶格子における分子の異なる配置及び/又は立体構造に起因して幾つかの異なる形態を有する物質の固相を指す。同質異像は、異なる化学的及び物理的な特性を有し得る。用語「同質異像」は、化合物の溶媒和物(すなわち、溶媒又は水を含有する結晶形態)に加えて、様々な非溶媒和結晶形態も含む。
【0075】
用語「溶媒和物」は、本発明に係る化合物と薬理学的に許容し得る溶媒、例えば、エタノールの1つ以上の分子とを含有する分子複合体を説明するために使用される。用語「水和物」は、溶媒が水であるときに使用される。
【0076】
用語「粉末X線回折パターン」又は「PXRDパターン」は、実験的に観察されるディフラクトグラム又はそれから得られるパラメータを指す。通常、粉末X線回折パターンは、ピークの位置(横座標)及びピークの強度(縦座標)によって特徴付けられる。用語「ピーク強度」は、所与のX線回折パターンにおけるシグナルの相対強度を指す。ピークの相対強度に影響を与える要因は、(1)サンプルの厚さ及び(2)好ましい配向(すなわち、結晶粒子の非ランダム配向から生じる効果)である。本明細書で使用される用語「ピーク位置」は、粉末回折実験で測定及び観察されるx線反射の位置を指す。ピーク位置は、単位格子の寸法に直接関連する。そのそれぞれの位置によって同定されるピークは、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの様々な多形についての回折パターンから得られる。
【0077】
「2シータ値」又は「2θ」は、実験的X線回折データから得られるピーク位置(度)を指し、そして、基本的には、粉末X線回折における横座標の測定単位である。一般的に、X線回折実験では、入射ビームは、(垂直に対して)角度θでサンプルに当たり、そして、(入射ビームに対して)角度2θで反射する。本願における特定の多形についての特定の値の2θに対する全ての参照は、等価な品質の回折計を使用して、そして、本明細書に概説される実験条件下で2θ値が測定されると仮定することに留意すべきである。本発明者らの回折計及び概説される条件を使用して、本発明者らは、2θの精度を±0.1〜0.2度であると推定する。
【0078】
キナーゼの「異常な活性」という用語は、病態の非存在下における細胞のキナーゼ活性の基本レベルとは実質的に異なるキナーゼ活性を指す。異常な活性は、キナーゼ発現レベルの変化によって、キナーゼを活性化させるプロセスの障害によって、分解経路の制御を伴う疾病によって、又は他の要因によって引き起こされ得る。
【0079】
用語「補助物質」は、薬物製品の組成物中に含まれるか又は薬物製品の必要な物理化学的特性を得るために薬物生産プロセスにおいて使用される、無機又は有機起源の任意の薬学的に許容し得る物質を意味する。
【0080】
用語「AUC」は、全観察期間中の血漿中における薬物の合計濃度を特徴付ける薬物動態パラメータを意味する。数学的観点から、AUCは、時間に対する血漿中における薬物濃度のプロット(薬物動態曲線)の0→∞の積分として定義され、そして、薬物動態曲線及び座標軸によって限定される面積に等しい。
【0081】
本開示では以下の略記が使用され得る:Å(オングストローム);aq.(水性);AUC(曲線下面積);br(ブロード);cryst.(結晶性);d(ダブレット);dd(ダブレットオブダブレット);DCM(ジクロロメタン);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DSC(示差走査熱量測定);eq.(当量);Et(エチル);EtOAc(酢酸エチル);Fig.(図);g(グラム);h(時);HCl(塩酸);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);Hz(ヘルツ);J(カップリング定数);kg(キログラム);L(リットル);m(マルチプレット);M(モル濃度);MHz(メガヘルツ);MS(質量分析);Me(メチル);MeCN(アセトニトリル);MeOH(メタノール);mg(ミリグラム);min.(分);mL(ミリリットル);mmol(ミリモル);MTD(最大耐容量);N(規定濃度);NaHCO3(重炭酸ナトリウム);NaOH(水酸化ナトリウム);Na2SO4(硫酸ナトリウム);NH4Cl(塩化アンモニウム);nm(ナノメートル);nM(ナノモル濃度);NMR(核磁気共鳴分光法);NMT(以下);Ph.Eur.(欧州薬局方)、PPTS(p−トルエンスルホン酸ピリジニウム);RP-HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー);rt(室温);s(シングレット);t(トリプレット又は三級);tert(三級);TGA(熱重量分析);tt(トリプレットオブトリプレット);t-Bu(tert-ブチル);THF(テトラヒドロフラン);μg(マイクログラム);μL(マイクロリットル);μM(マイクロモル濃度);wt%(重量パーセント)、w/v(重量/体積比−100mL当たりの重量(グラム))。
【0082】
本発明の実施による技術的結果の目的達成の可能性は、この分野において許容される方法に従って実施された研究の過程で得られる実験結果を含有する実施例に示される信頼できるデータによって確認される。本発明の特徴は、図面によって説明することができる。
【0083】
例及び特許出願に含まれる全ての実施例は限定的なものではなく、本発明を説明するためだけに示されていることを理解すべきである。
【0084】
処置適用
本明細書に記載される塩及びその同質異像は、処置を必要とする被験体の身体に処置的に有効な量の本発明に係る塩を投与することによって、療法において使用することができる。用語「処置的に有効な量」は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって求められている処置の被験体において生物学的又は医学的な応答を引き起こす化合物の量を意味する。該化合物の正確な必要量は、年齢、体重、及び一般的な患者の病態、疾患の重篤度、薬物の投与手順、他の薬物による処置との組み合わせ等に依存して、被験体によって異なり得る。
【0085】
用語「処置する」又は「処置」とは、(1)疾患の阻害;例えば、疾患、病態、又は疾病の病状又は総体的症状を経験しているか又は示している個体における該疾患、病態、又は疾病の阻害(すなわち、該病状及び/又は総体的症状の更なる発現の抑止);及び(2)疾患の寛解;例えば、疾患の重篤度の低下等、疾患、病態、又は疾病の病状又は総体的症状を経験しているか又は示している個体における該疾患、病態、又は疾病の寛解(すなわち、該病状及び/又は総体的症状の逆行)のうちの1つ以上を指す。一実施態様では、処置する又は処置は、疾患の発現の予防又はリスク低減;例えば、疾患、病態、又は疾病に罹患しやすい可能性があるが、該疾患の病状又は総体的症状を経験又は示したことのない個体における該疾患、病態、又は疾病の発現の予防又はリスク低減を含む。
【0086】
用語「個体」又は「患者」は、互換的に使用され、(例えば、処置の被験体としての)任意の動物、例えば、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類、そして、最も好ましくはヒトを指す。
【0087】
語句「処置的に有効な量」は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって求められている組織、系、動物、個体、又はヒトにおいて生物学的又は医学的な応答を誘発する活性化合物又は薬剤の量を指す。
【0088】
本発明に係る塩若しくはその同質異像、又は該塩若しくはその同質異像を含有する医薬組成物は、疾患の治療又は予防に有効な任意の量で、そして、任意の方法によって患者の身体に導入することができる。
【0089】
所望の投与量で該塩又はその同質異像を好適な薬学的にアクセス可能な担体と混合した後、例えば、経口的、非経口的、又は局所的に医薬組成物をヒトの身体又は動物に導入することができる。
【0090】
該塩又はその同質異像の投与は、1日間、1週間(又は任意の他の時間間隔)に1回若しくは数回、又は時々実施してもよい。更に、該化合物は、特定の期間(例えば、2〜10日間)毎日投与し、続いて、化合物を投与しない期間(例えば、1〜30日間)を設けてもよい。
【0091】
本発明に係る塩又はその同質異像を併用療法のレジメの一部として使用する場合、該併用療法の各成分の用量を処置に必要な期間にわたって投与する。併用療法に含まれる化合物は、1回(全成分の投与量として)又は数回(成分の個々の投与量として)投与してもよい。
【0092】
患者における細胞増殖性疾病を処置する方法が本明細書に提供される。該方法は、処置的に有効な量の、本開示又はその実施態様のいずれかに記載される3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの結晶性塩及び多形を患者に投与することを含む。
【0093】
「細胞増殖性疾病」は、非定型的に加速された速度で身体によって細胞が作製される疾病を意味し、そして、がんを含み得る。
【0094】
がんの非限定的な例は、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、胃腸がん、泌尿生殖器がん、頭頸部がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、皮膚がん、及び精巣がんを含む。
【0095】
より具体的には、本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法によって処置され得るがんは、以下を含むが、これらに限定されるわけではない:
1)例えば、頭蓋のがん、例えば、骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、及び変形性骨炎;髄膜のがん、例えば、髄膜腫、髄膜肉腫、及び神経膠腫症;脳のがん、例えば、星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、神経膠腫、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、及び先天性腫瘍;並びに脊髄のがん、例えば、神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、及び肉腫を含む神経系がん。
2)例えば、ER+乳がん、ER-乳がん、her2-乳がん、her2+乳がん、間質腫瘍、例えば、線維腺腫、葉状腫瘍、及び肉腫、並びに上皮腫瘍、例えば、大管乳頭腫;腺管上皮内がん(パジェット病を含む)及び上皮内小葉がんを含む内(非浸潤性)がん、並びに侵襲性腺管がん、侵襲性小葉がん、髄様がん、膠様(粘液性)がん、管状がん、及び侵襲性乳頭状がんを含むが、これらに限定されるわけではない侵襲性(浸潤性)がんを含む乳がん腫;並びに混合型悪性新生物を含む乳がん。乳がんの更なる例は、ルミナルA、ルミナルB、ベイサルA、ベイサルB、並びにエストロゲン受容体ネガティブ(ER-)、プロゲステロン受容体ネガティブかつher2ネガティブ(her2-)であるトリプルネガティブ乳がんを含み得る。幾つかの実施態様では、乳がんは、高リスクオンコタイプスコアを有し得る。
3)例えば、肉腫、例えば、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、及び脂肪肉腫;粘液腫;横紋筋腫;線維腫;脂肪腫及び奇形腫を含む噴門がん。
4)例えば、気管支原性がん、例えば、扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、及び腺がん;肺胞がん及び細気管支がん;気管支腺腫;肉腫;リンパ腫;軟骨性過誤腫;並びに中皮腫を含む肺がん。
5)例えば、食道のがん、例えば、扁平上皮がん、腺がん、平滑筋肉腫、及びリンパ腫;胃のがん、例えば、がん腫、リンパ腫、及び平滑筋肉腫;膵臓のがん、例えば、管腺がん、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、及びビポーマ;小腸のがん、例えば、腺がん、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、及び線維腫;大腸のがん、例えば、腺がん、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、及び平滑筋腫を含む消化器がん。
6)例えば、腎臓のがん、例えば、腺がん、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、及び白血病;膀胱及び尿道のがん、例えば、扁平上皮がん、移行上皮がん、及び腺がん;前立腺のがん、例えば、腺がん及び肉腫;精巣のがん、例えば、精上皮腫、奇形腫様、胎生期がん、奇形がん、絨毛がん、肉腫、間質細胞がん、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、及び脂肪腫を含む泌尿生殖器がん。
7)例えば、ヘパトーム、例えば、肝細胞がん;絨毛がん;肝芽腫;血管肉腫;肝細胞腺腫;及び血管腫を含む肝臓がん。
8)例えば、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨筋線維腫、類骨骨腫、及び巨細胞腫を含む骨がん。
9)例えば、子宮のがん、例えば、子宮内膜がん;子宮頸部のがん、例えば、子宮頸がん及び腫瘍前(pre tumor)子宮頸部異形成;卵巣のがん、例えば、漿液性嚢胞腺がん、粘液性嚢胞腺がん、未分類がん腫、顆粒膜莢膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、及び悪性奇形腫を含む卵巣がん;外陰のがん、例えば、扁平上皮がん、上皮内がん、腺がん、線維肉腫、及び黒色腫;膣のがん、例えば、明細胞がん、扁平上皮がん、ブドウ状肉腫、及び胎児性横紋筋肉腫;並びに卵管のがん、例えば、がん腫を含む婦人科がん。
10)例えば、血液のがん、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫及び骨髄異形成症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)、並びにワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む血液がん。
11)例えば、悪性黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、カポジ肉腫、母斑異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、及び乾癬を含む皮膚がん。
12)例えば、神経芽細胞腫を含む副腎がん。
13)例えば、外分泌膵臓がん、例えば、腺がん(M8140/3)、腺扁平上皮がん、印環細胞がん、肝様がん、膠様がん、未分化がん腫、及び破骨細胞様巨細胞を伴う未分化がん腫瘍;並びに膵外分泌腫瘍を含む膵臓がん。
【0096】
がんは、転移性であってもなくてもよい固形腫瘍であり得る。また、白血病のように、びまん性組織としてがんが存在してもよい。したがって、用語「腫瘍細胞」は、本明細書で提供されるとき、上で同定された疾病のいずれか1つに罹患している細胞を含む。
【0097】
幾つかの実施態様では、がんは、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝細胞がん腫、非小細胞肺がん、及び消化管間質腫瘍を含み得る。
【0098】
また、本開示又は本明細書に記載されるその実施態様のいずれかに記載される3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの結晶性塩及び多形は、新生児における血管腫症、二次性進行型多発性硬化症、慢性進行型骨髄変性疾患、神経線維腫症、節神経腫症、ケロイド形成、骨のパジェット病、乳房線維嚢胞病、子宮筋腫、ペイロニー病、デュピュイトラン病、再狭窄、及び肝硬変等の非がん細胞増殖性疾病を処置するために使用することもできる。
【0099】
薬物の組み合わせがいずれかの薬物単独よりも安全又はより有効である場合、本明細書に記載される化合物(すなわち、本開示又はその実施態様のいずれかに記載される3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの結晶性塩及び多形)を、本明細書に記載される化合物又は他の薬物が有用性を有し得る疾患又は病態の治療、予防、管理、寛解、又はリスク低減において1つ以上の他の薬物と併用してもよい。このような他の薬物は、本明細書に記載される化合物と同時に又は逐次、該薬物について一般的に使用される経路及び量で投与してもよい。本明細書に記載される化合物を1つ以上の他の薬物と同時に使用するとき、このような他の薬物及び本明細書に記載される化合物を含有する単位剤形の医薬組成物が想定される。しかし、併用療法は、本明細書に記載される化合物及び1つ以上の他の薬物を異なる重複するスケジュールで投与する療法を含んでいてもよい。また、1つ以上の他の活性成分と併用するとき、本明細書に記載される化合物及び他の活性成分を、それぞれを単独で使用するときよりも低い用量で使用してもよいことも企図される。したがって、本明細書に記載される化合物の医薬組成物は、本明細書に記載される化合物に加えて、1つ以上の他の活性成分を含有するものを含む。上記組み合わせは、本明細書に記載される化合物と1つの他の活性化合物との組み合わせだけではなく、2つ以上の他の活性化合物との組み合わせも含む。
【0100】
同様に、本明細書に記載される化合物は、本明細書に記載される化合物が有用な疾患又は病態の予防、治療、管理、寛解、又はリスク低減において使用される他の薬物と併用してもよい。このような他の薬物は、本明細書に記載される化合物と同時に又は逐次、該薬物について一般的に使用される経路及び量で投与してもよい。本明細書に記載される化合物を1つ以上の他の薬物と同時に使用するとき、本明細書に記載される化合物に加えてこのような他の薬物を含有する医薬組成物が想定される。したがって、医薬組成物は、本明細書に記載される化合物、すなわち、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの結晶性塩及び多形、又はその実施態様のいずれかに加えて、1つ以上の他の活性成分を含有し得る。
【0101】
本明細書に記載される化合物の化合物の、第2の活性成分に対する重量比は変動し得、そして、各成分の有効用量に依存する。一般的に、それぞれの有効用量が使用される。したがって、例えば、本明細書に記載される化合物を別の剤と組み合わせるとき、本明細書に記載される化合物の他の剤に対する重量比は、一般的に、約200:1〜約1:200を含む約1000:1〜約1:1000の範囲である。また、本明細書に記載される化合物と他の活性成分との組み合わせは、一般的に、前述の範囲内であるが、いずれの場合も、各活性成分の有効用量を使用すべきである。このような組み合わせでは、本明細書に記載される化合物及び他の活性成分は、別々に投与しても同時に投与してもよい。更に、1つの要素の投与は、他の剤の投与の前であっても、同時であっても、後であってもよい。
【0102】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの結晶性塩及び多形、又は本明細書に記載されるこれらの実施態様のいずれかは、更に、例えば、化学療法、放射線照射、又は手術によりがんを処置する他の方法と併用してもよい。該化合物は、1つ以上の抗がん薬、例えば、化学療法薬、アバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボルテゾミブ、静注用ブスルファン、経口用ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、クエン酸フェンタニル、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、二トシル酸ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロナート、パニツムマブ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、マレイン酸スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロナートと組み合わせて投与してもよい。
【0103】
医薬組成物
本発明の別の態様は、本発明に係る塩又はその同質異像と、1つ又は幾つかの薬学的に許容し得る担体、補助剤、溶媒、及び/又は賦形剤、例えば、本発明の塩又はその同質異像と共に投与することができるものとを含有する医薬組成物に関する。「薬学的に許容し得る」とは、担体、補助剤、溶媒、又は賦形剤が、本明細書に記載される塩又はその同質異像の薬理学的活性を阻害せず、そして、医薬組成物において使用される量で非毒性であることを意味する。
【0104】
医薬組成物は、特定の剤形に好適である、溶媒、希釈剤、分散液、懸濁液、界面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、結合剤、滑沢剤等を含み得る薬学的に許容し得る担体と共に、本明細書に記載される塩を含有する。薬学的に許容し得る担体として機能し得る物質は、単糖及びオリゴ糖、並びにこれらの誘導体;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、坐剤用のカカオバター及びワックス;植物油、例えば、落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及びダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;複合エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;アガー;緩衝物質、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;非発熱性水;等張溶液;リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液を含むが、これらに限定されるわけではない。また、医薬組成物は、他の非毒性適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、分離液、成膜剤、甘味剤、風味剤、着香剤、保存剤、及び抗酸化剤を含んでいてもよい。
【0105】
また、本明細書に記載される組成物は、剤形、すなわち、処置的に有効な投与量を体内に導入する特定の方法、例えば、経口、局所、肺内(例えば、吸入スプレーとして)、静脈内、鼻腔内、皮下、筋肉内、及び注入の投与による適切な投与量の導入に最適化された医薬組成物も含む。
【0106】
本発明の剤形は、リポソームを使用する方法、マイクロカプセル化の方法、薬物ナノ形態を得る方法、又は薬剤学において公知である他の方法によって得られる医薬組成物を含有し得る。
【0107】
例えば錠剤の形態の組成物を得るために、活性物質を1つ又は幾つかの医薬賦形剤、例えば、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、アラビアゴム、マンニトール、微結晶性セルロース、ヒプロメロース、又は類似の化合物と混合する。
【0108】
錠剤をスクロース、セルロース誘導体、又はコーティングを作製するのに好適な他の物質でコーティングしてもよい。錠剤は、様々な方法、例えば、直接圧縮、乾式若しくは湿式の造粒、又は熱融合によって得ることができる。
【0109】
ゼラチンカプセルの形態の医薬組成物は、活性物質を溶媒と混合し、そして、得られた混合物を軟カプセル又は固体カプセルに充填することによって得ることができる。
【0110】
非経口投与の場合、薬理学的に適合性の剤、例えば、プロピレングリコール又はブチレングリコールを含有する、注射用の水性懸濁液、等張生理食塩水、又は滅菌溶液を使用してもよい。
【0111】
医薬組成物の例
本発明に記載される物質は、以下の製剤としてヒト又は動物における疾患を予防及び/又は治療するために使用することができる(「物質」は、活性成分を意味する):
【0112】
錠剤I...................mg/錠
物質.....................50
ラクトースPh.Eur...........223.75
クロスカルメロースナトリウム........6.0
コーンスターチ(5%w/v ペースト)......15
ポリビニルピロリドン...........2.25
ステアリン酸マグネシウム..........3.0
【0113】
錠剤II....................mg/錠
物質.....................200
ラクトースPh.Eur............182.75
クロスカルメロースナトリウム........12.0
コーンスターチ(5%w/v ペースト).....2.25
ステアリン酸マグネシウム...........3.0
【0114】
カプセル.................mg/カプセル
物質......................10
ラクトースPh.Eur.............488.5
マグネシア..................1.5
【0115】
エアゾールI...................mg/mL
物質.......................10
トリオレイン酸ソルビタン...........13.5
トリクロロフルオロメタン..........910.0
ジクロロジフルオロメタン..........490.0
【0116】
軟膏........................mL
物質......................40mg
エタノール..................300μL
水......................300μL
1−ドデシルアザシクロヘプタノン........50μL
ポリエチレングリコール.............1mL以下
【0117】
これら組成物は、標準的な製薬手順に従って調製することができる。錠剤(I)〜(II)は、例えば、酢酸フタル酸セルロースを用いて腸溶性コートで被覆してもよい。エアゾール組成物(I)は、標準的なディスペンサーと組み合わせて使用してもよい。モノオレイン酸ソルビタン、ポリオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80、オレイン酸ポリグリセロール、又はオレイン酸を、トリオレイン酸ソルビタン及びダイズレシチンの代わりに懸濁化剤として使用することができる。
【実施例】
【0118】
3−(1,2,4−トリアゾール[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド塩形態の研究
以下の特徴:結晶性、水への高い溶解度(10g/L超)、及び一定組成を有する1つ以上の塩形態を同定することを目的に、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの様々な塩形態を合成した。更に、この試験は、その生産が容易にスケーリング可能であり、そして、低毒性有機溶媒中で実施することができる塩形態を同定することを目的としていた。
【0119】
極性非毒性(クラス2及び3)有機溶媒中で様々な3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩形態を得た。薬理学的許容可能性及び酸強度(pKa5.0以下)に基づいて対イオンを選択した。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドがpKa 約6.4の塩基であるという事実に基づいて、最小酸強度を選択した。
【0120】
最初の段階において、選択された有機溶媒への溶解度について最初の塩基を試験した。この試験で使用した最大の選択された溶媒の容積は、塩基1mg当たり1.25mLであった。様々な有機溶媒への最初の塩基の溶解度を試験した結果を表1に示す。10mg/mL以下で塩基が可溶性であった低毒性(クラス3)、低沸点(Tboiling<100℃)、極性の溶媒を、更なる試験のために選択した。
【0121】
第2の段階では、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩基100mg及び様々な酸から塩を得ることを試みた。この研究段階においては、試験サンプルが溶媒に完全に溶解し、そして、酸を添加した後に沈殿物が形成されるか、又は酸を添加した後に系が均質であり、該系を室温に冷却した後に沈殿物が形成される、様々な溶媒/酸の対を選択した。ほとんどの場合、酸を添加するか又は溶液を冷却した直後に3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩が生じた(図1を参照)。溶液を冷却した後に沈殿物が形成されなかった場合、メチルtert−ブチルエーテルを該塩溶液に添加して結晶化プロセスを開始させた(図2を参照)。
【0122】
【表1】
【0123】
得られた全てのサンプルの結晶性を、X線粉末回折法を使用して試験した(結晶性構造を調べるために)。X’Celerator検出器を備えるCubiX-Pro XRD X線粉末回折計(アノード電圧45kV、電流40mA)を使用して、温度25℃(±5℃)及び相対空気湿度約70%において回折パターンを得た。サーベイステップ 0.02° 2θ、角度範囲3〜45° 2θ。得られた回折パターンを、X’Pert HighScore Plusソフトウェアパッケージを使用して詳細に試験した。
【0124】
X線粉末回折法を使用するサンプルの結晶性の試験は、試験したサンプルHAL-G-194-1、HAL-G-196-1、HAL-G-196-2、HAL-G-196-4、HAL-G-196-5、HAL-G-196-6、HAL-G-196-7、HAL-G-196-8、HAL-G-196-9、HAL-G-196-13、HAL-G-196-16、HAL-G-196-17、HAL-G-196-25、HAL-G-196-28、HAL-G-196-29、HAL-G-196-30、HAL-G-196-3、HAL-G-196-19、HAL-G-196-20、HAL-G-196-21、HAL-G-196-23、HAL-G-196-24、HAL-G-196-26、HAL-G-196-35が、個別の結晶相又は相混合物を表すことを示した(図1及び2を参照)。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を使用して、このようなサンプルの溶解度を試験した(クロマトグラフは、Phenomenex Lunaカラム、5μM、4.6×250mmを備えるAgilent 1100シリーズの装置を使用して得た。移動相(10mM KH2PO4pH=3):アセトニトリルの体積比=60:40。流速は、1.0mL/分である。検出は、254nmで実施した。ランタイムは、16分間である)。また、以下の方法を使用してサンプルを試験した:偏光顕微鏡法(Leica DMRB偏光顕微鏡、解像度1600×1200)(結晶性を確認するため)、イオンクロマトグラフィー(アニオン及びカチオンの化学量論的比率を確認するため)、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)(組成を確認し、そして、サンプルの温度安定性を試験するため);1H NMR(500 MHz Bruker AVANCE 500、13MHz、溶媒DMSO-d6)(構造を確認し、純度及び有機溶媒の含量を評価するため);重量吸湿(吸湿性を評価するため)。DSCは、Mettler 822e DSC装置を使用して実施した。標準物質の相変化に基づいて、ISO 11357-1規格に準拠して測定系を較正した(C6H12;Hg;安息香酸;Ga;KNO3;In;Sn;Bi;CsCl;純度グレード99.99%)。温度較正の調整誤差(Inに基づいて測定)は、0.1°である。加熱速度10°/分、温度範囲30〜300℃の人工空気流中、標準アルミニウムセル内でサンプルを試験した。TG測定は、Mettler 851e SDTA/TGA TG分析器を使用して行った。標準物質の融点(Ag;Al;Bi;In;Sn;純度グレード99.99%)を使用して装置を較正した。計量誤差は、NMT 0.1%である(CaC2O4・2H2O標準を使用して決定)。加熱速度10°/分、温度範囲30〜150℃の人工空気流中、標準的な開放系のアルミニウム容器内で試験を実施した。脱水を避けるために、測定前に物質を機械的処理には曝さなかった。
【0125】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基(同質異像I)の物理的及び化学的な性質の試験
X線粉末回折データ(図3を参照)に基づいて、HAL-G-194-1遊離塩基サンプルは個別の結晶相であり、これは偏光顕微鏡法によっても確認された(図4を参照)。1H NMR分光法を使用して化合物の構造を確認した(図5を参照)。脱イオン水への遊離塩基の見掛けの溶解度は1mg/mL未満であった(表2を参照)。
【0126】
【表2】
【0127】
遊離塩基の脱イオン水への平衡溶解度は、HPLC分析に基づいておよそ2.3×10−4mg/mLであった(表3を参照)。
【0128】
【表3】
【0129】
DSC法及びTG法を使用したサンプルの試験結果を表6及び7に示す。遊離塩基サンプルのDSC分析は、最大198℃まで加熱したときにサンプルは変化せず、遊離塩基は211℃で融解することを示した(図6を参照)。TG分析中、サンプルの重量損失は同定されなかった(図7を参照)。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基の吸湿性の試験は、相対空気湿度90%において、サンプルが3質量パーセント未満の水を吸収したことを示した(図8を参照)。60℃の温度で7日間サンプルを維持したとき、不純物の含量は一定のままである(表4を参照)。
【0130】
【表4】
【0131】
6日間溶媒(アセトン)に懸濁させた3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基の同質異像の安定性の試験は、HAL-G-194-1サンプルの結晶構造が変化することを示した(図3、表5を参照)。1H NMR分光法を使用して、入手したサンプルの構造及び純度を確認した(図5を参照)。
【0132】
【表5】
【0133】
塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(同質異像I)の物理的及び化学的な性質の試験
塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-2)を、テトラヒドロフラン(THF)中で得た。X線粉末回折(図9を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。同じ結晶相が、エタノール中で調製された塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-1サンプル)で明らかになった。化合物の構造を1H NMR分光法で確認した(図10を参照)。HAL-G-196-1及びHAL-G-196-2のサンプルの1H NMRスペクトルが残留溶媒のシグナルを含むことに留意すべきである。イオンクロマトグラフィーを使用してアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、一塩酸塩の形成を確認した。DSC分析(図11を参照)の結果、2つの吸熱転移(第1の吸熱転移(T=139℃)は溶媒喪失に対応し、そして、第2の吸熱転移(T=180℃)はサンプルの融解に対応する)が同定された。TG分析中、3.6%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく、残留溶媒量の減少によって引き起こされた(図12を参照)。サンプルの吸湿性の試験は、HAL-G-196-2サンプルが恐らく二水和物であることを示したが、その理由は、該サンプルが、体積が二水和物に対応した水を脱離及び吸収したためである(図13を参照)。更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0134】
塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(sale)(同質異像II)の物理的及び化学的な性質の試験
塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-3)を、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を添加した後のアセトン媒体から得た。X線粉末回折(図9を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。これは、HAL-G-196-1及びHAL-G-196-2の結晶相とは異なっていた。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図10を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用してアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、一塩酸塩の形成を確認した。DSC分析(図11を参照)の結果、サンプルの融解に対応する1つの吸熱転移(T=190℃)が同定された。TG分析中、サンプルの重量減少は観察されなかった。脱イオン水へのHAL-G-196-3サンプルの見掛けの溶解度は約3mg/mLの量となった(表2を参照)。塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(同質異像II)の脱イオン水への平衡溶解度は、HPLC分析によって約37.1mg/mLと測定された(表3を参照)。サンプルの吸湿性の試験は、HAL-G-196-3サンプルが相対空気湿度90%において8質量パーセント未満の水を吸収することを示した(図13を参照)。温度60℃で7日間サンプルを維持したとき、不純物の含量は一定のままであった(表4を参照)。6日間溶媒(アセトン)に懸濁させた際のHAL-G-196-3サンプルの安定性の試験は、HAL-G-196-3サンプルの結晶構造が変化しないままであったことを示した(表5を参照)。したがって、塩酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のこの形態は、塩形態としての更なる開発のための要件を満たす物理的及び化学的な性質を有していた。
【0135】
硫酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の物理的及び化学的な性質の試験
硫酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-6)を、アセトン媒体中で得た。X線粉末回折(図14を参照)に基づいて、サンプルは、結晶相の組み合わせを含むことが見出されたが、その理由は、ピークの拡散性及び1つの単位格子による相反射を使用して回折パターンを確立及び説明できないことが、幾つかの結晶相の存在、そして、恐らく、試験サンプルにおける非晶質相の顕著な共有を示していたためである。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図15を参照)。HAL-G-196-6サンプルの1H NMRスペクトルが残留溶媒のシグナルを含むことに留意すべきである。イオンクロマトグラフィーを使用してアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、これによって一硫酸塩の形成を確認した。DSC分析(図16を参照)の結果、1つの吸熱転移が同定され、これは恐らく溶媒減少に対応していた。物質の融解に対応する過剰の吸熱転移が存在しないことは、試験サンプル中にかなりの比率の非晶質相が存在することを示していた。硫酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は約1mg/mLであった(表2を参照)。この塩の溶解度が低いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0136】
臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(同質異像I)の物理的及び化学的な性質の試験
臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-7)を、エタノール媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折(図17を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図18を参照)。HAL-G-196-7サンプルの1H NMRスペクトルは、残留溶媒のシグナルを含む。イオンクロマトグラフィーを使用してアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、これによって一臭化水素酸塩の形成を確認した。DSC分析(図19を参照)の結果、2つの吸熱転移(第1の吸熱転移(T=129℃)は溶媒喪失に対応し、一方、第2の吸熱転移(T=190℃)はサンプルの融解に対応する)が同定された。TG分析中、1.7%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく、残留溶媒量の減少によって引き起こされた(図20を参照)。臭化水素酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は約5mg/mLであった(表2を参照)。サンプルの吸湿性の試験は、相対空気湿度90%においてサンプルが10質量パーセント超の水を吸収し、そして、空気中で解凍されたことを示した。この塩形態の吸湿性が高いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0137】
臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(同質異像II)の物理的及び化学的な性質の試験
臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-8)を、テトラヒドロフラン(THF)媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折(図17を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩をアセトンから結晶化させたときに同じ結晶相が得られた(HAL-G-196-9サンプル)。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図18を参照)。HAL-G-196-8及びHAL-G-196-9の両方の1H NMRスペクトルは残留溶媒のシグナルを含む。イオンクロマトグラフィーを使用してサンプルHAL-G-196-8及びHAL-G-196-9におけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、一臭化水素酸塩の形成を確認した。DSC分析(図19を参照)の結果、1つの吸熱転移(T=224℃)が同定され、これはサンプルの融解に対応していた。TG分析によって、サンプルの重量減少は明らかにならなかった。臭化水素と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は1mg/mL未満であった(表2を参照)。この塩の溶解度が低いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0138】
リン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の物理的及び化学的な性質の試験
リン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-13)を、エタノール媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折(図21を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図22を参照)。HAL-G-196-13サンプルの1H NMRスペクトルは、残留溶媒のシグナルを含む。イオンクロマトグラフィーを使用して決定したアニオン及びカチオンの化学量論的比率により、ジヒドロリン酸塩の形成を確認した。DSC分析(図23を参照)の結果、2つの吸熱転移(溶媒減少に対応する第1の吸熱転移(T=131℃)及びサンプルの融解に対応する第2の吸熱転移(T=235℃))が同定された。TG分析中、3%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく、残留溶媒量の減少によって引き起こされた(図24を参照)。HAL-G-196-13サンプルは、恐らく結晶構造中にエタノールを含む溶媒和物であると同定され、これは、X線粉末回折データによって確認された(図21を参照)。この塩の結晶構造における溶媒含量が高いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0139】
酒石酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の物理的及び化学的な性質の試験
酒石酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-16)を、エタノール媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折(図25を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。酒石酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアムとの塩をTHF媒体から結晶化させたときに同じ結晶相が得られた(HAL-G-196-17サンプル)。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図26を参照)。HAL-G-196-8及びHAL-G-196-9サンプルの1H NMRスペクトルは、残留溶媒のシグナルを含んでいた。イオンクロマトグラフィーを使用して決定したHAL-G-196-16及びHAL-G-196-17サンプルにおけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率により、各サンプルについて一酒石酸塩の形成を確認した。DSC分析(図27を参照)の結果、溶媒減少及びサンプルの融解に対応する1つの吸熱転移(T=161℃)が同定された。HAL-G-196-16サンプルのTG分析中、温度範囲30〜100℃で0.8%の重量減少、次いで、温度範囲130〜170℃で0.7%の更なる重量減少が観察され、これは、恐らくサンプルの部分的分解に起因していた(図28を参照)。HAL-G-196-16サンプルは、恐らく結晶構造中にエタノールを含む溶媒和物であると同定され、これは、X線粉末回折データによって確認された(図25を参照)。この塩の結晶構造における溶媒含量が高いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0140】
メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の物理的及び化学的な性質の試験
メタンスルホン酸塩と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-21)を、アセトン媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折データ(図29を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定され、これは偏光顕微鏡法によっても確認された(図30を参照)。メタンスルホン酸塩と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩をTHF媒体(HAL-G-196-20サンプル)及びエタノール媒体(HAL-G-196-19サンプル)から結晶化させたときに同じ結晶相が得られた。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図31を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用してHAL-G-196-19、HAL-G-196-20、及びHAL-G-196-21のサンプルにおけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、各サンプルについて一メシル酸塩の形成を確認した。これらサンプルのDSC分析(図32を参照)の結果、サンプルの融解に対応する1つの吸熱転移(T=220℃)が同定された。TG分析中、サンプルの重量減少は観察されなかった。メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプルの吸湿性の試験は、相対空気湿度90%においてサンプルが2質量パーセント未満の水を吸収したことを示した。メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は46mg/mL超であった(表2を参照)。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の脱イオン水への平衡溶解度は、HPLC分析によって得られたデータに従って100mg/mL超であった(表3を参照)。温度60℃で7日間サンプルを維持したとき、不純物の含量は一定のままであった(表4を参照)。6日間溶媒(アセトン)で処理した3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の安定性の試験は、サンプルの結晶構造が変化しないままであったことを示した(表5を参照)。したがって、メタンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩は、塩形態としての更なる開発のための要件を満たす物理的及び化学的な性質を有していた。
【0141】
4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の物理的及び化学的な性質の試験
4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-24)を、アセトン媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折データ(図33を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定され、これは偏光顕微鏡法によっても確認された(図34を参照)。4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩をTHF媒体からの結晶化を介して得たときに同じ結晶相が得られた(HAL-G-196-23サンプル)。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図35を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用してHAL-G-196-23及びHAL-G-196-24のサンプルにおけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率を決定し、各サンプルについて一トシル酸塩の形成を確認した。HAL-G-196-24サンプルのDSC分析(図36を参照)の結果、サンプルの融解に対応する1つの吸熱転移(T=184℃)が同定された。TG分析中、サンプルの重量減少は観察されなかった。サンプルの吸湿性の試験は、相対空気湿度90%においてHAL-G-196-24サンプルが4質量パーセント未満の水を吸収したことを示した(図37を参照)。4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は1mg/mL未満であった(表2を参照)。4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への平衡溶解度は、HPLC分析によって得られたデータに従って2.2mg/mLであった(表3を参照)。温度60℃で7日間サンプルを維持したとき、不純物の含量は一定のままであった(表4を参照)。6日間溶媒(アセトン)で処理した4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の安定性の試験は、サンプルの結晶構造が変化しないままであったことを示した(表5を参照)。したがって、4−メチルベンゼンスルホン酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩は、塩形態としての更なる開発のための要件を満たす物理的及び化学的な性質を有していた。
【0142】
リンゴ酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの物理的及び化学的な性質の試験
リンゴ酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-25)を、エタノール媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折(図38を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。リンゴ酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の同じ結晶相が、THF媒体からの結晶化を介して得られた(HAL-G-196-26サンプル)。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図39を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用して決定したサンプルHAL-G-196-19、HAL-G-196-25、及びHAL-G-196-26におけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率により、各サンプルについて一リンゴ酸塩の形成を確認した。HAL-G-196-25サンプルの1H NMRスペクトルは、残留溶媒のシグナルを含む。DSC分析(図40を参照)の結果、2つの吸熱転移(第1の吸熱転移(T=128℃)は溶媒喪失及びサンプルの融解に対応し、第2の吸熱転移(T=205℃)はその後のサンプルの分解に対応する)が同定された。TG分析中、温度範囲80〜130℃で2%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく塩の融解中の残留溶媒量の減少に起因していた(図41を参照)。その後の重量減少は、恐らく、融解したサンプルの分解に関連している。実施した試験に基づいて、HAL-G-196-25サンプルが溶媒和物であることが理解された。この塩の結晶構造における溶媒含量が高いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0143】
フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(一フマル酸塩)の物理的及び化学的な性質の試験
フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-28)を、エタノール媒体から得た。X線粉末回折(図42を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定された。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図43を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用して決定したHAL-G-196-28サンプルにおけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率により、一フマル酸塩の形成を確認した。HAL-G-196-28サンプルの1H NMRスペクトルは、残留溶媒のシグナルを含む。DSC分析(図44を参照)の結果、溶媒減少及び塩の融解に対応する1つの吸熱転移(T=148℃)が同定され、これは、恐らく部分的なサンプルの分解に付随していた。TG分析中、温度範囲95〜170℃で3.5%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく塩の融解中の残留溶媒量の減少によって引き起こされた(図45を参照)。実施した試験に基づいて、HAL-G-196-28サンプルが溶媒和物であることが理解された。この塩の結晶構造における溶媒含量が高いことから、更なる開発を実現不能なものと認識した。
【0144】
フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩(ヘミフマル酸塩)の物理的及び化学的な性質の試験
フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプル(HAL-G-196-29)を、THF媒体からの結晶化を介して得た。X線粉末回折データ(図42を参照)に基づいて、塩は個別の結晶相であると同定され、これは偏光顕微鏡法によっても確認された(図46を参照)。アセトン媒体からの結晶化を介して得られたフマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプルにおいて同じ結晶相が同定された(HAL-G-196-30サンプル)。化合物の構造を1H NMR分光法によって確認した(図43を参照)。イオンクロマトグラフィーを使用して決定したHAL-G-196-29及びHAL-G-196-30サンプルにおけるアニオン及びカチオンの化学量論的比率により、ヘミフマル酸塩の形成を確認した。HAL-G-196-29サンプルのDSC分析(図44を参照)の結果、溶媒減少及びサンプルの融解に対応する1つの吸熱転移(T=244℃)が同定された。TG分析中、1%のサンプル重量減少が観察され、これは、恐らく残留溶媒量の減少によって引き起こされた(図45を参照)。フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩のサンプルの吸湿性の試験は、相対空気湿度90%においてサンプルが4質量パーセント未満の水を吸収したことを示した。フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への見掛けの溶解度は1mg/mL未満であった(表2を参照)。フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の脱イオン水への平衡溶解度は、HPLC分析によって得られたデータに従って7.4×10−3mg/mLであった(表3を参照)。温度60℃で7日間サンプルを維持したとき、不純物の含量は一定のままであった(表4を参照)。6日間溶媒(アセトン)で処理したときのフマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとの塩の安定性の試験は、サンプルの結晶構造が変化しないままであったことを示した(表5を参照)。したがって、フマル酸と3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドとのヘミフマル酸塩は、塩形態として更なる開発のための要件を満たす物理的及び化学的な性質を有していた。
【0145】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩形態同定の結果
要約すると、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの塩形態を同定するための研究の過程で、12個の対イオンを含み4種の異なる溶媒を用いて得られた、様々な塩形態の50を超えるサンプルを試験した。実施した試験は、4種の酸(塩酸、メタンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、及びフマル酸)の塩が、好ましい物理的及び化学的な性質、すなわち、結晶性、遊離塩基と比べて高い水への溶解度、並びに調製時の高い純度、及び温度安定性を有することを示した。更に、これら塩は、低毒性有機溶媒及び容易にスケーリング可能な方法を使用して製造され得、そして、薬理学的に許容し得るアニオンを含み得る。
【0146】
しかし、同定された塩は、驚くべきことに、水への溶解度の観点で顕著な差を示した:例えば、フマル酸塩の溶解度(7.4×10−3mg/mL)は、遊離塩基の溶解度(2.3×10−4mg/mL)と同等であったが;一方、4−メチルベンゼンスルホン酸塩(2.4mg/mL)、塩酸塩(37.1mg/mL)、及びメタンスルホン酸塩(100mg/mL超)の溶解度は、遊離塩基の形態の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの溶解度よりも10,000倍高い溶解度を有していた。しかし、メチルtert−ブチルエーテルを添加することも、溶液を室温未満に更に冷却することもなく、アセトン又はエタノールからの結晶化を介して得られ得るのはメタンスルホン酸塩のみである。
【0147】
したがって、容易にスケーリング可能な方法を使用して低毒性有機溶媒中で得られ得、そして、結晶性を有する薬理学的に許容し得るアニオンを含有し、そして、水への溶解度が高い3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの好ましい結晶性塩形態を、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩として同定した。
【0148】
メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの同質異像の入手及び説明
【0149】
実施例:
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩を更に研究する目的のために、その調製方法を開発した。方法の開発中、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩が2つの同質異像で存在し得ることを見出した。本発明者らが明らかにしたこれらの相の形成における差は、いくつかの場合、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩をアセトン中で調製したときに沈殿物が自然には形成されなかったと言うことにより要約することができる。より濃縮された溶液から塩が結晶化した際、相の組み合わせ又は任意の個々の相が形成され得ることが見出された。X線粉末回折法を両方の同質異像に適用して、構造の結晶性を調べた。ニッケルフィルタ(CuKα1線、波長=1.5406Å)及びposition-sensitive detector LynxEye(サーベイステップ0.02° 2θ、角度範囲4〜65° 2θ)を備えつけたBragg-BrentanoジオメトリのX線粉末回折計Bruker D8 Advance(アノード電圧40kV、電流40mA)を使用して、25℃(±5℃)及び相対空気湿度 約70%において、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのサンプルのメタンスルホン酸塩のサンプルの回折パターンを得た。得られた回折パターンを、Bruker TOPAS5ソフトウェアパッケージを使用して詳細に試験した。
【0150】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩(同質異像I)の合成
アセトン(1,050mL、1gあたり20mLの量で)中の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(53.2g、0.10mol)の懸濁液を沸騰するまで加熱し、そして、激しく撹拌しながら10分間沸騰させた。次いで、混合物の加熱及び撹拌を続けながら、(添加直前に)新たに調製したエタノール200mL中のメタンスルホン酸(10.1g、0.105mol)の溶液(得られる溶液の濃度が0.5mol/Lになるようにエタノールの量を計算する)を一度に添加した。得られた反応混合物を15分間沸騰させ、次いで、速度約10℃/時で20℃まで冷却し、次いで、温度+10℃で12時間放置して、沈殿物を結晶化させ形成させた。沈殿物を濾過によって回収し、アセトン(3×150mL)で洗浄し、そして、温度60℃のキャビネット内で恒量になるまで乾燥した。収率:85〜90%。
【0151】
NMR 1H (500 MHz, DMSO-d6)スペクトル:2.36-2.45 (m, 1H, Hpiperazine), 2.41 (c, 3H, Me), 2.67 (c, 3H, Me), 2.86 (c, 3H, Me), 2.94 (d, J=11.2 Hz, 1H, Hpiperazine), 3.08 (t, J=10.7 Hz, 1H, Hpiperazine), 2.94 (d, J=10.7 Hz, 1H, Hpiperazine), 4.06 (c, 2H, CH2(benzyl)), 7.24 (t, J=6.8 Hz, 1H, H(arom.)), 7.53-7.63 (m, 2H, H(arom.)), 7.73 (d, J=8.6 Hz, 1H, H(arom.)), 7.96 (d, J=9.2 Hz, 1H, H(arom.)), 8.03 (dd, J1=8.6 Hz, J2=1.6 Hz, 1H, H(arom.)), 8.12 (d, J=8.6 Hz, 1H, H(arom.)), 8.25 (c, 1H, H(arom.)), 8.40 (c, 1H, H(arom.)), 8.65 (d, J=6.8 1H, H(arom.)), 10.60 (c, 1H, NHamide).
質量スペクトル、m/z:533.2263
【0152】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩(同質異像I)のNMR 1H及び13Cスペクトルを図47に示す。
【0153】
メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の合成
アセトン350mL中の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(17.73g、0.033mol)の懸濁液を沸騰するまで加熱し、そして、激しく撹拌しながら10分間沸騰させた。次いで、混合物の加熱及び撹拌を続けながら、(添加直前に)新たに調製したエタノール70mL中のメタンスルホン酸(3.36g、0.035mol)の溶液を添加した。反応混合物を15分間沸騰させ、次いで、20℃に冷却したところ;沈殿物は形成されなかった。溶液を低圧で初期容量の半分まで蒸発させ、そして、温度20〜25℃で24時間放置した。形成された沈殿物を濾過によって回収し、アセトン(3×150mL)で洗浄し、そして、温度45℃のキャビネット内で恒量になるまで乾燥した。収率:85〜90%。
【0154】
NMR 1H (500 MHz, DMSO-d6)スペクトル:2.35-2.43 (m, 1H, Hpiperazine), 2.41 (c, 3H, Me), 2.66 (c, 3H, Me), 2.87 (c, 3H, Me), 2.95 (d, J=11.3 Hz, 1H, Hpiperazine), 3.10 (t, J=10.5 Hz, 1H, Hpiperazine), 2.94 (d, J=10.5 Hz, 1H, Hpiperazine), 4.05 (c, 2H, CH2(benzyl)), 7.26 (t, J=6.9 Hz, 1H, H(arom.)), 7.52-7.61 (m, 2H, H(arom.)), 7.73 (d, J=8.6 Hz, 1H, H(arom.)), 7.96 (д, J=9.1 Hz, 1H, H(arom.)), 8.03 (dd, J1=8.6 Hz, J2=1.6 Hz, 1H, H(arom.)), 8.12 (d, J=8.6 Hz, 1H, H(arom.)), 8.27 (c, 1H, H(arom.)), 8.41 (c, 1H, H(arom.)), 8.65 (d, J=6.9 1H, H(arom.)), 10.62 (c, 1H, NHamide).
質量スペクトル、m/z:533.2268.
【0155】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩(同質異像I)のNMR 1H及び13Cスペクトルを図48に示す。
【0156】
メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の結晶性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)のメタンスルホン酸塩は、以下の単位格子パラメータを有する個別の結晶相であった:a=51.46±0.05Å;b=7.81±0.05Å及びc=7.63±0.05Å、β=108.9±0.1°、V=2898.9±0.5Å。P21/n空間群。独立の部分の体積は、1つの式単位に対応していた(図49aを参照)。サンプルのデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度を表6に示す。メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)の単位格子の独立の部分の概観を図50aに示す。
【0157】
【表6】

【0158】
塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)の結晶性の補助試験
【0159】
サンプルの純度、微結晶のサイズ、試験したサンプルにおける微小応力の存在、及び様々な他の要因が、試験サンプルのデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度に対して著しい影響を生じさせ得ることがよく知られている。デバイ粉末図の種類の特定、特に、特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度の特定のために、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)のサンプルに対して補助試験を実施した。異なるジオメトリのサーベイ(x線透過率及びBragg-Brentanoジオメトリ)を使用して、デバイ粉末図の受領を行った。サンプルのデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度を表7及び8に提示する。
【0160】
【表7】

【0161】
表7に提供されたデータから明らかであるとおり、様々なサーベイジオメトリの使用は、デバイ粉末図におけるピークの位置及び強度に大きな影響を与えない。
【0162】
小さなサイズの微結晶及びサンプルPF114-56-MsOHにおける微小応力の存在は、サンプル番号2とは対照的に、そのX線回折パターンのラインの強力な拡張及びひずみを引き起こす(表8を参照)。更に、サンプル番号3のX線回折パターンは不純物のピークを示し、その体積比(不純物のピークの強度と主な相の強度との間の比に従って評価)は5%になる。
【0163】
【表8】
【0164】
異なるサンプルのX線回折パターンの比較によって、全てのサンプルに特徴的なピークを決定し、そして、ピークの位置及び強度における可能性のあるばらつきを分析することができた(表9を参照)。
【0165】
【表9】
【0166】
X線粉末回折パターンの最も情報価値の高い領域は、2θの低角度領域である。この領域では、反射の位置が著しく異なるが、回折角度の拡大の際にピークの数が増加し、そして、その重複が材料となる。代表的であるとみなすことができる角度領域は、試験した化合物の単位格子パラメータの値に依存し;5〜50A格子パラメータを有する研究された有機化合物については、層間距離範囲3〜30Åを代表的な領域とみなすことができる。このような場合、回折角度範囲は、3〜25° 2θに等しくなる。したがって、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)をキャラクタライズするために、回折角度(2θ)14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、23.2における相対強度20%以上のピークを使用することが可能である。
【0167】
表9に提供されるデータから分かるとおり、回折角度(2θ)14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8における全てのピークは、20%よりも高い相対強度を有する。しかし、このようなピークの強度は、サーベイ方法、サンプルの純度、塩結晶のサイズ、サンプルテクスチャリングの効果、及び様々な他のパラメータに本質的に依存して変動し得る。この理由のため、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)のX線回折パターンにおいて、回折角度(2θ)14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、23.2における幾つかのピークは20%未満の強度を与え得る。したがって、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)をキャラクタライズするために、14.5、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、23.2から選択される回折角度(2θ)における相対強度20%以上の2つ、3つ、又は4つのピークを使用することが可能である。
【0168】
塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)の異なるサンプルのサーベイ過程で得られるX線回折パターンのピークの分析から、回折角度(2θ)18.7におけるピークが、全ての場合において最大相対強度を有するピークであることが明らかである。したがって、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)をキャラクタライズするために、最大相対強度を有する回折角度(2θ)18.7におけるピークを使用することが可能である。最も強力なピークの位置の観点におけるX線回折パターンのキャラクタライズは常に信頼できるわけではないことに留意することが重要であるが、その理由は、サンプルテクスチャリングに応じて、別のピークが最も強力なものであり得、これは、異なるジオメトリを有する機器によるサーベイ中に同質異像IIについて観察された(以下を参照)。
【0169】
上記所見を考慮して、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)をキャラクタライズするために、表9に提示された回折角度(2θ)におけるピークのフルセットを使用することが可能である:7.2、11.9、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.6、25.4、27.1。
【0170】
サンプルテクスチャリングの効果、微結晶のサイズの変化、及び順序は、ピーク強度に強力な影響を有し得る。これに起因して、観察されるピークの数は顕著に少なくなり得る。代表的なサンプリング調査の広く使用されているルールはみられなかった。1995年の米国薬局方は、X線粉末回折パターンのキャラクタライズの要件について言及している。X線回折パターンを説明するためには、10個の最も強度の高いピークを選択する必要があり、そして、その位置は、±0.20° 2θまでの精度で決定されるべきである。それと共に、サンプリングピークの相対強度の偏差は、20%を超えてはならない。ピーク強度が著しく変動し得るという事実に起因して、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)のキャラクタライズには、以下から選択される回折角度(2θ)における5〜10個の最も強度の高いピークを使用することが合理的であると本発明者らは考える:7.2、11.9、12.5、13.4、14.5、16.2、16.9、17.2、17.4、18.7、20.8、21.4、23.2、24.1、24.6、25.4、27.1。
【0171】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の塩メタンスルホン酸の結晶性の試験
【0172】
X線粉末回折を使用して、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩(同質異像II)のサンプルの結晶性を試験した。結果は、サンプルが、以下の単位格子パラメータを有する個別の結晶相であることを示した:a=13.77±0.05Å;b=8.09±0.05Å、及びc=30.83±0.05Å、β=117.8±0.1、V=3036.36±0.5Å、及びP21/c空間群(図49bを参照)。塩サンプルのデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度を表10に示す。メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の単位格子の独立の部分の概観を図50bに示す。
【0173】
【表10】

【0174】
塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の結晶性の補助試験
【0175】
メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)のデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度を特定するために、X線回折分析法によって塩の結晶性の補助試験を実施した。異なるジオメトリのサーベイ(x線透過率及びBragg-Brentanoジオメトリ)を使用して、デバイ粉末図の受領を行った。サンプルのデバイ粉末図における特徴的な視覚的に識別可能なピークの位置及び強度を表11及び12に提示する。
【0176】
【表11】

【0177】
X線回折パターンサンプルの強力なテクスチャリングに起因して、様々なジオメトリの機器における読み出し値は大きく異なる。更に、Bragg-Brentanoジオメトリにおけるサーベイは、ピーク強度を本質的に変化させる。したがって、透過率ジオメトリのサーベイ時には回折角度(2θ)21.2におけるピークが最大相対強度を有するピークであるが、Bragg-Brentanoジオメトリのサーベイ時には、このようなピークの強度は43.7%から最大値までになった。
【0178】
【表12】
【0179】
サンプルA819419におけるデータを得た機器は、0.25° 2θに等しい高い「ゼロ誤差」を有する。X線回折パターンは、ラインの強力な拡張を示すが、拡張に対する機器の寄与は知られていないので、微結晶のサイズを正確に評価することは不可能である。
【0180】
異なるサンプルのX線回折パターンの比較によって、全てのサンプルに特徴的なピークを決定し、そして、ピークの位置及び強度における可能性のあるばらつきを分析することができた(表13を参照)。
11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.6。
【0181】
【表13】
【0182】
同質異像IIの最も強力なピークは、以下の角度値に特徴的である:11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.7。これらピークがX線回折パターンに存在し、そして、その相対強度は10%よりも高い。許容強度の低下は、このような異像がテクスチャリングされやすいという事実によって決定され、したがって、ピークの相対強度の範囲が同質異像Iの場合よりも広い。したがって、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)をキャラクタライズするために、回折角度(2θ)11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.7における相対強度10%以上のピークを使用することが可能である。
【0183】
表13に提供されるデータから分かるとおり、回折角度(2θ)11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.7における全てのピークは、10%よりも高い相対強度を有する。しかし、このようなピークの強度は、サーベイ方法、サンプルの純度、塩結晶のサイズ、サンプルのテクスチャリングの効果、及び様々な他のパラメータに本質的に依存して変動し得る。この理由のため、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)のX線回折パターンにおいて、回折角度(2θ)11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.7における幾つかのピークは10%未満の強度を有し得る。したがって、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)をキャラクタライズするために、11.8;14.6;17.2;17.4;17.6;19.7;21.2;22.0、及び22.7から選択される回折角度(2θ)における相対強度20%以上の3つ、4つ、5つ、又は6つのピークを使用することが可能である。
【0184】
塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)の異なるサンプルのサーベイ過程で得られるX線回折パターンのピークの分析から、サーベイパラメータに依存して、最大相対強度が回折角度(2θ)21.3におけるピーク又は回折角度(2θ)17.6におけるピークに属し得ることが明らかである。したがって、メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)をキャラクタライズするために、17.6又は21.2から選択される回折角度(2θ)における最大相対強度を有するピークを使用することが可能である。
【0185】
上記所見を考慮して、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像II)をキャラクタライズするために、表13に提示される回折角度(2θ)におけるピークのフルセットを使用することが可能である:7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.7、26.1。
【0186】
ピーク強度が著しく変動し得るという事実に起因して、塩メタンスルホン酸及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)のキャラクタライズには、以下から選択される回折角度(2θ)における4〜8個のピークを使用することが合理的であると本発明者らは考える:7.3、11.8、14.6、17.2、17.4、17.6、19.7、21.2、22.0、22.7、26.1。
【0187】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド遊離塩基及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドメタンスルホン酸塩の同質異像の溶解動態の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の同質異像の更なる試験中に、遊離塩基及び2つのメタンスルホン酸塩形態の同質異像の溶解の動態を試験した。米国局方装置1バスケット法(USP40、General Chapter <711> Dissolution)、溶解媒体体積:700mL、温度:37±1℃、パドル攪拌機の回転速度:100rpmを使用して溶解動態試験を実施した。試験サンプルの溶解速度は、6回の繰り返しの平均として計算した。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドメタンスルホン酸塩の同質異像用の溶解媒体として蒸留水を使用し、そして、水500mL中メタンスルホン酸12.2mLの溶液を遊離塩基用の溶解媒体として使用した。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド100mg又は3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドメタンスルホン酸塩118mg(遊離塩基として計算すると100mg)を含有する試験部分を溶解に使用した。試験開始後780分間(13時間)、調製した溶液のpHを測定した。遊離塩基の溶解を試験するために使用した溶液のpHは、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドメタンスルホン酸塩の同質異像の溶解を試験するために使用した溶液のpH(同質異像IについてはpH5.04、そして、同質異像IIについてはpH4.95)に比べてより酸性であった(pH4.02)。
【0188】
溶解動態試験の結果を図51に示す。提示されるデータによれば、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩のサンプル中に含有されていた3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの95%が1分間未満で溶液に移動し、そして、該塩の完全な溶解が4分間未満以内に生じる。対照的に、更に780分間(13時間)の溶解期間にわたって遊離塩基の90%未満しかメタンスルホン酸12.2mLを含有する溶液に溶解しなかった。
【0189】
したがって、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の合成及び結晶構造の決定において実施された試験は、この化合物が少なくとも2つの同質異像で存在し得ることを示した。各同質異像は、容易にスケーリング可能な方法を使用して低毒性有機溶媒中で得ることができ、薬理学的に許容し得るアニオンを含有し、結晶性及び水への高い溶解度を有する。両同質異像におけるカチオンの化学構造は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのカチオンに一致及び対応し、両化合物は、メタンスルホン酸塩であり、そして、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのプロトン化形態及びメシラートアニオンを含有する。両同質異像の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドは、メチル基を保有しているピペラジン環の窒素原子においてプロトン化される。両同質異像は、溶媒分子を含有しない。同質異像の構造の差は、分子の残りと比較して芳香族複素環の共通の位置に主に関連している(図50を参照)。
【0190】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の薬物動態特性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド塩形態の薬物としての適用性を分析するために、その薬物動態特性の試験を実施した。
【0191】
C57BL/6系統のマウスに3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(同質異像I)の遊離塩基を用量50mg/kgで単回投与した後、及びメタンスルホン酸塩を用量59mg/kg(遊離塩基として計算すると50mg/kgと等価)で単回投与した後、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの薬物動態を試験した。試験の結果を、図52並びに表14及び15に示す。
【0192】
【表14】
【0193】
【表15】
【0194】
薬物動態試験からは予想外の結果が導かれ、遊離塩基の投与後の最高の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの動物血漿濃度(Cmax=1,490ng/mL)は、該塩形態の投与後に特定された最高濃度(Cmax=1,099ng/mL)を3分の1超上回っていた。更に、塩形態が遊離塩基よりもはるかに高い溶解速度を有していたという事実にもかかわらず、該塩形態が最高濃度に達するまでの時間(Tmax)は、遊離塩基の2倍であった。塩形態の経口投与後の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの最高血漿濃度が低いにもかかわらず、該塩形態の投与は、より高い物質濃度平均(AUCt/t)を与える。これら結果は、遊離塩基と塩形態との間の溶解度の差の観点から予想外であるが、その理由は、最高(Cmax)及び平均(AUCt/t)の動物血漿濃度は、典型的には、物質を投与するために使用される塩形態の溶解度と相関するが、一方、最高血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)は、典型的には、使用される塩形態の溶解速度と逆相関するためである。
【0195】
したがって、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の薬物動態パラメータの試験は、その薬物動態プロファイルにおいて著しい差が観察されたが、溶解動態の差に基づいて説明することができるようなものではないという予想外の結果をもたらす。薬物動態特性の差は、処置有効性、投与の安全性、及び/又は薬物候補の他の特性を変化させ得る。開発された3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド塩形態の有用性を更に評価するために、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩形態の急性毒性及び有効性の試験を実施した。
【0196】
化合物の急性毒性試験実験における遊離塩基及びメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの安全性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の安全性を試験するために、急性毒性試験を実施した。
【0197】
経口投与経路を使用して2〜3月齢のCD-1系統の雄マウスにおいて3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びそのメタンスルホン酸との塩の急性毒性を試験した。各薬物用量試験につき、6匹の動物の群を使用した。この試験は、同じ動物匹数の対照群を含んでおり、この群には、等価な溶媒用量の0.5% メチルセルロース水溶液を投与した。経過観察期間は、28日間であった。実験用マウスの生存率分析によって、Bliss分析を実施し、そして、試験した薬物の致死用量を決定することができた。急性毒性試験の結果、並びに遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の半致死用量の計算値を表16に示す。
【0198】
【表16】
【0199】
上に示したデータは、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の半致死用量(LD50は、試験群の動物の半数を死亡させる用量である)が、遊離塩基の致死用量の約2倍であったことを示す。試験群の動物の90%を死亡させる用量について、同様のより顕著な効果が観察された(表16を参照)。遊離塩基及び塩形態として3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドを投与したところ、いずれも動物の中毒の類似の徴候:呼吸困難、活力低下、逆毛(tumbled fur)、下痢、腹部膨満、一部の動物では局所脱毛が引き起こされたが、物質をメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの形態で投与したとき、このような作用を発現しない用量は2倍多かった。
【0200】
したがって、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の安全性試験は、塩形態が著しく高い安全性を特徴とすることを示す予想外の結果をもたらし、これは、投与時に実験用動物の生体で観察可能な効果を引き起こされない3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの用量(遊離塩基として計算)がより高いことに加えて、遊離塩基と比べて該塩形態の半致死用量(LD50)がほぼ2倍に増加したことによって示された。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の好ましい安全性プロファイルによって、この塩形態は、遊離塩基と比べて薬物候補としてより魅力的なものになる。
【0201】
BCR/ABL誘発性慢性骨髄性白血病モデルを使用する3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の有効性の試験
慢性骨髄性白血病(CML)の処置についての3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の有効性を評価するために、マウスにおけるBCR/ABL誘発性CML様疾患に対する化合物の活性の試験を実施した。この試験では、C57BL/6N系統のマウスを使用した。被験動物に亜致死性線量の放射線を照射し、続いて、レトロウイルス導入に起因してp185-T315IBCR/ABLを発現するドナーのSca1+骨髄細胞を静脈内移植した。p185-T315IBCR/ABLを発現する細胞の移植後11日目に処置を開始した。
【0202】
遊離塩基及びメタンスルホン酸塩として経口投与された3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドによる処置の有効性を試験した。処置された動物の平均生存時間に対する3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基(用量50mg/kg)、メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(遊離塩基として計算された用量8.5;21;34;及び50mg/kg)の経口投与の効果の試験結果を表17に示す。
【0203】
提示されたデータが示すとおり、遊離塩基及び塩形態として3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドを投与すると、いずれも処置された動物の平均生存時間を増加させる。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩で処置された動物については、マウスの平均寿命が、投与された塩形態の用量に依存することが観察された。用量40mg/kg(遊離塩基として計算すると34mg/kgと等価)の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の投与は、50mg/kg 遊離塩基の投与と同じ処置効果を有する。用量59mg/kg(遊離塩基として計算すると50mg/kgと等価)のメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの投与は、対照群と比べて動物の寿命をほぼ2倍増大させることを保証する。この指標による塩形態の有効性は、遊離塩基よりも大きい。
【0204】
【表17】
【0205】
したがって、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの遊離塩基及びメタンスルホン酸塩の有効性の試験は、塩形態の投与がより有効であったことを示す予想外の結果をもたらし、これは、等価用量の遊離塩基を投与した群と比べて、塩形態を投与した群の動物の平均生存時間がより長いことに現れた。したがって、メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの有効性がより高いことから、この塩形態は、遊離塩基と比べて薬物候補としてより魅力的なものになる。
【0206】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の生物活性の試験
本開示の主題である3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩及びその結晶形態の生物活性を様々な実験で試験した。
【0207】
ヒトキナーゼ酵素活性に対する3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の効果の試験
ナノモル濃度範囲の濃度の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害し、この酵素の臨床的に重要な突然変異型を不活化する。Bcr-Ablキナーゼ阻害実験の結果を表18に要約する。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩による野性型Bcr-Ablの最大半量阻害濃度(IC50)は、0.49〜3.1nMの範囲であった(3回の独立した実験の結果に基づく)。T315I突然変異を有するBcr-AblのIC50は、0.78〜21nMの範囲であった(3回の独立した実験の結果に基づく)。
【0208】
【表18】
【0209】
濃度100nMでは、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、(試験した337個のキナーゼのうちの)以下のヒトチロシンキナーゼのそれぞれの活性を著しく阻害した(50%超阻害):ABL1、ABL2/ARG、BLK、DDR1、DDR2、EPHA2、EPHA8、EPHB2、FGR、FLT4/VEGFR3、FMS、FRK/PTK5、FYN、HCK、KDR/VEGFR2、LCK、LYN、LYN B、P38a/MAPK14、PDGFRa、PDGFRb、RAF1、RET、RIPK3、ZAK/MLTK。ここで、以下のキナーゼについては、活性の90%超が阻害された:ABL1、ABL2/ARG、DDR1、DDR2、FMS、FRK/PTK5、LCK、LYN、LYN B、PDGFRa、RET。
【0210】
様々な腫瘍細胞株に対する3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の細胞毒性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)及びPh+急性リンパ芽球性白血病(ALL)のモデルにおける未成熟リンパ球細胞(T315I突然変異細胞を含む)に対して細胞毒性を示した。実験中、薬物は、ヒト腫瘍細胞株K562(IC50 8nM)、KCL-22(IC509nM)、及びBV-173 (IC50 5nM)(Ph+ CMLモデルを表す)、並びにTom-1(IC50 5nM)、SupB15(IC5050nM)細胞株(Ph+ ALLモデルを表す)に対して毒性を示した。
【0211】
また、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、マウス造血BaF3系統BCR-ABL遺伝子又はその突然変異型のレトロウイルス導入によって得られたモデル腫瘍細胞株に対して毒性を示した[1]:BaF3/BCR-ABL(IC50 5nM)、BaF3/BCR-ABL Y253F(IC50 25nM)、BaF3/BCR-ABL E255K(IC50 25nM)、BaF3/BCR-ABL F317L(IC50 250nM)、及びBaF3/BCR-ABL T315I(IC50 75nM)。
【0212】
また、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、急性リンパ芽球性白血病株(CCRF-CEM)、乳がん株(MDA-MB-468)、卵巣がん株(SKOV-3)、及びリンパ腫株(SR、EL4)を含むがこれらに限定されないヒト腫瘍細胞株に対して細胞毒性を示した。
【0213】
異種移植片慢性白血病モデルにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の有効性の試験
K562系統の細胞が皮下移植された無胸腺マウスの異種移植片モデルを使用する試験中に、1日間当たり25及び40mg/kg(対応して、遊離塩基として計算すると21及び34mg/kg)の用量の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の経口投与の腫瘍サイズに対する効果を評価した。腫瘍のサイズが500mm3に達した後に療法を開始し、療法期間は14日間であり、経過観察期間は240日間であった。1日間当たり25mg/kg(遊離塩基として計算すると21)の用量で3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩を投与すると、腫瘍サイズが測定不可能なサイズまで減少し、その後、経過観察の35日目の後に増殖した。1日間当たり40mg/kg(遊離塩基として計算すると34)の用量で薬物を投与すると、全てのマウスにおいて240日間の全経過観察期間中に再発することなく腫瘍が消失した。
【0214】
急性白血病モデルにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の有効性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の有効性を、急性白血病マウスモデルにおいて評価した。病状を誘発するために、急性白血病が誘発されたC57BL/6N系統のマウスから得られた骨髄細胞を使用した。亜致死性線量の放射線の照射後に動物の尾静脈に細胞を注入した。病状誘発後5日目に療法を開始し、そして、2週間継続した。試験結果は、用量40mg/kg(遊離塩基として計算すると34mg/kgと等価)の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩を経口投与すると、療法を受けなかった対照群と比べて動物の平均生存時間が25%超増大することを示した。
【0215】
腸固形腫瘍モデルにおけるメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの有効性の試験
メタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの有効性を腸固形腫瘍モデルにおいて試験した。病状を誘発するために、HCT116系統の細胞を使用した。200μL(2.5×10細胞/mL)の量の細胞を無胸腺雌マウス(SCID)の右側に皮下注射した。腫瘍が200mm3のサイズに達した後、全てのマウスを腫瘍サイズによって無作為化し、そして、対照群及び処置群に分配した。用量25mg/kg(遊離塩基として計算すると21mg/kgと等価)の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の経口投与を無作為化の次の日に開始し、そして、20日間継続した。処置(20日間)の完了時に腫瘍成長阻害の有効性を判定するために、処置/対照群間の平均サイズ比を計算した(% T/C)。試験結果は、用量25mg/kgの薬物を投与すると、ほぼ完全に腫瘍が転移しなかった(T/C<35%)ことを示した。
【0216】
非小細胞肺がんのモデルにおける3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の有効性の試験
無胸腺雄マウスを試験で使用した。ケタミン/キシラジン麻酔下のマウスの左肢に、マトリゲル溶液(BD Pharmingen) 0.2mLと共にA549(1×10細胞)を注射した。注射後1週間、腫瘍サイズによって無作為化した処置群及び対照群にマウスを分配した。無作為化の次の日に、用量25mg/kg(遊離塩基として計算すると21mg/kgと等価)の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の経口投与を開始し、そして、20日間継続した。腫瘍成長阻害の有効性を判定するために、処置/対照群の平均サイズ比を計算した(% T/C)。試験結果は、用量25mg/kgの薬物を投与すると、ほぼ完全に腫瘍が転移しなかった(T/C<35%)ことを示した。
【0217】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の薬物動態の詳細な試験
ラット及びイヌにおけるメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの薬物動態の試験中、経口投与後の薬物のバイオアベイラビリティがかなり高いことが見出された:イヌにおけるバイオアベイラビリティは用量範囲2〜22mg/kg(遊離塩基として計算すると2〜19mg/kg)においてF=45.9%〜66.1%。ラットでは、用量範囲5〜80mg/kg(遊離塩基として計算すると4.2〜68mg/kg)においてF=13.8%〜59.5%。
【0218】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、用量範囲5〜50mg/kgでマウスに経口投与した後2〜4時間の期間にわたって吸収され、82ng/mL〜1,099ng/mLの対応する最高濃度に達した。
【0219】
濃度−時間曲線下面積(AUC)は、5mg/kg〜50mg/kgの全用量範囲にわたって、372ng*h/mLから12,104ng*h/mLへと直線的に変化した。用量範囲5〜80mg/kgのメタンスルホナート塩として薬物をラットに経口投与した後、該薬物は、2.3〜5.3時間以内に72ng/mLから1,250ng/の対応する最高濃度に達した。AUCは、5mg/kg〜80mg/kgの全用量範囲にわたって、430ng*h/mLから21,124ng*h/mLへと直線的に変化した。
【0220】
3−(1,2,4−トリアゾール[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドは、用量範囲2〜45mg/kgで3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩をイヌに経口投与した後、消化管から比較的緩徐に吸収され、3〜8.5時間後に31.8〜224ng/mLの範囲の最高血漿濃度に達した。AUCは、2mg/kg〜22mg/kgの全用量範囲にわたって、420ng*h/mLから5,480ng*h/mLへと直線的に変化し、そして、その後の45mg/kgへの用量増加中には変化しなかった(5,173ng*h/mL)。
【0221】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドは、全身血流からかなり緩徐に排出される;半減期は、イヌでは約7時間、そして、ラット及びマウスでは約3時間である。静脈内投与後のクリアランスはかなり高い:イヌでは2.12L/h/kg、ラットでは1.61L/h/kg。大きな見掛けの体積分布(イヌではVd=14.1L/kg、ラットでは6.16L/kg)は、組織における薬物分布が広範囲に及ぶことを示す。
【0222】
ラット組織における薬物分布の試験によって、肺(血漿よりもおよそ71倍高い)、脾臓(血漿よりも45倍高い)、腎臓(血漿よりも34倍高い)、骨髄(血漿よりも27倍高い)、肝臓(血漿よりも21倍高い)において物質が高濃度であることが明らかになった。脳における3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド曝露濃度は、血漿曝露からおよそ20%になった。
【0223】
3−(1,2,4−トリアゾール[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド代謝は、シトクロム酵素薬を使用する試験によれば、シトクロムP450アイソフォームCYP3A4の関与を含むが、以下のシトクロムP450アイソフォーム:CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6は含まない。ラット、イヌ、及びヒトの場合、肝細胞における3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドの代謝の試験で同様の代謝プロファイルの形成が明らかになり、その中から2つのグルタチオンコンジュゲート、N−デスメチル誘導体及びN−オキシドが同定された。ラット及びイヌの血漿において、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのアミド結合の加水分解から生じるカルボン酸生成物が同定された。動物の血漿におけるこのような代謝物の定量的測定は、代謝物の濃度−時間曲線下面積が3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド自体の曝露の10%を決して超えないことを示した。
【0224】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の安全性の試験
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド薬物(メシル酸塩の形態)は、イオンhERGチャネルに対する薬物の効果の試験、単回及び反復投与後の薬物毒性の評価、並びに化合物のアレルギー能及び免疫毒性の試験を含む、拡大臨床前安全性評価の対象であった。
【0225】
メシル酸塩の形態の3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド薬物(0.1〜10μM)は、カリウムhERGチャネルを阻害し、IC50値は7.8μMであった。
【0226】
急性毒性試験の結果は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩のLD10が、マウスについては800mg/kg(遊離塩基として計算すると678mg/kgと等価)であり、そして、ラットについては2,000mg/kg(遊離塩基として計算すると1,695mg/kgと等価)であったことを示した。イヌへの単回投与における薬物のMTDは、45mg/kg(遊離塩基として計算すると38mg/kg)であった。
【0227】
2回の別々の試験のデータに従って、28日間の毎日胃内投与において、ラットにおけるメタンスルホン酸塩及び3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのMTDは、50〜73mg/kg(遊離塩基として計算すると42〜62mg/kg)になり、これは、(用量50mg/kgについての)28日目におけるCmax 661±289ng/mL及びAUC24 8,596±2,209ng*h/mLに対応していた。
【0228】
アレルギー特性を同定するために以下の方法を使用した:モルモットの全身性アナフィラキシー及び急性皮膚アナフィラキシーモデルを使用するアナフィラキシー誘発活性の評価;経皮及び結膜への薬物適用後のモルモットにおける即時型過敏(ITH)反応及び遅延型過敏(DTH)反応の評価;マウスにおけるDTH反応の評価;マウスにおけるコンカナバリンAに対する炎症反応の試験;好酸球の血球数の測定、食細胞好中球活性に対する効果の評価(ニトロブルー−テトラゾリウム試験(NBT))、並びに該薬物を皮下投与したモルモットモデルを使用する白血球特異的溶解反応シナリオ。3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩は、試験したモデルのいずれにおいても検出可能なアレルギー活性を全く示さなかった。
【0229】
3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩の免疫毒性効果の試験は、マウスへの薬物の単回胃内投与が、対照群と比べて試験動物の血液中の赤血球凝集素及び溶血素のレベルに対して効果を有しないことを示した。該薬物のマウスへの胃内投与(21日間)は、血液中の赤血球凝集素及び溶血素のレベルに対して効果を有しておらず、遅延型過敏試験において効果を有しておらず、ロゼット試験において効果を有しておらず、そして、血液から分離した好中球の食作用活性を変化させなかった。したがって、実施した試験は、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩が毒性免疫効果を有していないことを示した。
【0230】
Ames試験を使用する遺伝子毒性試験の結果、キイロショウジョウバエにおいて誘導された体細胞モザイクの試験、及びマウス骨髄細胞を使用する分裂中期の染色体異常アッセイは、3−(1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミドのメタンスルホン酸塩が、試験した全ての用量(濃度)においてモデルのいずれにおいても遺伝毒性作用を有していないことを示した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
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図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
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図10(b)】
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図12(a)】
図12(b)】
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図19(b)】
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図44(b)】
図45(a)】
図45(b)】
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図47(b)】
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図48(b)】
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図49(b)】
図50(a)】
図50(b)】
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図52(a)】
図52(b)】