(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記隔壁材料と、前記シール剤材料とを、前記TFT基板又は前記対向基板のいずれか一方に連続的に配置し、その後に前記TFT基板と前記対向基板とを重ね合せた後に前記シール剤材料を硬化させることによって前記TFT基板と前記対向基板とを接着する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一実施形態:基板の封止構造体)
  次に、図面を参照しながら本発明の第一実施形態である基板の封止構造体が説明される。
図1に示されるように、本発明の第一実施形態の封止構造体100は、対向して配置された第一基板10及び第二基板20と、その第一基板10及び第二基板20の間に形成された電子素子30と、電子素子30の外周で第一基板10及び第二基板20を封止したシール剤50とを備えている。本実施形態では、シール剤50は低融点ガラス材を含み、第一基板10及び第二基板20のそれぞれと接着されており、シール剤50と電子素子30との間で、かつ、第一基板10及び第二基板20の間で、電子素子30の外周を取り囲むように形成された隔壁60が配置されており、シール剤50と隔壁60とは離間している。なお、基板の封止構造体とは、2枚の基板の間に電子素子30などが配置されてその周囲が本実施形態の構造で封止された電子デバイスの総称である。
 
【0015】
  また、「電子素子30の外周を取り囲むように形成された隔壁60」の電子素子30は、電子デバイスを構成する一群の電子素子を意味し、例えば電子デバイスが照明装置であれば、その照明装置を構成する1個、又は複数個の有機EL発光素子(以下、単にOLEDともいう)を意味し、電子デバイスが表示装置であれば、各画素を構成する複数のOLEDなどの一群の電子素子を意味する。大判の基板で、複数個の電子デバイスが一度に製造される場合には、1個の電子デバイスごとの電子素子30の周囲に隔壁60及びシール剤50が形成される。
 
【0016】
  第一基板10及び第二基板20は、気密性があるものであれば特に限定されない。絶縁性基板、半導体基板、導電性基板でも構わない。一方の基板の表面に電子素子30(その部品である電極などを含む)が形成される場合などにおいて、絶縁性の基板が好ましい場合でも、半導体基板や導電性基板の表面に絶縁膜を形成することで半導体基板や導電性基板を使用し得る。また、剛性を有する基板でも、可撓性基板でも構わない。さらに、第一基板10と第二基板20とが異種の材料の組合せ、例えば半導体基板と絶縁性基板との組合せなどでもよい。表示装置又は発光装置(照明装置)などの場合には、ガラス基板やポリイミドなどの樹脂フィルムが使用され得る。なお、
図1では、第一基板10及び第二基板20が簡単な1枚の構造で示されているが、図示しない駆動素子などの素子が形成され得る。
 
【0017】
  電子素子30は、特に限定されないが、水分や酸素などで劣化しやすい材料が用いられているOLEDなどの電子素子30の場合に、本実施形態の基板の封止構造体100は特に有効である。また、液晶表示素子や色素増感型太陽電池のように液晶や液体を封入する必要のある電子素子にも有効である。また、基板の封止構造体100は、後述される液晶表示素子(以下、単にLCDともいう)とOLEDとを含むハイブリッド型の表示装置のように、2以上の電子素子30を含んでいてもよい。
 
【0018】
  図1に示される例では、ガラスからなる第一基板10上にOLED30aが電子素子30として形成されている。すなわち、第一電極31の周囲を取り囲むように絶縁バンク32が形成され、第一電極31の上に有機層33、第二電極34、及びその上に被覆層(TFE;Thin Film Encapsulation)35が形成されている。
図1に示される例では簡略化のため、OLED30aが主要部のみの構造で示されているが、後述される第二実施形態で説明されるOLED30aと同じ構造であってもよく、詳細は後述される。
 
【0019】
  シール剤50は、第一基板10と第二基板20とを気密封止にして、その内部に配置されている電子素子30が水分や酸素などによって劣化しないようにするものである。そのため、エポキシ樹脂などの水分を透過しやすい樹脂類ではなく、ガラス材が用いられている。このシール剤50の幅(厚さ)xは0.05mm以上2.0mm以下程度あれば気密封止に問題はない。一方、第一基板10と第二基板20との間には、電子素子30が封入されるので、シール剤50をガラスなどによって第一及び第二の基板10、20と接着する場合に余り温度を上げられない。そのため、軟化点(いわゆるゴム状態になる温度)の低い低融点ガラスが用いられる。
 
【0020】
  低融点ガラスは、ガラスの組成に低融点酸化物を混入して軟化点の温度を下げたもので、一般的には350〜600℃程度又はそれ以上の温度の軟化点のものであるが、本実施形態では、電子素子30が形成された基板を接合するため、できるだけ低い軟化点のガラスが好ましい。その観点から、例えばバナジウム系低融点ガラスを用いることができる。バナジウム系低融点ガラスは、主成分がV
2O
5-P
2O
5-TeO
2-Fe
2O
3からなり、軟化点が370℃程度である。すなわち370〜400℃程度に加熱されることで軟化し、基板と密着させてから冷却することによって、固相化することで接着する。このバナジウム系低融点ガラスは、可視から赤外領域に高い光吸収性を有しており、レーザ光によって局所的な加熱、接合が可能である。しかし、低融点ガラスと言っても、電子素子30の耐熱温度は一般的にはもっと低くなる。従って、基板上に形成された各種素子に熱の影響を与えないように、シール剤50の接着時に発生する熱を遮断する必要がある。
 
【0021】
  すなわち、低融点とはいえ、ガラス材は400℃程度まで温度が上昇するので、前述した
図5A〜5Bに示されるように、シーラント部87とシール剤88又は第一シールライン93と第二シールライン94とが接触していると、シール剤88や第二シールライン94を接着するときの熱は容易にシーラント部87又は第一シールライン93に伝達する。そして、シーラント部87又は第一シールライン93と接触もしくは近接する発光素子80の部分は容易に温度が上昇して性能を劣化させる要因になる。また、このシーラント部87などに樹脂が用いられていると、その樹脂自身からもガスが発生し、そのガスが基板間に封入される危険性がある。そこで、本実施形態では、後述されるように、この低融点ガラス(シール剤50)の接着の際に、電子素子30の一部に直接熱が伝導しないように、電子素子30とシール剤50とが隔離されている。
 
【0022】
  この低融点ガラスは、例えば微細粉末にしたガラスフリットとして有機溶媒を含むバインダなどによってペースト状にされる。そのシール剤材料51を、例えば
図3Aに示されるように、基板10の所定の部位に塗布した後、硬化することでシール剤50が形成される。
図3Aでは、後述される隔壁材料61(無機材料ペーストなど)も示されており、その隔壁材料61の外周に、隔壁材料61と離間してスクリーン印刷又はディスペンサなどによってシール剤材料51が形成され得る。このシール剤材料51は、第一基板10又は第二基板20のいずれか一方の所定の部位に塗布される。所定の部位とは、電子素子30の素子形成領域A(
図3A参照)の周縁に形成される隔壁材料61のさらに外周で、隔壁材料61と所定の間隔zを有する部位である。そして、他方の基板を位置合せして重ね合せた後に、レーザ光を照射することによって、軟化点以上の温度に上昇させることでシール剤材料51が各基板に接着される。なお、シール剤材料51や隔壁材料61を形成する基板は、電子素子30が形成された基板には限定されない。シール剤材料51及び隔壁材料61は、電子素子30の素子形成領域Aを他方の基板に映した(投影した)領域の周囲に形成されてもよい。さらに、シール剤材料51と隔壁材料61とが異なる基板に形成されてもよい。
 
【0023】
  この接着に使用するレーザ光としては、低融点ガラスが前述した材料であれば、可視光から赤外の領域で高い光吸収性を有するので、種々のレーザ光源が用いられ得る。そのため、例えば一般的に用いられるCO
2レーザ(波長:10.6μm)を用いることができる。OLEDやLCDなどを封入する基板の間隔(セルギャップ:5〜10μm程度)とほぼ同じ波長のCO
2レーザ光を用いることで、シール剤50の全体を軟化させることができ、微粉末の全体が軟化状態になって微粉末間の空隙のない固化体になる。
 
【0024】
  シール剤材料51は、低融点ガラスをペースト状にして塗付したものでなくてもよく、例えばガラスリボン51b(
図3B参照)でもよい。第一又は第二の基板10、20の一方にガラスリボン51bを貼り付けておいて、2枚の基板を重ねた後にレーザ光の照射によって接合してもよい。この場合、ガラスリボン51bは、溶融状態のガラスから直接鋳型などに流し込んで形成され得るし、前述したガラスフリットのペーストを成形して固化することでも形成され得る。このペーストからリボンを形成する場合、リボンを形成する際に溶媒を蒸発させることで、ポーラスな状態のガラスリボンを軟化状態にして空隙を無くしたリボンにすることもできるし、空隙のある多孔質のリボンとして、前述したように、2枚の基板の間に挟んでから軟化状態にすることで、空隙の消失と同時に基板と接着することもできる。シール剤50の内部にガスを封入しないという観点からは、空隙のないガラスリボン51bが好ましい。
 
【0025】
  空隙のない(ポーラスではない)ガラスリボン51bを基板と接合する場合、ガラスリボン51bの全体を軟化状態にする必要はなく、基板との接合部のみを軟化させるだけでよい。しかし、ガラスリボン51bの全体が軟化状態になってから固化しても何ら問題はない。元々空隙が無いので、軟化状態になってもガスの発生は無いからである。従って、ガスの発生を伴わないで、ガラスフリットを軟化状態にする場合と同様に接着され得る。
 
【0026】
  ガラスリボン51bでシール剤50を形成する場合、2枚の基板の一方、例えば第一基板10の所定の部位(シールする場所)にガラスリボン51bを接着剤などで貼り付けておき、第二基板20を重ね合せた後に、前述したレーザ光の照射によって、シール剤50と各基板とが接着され得る。この場合、
図3B〜3Cに示されるように、ガラスリボン51bは、その全面に接着剤が付着されないで、一部(接着部B)に付着されていればよい。
 
【0027】
  具体的には、
図3B〜3Cに示されるように、シール部を複数箇所(例えば矩形状の基板の各辺)に分割して、その箇所ごとの長さのガラスリボン51bを用意し、そのガラスリボン51bの一端部(
図3Bの例)又は両端部(
図3Cの例)の接着部Bのみに図示しない接着剤を付けて固定し得る。この場合、各ガラスリボン51bは接着部Bの分だけ長く形成される。このようにすれば、
図3B〜3Cに示されるように、接着剤を付着させる接着部Bがシール部の外側に設けられ得る。すなわち、第一基板10と第二基板20とが重ね合された後にレーザ光で接着される部位の外側に接着部Bを配置し得る。このガラスリボン51bの配置後レーザ光の照射による接着までの時間はそれほど長くないので、接着前にずれる危険性は非常に少ないからである。また、ガラスリボン51bの全面に接着剤が付着していると、基板10とガラスリボン51bとの接着は安定するが、レーザ光による基板10との接着の際に接着剤から発生したガスを基板間に封入してしまう危険性があるのを避けられる。
 
【0028】
  図3Bに示される例は、ガラスリボン51bの一端部のみに接着剤が付着される例であり、接着剤の付された接着部Bはシール剤50の電子素子30と反対の部位で接着される。ガラスリボン51bの他端部は、他のガラスリボン51bと突き当てになっており、接着した場合には他のガラスリボンと接合して一体化される。その結果、基板との接着の際にガラスリボン51bの温度が上昇しても、その温度上昇によって接着剤から発生するガスはシール剤50の外側に放出されることになる。
 
【0029】
  図3Cに示される例では、ガラスリボン51bの分割は、
図3Bの例と同様に矩形状の基板10の各辺に沿った4分割になっている。その分割された各ガラスリボン51bを若干長くして、両端部が90°折り曲げられた形状に形成されている。その折り曲げられた部分が
図3Cに示されるように、シール剤50となる部分の外側に位置するようにガラスリボン51bが形成されている。その結果、
図3Bの例と同様に、接着剤によって接着される接着部Bはシール剤50の外側になり、レーザ光による接着の際に、接着剤からガスが発生しても、電子素子30側に封入されることはない。しかも、ガラスリボン51bの両端部で接着されるので、非常に安定してガラスリボン51bを接着させ得る。
 
【0030】
  隔壁60は、シール剤50と電子素子30との間に設けられ、シール剤50と離間して設けられている。そのため、隔壁60も電子素子30を取り囲むように形成されている。すなわち、電子素子30に液晶のような液状物がある場合でも、その液状物がシール剤50に直接接触しないように隔離すると共に、シール剤50の接着のために加熱する際の熱の伝導を抑制するために設けられている。従って、シール剤50を第一及び第二の基板10、20と接着する際の加熱による熱が電子素子30に伝わることで電子素子30が劣化するのが抑制される。
 
【0031】
  すなわち、隔壁60は、熱遮断の役目を有している。例えば電子素子30に液晶材料(液晶組成物)を含む場合、温度が150℃以上に上昇すると、液晶材料が劣化することが知られている。しかも、液晶材料は、固体のように一定の場所に固定しているのではなく、流動し得る。そのため、隔壁60は、液晶材料が、加熱されるシール剤50と接触することを避けると共に、シール剤50からの熱伝導を抑制する役目を果たしている。そのため、隔壁60はできるだけシール剤50から離れた位置に配置されることが好ましい。    
 
【0032】
  隔壁60の厚さyは0.1mm以上で、1.0mm以下であれば熱伝導を抑制し得る。厚さが厚いほど、シール剤50からの輻射熱によってシール剤50に対向する隔壁60の面の温度が上昇しても、その熱が電子素子30に伝達し難いので好ましい。しかし、余り隔壁60の厚さを厚くすると、構造体100の寸法が大きくなり、電子機器の軽薄短小化の要求に反する。従って、熱伝導を抑制できると共に、第一及び第二の基板10、20の間の機械的強度を満足し得る上記寸法yにすることが好ましい。
 
【0033】
  また、シール剤50と隔壁60との間隔zは0.5mm以上であることが好ましい。この間隔zも大きいほど熱伝導の抑制という観点からは好ましいが、間隔zを大きくすると、前述のように、電子機器が大形になり、電子機器の軽薄短小化の流れに逆行する。一方、数秒程度の加熱時間で400℃程度に加熱される熱源からの熱の空間での熱伝導は、0.5mmの間隔を空けることでほぼ阻止し得ることが確かめられた。従って、間隔zは大きくても1mmあれば十分である。
 
【0034】
  隔壁60は、このように電子素子30の一部がシール剤50と接触しないように区画すると共に、シール剤50の接着の際に発生する熱の電子素子30への伝導を抑制することを目的としている。従って、シール(封止)をすることを目的とはしていないので、基板と接着する必要はない。そのため、前述した
図5A〜5Bに示されるシーラント部87や第一シールライン93のような樹脂類で基板と接着する必要はない。むしろこのような熱硬化性の樹脂類を用いるよりも、ガラスやセラミックスなどの無機材料を用いることが好ましい。すなわち、従来のシール構造にするため、熱硬化性の樹脂などの樹脂類を用いて硬化させると、硬化時に発生する水分などが基板間に封入されることになり、たとえその外周をガラスなどで封止して外部からの水分の浸入を阻止しても、常に電子素子30は、熱硬化の際に発生した水分や酸素に晒されることになる。そのため、熱硬化性の樹脂は、電子素子30を劣化させる原因になりやすい。
 
【0035】
  隔壁60として使用し得る無機材料としては、例えばガラス、セラミックス、金属酸化物、金属、半導体などを用いることができる。ガラスとしては、例えば前述のシール剤50として用いた低融点ガラスのガラスフリットやガラスリボンを用いることもできる。ガラスフリットの場合、バインダによってペースト状にし、一方の基板に印刷などによって塗布した後で、他方の基板を重ね合せる前に有機材料の成分のみを気化させれば、バインダが少々残存しても、その量は非常に少なく、その後のガスの発生は殆ど問題にならない固化物が得られる。また、ガラスリボンの場合は、一方の基板10に接着剤などによって貼り付けることになり、接着剤の有機材料を含み得るが、接着剤の量は非常に少なく、また、温度を上昇させる訳ではないので、殆どガスの発生は問題にならない。さらに、感光性ガラスペーストを塗布して硬化させることもできる。
 
【0036】
  セラミックスや金属酸化物などの他の無機材料でも、ガラスフリットと同様に微粉末として有機溶媒や接着剤などと混ぜて隔壁60とし得る。これらの場合、前述したように、有機溶媒や接着剤などの無機材料では無いものも含まれ得るが、主体的には無機材料であるもの、すなわち体積で90%以上が無機材料である場合には、殆どガスの発生はなく、無機材料として使用し得る。
 
【0037】
  また、マスキングと蒸着やスパッタなどの手法を組み合せることによっても隔壁材料61を形成し得る。この方法によれば、有機溶媒などを一切使用せずに無機材料だけで隔壁60を形成し得るし、種々の材料を使用し得る。
 
【0038】
  隔壁60は、第一基板10又は第二基板20の一方と接着していれば他方の基板とは接着していなくてもよい。すなわち、前述したように、隔壁60は、シール機能を有しなくてもよいからである。そのため、例えば隔壁材料61が微粉末で、最終的にポーラスであっても、その微細孔が非常に小さく、液晶のような電子素子30の一部である液状物質の流れを阻止できるものであればよい。従って、ポーラスの孔径は電子素子30の種類によって変り得るが、液晶材料を含む場合、5μm以下、好適には1μm以下の孔径であれば液晶材料が流出することは無い。ポーラスを前提にしているので、孔径が0より大きいことは当然である。液晶材料などが多少流出してシール剤50と接触しても、特に問題にはならない。
 
【0039】
  一方、隔壁60がポーラス体であれば、シール剤50の接着の際に発生する熱の輻射で隔壁60のシール剤50と対向する面の温度が上昇しても、電子素子30への熱伝導が抑制されるので、むしろ好ましい。そのため、微粉末をバインダでペースト状にして印刷後に加熱硬化させることで、有機物を蒸発させれば、微細孔を有する無機材料の隔壁60が得られる。また、バインダが完全に消失しないで、接着剤として残っても、その量が全体の体積の10%以下の量であれば、電子素子30の素子特性を劣化させるほどのガスの発生は無いと考えられる。この方法は、ガラス粉末に限らず、セラミックスや金属酸化物など他の無機物の微粉末も同様に固化することができる。
 
【0040】
  隔壁60が第一又は第二の基板10、20の一方のみと接着して、他方とは接着しない構造の場合、隔壁材料61に熱硬化性樹脂などを使用しても、第一及び第二の基板10、20を重ね合せる前に熱硬化させれば、硬化の際に発生するガス(水分や酸素)を2枚の基板間に封入することなく外部に放出し得る。そのため、隔壁60は無機材料に限定されるものではない。この場合、シール剤50を接着する際に、発生する熱で隔壁60が加熱されないように、シール剤50と隔壁60との間隔zを充分に大きくする、例えば0.7mm以上で、1mm以下程度にすることが好ましい。
 
【0041】
  隔壁60は、前述したように、第一及び第二の基板10、20との間を気密に封止していなくてもよいが、両基板10、20と接着していれば、第一及び第二の基板10、20の間隔を正確に維持し、また、構造体100の機械的強度を向上させ得る点で好ましい。第一及び第二の基板10、20と接着する場合には、前述した方法で一方の基板に隔壁材料61を接着した後、又は隔壁材料61の塗布後に硬化させる。その後に、隔壁材料61の上面に接着剤を塗布しておき、第一基板10と第二基板20とを重ね合せる。その後に、シール剤材料51を加熱して両基板10、20と接着する際に、両基板10、20が圧接されることによって接着し得る。この場合も、前述したように接着剤の量は隔壁60の全体の量に比べると10%以下と非常に僅かであるため、接着剤から発生するガスの影響は殆ど受けない。また、後述される紫外線硬化性樹脂、可視光硬化性、及び遅延硬化性樹脂などの、硬化時に温度上昇を伴わず、ガスの発生も抑制される接合樹脂を用いて接合し得る。
 
【0042】
  上述の観点からは、従来の液晶表示装置を製造する際に2枚の基板をシールするための接合樹脂、例えばエポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーン樹脂などを用いることもできる。これらの材料は、添加される重合開始剤によって、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂などにすることができる。熱硬化性樹脂の場合、遅延硬化性樹脂にすることができ、電子素子30と関係のない場所(例えば電子素子30の形成されない基板)で熱処理をしておき、その後両基板を重ね合せてから圧力をかけることで、時間をおいて接合する。そのため、接合時に加熱してガスを発生させるということなく接合することができる。さらに、紫外線硬化や可視光硬化の場合も殆ど熱を発生しないで接合され得る。紫外線や可視光を照射する場合、レーザ光の照射によって行うこともできる。これらの場合も前述したように、シール剤50の接着の際に発生する熱ができるだけ伝導しないように、シール剤50と隔壁60との間隔zを充分に空けることで使用し得る。
 
【0043】
  前述の紫外線硬化性樹脂は、加熱する必要がなく、熱硬化性樹脂と比べて、封入されるOLEDなどの電子素子30への熱ダメージが少ないという利点がある。さらに、硬化時に発生するガスも少なく、硬化の際に発生するガスを基板間に封入するという問題も生じにくい。また、熱硬化性樹脂に比べて短時間で硬化できる。
 
【0044】
  可視光硬化性の樹脂は、紫外線硬化性樹脂に比べて照射エネルギーが低い分、硬化時間は長くなるが、光の透過性が良いため、人体に安全で、しかも照射装置が安価であるというメリットがある。
 
【0045】
  遅延硬化性樹脂は、熱硬化性であるため、加熱する必要があるが、加熱して直ちに硬化するのではないので、前述したように、2枚の基板を重ね合せて加熱する必要はなく、電子素子30の形成されない基板に隔壁材料61を形成しておき、加熱した後に2枚の基板を重ね合せて接合することができる。そのため、電子素子30への熱ダメージはなく、また、硬化する際にガスを発生させて基板間に封入するということも抑制され得る。
 
【0046】
  本実施形態の基板の封止構造体によれば、2枚の基板を封止するシール剤50を低融点ガラス材で行っているので、基板と完全にシール(封止)される。すなわち、二重でシールするという発想ではなく、ガラスで完全に封止しながら、その際に発生する熱の影響を避ける構造になっていることに特徴がある。そのため、基板との接合部を介して水分や酸素などの外気が浸入することが大幅に抑制される。また、シール剤50もガラスであるため、シール剤50の全体で水分の浸入などが抑制される。しかも、シール剤50を第一基板10及び第二基板20と接合する際のレーザ光照射により温度が上昇するが、電子素子30との間には隔壁60が形成されており、電子素子30の材料の一部が流れてシール剤50と接触することはなく、また、シール剤50の加熱の際に発生する熱の伝導は隔壁60で遮断され得る。そのため、第一及び第二の基板10、20とシール剤50との接合の際に発生する熱による電子素子30の劣化は抑制され、しかも水分などの浸入はほぼ完全に抑制されるので、有機EL発光素子のような水分や酸素に弱い電子素子30を含む場合でも、その信頼性が大幅に向上する。
 
【0047】
(第二実施形態:表示装置)
  次に、電子素子30として、OLED30aとLCD30bとを有する複合型の表示装置が、
図2を参照しながら説明される。
 
【0048】
  本発明の第二実施形態である表示装置200は、表示画面の画素ごとに形成された駆動用TFT13及び駆動用TFT13の上の表面を平坦にした第一絶縁層(いわゆる平坦化膜)19を有するTFT基板10と、TFT基板(第一基板)10の一画素の第一領域Rで、第一絶縁層19の上方に形成されたLCD30b用の反射電極41と、TFT基板10の第一絶縁層19の上の第一領域Rと隣接する一画素の第二領域Tに形成され、第一電極31、有機層33、第二電極34及び被覆層35を有するOLED30aと、反射電極41と対向する対向電極(透明電極)43を有し、TFT基板10と対向して配置された対向基板(第二基板)20と、TFT基板10と対向基板20との間に充填された液晶層42と、TFT基板10及び対向基板20を貼り合せたシール剤50と、を具備し、シール剤50は低融点ガラス材を含み、TFT基板10及び対向基板20のそれぞれと接着されており、シール剤50と液晶層42との間で、かつ、TFT基板10と対向基板20との間に隔壁60が配置されており、シール剤50と隔壁60とが離間している。
 
【0049】
  なお、
図2では、1個のLCD30bと1個のOLED30aの周囲に隔壁60及びシール剤50が形成されているが、実際には、このLCD30bとOLED30aの組からなるサブ画素が赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれに形成され、さらにそのR、G、Bからなるサブ画素で構成される一画素がマトリクス状に複数個形成される。本実施形態では、このマトリクス状に形成される全体の素子が電子素子30になり、それらを取り囲むように上記隔壁60及びシール剤50は形成される。
 
【0050】
  本実施形態の表示装置200は、一画素の第一領域Rに反射型のLCD30bが形成され、一画素の第一領域Rと隣接する第二領域Tに例えばOLED30aなどの発光素子が形成されている。反射型のLCD30bは、反射電極41と、液晶層42と、透明電極43(対向電極)と、カラーフィルタ(CF)44と、反射電極41及び透明電極43の表面にそれぞれ形成される液晶配向膜45、46と、偏光板47とで構成されている。この液晶層42、透明電極43、及び偏光板47は、第二領域Tの方まで延びて、表示装置の全体に形成されている。また、OLED30aは、第一電極31と発光領域を画定する、いわゆる絶縁バンクと呼ばれる第二絶縁層32と、有機層33と、第二電極34と、その周囲を被覆する被覆層35とを含んでいる。第二絶縁層32は、第一領域Rの第一絶縁層19の上にも同じ材料で、かつ、ほぼ同じ厚さに形成されているが、第二領域Tのいわゆる絶縁バンクと呼ばれる第二絶縁層32とは分離されているので、第一領域Rでの第二絶縁層は第三絶縁層32aと称される。
 
【0051】
  TFT基板10は、例えばガラス基板又はポリイミドなどの樹脂フィルムなどからなる絶縁基板11の一面に駆動用TFT(薄膜トランジスタ、以下単にTFTという)13、電流供給用TFT12などのTFTや、図示しないバスラインなどの配線が形成され、その表面を平坦にする、いわゆる平坦化膜と呼ばれる第一絶縁層19が形成されている。なお、TFTはポリシリコン又はアモルファス半導体などの半導体層14、ゲート絶縁膜15、ゲート電極13g、12g、パシベーション膜16などにより形成されているが、その詳細の説明は省略される。
図2では、LCD30bの液晶層42と並列に接続される補助容量電極17が形成されている。これは、アクティブマトリクス表示でスキャンする際の反射電極41の電圧を保持する。
 
【0052】
  また、
図2においては、電流供給用TFT12のソース12sはOLED30aのアノード電極31に接続されている。このOLED30aのカソード電極34は、ビアコンタクト18c1、18c2でカソードバスライン18に接続されている。第一絶縁層19は、TFTなどが形成された部分と形成されない部分との凹凸をなくして表面を平坦にすることが目的であるため、ポリイミドなどの有機材料で形成されることが好ましい。しかし、第一絶縁層19は、無機材料で形成されてもよい。第一絶縁層19がSiO
yやSiN
xなどの無機材料でCVD法などによって形成される場合、平坦化するのに数μmの厚さが必要となるので、成膜時間が長くなる。しかし、SOG(スピンオングラス)などにより容易に平坦化することはできる。なお、
図2では、素子の構造が概念的に示され、各素子の全てが、正確には記載されていない。
 
【0053】
  LCD30b及びOLED30aの駆動用の回路は、このように、このTFT基板10に形成されている。この駆動回路の詳細な説明は省略されるが、駆動用TFT13などのドレイン13dとコンタクト13d1〜13d3を介して反射電極41と接続され、電流供給用TFT12のソース12sは、OLED30a用の第一電極31と接続されている。
 
【0054】
  対向基板20は、例えばガラス又は透明(透光性)フィルムなどの基板に、カラーフィルタ44と対向電極43と液晶配向膜46とが形成される。LCD30bでは、表示画面をカラーにするには種々の方法があるが、カラーフィルタ44が、画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色の画素を形成するために設けられる。OLED30a側でも、カラーフィルタ44を用いてカラー表示がされ得るが、有機層33の材料を選択することによって直接赤(R)、緑(G)、青(B)の光を発光させる場合には、カラーフィルタ44は不要になる。この対向基板20の液晶層42と対向する面に液晶の配向を定める液晶配向膜46が形成され、ラビング加工などがなされる。
 
【0055】
  この対向基板20と、OLED30aなどが形成されたTFT基板10とが、反射電極41と対向電極43とが対向するように一定の間隙をあけて、周囲で、シール剤50によって接着される。このシール剤50とTFT基板10及び対向基板20との接着は、前述した実施形態1の方法と同様の方法で行われる。この両基板10、20の間隙部に電子素子30の一部となる液晶材料が封入されることによって、液晶層42が形成されている。そして、対向基板20の液晶層42と反対の面に偏光板47が設けられている。なお、対向基板20のシール剤50と接着させる部位では、対向電極(透明電極)43、カラーフィルタ(CF)44、液晶配向膜46などは形成されないで、絶縁基板21が露出している。TFT基板10も同様に絶縁基板11を露出させ、絶縁基板11、21とシール剤50とが接着される。しかし、このように絶縁基板11、21と直接接着される必要はない。SiO
2などの絶縁膜などを介して、両基板11、21の表面と接着されてもよい。
 
【0056】
  OLED30aは、一画素の第二領域Tに形成され、
図2に示されるように、第一絶縁層19の第二領域Tの表面に形成される第一電極31と、その周囲に第一電極31を取り囲むように形成される第二絶縁層32と、その第二絶縁層32で囲まれる第一電極(アノード電極)31の上に形成される有機層33と、その上のOLED30aのほぼ全面に形成される第二電極(カソード電極)34と、その周囲を被覆する被覆層35とで形成されている。第二絶縁層32は、第一電極31の周縁を被覆しても被覆しなくてもよい。
 
【0057】
  第一電極31は、例えばアノード電極として形成される。本実施形態の場合、
図2の上側から表示画面を見ることになるため、第一電極31は反射電極として形成され、発光した光を全て上方に放射する構造になっている。そのため、光反射性の材料で、この第一電極31と接する有機層33などとの仕事関数の関係などによりその材料が選定される。例えば、ITO/APC/ITOの積層膜により形成される。
 
【0058】
  第二絶縁層32は、絶縁バンクとも呼ばれるもので、OLED30aの発光領域を画定すると共に、アノード電極31とカソード電極34とが接触して導通することを防ぐために形成されている。この第二絶縁層32で囲まれた第一電極31の上に有機層33が積層される。この第二絶縁層32は、例えばポリイミドやアクリル樹脂などの樹脂で形成される。この第二絶縁層32は、第一領域Rと第二領域Tの高さを合せる意味からも、LCD30bが形成される第一領域Rにも形成される。すなわち、液状の樹脂が全面に塗布され、その後にパターニングされてOLED30aの第一電極31の周囲の第二絶縁層32及び第一領域Rの第三絶縁層32aが形成される。この際、OLED30a側の第二絶縁層32と、LCD30b側の第三絶縁層32aとが分断されて第一絶縁層19が露出している。OLED30aの有機層33や第二電極(カソード電極)34が被覆層35によって完全に被覆されるのに都合がよい。この場合、
図2に示されるように、第一絶縁層19もエッチングされて直接パシベーション膜16又はパッドもしくは配線などの金属膜が露出されていることが好ましい。被覆層35は無機膜で形成されるが、無機膜同士の接合であれば、密着性がよく、水分などの浸入を抑制しやすいからである。
 
【0059】
  有機層33は、第二絶縁層32に囲まれて第二絶縁層32から露出する第一電極31の上に積層される。この有機層33は、
図2では一層で示されているが、種々の材料が積層されて複数層で形成される。また、この有機層33は水分に弱く全面に形成してからパターニングをすることができないため、蒸着マスクを用いて、蒸発又は昇華させた有機材料を選択的に必要な部分のみに蒸着することによって、又はインクジェットなどによる塗布法で形成される。
 
【0060】
  具体的には、例えば第一電極(アノード電極)31に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq
3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされて形成される。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。一方、カラーフィルタ44で着色される場合には、発光層は全てドーピングすることなく同じ材料で形成され得る。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq
3などにより形成される。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることによって有機層33の積層膜が形成されている。なお、この有機層33と第二電極34との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。本実施形態では、有機層33はこれら各有機層及び無機層を含み得る。
 
【0061】
  前述したように、有機層33の積層膜のうち、発光層は、RGBの各色に応じた材料の有機層が堆積されてもよい。
図2に示される例では、発光層が同じ有機材料で形成され、カラーフィルタ44により発光色が特定されている。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、RGBの2色又は3色に共通して同じ材料で積層される場合もある。
 
【0062】
  このLiF層などの電子注入層などを含む全ての有機層33の積層膜が形成された後に、その表面に第二電極34が形成される。具体的には、第二電極(例えばカソード電極)34がOLED30aのほぼ全面の上に形成される。第二電極34は透光性の材料、例えば、薄膜のMg-Ag共晶膜により形成される。
 
【0063】
  この第二電極34の表面には、例えばSi
3N
4、SiO
2など無機絶縁膜からなる被覆層(TFE)35が一層、又は二層以上の積層膜によって形成される。被覆層(TFE)35は、第二電極34及び有機層33を包含している。例えば一層の厚さが0.5μmから1.5μm程度で、好ましくは二層程度の積層膜で形成される。この被覆層35は、異なる材料で多層に形成されるのが好ましい。被覆層35は、複数層で形成されることによって、ピンホールなどができても、複数層でピンホールが完全に一致することは殆ど無く、外気から完全に遮断する。この被覆層35は、有機層33及び第二電極34を完全に被覆するように形成される。そのため、
図2に示されるように、第二絶縁層32の下の第一絶縁層19よりさらに下の無機膜からなるパシベーション膜16又は配線もしくはパッドなどと接合するように形成される。
 
【0064】
  前述したように、第一絶縁層19が無機材料で形成されていれば、被覆層35も無機絶縁膜であるため、第一絶縁層19の表面で接合しても、その接合は十分に得られる。しかし、第一絶縁層19がポリイミドなどの有機層である場合には、被覆層35との密着性が低下する。そのため、前述したように、第一絶縁層19に溝(トレンチ)が形成され、その中まで被覆層35の一部が埋め込まれることが好ましい。
 
【0065】
  以上によりOLED30aが形成される。
図2に示されるように、このOLED30aの上にも液晶層42や対向電極43が形成されている。しかし、OLED30aの領域には、対向電極43に対応する反射電極(画素電極)41はない。そのため、後述する液晶層42の両面に印加される電圧がオフの場合と同じ状況になる。すなわち、外光に対してはノーマリブラックになるが、OLED30aで発光する光は、液晶層42は垂直配向のため、液晶層42がないのと同じであり、何の変化もなく円偏光板47を通過する。そして円偏光板47を通過した光は、そのまま視認されるので、OLED30aで発光により表示される画像は、そのまま正面側から視認される。
 
【0066】
  なお、OLED30aで発光した光は、円偏光板47を通ることによって、円偏光板47で半分ぐらいに減衰する。しかし、この円偏光板47は第二領域Tにも形成されることが好ましい。その理由は、外光が正面から入る場合に、OLED30aの第一電極31が光反射性の材料で形成されていることから、正面から入射した光が、OLED30a内の第一電極31などで反射して外に出ると表示画面が非常に見難くなる。しかし、円偏光板47があれば、後述するLCD30bの反射電極41での反射と同様に、第一電極31などで反射すると、円偏光の回転方向が逆転するため、反射光は円偏光板47を通ることができなくなる。その結果、反射光をカットすることができる。外光の多いときは、OLED30aは動作させないが、LCD30bの動作中でも、OLED30aの動作の有無にかかわらず、反射光は発生するので、LCD30bの動作中でも、円偏光板47が第二領域TにないとLCD30bの視認特性が大幅に低下する。
 
【0067】
  電子素子30のLCD30bは、一画素のうち、半分程度の第一領域Rの全面に形成された反射電極41と、液晶層42と、対向電極43と、偏光板(円偏光板)47とで、反射型のLCDとして形成されている。液晶層42は、第一領域Rのみに形成することは難しく、前述したように、対向電極43と共に第二領域Tも含めた全面に形成されている。
図2に示される例では、カラーフィルタ44が対向基板20の絶縁基板21と対向電極43との間に形成されている。前述したように、この対向基板20の液晶層42と接する面には、液晶配向膜46が形成され、液晶分子の配向が規制される。
 
【0068】
  この反射電極41は、いわゆる画素電極で第一領域Rのほぼ全面に形成されている。この反射電極41は、前述したOLED30aの発光領域を画定する絶縁バンクとなる第二絶縁層32と同じ材料で同時に形成される第一領域R側の第三絶縁層32aの上に形成されている。反射電極41は、この第三絶縁層32aに形成されるビアコンタクト13d3及び第一絶縁層19に形成されるビアコンタクト13d2を介してTFT基板10に形成された駆動用TFT13のドレイン13dにコンタクト13d1を介して接続されている。反射電極41は、例えば0.05μm以上で、0.2μm以下のAl(アルミニウム)と0.005μm以上で、0.05μm以下のIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)との積層膜で形成される。
 
【0069】
  第三絶縁層32aは、OLED30aの発光領域を区画する第二絶縁層32が形成される際に、第一領域Rにも第二絶縁層32と同じ材料の絶縁層で形成されている。しかし、
図2に示されるように、この第二絶縁層32が、第一領域Rと第二領域Tとの境界部で分断され、その境界部で第一絶縁層19が露出している。このように、第一領域Rにも第三絶縁層32aが形成されることによって、液晶層42の下層の高さを二つの領域R、T間で近づけている(厳密には被覆層35の厚さ、約1μmの差がある)。
 
【0070】
  液晶層42は、液晶組成物を含み、例えばECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどの種々の表示モードが用いられ得る。偏光板を設けずに表示を行う場合には、ゲスト・ホスト形が用いられ得る。液晶層42は、偏光板47との協働で、反射電極41と対向電極43との両電極間の電圧のオンオフに応じて入射光を画素ごとに遮断/通過させる。ECBモードであれば、光が液晶層42を透過し反射電極41に到達するまでに、電圧オン時に、1/4波長の位相差を生じる厚さに形成されることが好ましい。液晶層42と接するTFT基板10の表面にも、液晶配向膜45が形成されている。この液晶配向膜45も液晶分子の配向を規制するものである。このTFT基板10に形成される液晶配向膜45と対向基板20に形成される液晶配向膜46の配向は、例えば90°の角度で相違するように形成される。
 
【0071】
  この液晶配向膜45、46により、液晶層42の配向が規制されるが、例えば液晶層42の両面に電圧が印加されない状態で、液晶分子が垂直に配列されるように液晶配向膜45、46が形成されると、後述されるように、反射電極41と対向電極43との間にしきい値以上の電圧が印加されない状態で外光の反射光は外に出ず、黒色表示、すなわちノーマリブラックになる。この場合、TFT基板10側の液晶配向膜45は、OLED30aが形成されているので、ラビング加工や紫外線照射を行い難い。そのため、プレチルト(傾き)角は形成されず、実質的に垂直配向になるが、対向基板20側の液晶配向膜46には、80°から89.9°のプレチルト角が形成されることが好ましい。この程度のプレチルト角が形成されることによって、両電極間に電圧が印加された際に主にセル厚み方向の中央付近の液晶分子が水平配向に移行しやすい。
 
【0072】
  偏光板47は、
図2に示される例では、円偏光板が用いられている。円偏光板は、直線偏光板と1/4波長の位相差板との組み合せで形成される。さらに、幅広い波長に対して1/4波長条件を示すように、1/2波長板が併用される場合もある。位相差板は、一軸延伸された光学フィルムからなっている。この円偏光板を通過した光は、直線偏光の位相が1/4波長ずれ、例えば右偏光となる。前述のように、液晶層42の両面側に設けられる反射電極41と対向電極43にしきい値以上の電圧が印加されないで、液晶層42が垂直配向であれば、外光はそのまま液晶層42を通過して、反射電極41で反射することによって偏光が右円偏光から左円偏光に逆転する。このため、入射方向と回転方向が逆進して円偏光板47に戻った外光は直線偏光板の透過軸と90°直交した角度の直線偏光となり、偏光板47を通ることができなくなり、黒色表示となる。一方、液晶層42の両面の電極にしきい値以上の電圧が印加されることによって、液晶分子が水平配向となり、外光は液晶層42でさらに1/4波長の位相がずれるため、反射電極41に到達する際には、1/2波長の位相差になり、直線偏光として反射する。反射した後、外光は入射のときと逆の経路を経るため、偏光板を透過して白色表示となる。なお、偏光板47は、円偏光板に限定されるものではなく、表示モードに応じて直線偏光板でもよい。
 
【0073】
  図2に示される例では、対向電極43は、前述のように、液晶層42の画素ごとに電圧を印加したり、印加しなかったりするための全画素に共通の電極である。そのため、表示画面の全面に形成され、前述したOLED30aが形成された第二領域Tにも形成されている。しかし、この対向電極43は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などによって形成されており光を透過させるので、前述したように何ら問題はない。
 
【0074】
  シール剤50は、前述した実施形態1のシール剤50と同じで、低融点ガラスのガラスフリットのペースト、ガラスリボンなどによって、TFT基板10又は対向基板20のOLED30a及びLCD30b(素子形成領域A)の周囲で、
図3Aに示されるように、付着され、2枚の基板が重ねられた後に接着される。接着は、レーザ光などによってガラスフリットの全体又はガラスリボンの少なくとも基板10、20との接合部の低融点ガラスが軟化状態にされることによって接着されている。
 
【0075】
  シール剤50とLCD30b及びOLED30aとの間に、シール剤50と離間して隔壁60が形成されていることも、前述した実施形態1の隔壁60と同じであり、実施形態1と同様の材料で形成され、その説明は省略される。
図2に示される例では、隔壁60とLCD30b又はOLED30aとが接触しているが、隔壁60と電子素子30とは接触していても、離間していても構わない。シール剤50と隔壁60とが離間していることが重要である。
 
【0076】
(第三実施形態:表示装置の製造方法)
  次に、本発明の第三実施形態の表示装置の製造方法が、
図2及び
図4を参照しながら、説明される。本実施形態の表示装置の製造方法は、少なくとも駆動素子を形成したTFT基板10を形成する工程(S1)と、TFT基板10の上方又は表面上にLCD30b用の反射電極41及びOLED30aを形成する工程(S2)と、LCD30b用の対向電極43を有する対向基板20を形成する工程(S3)と、TFT基板10又は対向基板20のいずれかで、LCD30b用の反射電極41及びOLED30aを形成する素子形成領域Aの周縁部に、隔壁材料61(
図3A参照)を配置する工程(S4)と、TFT基板10又は対向基板20のいずれかで、隔壁60のLCD30b及びOLED30aの素子形成領域Aと反対の部位に隔壁60と離間してシール剤材料51(
図3A参照)を配置する工程(S5)と、隔壁60で囲まれるLCD30b及びOLED30aの素子形成領域Aに液晶材料を滴下する工程(S6)と、TFT基板10と対向基板20とを重ね合せる工程(S7)と、シール剤材料51によってTFT基板10と対向基板20とを接着する工程(S8)と、を具備している。そして、シール剤材料51に低融点ガラスを含む材料を用い、かつ、シール剤材料51をレーザ光の照射によってTFT基板10及び対向基板20と接着する。
 
【0077】
  なお、電子素子30が形成されない基板の素子形成領域Aは、2枚の基板が重ね合されたときの電子素子30が形成された基板の素子形成領域Aに対応する領域を意味している。また、上記各工程は、この順でなければならないというものではなく、例えばステップS3が最初に行われてもよく、また、S4とS5の順番が逆であってもよい。さらに、
図4においては、ステップS4、S5がTFT基板11でなされているが、ステップS4、S5は対向基板20でなされてもよい。
 
【0078】
  まず、TFT基板10が形成される(S1)。具体的には絶縁基板11の上に半導体層14(ソース12s、ドレイン13dが形成される半導体層)及び図示しないバスラインが形成され、その上にSiO
2などからなるゲート絶縁膜15が形成される。そして、半導体層14の所定の領域に不純物がドープされて、駆動用TFT13のドレイン13d(
図2参照)、電流供給用TFT12のソース12s(
図2参照)などがそれぞれ形成される。そして、ゲート絶縁膜15の上に、駆動用TFT13のゲート電極13g、電流供給用TFT12のゲート電極12g、及び補助容量用電極14が形成される。その表面にSiN
xなどからなるパシベーション膜16が形成される。そして、駆動用TFT13のドレインコンタクト13d1などのコンタクトが形成され、その表面を平坦にする第一絶縁層19が、例えばポリイミドなどによって形成される。この第一絶縁層19は、前述したように、SOGなどの無機膜で形成されてもよい。
 
【0079】
  次に、TFT基板10の上方又は表面上にLCD30b用の反射電極41及びOLED30aが形成される(S2)。具体的には、OLED30a用の第一電極(アノード電極)31が、有機層33との関係でITO/APC(Ag-Pd-Cu合金)/ITOの積層膜によって形成される。駆動用TFT13のドレイン13dと接続するコンタクト13d2も第一絶縁層19の表面に形成される。このLCD30b用のコンタクト13d2は、コンタクト孔を形成して導電層などの埋め込みによって形成される。
 
【0080】
  そして、ポリイミド、アクリル樹脂などによって第二絶縁層32が形成される。第二絶縁層32は、OLED30aの各画素を区分するもので、第一電極31を取り囲み、かつ、凸部を有するように形成される。この第二絶縁層32は、液状の状態で全面に樹脂膜が形成され、その後、パターニングにより、所望の位置に所望の形状で形成される。本実施形態では、TFT基板10の全面に、第一電極31の周囲に形成される凸部の高さに合せた厚さで塗布され、パターニングによって第一電極31や第三絶縁層32aとの境界部などを露出させている。これによって、第二絶縁層32と第三絶縁層32aとが分離され、その間に第一絶縁層19が露出するように形成される。その結果、この上に形成される被覆層35によってOLED30aの有機層33やその上の第二電極34が完全に被覆され得る。
 
【0081】
  この第二絶縁層32のパターニングの際に、第一領域Rのコンタクト13d1と接続するコンタクト孔が形成され、第三のコンタクト13d3が形成される。その結果、第三絶縁層32aの一部に駆動用TFT13のドレイン13dに接続された第三のコンタクト13d3が露出している。また、第二絶縁層32と第三絶縁層32aとに分断されて露出する第一絶縁層19にもトレンチが形成され、その下層のパシベーション膜16又は配線もしくはパッドの金属膜を露出させる。後工程において被覆層35を埋め込んで無機膜同士の接合を図るためである。第一絶縁層19が無機膜によって形成されている場合には、このトレンチを形成する必要はない。
 
【0082】
  その後、有機層33が形成される。この有機層33は、水分や酸素に弱くパターニングすることができないため、蒸着マスクを用いて、必要な領域のみに蒸着される。またはインクジェット法などの印刷によって形成されてもよい。蒸着で形成する場合、第二絶縁層32の凸部上に合せて蒸着マスクが配置され、るつぼなどから昇華又は気化された有機材料が第二絶縁層32により囲まれた第一電極31の上に積層される。この有機材料は、前述したように、種々の材料で積層される。
 
【0083】
  次に、カソード電極となる第二電極34が有機層33及び第二絶縁層32の凸部を含めたOLED30aのほぼ全面に形成される。この第二電極34は、例えばMg-Ag合金が用いられ、蒸着マスクを用いた蒸着により形成される。
 
【0084】
  その後、被覆層35が形成される。この被覆層35は、有機層33を水分や酸素から保護するための層で、SiN
xやSiO
yなどの無機膜で形成される。しかも、成膜の際にピンホールが形成される場合があり得るため、少なくとも二層を有する多層膜で形成されることが好ましい。この被覆層35は、CVD法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法などによって形成される。好ましくは、被覆層35は、異なる材料で多層に積層される。この被覆層35は、OLED30aの上に形成されるが、第一領域RであるLCD30b側に延びて形成されていてもよい。但し、コンタクト13d3を跨がないようにする必要がある。コンタクト13d3の上にも形成されると、被覆層35にコンタクトのための貫通孔を形成する必要が生じる。その場合、貫通孔の内面を伝って、第二電極34や有機層33に水分が浸入するからである。
 
【0085】
  この被覆層35の形成の際に、第一絶縁層19に形成されたトレンチ内にもその材料が埋め込まれ、被覆層35は第一絶縁層19の下層のパシベーション膜16などの無機膜と接合される。この被覆層35は、全面に形成されてから、エッチングによりパターニングされてもよい。被覆層35がパシベーション膜16などと接合していて、水分の浸入を阻止するからである。しかし、マスクを用いて、所望の場所のみに堆積することもできる。後者の方が、水分の浸入を防止するという観点からは好ましい。
 
【0086】
  その後、第一領域Rの第三絶縁層32aの表面にLCD30b用の反射電極(画素電極)41が形成される。その結果、反射電極41は、コンタクト13d3と電気的にも接続される。この反射電極41は、例えばAlとIZOで形成される。この反射電極41も、OLED30aの全面を除いた一画素のほぼ半分に形成される。この場合も、全面に蒸着などによって形成された反射膜のパターニングにより形成されてもよい。被覆層35によって完全に有機層33などが被覆されているからである。しかし、マスクを被せて所望の領域のみに形成されてもよい。これによって、TFT基板10側の第一領域R、第二領域Tの電子素子30が形成される。
 
【0087】
  一方、LCD30b用の対向電極43を有する対向基板20が形成される(S3)。対向基板20は、ガラス板又は樹脂フィルムなどの絶縁基板21に透光性の対向電極43及び必要な場合には、カラーフィルタ44や液晶配向膜46を積層することによって形成される。
 
【0088】
  その後、TFT基板10又は対向基板20のいずれかで、LCD30b用の反射電極41及びOLED30aを形成する領域(素子形成領域A)の周縁部に、隔壁材料61(
図3A参照)が配置される(S4)。この隔壁材料61は、TFT基板10でなくて、対向基板20に配置されてもよい。この場合、TFT基板10と対向基板20とが重ね合されたときに、その隔壁材料61で囲まれる領域内にLCD30bの反射電極41及びOLED30aが収容されるように形成される必要がある。すなわち、TFT基板10の素子形成領域Aと向き合う対向基板20の領域の周縁に形成される。この隔壁材料61は、前述したように、無機材料が好ましいが、エポキシ樹脂などの樹脂材料も使用し得る。これらの隔壁材料61は、ペースト状にして塗布することによって、配置され得るし、リボンなどにして接着されてもよい。この隔壁材料61の高さは、貼り合される2枚の基板の間隔に合せて選択される。通常、隔壁材料61の高さは5μm以上で10μm以下程度である。
 
【0089】
  ガラスリボンなどの固形物にして配置する場合には、接着剤などによってガラスリボンが固定されてもよい。この隔壁材料61は、両基板10、20を重ね合せた後に固着しないので、基板との接触面の全面で貼り付けられることが好ましい。しかし、接着した後に、または前述した熱硬化性樹脂で形成した後で、両基板10、20を重ね合せる前に加熱して固化させることで有機材料に含まれるガスを追い出してもよい。この隔壁材料61は、
図2に示されるように、LCD30b又はOLED30aと接触するように形成されてもよいし、これら電子素子30と離間して形成されてもよい。TFT基板10及び対向基板20に形成されるITO膜やCF膜、絶縁膜などが除去されていることが好ましいが、除去されていなくてもよい。
 
【0090】
  また、この隔壁60をTFT基板10及び対向基板20の両方と接着する場合には、隔壁材料61が無機材料の粉末からなる場合にはその上面に接着剤、特に紫外線などにより硬化し得る接着剤が塗布されることが好ましい。また、前述した紫外線硬化性樹脂、可視光硬化性樹脂、遅延硬化性樹脂などを用いれば、接着時にも殆どガスの発生はなく、両基板10、20を確実に固定し得る。この場合、隔壁材料61を先に両基板と紫外線などによって接着しておいて、その後にシール剤材料51が両基板10、20と接着されてもよい。また、隔壁材料61及びシール剤材料51が同時に両基板10、20と接着されてもよい。
 
【0091】
  そして、TFT基板10又は対向基板20のいずれかで、隔壁60のLCD30b及びOLED30aの形成領域(素子形成領域A)と反対の部位に隔壁60と離間してシール剤材料51(
図3A参照)が配置される(S5)。このシール剤材料51は、TFT基板10及び対向基板20のどちらの基板に配置されてもよい。隔壁材料61が形成された基板にも限定されない。重ね合せたときに隔壁材料61とシール剤材料51とが一定の間隔を空けて、かつ、同じ高さになるように形成されれば、隔壁材料61とシール剤材料51とが別々の基板に形成されてもよい。このシール剤材料51も、前述したように、ペースト状にしてもよいし、ガラスリボンの一端部または両端部を接着剤で固定して配置されてもよい。この端部を接着剤で貼り付けて固定する場合でも、前述した
図3B〜3Cに示されるように、シール剤50の接着される部分の外側で接着されるように配置されることが好ましい。
 
【0092】
  このシール剤50は、TFT基板10及び対向基板20とシール剤材料51である低融点ガラスを軟化させて接着されるので、
図2に示されるように、絶縁基板11、21を露出させて直接接合することが好ましい。ITOなどの他の膜が介在していると、十分な接着が得られ難いからである。このシール剤材料51の高さも隔壁材料61の高さと同程度に形成される。
 
【0093】
  その後、隔壁60で囲まれるLCD30b及びOLED30aの形成領域に液晶材料(液晶組成物)が滴下される(S6)。この液晶組成物の滴下は、真空雰囲気下で行われることが好ましい。滴下の際の液晶材料の中に巻き込まれた気泡を放出しやすいからである。液晶材料が滴下された状態では、表面張力で盛り上がっており、基板が裏向けられても落下はしない。
 
【0094】
  そして、OLED30aなどが形成されたTFT基板10と対向基板20とがその電極が対向するように位置合せをして重ね合される(S7)。重ね合せた後は、大気圧、又はそれより高い圧力にすることが2枚の基板に均一に圧力をかけられるので好ましい。この場合、窒素中(100%のN
2雰囲気)又は乾燥空気中であることが好ましい。特に、乾燥空気は露点−50℃以下の乾燥空気が特に好ましい。この時点ではシール剤50によるシールはまだ行われていないので、シール剤50から内部に乾燥窒素が侵入し得る。
 
【0095】
  その後、例えばCO
2レーザなどによって、シール剤材料51を軟化状態にすることで、TFT基板10と対向基板20とが接着される(S8)。乾燥雰囲気下でシール剤50によるシールが行われることによって、少なくともシール剤50と隔壁60との間を乾燥窒素で満たすことができる。この接着後に絶縁基板21の対向電極43と反対面に、偏光板47が貼り付けられる。偏光板47が円偏光板の場合には、絶縁基板21側に1/4波長の位相差板、その上に直線偏光板が重ねて配置される。その結果、より一層外部からの水分などの侵入を阻止し得る。そして、反射電極41が形成された第一領域Rに反射型のLCD30bが形成され、第二領域TにOLED30aが形成されたハイブリッド型の表示装置200が得られる。
 
【0096】
(まとめ)
  (1)本発明の第一実施形態に係る封止構造体は、対向して配置された第一基板及び第二基板と、前記第一基板及び第二基板の間に形成された電子素子と、前記電子素子の外周で前記第一基板及び第二基板を封止したシール剤と、を備え、前記シール剤は低融点ガラス材を含み、前記第一基板及び第二基板のそれぞれと接着されており、前記シール剤と前記電子素子との間で、かつ、前記第一基板及び第二基板の間で、前記電子素子の外周を取り囲むように形成された隔壁が配置されており、前記シール剤と前記隔壁とは離間している。
 
【0097】
  本実施形態によれば、シール剤を低融点ガラスで接着しながら、シール剤と電子素子との間に隔壁が形成されており、しかもそのシール剤と隔壁との間が離間しているので、シール剤による接着の際に発生する熱が電子素子の側に伝達されにくくなる。その結果、確実なシールが得られながら、電子素子への悪影響が抑制される。
 
【0098】
  (2)前記離間する距離が0.5mm以上であることによって、空隙部を介することで熱伝導が極端に低下するので熱伝導の抑制効果かが大きい。
 
【0099】
  (3)前記シール剤は、ガラスフリットが軟化した後硬化したガラスであることが、製造が容易でありながら、完全なシールを行えるので好ましい。
 
【0100】
  (4)前記シール剤は、ガラスリボンが前記第一基板及び第二基板と接着することで形成されていてもよい。ガラスリボンであれば、バインダなどを用いる必要もないので、ガスを封入することなくより確実に不要ガスを排除し得る。
 
【0101】
  (5)  前記隔壁が、前記第一基板及び第二基板と接着していることによって、両基板の間隔が安定し、電子デバイスの性能の維持に好ましい。
 
【0102】
  (6)前記隔壁は、前記隔壁の体積の90%以上が無機材料であることによって、隔壁自体からのガスの発生を抑制し得るので好ましい。
 
【0103】
  (7)前記隔壁が、ガラス、セラミックス、半導体、金属及び金属酸化物の少なくとも一種の微粉末の固化体であることによって、簡単に入手できる材料であり、手軽に実施しやすい。
 
【0104】
  (8)前記隔壁が、ガラスリボンを含んでいることで、殆ど有機材料を含まない隔壁が得られる。
 
【0105】
  (9)前記隔壁が、紫外線硬化性樹脂、可視光硬化性樹脂、及び遅延硬化性樹脂の群れから選ばれる一種の接合樹脂であれば、従来の液晶表示装置を製造する場合と同様の方法で製造することができながら、隔壁材料によるガスの発生を抑制し得るので好ましい。
 
【0106】
  (10)本発明の第二実施形態に係る表示装置は、表示画面の画素ごとに形成された駆動素子及び前記駆動素子の上の表面を平坦にした第一絶縁層を有するTFT基板と、前記TFT基板の一画素の第一領域で、前記第一絶縁層の上方に形成された液晶表示素子用の反射電極と、前記TFT基板の前記第一絶縁層の上の前記第一領域と隣接する前記一画素の第二領域に形成され、第一電極、有機層、第二電極及び被覆層を有する有機EL表示素子と、前記反射電極と対向する対向電極を有し、前記TFT基板と対向して配置された対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板との間に充填された液晶層と、前記TFT基板及び前記対向基板を貼り合せたシール剤と、を具備し、前記シール剤は低融点ガラス材を含み、前記TFT基板及び前記対向基板のそれぞれと接着されており、前記シール剤と前記液晶層との間で、かつ、前記TFT基板と前記対向基板との間に隔壁が配置されており、前記シール剤と前記隔壁とが離間している。
 
【0107】
  本実施形態によれば、LCDとOLEDを含むハイブリッド型の表示装置において、水分や酸素に弱いOLEDを有効に保護し得る。その結果、車載用途等の厳しい環境条件下においても、更に信頼性の高い表示装置が得られる。
 
【0108】
  (11)本発明の第三実施形態に係る表示装置の製造方法は、少なくとも駆動素子を形成したTFT基板を形成する工程と、前記TFT基板の上方又は表面上に液晶表示素子用の反射電極及び有機EL表示素子を形成する工程と、液晶表示素子用の対向電極を有する対向基板を形成する工程と、前記TFT基板又は前記対向基板のいずれかで、前記液晶表示素子用の反射電極及び前記有機EL表示素子を形成する素子形成領域の周縁部に、隔壁材料を配置する工程と、前記TFT基板又は前記対向基板のいずれかで、前記隔壁材料の前記素子形成領域と反対の部位に前記隔壁材料と離間してシール剤材料を配置する工程と、前記隔壁材料で囲まれる前記素子形成領域に液晶組成物を滴下する工程と、前記TFT基板と前記対向基板とを重ね合せる工程と、前記シール剤材料によって前記TFT基板と前記対向基板とを接着する工程と、具備し、前記シール剤材料に低融点ガラスを含む材料を用い、かつ、前記シール剤材料をレーザ光の照射によって前記TFT基板及び前記対向基板と接着するものである。
 
【0109】
  本実施形態によれば、隔壁材料とシール剤材料とを一方の基板に配置しておいて、重ね合せてからシール剤材料を軟化状態にすることで封止しているので、容易に製造することができる。しかも封止前に隔壁の有機材料などを放出することができきるので、隔壁に樹脂などの有機材料を用いても、基板間にガスを封入する恐れをなくし得る。
 
【0110】
  (12)前記シール剤にガラスフリットを用い、印刷又はディスペンサによって前記ガラスフリットを塗布した後にレーザ光によって軟化させてから硬化させることで、前記TFT基板と前記対向基板とを接着することによれば、ガラス材を簡単に配置することができる。
 
【0111】
  (13)前記シール剤にガラスリボンを用い、前記ガラスリボンを前記TFT基板又は前記対向基板のいずれかの所定の部位に貼り付けた後に前記TFT基板と前記対向基板とを重ね合せてレーザ光によって接着することによれば、バインダなどに基づくガスを封入する恐れも少なくなる。
 
【0112】
  (14)前記ガラスリボンの貼り付けは、接着される前記シール剤の全周を複数個の分割領域にして、前記分割領域のそれぞれをカバーする複数個のガラスリボンの一端部または両端部を前記シール剤の接着部の前記隔壁と反対の部位で前記TFT基板又は前記対向基板に接着することで行うことによって、接着剤の部分はあまり加熱されないし、たとえ加熱されて接着剤からガスが発生しても、基板間の電子素子の領域には入らず、完全にガスの封入を抑制し得る。
 
【0113】
  (15)前記隔壁材料に、紫外線硬化性樹脂、可視光硬化性樹脂、及び遅延硬化性樹脂の群れから選ばれる一種の接合樹脂を用い、前記TFT基板と前記対向基板とを重ね合せた後に、前記隔壁材料を前記TFT基板及び前記対向基板のそれぞれと接合することができる。
 
【0114】
  (16)前記隔壁を、ガラス、セラミックス、半導体、金属及び金属酸化物の少なくとも一種の微粉末のペーストの塗布後に硬化させることによって形成し、その後に前記TFT基板と前記対向基板とを重ねて貼り合せることによって、バインダなどから発生するガスを予め放出しているので、基板間に封入する恐れはない。
 
【0115】
  (17)前記隔壁を無機材料のリボンを所定の部位に配置することで形成することで、隔壁からのガスの発生をほぼ抑制し得る。
 
【0116】
  (18)前記隔壁材料と、前記シール剤材料とを、前記TFT基板又は前記対向基板のいずれか一方に連続的に配置し、その後に前記TFT基板と前記対向基板とを重ね合せた後に前記シール剤を接着することで、シール剤や隔壁材料をペーストにして塗布する場合に連続して形成することができるので、効率的である。
 
【0117】
  (19)前記液晶組成物を滴下する工程と、前記TFT基板及び前記対向基板を重ね合せる工程とを真空雰囲気下で行い、その後、窒素雰囲気下で前記シール剤によって前記TFT基板と前記対向基板との接着を行うことができる。それによって、液晶材料の注入は真空下で行われるので、気泡を放出しやすく、その後は窒素雰囲気で封止が行われるので、シール剤と隔壁との間も真空ではなく、窒素が介在するので、外部からの水分などの浸入を阻止しやすい。
 
 
  本実施形態では、2枚の基板を封止するシール剤(50)は低融点ガラス材を含み、第一基板(10)及び第二基板(20)のそれぞれと接着されており、シール剤(50)と電子素子(30)との間で、かつ、第一基板(10)及び第二基板(20)の間で、電子素子(30)の外周を取り囲むように形成された隔壁(60)が配置されており、シール剤(50)と隔壁(60)とは離間している。その結果、2枚の基板の間に形成される電子素子を水分や酸素から保護しながら、封止の際の熱による電子素子の劣化が防止され得る。