(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヨーク部の下面、前記コア連結部の下面又は前記連結凸部の下面のいずれかに、前記インシュレータに覆われていない露出面が設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載のモータ用ステータ。
前記ティース部の下面の前記巻付ガイド部の内周面よりも内側の部位の少なくとも一部は、前記インシュレータによって覆われていない露出面である請求項9に記載のモータ用ステータ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本明細書では、便宜上、モータの中心軸Jの方向を上下方向として説明するが、本発明によるモータの使用時における姿勢を限定するものではない。また、モータの中心軸Jの方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。同様にして、ステータ及びステータコアについても、モータ内に組み込まれた状態においてモータの軸方向、径方向及び周方向と一致する方向を「軸方向」、「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。
【0018】
実施の形態1.
<モータM>
図1は、本発明の実施の形態1によるステータ102を備えたモータMの断面図であり、モータMの中心軸Jを含む切断面により切断した場合の断面が示されている。
【0019】
モータMは、シャフト100にロータ101が固定され、ロータ101の径方向外方に間隙を介してステータ102を対向させたインナーロータ型モータであり、樹脂製のケーシング110を備えている。ロータ101の軸方向の両側には、シャフト100を支持する上軸受103及び下軸受104が設けられている。
【0020】
モータMは、家電製品、事務機器、医療機器、自動車などの駆動装置の駆動源として使用され、駆動装置の枠体に固定される静止部と、当該静止部により回転可能に支持される回転部とにより構成される。回転部には、シャフト100及びロータ101が含まれる。一方、静止部には、ステータ102、上軸受103及び下軸受104が含まれる。
【0021】
シャフト100は、軸方向(上下方向)に延びる略円柱状の部材であり、上軸受103及び下軸受104により支持され、中心軸Jを中心として回転する。シャフト100の下端部は、ケーシング110の下方へ突出し、当該突出部が出力軸として、駆動装置の駆動部に連結される。
【0022】
ロータ101は、シャフト100に固定された円筒体であり、ステータ102の径方向内側において、シャフト100とともに回転する。
【0023】
ステータ102は、モータMの電機子であり、ロータ101の径方向外方に配置され、ケーシング110に固着されている。ステータ102は、略円環形状を有し、その内周面を露出させた状態でケーシング本体111の円環部内に埋め込まれ、露出している内周面が、間隙を介してロータ101の外周面と対向する。
【0024】
ケーシング110は、ケーシング本体111及びケーシングカバー112により構成される。ケーシング本体111は、軸方向上方に向けて開口するロータ挿入口を有する有底円筒形の樹脂成形品であり、ステータ102の外周及び軸方向両側を覆う円環部と、下軸受104を保持する底板部とを備えている。ケーシング本体111は、ステータ102のインサート成形により、ステータ102と一体化するように成形された樹脂成形品である。このようなケーシング本体111を備えたモータは、モールドモータと呼ばれる。ケーシングカバー112は、ケーシング本体111のロータ挿入口に取り付けられる蓋部であり、上軸受103を保持している。
【0025】
<ステータ102>
図2及び
図3は、本発明の実施の形態1によるステータ102の一構成例を示した図である。
図2は、
図1のステータ102の外観図であり、軸方向上方から見た場合の様子が示されている。
図3は、ステータ102の断面図であり、
図2のA−A切断線により切断した場合の断面が示されている。
【0026】
ステータ102は、ステータコア2、コイル3、渡り線4及びインシュレータ5を備えている。
【0027】
ステータコア2は、ケイ素鋼板などの磁性鋼板を同一形状に加工し、軸方向に積層した積層鋼板からなる。各磁性鋼板は、環状のコアバック部2bと、コアバック部2bの内周面から径方向内方に突出する複数のティース部2tとを有する。コアバック部2bは、複数のヨーク部2yを連結して構成され、ヨーク部2yを一辺とする略環状形状である。また、ティース部2tは、ヨーク部2yに対応して形成され、ヨーク部2yの周方向中央に連結されている。なお、本実施形態では、ヨーク部2yの径方向外側の辺が直線状であり、コアバック部2bが正多角形状となる場合の例について説明するが、ヨーク部2yの径方向外側の辺を円弧状にし、コアバック部2bを円環形状にすることもできる。
【0028】
コイル3は、インシュレータ5を介して、ステータコア2のティース部2tに巻回された巻き線である。コイル3に駆動電流を供給すれば、磁芯であるティース部2tに径方向の磁束が発生する。このため、ティース部2tとロータ101との間に周方向のトルクが発生し、シャフト100が中心軸Jを中心として回転する。
【0029】
渡り線4は、コイル3に駆動電流を供給するために、異なる2つのコイル3を相互に接続し、あるいは、コイル3を駆動回路(不図示)に接続する配線である。渡り線4は、コイル3から引き出され、ヨーク部2yに沿って周方向に延び、隣接する2つのヨーク部2yを跨ぐように配置されている。本実施の形態によるステータ102は、ヨーク部2yの軸方向の両側に渡り線4が配置されている。上渡り線4Uは、ヨーク部2yの軸方向上方に配置された渡り線4であり、下渡り線4Dは、ヨーク部2yの軸方向下方に配置された渡り線4である。
【0030】
インシュレータ5は、コイル3及び渡り線4をステータコア2から絶縁する絶縁部材であり、ステータコア2のインサート成形により、ステータコア2と一体化するように成形され、ステータコア2の表面に密着している樹脂成形品である。インシュレータ5は、ヨーク絶縁部51、配線支持部52、ティース絶縁部53、巻付ガイド部54及びティース先端絶縁部56を備えている。
【0031】
ヨーク絶縁部51は、渡り線4がステータコア2のヨーク部2yと接触するのを防止するための絶縁性部材であり、ヨーク部2yの軸方向の上面及び下面に形成されている。ヨーク上面絶縁部51Uは、ヨーク部2yの上面に形成されたヨーク絶縁部51である。ヨーク部2yの上面は、ヨーク上面絶縁部51Uによって覆われ、上渡り線4Uがヨーク部2yと接触するのを防止している。ヨーク下面絶縁部51Dは、ヨーク部2yの下面に形成されたヨーク絶縁部51である。ヨーク部2yの下面には、ヨーク下面絶縁部51Dが形成されない領域があり、当該領域内においてステータコア2が露出している。
【0032】
配線支持部52は、渡り線4を支持する支持部材であり、ヨーク絶縁部51から軸方向に突出する形状を有する。上配線支持部52Uは、ヨーク上面絶縁部51Uから軸方向上方へ突出する配線支持部52であり、上配線支持部52Uの径方向外側には、2つのガイド溝52a,52bが形成され、当該ガイド溝52a,52b内に上渡り線4Uが配置されている。2つのガイド溝52a,52bは、ともに周方向に延び、軸方向の位置を互いに異ならせて形成された溝部であり、各ガイド溝52a,52b内に異なる渡り線4を収容することにより、2本の渡り線4が互いに接触することなく保持される。下配線支持部52Dは、ヨーク下面絶縁部51Dから軸方向下方へ突出する配線支持部52であり、下配線支持部52Dの径方向外側にも、周方向に延びる2つのガイド溝52a,52bが形成され、当該ガイド溝52a,52b内に下渡り線4Dが配置されている。
【0033】
ティース絶縁部53は、コイル3がステータコア2のティース部2tと接触するのを防止するための絶縁性部材であり、ティース部2tのコイル装着面2wを覆う筒状体として形成される。コイル装着面2wは、コイル3が装着されるティース部2tの表面領域であり、ティース部2tの上面、下面、及び、周方向の両端面で構成される。また、ティース絶縁部53は、ヨーク絶縁部51と連結されている。
【0034】
巻付ガイド部54は、コイル装着面2wの径方向内縁を規定する絶縁性のコイル支持部材であり、ティース絶縁部53から上下方向に突出する形状、例えば、フランジ形状を有する。コイル装着面2wは、配線支持部52と巻付ガイド部54に挟まれた領域であり、その径方向外縁は、配線支持部52の内周面によって規定され、その径方向内縁は、巻付ガイド部54の外周面によって規定されている。巻付ガイド部54は、ティース部2tの内周面よりも径方向外側に形成され、巻付ガイド部54の内周面よりも径方向内側のティース部2tをティース先端部2tsと呼ぶことにする。
【0035】
ティース先端絶縁部56は、ティース先端部2tsに形成された絶縁性部材である。つまり、ティース先端絶縁部56は、ティース絶縁部53を巻付ガイド部54よりも径方向内方へ突出させた突出部である。ティース先端絶縁部56は、ティース先端部2tsの上面を覆っている。一方、ティース先端絶縁部2tsの下面には、ティース先端絶縁部56が形成されない領域があり、当該領域内においてステータコア2が露出している。巻付ガイド部54に隣接して、その径方向内側にティース先端絶縁部56を形成することにより、コイル3の圧力により巻付ガイド部54が径方向内側へ傾き、ロータ101と接触するのを防止することができる。また、樹脂成形時のゲート跡が巻付ガイド部54の内周面に形成されてもロータ101と接触することはない。さらに、モータMがモールドモータである場合、ケーシング110の樹脂を巻付ガイド部54の内周面上にも形成することができるので、ステータ102をより強固に支持することができる(
図1参照)。
【0036】
<展開ステータ105>
図4は、展開ステータ105を軸方向上方から見た外観図であり、
図2のステータ102の折り曲げ前の状態が示されている。展開ステータ105は、直線状のステータコア2にインシュレータ5を形成した後、さらにコイル3及び渡り線4を取り付けることによって製作され、両端が開放された細長い形状を有している。環状ステータ102は、このような展開ステータ105を略円環状に折り曲げ、両端を連結することにより得られる。
【0037】
展開ステータ105は、環状ステータ102に比べて、ティース部2t間の間隔が広いため、コイル3の装着作業が容易になる。このため、まず展開ステータ105を製作し、その後に折り曲げることにより、環状ステータ102が製作される。本実施の形態では、展開ステータ105が略直線形状を有する場合について説明するが、本発明によるステータ102は、折り曲げ前の形状が直線形状のものに限定されない。
【0038】
図5〜
図8は、展開ステータ105の製作工程を時系列順に示した図である。
図5及び
図6には、インシュレータ5が形成される前のステータコア2が示されている。
図7には、
図5のステータコア2に対し、インシュレータ5が形成された後の状態が示され、
図8には、更にコイル3及び渡り線4が形成された後の状態が示されている。
【0039】
<インシュレータ5の形成前>
図5は、インシュレータ5が形成される前のステータコア2を示した図であり、軸方向上方から見た様子が示されている。ステータコア2は、両端が開放された細長い形状を有する帯状コアであり、折り曲げ可能なコア連結部21を介して、2以上の分割コア20をシリアルに連結して構成される。例えば、8個の分割コア20が7個のコア連結部21によって連結されている。なお、本実施の形態では、ステータコア2が略直線形状を有するストレートコアの場合について説明するが、本発明によるステータ102に用いることができるステータコア2は、折り曲げ前の形状が直線形状のものに限定されない。また、本明細書における帯状コアは、2以上の分割コア20がシリアルに連結されたステータコア2を意味し、折り曲げの前後を問わないものとする。従って、環状ステータ102及び展開ステータ105は、いずれも帯状コアを含んでいる。
【0040】
分割コア20は、周方向に延びるヨーク部2yと、ヨーク部2yの周方向中央から径方向内方に延びるティース部2tとによって構成される。隣接する2つの分割コア20は、ヨーク部2yの周方向端辺の一部が、コア連結部21を介して互いに連結される。より具体的には、ヨーク部2yの周方向端面のうち、外周近傍の領域がコア連結部21に連結され、コア連結部21よりも径方向内方の領域が合わせ面200となる。
【0041】
コア連結部21は、ヨーク部2yに比べて、径方向の幅が十分に狭く、容易に変形させることができる。このため、外力を加えることにより、ヨーク部2yを変形させることなく、コア連結部21を変形させ、ステータコア2を折り曲げることができる。コア連結部21の径方向中央は、ヨーク部2yの径方向中央よりも径方向外方に位置している。
【0042】
合わせ面200は、ヨーク部2yの周方向端面であり、隣接する分割コア20間において周方向に対向する。折り曲げ前のステータコア2は、隣接する合わせ面200がV字形状に配置され、これらの合わせ面200によって挟まれたV字空間201が、分割コア20間に形成されている。このV字空間201は、径方向内方に向かって開くV字形状の空間であり、ステータコア2を折り曲げることにより、コア連結部21を支点として、当該V字空間201が閉じる。このとき、コア連結部21が折り曲げられ、隣接する合わせ面200が互いに近づき、その間隔は、コア連結部21の周方向の幅よりも狭くなる。
【0043】
アライメント溝部202は、ヨーク部2yの外周面に形成された位置決め用の溝部である。ヨーク部2yの外周縁には、例えば、周方向中央に矩形断面を有するアライメント凹部が配置されている。このため、ヨーク部2yの外周面には、軸方向に延びるアライメント溝部202が形成される。アライメント溝部202は、インサート成形によりインシュレータ5を形成するとき、金型内におけるステータコア2の位置決めに使用される。
【0044】
連接部203は、ヨーク部2yの外周の両端部であり、コア連結部21と隣接する。ヨーク部2yの外周が直線状であれば、環状のステータコア2の外周は、コア連結部21を頂点とする正多角形となる。このため、ステータコア2の外周を連接部203において傾斜させ、正多角形の頂点をモータMの中心軸Jに近づけることにより、モータMを小型化することができる。なお、ヨーク部2yの外周が円弧である場合には、例えば、連接部203を径方向と直交する直線にすることができ、あるいは、連接部203を省略することもできる。
【0045】
連結凹部22及び連結凸部23は、帯状のステータコア2の両端を連結する一対の連結手段である。連結凹部22は、ステータコア2の一端を周方向に窪ませた凹部であり、連結凹部22は、ステータコア2の他端を周方向に突出させた凸部である。連結凹部22及び連結凸部23は、いずれもヨーク部2yの周方向端面の互いに対応する位置に設けられ、軸方向に延びる形状を有している。これらの周方向端面は、環状ステータ102において互いに正対する合わせ面200となる。つまり、これらの合わせ面200を互いに正対させると、連結凹部22に連結凸部23が収容され、展開ステータ105が環状ステータ102になる。
【0046】
図6は、
図5のコア連結部21及びその周辺を拡大して示した図である。コア連結部21の径方向内方には、内側溝204が形成され、コア連結部21の径方向外方には、外側溝205が形成されている。
【0047】
内側溝204は、ステータコア2の折り曲げによる応力集中を緩和するために、コア連結部21の内周面に形成された溝部である。内側溝204を設けることにより、コア連結部21の径方向内方において、V字空間201の最深部を径方向外方へ突出させた空間が形成される。このため、コア連結部21の内周面が広がり、ステータコア2を折り曲げた場合に、コア連結部21の内周面における応力集中を緩和することができる。内側溝204は、例えば、V字空間201と連通する略円筒形の空間として形成されることが望ましい。
【0048】
外側溝205は、コア連結部21に対応づけて、帯状のステータコア2の外周面に形成された軸方向に延びる溝部である。コア連結部21の外周面に外側溝205を設けることにより、ステータコア2を折り曲げる際、正確にコア連結部21で折り曲げることができ、折り曲げ位置の精度を向上させることができる。また、ステータコア2を折り曲げることによって生じる応力集中を緩和させることができる。
【0049】
<インシュレータ5の形成後(上面)>
図7は、インシュレータ5が形成された後のステータコア2を示した図であり、軸方向上方からみた様子が示されている。インシュレータ5は、金型内に帯状のステータコア2を挿入した後に樹脂を注入するインサート成形によって、ステータコア2と一体化するように形成される。また、インシュレータ5は、ヨーク部2yの上面及び下面と、コイル装着面2wとに形成され、ヨーク部2yの外周面及び合わせ面200と、ティース部2tの内周面とには形成されない。
【0050】
ヨーク部2yの上面には、当該上面と同一の平面形状を有するインシュレータ5が形成され、その全面がインシュレータ5によって覆われている。また、コア連結部21の上面にも、当該上面と同一の平面形状を有するインシュレータ5が形成され、その全面がインシュレータ5によって覆われている。つまり、ヨーク部2y及びコア連結部21は、その上面全体が、インシュレータ5で覆われている。このため、渡り線4が撓むことにより、ステータコア2と接触するのを防止することができる。その結果、ステータコア2から渡り線4までの距離を短くすることができ、モータMの軸方向の大きさを小さくすることができる。また、インシュレータ5が、ヨーク部2y及びコア連結部21からはみ出さない平面形状を有することにより、展開ステータ105の折り曲げ時における不具合の発生を防止することができる。なお、平面形状とは、軸方向から見た場合の形状をいう。
【0051】
合わせ面200に隣接するインシュレータ5の端面は、合わせ面200と一致している。つまり、ヨーク部2yの上面のうち、合わせ面200に隣接する合わせ面隣接領域550にもインシュレータ5が形成され、かつ、当該インシュレータ5は、合わせ面200から周方向外側へ突出していない。合わせ面隣接領域550をインシュレータ5で覆うことにより、合わせ面200の上方を横切る渡り線4が、ステータコア2と接触するのを防止することができる。また、合わせ面200にインシュレータ5を形成せず、また、合わせ面200よりも周方向外側へインシュレータ5を突出させないことにより、インシュレータ5が、展開ステータ105を折り曲げる際の障害となり、環状ステータ102の真円度が低下するのを防止することができる。
【0052】
アライメント溝部202に隣接するインシュレータ5の端面は、アライメント溝部202と一致している。つまり、ヨーク部2yの上面のうち、アライメント溝部202に隣接するアライメント溝部隣接領域551にインシュレータ5が形成され、かつ、当該インシュレータ5は、アライメント溝部202内へ突出していない。アライメント溝部隣接領域551をインシュレータ5で覆うことにより、アライメント溝部隣接領域551において渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することができる。
【0053】
連結凹部22に隣接するインシュレータ5の端面は、連結凹部22と一致している。つまり、ヨーク部2yの上面のうち、連結凹部22に隣接する連結凹部隣接領域552にインシュレータ5が形成され、かつ、当該インシュレータ5は、連結凹部22から外側へ突出していない。また、連結凸部23に隣接するインシュレータ5の端面も、連結凸部23と一致している。つまり、ヨーク部2yの上面のうち、連結凸部23に隣接する連結凸部隣接領域553にインシュレータ5が形成され、かつ、当該インシュレータ5は、連結凸部23から外側へ突出していない。連結凹部22及び連結凸部23をインシュレータ5で覆うことにより、連結凹部隣接領域552及び連結凸部隣接領域553において渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することができる。また、連結凹部22及び連結凸部23よりも周方向外側へインシュレータ5を突出させないことにより、インシュレータ5が、展開ステータ105の両端を連結する際の障害となるのを防止することができる。
【0054】
<インシュレータ5の形成後(下面)>
図8は、インシュレータ5が形成された後のステータコア2を示した図であり、軸方向下方からみた様子が示されている。図中のハッチングを付した領域は、ステータコア2が露出している領域を示している。インシュレータ5は、ヨーク部2yの下面のうち、合わせ面隣接領域550、アライメント溝部隣接領域551、連結凹部隣接領域552及び連結凸部隣接領域553には形成されていない。また、ティース部2tの下面のうち、ティース先端部2tsの下面には形成されていない。
【0055】
<コイル3及び渡り線4の形成後>
図9〜
図12は、コイル3及び渡り線4が形成された後のステータコア2、つまり、展開ステータ105を示した図である。
図9は、軸方向上方から見た様子が示されている。また、
図10〜
図12は、展開ステータ105の一部を拡大して示した拡大図であり、
図10には、径方向外方から見た場合の様子が示され、
図11には、径方向外方の斜め上方向から見た場合の様子が示され、
図12には、径方向外方の斜め下方向から見た場合の様子が示されている。
【0056】
<折り曲げ時の渡り線4>
図13A及び
図13Bは、折り曲げ前後における上渡り線4Uの様子を示した図であり、軸方向上方から見た様子を示した図である。
図13Aには、折り曲げ前の展開ステータ105が示され、
図13Bには、折り曲げ後の環状ステータ102が示されている。
【0057】
渡り線4は、合わせ面200を横切るように配置されている。つまり、
図13Aの展開ステータ105では、上渡り線4Uが、2つの合わせ面200により形成されるV字空間201上を通って、隣接する分割コア20を跨いでいる。一方、
図13Bの環状ステータ102では、渡り線4が、略一致している2つの合わせ面200上を通って、隣接する分割コア20を跨いでいる。
【0058】
展開ステータ105を折り曲げると、V字空間201を閉じるように、2つの合わせ面200が互いに近づき、略一致した状態になる。このため、上渡り線4Uに撓みが生じる。しかしながら、ヨーク部2yの上面は、その全面がインシュレータ5で覆われているため、上渡り線4Uが撓んでもステータコア2と接触することはない。特に、コア連結部21、合わせ面隣接領域550、アライメント溝部隣接領域551、連結凹部隣接領域552及び連結凸部隣接領域553にインシュレータ5を形成することにより、上渡り線4Uとステータコア2の接触を防止することができる。
【0059】
図14A及び
図14Bは、折り曲げ前後における下渡り線4Dの様子を示した図であり、軸方向下方から見た様子を示した図である。
図14Aには、折り曲げ前の展開ステータ105が示され、
図14Bには、折り曲げ後の環状ステータ102が示されている。なお、
図14A及び
図14Bは、インシュレータ5の形状を除き、
図13A及び
図13Bと同一である。
【0060】
コア連結部21の下面は、インシュレータ5で覆われておらず、ヨーク部2yの下面も、その一部がインシュレータ5で覆われていない。このため、展開ステータ105を折り曲げることにより下渡り線4Dが撓んだ場合であっても、下渡り線4Dが、露出しているステータコア2と接触しないように、ステータコア2から下渡り線4Dまでの距離を長くしておく必要がある。
【0061】
<インシュレータ5の成形方法>
図15〜
図20は、インシュレータ5の形成工程を説明するための図である。
図15〜
図17には、下金型300が示され、
図18には、上金型が示されている。また、
図19及び
図20には、下金型300及び上金型400を
図15のB−B切断線及びC−C切断線で切断した場合の断面がそれぞれ示されている。
【0062】
インシュレータ5は、下金型300及び上金型400によって形成されるキャビティ内に樹脂を注入することにより形成される樹脂成型品である。インサート成形によって形成することにより、インシュレータ5の外形は、樹脂成形用の金型で決まり、ステータコア2の軸方向高さのばらつきによる影響を受けにくくなる。特に、ティース絶縁部53の外形がばらつくことにより、コイル3の抵抗値がスロット間でばらつき、振動の発生原因となるのを防止することができる。
【0063】
<下金型300・第1凸状金型311・第2凸状金型312>
図15は、インシュレータ5の成形に使用される下金型300の一例を示した図であり、上金型(不図示)と会合させる金型合わせ面が示されている。下金型300には、下キャビティ310及びランナー溝320が形成されている。
【0064】
下キャビティ310は、インシュレータ5の軸方向下側部分を成形するための空間であり、上金型400の上キャビティ410とともに、樹脂成型用のキャビティを構成する。下キャビティ310内には、第1凸状金型311及び第2凸状金型312が配置されている。
【0065】
第1凸状金型311は、隣接する分割コア20間においてV字空間201を形成する合わせ面200に樹脂が形成されないように、当該合わせ面200を接触させる接触面311aを有している。第2凸状金型312は、コア連結部21に対応して、ヨーク部2yの外周面上に形成された外側溝205に樹脂が形成されないように、当該外側溝205を接触させる接触面312aを有している。
【0066】
第1凸状金型311及び第2凸状金型312は、いずれもステータコア2の軸方向の高さよりも高く、いずれも下金型300の金型合わせ面から突出するように配置されている。つまり、第1凸状金型311及び第2凸状金型312の上面は、いずれも上金型400との金型合わせ面よりも上金型400側に位置する。なお、第1凸状金型311及び第2凸状金型312は、下キャビティ310内に配置される別部品であってもよいが、下金型300と一体化された下金型300の一部であってもよい。
【0067】
ランナー溝320は、上金型400のランナー溝420とともに、ランナーを形成するための溝部である。ランナーは、キャビティ内に樹脂を射出するゲート421まで、流動状態の樹脂を送り込むための経路である。
【0068】
図16は、下キャビティ310内にステータコア2を配置した状態を示した図である。また、
図17は、
図16の一部を拡大して示した拡大図である。インシュレータ5は、ステータコア2のインサート成形によって形成される。つまり、ステータコア2をキャビティ内に配置した後、残された空間に樹脂を注入することにより成形される。
【0069】
接触面311aは、第1凸状金型311の側面の一部であり、下キャビティ310内に挿入されたステータコア2の両端以外の合わせ面200に接触する。従って、これらの合わせ面200には樹脂が形成されず、V字空間201に隣接するインシュレータ5の周方向端面を合わせ面200に一致させることができる。
【0070】
挿入部311bは、第1凸状金型311の先端に形成された突出部であり、内側溝204に挿入される。第1凸状金型311は、2つの接触面311aをV字形状に配置して構成される先鋭化した平面形状を有し、その先端に挿入部311bが設けられている。挿入部311bを内側溝204内に挿入することにより、内側溝204内にも樹脂は形成されない。なお、樹脂が入り込まない程度であれば、内側溝204と挿入部311bとの間には隙間があってもよい。
【0071】
接触面312aは、第2凸状金型312の側面の一部であり、連接部203に接触する。従って、ヨーク部2yの外周面の周方向の端部に形成された連接部203にも樹脂が形成されず、ヨーク部2yの上面に形成されたインシュレータ5の径方向外側の端面をヨーク部2yの外周面と一致させることができる。
【0072】
挿入部312bは、第2凸状金型312の先端に形成された突出部であり、外側溝205に挿入される。第2凸状金型312は、2つの接触面312aをV字形状に配置して構成される平面形状を有し、その先端に挿入部312bが設けられている。挿入部312bを外側溝205内に挿入することにより、外側溝205内にも樹脂は形成されない。なお、樹脂が入り込まない程度であれば、内側溝204と挿入部311bとの間には隙間があってもよい。ステータコア2の径方向外方に設けられる連接部203や外側溝205に樹脂が形成されると、展開ステータ105を折り曲げるのにより大きな力が必要になり、折り曲げにくくなる。このため、連接部203及び外側溝205に樹脂を形成しないことにより、環状ステータ102の製造が容易になる。
【0073】
接触面314は、下キャビティ310の側壁の一部であり、下キャビティ310内に挿入されたステータコア2の両端の合わせ面200に接触する。このため、これらの合わせ面200にも樹脂が形成されず、ステータコア2の周方向両端におけるインシュレータ5の端面を合わせ面200に一致させることができる。
【0074】
アライメント凸部315は、アライメント溝部202に収容される突出部である。ヨーク部2yの外周面に接触する下キャビティ310の接触面には、下キャビティ310内に向けて突出するアライメント凸部315が形成されている。アライメント凸部315をアライメント溝部202内に収容することにより、下キャビティ310内において、ステータコア2を正確に位置決めすることができる。
【0075】
下キャビティ310内に挿入されたステータコア2は、その下面の一部がキャビティ310の底部に当接することにより、下金型300によって支持される。本実施の形態によるステータコア2は、その下面のうち、コア連結部21、合わせ面隣接領域550及びアライメント溝部隣接領域551及びティース先端部2tsにインシュレータ5が形成されていない。このため、これらの領域がキャビティ310の底面に接触し、樹脂成形時のステータコア2を支持している。なお、ステータコア2の下面のうち、インシュレータ5を形成せずに露出させる領域は任意である。例えば、コア連結部21の下面又はヨーク部2yの下面のうち、少なくとも一部の領域を露出させていれば、樹脂成形時におけるステータコア2を支持することができる。
【0076】
<上金型400>
図18は、インシュレータ5の成形に使用される上金型400の一例を示した図であり、下金型300と会合させる金型合わせ面が示されている。上金型400には、上キャビティ410、第1上穴411、第2上穴412、ランナー溝420及びゲート421が形成されている。
【0077】
上キャビティ410は、インシュレータ5の軸方向上側部分を成形するための空間であり、下キャビティ310とともに、樹脂成型用のキャビティを構成する。
【0078】
第1上穴411は、第1凸状金型311の上部を収容する貫通孔又は凹部である。第1凸状金型311の上部は、下金型300の金型合わせ面から突出するように形成され、第1上穴411は、第1凸状金型311に対応する位置に形成されている。このため、下金型300と上金型400とを会合すれば、第1上穴411に第1凸状金型311の上部が収容される。
【0079】
第2上穴412は、第2凸状金型312の上部を収容する貫通孔又は凹部である。第2凸状金型312の上部は、下金型300の金型合わせ面から突出するように形成され、第2上穴412は、第2凸状金型312に対応する位置に形成されている。このため、下金型300と上金型400とを会合すれば、第2上穴412に第2凸状金型312の上部が収容される。
【0080】
ゲート421は、ランナーから送り込まれる流動状態の樹脂をキャビティへ注入するための注入口であり、ランナーよりも小さな断面積を有している。ゲート421は、巻付ガイド部54の内周面となる位置に設けられている。
【0081】
本実施の形態によるモータ用ステータ102の構成及び製造方法は、上述した通りである。以下では、上記構成及び製造方法を採用することによって生じる作用効果について詳しく説明する。
【0082】
(1)ヨーク部2y及びコア連結部21の上面を樹脂で覆う構造
本実施の形態による環状ステータ102は、折り曲げ可能なコア連結部21を介して2以上の分割コア20を連結したステータコア2と、インサート成形によりステータコア2と一体化するように形成されたインシュレータ5とを備えている。分割コア20は、周方向に延びるヨーク部2yと、ヨーク部2yから径方向内方へ延びるティース部2tとを有し、ヨーク部2yの周方向端部が、コア連結部21に連結される。また、インシュレータ5は、ティース部2tにおけるコイル装着面2wを覆うティース絶縁部53と、ヨーク部2yの上面及びコア連結部21の上面を覆うヨーク絶縁部51とが含まれる。
【0083】
このような構成を採用することにより、ヨーク部2yの上面及びコア連結部21の上面において、ステータコア2が露出せず、渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することができる。特に、コア連結部20において、ステータコア2を折り曲げることにより渡り線4に撓みが生じ、撓んだ渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することができる。
【0084】
また、撓んだ渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することにより、渡り線4とステータコア2の空間距離を短くすることができる。従って、モータMの軸方向の高さを小さくすることができる。
【0085】
(2)合わせ面200及びコア連結部21の内周面に樹脂を形成しない構造
本実施の形態によるモータ用ステータ102は、コア連結部21に隣接する2つのヨーク部2yの周方向端面には、コア連結部21を折り曲げることにより互いに近づく合わせ面200が形成され、コア連結部21は、合わせ面200よりも径方向外方に設けられ、合わせ面200及びコア連結部21の内周面には、インシュレータ5が形成されていない。
【0086】
コア連結部21に隣接する2つの合わせ面200と、コア連結部21の内周面とに対し、インシュレータ5を形成しないことにより、隣接する分割コア20間にインシュレータ5が挟まれ、展開ステータ105を折り曲げにくくなるのを防止することができる。従って、環状ステータ102の形状に歪みが生じ、その真円度が低下するのを抑制することができる。
【0087】
(3)内側溝204
本実施の形態によるモータ用ステータは、コア連結部21に隣接する2つの合わせ面200が、径方向内方に向かって開くV字空間201を形成し、コア連結部21の内周面が、V字空間201の最深部を径方向外方へ突出させる内側溝204を構成している。
【0088】
このような構成を採用することにより、コア連結部21の内周面の面積を増大させ、ステータコア2を折り曲げることによりコア連結部21に生じる応力集中を緩和することができる。従って、ステータコア2を容易に折り曲げることができる。内側溝204は、略円筒形であることが望ましい。
【0089】
(4)渡り線の支持構造
インシュレータ5は、ヨーク絶縁部51から軸方向上方に延びる配線支持部52を備え、配線支持部52の径方向外側には、周方向に延びるガイド溝52a,52bが形成され、渡り線4は、ガイド溝52a,52b内に配置される。このような構成を採用することにより、渡り線4がコイル3側へ引っ張られるのを防止することができる。
【0090】
特に、配線支持部52には、2以上のガイド溝52a,52bが形成され、これらのガイド溝52a,52bには、異なる渡り線4が配置されていることが望ましい。このような構成を採用することにより、ヨーク部2yの軸方向の一方において、互いに接触しないように、2以上の渡り線4を配置することができる。例えば、互いに接触することなく、複数相の渡り線4を同一のヨーク部2y上に配置することができる。
【0091】
(5)外側溝205
本実施の形態によるモータ用ステータは、外側溝205がコア連結部21の外周面に形成されている。このため、ステータコア2を折り曲げる際、正確にコア連結部21で折り曲げることができ、折り曲げ位置の精度を向上させることができる。また、ステータコア2を折り曲げることによって生じる応力集中を緩和させることができる。
【0092】
(6)連結凹部22及び連結凸部23
本実施の形態によるモータ用ステータは、帯状のステータコア2の一端に、周方向に突出する連結凸部23が設けられ、帯状のステータコア2の他端に、連結凸部23を収納する連結凹部22が設けられている。
【0093】
このような構成を採用することにより、互いに正対するように、ステータコア2の両端の合わせ面200を正確に位置決めして連結することができる。また、折り曲げ後のステータコア2の一端が径方向外方へ広がるのを抑制することができる。従って、環状ステータ102の真円度を向上させることができる。
【0094】
また、連結凸部23の上面をインシュレータ5で覆うことにより、連結凹部23上においてもステータコア2が露出せず、ステータコア2の端辺を跨いで配置された渡り線4がステータコア2と接触するのを防止することができる。
【0095】
(7)アライメント溝部202
本実施の形態によるモータ用ステータは、上下方向に延びるアライメント溝部202がヨーク部2yの外周面に形成されている。
【0096】
このような構成を採用することにより、インシュレータ5をインサート成形するための金型内にステータコア2を挿入する際、ステータコア2を正確に位置決めすることができる。また、樹脂を金型内に注入する際、樹脂の射出圧により、金型内におけるステータコア2の位置にずれが生じるのを防止することができる。例えば、金型のキャビティの内壁にアライメント凸部315を形成して、当該アライメント凸部315をアライメント溝部202内に収容すれば、金型内においてステータコア2を正確に位置決めすることができ、位置ずれが生じにくくなる。従って、インシュレータ5に対するステータコア2の偏りが生じるのを防止することができる。
【0097】
(8)ティース絶縁部53と巻付ガイド部54の関係
本実施の形態によるモータ用ステータは、ティース絶縁部53から上方に突出し、コイル装着面2wの径方向内縁を規定する巻付ガイド部54を備え、巻付ガイド部54の内周面は、ティース絶縁部53の内周面よりも径方向外側に配置されている。
【0098】
ティース絶縁部51を巻付ガイド部54よりも径方向内方に突出させることにより、径方向内方へ向かう圧力に対する巻付ガイド部54の強度を増大させることができる。従って、コイル3の圧力によって巻付ガイド部54が径方向内方へ傾き、ロータ101と接触するのを抑制することができる。
【0099】
また、巻付ガイド部54の内周面からロータ101までの距離が長くなることにより、巻付ガイド部54が径方向内方へ傾いた場合であっても、ロータ101と接触しにくくなる。さらに、巻付ガイド部54の内周面に樹脂成形時のゲート跡を形成することが可能になる。
【0100】
また、モータMがモールディングモータである場合であれば、ケーシング110の樹脂を巻付ガイド部54の内周面上にも形成することができるので、ステータ102をより強固に支持することができる。
【0101】
(9)ゲート跡
本実施の形態によるモータ用ステータは、巻付ガイド部54の内周面に射出成形時のゲート跡が形成されている。
【0102】
巻付ガイド部54は、通常、径方向の幅が薄い形状、例えば、フランジ形状を有している。このため、インシュレータ5の成形時に樹脂を充填しにくく、充填不足が生じ易い。金型のキャビティ内における樹脂の流入速度は、キャビティに樹脂を射出するゲートの近傍の方が速いことから、巻付ガイド部54の内周面にゲートを設けることにより、比較的大きな流入速度を利用し、巻付ガイド部54における樹脂の充填不足を防止することができる。
【0103】
(10)ステータコアの下面の一部を露出
本実施の形態によるモータ用ステータは、ヨーク部2yの下面、コア連結部21の下面又はティース先端部の下面のうち、少なくとも一部がインシュレータ5により覆われていない。
【0104】
ヨーク部2y又は、コア連結部21又はティース先端部の下面の少なくとも一部の領域にインシュレータ5を形成しないことにより、樹脂形成時に、当該領域を下キャビティ310の底面に接触させ、ステータコア2を支持することができる。例えば、コア連結部21付近は、面積が比較的広く、ステータコア5を支持しやすいため、ステータコア2を支持するための領域として好適である。
【0105】
(11)第1凸状金型311及び第1上穴
本実施の形態によるモータ用ステータの製造方法は、ステータコア2の両端の合わせ面200に密着させる内周面を有する下金型300と、ステータコア2の両端以外の合わせ面200に密着させ、かつ、内側溝204内に挿入される平面形状を有し、軸方向の高さがステータコア2よりも大きな第1凸状金型311と、第1凸状金型311の上端が挿入される第1上穴411が設けられた上金型400とを用いて、下金型300及び上金型400によって形成されるキャビティ内に、第1凸状金型311とともにステータコア2を挿入し、射出成型する。
【0106】
第1凸状金型311は、軸方向の高さがステータコア2よりも大きいため、第1凸状金型311の上端は、下金型300から突出する。一方、上金型400には、第1凸状金型311に対応する第1上穴411が形成されている。このため、下金型300及及び上金型400の金型合わせ面を会合させれば、第1凸状金型311の上端が第1上穴411内に挿入される。このため、第1凸状金型311の上端と、上金型400との間に、樹脂が回り込むことができる隙間が形成されず、合わせ面200及び内側溝204に樹脂が形成されるのを防止することができる。
【0107】
(12)第2凸状金型312及び第2上穴
本実施の形態によるモータ用ステータの製造方法は、コア連結部21の外周面に密着させる側面を有し、軸方向の高さがステータコア2よりも大きな第2凸状金型312と、第2凸状金型312の上端が挿入される第2上穴412が設けられた上金型400とを用いて、下金型300及び上金型400によって形成されるキャビティ内に、第2凸状金型312を挿入し、射出成型する。
【0108】
第2凸状金型312は、軸方向の高さがステータコア2よりも大きいため、第2凸状金型312の上端は、下金型300から突出する。一方、上金型400には、第2凸状金型312に対応する第2上穴412が形成されている。このため、下金型300及及び上金型400の金型合わせ面を会合させれば、第2凸状金型312の上端が第2上穴412内に挿入される。このため、第2凸状金型312の上端と、上金型400との間に、樹脂が回り込むことができる隙間が形成されず、外側溝205に樹脂が形成されるのを防止することができる。
【0109】
実施の形態2.
<分割ステータ115>
実施の形態1では、環状ステータ102が、単一の展開ステータ105を折り曲げ、その両端を互いに連結することにより構成される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、環状ステータ102が、2以上の分割ステータ107により構成される場合について説明する。
【0110】
図21は、本発明の実施の形態2による環状ステータ102の一構成例を示した外観図図であり、軸方向上方からみた様子が示されている。環状ステータ102は、2個の分割ステータ107を連結することにより構成される。
【0111】
分割ステータ107は、ステータコア2、コイル3、渡り線4及びインシュレータ5により構成される。また、ステータコア2は、コア連結部21を介して、2以上の分割コア20を連結して構成される。つまり、分割ステータ107は、分割コア20の数が異なるが、
図4に示された展開ステータ105と同一の構成を有する。
【0112】
環状ステータ102は、2個の分割ステータ107を環状に連結することにより構成される。つまり、分割ステータ107の連結は、異なる分割ステータ112の合わせ面200同士を正対させ、一方の合わせ面200に設けられた連結凸部23を、他方の合わせ面200に設けられた連結凹部22に収容することにより行われる。
【0113】
磁性鋼板を打ち抜き加工してステータコア2を製作する場合、ステータコア2の長さに応じた大きさのプレス金型が必要になるが、環状ステータ102を用いれば、環状ステータ102が大径であっても、各分割ステータ107を構成するステータコア2の長さを短くすることができる。従って、大径のステータの製造コストを抑制することができる。
【0114】
なお、本実施の形態では、4スロットを有する2個の分割ステータ112を連結することにより、8スロットを有する環状ステータ102を製作する場合の例について示したが、本発明はこのような場合に限定されず、スロット数や分割数は任意である。例えば、6スロットを有する4個の分割ステータ107を連結することにより、24スロットを有するステータ112を製作することもできる。
【0115】
上述した各実施の形態では、ヨーク部2y及びコア連結部21について、上面がインシュレータ5で覆われ、下面の一部がインシュレータ5で覆われていないステータ102,112の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。すなわち、ヨーク部2y及びコア連結部21の上面及び下面がともにインシュレータ5で覆われ、ステータコア2が露出しないように構成することもできる。このような構成を採用することにより、ヨーク部2yの上面に上渡り線4Uが配置され、下面に下渡り線4Dが配置されている場合、上渡り線4U及び下渡り線4Dのいずれについても、ステータコア2との接触を防止することができ、ステータコア2との距離を短くすることができ、モータJの軸方向の大きさを小さくすることができる。
【0116】
上述した各実施の形態では、ヨーク部2yの軸方向上方に配置された上渡り線4Uと、ヨーク部2yの軸方向下方に配置された下渡り線4とを備えたステータ102,112の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。すなわち、上渡り線4Uを備え、下渡り線4Dは備えていないステータにも本発明を適用することができる。