(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る鮮度計測装置及び鮮度計測方法について説明する。実施形態に係る鮮度計測装置は、透明部を有する食品の鮮度を計測する装置である。透明部は、例えば、生鮮魚類、家畜肉、家禽肉、獣肉等の眼球の水晶体や硝子体等の光が透過する部分である。なお、透明部は、完全に透明である必要はなく、光の一部が散乱する等の性質を持つ半透明程度であってもよい。以下の実施形態においては、計測対象の食品を魚とする例で説明する。また、以下の実施形態では、同一の構成については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る鮮度計測装置1は、光を発光し、計測対象の透明部に照射する発光手段30と、透明部を透過した光が非透明部で反射した反射光を受光する受光手段31と、操作信号の入力等に利用される入力装置32と、鮮度の計測結果の出力に利用される出力装置33と、計測対象の保存時間を計時する計時手段11と、受光手段31が受光した反射光のデータを取得する取得手段12と、計時手段11が計時する保存時間と、取得手段12が取得した反射光のデータとを用いて計測対象の鮮度を特定する値を算出する算出手段13と、算出手段13が算出した値から、計測対象のグループを分類する分類手段14と、算出手段13による算出結果及び分類手段14による分類結果を出力装置33に出力する出力手段15とを備える。
【0013】
この鮮度計測装置1は、例えば、
図1に示すように、CPU10、記憶装置20、入力装置32、出力装置33等を有するコンピュータであって、記憶装置20に記憶される鮮度計測プログラムPが実行されることで、CPU10が取得手段12、算出手段13、分類手段14及び出力手段15として処理を実行する。また、鮮度計測装置1は、1台のコンピュータによって形成される必要はなく、複数台の装置によって形成されてもよい。例えば、発光手段30と受光手段31とが外部で接続される構成でもよい。
【0014】
図1に示すように、記憶装置20は、鮮度計測プログラムPの他、算出手段13における算出に利用される算出用データD1と、対象物の用途の分類に利用される分類用データD2とを記憶する。
【0015】
発光手段30は、鮮度の計測時にレーザー光を発光し、計測対象に照射するレーザー装置である。この発光手段30は、レーザクラスが「クラス1」以下であることが好ましい。
【0016】
受光手段31は、発光手段30から照射されたレーザー光が計測対象で反射すると、その反射光を受光するフォトダイオードである。この受光手段31は、周囲からの迷光を遮断し、反射光の波長のみを受光するように表面に光学バンドパスフィルターを有することが好ましい。
【0017】
図2(a)に示すように、発光手段30は、レーザー光L1を計測対象Xに照射する。計測対象Xの透明部x1に入射したレーザー光L1は、計測対象Xの透明部x1の奥にある非透明部x2に反射し、反射光L2となる。受光手段31は、この反射光L2を検出する。このとき、発光手段30はレーザー光L1を計測対象Xの透明部に対して垂直ではなく、斜め方向から照射することで、
図2(a)に示すように、受光手段31によって反射光L2の受光が可能となる。
【0018】
図2(b)及び
図2(c)を用いて、計測対象Xに対するレーザー光L1の入射角度θと反射光L2の関係を説明する。
図2(b)は、透明部x1が水晶体及び硝子体であるとき、発光手段30の位置を調整して、照射点p1に対して入射角度θが、10°、30°、60°のレーザー光L1を照射する場合の例を示している。
図2(b)では、入射角度θが10°、30°、60°の場合のレーザー光L1をそれぞれL11、L12、L13とする。また、
図2(b)に示すように、仮に透明部x1である水晶体及び硝子体の直径がDであるとき、レーザー光L1が反射する反射点p2から2Dの高さに、受光手段31を配置することが好ましい。
【0019】
図2(c)は、同一の透明部x1の同一点に、10°〜70°の間で複数の異なる入射角度を選択してレーザー光L1を入射させ、反射光L2を受光して得られた電圧を表すグラフである。
図2(c)の横軸は入射角度であり、縦軸は電圧である。
図2(c)によれば、入射角度により得られる電圧が異なることがわかる。したがって、鮮度計測装置1では、同一の計測対象Xについて継続して複数回、鮮度を計測する場合、同一の照射点p1に同一の入射角度でレーザー光L1を入射させることが必要である。
【0020】
計時手段11は、計測対象Xの保存開始からの保存時間を計時する。
【0021】
取得手段12は、入力装置32を介して鮮度の計測を開始する操作信号が入力されると、発光手段30に制御信号を出力して発光を操作し、受光手段31で受光された反射光L2のデータとして、反射光L2の輝度を特定する電圧値を取得する。
【0022】
算出手段13は、計時手段11が計測する計測対象Xの保存時間と、取得手段12が取得した反射光L2の輝度を特定する電圧を用いて、計測対象Xの鮮度を特定する値を算出する。ここで、算出手段13は、記憶装置20に記憶される算出用データD1を利用し、鮮度を特定する値としてK値(K)と、推定K値(K
e)を算出する。
【0023】
K値(K)は、保存時間を利用して魚類の鮮度を数値化した値であって、式(1)により求められる。
K=E
t×X
t+K
0 …(1)
【0024】
ここで、E
tは、t℃の雰囲気中に対象の魚を保存した場合におけるK値の上昇率であって、魚の種類毎に予め定められる値である。X
tは、対象の魚がt℃に保存された時間、具体的には、計時手段11で計時される時間である。K
0は、新鮮な魚のK値であって、予め定められる値である。ここで、E
tとK
0とは、予め定められる値であり、X
tに応じてK値を求めることができる。式(1)からわかるように、K値は、時間の経過に伴い、初期のK値から値が上昇する。なお、K値は、値が低いほど鮮度が良く、値が高くなると鮮度が悪くなる。
【0025】
推定K値(K
e)は、反射光L2を特定する電圧の変化を利用して魚類の鮮度を数値化した値であって、式(2)により求められる。
K
e=k(V
t−V
t0)×X
t+K
0 …(2)
【0026】
式(2)において、kは、補正係数であり、魚の種類毎に予め定められる値である。V
tは、t℃の雰囲気中に対象の魚を保存し、鮮度計測の時点において取得した反射光L2から得られた電圧値である。V
t0は、t℃の雰囲気中において対象の魚の保存を開始した時点において取得した反射光L2から得られた電圧値である。ここで、K
0に加え、kは、予め定められる値であり、V
t0は、開始時に取得する値である。したがって、計測時に取得するV
tに応じて、推定K値を求めることができる。
【0027】
算出用データD1は、式(1)及び式(2)に加え、各式で使用する所定の値(E
t、K
0、k)を含むデータである。算出手段13は、K値及び推定K値を算出する際、必要なデータを算出用データD1から抽出して利用する。
【0028】
K値は、化学的には、ATP(アデノシン三リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)、IMP(イノシン酸)、Ino(イノシン)及び(ヒポキサンチン)により式(3)のように求められる値である。
K値(%)=(Ino+Hyp)/(ATP+ADP+AMP+IMP+Ino+Hyp)×100 …(3)
これを、保存時間を利用することで、式(1)により求めることができる。
【0029】
なお、鮮度を数値化した値として、「K値」の他、匂いの時間変化に関する値である「VBN濃度」や腐敗の時間変化に関する値である「ヒスタミン濃度」等が考えられるが、K値が時間経過に応じた変化が大きいため、ここでK値を用いて説明した。しかし、鮮度を特定する値として、他の値を用いてもよい。また、魚以外の食品の鮮度を計測する場合、K値は利用できないため、他の値によって鮮度を計測する。
【0030】
分類手段14は、算出手段13が算出したK値及び推定K値に対し、記憶装置20に記憶される分類用データD2を利用し、計測対象Xに鮮度のグループを分類する。このグループは、鮮度に応じて設定されるものであり、例えば、計測対象Xが対応可能な用途に応じてグループを設定してもよい。
【0031】
具体的には、単に、「鮮度クラス1」、「鮮度クラス2」、「鮮度クラス3」…等のようにグループを設定してもよい。また、生食が可能な鮮度である「生食」、加工食が好ましい鮮度である「加工食」、加工することが必須な鮮度である「要加工」、鮮度の判断が難しい「判断難」等のグループを設定してもよい。
【0032】
分類用データD2は、魚の種別毎に、K値及び推定K値の範囲と、当該範囲の場合の鮮度のグループとを関連付けるデータである。分類手段14は、分類用データD2から該当する用途を抽出し、計測対象Xのグループとして決定する。
【0033】
出力手段15は、算出手段13の算出結果や分類手段14の分類結果を出力装置33に出力する。なお、算出結果や分類結果は、記憶装置20に結果データとして記憶されてもよい。
【0034】
なお、上述の説明では、算出手段13がK値及び推定K値を算出するものとして説明した。しかし、これに限られず、算出用データD1が式(2)のみを有し、算出手段13は推定K値のみを鮮度計測装置1が計測する計測対象Xの鮮度の計測結果としてもよい。また同様に、上述の説明では、分類手段14がK値及び推定K値を利用して分類するものとして説明したが、推定K値のみを利用して、計測対象Xのグループを分類してもよい。
【0035】
また、図示を用いた説明を省略するが、市場や加工工場等のラインでこの鮮度計測装置1を利用する場合、分類手段14の分類結果に応じ、ロボットアーム等を用いて、計測対象Xを分類されたクラスのラインに移動させることも可能である。このように、鮮度計測装置1は、現在使用される生産ラインや加工ライン等に容易に組み込むことが可能である。
【0036】
さらに、食品を保存する保存庫等に鮮度計測装置1を組み込み、保存庫内に保存される食品の鮮度を計測することもできる。これにより、保存庫の環境(温度、湿度、pH、イオン等)をフィードバック制御し、保存される食品の鮮度の劣化を防止することができる。
【0037】
また、上述した説明では、食品の透明部として、水晶体等の例を用いたが、食品が脱皮状態の獣肉である場合のその表面が半透明体であるため、透明部となる。このような獣肉の場合、鮮度計測にはK値に代えてヒスタミン量等の物理量を利用する。
【0038】
上述したように、鮮度計測装置1においては、計測対象Xの透明部に光を照射して取得した反射光のデータ及び計測対象Xの保存時間を利用することで、リアルタイムかつ容易にその鮮度を計測することができる。また、鮮度計測装置1では、薬剤等の使用も不要であるため、装置構成を簡易化し、小型化を図ることができる。さらに、鮮度計測装置1では、計測対象Xの切断等の処理も不要であるため、計測に必要な時間を短縮することができる。
【0039】
《第1実験例》
図3は、鮮度計測装置1を利用し、実験用に生成された濃度(濁度)が異なる複数の透明材料にレーザー光L1を照射した際の反射光L2を計測した実験結果のグラフである。
図3において、横軸は実験に使用した透明材料の濃度(濁度)であり、縦軸は反射光L2から求めた吸光度である。これにより、透明材料が濁るほど、透明材料に吸収されるレーザー光L1が多くなり、反射光L2は弱くなることがわかる。
【0040】
図3に示す関係は、ランベルト・ベールの法則と一致する。ランベルト・ベールの法則は、式(4)によって表され、物質の濃度と光の吸収を特定するものである。
A=2αLC …(4)
ここで、Aは吸光度、αは吸光係数、Lは光路長、Cは試料濃度である。ランベルト・ベールの法則によると、αとLの値は固定になるため、試料濃度Cが大きくなるほど、吸光度Aも大きくなることがわかる。
【0041】
この関係から鮮度計測装置1による鮮度の計測に当てはめると、透明部x1の濃度(濁度)が大きくなる、すなわち、透明部x1が濁るほど、透明部x1に吸収されるレーザー光L1が多くなり、反射光L2は弱くなる。計測対象Xの透明部x1である水晶体は、時間の経過に伴い濁る性質があるため、時間の経過に伴い、反射光L2は弱くなる。したがって、発光手段30及び受光手段31を利用してすることで、鮮度を計測できることが明らかである。
【0042】
《第2実験例》
図4は、計測対象Xとしてカンパチの眼球を利用し、鮮度計測装置1によって透明部x1である眼球の水晶体の白濁化の時間変化を計測した実験結果のグラフである。ここでは、真水中でカンパチの眼球を保存した場合(
図4中のwater)、食塩水中でカンパチの眼球を保存した場合(
図4中のsaline)、空気中でカンパチの眼球を保存した場合(
図4中のair)のそれぞれの計測対象Xについて、レーザー光L1を照射し、反射光L2を計測した例である。
図4において、横軸は各条件下で眼球を保存した時間(min)であり、縦軸は計測された反射光L2の輝度値である。
【0043】
図4の結果によると、周囲との物質授受の少ない空気中では白濁化の時間変化は小さく計測され、生体環境とは異なる真水中では白濁の時間変化が大きく計測された。これにより、計測対象Xとして眼球を利用し、その白濁化により鮮度が計測できることがわかる。また、
図4の結果から、計測対象の周囲環境に依存して白濁化の進行が異なることもわかる。したがって、計測対象Xとなる魚の種類の他、周囲環境に応じて式(1)及び式(2)に使用する値(E
t、K
0、k)を求める必要があることがわかる。
【0044】
《第3実験例》
図5は、計測対象Xとしてニジマスの眼球を利用し、鮮度計測装置1によって推定K値を求めた実験例である。ここでは、ストレッチ包装したニジマスを10°の冷蔵環境で保存し、この眼球にレーザー光L1を照射して得られた反射光L2から式(2)を用いて求めた推定K値(K1)と、式(3)の成分分析から求めたK値(K2)とを比較した一例である。
図5において、横軸は時間(h)であり、横軸はK値(%)及び推定K値(%)である。
【0045】
図5の結果によると、式(3)を用いて求めたK値(K2)と、鮮度計測装置1を利用して計測した推定K値(K1)とは、計測開始から約2時間が経過するまでは、ほぼ同一の値となっている。また、推定K値(K2)は、計測開始から約2時間経過後には判定が困難になった。
【0046】
通常、生可食限界K値は、20%とされている。そのため、分類用データD2では、例えば、
図5に示すように、求められるK値(推定K値)に応じて、「生食」、「加工食」、「要加工食」等のグループに分類するように、規定される。
【0047】
《第1変形例》
図6(a)は、第1変形例に係る鮮度計測システム1Aの一例である。鮮度計測システム1Aは、複数の鮮度計測装置1を有し、同時に複数の計測対象Xを計測可能であることを特徴とする。また、
図6(a)に示すように、複数の計測対象Xをベルトコンベア2上に載置するとともに、このような一列に並ぶ複数の計測対象Xの列をベルトコンベア2上に複数列有し、このベルトコンベア2を計測時間に応じて移動(紙面上で前後方向に移動)することで、複数の計測対象Xの鮮度を効率的に計測することができる。
【0048】
なお、鮮度計測システム1Aの各鮮度計測装置1は、それぞれが
図1を用いて上述したCPU10、記憶装置20、入力装置32及び出力装置33を有する必要はない。各鮮度計測装置1は、少なくとも発光手段30及び受光手段31を有することで足り、各鮮度計測装置1に対して同一のCPU10、記憶装置20、入力装置32、出力装置33を使用することができる。
【0049】
《第2変形例》
図6(b)は、第2変形例に係る鮮度計測装置1Bの一例である。鮮度計測装置1Bは、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の形態端末を利用したものである。鮮度計測装置1Bは、このような携帯端末のフラッシュ機能を発光手段30とし、カメラ機能を受光手段31として利用する。
【0050】
例えば、鮮度計測装置1Bは、記憶装置20に記憶される鮮度計測プログラムPにより、鮮度計測装置1BのCPU10が計時手段11、取得手段12、算出手段13、分類手段14及び出力手段15としての処理を実行する。また例えば、鮮度計測装置1Bの記憶装置20に鮮度計測プログラムPが記憶されない場合、ネットワークを介して接続されるサーバ(図示せず)にアクセスし、受光手段31が受光した反射光L2をサーバに送信することで、サーバにおいて、算出や分類の処理が実行されてもよい。これにより、鮮度の計測をより容易に実現することができる。
【0051】
以上、実施形態及び変形例を用いて本発明を説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。