【実施例】
【0072】
以下、本発明について、実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0073】
<酸化物の合成>
(合成例1)
炭酸ナトリウム36.6質量部、酸化ジルコニウム42.6質量部、及び酸化ケイ素20.8質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりNa
2ZrSiO
5の単相であることを確認した。
(合成例2)
炭酸ナトリウム33.2質量部、酸化ジルコニウム38.6質量部、及び酸化ケイ素28.2質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりNa
4Zr
2Si
3O
12の単相であることを確認した。
(合成例3)
炭酸カリウム43.0質量部、酸化ジルコニウム38.3質量部、及び酸化ケイ素18.7質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
2ZrSiO
5の単相であることを確認した。
(合成例4)
炭酸カリウム36.2質量部、酸化ジルコニウム32.3質量部、及び酸化ケイ素31.5質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
2ZrSi
2O
7の単相であることを確認した。
(合成例5)
炭酸セシウム51.8質量部、酸化ジルコニウム19.6質量部、及び酸化ケイ素28.6質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりCs
2ZrSi
3O
9の単相であることを確認した。
(合成例6)
炭酸リチウム28.7質量部、酸化ジルコニウム47.9質量部、及び酸化ケイ素23.4質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりLi
2ZrSiO
5の単相であることを確認した。
(合成例7)
炭酸カリウム52.9質量部、及び酸化ジルコニウム47.1質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
2ZrO
3の単相であることを確認した。
(合成例8)
炭酸カリウム57.5質量部、及び酸化アルミニウム42.5質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりKAlO
2の単相であることを確認した。
(合成例9)
炭酸カリウム38.4質量部、酸化アルミニウム28.3質量部、及び酸化ケイ素33.3質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりKAlSiO
4の単相であることを確認した。
(合成例10)
炭酸カリウム26.8質量部、水酸化マグネシウム11.3質量部、及び酸化チタン61.9質量部を混合し、1000℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
0.8Mg
0.4Ti
1.6O
4の単相であることを確認した。
(合成例11)
炭酸カリウム49.7質量部、酸化チタン28.7質量部、及び酸化ケイ素21.6質量部を混合し、1000℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
2TiSiO
5の単相であることを確認した。
(合成例12)
炭酸カリウム22.4質量部、酸化チタン77.6質量部を混合し、1000℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりK
2Ti
6O
13の単相であることを確認した。
(合成例13)
炭酸セシウム55.5質量部、酸化アルミニウム17.4質量部、及び酸化チタン27.2質量部を混合し、1200℃で4時間焼成した。得られた粒子状固体が、X線回折によりCsAlTiO
4の単相であることを確認した。
【0074】
<排ガス浄化触媒の製造>
(実施例1〜19、比較例1〜31)
酸化物としては、合成例1〜13で合成した酸化物、CaSiO
3(和光純薬社製、商品名:ケイ酸カルシウム、粉末)、CuO(和光純薬社製、商品名:酸化銅(II)、粉末)、Fe
2O
3(和光純薬社製、商品名:酸化鉄(III)、粉末)、Al
2O
3(和光純薬社製、商品名:酸化アルミニウム、粉末)、TiO
2(和光純薬社製、商品名:酸化チタン(IV)、粉末)、SiO
2(和光純薬社製、商品名:二酸化ケイ素、粉末)、Al
2TiO
5(丸ス釉薬社製、商品名:合成チタン酸アルミ、粉末)、3Al
2O
3・2SiO
2(和光純薬社製、商品名:ムライト、粉末)及びZrSiO
4(和光純薬社製、商品名:ケイ酸ジルコニウム、粉末)を用いた。
【0075】
セシウム塩としては、Cs
2SO
4(和光純薬社製、商品名:硫酸セシウム、粉末)及びCsCl(和光純薬社製、商品名:塩化セシウム、粉末)を用いた。
【0076】
酸化物とセシウム塩を、表1及び表2に記載の混合比率で秤量し、乳鉢にて10分間混合することで、排ガス浄化触媒を得た。
【0077】
<排ガス浄化触媒の評価>
(PM燃焼温度)
実施例1にて得られた排ガス浄化触媒を乳鉢で粉砕し、疑似PMとしてカーボンブラック(東海カーボン社製、トーカブラック7100F)を5質量%添加し乳鉢にて混合した。
【0078】
得られた混合物を熱分析装置(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用い、昇温条件;10℃/min、雰囲気;ドライエアー200ml/min、サンプル量;10mgの条件でTG/DTA測定し、カーボンブラックの燃焼に伴う質量減少速度が最大となる温度(DTG曲線のピーク温度)をPM燃焼温度とした。結果を表1に示した。
【0079】
実施例2〜19及び比較例1〜8にて得られた排ガス浄化触媒、並びに実施例1〜14及び比較例1〜8の調製に用いた酸化物及びセシウム塩についても、実施例1と同様にPM燃焼温度を測定した。結果を表1〜3に示した。
【0080】
さらに、実施例2、実施例3、実施例10及び実施例14にて得られた排ガス浄化触媒については、耐熱試験として800℃で5時間熱処理を行い、上述と同様にPM燃焼温度を測定した。結果を表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
実施例1〜14は、原料である酸化物とセシウム塩(比較例9〜22及び比較例31)の何れのPM燃焼温度よりも低いPM燃焼温度である。これに対し、比較例2〜8は、原料であるセシウム塩(比較例31)よりもPM燃焼温度が高い。このことから、本発明の排ガス浄化触媒は、特定の組成の酸化物とセシウム塩との相乗効果により高い触媒活性が得られることが分かる。さらに、本発明の排ガス浄化触媒は、比較例1のように価数変化をし易い金属酸化物を使用していないにもかかわらず、比較例1よりも高い触媒活性が得られることが分かる。
【0085】
<排ガス浄化フィルタの製造>
(実施例20)
合成例2で得られたNa
4Zr
2Si
3O
12 20質量部に対し、チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)80質量部、黒鉛10質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0086】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0087】
固形分がほぼチタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)と合成例2で得られたNa
4Zr
2Si
3O
12からなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。
【0088】
ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0089】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で10時間保持して焼成することでハニカム構造体を得た。
【0090】
次に、Cs
2SO
4(和光純薬社製、商品名:硫酸セシウム、粉末)20質量部と水80質量部とを混ぜ合わせた溶液を調製した。調製した溶液に上記で得たハニカム構造体を含浸した。含浸後800℃で5時間焼成し、排ガス浄化フィルタを製造した。
【0091】
図2は、製造した排ガス浄化フィルタ5を示す模式的斜視図である。
図2において矢印Aは、押出方向を示している。排ガス浄化フィルタに担持されたCs
2SO
4の量は、Na
4Zr
2Si
3O
12 20質量部に対して5質量部であった。
【0092】
(比較例32)
合成例2で得られたNa
4Zr
2Si
3O
12 20質量部に対し、チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)80質量部、黒鉛10質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0093】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0094】
固形分がほぼチタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)と合成例2で得られたNa
4Zr
2Si
3O
12からなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。なお、スラリー中における固形分の比率は上記と同様である。
【0095】
ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0096】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1000℃まで昇温し、1000℃で10時間保持して焼成することで排ガス浄化フィルタを得た。
【0097】
(比較例33)
チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)100質量部、黒鉛10質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0098】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0099】
固形分がほぼチタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)からなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。
【0100】
ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0101】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1450℃まで昇温し、1450℃で10時間保持して焼成することでハニカム構造体を得た。
【0102】
次に、Cs
2SO
4(和光純薬社製、商品名:硫酸セシウム、粉末)20質量部と水80質量部とを混ぜ合わせた溶液を調製した。調製した溶液に上記で得たハニカム構造体を含浸した。含浸後800℃で5時間焼成し、排ガス浄化フィルタを製造した。
【0103】
排ガス浄化フィルタに担持されたCs
2SO
4の量は、チタン酸アルミニウム100質量部に対して5質量部であった。
【0104】
(比較例34)
チタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)100質量部、黒鉛10質量部、メチルセルロース10質量部、及び脂肪酸石鹸0.5質量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0105】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、成形体を得た。金型のセル密度は、300セル/平方インチ(46.5セル/cm
2)とし、隔壁厚みは300μmとした。
【0106】
固形分がほぼチタン酸アルミニウム(丸ス釉薬社製)からなり、粘度調整材等の添加物を加えたスラリーを調製した。
【0107】
ハニカム構造体である成形体において、開口したセルと封止したセルが交互に市松模様となるように、ハニカム構造体のセルに、このスラリーを注入し、目封じを行った。
【0108】
得られた成形体を、600℃で10時間保持し、その後25℃/時間で1450℃まで昇温し、1450℃で10時間保持して焼成することで排ガス浄化フィルタを製造した。
【0109】
<排ガス浄化フィルタの評価>
得られた排ガス浄化フィルタの評価として再生試験を以下の手順で行った。
【0110】
(フィルタ再生率)
排ガス浄化フィルタの初期重量を予め測定しておき、ディーゼルエンジンの排気ラインに、酸化触媒(DOC)と排ガス浄化フィルタを順に設置する。設置後、ディーゼルエンジンを始動させ、排気温度が低温となる運転条件でPMを所定量(約8g/L)堆積させた後、一度排ガス浄化フィルタを取り外し、堆積したPMの重量を測定する。
【0111】
次いで、PMを堆積させた排ガス浄化フィルタを模擬排ガスの排気ラインに設置した後、模擬排ガスを480℃まで上昇させ再生試験を開始した。480℃に到達した時点から30分間480℃±10℃の温度を保持し、30分経過後、模擬排ガスの全量を窒素ガスに切り替えた。
【0112】
温度が室温まで低下後、再度、排ガス浄化フィルタを取り出し、重量減少分(=PM燃焼重量)を測定した。結果を表4に示した。
【0113】
以下の計算式により再生率を算出した。
【0114】
再生率(%)=100−[(PM堆積重量(g)−PM燃焼重量(g))/PM堆積重量(g)]×100
【0115】
【表4】
【0116】
表4からNa
4Zr
2Si
3O
12と、硫酸セシウムがそれぞれ単独で担持されている、または担持されていない比較例32〜34に比べ、Na
4Zr
2Si
3O
12と硫酸セシウムを共存させた実施例20は、高いフィルタ再生率が得られることが分かる。