(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物での火災から防護されるように耐火壁で区画され、あらかじめ特定されたフロア内の一画に設けられ、火災が発生した際の前記フロア内での一時待避場所として活用される一時避難エリアと、
前記一時避難エリアからの経路を有し、前記建物の垂直方向への避難を可能とする垂直方向避難経路と、
前記フロアの一画に設けられた前記一時避難エリア以外のエリアと、前記一時避難エリアおよび前記垂直方向避難経路へ至る経路とを分断するように、水平方向の避難経路である廊下を二重の防護面で区画して前記防護面の間に小空間を形成するように設けられる緩衝帯と、
を備え、
前記一時避難エリアは、前記垂直方向避難経路へ至る経路をさらに備える
避難設備。
前記一時避難エリアは、前記緩衝帯から前記垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路に接続し、かつ、前記緩衝帯から前記垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路を分断しないように設けられる請求項1に記載の避難設備。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の避難設備の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
まず始めに、本実施の形態1に係る発明のポイントについて説明する。本実施の形態1に係る避難設備は、以下の要件を組み合わせる点に技術的特徴を有するものである。
要件A:建物の1つのフロア内の一画に設けられ、耐火壁等で区画されている一時避難エリア(一時待避場所)を備える。
要件B:一時避難エリアからの経路を有し、建物の垂直方向への避難を可能とする垂直方向避難経路を備える。
要件C:一時避難エリアと一時避難エリアから垂直方向避難経路へ至る経路とを防護するように、水平方向の避難経路である廊下を二重の防護面で区画して前記防護面の間に小空間を形成するように設けられる緩衝帯を備える。
【0015】
このような要件A〜要件Cを兼ね備えることにより、緩衝帯と一時避難エリアによる2重の防護構造が構成されるとともに、緩衝帯を、フロア内での特定のエリアに限定的に配置することできる。この結果、緩衝帯における防火防煙等を行いやすく、さらに、緩衝帯の後段に区画された一時避難エリアおよび一時避難エリアから垂直方向避難経路への経路の安全性を、効率的に向上させることができることとなる。
【0016】
さらに、以下の要件Dを追加することができる。
要件D:一時避難エリアは、緩衝帯から垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路に接続し、かつ、緩衝帯から垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路を分断しないように設けられる。
【0017】
このように、要件Dをさらに備えることにより、非常階段に向かう避難者、および消火作業や救助作業を行う作業員は、一時避難エリアを通ることなく通行可能となる。このため、一時避難エリア内に災害弱者が在室していても、上記通行の障害となって渋滞を招くことはなく、一時避難エリア内は上記通行から守られるとともに、災害弱者を接続された垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路から避難させることができる。
【0018】
さらに、以下の要件Eを追加することができる。
要件E:避難エリアへの入退室を監視し、在室管理を行う構成を備える。
このように、要件Eをさらに備えることにより、一時避難エリア内の在室者の人数を把握することができる。特に、在室者の属性を特定することで、歩行困難者(災害弱者)等の存在を健常者と分けてその人数を把握することができ、避難活動に有用な情報とすることができる。
【0019】
次に、上述した技術的特徴を有する本実施の形態1に係る避難設備の具体的な構成について、
図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における避難設備のレイアウト図である。
図1に示した避難設備は、廊下1、緩衝帯2、一時待避場所である一時避難エリア3、垂直方向避難経路前に設けられる附室4、一時避難エリア3と附室4とを接続する水平方向避難経路となるバルコニー5、垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、および避難階段12を備えて構成されている。
【0020】
また、
図1中には、5つの出入口21〜25が配置されている。さらに、出入口21〜25のそれぞれには、入退出管理、あるいは避難エリア3内の在室管理を行うために、個人が所持する認識タグの情報を非接触で読み取る読取り部であるRFIDセンサ27(1)〜27(5)が設けられ、廊下1には、監視カメラ28が設けられている。
【0021】
このような
図1の構成に基づいて、要件A〜要件Eについて、具体的に説明する。
(1)要件A(一時避難エリア3)について
一時避難エリア3は、出入口21を介して、水平方向避難経路である廊下1と接続し、廊下1との出入りが可能であり、出入口22を介してバルコニー5と接続し、バルコニー5との出入りが可能となっている。この一時避難エリア3は、
図1に示したように、フロアの一画に設けられるとともに、建物の垂直方向の避難経路の役目を果たす非常用エレベータ11あるいは避難階段12にアクセス可能な位置に設けられている。
【0022】
さらに、一時避難エリア3の周囲は、耐火壁Wで覆われており、一時避難エリア3内に避難した人たちを、火災から防護できる構造が採用されている。そして、一時避難エリア3は、耐火壁Wで区画されることにより、火災により発生する炎、煙、あるいは有毒ガスを遮断できる構成となっていることが望ましい。一時避難エリア3の広さは、予め消防計画等で想定される災害弱者が占有するスペースを考慮して適宜決定される。このようにして、あらかじめ特定されるフロアの一画に、防護スペースとしての一時避難エリア3を確保することで、水平方向の避難における一時待避を確実に行うことができる。
【0023】
さらに、一時避難エリア3は、垂直避難経路である非常用エレベータ11あるいは避難階段12にアクセス可能な位置に設けられるとともに、垂直避難経路である非常用エレベータ11あるいは避難階段12に至る防護された経路を有するように設けられ、例えば、非常用エレベータ11から避難が可能となるまでの間、災害弱者を火災から確実に守ることが可能となる。
【0024】
さらに、図示していないが、一時避難エリア3が火災の影響を受けた場合に動作する音声警報付き煙CO複合センサを、一時避難エリア3内に設置することも可能である。音声警報付き煙CO複合センサが動作した場合には、一時避難エリア3内に一時待避している人々に対して、避難が必要である状況をいち早く知らせるとともに、特に、要介護避難者を優先して、一時避難エリア3から脱出させることを促すことができる。
【0025】
(2)要件B(垂直方向避難経路)について
本発明における垂直方向の避難経路は、
図1に示すように、非常用エレベータ11、避難階段12である。火災が発生した際、災害弱者は非常用エレベータ11より、健常者は避難階段12より、それぞれ避難し、建物の外へ脱出することができる。垂直方向の避難経路は、これらに限るものではなく、垂直方向に避難できるような装置を用いるものを含んで良い。なお、避難先は、必ずしも建物の外と考える必要はなく、高層ビルの中間等に安全な避難階が設定されている場合には、その避難階に垂直方向の避難経路が通じていれば良い。
【0026】
なお、非常用エレベータ11は耐火壁Wで覆われるものであり、避難階段12が屋内階段である場合は、これも耐火壁Wで覆われるものであり、そして、これらの垂直方向避難経路への経路に当たる附室4も耐火壁で覆われるものである。一時避難エリア3と附室4は耐火壁Wで覆われて隣接しているので、その間の壁は耐火壁Wでなくても一体的に防護されることから、この場合の一時避難エリア3と附室4の間の壁は耐火壁Wでなくてもよい。
【0027】
(3)要件C(緩衝帯)について
本発明における緩衝帯2は、
図1に示すように、一時避難エリア3の出入口21に繋がる廊下1において、廊下1を分断するように形成されている。そして、この緩衝帯は、火災発生時に、二重の防護面2a、2bで水平方向避難経路である廊下1を自動的に閉鎖して区画し、2つの防護面の間に小空間を形成するように設けられる。水平方向の避難経路である廊下1は、耐火壁で覆われている。緩衝帯2は、廊下1といったフロア内での特定のエリアに限定的に配置することから、緩衝帯2を形成する2つの防護面2a、2bを小規模な閉鎖装置で構成して効果的な防火を行うことができる。
【0028】
さらに、防煙、排煙をも効果的に行うことができる。緩衝帯2は、防火、防煙、排煙の対策を行って、火災によって発生する炎、煙、有毒ガスを遮断できるようにすることが望ましい。この結果、二重の防護面2a、2bが形成された緩衝帯2は、一時避難エリア3と、一時避難エリア3の出入り口21へ至る廊下1と、一時避難エリア3から垂直避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12に至る経路とを、効果的に防護することができる。
【0029】
ここで、緩衝帯2の防護面2a、2bとしては、防火部材、防火戸、防火シャッタ等、公知の閉鎖装置を採用することができる。例えば、本発明の出願人による先願(特願2013−031916号)に示されているように、水を供給することで膨張し、煙等の進入を防止することができる部材を防火部材として適宜採用することができ、その場合の構成等は当該明細書に記載の説明が準用される。これらの閉鎖装置は閉鎖中であっても、例えば防火シャッタに設けられた潜り戸を介して、避難者は通過できるようになっている。
【0030】
さらに、2つの防護面2a、2bの間に形成される小空間に排煙設備を施すことにより、小規模な排煙装置で効果的な排煙を行うことができる。特に、加圧排煙設備を設けた場合は、緩衝帯2内が加圧されることにより、緩衝帯2を他の廊下1よりも陽圧とすることができ、前記小空間への煙やガスの進入を確実に遮断することができ、ひいては、緩衝帯2で防護される、一時避難エリア3および維持避難エリア3側の廊下1への進入も確実に遮断する。
【0031】
また、緩衝帯2内の小空間に、さらに、煙センサやCOセンサなどの検出センサと、消火ヘッドを設けることで、検出結果に応じた消火を、迅速に、効果的に行うこともできる。
【0032】
また、消火ヘッドから消火用のガスを放出した場合には、消火用のガスで緩衝帯2内が加圧されることにより、緩衝帯2を他の廊下1よりも陽圧とすることができ、煙やガスの進入を遮断することができる。
【0033】
なお、消火ヘッドから放出する消火剤は、消火用のガスに限定されるものではない。例えば、ミストを放出すれば、緩衝帯2を形成する防護面に冷却効果を与え、耐火性能を強化することができる。
【0034】
(4)要件D(水平方向の避難経路を分断しないように設けられる一時避難エリア)について
図1に示すように、一時避難エリア3は、緩衝帯2から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る水平方向の避難経路である廊下1に出入口21を介して接続する。そして、緩衝帯2から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る水平方向の避難経路である廊下1を分断しないように設けられる。
【0035】
このように、構成することにより、非常階段12に向かう避難者は、廊下1→出入口23→附室4→出入口25の経路で、一時避難エリア3を通ることなく、非常階段12へ向かうことができる。また、消火作業や救助作業を行う作業員は、非常用エレベータ11または避難階段12→附室4→出入口23→廊下1の経路で、一時避難エリア3を通ることなく、フロア内へ展開することができる。このため、一時避難エリア3内に災害弱者が在室していても、上記通行の障害となって渋滞を招くことはない。
【0036】
また、一時避難エリア3内は、非常階段12に向かう避難者、および消火作業や救助作業を行う作業員の通行から分離されるので衝突などの不測の事故などから守られる。そして、一時避難エリア3内に一時待避している災害弱者を、一時避難エリア3から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11に至る緩衝帯2で防護された経路で避難させることができる。
【0037】
すなわち、一時避難エリア3に接続された、出入口22→バルコニー5→出入口24→附室4という非常用エレベータ11へ至る水平方向の避難経路から避難させることができる。また、出入口21→廊下1→出入口23→附室4という経路の混雑が治まった場合は、この経路からでも避難させることができる。
【0038】
(4)要件E(在室管理)について
避難エリア3には、災害弱者が待避していることが考えられる。従って、救助作業員にとって、一時避難エリア3内に、災害弱者が何人いるか、あるいは、一時避難している人が全員で何人いるかを迅速に把握することが重要となる。そこで、出入口21、22のそれぞれには、避難エリア3内の在室管理を行うために、入退出検出手段としてのRFIDセンサ27(1)、27(2)が設けられている。
【0039】
在館者、特に、要介護避難者、歩行困難者等の災害弱者に対しては、あらかじめ認識タグ(RFIDタグ)を所持させておくことで、読取り部に相当するRFIDセンサ27(1)、27(2)によって、認識タグを自動認識することができる。この結果、一時避難エリア3に入退出した状況を、個人を特定して識別することが可能となる。
【0040】
さらに、出入口23〜25のそれぞれにも、RFIDセンサ27(3)〜27(5)を設けることで、非常用エレベータ11や避難階段12の避難経路を利用した退出状況も含めて、個人を特定して識別することが可能となる。
【0041】
出入口21、22に設ける入退出検出手段であるRFIDセンサ27(1)、(2)は、出入口21、22部分で通過する方向を検出できるものが望ましい。通過方向を検出できるとともに非接触で個人を特定できるものであれば、RFIDセンサ27(1)、(2)と認識タグ(RFIDタグ)の組合せから成る在室管理に限るものではない。例えば、出入口21、22のRFIDセンサ27(1)、(2)に代えてカメラを設置し、このカメラによって撮像される画像に対して、顔認識処理を施すことによって個人を特定し、さらに移動方向を判別することによって、その人物が一時避難エリア3に入室したか退出したかを判断することも可能である。
【0042】
また、RFIDセンサ27(1)、(2)が通過する認識タグの情報を検出するものであって、通過方向まで把握できないような場合であっても、検出された認識タグ毎の通過回数を計数し、その計数値が奇数であれば在室、偶数であれば退出と判断することによって、在室管理を行うことが可能となる。
【0043】
また、避難者の情報については、一時避難エリアの出入口21、および附室4の出入口23を通過する避難者を撮像可能な廊下1内の位置に監視カメラ28を設置しておき、この監視カメラ28によって撮像される画像に対して、顔認識処理を施すことによって個人を特定し、さらに移動方向を判別することによって、その人物が一時避難エリア3に入室したか退出したかを判断することも可能である。また、一時避難エリア3等の内部で必要な場所に人感センサ26を設置しておくことで、取り残されている避難者の有無に関する情報を取得することもできる。
【0044】
以上のようにして、認識タグの情報を非接触で読み取る読取り部であるRFIDセンサ27(1)、(2)の読取り結果、あるいは、RFIDセンサ27(1)、(2)に代えて設けたカメラによる入退出の判断結果に基づいて、一時避難エリア3内の在室者情報、例えば、在室者の人数、歩行困難者等の災害弱者であるか否かの属性情報ごとの人数など属性に応じた人数、を生成する、図示しない在室管理部を防災センタ等に設けるようにするとよい。
【0045】
このような在室管理部を設けた防災センタでは、一時避難エリア3内の在室者の情報を把握することができる。在室者の属性情報は、例えば、認識タグにその所持者の属性情報を記録しておき、RFIDセンサ27(1)、(2)で読み出すようにしてもよい。また、RFIDセンサ27(1)、(2)が読み出した情報に基づいて個人を特定し、認識タグ所持者とその属性情報を関連付けて登録しておいた在室管理部のデータベースに基いて特定された個人の属性情報を特定するようにしてもよい。
【0046】
さらに、一時避難エリア3の内側、外側の一方または双方の所望の位置に、一時避難エリア3内の在室情報を表示するための表示器29を設け、在室管理部から上記のような在室者情報を表示させることも可能である。このような表示器29を一時避難エリア3の内側に設けると、一時避難エリア3内に一時待避している避難者は、自分たちの存在が認識されていることを知り、安心感を与えることができる。
【0047】
また、表示器29を一時避難エリア3の外側に設けると、救援に来た者が状況を把握することができる。このようにして、個人を特定することで、歩行困難者等の存在を健常者と分けて把握することができ、避難活動に有用な情報を得ることが可能となる。
【0048】
なお、
図1には図示していないが、RFIDセンサ27、監視カメラ28、表示器29のそれぞれは、一例として、防災センタに設置された、在室管理部の役目を果たす入退室監視盤に接続されることで、入退室監視盤により監視制御が行われる。また、自動火災報知設備の伝送路を介して火災受信機と通信し、火災受信機に接続された入退室監視盤で監視制御を行うようにしてもよい。
【0049】
また、
図1には図示していないが、避難者が平常時に所在する部屋での在不在を検出する在室状況識別部を備える構成とすることも可能である。例えば、平常時に所在する部屋の出入口毎に在室状況識別部としてRFIDセンサ27を設けて、平常時にその部屋に居る者に認識タグを所持させておき、入退室を入退室監視盤で監視制御する。
【0050】
あるいは、平常時に所在する部屋に人感センサを設けて、在不在の検出結果を入退室監視盤に送信するようにしてもよい。このような構成とすることによって、入退室監視盤による監視制御として、避難エリアまで到達していない避難者のうち、まだ居室から出ることができず在室中の人を把握でき、さらに、この各部屋の在室情報を表示器29に表示させることで、介助者等、救援に向かう者は、表示内容に応じて、駆け付けるべき部屋を判別することができる。
【0051】
また、本実施の形態1における避難設備のレイアウトは、
図1のような構成に限定されるものではなく、種々のレイアウトに対応することが可能である。例えば、図示しないが、一時避難エリア3の出入口21の直前の廊下1に緩衝帯2を構成してコンパクトにしてもよく、一時避難エリア3から直接避難階段12に繋がる出入口を形成するようにしてもよい。つまり、一時避難エリア3から直接避難階段12に繋がる出入口は、一時避難エリア3から垂直方向避難経路へ至る経路となり、コンパクトに形成できる。
図2、および
図3は、本発明の実施の形態1における一時避難設備のその他のレイアウト図の一例である。
【0052】
図2のレイアウトでは、一時避難エリア30は、出入口210を介して、水平方向避難経路である廊下1と接続し、廊下1との出入りが可能となっている。一時避難エリア30から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る経路であるバルコニー5が存在せず、一時避難エリア30と附室40との間に一時避難エリア30から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る経路としての出入口220が設けられる。
【0053】
また、附室40から避難階段12の間に出入口250が設けられる。そして、出入口210、220、230、250のそれぞれには、入退出管理、あるいは避難エリア30内の在室管理を行うために、個人が所持する認識タグの情報を非接触で読み取る読取り部であるRFIDセンサ27(6)〜27(9)が設けられている。必要に応じて出入口220を開状態とすることで、避難エリア3から附室4へ移動し、垂直方向避難経路であるエレベータ11から避難できるように構成されている。
【0054】
なお、緩衝帯2から一時避難エリア30側の廊下1、非常用エレベータ11、避難階段12は耐火壁Wで囲まれており、加えて、一時避難エリア30、附室40も耐火壁Wで囲まれている。一時避難エリア30と附室40とは隣接しているので一体的に防護するようにしてもよく、一時避難エリア30と附室40との間の壁は耐火壁Wでなくてもよい。また、一時避難エリア30と附室40との間の壁および出入口220を設けなくてもよい。
【0055】
また、
図3のレイアウトでは、一時避難エリア31から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る経路であるバルコニー5が存在せず、かつ、一時避難エリア31が、出入口211を介して、廊下1との間でのみ出入りが可能な構成となっている。そして、一時避難エリア31から垂直方向避難経路である非常用エレベータ11、避難階段12へ至る経路は、出入口211→廊下1→出入口231→附室41となる。出入口211、231、251のそれぞれには、入退出管理、あるいは避難エリア30内の在室管理を行うために、個人が所持する認識タグの情報を非接触で読み取る読取り部であるRFIDセンサ27(10)〜27(12)が設けられる。
【0056】
なお、緩衝帯2から一時避難エリア31側の廊下1に面する、一時避難エリア31の壁面および附室41の壁面は、必ずしも耐火壁Wである必要はなく、緩衝帯2を含んで、一時避難エリア31、廊下1、附室41とで一体的に耐火壁Wで囲まれるようにしてもよい。この場合も、非常用エレベータ11、避難階段12は耐火壁Wで囲まれている。
【0057】
これら
図2、
図3のいずれの構成においても、先の
図1のレイアウトと同様に、緩衝帯2と一時避難エリア30、31による2重の防護構造を備えるとともに、災害弱者等を一時避難エリア30、31に一時待避させた上で、一時避難エリア30、31から垂直方向避難経路であるエレベータ11、避難階段12へ至る緩衝帯2によって防護された経路を通って、非常用エレベータ11や避難階段12を活用して、避難させることができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1によれば、耐火壁で覆われた一時避難エリアを設けて一時待避した在室者を防護するとともに、一時避難エリアと一時避難エリアから垂直方向の避難経路とを防護する緩衝帯を設けた構成を備えている。この結果、火災発生時において、一時避難エリアに一時待避した避難者は、緩衝帯と一時避難エリアとで二重に防護されるので、救援が来るまでの長時間、災害弱者を待機させることができる。
【0059】
また、フロア内での特定のエリアに限定的に配置された緩衝帯は、小規模な防火、防煙、排煙対策で効率的に、炎、煙、有毒ガスの進入を防ぐことができる。この結果、緩衝帯に防護された、一時避難エリアから垂直方向の避難経路への経路を通って、災害弱者を一時避難エリアから避難させることができる。
【0060】
さらに、一時避難エリアは、緩衝帯から垂直方向の避難経路となる非常用エレベータおよび避難階段へ至る水平方向の避難経路に接続し、かつ、緩衝帯から垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路を分断しないように設けられる。この結果、非常階段に向かう避難者、および消火作業や救助作業を行う作業員は、一時避難エリアを経由せずに迅速に通行することができ、一時避難エリア内に災害弱者が在室していても、上記通行の障害となって渋滞を招くことはない。また、一時避難エリア内に一時待避した災害弱者は、上記通行から守られるとともに、災害弱者を接続された垂直方向避難経路へ至る水平方向の避難経路から避難させることができる。