(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463930
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 37/14 20060101AFI20190128BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20190128BHJP
H02K 7/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
H02K37/14 535K
H02K5/10
H02K7/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-183846(P2014-183846)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-59170(P2016-59170A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594111292
【氏名又は名称】日本電産サンキョーシーエムアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】大川 高徳
(72)【発明者】
【氏名】畑迫 裕之
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−163856(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0270485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/14
H02K 5/10
H02K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のケーシングと、
このケーシングの底部に固定された励磁コイルと、
上記励磁コイルから上記ケーシングの開口部側に延出させた端部の外周に雄ねじが形成されたシャフトと、
上記シャフトを支持する軸受と、
上記励磁コイル内に間隙を介して軸線回りに回転自在に設けられ、上記シャフトに上記軸線を一致させて一体化されたローターマグネットと、
内周面に形成された雌ねじを上記シャフトの上記雄ねじに螺合させて当該シャフトに外装された移動部材と、
上記ケーシングの開口部を塞ぐと共に孔部が形成された蓋体と、
上記移動部材を上記ケーシングの底部側に付勢するスプリングとを備え、
上記移動部材は、
当該移動部材において上記底部側に位置する基端部から外方に突出する鍔部であって、上記蓋体と当該鍔部との間に上記スプリングが位置するように設けられて当該スプリングによって上記軸受に付勢された鍔部を有しており、
上記軸線方向に移動自在であって上記軸線回りに回動不能となるように、上記孔部に挿通されていることを特徴とするステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内にリニア駆動機構を組み込んだステッピングモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の複写機やカメラ等の各種機器類の内部には、ローターの回転を直線運動に変換してレンズ等の部品を往復移動させるためのリニア駆動機構を備えたステッピングモータが組み込まれている。
【0003】
図3は、先に本出願人が下記特許文献1において提案したこの種のステッピングモータを示すもので、このステッピングモータ20は、その一端面20aにコ字状のブラケット21の一端部21aを固定し、上記一端面20aからシャフト22を外方に延出させてブラケット21の他端部21bに設けた軸受け23によって回転自在に支承するとともに、シャフト22の外周にリードスクリュー24を形成して、このリードスクリュー24に移動体25を回転不能に螺合させたものである。
【0004】
上記構成からなるステッピングモータ20によれば、シャフト22の回転をブラケット21の端部21a、21b間において移動体25の直線運動に変換させることができるために、上記移動体25に上記部品を連結させることにより当該部品を往復移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−122862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のステッピングモータ20にあっては、その一端面20aにブラケット21、リードスクリュー24および移動体25からなるリニア駆動機構を設けているために、全体として大型化を招くという問題点があった。
【0007】
また、リードスクリュー24が露出しているために、損傷や異物の付着によって作動不良を生じる懸念があるとともに、移動体25の移動に伴ってシャフト22に作用するスラスト力に対して、シャフト22が軸線方向に変位して移動体25の位置精度が低下しないように、ローター26と他端面21bとの間にローター26の位置決め用のワッシャ27を設ける必要があり、当該ワッシャ27がローター26の回転効率を低下させる懸念もあることから、その改良が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図ることができるとともに作動の安定性も担保することが可能になるリニア駆動機構を有するステッピングモータを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明に係るステッピングモータは、有底筒状のケーシングと、このケーシングの底部に固定された励磁コイルと、
上記励磁コイルから上記ケーシングの開口部側に延出させた端部の外周に雄ねじが形成されたシャフトと、上記シャフトを支持する軸受と、上記励磁コイル内に間隙を介して軸線回りに回転自在に設けられ
、上記シャフトに上記軸線を一致させて一体化されたローターマグネットと
、内周面に形成された雌ねじを上記シャフトの上記雄ねじに螺合させて当該シャフトに外装された移動部材と、上記ケーシングの開口部を塞ぐ
と共に孔部が形成された蓋体と
、上記移動部材を上記ケーシングの底部側に付勢するスプリングとを備え、上記移動部材は、
当該移動部材において上記底部側に位置する基端部から外方に突出する鍔部であって、上記蓋体と当該鍔部との間に上記スプリングが位置するように設けられて当該スプリングによって上記軸受に付勢された鍔部を有しており、上記軸線方向に移動自在であって上記軸線回りに回動不能
となるように、上記孔部に挿通されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項
1に記載の発明によれば、ステッピングモータのケーシング内にリニア駆動機構を構成する移動部材を収納し、この移動部材を上記ケーシングの開口部を塞ぐ蓋体の孔部から出没自在に設けているために、全体の小型化を達成することができる。
【0012】
しかも、シャフトの外周面に形成された雄ねじ等も、蓋体によって塞がれたケーシング内に収納されているために、異物の付着等による作動不良を生じる虞も無い。
【0013】
さらに、請求項
1に記載の発明によれば、上記ケーシング内において、蓋体の裏面と移動部材に形成した鍔部との間に、移動部材の位置決め用にスプリングを設けているために、ローターマグネットの回転に抵抗を与える虞も無い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るステッピングモータの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】従来のステッピングモータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および
図2は、本発明に係るステッピングモータの一実施形態を示すもので、図中符号1がケーシングである。
このケーシング1は、有底円筒状に形成された金属製のもので、軸線方向の中間部に仕切板1aが設けられるとともに、この仕切板1aと底部との間に概観円筒状の励磁コイル2が固定されている。そして、この励磁コイル2内に、ローター3が励磁コイル2との間に隙間を介して軸線回りに回転自在に設けられている。
【0016】
このローター3は、合成樹脂からなるローター本体3aの外周にローターマグネット4が一体成形された円筒状のもので、ローター本体3aの中心部にはシャフト5が軸線を一致させて一体化されている。このシャフト5は、ローター3からケーシング1の開口部側に延出する長さ寸法に形成されており、ケーシング1の底部および仕切板1aに配置された軸受け6a、6bによって回転自在に支持されている。
【0017】
また、このシャフト5は、軸受け6bから先端部に至る外周面に、リードスクリュー(雄ねじ)7が螺設されている。そして、このリードスクリュー7が形成されたシャフト5の外周に移動部材8が設けられている。
【0018】
この移動部材8は、概観角柱状の部材で、軸線に沿って上記シャフト5の外径寸法に対応した内径寸法を有する孔部が穿設されるとともに、この孔部の内周面に上記リードスクリュー7と螺合する雌ねじ9が形成されている。そして、この移動部材8は、上記雌ねじ9にリードスクリュー7を螺合させてシャフト5の外周面に外装されている。
【0019】
一方、ケーシング1の開口部には、これを塞ぐ蓋体10が設けられている。ここで、蓋体10には、移動部材8が挿通される孔部11が形成されている。この孔部11は、移動部材8の外周面との間に僅かな間隙を形成する正方形に形成されており、これにより移動部材8は、上記孔部11に軸線方向に移動自在であって、かつ軸線回りに回動不能に挿通されている。この結果、リードスクリュー7、移動部材8および蓋体10の孔部11によってリニア駆動機構が構成されている。
【0020】
また、移動部材8の基端部には、これから外方に突出する鍔部12が形成されるとともに、この鍔部12と蓋体10の裏面との間に、移動部材8をケーシング1の底部側に付勢するスプリング13が介装されている。これにより、移動部材8は、軸受け6bの上面を載置面としてケーシング1内に位置決めされている。
【0021】
なお、図中符号14は、励磁コイル2の端部が絡げられる端子15が植設された端子台であり、符号16は、これら端子台14および端子15を覆う端子カバーである。さらに、符号17は、このステッピングモータのケーシング1を、上記リニア駆動機構と一体的に機器類の取付台にねじ止めするための取付部である。
【0022】
以上の構成からなるリニア駆動機構を備えたステッピングモータによれば、モータ部を収納して取付部17により機器類にねじ止めされるケーシング1内に、リニア駆動機構を構成する移動部材8を一体的に収納し、この移動部材8をケーシング1の開口部を塞ぐ蓋体10の孔部11から出没自在に設けているために、全体の小型化を達成することができる。
【0023】
しかも、移動部材8がモータ部を収納したケーシング1内に収納されているために、当該移動部材8の取付位置精度も高めることができるとともに、シャフト5の外周面に形成されたリードスクリュー7等も、蓋体10によって塞がれたケーシング1内に収納されているために、異物の付着等による作動不良を生じる虞も無い。
【0024】
加えて、ケーシング1内において、蓋体10の裏面と移動部材8に形成した鍔部12との間に、移動部材8をケーシング1の底部側に付勢して軸受け6b上に位置決めするスプリング13を設けているために、移動部材8にスラスト力が作用した際にも、移動部材8とシャフト5との間に相対変位が生じることを防止して、移動部材8の位置精度を向上させることができる。
【0025】
また、上記スプリング13によって、無作動時における移動部材8の原位置復帰を図ることも可能になる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーシング
2 励磁コイル
3 ローター
4 ローターマグネット
5 シャフト
7 リードスクリュー(雄ねじ)
8 移動部材
9 雌ねじ
10 蓋体
11 孔部
12 鍔部
13 スプリング