特許第6463938号(P6463938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463938
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190128BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20190128BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
   !B23Q3/15 D
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-207148(P2014-207148)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-76646(P2016-76646A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥川 圭介
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊寿
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−300057(JP,A)
【文献】 特開2014−075525(JP,A)
【文献】 特開2014−165267(JP,A)
【文献】 特開2008−047657(JP,A)
【文献】 特開2003−160874(JP,A)
【文献】 特開平08−162518(JP,A)
【文献】 特開2004−171834(JP,A)
【文献】 特開昭63−283037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
B23Q 3/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面及び基板裏面を有し、セラミックからなる本体基板と、
該本体基板に設けられた吸着用電極と、
ベース表面及びベース裏面を有し、前記ベース表面を前記本体基板の前記基板裏面側に向けて配置された金属ベースと、
該金属ベースの前記ベース表面と前記ベース裏面とを貫通して形成された内部貫通穴と、
前記本体基板に設けられた複数の加熱領域であって、少なくとも第1加熱領域と第2加熱領域とを備えた複数の加熱領域と、
前記第1加熱領域に配置される第1ヒータ電極と、前記第2加熱領域に配置される第2ヒータ電極と、を少なくとも備えた複数のヒータ電極と、
前記第1ヒータ電極に電気的に接続された第1ヒータ電極端子と、前記第2ヒータ電極に電気的に接続された第2ヒータ電極端子と、を少なくとも備えた複数のヒータ電極端子と、
を備え、
前記複数のヒータ電極端子のうち少なくとも前記第1ヒータ電極端子および前記第2ヒータ電極端子は、前記内部貫通穴内に配置されるとともに、前記内部貫通穴内に配置された接続部材に電気的に接続されており、
前記第1ヒータ電極端子は、前記第1ヒータ電極の一端および他端に電気的に接続される2つのヒータ電極端子であり、
前記第2ヒータ電極端子は、前記第2ヒータ電極の一端および他端に電気的に接続される2つのヒータ電極端子であり、
前記第1ヒータ電極端子および前記第2ヒータ電極端子は、同一の前記内部貫通穴内に配置されるとともに同一の前記接続部材に電気的に接続されること、
を特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記本体基板の前記基板表面側から前記基板裏面側を見た場合に、前記内部貫通穴は、前記本体基板のいずれかの前記加熱領域内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記金属ベースの前記ベース表面と前記ベース裏面とを貫通して形成され、前記吸着用電極に電気的に接続された吸着用電極端子を配置する貫通端子穴をさらに備え、前記本体基板の前記基板表面側から前記基板裏面側を見た場合に、前記貫通端子穴は、前記内部貫通穴と同じ前記加熱領域内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記内部貫通穴は、前記貫通端子穴とは別に設けられること、
を特徴とする請求項3に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記ヒータ電極端子には、凸状の雄型接続部が設けられ、前記接続部材には、前記ヒータ電極端子の前記雄型接続部に接続される凹状の雌型接続部が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記ヒータ電極と前記ヒータ電極端子とを電気的に接続する内部導電層であって、
前記本体基板の内部において、略同一平面上に配置される複数の内部導電層を備えること、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記ヒータ電極端子の数は、前記ヒータ電極端子が配置される前記内部貫通穴の数よりも多いこと、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置では、ドライエッチング(例えばプラズマエッチング)等の加工処理が半導体ウェハ(例えばシリコンウェハ)に対して行われている。この加工精度を高めるために、半導体製造装置内に半導体ウェハを確実に支持する支持手段が必要である。この支持手段として、静電引力によって半導体ウェハを支持する静電チャックが知られている。
【0003】
半導体ウェハの温度にばらつきが生じると、加工精度が低下する。加工精度を高めるために、静電チャックに支持された半導体ウェハの温度を均一にする必要がある。例えば、特許文献1には、半導体ウェハが支持されるセラミック基板(本体基板)の内部にヒータ電極を備えた静電チャックが開示されている。そのヒータ電極によって、半導体ウェハは加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の静電チャックは、半導体ウェハの温度分布を均一にするために、複数の領域に区分された本体基板と、各領域に配置されたヒータ電極を有する構成であり、かつ、各領域のヒータ電極はそれぞれ独立して温度制御される構成である。そのため、ヒータ電極の数が増えると、ヒータ電極に給電するためのヒータ電極端子の数も増える。そして、ヒータ電極端子の数が増えると、ヒータ電極端子を収容する内部空間(端子穴)をそのヒータ電極端子の数だけ静電チャック内部に設ける必要がある。これにより、静電チャックの構造が複雑となる。
【0006】
また、例えば、放熱用の金属ベースに多数の端子穴が形成されることにより、端子穴の形成される部分は本体基板との接触が十分に得られない。よって、端子穴の形成される部分では金属ベースへの放熱性が低下し、局所的に温度が高くなる熱の特異点(以下「特異点」ともいう)が本体基板上に多数発生する。これにより、半導体ウェハの温度分布の均一化が困難となる。また、金属ベースに多数の端子穴が形成されることにより、本体基板と金属ベースとの間の接着性の低下、さらには位置合わせが煩雑となる等の接着作業性の低下を招く。
【0007】
また、ヒータ電極端子の数及び端子穴の数が増えることにより、例えば、金属ベース内部に形成される冷却用水路の位置の自由度といった、静電チャック内部の構成の設計自由度の低下を招く。また、多数のヒータ電極端子を外部電源に接続するための接続工数や、多数の端子穴を形成する穴加工工数等、静電チャックの製造過程における工数が増加し、製造効率の低下を招く。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、構造の簡素化によって本体基板上の特異点の数及び面積を低減でき、工数低減等による製造の容易化、製造効率の向上が可能な静電チャックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板表面及び基板裏面を有し、セラミックからなる本体基板と、該本体基板に設けられた吸着用電極と、ベース表面及びベース裏面を有し、前記ベース表面を前記本体基板の前記基板裏面側に向けて配置された金属ベースと、該金属ベースの前記ベース表面と前記ベース裏面との間を貫通して形成された内部貫通穴と、を備え、前記本体基板には、それぞれにヒータ電極が配置された複数の加熱領域が設けられ、前記内部貫通穴内には、前記各加熱領域の前記ヒータ電極に電気的に接続された複数のヒータ電極端子が配置され、前記内部貫通穴内に配置された前記複数のヒータ電極端子は、前記内部貫通穴内に配置された接続部材に電気的に接続されていることを特徴とする静電チャックである。
【0010】
前記静電チャックでは、内部貫通穴内に、本体基板の各加熱領域のヒータ電極に電気的に接続された複数のヒータ電極端子を集約して配置している。そして、内部貫通穴内に集約して配置された複数のヒータ電極端子は、内部貫通穴内に配置された接続部材に電気的に接続されている。
【0011】
そのため、従来のように、静電チャック内部にヒータ電極端子の数だけ端子穴(本発明の内部貫通穴)を設ける必要がなくなる。これにより、静電チャックの構造を簡素化でき、本体基板上の特異点の数及び面積を低減できる。よって、本体基板に設けた吸着用電極によって吸着される半導体ウェハ等の被吸着物の温度分布をより均一化させることができる。
【0012】
また、従来のように、静電チャック内部に多数の端子穴を設ける必要がなくなるため、静電チャック内部の構成の設計自由度を高めることができる。また、本体基板と金属ベースとを例えば接着層等を介して接着する場合には、両者の間の接着性を向上させることができ、さらには位置合わせ等の接着作業性も向上させることができる。また、従来に比べて、製造過程における工数(例えば穴加工工数)を低減でき、製造の容易化、製造効率の向上を図ることができる。
【0013】
また、内部貫通穴内において、複数のヒータ電極端子を1つの接続部材に接続するため、ヒータ電極端子と外部部材との電気的な接続作業を効率良く行うことができる。これにより、製造の容易化、製造効率の向上を図ることができる。例えば、複数のヒータ電極端子を1つの接続部材にまとめて一括で接続できるようにすれば、接続工数を低減でき、製造効率をより高めることができる。
【0014】
このように、本発明によれば、構造の簡素化によって本体基板上の特異点の数及び面積を低減でき、工数低減等による製造の容易化、製造効率の向上が可能な静電チャックを提供することができる。
【0015】
前記静電チャックにおいて、前記本体基板の前記基板表面側から前記基板裏面側を見た場合に、前記内部貫通穴は、前記本体基板のいずれかの前記加熱領域内に配置されていてもよい。この場合には、特異点の発生原因になる内部貫通穴の位置を特定の加熱領域に対応する位置とすることができる。これにより、その特定の加熱領域のヒータ電極を制御して温度調整することにより、被吸着物の温度分布の調整及び均一化をより簡単に行うことができる。
【0016】
また、前記静電チャックは、前記金属ベースの前記ベース表面と前記ベース裏面との間を貫通して形成され、前記吸着用電極に電気的に接続された吸着用電極端子を配置する貫通端子穴をさらに備え、前記本体基板の前記基板表面側から前記基板裏面側を見た場合に、前記貫通端子穴は、前記内部貫通穴と同じ前記加熱領域内に配置されていてもよい。この場合には、特異点の発生原因になる内部貫通穴及び貫通端子穴の位置を特定の同じ加熱領域に対応する位置とすることができる。これにより、その特定の加熱領域のヒータ電極を制御して温度調整することにより、被吸着物の温度分布の調整及び均一化をより簡単に行うことができる。
【0017】
また、前記ヒータ電極端子には、凸状の雄型接続部が設けられ、前記接続部材には、前記ヒータ電極端子の前記雄型接続部に接続される凹状の雌型接続部が複数設けられていてもよい。この場合には、内部貫通穴内において、複数のヒータ電極端子を1つの接続部材に接続する作業が容易となる。また、ヒータ電極端子と接続部材との電気的な接続における信頼性を高めることができる。
【0018】
前記本体基板は、該本体基板に設けた吸着用電極に対して電圧を印加した際に生じる静電引力を用いて、被吸着物を吸着できるよう構成されている。被吸着物としては、半導体ウェハやガラス基板等が挙げられる。
【0019】
前記本体基板は、例えば、積層した複数のセラミック層により構成することができる。このような構成にすると、本体基板の内部に各種の構造(例えばヒータ電極等)を容易に形成することができる。
【0020】
前記本体基板を構成するセラミック材料としては、例えば、アルミナ、イットリア(酸化イットリウム)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素等の高温焼成セラミックを主成分とする焼結体を用いることができる。
【0021】
前記本体基板を構成するセラミック材料としては、用途に応じて、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミック等の低温焼成セラミックを主成分とする焼結体を用いてもよい。また、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム等の誘電体セラミックを主成分とする焼結体を用いてもよい。
【0022】
なお、半導体製造におけるドライエッチング等の各処理では、プラズマを用いた技術が種々採用される。プラズマを用いた処理では、ハロゲンガス等の腐食性ガスが多用される。このため、プラズマや腐食性ガスに晒される静電チャックには、高い耐食性が要求される。したがって、本体基板は、プラズマや腐食性ガスに対する耐食性があるセラミック材料、例えば、アルミナ、イットリア等を主成分とするセラミック材料からなることが好ましい。
【0023】
前記吸着用電極及び前記ヒータ電極を構成する導体の材料としては、特に限定されないが、同時焼成法によってこれらの導体及びセラミック部分(本体基板)を形成する場合、導体中の金属粉末は、本体基板の焼成温度よりも高融点である必要がある。例えば、本体基板がいわゆる高温焼成セラミック(例えばアルミナ等)からなる場合には、導体中の金属粉末として、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、これらの合金等を用いることができる。
【0024】
また、本体基板がいわゆる低温焼成セラミック(例えばガラスセラミック等)からなる場合には、導体中の金属粉末として、銅(Cu)、銀(Ag)、これらの合金等を用いることができる。また、本体基板が高誘電率セラミック(例えばチタン酸バリウム等)からなる場合には、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、これらの合金等を用いることができる。
【0025】
前記吸着用電極及び前記ヒータ電極は、金属粉末を含む導体ペーストを用い、その導体ペーストを従来周知の手法、例えばスクリーン印刷等の方法により塗布した後、焼成して形成することができる。
【0026】
前記金属ベースを構成する金属材料としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、チタン(Ti)等を用いることができる。
前記本体基板と前記金属ベースとは、例えば、両者の間に接着層等を介して接合(接着)される。接着層を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料、インジウム等の金属材料等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態1の静電チャックの構造を示す断面説明図である。
図2】(A)は吸着用電極を示す平面図であり、(B)は吸着用電極に接続されるビアを示す平面図である。
図3】(A)はヒータ電極を示す平面図であり、(B)はヒータ電極に接続されるビアを示す平面図であり、(C)はドライバに接続されるビアを示す平面図である。
図4】(A)はヒータ電極端子及び接続部材の構造を示す説明図であり、(B)はヒータ電極端子と接続部材とが電気的に接続された状態を示す説明図である。
図5】貫通端子穴及び内部貫通穴の位置を示す説明図である。
図6】(A)は実施形態2の静電チャックにおいてヒータ電極端子及び接続部材の構造を示す説明図であり、(B)はヒータ電極端子と接続部材とが電気的に接続された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(実施形態1)
図1図5に示すように、本実施形態の静電チャック1は、基板表面111及び基板裏面112を有し、セラミックからなる本体基板11と、本体基板11に設けられた吸着用電極21と、ベース表面121及びベース裏面122を有し、ベース表面121を本体基板11の基板裏面112側に向けて配置された金属ベース12と、金属ベース12のベース表面121とベース裏面122との間を貫通して形成された内部貫通穴51と、を備えている。
【0029】
本体基板11には、それぞれにヒータ電極41(41a、41b)が配置された複数の加熱領域113(113a、113b)が設けられている。内部貫通穴51内には、各加熱領域113(113a、113b)のヒータ電極41(41a、41b)に電気的に接続された複数のヒータ電極端子53が配置されている。内部貫通穴51内に配置された複数のヒータ電極端子53は、内部貫通穴51内に配置された接続部材6に電気的に接続されている。以下、この静電チャック1について詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、静電チャック1は、被吸着物である半導体ウェハ8を吸着保持する装置である。静電チャック1は、本体基板11、金属ベース12、接着層13等を備えている。本体基板11と金属ベース12とは、両者の間に配置された接着層13を介して接合されている。
【0031】
本実施形態では、本体基板11側を上側、金属ベース12側を下側とする。上下方向とは、本体基板11と金属ベース12との積層方向であり、本体基板11及び金属ベース12の厚み方向である。上下方向(厚み方向)に直交する方向とは、静電チャック1が平面的に広がる方向(平面方向、面方向)である。
【0032】
同図に示すように、本体基板11は、半導体ウェハ8を吸着保持する部材である。本体基板11は、基板表面111及び基板裏面112を有し、直径300mm、厚み3mmの円板状に形成されている。本体基板11の基板表面111は、半導体ウェハ8を吸着する吸着面である。本体基板11は、複数のセラミック層(図示略)を積層して構成されている。各セラミック層は、アルミナを主成分とするアルミナ質焼結体からなる。
【0033】
本体基板11の内部には、吸着用電極21及びヒータ電極(発熱体)41が配置されている。吸着用電極21は、本体基板11の内部において、略同一平面上に配置されている。吸着用電極21は、直流高電圧を印加することにより静電引力を発生する。この静電引力により、半導体ウェハ8を本体基板11の基板表面(吸着面)111に吸着して保持する。吸着用電極21は、タングステンからなる。
【0034】
ヒータ電極41は、本体基板11の内部において、吸着用電極21よりも下方側(金属ベース12側)に配置されている。ヒータ電極41は、本体基板11の内部において、略同一平面上に配置されている。ヒータ電極41は、タングステンからなる。吸着用電極21及びヒータ電極41を構成する材料としては、前述のタングステンの他、モリブデン、これらの合金等を用いることができる。
【0035】
同図に示すように、金属ベース12は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属製の冷却用部材(クーリングプレート)である。金属ベース12は、ベース表面121及びベース裏面122を有し、直径340mm、厚み32mmの円板状に形成されている。金属ベース12は、本体基板11の下方側に配置されている。金属ベース12の内部には、冷却媒体(例えば、フッ素化液、純水等)を流通させる冷媒流路123が設けられている。
【0036】
同図に示すように、接着層13は、本体基板11と金属ベース12との間に配置されている。接着層13は、シリコーン樹脂からなる接着剤により構成されている。本体基板11と金属ベース12とは、接着層13を介して接合されている。
【0037】
図2(A)に示すように、吸着用電極21は、前述のとおり、本体基板11の内部において、略同一平面上に配置されている。吸着用電極21は、平面視で円形状に形成されている。
【0038】
図2(B)に示すように、吸着用電極21の下方側(金属ベース12側)には、ビア22が配置されている。ビア22は、本体基板11の中心軸に沿って上下方向に形成されている。ビア22は、吸着用電極21に接続されている。
【0039】
図1に示すように、静電チャック1の内部には、金属ベース12のベース裏面122から本体基板11側に向かって上下方向に形成された断面円形状の貫通端子穴31が設けられている。貫通端子穴31は、金属ベース12のベース裏面122とベース表面121との間を貫通し、本体基板11の内部まで形成されている。貫通端子穴31は、後述する内部貫通穴51の形成位置とは別の位置に設けられている。貫通端子穴31には、筒状の絶縁部材32が嵌め込まれている。貫通端子穴31の底面(本体基板11)には、メタライズ層23が設けられている。メタライズ層23は、ビア22に電気的に接続されている。すなわち、吸着用電極21は、ビア22を介して、メタライズ層23に接続されている。
【0040】
メタライズ層23には、吸着用電極端子33が設けられている。吸着用電極端子33には、端子金具34が取り付けられている。端子金具34は、電源回路(図示略)に接続されている。吸着用電極21には、吸着用電極端子33等を介して、静電引力を発生させるための電力が供給される。
【0041】
図3(A)に示すように、本体基板11は、2つの加熱領域113を有する。すなわち、本体基板11は、その中心軸を含む内側領域である第1加熱領域113aとその第1加熱領域113aの外側領域である第2加熱領域113bとを有する。
【0042】
ヒータ電極41は、前述のとおり、本体基板11の内部において、略同一平面上に配置されている。ヒータ電極41は、第1加熱領域113aに配置された第1ヒータ電極41aと第2加熱領域113bに配置された第2ヒータ電極41bとを有する。長尺状の第1ヒータ電極41a及び第2ヒータ電極41bは、第1加熱領域113a及び第2加熱領域113bにおいて、複数回折り返して略同心円状に配置されている。
【0043】
図3(B)に示すように、第1加熱領域113aにおいて、第1ヒータ電極41aの下方側(金属ベース12側)には、一対のビア421、422が配置されている。一対のビア421、422は、第1ヒータ電極41aの一対の端子部411a、412aにそれぞれ接続されている。
【0044】
また、第2加熱領域113bにおいて、第2ヒータ電極41bの下方側(金属ベース12側)には、一対のビア431、432が配置されている。一対のビア431、432は、第2ヒータ電極41bの一対の端子部411b、412bにそれぞれ接続されている。
【0045】
図1に示すように、一対のビア421、422及び一対のビア431、432の下方側(金属ベース12側)には、互いに分離して形成された4つのドライバ(内部導電層)441、442、451、452(図1ではドライバ441、451のみを図示)が配置されている。ドライバ441、442、451、452は、本体基板11の内部において、略同一平面上に配置されている。一対のドライバ441、442は、一対のビア421、422にそれぞれ接続されている。一対のドライバ451、452は、一対のビア431、432にそれぞれ接続されている。
【0046】
図3(C)に示すように、一対のドライバ441、442の下方側(金属ベース12側)には、一対のビア461、462が配置されている。一対のビア461、462は、一対のドライバ441、442にそれぞれ接続されている。
【0047】
また、一対のドライバ451、452の下方側(金属ベース12側)には、一対のビア471、472が配置されている。一対のビア471、472は、一対のドライバ451、452にそれぞれ接続されている。
【0048】
図1に示すように、静電チャック1の内部には、金属ベース12のベース裏面122から本体基板11側に向かって上下方向に形成された断面四角形状の内部貫通穴51が設けられている。内部貫通穴51は、金属ベース12のベース裏面122とベース表面121との間を貫通し、本体基板11の内部まで形成されている。内部貫通穴51には、筒状の絶縁部材52が嵌め込まれている。
【0049】
内部貫通穴51の底面(本体基板11)には、4つのメタライズ層481、482、491、492(図1ではメタライズ層481、491のみを図示)が設けられている。一対のメタライズ層481、482は、一対のビア461、462にそれぞれ接続されている。一対のメタライズ層491、492は、一対のビア471、472にそれぞれ接続されている。
【0050】
図4(A)に示すように、各メタライズ層481、482、491、492には、それぞれヒータ電極端子53が設けられている。ヒータ電極端子53は、各メタライズ層481、482、491、492に対してロウ付けにより接合されている。すなわち、4つのヒータ電極端子53のうち、2つのヒータ電極端子53は、第1ヒータ電極41aに電気的に接続され、残り2つのヒータ電極端子53は、第2ヒータ電極41bに電気的に接続されている。各ヒータ電極端子53には、凸状(ピン形状)の雄型接続部531が設けられている。雄型接続部531のピン直径は0.2〜0.5mm、ピン長さは2〜5mm、配置ピッチは1〜2.54mmとすることができる。
【0051】
また、内部貫通穴51内には、1つの接続部材6が配置されている。接続部材6は、コネクタ部61と接続ケーブル62とを有する。コネクタ部61には、凸状(ピン形状)の雄型接続部531に対応した凹状の雌型接続部611が4つ設けられている。
【0052】
図4(B)に示すように、ヒータ電極端子53の雄型接続部531は、接続部材6のコネクタ部61の雌型接続部611に挿入されている。4つのヒータ電極端子53は、1つの接続部材6に電気的に接続されている。接続部材6は、電源回路(図示略)に接続されている。第1ヒータ電極41a及び第2ヒータ電極41bには、ヒータ電極端子53、接続部材6等を介して、第1ヒータ電極41a及び第2ヒータ電極41bを発熱させるための電力が供給される。
【0053】
図5に示すように、内部貫通穴51は、すべての部分が本体基板11の第1加熱領域113aに対応する位置に配置されている。また、貫通端子穴31は、すべての部分が内部貫通穴51と同じ第1加熱領域113aに対応する位置に配置されている。
【0054】
また、前述のとおり、内部貫通穴51内には、第1ヒータ電極41a及び第2ヒータ電極41bに電気的に接続された4つのヒータ電極端子53が配置されている。内部貫通穴51内に配置された4つのヒータ電極端子53は、内部貫通穴51内に配置された1つの接続部材6に電気的に接続されている。
【0055】
図示を省略したが、静電チャック1(本体基板11、金属ベース12、接着層13)の内部には、半導体ウェハ8を冷却するヘリウム等の冷却用ガスの供給通路となる冷却用ガス供給路が設けられている。本体基板11の基板表面(吸着面)111には、冷却用ガス供給路が開口して形成された複数の冷却用開口部(図示略)及びその冷却用開口部から供給された冷却用ガスが本体基板11の基板表面(吸着面)111全体に広がるように形成された環状の冷却用溝部(図示略)が設けられている。
【0056】
次に、静電チャック1の製造方法について説明する。
まず、従来公知の方法により、アルミナを主成分とするセラミックグリーンシートを作製する。本実施形態では、本体基板11となる複数のセラミックグリーンシートを作製する。
【0057】
次いで、複数のセラミックグリーンシートに対して、貫通端子穴31となる空間、冷却用ガス供給路等の冷却ガスの流路となる空間、ビア22、421、422、431、432、461、462、471、472となるスルーホール等を必要箇所に形成する。なお、貫通端子穴31は、より高い位置精度を出すために、最終的に研磨加工が施される。
【0058】
次いで、複数のセラミックグリーンシートにおいて、ビア22、421、422、431、432、461、462、471、472となる位置に形成したスルーホール内に、メタライズインクを充填する。また、複数のセラミックグリーンシートにおいて、吸着用電極21、ヒータ電極41(41a、41b)、ドライバ441、442、451、452を形成する位置に、スクリーン印刷等の方法により、メタライズインクを塗布する。なお、メタライズインクは、アルミナを主成分とするセラミックグリーンシート用の原料粉末にタングステン粉末を混合してスラリー状としたものである。
【0059】
次いで、複数のセラミックグリーンシートを互いに位置合わせして積層し、熱圧着する。これにより、積層シートを得る。そして、積層シートを所定の形状にカットする。その後、積層シートを還元雰囲気中、1400〜1600℃の範囲(例えば1450℃)の温度条件で5時間焼成する。これにより、アルミナ質焼結体からなる本体基板11を得る。
【0060】
次いで、本体基板11の必要な箇所に、メタライズ層23、481、482、491、492等を形成する。そして、メタライズ層23に吸着用電極端子33を設ける。また、メタライズ層481、482、491、492にヒータ電極端子53をロウ付けにより接合する。本実施形態では、4つのヒータ電極端子53をロウ付けにより一括でメタライズ層481、482、491、492に接合する。
【0061】
その後、シリコーン樹脂からなる接着剤を用いて、本体基板11と金属ベース12とを接合する。なお、金属ベース12に対して、予め貫通端子穴31、内部貫通穴51となる空間を必要箇所に形成しておく。これにより、本体基板11と金属ベース12とを接着層13により接合する。
【0062】
次いで、内部貫通穴51内に接続部材6を挿入する。そして、4つのヒータ電極端子53の雄型接続部531を接続部材6のコネクタ部61の雌型接続部611に差し込んで挿入する。これにより、ヒータ電極端子53と接続部材6とを接続する。これにより、静電チャック1を得る。
【0063】
次に、本実施形態の静電チャック1の作用効果について説明する。
本実施形態の静電チャック1では、内部貫通穴51内に、本体基板11の各加熱領域113a、113bのヒータ電極41a、41bに電気的に接続された複数(4つ)のヒータ電極端子53を集約して配置している。そして、内部貫通穴51内に集約して配置された複数(4つ)のヒータ電極端子53は、内部貫通穴51内に配置された接続部材6に電気的に接続されている。
【0064】
そのため、従来のように、静電チャック1内部にヒータ電極端子53の数だけ端子穴(本実施形態の内部貫通穴51)を設ける必要がなくなる。これにより、静電チャック1の構造を簡素化でき、本体基板11上の特異点の数及び面積を低減できる。よって、本体基板11に設けた吸着用電極21によって吸着される半導体ウェハ(被吸着物)8の温度分布をより均一化させることができる。
【0065】
また、従来のように、静電チャック1内部に多数の端子穴を設ける必要がなくなるため、静電チャック1内部の構成の設計自由度を高めることができる。また、本体基板11と金属ベース12とを本実施形態のように接着層13を介して接着する場合には、両者の間の接着性を向上させることができ、さらには位置合わせ等の接着作業性も向上させることができる。また、従来に比べて、製造過程における工数(例えば穴加工工数)を低減でき、製造の容易化、製造効率の向上を図ることができる。
【0066】
また、内部貫通穴51内において、複数のヒータ電極端子53を1つの接続部材6に接続するため、ヒータ電極端子53と外部部材(接続部材6)との電気的な接続作業を効率良く行うことができる。これにより、製造の容易化、製造効率の向上を図ることができる。本実施形態のように、複数のヒータ電極端子53を1つの接続部材6にまとめて一括で接続することにより、接続工数を低減でき、製造効率をより高めることができる。
【0067】
本実施形態の静電チャック1において、本体基板11の基板表面111側から基板裏面112側を見た場合に、内部貫通穴51は、本体基板11のいずれかの加熱領域113内(本実施形態では第1加熱領域113a内)に配置されている。そのため、特異点の発生原因になる内部貫通穴51の位置を特定の加熱領域113(第1加熱領域113a)に対応する位置とすることができる。これにより、その特定の加熱領域113(第1加熱領域113a)のヒータ電極41(第1ヒータ電極41a)を制御して温度調整することにより、半導体ウェハ(被吸着物)8の温度分布の調整及び均一化をより簡単に行うことができる。
【0068】
また、静電チャック1は、金属ベース12のベース表面121とベース裏面122とを貫通して形成され、吸着用電極21に電気的に接続された吸着用電極端子33を配置する貫通端子穴31をさらに備えている。また、本体基板11の基板表面111側から基板裏面112側を見た場合に、貫通端子穴31は、内部貫通穴51と同じ加熱領域113(113a)内に配置されている。そのため、特異点の発生原因になる内部貫通穴51及び貫通端子穴31の位置を特定の同じ加熱領域113(第1加熱領域113a)に対応する位置とすることができる。これにより、その特定の加熱領域113(第1加熱領域113a)のヒータ電極41(第1ヒータ電極41a)を制御して温度調整することにより、半導体ウェハ(被吸着物)8の温度分布の調整及び均一化をより簡単に行うことができる。
【0069】
また、ヒータ電極端子53には、凸状(ピン形状)の雄型接続部531が設けられている。また、接続部材6には、ヒータ電極端子53の雄型接続部531に接続される凹状の雌型接続部611が複数設けられている。そのため、内部貫通穴51内において、複数のヒータ電極端子53を1つの接続部材6に接続する作業が容易となる。また、ヒータ電極端子53と接続部材6との電気的な接続における信頼性を高めることができる。
【0070】
このように、本実施形態によれば、構造の簡素化によって本体基板上の特異点の数及び面積を低減でき、工数低減等による製造の容易化、製造効率の向上が可能な静電チャック1を提供することができる。
【0071】
(実施形態2)
本実施形態は、図6(A)、(B)に示すように、静電チャック1において、接続部材6の構成を変更した例である。
【0072】
図6(A)に示すように、接続部材6は、コネクタ部61と接続ケーブル62と中継部材63とを有する。コネクタ部61には、凸状(ピン形状)の接続凸部612が4つ設けられている。中継部材63には、ヒータ電極端子53の雄型接続部531が接続される凹状の雌型接続部631が4つ設けられている。また、中継部材63には、コネクタ部61の接続凸部612が接続される凹状の接続凹部632が4つ設けられている。
【0073】
図4(B)に示すように、ヒータ電極端子53の4つの雄型接続部531は、それぞれ接続部材6の中継部材63の4つの雌型接続部631に挿入されている。また、接続部材6のコネクタ部61の4つの接続凸部612は、それぞれ接続部材6の中継部材63の4つの接続凹部632に挿入されている。その他の基本的な構成は、実施形態1と同様である。
【0074】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、ヒータ電極端子53と接続部材6のコネクタ部61とが中継部材63を介して接続されている。そのため、ヒータ電極端子53の構成(例えば、雄型接続部531のピン形状、直径、長さ、ピッチ等)が変更されても、接続部材6の中継部材63の構成(例えば、雌型接続部631の形状等)を変更することにより、接続部材6の他の部分(例えば、コネクタ部61、接続ケーブル62等)の構成を変更することなく、ヒータ電極端子53と接続部材6との電気的な接続を容易に行うことができる。その他の基本的な作用効果は、実施形態1と同様である。
【0075】
(その他の実施形態)
本発明は、前述の実施形態等に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0076】
(1)前述の実施形態では、本体基板が2つの加熱領域(第1加熱領域、第2加熱領域)を有しているが、本体基板が3つ以上の加熱領域を有していてもよい。また、ヒータ電極の数が2つであったが、3つ以上であってもよい。また、ヒータ電極端子の数が4つであったが、これに限定されるものではない
(2)前述の実施形態では、内部貫通穴が本体基板の第1加熱領域内に配置されているが、例えば、内部貫通穴が本体基板の第2加熱領域内に配置されていてもよい。
【0077】
(3)前述の実施形態では、内部貫通穴内にヒータ電極端子を配置し、貫通端子穴に吸着用電極端子を配置したが、例えば、貫通端子穴を設けず、内部貫通穴内にヒータ電極端子及び吸着用電極端子を配置してもよい。
【0078】
(4)前述の実施形態では、内部貫通穴及び貫通端子穴が共に本体基板の第1加熱領域内に配置されているが、例えば、内部貫通穴及び貫通端子穴の一方だけを本体基板の第1加熱領域内に配置してもよい。
【0079】
(5)前述の実施形態では、ヒータ電極端子の数が4つで接続部材が1つであったが、これに限定されるものではなく、複数のヒータ電極端子が1つの接続部材と電気的に接続されていればよい。例えば、1つの内部貫通穴内に、複数のヒータ電極端子及び1つの接続部材Aと、別の複数のヒータ電極端子及び1つの接続部材Bとを設ける構成としてもよい。このとき、1つの接続部材Aは、複数のヒータ電極端子とそれぞれ接続する複数の接続部を有し、1つの接続部材Bは、複数のヒータ電極端子とそれぞれ接続する複数の接続部を有する。また、1つの内部貫通穴内に、複数のヒータ電極端子及び1つの接続部材Cと、別のヒータ電極端子1本及び別のヒータ電極端子に電気的に接続される外部端子とを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…静電チャック
11…本体基板
111…基板表面
112…基板裏面
12…金属ベース
121…ベース表面
122…ベース裏面
21…吸着用電極
51…内部貫通穴
113…加熱領域
41…ヒータ電極
53…ヒータ電極端子
6…接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6