(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、パソコンのような事務機器、携帯電話のような通信機器および医療機器を包含する電子機器や、それを内蔵する各種機器において、近傍界から発生する電磁波を吸収して、誤動作;接点の誤接触;ノイズなどの障害を抑制するために電磁波シールドフィルムで被覆することが知られ、近年、支持フィルム上に電磁波シールドフィルムを形成し(例えば、保護層、電磁波シールド層がこの順に積層された電磁波シールドフィルム)、これを各種機器表面に高温圧着して電磁波シールドフィルムを転写することが行われている。(例えば、特許文献1、2)
【0003】
また、従来の転写型の電磁波シールドフィルムは、クリアな成品外観を得るために平坦な支持フィルムが用いられていたが、近年、艶消し外観を有する成品の表面外観についても転写法を用いて付与する試みがなされつつある。それに伴い、艶消し層を備えた、艶消し外観転写性に優れた支持フィルムが求められるようになってきた。
【0004】
一方、艶消し層を備えたフィルムについて、特許文献3には、成形性、厚さ斑、耐熱性に優れた成形用艶消し積層ポリエステルフィルムが開示されている。しかしながら、電磁波シールドフィルム転写用等の支持フィルムとしての検討はなされておらず、よって通常の成形加工用としては十分であっても、転写用の支持フィルムとしては不十分である。
【0005】
また、特許文献4には、良好な艶消し性と透明性とを有する二軸延伸共押出し艶消しポリエステルフィルムが開示されており、積層フィルムの片面に粒径が2〜5μmの粒子を1〜10重量%添加することが開示されている。しかし、具体的に例示されているフィルム光沢度(G
60)は50〜70程度であり、また、転写加工用の支持フィルムとして用いる検討はなされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電磁波シールドフィルムをフレキシブルプリントサーキット(FPC)やモジュールに転写するに際して、生産効率を高めるべく、より高温高速での転写加工処理がなされるようになってきた。しかしながら、このような転写条件においては、上述したような従来の支持フィルムでは、フィルム光沢度を下げると、剥離する際に支持フィルムが破断するといった剥離性の問題が発生しやすい。
【0008】
本発明は、上記を鑑みなされたもので、その目的は、電磁波シールドフィルムをFPCやモジュール等の部材に転写するに際して、従来よりもさらに良好な艶消し外観を表面に付与できると同時に、転写後に支持フィルムを剥離しても破断等の問題の生じ難い、電磁波シールドフィルム転写用の支持フィルムとして特に好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、転写法により艶消し外観性を電磁波シールドフィルムに付与する場合、従来よりもさらにマットな艶消し外観を付与するべく支持フィルム中の粒子径を大きくしたり粒子含有量を増やしたりすると、転写後の支持フィルム剥離性に問題が生じること、そしてこの問題は、艶消し層に用いた粒子のフィルム艶消し層表面への露出を抑制することにより改善できることを見出し、さらに検討を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、
「1.基材層と少なくとも一方の表面に粒子含有の艶消し層とを有する積層ポリエステルフィルムであって、該艶消し層表面の中心線平均粗さ(Ra)が400〜1000nm、10点平均粗さ(Rz)が4000〜8000nmであり、該表面における光沢度(G
60)が6〜20であり、かつ、表面の突起のボイド破れ率が20%以下であることを特徴とする、二軸配向ポリエステルフィルム。
2.該艶消し層表面の見かけの表面エネルギーが60dyn/cm以下である、上記1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
3.艶消し層を構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とし、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ(シクロヘキシレンジメチレン)テレフタレートの群から選択される少なくとも1種を含んでなる、上記1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
4.艶消し層中の粒子の平均粒子径が2.5〜5.5μm、含有量が5〜18質量%である、上記1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
5.艶消し層中の粒子が、不定形シリカまたは合成ゼオライトである、上記1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
6.基材層を構成するポリエステルの主たる成分がポリエチレンテレフタレートである、上記1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
7.基材層を構成するポリエステルの固有粘度が0.56〜0.70dl/gである、上記6に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
8.基材層の粒子含有量が、基材層質量を基準として3.0質量%以下である、上記1〜7のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
9.電磁波シールドフィルム転写用の支持フィルムとして用いられる、上記1〜8のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。」
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、艶消し層表面に形成した電磁波シールドフィルム等の転写フィルムをFPCやモジュール等の部材に転写するに際し、良好な艶消し外観を部材表面に付与できると同時に、転写後に支持フィルムを剥離するに際して破断等の剥離性低下の生じ難い、二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明の二軸配向ポリエステルは、基材層と、少なくとも一方の表面に粒子含有の艶消し層とを有する積層ポリエステルフィルムである。艶消し層と基材層とを有することにより、後述する表面粗さおよび光沢度を安定した製膜性の下に得ることができる。基材層がなく、粒子含有の単層だけでは、表面粗さおよび光沢度と安定した製膜性とを同時に満足させることが難しくなる。
【0013】
(艶消し層)
積層ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面を占める艶消し層は、表面に凹凸を形成するための粒子(凹凸形成性粒子)を含有するポリエステルからなるが、後述する表面突起のボイド破れ率を20%以下にするという点から、粒子含有のポリエステルの延伸性が良好な共重合ポリエステルや複数のポリエステルを溶融混合したポリエステル組成物が好ましく、特に後述する基材層に用いられるポリエステルと主たる成分が同一のものが好ましい。すなわち、例えば基材層のポリエステルの主たる成分がエチレンテレフタレートである場合は、艶消し層のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル組成物が好ましい。なかでも、ポリエステル組成物の従成分としては、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキシレンジメチレン)テレフタレートの群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、艶消し層中の粒子の平均粒径は、2.5〜5.5μmが好ましく、その含有量は、艶消し層の質量を基準として5〜18質量%が好ましい。さらに、艶消し層に含有する粒子の最大粒子径を16μm以下にすることが好ましい。このような態様とすることで、十分な艶消し外観を得ながら、転写工程での剥離性を優れたものにし易くなる。
艶消し層中の粒子含有量が下限値に満たない場合は、上述の光沢度が得難くなる傾向にあり、他方、上限値を超える場合は、転写工程での高温圧着後の剥離性改善効果が低くなる傾向にあるだけでなく、製膜性が低下して破れが発生しやすくなる等、フィルムの製膜自体が困難となる傾向にある。これらの観点から、粒子の含有量は、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは16質量%以下であり、さらに好ましくは14質量%以下である。
【0015】
粒子の平均粒径は、さらに好ましくは3.0〜5.5μm、より好ましくは3.0〜5.3μmである。粒子の平均粒径が下限に満たない場合は、光沢度を下げる効果が低下し、光沢度を下げるためにさらに粒子の添加量を増やすこととなって、転写工程での剥離性改善効果が低くなる傾向にある。一方、粒子の平均粒径が上限値を超える場合は、剥離性改善効果が低くなる傾向にあるだけでなく、フィルムの製膜性も劣る傾向にある。
また、粒子の最大粒子径は、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である。なお、ここでいう最大粒子径は、累積粒径分布曲線の98%における粒径(d
98)である。
【0016】
艶消し層に用いられる粒子は、TG−DTA法による300℃での重量変化が3.0%以下であることが好ましく、さらには1.5〜3.0%であることが好ましい。なお、ここでいう粒子の重量変化は、具体的にはTG−DTA装置により30℃から500℃まで昇温速度10℃/分で昇温した際の、300℃における重量変化を測定したものである。該重量変化が上限値を超えると、ポリエステルフィルムの製造工程や電磁波シールドフィルム転写工程で発泡を引き起こしたり、分子量を低下させてフィルムの製膜性や耐熱性を低下させる場合があり、特に粒子を多量に含有させた場合にフィルムの製膜性や耐熱性を著しく低下させることがある。
【0017】
粒子の種類としては、無機粒子、有機粒子のどちらでもよく、不定形シリカ(コロイドシリカ)、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、合成ゼオライト、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリレート粒子などが例示される。これらの粒子の中で、不定形シリカまたは合成ゼオライトが好ましく、これらはいずれか1種を用いても併用してもよい。また同じ種類で粒径が異なる粒子の混合物を用いてもよい。また、不定形シリカの場合は、シランカップリング剤で表面処理して、水分吸着性を低下したものがより好ましい。
特に好ましい粒子は合成ゼオライトであり、合成ゼオライトの吸着性、特に水分吸着性を低下させるために、pHが5以上の酸で粒子形状を崩さない程度の酸処理をしたものが好ましく、さらに300℃以上の温度で熱処理したものが好ましい。
【0018】
粒子の形状は特に規定するものではないが、不定形であると粒度分布が広くなり、凝集による粗大突起を引き起こしやすく、剥離性改善効果が低くなったり、フィルムの製膜性が低下することがある。したがって粒子の形状は球状もしくは多面状であることが好ましい。好ましい粒子として、球状もしくは多面状の合成ゼオライトが例示される。特に多面形状の粒子の場合は艶消し効果が得られやすい。多面形状の粒子の中でも、特に立方体形状の粒子が好ましい。
これらの粒子の添加方法は特に制限されないが、例えばポリエステルの重縮合中にグリコール分散系として添加する方法、押出中マスターバッチを介して艶消し層に添加する方法等が挙げられる。
かかる艶消し層の厚みは3〜10μm、好ましくは4〜9μmの範囲が適当である。
【0019】
(基材層)
本発明の基材層を構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキシレンジメチレン)テレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等を例示することができ、これらに少量の従成分を共重合した共重合体またはこれと少割合の他樹脂とのブレンド物等であってもよい。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが耐熱性の観点から好ましく、さらにポリエチレンテレフタレートが耐熱性と成形性のバランスが良いので特に好ましい。
【0020】
基材層の粒子含有量は、基材層の質量を基準として3.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。このような態様にすることにより、優れた製膜性を得やすくなる。
基材層に用いられる粒子の種類は、通常フィルムに添加される粒子であれば特に限定されず、無機粒子、有機粒子のいずれでもよい。具体的には不定形シリカ(コロイドシリカ)、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、合成ゼオライト、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリレート粒子などが挙げられる。これらの粒子のうちの1種、または2種以上の異なる粒子を含有させてもよく、また同じ種類で粒径が異なる粒子の混合物を用いてもよい。
【0021】
基材層には、本発明の目的を損なわない範囲であればポリエステル以外の他の樹脂、着色剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等を必要に応じて含有することもできる。
基材層の厚みは、好ましくは10〜140μm、さらに好ましくは20〜100μm、特に好ましくは40〜60μmであることが好ましい。
【0022】
(表面粗さ)
本発明の艶消し層表面の中心線平均粗さ(Ra)は、400〜1000nmであり、10点平均粗さ(Rz)は、4000〜8000nmである必要があり、RaおよびRzがかかる範囲内であることにより、転写後の電磁波シールドフィルム等の表面艶消し外観性が良好なもととなる。RaまたはRzの少なくとも一方が下限値に満たない場合、艶消し外観性の向上効果が不十分となる。一方、RaまたはRzの少なくとも一方が上限値を超える場合、艶消し外観性は良好であるものの、表面の凹凸が激し過ぎるために、製膜の際に粒子の脱落が起こったり、転写工程での重剥離化が起こる等の不具合が生じやすくなる。このような観点から、Raの下限値は、好ましくは500nm、さらに好ましくは600nmであり、Raの上限値は、好ましくは800nm、さらに好ましくは750nmである。また、Rzの下限値は、好ましくは5000nm、さらに好ましくは6000nmであり、Rzの上限値は、好ましくは7500nm、さらに好ましくは7000nmである。
なお、RaおよびRzは、例えば前述の平均粒径および最大粒子径を有する粒子を用い、艶消し層中の含有量を調整することによって得ることができる。
【0023】
(光沢度:G
60)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、その艶消し層表面の光沢度(G
60)が6〜20、好ましくは9〜15であることが必要である。なお、ここでいう光沢度(G
60)とは、JIS規格Z8741に準拠し、入射角、受光角ともに60°で測定した値である。光沢度がこの範囲であることにより、艶消し表面外観を電磁波シールドフィルム等の転写フィルム表面に好適に付与することができる。光沢度が下限より小さいものは、粒子の添加量を増加することとなり、フィルム製膜性の悪化や、表面突起の破れ率を20%以下にすることが難しくなって重剥離化が起こるので好ましくない。一方、光沢度が上限を超えると、電磁波シールドフィルム等の表面に十分な艶消し外観を付与できなくなるので好ましくない。
【0024】
(ボイド破れ率)
本発明の艶消し層表面の突起のボイド破れ率は、20%以下である必要があり、この値が20%を超えると、転写後に支持フィルムを剥離するに際して、該ボイド破れが発生している突起が剥離時の破断の起点となるので好ましくない。かかる観点から、ボイド破れ率は好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。下限は特に限定する必要はなく低ければ低いほどよいが、実際の製造の観点から5%程度である。
【0025】
なお、表面突起のボイド破れ率は、前述のように、艶消し層に用いられるポリエステルを共重合ポリエステルまたは他種ポリエステルを溶融混合したポリエステル組成物として、粒子含有ポリエステルの延伸性を高める方法、さらには、該ポリエステルの固有粘度を少し高めにして粒子含有ポリエステルの延伸性を高める方法等により容易に達成することができる。
なお、突起のボイド破れ率は、FE−SEMにて艶消し層表面の写真を撮り、全体の突起個数と、そのうち突起周辺に空洞がある突起個数(突起のボイド破れ)とをカウントし、破れ個数の全体個数に対する割合(%)として算出したものである。
【0026】
(表面エネルギー)
さらに、本発明の艶消し層表面は、見かけの表面張力が60dyn/cm以下であることが、剥離性の点から好ましく、さらに好ましくは58dyn/cm以下である。かかる表面張力は、上記の突起のボイド破れ率を小さくすると共に、艶消し層に用いるポリエステルのジオール成分としてより疎水系のジオール成分を含む共重合ポリエステルまたはポリエステル組成物を用いることにより達成できる。
【0027】
<フィルム製造方法>
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルの主たる成分がポリエチレンテレフタレートである場合、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、艶消し層および基材層を共押出法により積層押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、次いで縦方向(製膜機械軸方向のこと。以下、機械軸方向、連続製膜方向、長手方向またはMDと称することがある)および横方向(連続機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向のこと。以下、幅方向、TDと称することがある)に延伸する。
【0028】
縦方向の延伸は、例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で2.0〜3.5倍、好ましくは2.5〜3.0倍延伸する。横方向の延伸は、例えば温度100〜130℃、好ましくは90〜125℃で2.0〜4.0倍、好ましくは3.0〜4.0倍延伸する。また、一方向の延伸は2段以上の多段で行う方法を用いることもできるが、最終的な延伸倍率は前述の範囲内にあることが好ましい。
【0029】
次いで、所望に応じて熱固定処理を行なう。例えば艶消し層および基材層がポリエチレンテレフタレートで構成されている場合では、230〜248℃の温度、好ましくは235〜245℃の温度、さらに好ましくは240〜245℃の温度で、2〜30秒、好ましくは2〜20秒、さらに好ましくは3〜10秒の時間の範囲で熱固定する。その際、熱収縮率を低減する目的で、20%以内の制限収縮もしくは伸長、または定長下で行なってもよく、また2段以上で行なってもよい。
【0030】
<その他のフィルム特性>
(固有粘度)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成する基材層ポリエステルの固有粘度(IV)は、0.50〜0.70dl/gの範囲であることが好ましい。かかる固有粘度は25℃のo−クロロフェノール溶液での測定値で表わされる。この固有粘度の下限値は、剥離性がさらに良好となるので、さらには0.56dl/g、特に0.60dl/gであることが好ましい。またこの固有粘度の上限値は、好ましくは0.67dl/gであり、さらに好ましくは0.65dl/gである。フィルムの固有粘度が下限値に満たない場合、機械的性能が低下して取扱性が難しくなる傾向にある。他方、フィルムの固有粘度が上限値を超えるようになると粘度が高くなりすぎ、フィルムの製造工程での負荷が増大し、生産性が低下する。
【0031】
一方、艶消し層には、艶消し層表面粗さ、光沢度(G
60)および表面の突起ボイド破れ率にかかる要件を満たすために、前述のように平均粒子径の大きい粒子をかなりの量含有させている。したがって、剥離性等の取扱い性の点からはポリエステルの固有粘度は高い方が好ましいが、高くなりすぎると粒子の含有量が高いこととあいまって製膜性が低下するので、含有する粒子の種類および含有量に応じて固有粘度を調整することが好ましい。
【0032】
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、電磁波シールドフィルム転写用等の支持フィルムとして使用される厚さを有していれば良く、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm、特に好ましくは45〜70μmである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。なお、各特性値は以下の方法により測定した。
【0034】
1.光沢度(G
60)
JIS規格(Z8741)に準拠し、日本電色工業(株)製のグロスメーター「VGS−SENSOR」を用いて測定した。入射角、受光角ともに60°にて測定(N=5)し、その平均値を用いた。
【0035】
2.平均粒径
粒子をエチレングリコール中に3%の濃度になるようにミキサーで攪拌し、島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて測定を行った。粒度分布測定結果から50%体積粒径(D
50)を求め、これを平均粒径とした。
【0036】
3.粒子含有量
フィルムサンプルの粒子含有量を測定したい層から試料を削り取り、ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択して溶解処理した後、粒子を溶液から遠心分離し、粒子の全体質量に対する比率(質量%)をもって粒子の含有量とする。
【0037】
4.フィルムの各層厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを10点ずつ測定し、それぞれの層について平均厚みを求めた。艶消し層については、粒子の存在しない部分について測定した。
【0038】
5.中心線平均粗さRaおよび10点平均粗さRz
JIS−B0601、B0651に従い、3次元表面粗さ計(小坂研究所製、商品名:SURF CORDER SE−3CK)を使用して、触針先端R2μm、走査ピッチ2μm、走査長1mm、走査本数100本、カットオフ0.25mm、倍率5000倍の条件にて、中心線平均粗さRaおよび10点平均粗さRzを測定した。
【0039】
6.フィルム固有粘度
オルソクロロフェノールにて25℃の雰囲気下で測定した。なお、基材層の固有粘度は、二軸配向ポリエステルフィルムから基材層の部分を削り取って、測定した。
【0040】
7.突起のボイド破れ率
試料フィルムの艶消し層表面の写真をFE−SEMにて撮り、面積0.5mm
2(200μm×250μmの10視野)に存在する突起個数と、そのうちボイド破れが発生している個数とをカウントし、破れ個数の全体個数に対する割合(%)として算出した。
なお、表面写真において周辺にボイドが存在する突起をボイド破れが発生している突起と判定した。
【0041】
8.みかけの表面張力
JIS K 6768に準拠し、試料フィルムの艶消し層表面に濡れ指数液を塗布してみかけの表面張力を測定した。
【0042】
9.剥離性
試料フィルムの表面に、厚さ0.1μmのメチルメラミン系離型層(三羽研究所製、ATOM BOND RP−30−30)を形成し、その上にUV硬化型アクリル系樹脂(大日精化工業製、セイカビームEXF−3005(NS))を塗工・硬化することにより厚さ5μmの絶縁保護層、および下記組成の導電性ペーストを塗工することにより厚さ15μmの導電層を形成して、支持フィルム上に電磁波シールドフィルムを備えた転写用フィルムを作成した。
大日精化工業製、ウレタン樹脂UD1357 :60質量部
鱗片状銀粉(平均厚さ100nm、平均粒径5μm) :20質量部
樹枝状銀コート銅粉(平均粒径5μm) :20質量部
【0043】
次いで、上記で得られた転写用フィルムを、フレキシブルプリント基板(ポリイミド層(12.5μm)、接着剤層(15μm)、銅箔層(12μm)、およびポリイミド層(12.5μm)が上からこの順に積層されてなる4層構造)表面に、導電層が被覆面側となるように貼り合わせ、温度200℃、圧力1MPa、1時間の条件で圧着した。圧力を開放し、サンプルを室温において25℃になるまで冷ました後、支持フィルムを手で剥離し、転写された絶縁保護層の表面を目視で観察した。以下の指標で評価した。
○:剥離:きれいに剥離している。
△:転写:電磁波シールドフィルム側に白異物が残る。
×:破断:剥離中に転写フィルムが破断する。
【0044】
10.製品の艶消し性
上記1の光沢度と同様の方法にて、上記9で得られた絶縁保護層転写後のサンプルについて、絶縁保護層表面の光沢度(G
60)を測定し、結果を以下のような指標により評価した。
◎:15以下・・・製品の艶消し性極めて良好
○:15超、20以下・・・製品の艶消し性良好
×:20を超える・・・製品の艶消し性不良
【0045】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.63dl/g)に表1に示すとおりの粒子およびを添加して艶消し層(A層)を形成するためのA層ポリマーとし、また、A層と同様に粒子および樹脂を表1の含有量にて添加し、基材層(B層)を形成するためのB層ポリマーとし、それぞれ280℃に加熱された押出機に供給し、A層ポリマー、B層ポリマーをA/Bの積層構成となるような2層フィードブロック装置を用い合流させ、その積層状態を維持したままダイスよりシートを20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して未延伸フィルムとし、次いで該未延伸フィルムを縦方向に3.2倍延伸し、その後、140℃で横方向に3.4倍に延伸し、235℃で熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(厚さ50μm)を得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
A層ポリマーおよびB層ポリマーに添加する樹脂の含有量を表1記載のとおりとする以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
B層ポリマーに使用するポリエチレンテレフタレートを、固有粘度が0.63dl/gと0.68dl/gの2種を用い、その混合割合を前者7質量部、後者2質量部とする以外は実施例2と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例4〜9、比較例1〜2]
A層ポリマーおよびB層ポリマーに添加する粒子および樹脂の種類および量を表1記載のとおりに変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中のPBTはポリブチレンテレフタレート、PTMTはポリトリメチレンテレフタレート、PCHTはポリ(シクロヘキシレンジメチレン)テレフタレートを意味する。