特許第6463982号(P6463982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463982
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】電力需要制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20190128BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20190128BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20190128BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   H02J13/00 311T
   H02J13/00 301A
   H02J3/14 130
   H02J3/38 130
   H02B1/40 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-28856(P2015-28856)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-152690(P2016-152690A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−226223(JP,A)
【文献】 特開2014−183664(JP,A)
【文献】 特開2002−159138(JP,A)
【文献】 特開平07−193975(JP,A)
【文献】 特開2008−079412(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/004112(WO,A1)
【文献】 特開2002−171660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−3/50
H02J 13/00
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給事業者から供給される電力を受電して需要家の各電気機器に供給するために、引き込んだ電路を複数に分岐する分電盤と、
前記分電盤に組み込まれ、前記電力供給事業者との契約により前記電路の遮断電流値が設定される主電路遮断手段と、
前記主電路遮断手段の遮断電流値を変更制御するために汎用通信網上に配置された遮断電流管理装置と、
前記需要家が、系統連系により余剰電力を、前記引き込んだ電路から逆潮流可能とした太陽光発電設備とを有し、
前記主電路遮断手段は、前記遮断電流管理装置から制御信号を受信する制御信号受信部と、
前記制御信号を受けて遮断電流値を変更する遮断電流制御部とを備えると共に、
前記遮断電流管理装置は、需要家全体が消費する電力と前記電力供給事業者の供給能力とを把握して、電力の需給バランスが逼迫していると判断したら、前記主電路遮断手段の遮断電流値を下げる制御を実施すると共に、
前記太陽光発電設備のパワーコンディショナーが、前記主電路遮断手段と通信を実施して、前記主電路遮断手段の遮断電流値の増減に比例して太陽光発電の出力を増減することを特徴とする電力需要制御システム。
【請求項2】
前記遮断電流管理装置は、電力の需給バランスに余裕があると判断したら、前記主電路遮断手段の遮断電流値を上げる制御を実施することを特徴とする請求項1記載の電力需要制御システム。
【請求項3】
前記主電路遮断手段は、設定された遮断電流値或いはその電流に近い所定の電流が前記電路に通電されたら、警報信号を出力する警報出力部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電力需要制御システム。
【請求項4】
前記主電路遮断手段は、前記遮断電流管理装置からの制御信号を受けて遮断電流値を変更したら、変更を報知する報知部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電力需要制御システム。
【請求項5】
前記主電路遮断手段は、需要家毎に前記電力供給事業者との間で基準契約電流値が設定されており、
前記遮断電流管理装置は、日中の特定の時間帯は前記基準契約電流値より低く遮断電流を設定し、前記特定の時間帯以外では前記基準契約電流値に戻す制御を実施することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電力需要制御システム。
【請求項6】
前記遮断電流管理装置には、電力供給事業者が設定している季節別電気料金及び時間帯別電気料金のうち少なくとも時間帯別電気料金が登録され、電気料金の高い時間帯では遮断電流値を下げる制御を実施することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電力需要制御システム。
【請求項7】
前記主電路遮断手段が、後段に分岐ブレーカが接続される主幹ブレーカであることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の電力需要制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力を使用する個々の需要家の電流容量を外部から変更可能、即ち契約電流を外部から変更可能とした電力需要制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要家、例えば一般住宅では引き込み線が電力量計に接続され、その後分電盤を介して電灯や冷蔵庫等の住戸内の各電気設備に引き込んだ電力が供給される。
分電盤には、地域や契約によって付ける場合と取り付けない場合があるが、電力供給事業者により電路を流れる合成電流が所定の契約電流を超えると電路を遮断する電流制限器が取り付けられる。
そして、その後段に漏電遮断器能を備えて電流が所定値を超えると電路を遮断する主幹ブレーカが設置され、主幹ブレーカの2次側が複数の分岐ブレーカに接続される。この分岐ブレーカにより電路が複数に分岐され、各分岐電路から負荷に接続されて電力が供給される。
この電流制限器によって(電流制限器を設けない場合は主幹ブレーカの電流容量によって)契約容量が設定され、基本料金が決定されている。
【0003】
このような構成の分電盤を備えた一般家庭において、電力を節約する更には電力料金を削減する技術として例えば特許文献1がある。特許文献1では、個々の分岐ブレーカに流れる電流を計測して使用電力量を測定して外部に通知する集中管理装置を分電盤に設けることで、計測データを見ることで顧客に節電を促すことができた。また、集中管理装置と電力会社に設けられたサーバと通信させて各顧客に適用されている料金メニューに応じて警報を発することで、電気料金の節約を促すことを可能にした。
一方で特許文献2には、住宅用分電盤に電流制限器が設置されている場合に、契約容量を電流制限器を変更することなく容易に変更できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−246684号公報
【特許文献2】特開2008−79412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような制御を実施するシステムの目的は、顧客に経済的で効率的な電力使用を促すことであるため、常に節電を促す制御を実施するよう構成されている。しかしながら、このようなシステムを実施しても実際の電力削減量は期待したほどでは無く、僅かな節電しか実現できなかった。
一方で、現状でも昼間に比べて夜間は電力供給に余力が発生するため、安価な時間帯を設定して夜間の電力消費を促しているように、節約を促さなくても十分電力を供給できる時間帯が発生している。
この点、需要家が消費する電力を削減するだけでなく消費を促すことを考えた場合、上述した制限電流を容易に変更できる電流制限器の技術を用いることで、需要家に節約を促したり節約を緩めて比較的自由に消費して頂く状況を作ることが可能となる。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、需要家の契約電流値を外部から制御して変更することで、状況に応じて確実な節電を実現したり逆に消費を促すことができる電力需要制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る電力需要制御システムは、電力供給事業者から供給される電力を受電して需要家の各電気機器に供給するために、引き込んだ電路を複数に分岐する分電盤と、分電盤に組み込まれ、電力供給事業者との契約により電路の遮断電流値が設定される主電路遮断手段と、主電路遮断手段の遮断電流値を変更制御するために汎用通信網上に配置された遮断電流管理装置と、需要家が、系統連系により余剰電力を、引き込んだ電路から逆潮流可能とした太陽光発電設備とを有し、主電路遮断手段は、遮断電流管理装置から制御信号を受信する制御信号受信部と、制御信号を受けて遮断電流値を変更する遮断電流制御部とを備えると共に、遮断電流管理装置は、需要家全体が消費する電力と電力供給事業者の供給能力とを把握して、電力の需給バランスが逼迫していると判断したら、主電路遮断手段の遮断電流値を下げる制御を実施すると共に、太陽光発電設備のパワーコンディショナーが、主電路遮断手段と通信を実施して、主電路遮断手段の遮断電流値の増減に比例して太陽光発電の出力を増減することを特徴とする。
この構成によれば、電力逼迫時には主電路遮断手段の遮断電流値を低く設定することで、各需要家の使用電力を減らすことができ、電力の需給バランスが崩れて大規模な停電が発生する事態を確実に回避でき、電力の需給バランスを加味した電力管理が可能となる。
加えて、従来は電力逼迫時においては発電を停止しなければならなかったが、太陽光発電の発電電力は主電路遮断手段の遮断電流値に比例するため、遮断電流が低く設定された場合でも、発電を停止せずに一定量の発電を確保しながら太陽光発電電力も抑制でき、結果として逆潮流する電力が削減されて連系量が需要量を上回る事態を防止することが可能となる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、遮断電流管理装置は、電力の需給バランスに余裕があると判断したら、主電路遮断手段の遮断電流値を上げる制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、供給電力に余裕があれば主電路遮断手段の遮断電流値を上げることで、個々の需要家の消費電力を増加に向かわせることができ、電力の需給バランスを加味した電力管理が可能となる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、主電路遮断手段は、設定された遮断電流値或いはその電流に近い所定の電流が電路に通電されたら、警報信号を出力する警報出力部を有することを特徴とする。
この構成によれば、遮断動作する前に警報を発するよう構成でき、居住者は遮断される前に電路の状況を認識でき必要な処置を講ずることが可能となる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、主電路遮断手段は、遮断電流管理装置からの制御信号を受けて遮断電流値を変更したら、変更を報知する報知部を有することを特徴とする。
この構成によれば、遮断電流値が変更されたらそれを報知するため、居住者はそれを認識でき対処し易い。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、主電路遮断手段は、需要家毎に電力供給事業者との間で基準契約電流値が設定されており、遮断電流管理装置は、日中の特定の時間帯は基準契約電流値より低く遮断電流を設定し、特定の時間帯以外では基準契約電流値に戻す制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、電力の需要が高まる日中は遮断電流値が下げられるため、全体の消費電力を抑制でき、需給バランスが逼迫する状況を削減できる。また、遮断電流値が下げられることで遮断電流値で設定されている基本料金も下がり、需要家は電力料金を削減できる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、遮断電流管理装置には、電力供給事業者が設定している季節別電気料金及び時間帯別電気料金のうち少なくとも時間帯別電気料金が登録され、電気料金の高い時間帯では遮断電流値を下げる制御を実施することを特徴とする。
この構成によれば、電気料金が高い時間帯では遮断電流値が下げられるため、電力の使用が制限されて電力料金が下がるし、遮断電流値が下がることで基本料金も下がり、需要家は電力料金を削減できる。
【0014】
請求項の発明は、請求項1乃至の何れかに記載の構成において、主電路遮断手段が、後段に分岐ブレーカが接続される主幹ブレーカであることを特徴とする。
この構成によれば、主幹ブレーカに遮断電流可変機能が具備されることで、別途遮断電流を変更する装置を設ける必要がなく、分電盤内を有効活用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力逼迫時には主電路遮断手段の遮断電流値を低く設定すれば、各需要家の使用電力を減らすことができるし、供給電力に余裕があれば主電路遮断手段の遮断電流値を上げることで、個々の需要家の消費電力を増加に向かわせることができ、電力の需給バランスを加味して最適な電力管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る電力需要制御システムの一例を示す構成図である。
図2】主幹ブレーカの回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る電力需要制御システムの一例を示す概略構成図であり、1(1a,1b)は電力供給事業者、2は戸建住宅等の電力の需要家Hに設置された電力量計、Pは電力を送電する送電網、Sは制御信号やデータを伝送する汎用通信網である。また、5は需要家Hに設置された太陽電池パネル、6は受電電力を複数に分岐するための分電盤、7は漏電遮断機能を備えると共に契約電流を超える電流が流れたら電路を遮断する主幹ブレーカ、8は太陽光発電の直流を交流に変換するパワーコンディショナーを示している。
【0018】
電力供給事業者1のうち、1aは一般電気事業者、1bは風力発電や太陽光発電など様々な発電源により発電した電力を供給する特定規模電気事業者を示している。双方が供給する電力は、共通する送電網Pを介して個々の契約先の需要家Hに伝送される。
そして、送電網Pから需要家Hへは引き込み線Q1を介して供給され、需要家Hに設置された電力量計2の一次側に接続される。電力量計2の2次側は、電線Q2により需要家H内に設置された分電盤6に接続される。
【0019】
尚、一般電気事業者1aと特定規模電気事業者1bとは共通する送電網Pが使用されて電力が供給されるが、部分供給の場合を除き供給先の需要家Hは異なり、需要家は何れか一方の電力供給事業者1と契約して電力が供給される。
【0020】
そして、電力供給事業者1には、需要家Hの契約電流値を変更制御するためのサーバ11(11a,11b)が設置され、需要家Hに設置された電力量計2と汎用通信網Sを介して通信が実施される。電力量計2は、サーバ11及び主幹ブレーカ7と通信する通信IF(図示せず)を有し、汎用通信網Sと通信線U1を介して接続されている。また、電力量計2と主幹ブレーカ7とは通信線U2により接続されている。
【0021】
サーバ11は、電力供給事業者1が設定した時間帯別料金や季節毎に変動する料金の情報を記憶し、電力供給事業者1から需要家全体が消費する電力の情報、及び電力供給事業者の供給能力の情報の提供を受けて、状況を判断して契約先の主幹ブレーカ7の遮断電流を変更制御する。例えば、電力料金が高く設定された時間帯や、電力の需給バランスが逼迫していると判断した場合は、主幹ブレーカ7の遮断電流値を下げる制御信号を汎用通信網Sを介して契約先の各需要家Hの主幹ブレーカ7に送信し、遮断電流値を下げる制御を実施する。
【0022】
主幹ブレーカ7は分電盤6内に設置され、電線Q2は主幹ブレーカ7の一次側に接続されている。主幹ブレーカ7の2次側には図示しない分岐ブレーカが接続されて、分岐ブレーカを介して図示しない電気機器に接続されて電力が供給される。
【0023】
図2は主幹ブレーカ7の回路ブロック図を示し、この図2を参照して具体的に説明する。主幹ブレーカ7は、電力量計2から引き込まれた電線Q2が接続されて形成された単相3線から成る電路Lが配設され、この電路Lを開閉する開閉接点12、開閉接点12を開動作させる引き外しユニット13、電路電流を検出する電流検出部14、サーバ11から送信される遮断電流制御信号を受信すると共に、警報信号等を送出するブレーカ通信IF15、遮断電流制御信号を受けて設定された遮断電流情報を記憶する遮断電流記憶部16、遮断電流値の変更通知や、遮断電流値或いはその電流値に近い所定の電流が通電されたことを報知するための報知部17、電路電流情報を基に異常を判定すると共に主幹ブレーカ7を制御する主幹ブレーカCPU18、電路Lから主幹ブレーカ7の制御回路駆動のための直流電圧を生成する電源19等を備えている。
そして、図1に示す需要家Hは太陽光発電設備を備えており、ブレーカ通信IF15には、電力量計2に接続される通信線U2に加えて、パワーコンディショナー8と通信する通信線U3が接続されている。
【0024】
尚、主幹ブレーカ7と電力量計2との間は、無線通信としても良いし、PLC(Power Line Communication)と称される電力線搬送通信としても良く、この場合通信線L3は引き込み線Q2が兼用される。また、報知部17に加えて専用の出力接点を設けて警報信号を外部に送信するよう構成しても良い。
【0025】
主幹ブレーカ7は、電力供給事業者1との契約により遮断電流値が需要家H毎に設定されているが、この遮断電流値をサーバ11からの制御信号により変更する制御が成される。以下、この遮断電流変更制御について説明する。
但し、一般電気事業者1aは、遮断電流値を下げる制御が基本となり、契約電流に比例して設定されている基本料金も遮断電流値が下げられた時間帯は減額される。例えば、契約電流値が50アンペアの場合、遮断電流値は50アンペアが基準となり、サーバ11の制御信号を受けて40アンペアに下げられた場合、基本料金も連動して減額される。
【0026】
需要家Hに対して日中の節電を促すために、電力需要の多い日中の時間帯の電気料金が夜間に比べて高く設定されている場合は、日中の指定された時間帯のみ遮断電流を基準契約電流値より下げる制御を実施する。具体的に、サーバ11から遮断電流を下げる制御信号が汎用通信網Sを介して主幹ブレーカ7へ送信され、この制御信号を受信した主幹ブレーカCPU18は遮断電流値を下げる制御を実施する。また、遮断電流値を下げたら報知部17から、例えば「遮断容量を下げました」等のメッセージを報音させる。
そして、電路電流値が遮断電流に達したら、主幹ブレーカCPU18の制御により、遮断動作させる前に報知部17から警報音等が報音される。更に、ブレーカ通信IFを介して外部に警報信号が出力される。
【0027】
この結果、電力の需要が高まる日中は遮断電流値が下げられるため、全体の消費電力を抑制でき、需給バランスが逼迫する状況を削減できる。また、遮断電流値が下げられることで遮断電流値で設定されている基本料金も下がり、需要家Hは電力料金を削減できる。
また、電気料金が高い時間帯では遮断電流値が下げられるため、電力の使用が制限されて電力料金が下がるし、遮断電流値が下がることで基本料金も下がり、需要家は電力料金を削減できる。
更に、遮断動作する前に警報を発するため、居住者は停電になる前に電路の状況を認識でき必要な処置を講ずることが可能となるし、外部に送信される警報信号をサーバ11が受信してデータを蓄積させれば、今後の制御に役立つ。
また、主幹ブレーカ7の遮断電流値が変更されたらそれを報知するため、居住者はそれを認識でき対処し易い。
【0028】
一方、特定規模電気事業者1bにおいては、風力発電や太陽光発電の発電電力に占める比率が大きい場合もあり、天候状況により発電単価が安くなるような場合が発生するため、基本料金が上がらないことを前提に遮断電流値を契約容量より大きくする制御を実施しても良い。但し、このように遮断電流値を上げた場合も、主幹ブレーカCPU18の制御により報知部から、例えば「遮断容量を上げました」等のメッセージが報音される。このような制御により、電力需要を促すことができる。
【0029】
また、太陽電池パネル5及びパワーコンディショナー8を備えた太陽光発電設備を備えた需要家Hにおいては、太陽光発電電力を電力供給事業者1から供給される交流電力に連系させて、住戸内での需要を上回る発電電力に関しては引き込み線Q1を介して送電網Pに逆潮流させるよう構成されている。
【0030】
このような設備を備えている場合、ここではパワーコンディショナー8を主幹ブレーカ7と通信線U3を介して接続して通信を実施し、遮断電流値の変更情報をパワーコンディショナー8に通知している。そして、この通知を受けたパワーコンディショナー8が、遮断電流値の変化に太陽電池パネル5の発電出力が連動するよう、即ち主幹ブレーカ7の遮断電流値が下げられたら発電出力も低下させ、遮断電流値が上げられたら発電出力も増加させるよう制御している。
この結果、太陽光発電の発電電力は主幹ブレーカ7の遮断電流値に比例させることで、遮断電流値が低く設定された場合でも発電を停止せずに一定量の発電を確保しながら太陽光発電電力も抑制でき、結果として逆潮流する電力が削減されて送電網P上での連系量が需要量を上回って停電を招くような事態を防止することが可能となる。
【0031】
このように、電力逼迫時には主幹ブレーカ7の遮断電流値を低く設定すれば、各需要家の使用電力を減らすことができるし、供給電力に余裕があれば主幹ブレーカ7の遮断電流値を上げることで、個々の需要家の消費電力を増加に向かわせることができ、電力の需給バランスを加味した電力管理が可能となる。
また、主幹ブレーカ7に遮断電流可変機能が具備されることで、別途遮断電流値を変更する装置を設ける必要がなく、分電盤内を有効活用できる。
【0032】
尚、上記実施形態では、主幹ブレーカ7の電流容量を変更することで、電力使用量の調整を図っているが、電流制限器が主幹ブレーカ7の上流に設置されている場合は、電流制限器の遮断電流を外部から変更して電力使用量の調整を行えば良い。また、引き込み場所から分電盤までの距離が遠い場合は、電力量計の二次側に別途主開閉器を設置する場合があるが、この場合はこの主開閉器の遮断電流を外部から変更制御すれば良い。
更に、電力供給事業者1と需要家Hの間にアグリゲータが存在し、デマンドレスポンスが実施される場合にも対応でき、需給が逼迫した際に節電要求が発生したら遮断電流値を下げることで確実な対応が可能となり、需要家Hは協力金等の還元率を上げることができる。
また、サーバ11を電力供給事業者1が管理し易いよう電力供給事業者内に設置しているが、管理会社を別途設けて電力供給事業者1とは独立させて汎用通信網S上に配置しても良い。
【符号の説明】
【0033】
1・・電力供給事業者、2・・電力量計、5・・太陽電池パネル、8・・パワーコンディショナー、6・・分電盤、7・・主幹ブレーカ(電路遮断手段)、11・・サーバ(電流容量管理装置)、15・・ブレーカ通信IF(制御信号受信部、警報出力部)、16・・遮断電流記憶部、17・・報知部、18・・主幹ブレーカCPU(遮断電流制御部)、S・・汎用通信網、P・・送電網、H・・需要家、Q1・・引き込み線、U1,U2,U3・・通信線。
図1
図2