特許第6463986号(P6463986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松岡機械製作所の特許一覧

<>
  • 特許6463986-間欠塗工装置 図000002
  • 特許6463986-間欠塗工装置 図000003
  • 特許6463986-間欠塗工装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463986
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】間欠塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20190128BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20190128BHJP
   F04B 17/04 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/02
   F04B17/04
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-32763(P2015-32763)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-155050(P2016-155050A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】506043826
【氏名又は名称】株式会社松岡機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健太
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−182952(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/133365(WO,A1)
【文献】 特開2003−314717(JP,A)
【文献】 特開2012−047245(JP,A)
【文献】 特開2009−095752(JP,A)
【文献】 特開2004−344695(JP,A)
【文献】 特開2003−236452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00−21/00
F04B 17/00−19/24
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に塗液を吐出して基材上に塗膜を形成する間欠塗工装置であって、前記塗液を供給する供給部と塗液の流路を切り替えるロータリーバルブと、塗液を吸引又は吐出するプランジャーポンプと、塗液を前記基材に塗布する塗工ヘッド装置と、前記基材を走行させるバックアップロールと、を備え、
前記プランジャーポンプ及び前記ロータリーバルブは、前記供給部と前記塗工ヘッド装置との間に二つ並列に接続され、
前記ロータリーバルブは、前記供給部と、前記プランジャーポンプと、前記塗工ヘッド装置と、を連通し、前記供給部から前記プランジャーポンプへの流路と、前記プランジャーポンプから前記塗工ヘッド装置への流路との切替弁を有し、
一方の前記プランジャーポンプは、前記切替弁と連動して前記塗工ヘッド装置との接続を遮断しながら前記供給部と接続して前記供給部の塗液を吸引すると同時に、
他方の前記プランジャーポンプは、前記切替弁と連動して前記供給部側からの流路を遮断しながら前記塗工ヘッド装置と接続して前記プランジャーポンプ内の塗液を前記塗工ヘッド装置から吐出して前記基材に塗工すること、および、塗工終わりには前記切替弁を前記塗工ヘッド装置側に接続したまま前記プランジャーポンプのプランジャーが後退することで前記塗工ヘッド装置側に残った塗液の液溜まりを引き込むこと、
を特徴とする間欠塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム上に膜厚が一定な塗膜を間欠的に形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
間欠塗工装置とは、例えば、リチウムイオン電池の電極に用いられる塗膜を基材に間欠的に形成する場合等に用いられる装置である。しかしながら、従来の間欠塗工装置は、塗布時の圧力変化や液溜まりが塗工ヘッドに生じることによって、間欠的に形成される塗膜ごとに塗布開始時の始端では盛り上がり、塗布終了時の終端では掠れが生じる。このように形成されたリチウムイオン電池の電極では不均一な膜厚から放電し、劣化が生じやすいため寿命を短くしてしまう。そのため、膜厚を一定とするための間欠塗工装置が求められており、その一例として特許文献1又は2が提案されている。
【0003】
特許文献1記載の発明によれば、サーボモータの駆動によるピストンを用いて塗液を吸引・吐出するものであり、サーボモータの速度を調整することによって膜厚を均一にする効果を奏するものである。
【0004】
特許文献2記載の発明によれば、弁体の開閉によって塗液の吐出を行うものであり、始端の塗液の盛り上がりを改善する為に弁体26の開閉速度を調整する事で前記盛り上がりを抑制する効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2007−269585号公報(特開2009―95752号公報)
【特許文献2】特開2012−47245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今のモバイル機器、EV、HV等の普及により、高品質かつ安価なリチウムイオン電池用電極の出現が求められる。そのため、リチウムイオン電池用電極の単価を下げるために大量生産をしようとするとフィルムの搬送速度を速くしなければならない事と、その速度でも膜厚が一定な間欠塗膜を形成することが間欠塗工装置に要求される。しかしながら、特許文献1記載の発明では、ピストンを動作させるサーボモータではその速度に対応出来ない上、ピストンを動作した際には、スロットダイとシリンダーとの間の配管内圧力も変化し、膜厚が均等になりにくい。
【0007】
また、特許文献2記載の発明では、使用する塗液の粘度、塗布速度などの条件が異なる為に、弁体の開閉による塗液の吐出において、塗布開始もしくは終了時の塗液の量や圧力の調整がしにくく塗膜の膜厚が均等になりにくい。
【0008】
そこで、塗膜の膜厚を均等し、特に塗布開始もしくは終了時の塗料の量や圧力の調整がし易い間欠塗工装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、間欠的に塗液を吐出して基材上に塗膜を形成する間欠塗工装置であって、前記塗液を供給する供給部と塗液の流路を切り替えるロータリーバルブと、塗液を吸引又は吐出するプランジャーポンプと、塗液を前記基材に塗布する塗工ヘッド装置と、前記基材を走行させるバックアップロールと、を備え、
前記プランジャーポンプ及び前記ロータリーバルブは、前記供給部と前記塗工ヘッド装置との間に二つ並列に接続され、
前記ロータリーバルブは、前記供給部と、前記プランジャーポンプと、前記塗工ヘッド装置と、を連通し、前記供給部から前記プランジャーポンプへの流路と、前記プランジャーポンプから前記塗工ヘッド装置への流路との切替弁を有し、
一方の前記プランジャーポンプは、前記切替弁と連動して前記塗工ヘッド装置との接続を遮断しながら前記供給部と接続して前記供給部の塗液を吸引すると同時に、
他方の前記プランジャーポンプは、前記切替弁と連動して前記供給部側からの流路を遮断しながら前記塗工ヘッド装置と接続して前記プランジャーポンプ内の塗液を前記塗工ヘッド装置から吐出して前記基材に塗工すること、および、塗工終わりには前記切替弁を前記塗工ヘッド装置側に接続したまま前記プランジャーポンプのプランジャーが後退することで前記塗工ヘッド装置側に残った塗液の液溜まりを引き込むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、プランジャーポンプから塗工ヘッド側の配管はロータリーバルブの切替弁によって閉じられているため、供給部のポンプ等による圧力から影響を受けず、プランジャーの速度を調整することのみで塗液にかかる圧力を容易に調整することができ、吐出終了時にプランジャーポンプを引くことによって塗工ヘッド装置と基材側に残留する液溜まりを配管内に引き戻すことができるので、液溜まりによる塗膜の終端の掠れをなくすことができる。したがって、ロータリーバルブの切替弁によって、供給部からの圧力等の影響を塗工ヘッド部から減らし、プランジャーの速度の調整による均一な膜厚の作成が可能である。
【0011】
また、請求項に記載の発明によれば、プランジャーポンプとロータリーバルブの少なくとも2台を供給部と塗工ヘッド装置との間で並列に接続することで、一方のプランジャーポンプが塗液を吐出しているのと同時に、他方のプランジャーポンプが塗液を吸引し、交互に塗膜を基材上に形成することができ、バックアップロールの速度の上昇に対応することが容易になる効果を奏する。また、間欠塗膜の始端の盛り上がりと終端の掠れがなく、均一な膜厚の塗膜を基材上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による間欠塗工装置の一例を示す構成概略図である。
図2】プランジャーポンプのプランジャーとロータリーバルブの切替弁の動作概念図であり、(a)供給部(もしくは塗工ヘッド装置)から塗液を吸引している状態を、(b)塗工ヘッド装置へ塗液を吐出している状態を示している。
図3】プランジャーとロータリーバルブと駆動系との接続を示す図であり、(a)ロータリーバルブとロータリアクチュエータとの接続を、(b)プランジャーポンプとリニアモータとの接続を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の間欠塗工装置の構成の一例について、図1に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態の間欠塗工装置は、供給部Aと塗工ヘッド装置Bとがプランジャーポンプ8a、8bに連結されたロータリーバルブ9a、9bを介して配管され、バックアップロール15と基材14が塗工ヘッド装置B近傍に備えている。
【0015】
供給部Aは、タンク1、ポンプ2、圧力計3、流量計4、圧力計5、バルブ6と循環流路7によって構成されており、タンク1からポンプ2を経てロータリーバルブ9a、9bへと配管され、その途中に流量計4と圧力計3を設置する。さらに、ポンプ2と流量計4との間にタンク1に塗液が循環するように循環流路7を配管し、そこに圧力計5とバルブ6を設置する。
【0016】
塗工ヘッド装置Bは、流量計10、圧力計11、バルブ12、スロットダイ13で構成されており、ロータリーバルブ9a、9bに連結されたプランジャーポンプ8a、8bからスロットダイ13へと配管し、その間に流量計10、圧力計11及びバルブ12を設ける。そして、スロットダイ13から塗液を吐出して、バックアップロール15で走行している基材14に塗工を行い、間欠塗膜を形成する。
【0017】
ロータリーバルブ9a、9bに連結されたプランジャーポンプ8a、8bは、供給部Aと塗工ヘッド装置Bとの間に2つ並列に接続し、塗液23を吐出する。ロータリーバルブ9aによって、一方のプランジャーポンプ8aと供給部Aとの接続に切り替えられると、そのプランジャーポンプ8aと塗工ヘッド装置Bとの接続が遮断される。そのとき、ロータリーバルブ9bによって、他方のプランジャーポンプ8bが塗工ヘッド装置Bとの接続に切り替えられ、プランジャーポンプ8bと供給部Aとの接続が遮断される。これにより、プランジャーポンプ8a、8bから、交互に塗液23の吐出ができ、バックアップロール15の速度が上昇しても対応することが可能である。
【0018】
ロータリーバルブ9a、9bは、図2(a)、(b)に示すように、各々に配置されるプランジャー21の先端に位置し、切替弁22の一部を欠切させて流路を形成する。図2(a)に示すように、プランジャー21が塗液23を吐出する際にロータリーバルブ9a、9bが塗布ヘッド装置B側に流路を構成するように、切替弁22を揺動回転させる。この状態でプランジャー21のピストン運動による塗液23の吐出とロータリーバルブの切替弁22の揺動回転とを連動させる。ここで、切替弁22の弁体は球形や円柱形などの形状を取りうる。
【0019】
この切替弁22とプランジャー21の動作が連動することによって配管の流路が供給部A側(供給部Aからロータリーバルブ9a、9bまで)と、塗工ヘッド装置B側(ロータリーバルブ9a、9bから塗工ヘッド装置Bまで)と、に相互に独立し、供給部A側によるポンプ等からの塗液23にかかる圧力等の影響が、塗工ヘッド装置Bに直接及ばないようにすることができる。それによって、塗布時の塗液23にかかる圧力は塗工ヘッド装置B側のみ調整すればよい。
【0020】
本実施形態では、2つのロータリーバルブ9a、9bを用いたものであるが、1つのロータリーバルブ9でも使用が可能である。ただし、ロータリーバルブ9の切替速度、バックアップロール15の速度、塗液の継続吐出等を踏まえて、2若しくはそれ以上のロータリーバルブ9a、9bを用いることが好ましい。
【0021】
また、コントローラーや制御部(図示しない)を接続することによって、圧力計3、5、11や流量計4、10から圧力や流量の数値を取得し、ロータリーバルブ9a、9bの切り替え、プランジャーポンプ8a、8bの速度調整等の命令を送信する。
【0022】
次に、図2図3に基づいて本実施形態のロータリーバルブ9a、9bに連結されたプランジャーポンプ8a、8bとその駆動について詳細に説明する。
【0023】
ロータリアクチュエータ31は、各々のロータリーバルブ9a、9bの切替弁22と連結し、図2(a)、(b)に示すように、切替弁22を90度揺動回転させ、流路の切り替えを行うものである。
【0024】
リニアモータ32とは、磁石によって発生する磁力によりコイルが水平方向に往復運動するモータであり、この水平方向の往復運動によってプランジャー21のピストン運動をさせ、プランジャーポンプ8、8内の塗液を吸引又は吐出するものである。このリニアモータ32は電気応答性がよく、プランジャー21の加速度を容易に調整することが可能である。また、ストローク長を大きくすることも容易であるため、プランジャー21のピストン運動に適している。
【0025】
ただし、本実施形態はあくまでも一例であり、ロータリアクチュエータ31やリニアモータ32と同等の駆動力を生じるものであれば、レシプロモータやムービングマグネット等を代わりに用いてもよい。
【0026】
図1ないし3に基づいて、本実施形態における間欠塗工装置の塗工方法について説明する。
【0027】
まず、間欠塗工装置の供給部Aを操作する。すなわち、タンク1に塗布する塗液23を投入し、ポンプ2を作動させ塗液23を流路に供給する。塗液23は、ロータリーバルブ9a、9b側へ供給されつつ、循環流路7へも一部供給される。塗液23の粘度や、基材搬送速度等によって圧力及び流量を調整するため、バルブ6の一部を開放し、循環流路7を経て、タンク1に塗液23の一部を元に戻し、設定した圧力で塗液23を送れるようにする。このバルブ6は初期に1/3程度開放し、設定の圧力になるように手動でバルブ6の開閉を行う。
【0028】
このとき、塗工ヘッド装置B側は並列に接続されている一方のロータリーバルブ9aを供給部A側の流路にして塗工ヘッド装置Bとの接続を遮断し、それに連動するプランジャー21はそのロータリーバルブ9aの切替弁22側に位置させる。他方のロータリーバルブ9bは塗工ヘッド装置B側の流路にして供給部Aとの接続を遮断し、それに連動するプランジャー21は他方のロータリーバルブ9bの切替弁22側に位置させる。また塗工ヘッド装置B側の操作として、予め、塗工ヘッド装置B側の配管及びスロットダイ13には塗液を十分に満たしておくことが好ましい。
【0029】
次に、塗工を開始するため塗工ヘッド装置B側を操作する。一方のプランジャーポンプ8aのリニアモータ32を動作させ、プランジャー21が後退し負圧によって供給部A側から塗液をプランジャーポンプ8a内に吸引する(図2(a)参照)。バックアップロール15の回転を開始し、基材14を走行させ、数秒後に設定の速度にする。一方のロータリーバルブ9aの切替弁22を塗工ヘッド装置B側への流路へとロータリアクチュエータ31によって切り替え、リニアモータ32のピストン運動によって、プランジャー21をロータリーバルブ9aの切替弁22側に前進させ、塗液23を吐出してスロットダイ13から基材14へ塗布する(図2(b)参照)。
【0030】
上記の一方のプランジャーポンプ8aとロータリーバルブ9aによる塗液23の吐出と同時に、他方のプランジャーポンプ8bとロータリーバルブ9bをロータリアクチュエータ31、切替弁22によって供給部A側へと流路を切り替え、リニアモータ32によってプランジャー21が後退し負圧によって供給部Aから塗液23をプランジャーポンプ8bのシリンダー内に吸引する。一方のプランジャーポンプ8aによって形成された塗膜から所定の間隔を空けた後、ロータリーバルブ9bの切替弁22を塗工ヘッド装置B側への流路へとロータリアクチュエータ31によって切り替え、リニアモータ32のピストン運動によって、プランジャー21をロータリーバルブ9bの切替弁22側に前進させ、塗液を吐出してスロットダイ13から基材14へと塗布する。
【0031】
上記の間欠塗工装置において、ロータリーバルブ9a、9bによる塗液23の吸引又は吐出動作を交互に繰り返すことによって、間欠的な塗膜が基材14に形成される。
【0032】
この間欠塗工装置において、塗工始めから塗工途中では、プランジャー21の速度を調整することによって圧力を一定とし膜厚の厚みを減らすことができる。また、塗工終わりでは、切替弁22を塗工ヘッド装置B側に接続したまま、プランジャー21をロータリーバルブ9a、9b側から後退することでスロットダイ13の先端に残った液溜まりを配管内に引き込み、塗り終わりの掠れをなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、間欠塗膜の始端の盛り上がりと終端の掠れがなく、均一な膜厚の塗膜を基材上に形成することができる。また、基材を走行させるバックアップロールの速度の上昇にも容易に対応することができる間欠塗工装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
A・・・供給部
B・・・塗工ヘッド装置
1・・・タンク
2・・・ポンプ
3、5、11・・・圧力計
4、10・・・流量計
7・・・循環流路
6、12・・・バルブ
8a、8b・・・プランジャーポンプ
9a、9b・・・ロータリーバルブ
13・・・スロットダイ
14・・・基材
15・・・バックアップロール
21・・・プランジャー
22・・・切替弁
23・・・塗液
31・・・ロータリアクチュエータ
32・・・リニアモータ
図1
図2
図3