特許第6464025号(P6464025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6464025押出機用スクリュ並びに押出機および押出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464025
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】押出機用スクリュ並びに押出機および押出方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/395 20190101AFI20190128BHJP
【FI】
   B29C47/38
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-91318(P2015-91318)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-203576(P2016-203576A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 重行
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 孝文
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−220818(JP,A)
【文献】 特開昭59−184635(JP,A)
【文献】 特開昭57−107826(JP,A)
【文献】 特開2005−169764(JP,A)
【文献】 実開昭52−72573(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された材料を連続的に搬送する移送部と、
搬送された前記材料を連続的に溶融および混合する溶融混合部と、
前記材料を溶融および混合することで得られた原料を連続的に混練する混練部と、を有し、
前記移送部、前記溶融混合部、前記混練部は、直線状の軸線を中心に回転するスクリュ本体に設けられているとともに、
前記スクリュ本体のうち前記混練部が設けられた部分複数の筒体と、複数の前記筒体を支持し、前記軸線を中心に回転する回転軸とから構成され、
前記回転軸に沿って同軸上に結合された複数の前記筒体には、原料を搬送する搬送部と、原料の搬送を制限する障壁部と、原料が流通する通路とが、複数の個所に亘って設けられており、
そのうちの少なくとも1つの箇所において、
前記通路は、前記筒体の内部に設けられ、入口および出口を有し、
前記入口は、前記障壁部によって搬送が制限されることで圧力が高められた原料が流入するように、前記搬送部における前記筒体の外周面に開口され、
前記通路は、前記入口から流入した原料が、前記出口に向かって、前記搬送部による搬送方向と同方向に流通するように構成され、
前記出口は、前記入口が開口された前記搬送部を外れた位置で、前記筒体の外周面に開口されている押出機用スクリュ。
【請求項2】
前記スクリュ本体のうち前記混練部が設けられた部分は、その全長に亘って、その外径が一定値となるように構成されている請求項1に記載の押出機用スクリュ。
【請求項3】
前記通路の口径は、当該通路における前記入口の口径と同一、あるいは、小さく設定されている請求項1に記載の押出機用スクリュ。
【請求項4】
前記通路の口径は、1mm以上かつ6mm未満に設定されている請求項1に記載の押出機用スクリュ。
【請求項5】
前記スクリュ本体は、回転装置に連結される基端から先端に亘り軸方向に沿って延出しており、
前記搬送部には、前記スクリュ本体の外周面に沿って螺旋状にねじれたフライトが設けられ、
前記フライトは、前記スクリュ本体の基端から先端に向かって、前記基端の側から見た場合の当該スクリュ本体の回転方向とは逆方向にねじれている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の押出機用スクリュ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の押出機用スクリュを備えた押出機であって、
前記押出機用スクリュが回転可能に挿通されたシリンダを有するバレルと、
前記バレルに設けられ、前記シリンダ内に材料を供給する供給口と、
前記バレルに設けられ、前記スクリュによって生成された混練物が連続的に押し出される吐出口と、を備えている押出機。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の押出機用スクリュで原料を混練し、その混練物を連続的に生成して押し出す押出方法であって、
前記混練物を連続的に押し出す間に、前記混練部において、前記スクリュ本体の外周面に沿って搬送された原料は、前記通路を流通した後、前記スクリュの外周面に帰還する混練方法。
【請求項8】
前記混練部において、
前記スクリュ本体の外周面に沿って搬送された原料は、当該混練部に設けられた前記障壁部によって搬送が制限されることで、その圧力が高められ、
当該圧力が高められた原料が、前記入口から前記通路に流入する請求項7に記載の混練方法。
【請求項9】
前記混練部において、
前記入口から前記通路に流入した原料は、当該通路内を前記搬送部による搬送方向と同方向に流通する請求項8に記載の混練方法。
【請求項10】
前記混練部において、
前記通路を通過した原料は、前記入口が開口された前記搬送部を外れた位置で、前記出口から前記スクリュ本体の外周面に流出する請求項9に記載の押出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機(スクリュ)を長尺化させること無く、混練の度合いを向上させることが可能な押出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料が広い箇所から狭い箇所を通過する際に、原料に付与される「伸長作用」を利用して、混練の度合いを向上させる押出技術が知られている。例えば、特許文献1および特許文献2には、原料に伸長作用を付与する伸長付与機構を、押出機(スクリュ)の先端に増設した押出技術が開示されている。さらに、特許文献3には、伸長度合いの高い流れを増大させる伸長付与領域を、螺旋状のフライトが設けられた一対のスクリュ相互間に確保した押出技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−227836号公報
【特許文献2】特開2010−137405号公報
【特許文献3】特開2013−123841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された押出技術では、伸長付与機構を増設した分だけ押出機全体が長尺化してしまう。特に、特許文献2の段落「0027」には、「平行に対向させた面相互の隙間に、原料を複数回通過させることで、当該原料に伸長作用が付与される。」といった記載がされている。よって、かかる記載内容を実現するためには、押出機全体のさらなる長尺化は避けられない。
【0005】
また、特許文献3の押出技術において、一対のスクリュによって搬送される原料は、伸長付与領域を通過するもの以外に、当該伸長付与領域を回避しつつ螺旋状のフライトに沿って流動するものが存在する。従って、特許文献3の押出技術では、一対のスクリュによって搬送される原料のすべてが、漏れなく伸長付与領域を通過しているか不明である。この場合、原料のすべてを、漏れなく伸長付与領域に通過させるためには、伸長付与領域を十分に長く確保する必要がある。しかしながら、そうすると、伸長付与領域を長くした分だけ、押出機(スクリュ)が長尺化してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、原料に伸長作用を付与する機能をスクリュ自体に持たせることで、押出機(スクリュ)を長尺化させること無く、当該スクリュによって搬送されるすべての原料に対して漏れなく伸長作用を付与して、その混練の度合いを向上させる押出技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の押出機用スクリュは、供給された材料を連続的に搬送する移送部と、搬送された前記材料を連続的に溶融および混合する溶融混合部と、前記材料を溶融および混合することで得られた原料を連続的に混練する混練部と、を有し、前記移送部、前記溶融混合部、前記混練部は、直線状の軸線を中心に回転するスクリュ本体に設けられているとともに、前記スクリュ本体のうち前記混練部が設けられた部分複数の筒体と、複数の前記筒体を支持し、前記軸線を中心に回転する回転軸とから構成され、前記回転軸に沿って同軸上に結合された複数の前記筒体には、原料を搬送する搬送部と、原料の搬送を制限する障壁部と、原料が流通する通路とが、複数の個所に亘って設けられており、そのうちの少なくとも1つの箇所において、前記通路は、前記筒体の内部に設けられ、入口および出口を有し、前記入口は、前記障壁部によって搬送が制限されることで圧力が高められた原料が流入するように、前記搬送部における前記筒体の外周面に開口され、前記通路は、前記入口から流入した原料が、前記出口に向かって、前記搬送部による搬送方向と同方向に流通するように構成され、前記出口は、前記入口が開口された前記搬送部を外れた位置で、前記筒体の外周面に開口されている。
【0008】
本発明は、上記した押出機用スクリュを備えた押出機であって、前記押出機用スクリュが回転可能に挿通されたシリンダを有するバレルと、前記バレルに設けられ、前記シリンダ内に材料を供給する供給口と、前記バレルに設けられ、前記スクリュによって生成された混練物が連続的に押し出される吐出口と、を備えている。
【0009】
本発明は、上記した押出機用スクリュで原料を混練し、その混練物を連続的に生成して押し出す押出方法であって、前記混練物を連続的に押し出す間に、前記混練部において、前記スクリュ本体の外周面に沿って搬送された原料は、前記通路を流通した後、前記スクリュの外周面に帰還する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料に伸長作用を付与する機能をスクリュ自体に持たせることで、押出機(スクリュ)を長尺化させること無く、当該スクリュによって搬送されるすべての原料に対して漏れなく伸長作用を付与して、その混練の度合いを向上させる押出技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る単軸押出機の全体の構成において、押出機用スクリュの外部構成が示された横断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る単軸押出機のうち、混練部における押出機用スクリュの内部構成が示された横断面図。
図3図2のF3−F3線に沿う断面図。
図4図2に示された障壁用円環状体を一部拡大して示す斜視図。
図5】2つの筒体に跨って形成された通路の構成を一部拡大して示す断面図。
図6】押出機用スクリュによって生じる原料の流動状態を模式的に示す図。
図7】押出機のシリンダ内における原料の流動状態を一部拡大して示す断面図。
図8】(A)は、本発明の変形例において、通路の入口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図8AのF8B−F8B線に沿う断面図。
図9】(A)は、本発明の変形例において、通路の出口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図9AのF9B−F9B線に沿う断面図。
図10】(A)は、本発明の変形例において、通路の入口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図10AのF10B−F10B線に沿う断面図。
図11】(A)は、本発明の変形例において、通路の出口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図11AのF11B−F11B線に沿う断面図。
図12】(A)は、本発明の変形例において、通路の入口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図12AのF12B−F12B線に沿う断面図。
図13】(A)は、本発明の変形例において、通路の出口部分の構成を拡大して示す断面図、(B)は、図13AのF13B−F13B線に沿う断面図。
図14】本発明の変形例において、混練部を構成する筒体の内周面に沿って通路が設けられた押出機用スクリュの構成を概略的に示す縦断面図。
図15】本発明の変形例において、混練部を構成する回転軸の外周面に沿って通路が設けられた押出機用スクリュの構成を概略的に示す縦断面図。
図16】本発明の変形例において、混練部を構成するキーの表面に沿って通路が設けられた押出機用スクリュの構成を概略的に示す縦断面図。
図17】本発明の変形例において、スクリュ本体が1本の軸状部材で形成された押出機用スクリュの構成を概略的に示す縦断面図。
図18】本発明の変形例に係る二軸押出機の全体の構成において、押出機用スクリュの外部構成が示された横断面図。
図19】本発明の変形例において、フライトが設けられた障壁部の構成を一部拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1および図2には、本実施形態に係る単軸押出機1の構成が示されている。単軸押出機1は、1本の押出機用スクリュ2と、このスクリュ2が回転可能に挿通されたシリンダ3を有するバレル4と、を備えている。
【0013】
バレル4には、その一端に熱可塑性樹脂などの複数の材料6を供給する供給口5が設けられている。供給口5は、バレル4を貫通してシリンダ3に連通している。また、バレル4には、その他端に吐出口7が設けられている。吐出口7は、バレル4の他端の開口を覆うように結合される蓋体8に構成されている。吐出口7からは、押出機用スクリュ2によって生成された混練物が連続的に押し出される。
【0014】
さらに、バレル4には、冷却水を流す冷却水通路、ヒータおよび温度センサなど(いずれも図示しない)が設けられている。ヒータを制御してバレル4を設定温度まで加熱することで、シリンダ3内を加熱することができる。バレル4が設定温度を越えた場合、冷却水通路に冷却水を流してバレル4を冷却することで、シリンダ3内を設定温度まで冷却することができる。
【0015】
押出機用スクリュ2は、基端から先端に亘って真っ直ぐに延出し、その全長は、バレル4のシリンダ3の全長に対応した長さに設定されている。これにより、押出機用スクリュ2は、バレル4のシリンダ3内に回転可能に挿通して配置させることができる。押出機用スクリュ2をバレル4のシリンダ3内に回転可能に挿通配置させた状態において、当該押出機用スクリュ2の基端は、供給口5が設けられたバレル4の一端の側に位置付けられるとともに、当該押出機用スクリュ2の先端は、吐出口7が設けられたバレル4の他端の側に位置付けられる。
【0016】
押出機用スクリュ2の基端には、ストッパ部9が同軸状に設けられている。ストッパ部9は、押出機用スクリュ2をバレル4のシリンダ3内に回転可能に挿通・配置させた状態において、当該押出機用スクリュ2の基端の側におけるシリンダ3の開口を塞ぐように構成されている。これにより、シリンダ3内に供給された複数の材料6が機外に漏洩するのを防止することができる。ストッパ部9は、図示しないカップリングを介して例えばモータなどの回転装置に連結可能に構成されている。当該回転装置からの回転力がストッパ部9に伝達されると、押出機用スクリュ2は、その基端から先端に亘る直線状の軸線10を中心に回転する。
【0017】
さらに、押出機用スクリュ2には、これと一体となって回転するスクリュ本体11を備えている。以下の説明において、スクリュ本体11の回転方向(左回転、右回転)とは、当該スクリュ本体11の基端の側から見た場合、換言すると、バレル4の供給口5から吐出口7の方向を見た場合の回転方向(左回転、右回転)である。同様に、フライト12,25,26のねじれ方向(時計回り、逆時計回り)とは、スクリュ本体11の基端の側から見た場合の当該フライト12,25,26のねじれ方向(時計回り、逆時計回り)である。
【0018】
スクリュ本体11は、当該スクリュ本体11の基端から先端に向かって順に、移送部11a、溶融混合部11b、混練部11cを有している。移送部11aは、供給口5からシリンダ3内に供給された複数の材料6を溶融混合部11bに向けて連続的に搬送する。溶融混合部11bは、複数の材料6を連続的に溶融して混合する。そして、混練部11cには、各材料6を溶融および混合することで得られたものが、混練用原料として、連続的に導入される。混練部11cでは、所望の混練物が連続的に生成される。
【0019】
スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分は、原料にせん断作用を付与する部分(せん断作用領域)のみならず、特に、当該原料に伸長作用を付与する部分(伸長作用領域)を軸方向に沿って複数個所に亘って配置させて構成されている。これにより、原料を分散させる度合いが向上され、その結果、混練度合いに優れた混練物を生成することができる。そして、シリンダ3内で生成された混練物は、吐出口7を介して連続的に押し出される。
【0020】
移送部11aから溶融混合部11bに亘るスクリュ本体11の外周面M1,M2には、螺旋状に捩じれたフライト12が連続して形成されている。フライト12は、供給口5からシリンダ3内に供給された各材料6を、移送部11aから溶融混合部11bに亘って連続的に搬送するように構成されている。このため、フライト12は、スクリュ本体11の回転方向とは逆方向にねじれている。
【0021】
図面には、スクリュ本体11を左回転させて各材料6を搬送する場合のフライト12が示されている。この場合、フライト12のねじれ方向は、右ねじと同じように、時計回りに設定されている。なお、スクリュ本体11を右回転させて各材料6を搬送する場合、フライト12の捩じれ方向は、左ねじと同じように、逆時計回りに設定すればよい。
【0022】
移送部11aにおけるスクリュ本体11の外周面M1は、円柱形状を有し、その外周面M1とシリンダ3の内面3sとの隙間は、広く設定されている。溶融混合部11bにおけるスクリュ本体11の外周面M2は、移送部11aから混練部11cに向かって末広がり形状を有し、その外周面M2とシリンダ3の内面3sとの隙間は、移送部11aから混練部11cに向かって連続的に狭くなるように設定されている。
【0023】
ここで、押出機用スクリュ2を左回転させた状態において、供給口5からシリンダ3に供給された各材料6は、フライト12によって移送部11aから溶融混合部11bに搬送される。溶融混合部11bにおいて、各材料6は、ヒータにより加熱されつつ、主に連続的に狭くなった隙間からの圧縮を受けることで、溶融および混合された混練用原料を構成する。当該原料は、溶融混合部11bから混練部11cに連続的に搬送される。
【0024】
スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分は、複数の円筒状の筒体13と、これらの筒体13を支持する1本の回転軸14(図2参照)と、から構成されている。さらに、混練部11cは、溶融混合部11bから搬送された原料を導入するための導入部15を有している。導入部15は、溶融混合部11bの端面16に隣接するように構成されている。導入部15の詳細は後述する。
【0025】
回転軸14は、スクリュ本体11の先端から溶融混合部11bの端面16に亘る領域に設けられている。回転軸14は、基端から先端に亘って真っ直ぐに延出し、その基端が溶融混合部11bの端面16に対して同軸状に接続されている。回転軸14は、円柱形状を有しており、その外形輪郭は、溶融混合部11bの端面16の外形輪郭よりも小さく設定されている。
【0026】
なお、回転軸14の基端と溶融混合部11bの端面16との接続方法は、例えば、移送部11aから溶融混合部11bに亘るスクリュ本体11とともに、回転軸14を同軸状に一体成形する方法、あるいは、移送部11aから溶融混合部11bに亘るスクリュ本体11と、回転軸14とを別体で成形した後、回転軸14の基端を溶融混合部11bの端面16に同軸状に連結させる方法など、既存の方法を適宜選択すればよい。
【0027】
図3および図4に示すように、上記した回転軸14に複数の筒体13を支持させる支持構造の一例として、回転軸14には、その外周面に一対のキー17が設けられている。各キー17は、回転軸14の外周面に沿って周方向に180°ずれた位置に形成された一対の溝部18に嵌め込まれている。各溝部18は、回転軸14の外周面を軸方向に沿って一部切り欠いて形成されている。
【0028】
さらに、各筒体13は、その内周面に沿って、回転軸14を同軸状に貫通させることができるように構成されている。各筒体13の内周面には、周方向に沿って180°ずれた位置にキー溝19が形成されている。これら一対のキー溝19は、当該筒体13の内周面を軸方向に沿って一部切り欠いて形成されている。
【0029】
図1ないし図4に示すように、各キー17と各キー溝19とを位置合わせしつつ、全ての筒体13の内周面に回転軸14を貫通させる。その後、回転軸14の先端にカラー20を介して固定ネジ21をねじ込む。このとき、全ての筒体13は、先端カラー20と溶融混合部11bの端面16との間で挟持され、その挟持力によって、互いに隙間なく密着された状態に保持される。
【0030】
上記した支持構造によって、全ての筒体13が回転軸14上で同軸状に結合されることで、当該各筒体13と回転軸14とが一体的に組み立てられる。各筒体13と回転軸14とが一体的に組み立てられることで、スクリュ本体11は、基端から先端に亘って軸方向(長手方向)に延出した棒状部材として構成される。
【0031】
これにより、各筒体13を回転軸14とともに軸線10を中心に回転させること、すなわち、スクリュ本体11を軸線10を中心に回転させることが可能となる。さらに、スクリュ本体11の基端は、回転軸14の基端と一致するとともに、スクリュ本体11の先端は、回転軸14の先端と一致する。換言すると、スクリュ本体11の基端は、バレル4の一端に対応する押出機用スクリュ2の基端と一致するとともに、スクリュ本体11の先端は、バレル4の他端に対応する押出機用スクリュ2の先端と一致する。
【0032】
このとき、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分において、各筒体13は、スクリュ本体11の外径D1(図3参照)を規定する構成要素となる。当該混練部11cにおいて、回転軸14に沿って同軸状に結合された各筒体13は、その外径D1が互いに同一に設定されている。スクリュ本体11(各筒体13)の外径D1は、回転軸14の回転中心である軸線10を通って規定される直径である。
【0033】
これにより、混練部11cにおけるスクリュ本体11(各筒体13)の外径D1が一定値であるセグメント式のスクリュ2が構成される。セグメント式のスクリュ2は、回転軸14に沿って、複数のスクリュエレメントを、自由な順番および組み合わせで保持させることができる。スクリュエレメントとしては、例えば、少なくとも後述するフライト12,25,26の一部が形成された筒体13を、1つのスクリュエレメントとして規定することができる。
【0034】
スクリュ2をセグメント化することで、例えば、スクリュ2の仕様の変更や調整、あるいは、保守やメンテナンスについて、その利便性を格段に向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態において、複数の筒体13と回転軸14とを回り止め固定する構造としては、上記したようなキー17とキー溝19との組み合わせに係るものに限定されることはなく、これに代えて、スプライン構造(図示しない)を用いてもよい。
【0036】
さらに、セグメント式のスクリュ2は、バレル4のシリンダ3に同軸状に収容されている。具体的には、複数のスクリュエレメントが回転軸14に沿って保持されたスクリュ本体11が、シリンダ3に回転可能に収容されている。この状態において、スクリュ本体11(筒体13)の外周面と、シリンダ3の内面3sとの間には、原料を搬送するための搬送路29が形成されている。搬送路29は、シリンダ3の径方向に沿う断面形状が円環形であり、シリンダ3に沿って軸方向に延びている。
【0037】
本実施形態において、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分には、上記した導入部15と、この導入部15によって導入された原料を搬送する複数の搬送部22と、各搬送部22によって搬送される原料の流動を制限する複数の障壁部23と、が設けられている。搬送部22および障壁部23は、混練部11cにおけるスクリュ本体11の軸方向(長手方向)に沿って交互に並べて配置されている。
【0038】
すなわち、混練部11cにおけるスクリュ本体11の基端の側には、障壁部23が配置されている。障壁部23は、導入部15の構成として併用されている。この障壁部23からスクリュ本体11の先端に向かって、搬送部22と障壁部23とが交互に配置されている。
【0039】
一方、混練部11cにおけるスクリュ本体11の先端の側には、吐出用搬送部24が配置されている。吐出用搬送部24は、シリンダ3内で混練された混練物を、他の搬送部22による搬送方向と同方向に搬送するように構成されている。
【0040】
各搬送部22には、螺旋状にねじれたフライト25が設けられている。フライト25は、筒体13の周方向に沿う外周面から搬送路29に向けて張り出している。フライト25は、スクリュ本体11の基端から先端に向かって、スクリュ本体11の回転方向とは逆方向にねじれている。
【0041】
吐出用搬送部24には、螺旋状にねじれたフライト26が設けられている。フライト26は、筒体13の周方向に沿う外周面から搬送路29に向けて張り出している。フライト26は、スクリュ本体11の回転方向とは逆方向にねじれている。
【0042】
ここで、スクリュ本体11を左回転させて原料を混練する場合、各搬送部22のフライト25は、スクリュ本体11の基端から先端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト25のねじれ方向は、右ねじと同じように、時計回りに設定されている。
【0043】
さらに、スクリュ本体11を左回転させて原料を混練する場合、吐出用搬送部24のフライト26は、スクリュ本体11の基端から先端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト26のねじれ方向は、右ねじと同じように、時計回りに設定されている。
【0044】
これに対して、スクリュ本体11を右回転させて原料を混練する場合、各搬送部22のフライト25は、スクリュ本体11の基端から先端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト25のねじれ方向は、左ねじと同じように、逆時計回りに設定されている。
【0045】
さらに、スクリュ本体11を右回転させて原料を混練する場合、吐出用搬送部24のフライト26は、スクリュ本体11の基端から先端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト26のねじれ方向は、左ねじと同じように、逆時計回りに設定されている。
【0046】
各障壁部23には、スクリュ本体11の外周面に沿って周方向に連続した障壁用円環状体28が設けられている。障壁用円環状体28は、軸線10を中心に周方向に沿って同心円状に連続した円筒面28sを有している(図4参照)。円筒面28sは、筒体13の周方向に沿う外周面から搬送路29に向けて張り出している。
【0047】
この場合、各障壁部23の外径部23sと、シリンダ3の内面3sとの隙間27(図7参照)は、0.05mm以上かつ2mm以下の範囲に設定することが好ましい。さらに、より好ましくは、隙間27を0.05mm以上かつ0.7mm以下の範囲に設定する。これにより、原料が隙間27を通過して搬送されるのを確実に制限することができる。よって、原料が各障壁部23を越えて流動することは無い。
【0048】
なお、各障壁部23において、障壁用円環状体28を設ける代わりに、例えば図19に示すように、螺旋状にねじれたフライト41を設けてもよい。フライト41は、筒体13の周方向に沿う外周面から搬送路29に向けて張り出している。フライト41は、スクリュ本体11の回転方向と同方向にねじれている。
【0049】
ここで、スクリュ本体11を左回転させて原料を混練する場合、各障壁部23のフライト41は、スクリュ本体11の先端から基端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト41のねじれ方向は、左ねじと同じように、逆時計回りに設定されている。
【0050】
これに対して、スクリュ本体11を右回転させて原料を混練する場合、各障壁部23のフライト41は、スクリュ本体11の先端から基端に向けて原料を搬送するように、ねじれている。すなわち、フライト41のねじれ方向は、右ねじと同じように、時計回りに設定されている。
【0051】
各障壁部23において、フライト41のねじれピッチは、上記した各搬送部22,24におけるフライト25,26のねじれピッチと同じか、それよりも小さく設定されている。さらに、フライト41の頂部と、シリンダ3の内面3sとの間隔は、上記した隙間27の範囲に設定されている。
【0052】
ところで、スクリュ本体11の軸方向に沿った搬送部22,24の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。搬送部22,24とは、少なくとも筒体13の外周面にフライト25,26が形成された領域のことであるが、フライト25,26の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0053】
すなわち、筒体13の外周面のうちフライト25,26から外れた領域も、搬送部22,24とみなされることがある。例えば、フライト25,26を有する筒体13と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部22,24に含まれることがあり得る。
【0054】
また、スクリュ本体11の軸方向に沿った障壁部23の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。障壁部23は、搬送部22によって送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部23は、原料の搬送方向の下流側で搬送部22と隣り合うとともに、搬送部22によって送られる原料が、上記した隙間27を通過して搬送されるのを妨げるように構成されている。
【0055】
上記したスクリュ2(スクリュ本体11)のうち混練部11cが設けられた部分において、各フライト25,26,41および障壁用円環状体28(円筒面28s)は、互いに同一の外径D1を有する複数の筒体13の外周面から搬送路29に向けて張り出している。このため、当該各筒体13の周方向に沿う外周面は、当該混練部11cにおけるスクリュ2の谷径を規定する。当該谷径は、上記した外径D1と一致し、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分の全長に亘って一定値に保たれている。
【0056】
この場合、谷の深さが浅くなるように、混練部11cの谷径を大きく構成してもよい。かかる構成によれば、スクリュ2によって生成された混練物を吐出口7から安定して吐出させることができる。なお、谷の深さは、スクリュ本体11(筒体13)の外周面からフライト25,26,41および障壁用円環状体28(円筒面28s)の外径までの径方向に沿った高さ寸法として規定することができる。
【0057】
さらに、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分には、その内部に、軸方向に延びる複数の通路37が設けられている。複数の通路37は、スクリュ本体11の軸方向および周方向に沿って並んでいる。図面には一例として、スクリュ本体11の周方向に沿って等間隔に配置した2つの通路37を、軸方向に沿って等間隔に並べた構成が示されている。
【0058】
通路37は、スクリュ2の回転中心である軸線10から偏心した位置に設けられている。すなわち、通路37は、軸線10から外れている。このため、通路37は、スクリュ本体11の回転に伴って、軸線10の回りを公転する。
【0059】
通路37の形状については、原料が流通可能であれば、その断面形状として、例えば、円形状、矩形状、楕円形状などに設定することができる。図面には一例として、断面が円形状の孔である通路37が示されている。この場合、当該孔の内径(口径)は、1mm以上かつ6mm未満に設定することが好ましい。さらに好ましくは、当該孔の内径(口径)を、1mm以上かつ5mm未満に設定する。
【0060】
スクリュ本体11(混練部11c)の内部において、搬送部22および障壁部23の筒体13は、孔である通路37を規定する筒状の壁面30(図3ないし図5参照)を有している。すなわち、通路37は、中空の空間のみから成る孔である。壁面30は、中空の通路37を周方向に連続して取り囲んでいる。これにより、通路37は、原料の流通のみを許容する中空の空間として構成されている。換言すると、通路37の内部には、スクリュ本体11を構成する他の要素は一切存在しない。この場合、壁面30は、スクリュ本体11が回転した時に、軸線10を中心に自転することなく軸線10の回りを公転する。
【0061】
このような通路37によれば、各搬送部22によって搬送路29を搬送された原料が当該通路37を流通する際、当該原料に対して、広い箇所(搬送路29)から狭い箇所(通路37)を通過する際に生じる「伸長作用」を有効に利かせることができる。よって、通路37は、原料に伸長作用を付与する部分(伸長作用領域)として規定される。
【0062】
以下、上記した通路37の具体的な構成について述べる。
図2および図5に示すように、本実施形態に係る押出機用スクリュ2には、複数の搬送部22と、複数の障壁部23とが、軸方向(長手方向)に沿って交互に並んだスクリュ本体11(混練部11c)の内部に、複数の通路37が軸方向(長手方向)に沿って互いに間隔を存して設けられている。各通路37には、障壁部23によって搬送が制限された原料が流入する。各通路37において、原料は、搬送部22による搬送方向と同方向に流通する。かかるスクリュ構造により、原料にせん断作用と伸長作用とを連続して付与する機能を有するスクリュ本体11(混練部11c)を備えたスクリュ2が実現される。
【0063】
ここで、上記したスクリュ構造において、1つの障壁部23と、当該障壁部23の両側に隣接する2つの搬送部22とに着目すると、1つの通路37が、障壁部23の筒体13と、2つの搬送部22の筒体13とに跨って設けられている。かかる構成は、構造的にまとまった1つのユニットとして捉えることができる。
【0064】
本実施形態に係るスクリュ本体11(混練部11c)は、当該ユニットを軸方向(長手方向)に複数並べて構成されている。上記したスクリュ構造において、1つの筒体13には、1つの搬送部22と1つの障壁部23とが隣接して設けられている(図4参照)。当該筒体13を軸方向(長手方向)に複数並べることで、上記したユニットを軸方向(長手方向)に複数並べることができる。これにより、特定の原料の流れを追った場合、一度通ったところは二度と通らない一方通行型のスクリュ構造が実現される。
【0065】
換言すると、上記した1つのユニットは、機能的にまとまった1つのモジュールとして捉えることができる。1つのモジュールの機能として、例えば、原料にせん断作用を付与する機能、原料に伸長作用を付与する機能、障壁部23によって原料の搬送を堰き止める機能、障壁部23によって圧力の高められた原料を通路37へ導く機能、障壁部23の直前で原料の充満率が100%の原料溜まりRを形成する機能などが想定される。
【0066】
さらに、上記したスクリュ構造において、通路37は、入口38、出口40、入口38と出口40との間を連通する通路本体39を有している。入口38および出口40は、上記した1つのユニットにおいて、1つの障壁部23の両側に設けられている。すなわち、入口38は、通路本体39の一方側(スクリュ本体11の基端寄りの部分)に設けられている。出口40は、通路本体39の他方側(スクリュ本体11の先端寄りの部分)に設けられている。
【0067】
具体的には、当該障壁部23に対してスクリュ本体11の基端の側から隣接した搬送部22において、入口38は、当該搬送部22の外周面に開口されている。一方、当該障壁部23に対してスクリュ本体11の先端の側から隣接した搬送部22において、出口40は、当該搬送部22の外周面に開口されている。
【0068】
この場合、入口38および出口40の形成位置は、当該搬送部22の範囲内で自由に設定することができる。例えば、入口38および出口40の双方を、障壁部23に接近させてもよいし、当該障壁部23から離間させてもよい。さらに、入口38および出口40のいずれか一方を、障壁部23に接近させてもよいし、当該障壁部23から離間させてもよい。図面には一例として、入口38を障壁部23に接近させ、出口40を障壁部23から遠ざけた構成が示されている。
【0069】
入口38は、混練部11cにおける筒体13(スクリュ本体11)の外周面から径方向に掘られた穴である。入口38は、例えばドリルを用いた機械加工によって形成することができる。この結果、入口38の底部38aは、ドリルの先端によって円錐状に削り取られた傾斜面となっている。換言すると、円錐状の底部38aは、当該スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状の傾斜面となっている。
【0070】
出口40は、混練部11cにおける筒体13(スクリュ本体11)の外周面から径方向に掘られた穴である。出口40は、例えばドリルを用いた機械加工によって形成することができる。この結果、出口40の底部40aは、ドリルの先端によって円錐状に削り取られた傾斜面となっている。換言すると、円錐状の底部40aは、当該スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状の傾斜面となっている。
【0071】
通路本体39は、互いに隣接した2つの筒体13に亘って形成されている。通路本体39は、第1および第2の部分39a,39bから構成されている。第1の部分39aは、一方の筒体13の内部に形成されている。第2の部分39bは、他方の筒体13の内部に形成されている。
【0072】
一方の筒体13において、第1の部分39aは、障壁部23に対向した領域に沿って形成されている。第1の部分39aは、軸線10に沿って平行に延びている。第1の部分39aの一端は、当該筒体13の端面13aに開口されている。一方、第1の部分39aの他端は、当該筒体13の内部(即ち、端壁13b)で閉塞されている。さらに、第1の部分39aの他端は、上記した入口38に連通して接続されている。
【0073】
他方の筒体13において、第2の部分39bは、搬送部22に対向した領域に沿って形成されている。第2の部分39bは、軸線10に沿って平行に延びている。第2の部分39bの一端は、当該筒体13の端面13aに開口されている。一方、第2の部分39bの他端は、当該筒体13の内部(即ち、端壁13b)で閉塞されている。さらに、第2の部分39bの他端は、上記した出口40に連通して接続されている。
【0074】
通路本体39は、第1の部分39aが形成された筒体13と、第2の部分39bが形成された筒体13とを軸方向に締め付けて、その端面13a同士を相互に密着させることで形成することができる。この状態において、通路本体39は、スクリュ本体11の軸方向に沿って、途中で分岐することなく、一直線状に連続して延びている。そして、当該通路本体39の両側は、上記した入口38および出口40に連通して接続されている。
【0075】
この場合、通路本体39の口径は、入口38および出口40の口径よりも小さく設定してもよいし、同一の口径に設定してもよい。いずれの場合でも、当該通路本体39の口径によって規定される通路断面積は、上記した円環形の搬送路29の径方向に沿う円環断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0076】
本実施形態において、フライト25,26,41や障壁用円環状体28の少なくとも一部が形成された各筒体13は、各搬送部22,24や障壁部23に対応したスクリュエレメントとして捉えることができる。
【0077】
そうすると、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分は、回転軸14の外周上にスクリュエレメントとしての複数の筒体13を順次配置することで構成することができる。このため、例えば原料の混練度合いに応じて、搬送部22,24や障壁部23の交換および組み換えが可能であるとともに、交換および組み換え時の作業を容易に行うことができる。
【0078】
さらに、スクリュエレメントとしての複数の筒体13を軸方向に締め付けて、相互に密着させることで、各通路37の通路本体39が形成され、当該通路本体39を介して通路37の入口38から出口40までが一体的に連通される。このため、スクリュ本体11に通路37を形成するに当たっては、スクリュ本体11(混練部11c)の全長に比べて長さが十分に短い各筒体13のそれぞれに、通路37を設けるための加工を施せばよい。よって、通路37を形成する際の加工および取扱いが容易となる。
【0079】
さらに、押出機用スクリュ2のスクリュ構造において、上記した導入部15は、溶融混合部11bから搬送された原料を連続して混練部11cに導入する構造を有している。図1および図2には、かかる導入構造の一例が示されている。すなわち、導入部15は、上記したユニットにおいて、上流側の搬送部22に代えて、導入用筒体13pを有して構成されている。導入用筒体13pの外周面には、通路37に連通した入口38が形成されている。導入用筒体13pは、混練部11cにおけるスクリュ本体11の基端に設けられた障壁部23と、溶融混合部11bの端面16との間に隣接させて配置されている。
【0080】
このような導入構造によれば、溶融混合部11bから搬送された原料は、障壁部23によって搬送が制限されることで圧力が高められ、導入用筒体13pの入口38に流入し、通路37(通路本体39)を流通した後、下流側の搬送部22の出口40から流出する。これにより、溶融混合部11bから搬送された原料を連続して混練部11cに導入させることができる。
【0081】
次に、単軸の押出機用スクリュ2によって原料を混練する動作について説明する。この動作説明において、「スクリュ本体11の外周面」とは、当該スクリュ本体11の長手方向の両端面を含まない周方向に亘る外周面を指す。さらに、この動作説明では、押出機用スクリュ2を、例えば回転数50rpm〜100rpmで逆時計回りに左回転させながら混練する場合を想定する。
【0082】
図6および図7に示すように、押出機用スクリュ2を左回転させた状態において、供給口5からシリンダ3に材料6(図1参照)を供給する。
【0083】
シリンダ3に供給されたペレット状の樹脂は、フライト12によって、移送部11aから溶融混合部11bに搬送される。溶融混合部11bにおいて、樹脂は、ヒータにより加熱されつつ、主に連続的に狭くなった隙間からの圧縮を受ける。この結果、溶融混合部11bからは、二種類の樹脂が溶融および混合された原料が搬送される。
【0084】
溶融混合部11bから搬送された原料は、導入部15を介して混練部11cに導入される。すなわち、溶融混合部11bから搬送された原料は、障壁部23によって搬送が制限されることで圧力が高められ、導入用筒体13pの入口38に流入し、通路本体39を流通した後、下流側の搬送部22の出口40から流出する。
【0085】
出口40から流出した原料は、混練部11cにおけるスクリュ本体11の外周面に連続的に供給される。供給された原料は、搬送部22のフライト25によって、スクリュ本体11の基端から先端に向かってS1方向に搬送される。
【0086】
S1方向に搬送される間、原料には、搬送路29に沿って旋回する搬送部22のフライト25と、シリンダ3の内面3sとの間の速度差によって生じる「せん断作用」が付与されるとともに、螺旋状のフライト25自体の旋回に伴う撹拌作用が付与される。これにより、当該原料に対する混練の度合いが促進される。
【0087】
S1方向に搬送された原料は、その搬送が障壁部23により制限される。すなわち、障壁部23は、原料を、S1方向とは逆方向に、スクリュ本体11の先端から基端に向かって押し戻すように作用する。この結果、当該原料は、障壁部23によって、その流動が堰き止められる。
【0088】
このとき、原料の流動が堰き止められることで、当該原料に加わる圧力が高められる。具体的に説明すると、図7には、搬送路29のうちスクリュ本体11(混練部11c)の搬送部22に対応した箇所の原料の充満率がグラデーションで表されている。すなわち、当該搬送路29において、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。図7から明らかなように、搬送部22に対応した搬送路29において、障壁部23に近づくに従って原料の充満率が高まっている。障壁部23の直前で、原料の充満率は100%となっている。
【0089】
このため、障壁部23の直前で、原料の充満率が100%となる「原料溜まりR」が形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことで、当該原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、搬送部22(筒体13)の外周面に開口された入口38から通路本体39に連続的に流入し、当該通路本体39内を、S1方向と同方向に、スクリュ本体11の基端から先端に向かってS2方向に流通する。
【0090】
上記したように、通路本体39の口径によって規定される通路断面積は、シリンダ3の径方向に沿う搬送路29の円環断面積よりも遥かに小さい。別の捉え方をすると、通路本体39の口径に基づく広がり領域は、円環形状の搬送路29の広がり領域よりも遥かに小さい。このため、入口38から通路本体39に流入する際に、原料が急激に絞られることで、当該原料に「伸長作用」が付与される。
【0091】
さらに、通路断面積が円環断面積よりも十分に小さいため、原料溜まりRに溜まった原料が消滅することはない。すなわち、原料溜まりRに溜まった原料は、その一部が連続的に入口38に流入する。この間、新たな原料が、搬送部22のフライト25によって、障壁部23に向けて送り込まれる。この結果、原料溜まりRにおける障壁部23の直前の充満率は、常に100%に維持される。このとき、フライト25による原料の搬送量に多少の変動が生じたとしても、その変動状態が、原料溜まりRに残存した原料で吸収される。これにより、原料を、連続して安定的に通路本体39に供給することができる。よって、当該通路本体39において、原料に対し、途切れること無く連続的に伸長作用を付与することができる。
【0092】
通路本体39を通過した原料は、出口40からスクリュ本体11(混練部11c)の外周面に流出する。スクリュ本体11(混練部11c)には、上記した搬送部22と障壁部23が軸方向に交互に並んでいるため、上記したような一連のせん断・伸長動作が繰り返されることで、シリンダ3内の原料は、せん断流動と伸長流動とが繰り返された状態で、スクリュ本体11(混練部11c)の基端から先端に向かって連続的に搬送される。これにより、原料の混練の度合いが強化される。
そして、搬送された混練物は、吐出用搬送部24のフライト26によってS1方向に搬送された後、吐出口7(図1図2参照)から連続的に押し出される。
【0093】
以上、本実施形態によれば、原料に伸長作用を付与する機能を押出機用スクリュ2自体に持たせたことで、当該スクリュ2ないし単軸押出機を長尺化させること無く、原料に対する混練の度合いを向上させることができる。
【0094】
本実施形態によれば、原料に対して、せん断作用と伸長作用とを連続的に複数回付与することができる。このため、原料に対するせん断作用と伸長作用の付与回数および付与時間を増やすことができる。この結果、従来に比べて、混練の度合いを精度よく制御することができる。
【0095】
本実施形態によれば、基端から先端に向けて供給部,圧縮部,計量部を備え、かつ、内部に原料が流通する通路の無い既存の押出機用スクリュにおいて、供給部を移送部11aに、圧縮部を溶融混合部11bに、そして、計量部を、搬送部22と障壁部23と通路37を組合わせて配された混練部11cに置き換える。これにより、当該既存の押出機用スクリュに、せん断作用を付与する機能と、伸長作用を付与する機能との双方の機能を持たせることができる。この結果、取り扱いのし易さを維持・向上させた押出機用スクリュ2を実現することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る押出機用スクリュ2は、混練部11cにおける特定の原料の流れを追った場合、一度通ったところは二度と通らない一方通行型のスクリュ構造を有している。このため、混練部11cにおいて、すべての原料に対して漏れなく伸長作用を付与することができる。さらに、一方通行型のスクリュ構造によれば、特定の原料の流れに、その前方または後方にある混練状態の異なる原料の流れが混入することは無い。これにより、すべての原料を万遍無くかつ均一に混練させることができる。
【0097】
さらに、本実施形態によれば、混練部11cが設けられた部分において、そのスクリュ本体11(各筒体13)の外径D1を一定値に設定、換言すると、スクリュ2の谷径を一定値に設定したことで、複数のスクリュエレメントを、自由な順番および組み合わせで保持させることが可能なセグメント式のスクリュ2を実現することができる。スクリュ2をセグメント化することで、例えば、当該スクリュ2の仕様の変更や調整、あるいは、保守やメンテナンスについて、その利便性を格段に向上させることができる。
【0098】
さらに、本実施形態によれば、通路37(通路本体39)の断面積を、原料を搬送するための搬送路29の断面積よりも遥かに小さく設定したことで、当該通路37(通路本体39)を通過する原料に対して、満遍無く安定してかつ効率良く伸長作用を付与することができる。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該一実施形態に限定されることはなく、以下のような変形例も、本発明の技術的範囲に含まれる。
上記した一実施形態において、図2および図5には、通路本体39の両側が、入口38および出口40の底部38a,40aから外れた位置で、当該入口38および出口40に接続された通路37が示されている。しかし、通路本体39と、入口38および出口40との接続関係は、上記した一実施形態に限定されることは無く、以下のような接続関係も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0100】
図8ないし図13には一例として、通路本体39の両側が、入口38および出口40の底部38a,40aに接続された通路37が示されている。具体的には、通路本体39の一方側、すなわち、上記した第1の部分39aの他端が、入口38の底部38aに接続されている。さらに、通路本体39の他方側、すなわち、上記した第2の部分39bの他端が、出口40の底部40aに接続されている。
【0101】
図8(A),(B)および図9(A),(B)には、第1変形例に係る通路37が示されている。当該通路37において、入口38の底部38aには、通路本体39の一方側(第1の部分39aの他端)の端面が接続されている。底部38aには、通路本体39(第1の部分39a)に連通した1つの開口38bが形成されている。一方、出口40の底部40aには、通路本体39の他方側(第2の部分39bの他端)の端面が接続されている。底部40aには、通路本体39(第2の部分39b)に連通した1つの開口40bが形成されている。
【0102】
入口38の1つの開口38bは、スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状となった底部38aに対向した領域に形成されている。一方、出口40の1つの開口40bは、スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状となった底部40aに対向した領域に形成されている。
【0103】
この場合、入口38に流入した原料は、底部38aの傾斜に沿って開口38bに向けて案内される。この結果、原料は、当該入口38内で滞留すること無く、その全てが連続して円滑に通路本体39に流入する。通路本体39を通過した原料は、続いて、出口40に流入する。出口40に流入した原料は、底部40aの傾斜に沿ってスクリュ本体11の外周面に向けて案内される。この結果、原料は、当該出口40内で滞留すること無く、その全てが連続して円滑にスクリュ本体11の外周面に流出する。
【0104】
これにより、通路37内で原料が局所的に滞留するのを回避しつつ、当該通路37を通過する原料に対して、漏れ無くかつ満遍無く連続的に伸長作用を付与することができる。
【0105】
図10(A),(B)および図11(A),(B)には、第2変形例に係る通路37が示されている。当該通路37において、入口38の底部38aには、通路本体39の一方側(第1の部分39aの他端)の端面39s寄りの部分、すなわち、端面39sの手前の部分が接続されている。底部38aには、通路本体39(第1の部分39a)に連通した2つの開口38bが形成されている。一方、出口40の底部40aには、通路本体39の他方側(第2の部分39bの他端)の端面39s寄りの部分、すなわち、端面39sの手前の部分が接続されている。底部40aには、通路本体39(第2の部分39b)に連通した2つの開口40bが形成されている。
【0106】
入口38の2つの開口38bは、スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状となった底部38aに対向した領域に形成されている。一方、出口40の2つの開口40bは、スクリュ本体11の外周面に向かって末広がり形状となった底部40aに対向した領域に形成されている。なお、第2変形例に係る通路37の作用および効果は、上記した第1変形例に係る通路37と同様であるため、その説明は省略する。
【0107】
上記した一実施形態および変形例において、入口38および出口40の開口方向は、軸線10に直交する方向を想定しているが、これに限定されることは無い。例えば、図12(A),(B)および図13(A),(B)に示すように、入口38および出口40の開口方向を、軸線10を交差する方向(点線で示す方向)に設定してもよい。この場合、通路本体39の両側から複数方向に開口し、これにより、複数の入口38,38−1および複数の出口40,40−1を設けるようにしてもよい。
【0108】
さらに、入口38については、これをスクリュ本体11の外周面よりも窪ませて構成することが好ましい。これにより、さらに原料を入口38に流入し易くすることができる。
【0109】
さらに、上記した実施形態および変形例では、軸線10に平行な通路本体39を備えた通路37を想定しているが、これに限定されることは無く、軸線10と交差する通路本体39を備えた通路37も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、出口40を無くすることで、一方側が入口38に接続された通路本体39の他方側を、直接、スクリュ本体11(筒体13)の外周面に開口させる。この場合、一方側から他方側に向かって上り勾配を有する通路本体39が構成される。
【0110】
かかる構成によれば、入口38から通路本体39に流入した原料は、スクリュ本体11の回転時の遠心作用を受けることで、さらに円滑に通路本体39を流通し、スクリュ本体11(筒体13)の外周面に流出する。このとき、原料に対して、さらに効率よく連続的に伸長作用が付与される。この結果、原料の混練の度合いを、さらに強化させることができる。
【0111】
また、上記した一実施形態では、通路37(具体的には、通路本体39)を、混練部11cにおけるスクリュ本体11(筒体13)の内部に構成した場合を想定したが、これに代えて、スクリュ本体11(混練部11c)を構成する各筒体13の内周面に沿って回転軸14を貫通させたときに、各筒体13と回転軸14との境界部分に通路37(通路本体39)が構成されるようにしてもよい。なお、本変形例の構成として、図14ないし図17には、図3に対応した部分の構成が示されている。
【0112】
図14に示された通路37は、筒体13の内周面の一部を軸方向に沿って凹状に窪ませた壁面30aによって構成されている。この場合、筒体13の内周面に回転軸14を貫通させることで、壁面30aと回転軸14の外周面とで囲まれた通路37を規定することができる。
【0113】
図15に示された通路37は、回転軸14の外周面の一部を軸方向に沿って凹状に窪ませた壁面30bによって構成されている。この場合、筒体13の内周面に回転軸14を貫通させることで、壁面30bと筒体13の内周面とで囲まれた通路37を規定することができる。
【0114】
図16に示された通路37は、キー17の外周面の一部を軸方向に沿って凹状に窪ませた壁面30cによって構成されている。この場合、筒体13の内周面に回転軸14を貫通させることで、壁面30cとキー溝19の溝底面とで囲まれた通路37を規定することができる。
【0115】
いずれの通路37においても、外部に露出した部分を凹状に加工するだけで、壁面30a,30b,30cを形成することができるため、形成作業を容易に行うことができる。この場合、凹状の壁面30a,30b,30cの形状として、例えば、半円形状、三角形状、楕円形状、矩形状など各種の形状を適用することができる。
【0116】
また、上記した一実施形態では、スクリュ本体11のうち混練部11cが設けられた部分を、複数の筒体13と回転軸14とによって構成したが、これに代えて、図17に示すように、真っ直ぐな1本の軸状部材2tによってスクリュ本体11(混練部11c)を構成してもよい。この場合、当該ソリッドなスクリュ本体11(混練部11c)の外周面に上記した搬送部や障壁部が設けられるとともに、当該スクリュ本体11(混練部11c)の内部に上記した通路37が設けられる。なお、図面には一例として、軸線10に対して偏心した位置に設けられ、筒状の壁面30dによって規定された一対の通路37が示されているが、これにより各通路37の配置が限定されるものではない。
【0117】
また、上記した一実施形態では、1本の押出機用スクリュ2がバレル4のシリンダ3に回転可能に挿通された単軸押出機1を想定したが、これに代えて、2本の押出機用スクリュ31がバレル32のシリンダ33に回転可能に挿通された二軸押出機34にも、本発明の技術思想が適用可能であり、同様の効果を実現することができる。
【0118】
図18には、二軸押出機34の一例が示されている。同図には、2本の押出機用スクリュ31のうち、一方の押出機用スクリュ31のみが示されている。他方の押出機用スクリュは、当該一方の押出機用スクリュ31の陰に隠れているため示されていない。
【0119】
二軸押出機34において、2本の押出機用スクリュ31は、互いに噛み合わせた状態で同方向に回転させることができる。上記した一実施形態と同様に、2本の押出機用スクリュ31にも、当該スクリュ31と一体となって回転するスクリュ本体11が設けられている。各押出機用スクリュ31を互いに噛み合わせた状態において、各スクリュ本体11相互間には、当該スクリュ本体11の基端から先端に向かって順に、移送部11a、溶融混合部11b、混練部11cが構成されている。
【0120】
移送部11aは、供給口5からシリンダ33内に供給された複数の材料6を、溶融混合部11bに向けて連続的に搬送する。移送部11aにおける各スクリュ本体11には、その外周面に、螺旋状のフライト35が連続して形成されている。フライト35は、供給口5からシリンダ33内に供給された各材料6を、移送部11aから溶融混合部11bに向けて連続的に搬送するように構成されている。このため、フライト35は、スクリュ本体11の回転方向とは逆方向にねじれている。
【0121】
溶融混合部11bは、移送部11aから搬送された各材料6を連続的に溶融して混合する。溶融混合部11bにおける各スクリュ本体11は、軸方向に沿って隣接した複数のディスク36を備えて構成されている。複数のディスク36は、隣り合うディスク36に位相差が与えられた状態で配置されている。
【0122】
混練部11cにおいて、各スクリュ本体11には、上記した一実施形態と同様に、搬送部22および障壁部23が軸方向に沿って交互に並べて配置されている。なお、バレル4において、シリンダ33の内面33sは、互いに噛み合わせた状態の2本の押出機用スクリュ31を共に収容し、かつ、同方向に同時に回転させることができるような形状に構成されている。その他の構成についての説明は、上記した一実施形態と同様であるため省略する。
【0123】
このような二軸押出機34によれば、2本の押出機用スクリュ31を、例えば回転数100rpm〜300rpmで同方向に回転させた状態において、供給口5からシリンダ33内に供給された複数の材料6は、移送部11aから溶融混合部11bに連続的に搬送される。溶融混合部11bにおいて、各材料6は、連続的に溶融および混合される。このとき、溶融および混合された材料6は、混練用原料となって、溶融混合部11bから混練部11cに搬送される。そして、搬送された原料は、上記した導入部15を介して混練部11cに導入された後、混練の度合いが高められた混練物となって、吐出口7から連続的に押し出される。
【0124】
ここで、二軸押出機34において、溶融混合部11bから導入部15に原料を送り出す搬送作用が不足する場合には、溶融混合部11bと導入部15の間に、原料送出機構を設けることが好ましい。原料送出機構としては、例えば、移送部11aに設けられているフライト35と同様のフライトが形成された筒体13を用意し、かかる筒体13を、溶融混合部11bと導入部15の間に挿入配置させればよい。これにより、溶融混合部11bから導入部15に原料を過不足なく送り出すことができる。
【0125】
なお、上記した実施形態において、本発明の技術思想(混練の度合いを向上させる押出技術)は、複数の材料6を混練する場合に適用させているが、これに限定されることはなく、1種類の材料を溶融した際に、微小な未溶融部分の発生を防止したり、樹脂温度の微小な不均一部分の発生を防止したりする場合にも適用される。
【符号の説明】
【0126】
2…押出機用スクリュ、10…軸線、11…スクリュ本体、11a…移送部、
11b…溶融混合部、11c…混練部、12…フライト、13…筒体、
13p…導入用筒体、14…回転軸、15…導入部、22…搬送部、23…障壁部、
24…吐出用搬送部、25,26…フライト、27…隙間、28…障壁用円環状体、
29…搬送路、37…通路、38…入口、39…通路本体、40…出口。
図1
図2
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図4
図5
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図10
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