(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1モードでは、前記出力電圧が前記第1所定値よりも小さい値である第2所定値よりも小さい場合には、前記一定であるON期間は前記可変であるON期間よりも短く、前記出力電圧が前記第2所定値よりも大きい場合には、前記一定であるON期間は前記可変であるON期間よりも長いことを特徴とする、請求項3又は4に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、公称電圧が12Vである鉛バッテリ等の二次電池と、公称電圧が数百Vであるリチウムイオンバッテリ等の高電圧蓄電池とを備えるハイブリッドカーに搭載される。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置は、DCDCコンバータ10と、DCDCコンバータ10の入力端に接続された直流電源である二次電池20と、DCDCコンバータ10の出力端に並列接続された容量負荷30(平滑コンデンサ)と、DCDCコンバータ10の出力端に設けられた接続端子40a、40bを含んでいる。二次電池20に蓄積された電力はDCDCコンバータ10により変圧され、接続端子40a、40bから出力される。接続端子40a、40bから入力された電力は、DCDCコンバータ10により変圧され、二次電池20に入力される。接続端子40a、40bには、図示しない高電圧蓄電池、電気負荷、発電機等が接続されており、二次電池20との間で電力の授受が可能となっている。
【0014】
DCDCコンバータ10は、チョークコイル11と、トランスTrと、ブリッジ回路14と、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2とを備えている。
【0015】
トランスTrは、互いに磁気的に結合した第1コイルL1と第2コイルL2とにより構成され、第1コイルL1は、センタータップ13を有している。第2コイルL2の巻数は、第1コイルL1の巻数のN/2倍である。すなわち、第2コイルL2の巻数が、第1コイルL1のいずれか一方の端からセンタータップ13までの巻数のN倍となっている。第2コイルL2は、ブリッジ回路14、及び、DCDCコンバータ10の出力端を介して、容量負荷30に接続されている。
【0016】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はMOSFETであり、第1コイルL1の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q1のソース、第2スイッチング素子Q2のソースに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のドレイン及び第2スイッチング素子Q2のドレインは、共に、所定接続点12に接続されている。所定接続点12には、チョークコイル11の出力端が接続され、チョークコイル11の入力端は、DCDCコンバータ10の入力端を介して二次電池20の正極に接続されている。また、第1コイルL1のセンタータップ13は、DCDCコンバータ10の入力端を介して、二次電池20の負極に接続されている。なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は、それぞれ、逆方向に並列接続された第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2を有している。
【0017】
ブリッジ回路14は、MOSFETである第3〜第6スイッチング素子Q3〜Q6及び、第3〜第6スイッチング素子Q3〜Q6のそれぞれに対して逆方向に並列接続された、第3〜第6寄生ダイオードD3〜D6により構成されている。第2コイルL2の端部の一方は、第3スイッチング素子Q3のソース及び第4スイッチング素子Q4のドレインに接続されている。第2コイルL2の端部の他方は、第5スイッチング素子Q5のソース及び第6スイッチング素子Q6のドレインに接続されている。第3スイッチング素子Q3のドレイン及び第5スイッチング素子Q5のドレインは、高圧側の出力端に接続されており、第4スイッチング素子Q4のソース及び第6スイッチング素子Q6のソースは、低圧側の出力端に接続されている。このブリッジ回路14では、第1コイルL1側から第2コイルL2側へと電力を供給する際には、第3〜第6寄生ダイオードD3〜D6により整流回路として機能し、第2コイルL2側から第1コイルL1側へと電力を供給する際には、第3〜第6スイッチング素子Q3〜Q6によりスイッチング回路として機能する。なお、ブリッジ回路14をスイッチング回路として機能させる際の制御については、公知のものであるため、説明を省略する。
【0018】
DCDCコンバータ10は、入力電圧検出手段15、出力電圧検出手段16、電流検出手段17、パルス生成部18、駆動回路19を備えている。入力電圧検出手段15は、例えば電圧センサであり、二次電池20からチョークコイル11へ入力される電圧である入力電圧Vinを検出する。出力電圧検出手段16は、例えば電圧センサであり、容量負荷30の電圧である出力電圧Vcを検出する。電流検出手段17は、例えば電流センサであり、チョークコイル11の電流を示すリアクトル電流ILを検出する。なお、出力電圧Vcは容量負荷30の電圧であるため、「容量負荷電圧」と称してもよい。
【0019】
入力電圧検出手段15が検出した入力電圧Vin、及び、出力電圧検出手段16が検出した出力電圧Vcは、パルス生成部18に入力される。パルス生成部18は、入力された入力電圧Vin及び出力電圧Vcに基づいて、第1スイッチング素子Q1の駆動信号である第1PWM信号、及び、第2スイッチング素子Q2の駆動信号である第2PWM信号を生成し、駆動回路19へ送信する。
【0020】
駆動回路19は、パルス生成部18から受信した第1PWM信号に基づいて第1スイッチング素子Q1を駆動し、第2PWM信号に基づいて第2スイッチング素子Q2を駆動する。
【0021】
本実施形態では、二次電池20に蓄積された電力により容量負荷30の充電を行う。この際に、DCDCコンバータ10は、電流入力型プッシュプルDCDCコンバータとして機能する。充電は、車両の電源がONとなった場合に、車両に搭載されているECU内で充電開始指令が生成され、開始される。一方、充電は、高電圧蓄電池の電圧に近い電圧を目標電圧とし、出力電圧Vcが目標電圧となるまで行われる。なお、目標電圧は、ECU内のメモリに記憶されている値を用いてもよいし、高電圧蓄電池の電圧の測定値に基づいて目標電圧を演算してもよい。なお、充電開始指令、及び目標電圧の値を、車両外部から取得する手段を採用することもできる。
【0022】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御は、制御周期の長さがTsである第1モード及び第2モードの一方により制御が行われる。第1モードでは、リアクトル電流ILの指令値として第1指令値Iref1を用いて制御を行い、第2モードでは、リアクトル電流ILの指令値として、第1指令値Iref1よりも大きい値である第2指令値Iref2を用いて制御を行う。第1モードと第2モードとの切り替えは、出力電圧Vcの値と、予め定められた値である第1所定値V1との大小関係に基づいて行われる。この第1所定値V1は、入力電圧Vinに巻数比Nを乗算した値よりも大きな値として定められている。なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとする期間を期間αとし、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の一方をONとし他方をOFFとする期間を期間βとし、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にOFFとする期間を期間γとする。
【0023】
図2は、第1モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の開閉状態と、そのときのリアクトル電流ILとを示している。第1モードでの制御では、第1スイッチング素子Q1のON期間T1bを例えば50%に固定し、第2スイッチング素子Q2のON期間T1aを第1スイッチング素子Q1のON期間よりも短くする。また、第1スイッチング素子Q1のON期間の始期を第2スイッチング素子Q2のON期間の始期とは、同じである。こうすることにより、期間αと期間βと期間γとが、順に繰り返されることとなる。
【0024】
第1モードでは、まず、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとし、リアクトル電流ILが第1指令値Iref1となった際に、第2スイッチング素子Q2をOFFとする。続いて、1/2制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q1をOFFとする。この第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にOFFとする期間は、次の制御周期まで継続される。なお、期間αでのリアクトル電流ILの時間当たりの変化量であるdIL/dtは、次式(1)で表され、期間βでのリアクトル電流ILの時間当たりの変化量であるdIL/dtは、次式(2)で表される。
【0025】
【数1】
図3は、第2モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の開閉状態と、そのときのリアクトル電流ILとを示している。第2モードの制御では、期間αと期間βとを交互に繰り返す制御を行う。第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御周期は共にTsであり、位相差は1/2Tsである。また、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON期間T2は、1/2制御周期よりも大きい値に設定される。各制御周期の始期において、それぞれON制御が開始され、OFF制御を開始する時期を可変とすることにより、リアクトル電流ILの平均値IL_aveが第2指令値Iref2となるように制御する。
【0026】
ところで、期間αにおける電流の増加量と、期間βにおける電流の減少量が等しければ、リアクトル電流ILの過剰な増加を抑制することができる。期間αと期間βの長さの比を1未満の数であるDを用いて、D:(1−D)とすると、次式(3)が成立し、次式(4)によりDが求まる。
【0027】
【数2】
加えて、第2モードでは、低調波発振を抑制すべく、リアクトル電流ILにスロープ電流Isを加算した値が補正指令値Iref2*となるように、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2をOFFとするタイミングを制御する。このスロープ電流Isは、直線的に増加する、仮想的な値である。なお、スロープ電流Isのその時間当たりの増加量をmとしている。このとき、補正指令値Iref2*は次式(5)で算出することができる。
【0028】
【数3】
続いて、パルス生成部18が実行する処理を、
図4の制御ブロック図により説明する。定電流制御部50では、第1モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第1指令値Iref1と、第2モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第2指令値Iref2とを、メモリから読み出して制御に用いる。
【0029】
第1指令値Iref1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONである状態から、共にOFFである状態へと遷移した場合に、第1指令値Iref1の値に基づいて発生するアバランシェ電流が過剰とならないように、設定されている。この第1指令値Iref1は、そのまま、定電流制御部50から出力される。第2指令値Iref2は第1指令値Iref1と同じ値でもよく、異なる値でもよい。
【0030】
第2指令値Iref2は、フィードバック制御部53に入力される。この第2指令値Iref2は、第1指令値Iref1よりも十分に大きい値としている。フィードバック制御部53は、加えて、リアクトル電流ILの実電流である平均値IL_aveを取得する。この平均値IL_aveは、電流検出手段17により検出されたリアクトル電流ILを所定期間蓄積し、その値を平均化したものである。第2指令値Iref2と平均値IL_aveは加算部54に入力され、加算部54は、第2指令値Iref2と平均値IL_aveの差分をとる。この差分はPI制御器55に入力され、リミッタ56へ入力される。このリミッタ56では、PI制御器55の出力値が上限値よりも大きければ、その出力値を上限値に制限する。リミッタ56からの出力値は、加算器57において第2指令値Iref2に加算され、フィードバック制御部53から出力される。
【0031】
一方、電流補正部58には、入力電圧Vin及び出力電圧Vcが入力され、第2指令値Iref2の補正量を出力する。この補正値は上式(5)に基づくものであり、加算器59で第2指令値Iref2に加算されることにより、補正指令値Iref2*が得られる。
【0032】
定電流制御部50から出力された第1指令値Iref1、補正指令値Iref2*は、モード選択部60に入力される。モード選択部60には、さらに、出力電圧Vcも入力され、その出力電圧Vcと、第1所定値V1とを比較する。そして、第1指令値Iref1及び補正指令値Iref2*のいずれを出力するかを決定して出力する。
【0033】
モード選択部60から出力された第1指令値Iref1、補正指令値Iref2*の一方は、ピーク電流制御部70に入力され、DA変換器71においてアナログ値に変換され、コンパレータ72のマイナス端子に入力される。
【0034】
一方、ピーク電流制御部70のスロープ補償部73は、レジスタの値により得られるスロープ電流Isの値を信号として生成し、DA変換器74に入力する。このスロープ電流Isは、上述した通り、各制御周期において0Aから直線的に単調増加する鋸歯状波の信号である。そして、DA変換器74によりアナログ波形とされたスロープ電流Isとリアクトル電流ILとを、加算部75において加算して、コンパレータ72のプラス端子に入力する。なお、スロープ補償部73は、直接アナログ波形を生成し、DA変換器74を介さずコンパレータ72に入力するものとしてもよい。
【0035】
このスロープ補償部73は、第1モードでは、スロープ電流Isの値をゼロとし、第2モードでは、上述した鋸歯状波のスロープ電流Isを出力するものとしている。これは、第1モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にOFFとするタイミングにおいて、リアクトル電流ILがゼロとなり、その結果として低調波発振現象が発生しないためである。
【0036】
コンパレータ72は、マイナス端子に入力された、第1指令値Iref1及び補正指令値Iref2*の一方と、プラス端子に入力された、リアクトル電流ILにスロープ電流Isが加算された値との比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも小さい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力し、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ77のR端子には、クロック76からクロック信号が入力される。
【0037】
RSフリップフロップ77は、第1モードにおいて、入力された信号がハイ状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする信号を送信する。入力された信号がロー状態の信号であれば、制御周期の半周期まで、すなわち、Duty値が50%となるまでは、第1スイッチング素子Q1をONとし、第2スイッチング素子Q2をOFFとする信号を出力する。そしてDuty値が50%を超えれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を共にOFFとする信号を出力する。なお、入力された信号がロー状態の信号である場合において、Duty値が50%となるまで第1スイッチング素子Q1をONとする制御を、Duty制限部78により処理により行ってもよい。
【0038】
RSフリップフロップ77は、第2モードにおいて、入力された信号がハイ状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする信号を送信する。入力された信号がロー状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方をONとし、他方をOFFとする信号を出力する。
【0039】
RSフリップフロップ77の出力は、Duty制限部78によってDuty値の上限値及び下限値を設定された上で、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を駆動する駆動回路19に出力される。具体的には、第1モードでは、上述したとおり、第1スイッチング素子Q1のDuty値を50%としている。このため、第2モードでは、第2スイッチング素子Q2のDuty値が第1スイッチング素子Q1のDuty値よりも大きくならないように、上限値を設定する。第2モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のON期間とが重なる期間が生ずるように、Duty値の下限値を50%よりも大きい値とする。
【0040】
続いて、パルス生成部18が実行する一連の処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。
【0041】
まず、起動要求を取得したか否かを判定する(S101)。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。起動要求を取得していない場合(S101:NO)、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
【0042】
起動要求を取得すれば(S101:YES)、出力電圧Vcを取得し(S102)、その出力電圧Vcが第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S103)。出力電圧Vcが第1所定値V1以下であれば(S103:YES)、第1モードでの制御を行う(S104)。出力電圧Vcが第1所定値V1以下でなければ(S103:NO)、第2モードで制御を行う(S105)。
【0043】
第1モード及び第2モードの一方の制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S106)。S106の処理では、例えば、出力電圧Vcを取得し、その出力電圧Vcが所定の上限値以上となったか否かを判定すればよい。なお、出力電圧Vcが所定の上限値以上となったか否かの判定は、S103で否定的な判定がなされた後に行うものとしてもよい。制御を終了すると判定した場合(S106:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合(S106:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S107)。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得すれば(S107:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S107:NO)、S102以降の処理を再度実行する。
【0044】
なお、
図5のフローチャートでは、容量負荷30への充電制御に関する制御のみを示しているが、DCDCコンバータ10は容量負荷30への充電制御以外の電力変換も行う。例えば、接続端子40a,40bを介して供給される電力を降圧し、二次電池20への充電を行う制御が挙げられる。その制御は、周知の制御であるため、説明を省略する。
【0045】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、以下の効果を奏する。
【0046】
・出力電圧Vcが第1所定値V1よりも小さい場合において、第1モードの制御を行うことにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のいずれか一方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γとを設けている。そのため、期間γでチョークコイル11の電流を減少させることができる。よって、チョークコイル11に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができ、ひいては、DCDCコンバータ10の劣化及び故障を抑制することができる。
【0047】
・容量負荷30への充電が進行した場合等、出力電圧Vcが第1所定値V1より大きくなった場合には、第2モードの制御を行うことにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のいずれか一方がONである期間βを設けている。したがって、期間αにおいてチョークコイル11に流れる電流を増加させることができ、期間βにおいて、チョークコイル11に流れる電流を減少させることにより、充電が進行した容量負荷30への充電を迅速に行うことができる。
【0048】
・ピーク電流制御部70において、定電流制御部50から入力された第1指令値Iref1、及び補正指令値Iref2*を用いて定電流制御を行っている。これにより、入力電圧Vinに変化が生じた場合等において、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
【0049】
・第1モードにおいて、一方のスイッチング素子のDuty値を固定し、ピーク電流制御を、他方のスイッチング素子のON期間を変更することにより行っている。そのため、2つのスイッチング素子Q1,Q2のDuty値を共に変更する場合と比べて制御を簡略化することができる。ひいては、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
【0050】
・第1モードにおいて、固定したDuty値を50%以下としているため、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γを十分に長くとることができる。ゆえに、期間γにおいて、トランスTrに流れる励磁電流を十分に減少させることができ、トランスTrの偏磁、飽和を抑制することができる。
【0051】
・第1モードの第1指令値Iref1と、第2モードの第2指令値Iref2とを、乖離した値としている。これにより、第1モードでは、リアクトル電流ILが過剰とならない。ゆえに、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にOFFとした場合に、リアクトル電流ILに基づいて生ずるアバランシェ電流が過度に大きくならず、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の故障及び劣化を抑制することができる。加えて、第2モードでは第2指令値Iref2をより大きな値とすることにより、充電時間を短縮することができる。
【0052】
<第2実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、回路構成は第1実施形態と同様であり、制御が一部異なっている。
【0053】
本実施形態では、第1モードにおける制御について、第1所定値V1よりも小さい値である第2所定値V2と出力電圧Vcとを比較し、出力電圧Vcが第2所定値V2よりも小さい場合には、制御を一部変更する。第2所定値V2は、本実施形態における、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の開閉状態、及び、リアクトル電流ILを、
図6に示す。なお、第2所定値V2は、入力電圧Vinに巻数比Nを乗算した値よりも小さい値として設定されている。すなわち、出力電圧Vcが第2所定値よりも小さければ、期間βにおいてリアクトル電流ILが増加することを意味している。
【0054】
図6(a)は出力電圧Vcが第2所定値V2よりも小さい場合を示している。第2所定値は、この場合には、第2スイッチング素子Q2のON期間の長さを固定し、第1スイッチング素子のON期間の長さを第2スイッチング素子Q2のON期間よりも長くする。そして、第1スイッチング素子Q1のOFFタイミングを制御することで、そのOFFタイミングにリアクトル電流ILが第3指令値Iref3となるようにする。なお、第3指令値Iref3は、期間αにおけるリアクトル電流ILの増加量よりも小さい値に設定される。
【0055】
図6(b)及び(c)は、出力電圧Vcが第2所定値V2よりも大きく、第1所定値V1よりも小さい場合を示している。
図6(b)は、特に、入力電圧Vinと、出力電圧Vcを巻数比Nで除算した値とが等しい場合を示しており、
図6(c)は、入力電圧Vinが、出力電圧Vcを巻数比Nで除算した値よりも小さい場合を示している。この場合には、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1のON期間を50%に固定し、第2スイッチング素子Q2のON期間を制御することにより、第2スイッチング素子Q2をOFFとするタイミングで、リアクトル電流ILが第1指令値Iref1となるようにする。
【0056】
なお、出力電圧Vcが第2所定値V2よりも小さい場合でも、期間αの制御と、期間βの制御と、期間γの制御とが交互に繰り返されるため、この場合も第1モードということもできるが、便宜上、第3モードと称することとする。
【0057】
続いて、パルス生成部18が実行する一連の処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
図7のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。
【0058】
まず、起動要求を取得したか否かを判定する(S201)。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。起動要求を取得していない場合(S201:NO)、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
【0059】
起動要求を取得すれば(S201:YES)、出力電圧Vcを取得し(S202)、その出力電圧Vcが第2所定値V2以下であるか否かを判定する(S203)。出力電圧Vcが第2所定値V2以下であれば(S203:YES)、第3モードでの制御を行う(S204)。出力電圧Vcが第2所定値V2以下でなければ(S203:NO)、出力電圧Vcが第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S205)。出力電圧Vcが第1所定値以下であれば(S205:YES)、第1モードで制御を行う(S206)。出力電圧Vcが第1所定値V1以下でなければ(S205:NO)、第2モードの処理を行う。
【0060】
第1モード、第2モード及び第3モードのいずれかの制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S208)。S208の処理では、例えば、出力電圧Vcを取得し、その出力電圧Vcが所定の上限値以上となったか否かを判定すればよい。制御を終了すると判定した場合(S208:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合(S208:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S209)。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得すれば(S209:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S209:NO)、S202以降の処理を再度実行する。
【0061】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、以下の効果を奏する。
【0062】
・出力電圧Vcが小さい場合には、期間βにおいてもリアクトル電流ILが増加する。このとき、期間αの終了時点でのリアクトル電流ILを指令値とすべく制御を行えば、期間βの終了時に生ずるアバランシェ電流が過剰なものとなる。上記構成では、出力電圧Vcが第2所定値V2よりも小さい場合に第3モードで制御しているため、アバランシェ電流を抑制することができる。
【0063】
<第3実施形態>
本実施形態は、パルス生成部18が実行する処理が一部異なっている。
図8は、本実施形態における、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の開閉状態及び、リアクトル電流ILを示している。
【0064】
本実施形態では、第1スイッチング素子Q1の制御と第2スイッチング素子Q2の制御とを交互に入れ替えている。こうすることにより、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の負荷を均等とすることができる。
【0065】
<第4実施形態>
図9は、実施形態に係る電力変換装置の回路図を示している。本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置と同様に、DCDCコンバータ10と、DCDCコンバータ10の入力端に接続された直流電源である二次電池20と、DCDCコンバータ10の出力端に並列接続された容量負荷30(平滑コンデンサ)と、DCDCコンバータ10の出力端に設けられた接続端子40a、40bとを含んでいる。
【0066】
DCDCコンバータ10は、チョークコイル11と、トランスTrと、ブリッジ回路14と、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2とを備えている。
【0067】
トランスTrは、互いに磁気的に結合した第1コイルL1と第2コイルL2とにより構成され、第1コイルL1は、センタータップ13を有している。第2コイルL2は、ブリッジ回路14、及び、DCDCコンバータ10の出力端を介して、容量負荷30に接続されている。
【0068】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はMOSFETであり、第1コイルL1の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q1のドレイン、第2スイッチング素子Q2のドレインに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のソース及び第2スイッチング素子Q2のソースは、共に、所定接続点12に接続されている。また、所定接続点12は、DCDCコンバータ10の入力端を介して、二次電池20の負極に接続されている。チョークコイル11の入力端は、DCDCコンバータ10の入力端を介して二次電池20の正極に接続され、チョークコイル11の出力端は、センタータップ13に接続されている。なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は、それぞれ、逆方向に並列接続された第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2を有している。
【0069】
本実施形態に係る電力変換装置では、第1〜3実施形態に係る電力変換装置の制御と同様の制御が行われる。そして、第1〜3実施形態に係る電力変換装置と同様の効果を奏する。
【0070】
<変形例>
・上記各実施形態では、第1モードにおいて各制御周期の始期に第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとしているが、一方のみをONとした後に、他方もONとしてもよい。この場合でも、期間αと期間βと期間γの制御を順に実行する期間を含むということができる。
【0071】
・第1モードの制御を行ううえで、第1指令値Iref1を入力電圧Vin及び出力電圧Vcを用いて補正し、その補正した値によりピーク電流制御を行うものとしてもよい。
図2に示すように、期間βでは、入力電圧Vinと出力電圧Vcとの関係により、第1スイッチング素子Q1をOFFとするタイミングにおけるリアクトル電流ILの値は変化する。そのため、出力電圧Vcが小さいほどアバランシェ電流が大きくなる。したがって、このアバランシェ電流が過剰なものとならないように、出力電圧Vcが小さいほど、第1指令値Iref1を小さくする補正を行うものとすればよい。
【0072】
・第1モードの制御を行ううえで、期間βの終了時点でのリアクトル電流ILが指令値となるようにしてもよい。この場合には、第1スイッチング素子Q1のON期間が固定されているため、期間αにおけるリアクトル電流ILの増加量と期間βにおけるリアクトル電流ILの増加量とにより、第2スイッチング素子Q2のOFFタイミングを算出するものとすればよい。こうすることで、アバランシェ電流を一定とすることができ、回路への負荷を抑制することができる。
【0073】
・上記各実施形態において、ピーク電流制御を行うものとしたが、各モードにおけるDuty値を予め定めておき、そのDuty値で制御するものとしてもよい。
【0074】
・上記各実施形態において、電力変換装置がハイブリッドカーに備えられるものとしたが、ハイブリッドカー以外においても適用可能である。また、DCDCコンバータ10を、双方向に電力の授受を可能なものとしたが、第1コイルL1側から第2コイルL2側への電力の供給のみが可能なものとしてもよく、その場合には、ブリッジ回路14をダイオードブリッジ回路とすればよい。