(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料汚染防止装置において、冷媒タンクに充填された極低温液体は、時間の経過に伴い蒸発し、最終的には無くなる。冷媒タンクに充填された極低温液体が無くなるとフィンの温度は急激に上昇し、フィンに吸着していたガス分子が大量に放出されるため、鏡筒内の真空度が急激に悪化する。これにより、鏡筒内を真空排気するイオンスパッタポンプがダメージを受けて動作できなくなることがあり、場合によってはイオンスパッタポンプが壊れてしまうことがある。
【0006】
そのため、ユーザーは、試料汚染防止装置を使用して電子顕微鏡で観察や分析を行った後に、フィンの温度を室温以上に戻す操作を行わなければならなかった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に省エネルギー化を図ることができる電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る電子顕微鏡は、
電子線源と、
鏡筒内に配置された電子レンズと、
前記鏡筒内に配置され、吸着部材を冷却して試料を汚染する物質を吸着させる冷却部と、
前記吸着部材を加熱する加熱部と、
検出室に配置され、前記試料を透過した電子線を検出する検出部と、
前記鏡筒内に第1仕切り弁を介して接続されている第1真空排気装置と、
前記検出室に接続されるとともに、前記鏡筒内に第2仕切り弁を介して接続されている第2真空排気装置と、
前記電子レンズがオンとなる第1モードから前記電子レンズがオフとなる第2モードに切り替える制御を行う制御部と、
を含み、
前記第2真空排気装置は、前記第1真空排気装置よりも高い圧力で動作可能であり、
前記制御部は、前記第1モードから前記第2モードに切り替える制御において、
前記第1仕切り弁を閉じ、かつ、前記第2仕切り弁を開いて、前記鏡筒内を前記第2真空排気装置で真空排気する処理と、
前記鏡筒内を前記第2真空排気装置で真空排気する処理の後に、前記加熱部を制御して前記吸着部材を加熱する処理と、
前記吸着部材を加熱する処理の後に、前記第1仕切り弁を開き、かつ、前記第2仕切り弁を閉じて、前記鏡筒内を前記第1真空排気装置で真空排気する処理と、
前記電子レンズをオフにする処理と、
を行う。
【0009】
このような電子顕微鏡では、制御部が第1モードから第2モードに切り替える制御において加熱部を制御して吸着部材を加熱する処理を行うため、容易に省エネルギー化を図ることができる。また、このような電子顕微鏡では、吸着部材を加熱する際には、鏡筒内が第2真空排気装置で真空排気されるため、大量に発生したガスにより第1真空排気装置がダメージを受けることを防ぐことができる。
【0010】
(2)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記制御部は、さらに、設定された日時に前記第2モードから前記第1モードに切り替える制御を行ってもよい。
【0011】
このような電子顕微鏡では、制御部が設定された日時に第2モードから第1モードに切り替える制御を行うため、ユーザーの労力を低減することができる。
【0012】
(3)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記制御部は、前記第2モードから前記第1モードに切り替える制御において、前記電子レンズを予め設定されたレンズ条件で動作させる処理を行ってもよい。
【0013】
このような電子顕微鏡では、制御部が第2モードから第1モードに切り替える制御において、電子レンズを予め設定されたレンズ条件で動作させる処理を行うため、ユーザーの労力を低減できる。
【0014】
(4)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記制御部は、前記第1モードから前記第2モードに切り替える制御において、前記鏡筒内を前記第1真空排気装置で真空排気する処理の後に、前記第2真空排気装置をオフにする処理を行ってもよい。
【0015】
このような電子顕微鏡では、例えば第2真空排気装置をオフにする処理を行わない場合と比べて、より省エネルギー化を図ることができる。
【0016】
(5)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記第1真空排気装置は、スパッタイオンポンプであり、
前記第2真空排気装置は、油拡散ポンプまたはターボ分子ポンプであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1. 電子顕微鏡
まず、本実施形態に係る電子顕微鏡について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100を模式的に示す図である。
【0020】
電子顕微鏡100は、透過電子顕微鏡である。すなわち、電子顕微鏡100は、試料Sを透過した電子で結像して、透過電子顕微鏡像(TEM像)を得る装置である。
【0021】
電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子線源10と、集束レンズ12と、対物レンズ14と、試料ステージ16と、試料ホルダー17と、中間レンズ18と、投影レンズ20と、検出部22と、冷却部24と、加熱部26と、第1真空排気装置30と、補助ポンプ32と、第2真空排気装置40と、補助ポンプ42と、第1仕切り弁50と、第2仕切り弁52と、制御部60と、を含む。
【0022】
電子線源10は、電子線を発生させる。電子線源10は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する。図示の例では、電子線源10から放出された電子線は、電子線源10としては、例えば、公知の電子銃を用いることができる。
【0023】
集束レンズ(コンデンサーレンズ)12は、電子線源10の後段(電子線の下流側)に配置されている。集束レンズ12は、電子線源10で発生した電子線を集束して試料Sに照射するためのレンズである。
【0024】
対物レンズ14は、集束レンズ12の後段に配置されている。対物レンズ14は、試料Sを透過した電子線で結像するための初段のレンズである。対物レンズ14は、図示はしないが、上部磁極(ポールピースの上極)、および下部磁極(ポールピースの下極)を有している。対物レンズ14では、上部磁極と下部磁極との間に磁場を発生させて電子線を集束させる。
【0025】
試料ステージ16は、試料Sを保持する。図示の例では、試料ステージ16は、試料ホルダー17を介して、試料Sを保持している。試料ステージ16は、例えば、対物レンズ14の上部磁極と下部磁極との間に試料Sを位置させる。試料ステージ16は、試料ホルダー17を移動および静止させることができ、試料Sの位置決めを行うことができる。
【0026】
中間レンズ18は、対物レンズ14の後段に配置されている。投影レンズ20は、中間レンズ18の後段に配置されている。中間レンズ18および投影レンズ20は、対物レンズ14によって結像された像をさらに拡大し、検出部22に結像させる。電子顕微鏡100では、対物レンズ14、中間レンズ18、および投影レンズ20によって、結像系が構成されている。
【0027】
検出部22は、試料Sを透過した電子を検出する。検出部22によって、結像系によっ
て結像された透過電子顕微鏡像(TEM像)を撮影することができる。検出部22は、例えば、CCDカメラや、CMOSカメラ等のデジタルカメラである。
【0028】
冷却部24は、冷却フィン(吸着部材の一例)242を冷却して、炭化水素分子等の試料Sを汚染する物質(ガス分子)を吸着させる。冷却部24は、冷却フィン242と、熱伝導部材244と、冷媒タンク246と、を有している。冷却フィン242は、鏡筒2内に配置されている。冷却フィン242は、試料ホルダー17に保持された試料Sの近傍に配置されている。冷却フィン242は、熱伝導部材244を介して冷媒タンク246に熱的に接続されている。冷媒タンク246に液体窒素や液体ヘリウムなどの極低温液体を充填することで、冷却フィン242が冷却される。冷却フィン242を冷却することにより、炭化水素分子等の試料Sを汚染する物質を冷却フィン242に吸着させることができる。したがって、試料Sの汚染を防止することができる。冷却部24は、試料Sが汚染されることを防止するための試料汚染防止装置として機能する。
【0029】
なお、ここでは、試料Sを汚染する物質を吸着させる吸着部材として冷却フィン242を有している例について説明したが、冷却部24の吸着部材は試料Sを汚染する物質を吸着させることができればその形状は特に限定されない。冷却部24の吸着部材は、棒状の部材や、板状の部材等であってもよい。
【0030】
加熱部26は、冷却フィン242を加熱する。加熱部26は、冷却フィン242のガス出し操作を行う際に、冷却フィン242を加熱するために用いられる。ここで、ガス出し操作とは、冷却フィン242に吸着したガス分子(炭化水素分子等)を排除するための処理である。ガス出し操作では、冷却フィン242を加熱部26で加熱して、冷却フィン242に吸着したガス分子を脱着させる。加熱部26は、例えば、ヒーターと、ヒーターで発生した熱を冷却フィン242に伝達するための熱伝導部材と、を含んで構成されている。
【0031】
電子顕微鏡100では、集束レンズ12、冷却フィン242、対物レンズ14、中間レンズ18、投影レンズ20は、鏡筒2内に配置されている。また、試料Sは、試料ホルダー17によって、鏡筒2内に導入される。また、電子顕微鏡100では、検出部22は、検出室(カメラ室)4に配置されている。
【0032】
第1真空排気装置30は、第1仕切り弁50を介して鏡筒2内に接続されている。第1真空排気装置30は、鏡筒2内に連通する排気管51に接続されている。排気管51には、第1仕切り弁50が設けられている。
【0033】
第1真空排気装置30は、例えば、スパッタイオンポンプである。スパッタイオンポンプは、チタンのゲッター作用を利用した真空ポンプである。スパッタイオンポンプは、油や水を使用しない真空排気系を構成することができるため、鏡筒2内の排気に好適である。第1真空排気装置30には、補助ポンプ32が接続されている。補助ポンプ32としては、油回転ポンプやスクロールポンプなどを用いることができる。
【0034】
第2真空排気装置40は、検出室4に接続されるとともに、鏡筒2内に第2仕切り弁52を介して接続されている。第2真空排気装置40は、検出室4に連通する排気管53に接続されている。排気管53と排気管51とは、排気管54で接続されている。そのため、第2真空排気装置40は、排気管53、排気管54、および排気管51を介して、鏡筒2内に接続されている。排気管54には、第2仕切り弁52が設けられている。第2仕切り弁52を開くことで、鏡筒2内を第2真空排気装置40で真空排気することができる。
【0035】
第2真空排気装置40は、第1真空排気装置30よりも高い圧力で動作可能なポンプで
ある。すなわち、第2真空排気装置40は、第1真空排気装置30よりも急激なガスの増加に対して対応することができるポンプである。第2真空排気装置40は、例えば、油拡散ポンプ、またはターボ分子ポンプである。油拡散ポンプは、油を高温に加熱し、油蒸気をノズルから高速に吹き出させ、その噴流の勢いにのせて気体分子を輸送するポンプである。また、ターボ分子ポンプは、高速で回転するローターにより気体分子に排気方向の運動量を与え、気体分子を排気する機械ポンプである。第2真空排気装置40には、補助ポンプ42が接続されている。補助ポンプ42としては、油回転ポンプやスクロールポンプなどを用いることができる。
【0036】
なお、図示はしないが、電子顕微鏡100には、試料Sに電子線が照射されて試料Sから放出された特性X線を検出するエネルギー分散型X線検出装置(EDS)や、試料Sを透過した電子(非弾性散乱電子)のエネルギーを分光する電子エネルギー損失スペクトル分光装置(EELS)等の分析装置が搭載されていてもよい。
【0037】
制御部60は、電子レンズ12,14,18,20や、真空排気装置30,40、補助ポンプ32,42、仕切り弁50,52等の電子顕微鏡100を構成している部材を制御する処理を行う。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)が記憶部(図示せず)等に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、各種制御を行う。また、制御部60は、専用回路により実現して各種制御を行うようにしてもよい。制御部60は、時間を計測するためのタイマーを有していてもよい。
【0038】
制御部60は、電子顕微鏡100が検鏡状態となる第1モードから、電子顕微鏡100が省エネルギー状態となる第2モードに切り替える制御を行う。また、制御部60は、第2モードから第1モードに切り替える制御を行う。
【0039】
電子顕微鏡100が検鏡状態にある場合、試料Sの観察や分析が可能となる。また、検鏡状態では、冷却部24によって試料Sの汚染が防止されている。具体的には、冷媒タンク246に液体窒素や液体ヘリウムなどの極低温液体を充填され、冷却フィン242が冷却されている。
【0040】
電子顕微鏡100が検鏡状態となる第1モードでは、制御部60は、電子レンズ12,14,18,20、真空排気装置30,40、補助ポンプ32,42をオン状態(動作状態)にする。また、第1モードでは、制御部60は、第1仕切り弁50が開き、かつ第2仕切り弁52が閉じた状態とする。すなわち、第1モードでは、第1真空排気装置30が鏡筒2内を真空排気し、第2真空排気装置40が検出室4を真空排気する。
【0041】
電子顕微鏡100が省エネルギー状態にある場合、電子顕微鏡100では、少なくとも電子レンズ12,14,18,20がオフ状態(停止状態)となる。また、省エネルギー状態では、第2真空排気装置40および補助ポンプ42がオフ状態となっていてもよい。また、省エネルギー状態では、さらに、電子線源10がオフ状態となっていてもよい。
【0042】
電子顕微鏡100が省エネルギー状態となる第2モードでは、制御部60は、電子レンズ12,14,18,20をオフ状態とする。また、第2モードでは、制御部60は、第2真空排気装置40および補助ポンプ42をオフ状態としてもよい。この場合、鏡筒2内は第1真空排気装置30で真空排気されるが、検出室4は真空排気されない。また、第2モードでは、制御部60は、さらに、電子線源10をオフ状態としてもよい。
【0043】
制御部60では、予め設定された内容に基づき、電子顕微鏡100の制御を行う。例えば、制御部60では、第1モードから第2モードに切り替える制御を行う際に冷却フィン
242のガス出し操作を行うか否かや、第2モードから第1モードに切り替える制御を実行する日時、第2モードから第1モードに切り替えたときの電子レンズ12,14,18,20の状態(倍率やスポットサイズ等)等を設定可能である。電子顕微鏡100は、ユーザーがこれらの条件を入力するためのタッチパネルディスプレイや、キーボード、マウスなどの操作部(図示せず)を備えており、操作部の操作情報に基づき上記の条件が記憶部に記録され、上記の条件が設定される。
【0044】
制御部60における第1モードから第2モードに切り替える制御、および第2モードから第1モードに切り替える制御について、以下に説明する。
【0045】
2. 第1モードから第2モードに切り替える制御
まず、第1モードから第2モードに切り替える制御について説明する。
図2は、第1モードから第2モードに切り替える制御の流れの一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、第1モードから第2モードに切り替える制御を行う際に、冷却フィン242のガス出し操作を行うことが予め設定されている場合について説明する。
【0046】
電子顕微鏡100が検鏡状態にある場合に、ユーザーが操作部を介して省エネルギー状態への切り替えを要求すると、制御部60は操作部からの操作信号を受け付けて、第1モードから第2モードへ切り替える制御を開始する。
【0047】
まず、制御部60は、冷却フィン242に吸着したガス分子を排除するためのガス出し操作を行う(ステップS100〜ステップS110)。
【0048】
制御部60は、まず、第1仕切り弁50を閉じ、かつ、第2仕切り弁52を開く(ステップS100)。これにより、第1真空排気装置30で真空排気されていた鏡筒2内は、第2真空排気装置40で真空排気される。
【0049】
次に、制御部60は、第1真空排気装置30をオフにする(ステップS102)。これにより、第1真空排気装置30の動作が停止する。
【0050】
次に、制御部60は、加熱部26を制御して、冷却フィン242の加熱を開始する(ステップS104)。制御部60は、例えば、予め設定された時間だけ加熱部26を動作させる。これにより、冷却フィン242を室温以上まで上昇させることができる。加熱部26が冷却フィン242を加熱することにより、冷却フィン242に吸着していたガス分子が放出されて鏡筒2内にガスが発生する。このガスは、第2真空排気装置40で排気される。また、冷媒タンク246に充填されていた極低温液体は、冷却フィン242が加熱されている間に減少し、最終的に無くなる。
【0051】
そして、制御部60は、予め設定された時間が経過すると、加熱部26の動作を停止させる(ステップS106)。すなわち、制御部60は、加熱部26を制御して、予め設定された時間だけ冷却フィン242を加熱する。
【0052】
なお、制御部60は、冷却フィン242の温度の測定結果に基づいて、加熱部26を停止させてもよい。例えば、電子顕微鏡100が冷却フィン242の温度を測定するための温度測定装置を備えており、制御部60は温度測定装置から出力される測定結果の情報に基づき冷却フィン242の温度が室温以上になったか否かを判断する。そして、制御部60は、冷却フィン242の温度が室温以上になったと判断された場合に、加熱部26の動作を停止させる。
【0053】
次に、制御部60は、第1真空排気装置30をオンにする(ステップS108)。これ
により、第1真空排気装置30が動作状態となる。
【0054】
次に、制御部60は、第1仕切り弁50を開き、かつ、第2仕切り弁52を閉じる(ステップS110)。これにより、第2真空排気装置40で真空排気されていた鏡筒2内が第1真空排気装置30で真空排気される。
【0055】
以上の処理により、ガス出し操作を行うことができる。
【0056】
次に、制御部60は、第2真空排気装置40をオフにする(ステップS112)。これにより、第2真空排気装置40の動作が停止する。
【0057】
次に、制御部60は、第2真空排気装置40に接続されている補助ポンプ42をオフにする(ステップS114)。これにより、補助ポンプ42の動作が停止する。
【0058】
次に、制御部60は、電子レンズ12,14,18,20をオフにする(ステップS116)。これにより、電子レンズ12,14,18,20の動作が停止する。
【0059】
以上の処理により、第1モードから第2モードに切り替えることができる。これにより、電子顕微鏡100は、省エネルギー状態となる。
【0060】
3. 第2モードから第1モードに切り替える制御
次に、第2モードから第1モードに切り替える制御について説明する。
図3は、第2モードから第1モードに切り替える制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
電子顕微鏡100が省エネルギー状態にある場合において、制御部60は、予め設定された日時になると第2モードから第1モードへ切り替える制御を開始する。
【0062】
制御部60は、まず、第2真空排気装置40に接続された補助ポンプ42をオンにする(ステップS200)。これにより、補助ポンプ42が動作状態となる。
【0063】
次に、制御部60は、第2真空排気装置40をオンにする(ステップS202)。これにより、検出室4が第2真空排気装置40で真空排気される。
【0064】
次に、制御部60は、電子レンズ12,14,18,20をオンにする(ステップS204)。これにより、電子レンズ12,14,18,20が動作状態となる。なお、ステップS200、ステップS202、ステップS204の順序は特に限定されない。
【0065】
次に、制御部60は、電子レンズ12,14,18,20を予め設定されたレンズ条件で動作させる(ステップS206)。例えば、ユーザーによって予め観察倍率やスポットサイズ(電子ビームの量)等のレンズ条件が設定されていた場合には、設定されたレンズ条件となるように各電子レンズ12,14,18,20が制御される。
【0066】
以上の処理により、第2モードから第1モードに切り替えることができる。これにより、電子顕微鏡100は、検鏡状態となる。
【0067】
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特長を有する。
【0068】
電子顕微鏡100では、制御部60は、少なくとも電子レンズ12,14,18,20がオンとなる第1モードから少なくとも電子レンズ12,14,18,20がオフとなる第2モードに切り替える制御において、第1仕切り弁50を閉じ、かつ、第2仕切り弁5
2を開いて、鏡筒2内を第2真空排気装置40で真空排気する処理と、第2真空排気装置40で鏡筒2内を真空排気する処理の後に、加熱部26を制御して冷却フィン242を加熱する処理と、冷却フィン242を加熱する処理の後に、第1仕切り弁50を開き、かつ、第2仕切り弁52を閉じて、鏡筒2内を第1真空排気装置30で真空排気する処理と、電子レンズ12,14,18,20をオフにする処理と、を行う。このように、電子顕微鏡100では、制御部60が第1モードから第2モードに切り替える制御において加熱部26を制御して冷却フィン242を加熱する処理を行う。そのため、ユーザーがガス出し操作を行う必要がなく、ユーザーの労力を低減することができる。したがって、電子顕微鏡100では、容易に電子顕微鏡を省エネルギー状態にすることができ、容易に省エネルギー化を図ることができる。
【0069】
また、電子顕微鏡100では、冷却フィン242を加熱する際には、鏡筒2内が第2真空排気装置40で真空排気されるため、大量に発生したガスにより第1真空排気装置30がダメージを受けることを防ぐことができる。
【0070】
電子顕微鏡100では、制御部60は、設定された日時に第2モードから第1モードに切り替える制御を行う。電子顕微鏡100が省エネルギー状態から検鏡状態に移行した場合、電子レンズ12,14,18,20は、オフ状態からオン状態になる。電子レンズ12,14,18,20は、コイルに電流を流すことで動作している。そのため、電子レンズ12,14,18,20ではコイルに電流を流すことで抵抗熱が生じることになり、生じた熱によって電子レンズ12,14,18,20の形状が微少変化する。この微少変化は、電子顕微鏡の光学系の状態を乱すものであり、その変化は数時間以上続く場合がある。この間は電子顕微鏡を最適な状態で使用することはできない。そのため、従来、ユーザーは電子顕微鏡を使用する時間から逆算して、第2モードから第1モードに切り替える操作を行わなければならなかった。
【0071】
これに対して、電子顕微鏡100では、上述したように、制御部60が設定された日時に第2モードから第1モードに切り替える制御を行うため、ユーザーの労力を低減することができる。さらに、電子顕微鏡100では、電子顕微鏡の計画的な運用が可能となる。
【0072】
電子顕微鏡100では、制御部60は、第2モードから第1モードに切り替える制御において、電子レンズ12,14,18,20を予め設定されたレンズ条件で動作させる処理を行う。電子顕微鏡では、電子レンズの状態はコイルに流れる電流量によって制御される。そのため、電子レンズの状態を変更した場合にも、上述した電子レンズをオフ状態からオン状態にした場合と同様に、電子レンズの形状が微少変化する。そのため、電子顕微鏡において最適な状態で観察や分析を行うためには、所望の光学系状態(使用する光学系状態)で電子レンズを予め動作させておく必要がある。電子顕微鏡100では、上述したように、制御部60が第2モードから第1モードに切り替える制御において、電子レンズ12,14,18,20を予め設定されたレンズ条件で動作させるため、ユーザーの労力を低減することができる。
【0073】
電子顕微鏡100では、第1モードから第2モードに切り替える制御において、鏡筒2内を第1真空排気装置30で真空排気する処理の後に、第2真空排気装置40をオフにする処理を行う。そのため、第1モードから第2モードに切り替える制御を行う際に、例えば第2真空排気装置40をオフにする処理を行わない場合と比べて、より省エネルギー化を図ることができる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0075】
上述した実施形態では、電子顕微鏡100が試料Sを透過した電子線で結像して透過電子顕微鏡像(TEM像)を取得する透過電子顕微鏡である例について説明したが、本発明に係る電子顕微鏡は、電子線(電子プローブ)で試料S上を走査し、試料の各点から出てくる透過波(または回折波)の強度を検出し、その強度と電子プローブの走査を同期させて走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を取得する走査透過電子顕微鏡であってもよい。
【0076】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。