特許第6464054号(P6464054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6464054-電源回路および荷電粒子放出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464054
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】電源回路および荷電粒子放出装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   H02M3/28 P
   H02M3/28 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-161864(P2015-161864)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-41962(P2017-41962A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】有光 正浩
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−177737(JP,A)
【文献】 特開2002−142381(JP,A)
【文献】 特開平06−074981(JP,A)
【文献】 特開昭62−154011(JP,A)
【文献】 特開2003−317997(JP,A)
【文献】 特開2012−100374(JP,A)
【文献】 特開2010−055843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
G05F 1/56
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
前記トランスの1次側に接続されているスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を制御する制御回路と、
前記トランスの2次側に接続されている平滑回路と、
前記平滑回路と電源被供給回路との間に接続されるトランジスターを含む定電流回路と、
前記トランジスターの両端電圧が基準値を上回ったか否かを検出する電圧検出回路と、
前記電源被供給回路の状態を検出して検出信号を生成する状態検出回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記トランジスターの両端電圧が基準値以下である場合には、
前記検出信号に基づいて前記スイッチング回路を制御し、
前記トランジスターの両端電圧が基準値を上回った場合には、
前記電源被供給回路への出力を、前記検出信号に基づく出力よりも低下させるように前記スイッチング回路を制御する、電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電源回路において、
前記電源被供給回路は、フィラメントであり、
前記電源被供給回路の状態は、前記フィラメントのエミッション電流である、電源回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源回路を含む、荷電粒子放出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路および荷電粒子放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路や、電源回路から電源が供給される電源被供給回路を、過電流から保護するための過電流保護機能を有する電源回路がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスの2次側に設けられた過電流検出回路からの信号に基づいて、トランスの1次側のスイッチング素子の動作を制限するスイッチング電源装置が開示されている。スイッチング方式の電源回路は、例えばリニアアンプ用いたリニア方式の電源回路に比べて発熱が少ないので、小型化に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−153774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング方式の電源回路において、スイッチングのデューティサイクルを小さくすることは、出力電圧を低下させる作用として働き、本質的には出力電流を抑えることはできない。そのため、出力電流の制限は、スイッチングサイクルごとに、スイッチング素子を流れる電流を検出し、設定値を超える電流を検出した際に、そのサイクル中でスイッチをOFFにすることで実現される。そのため、出力電流が乱れやすい。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、出力電流が乱れにくく、小型化に適している電源回路および荷電粒子放出装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例に係る電源回路は、
トランスと、
前記トランスの1次側に接続されているスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を制御する制御回路と、
前記トランスの2次側に接続されている平滑回路と、
前記平滑回路と電源被供給回路との間に接続されるトランジスターを含む定電流回路と、
前記トランジスターの両端電圧が基準値を上回ったか否かを検出する電圧検出回路と、
前記電源被供給回路の状態を検出して検出信号を生成する状態検出回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記トランジスターの両端電圧が基準値以下である場合には、
前記検出信号に基づいて前記スイッチング回路を制御し、
前記トランジスターの両端電圧が基準値を上回った場合には、
前記電源被供給回路への出力を、前記検出信号に基づく出力よりも低下させるように前記スイッチング回路を制御する、電源回路である。
【0009】
本適用例によれば、平滑回路と電源被供給回路との間に接続されるトランジスターを含む定電流回路を有しているので、電源被供給回路への出力電流が乱れにくい電源回路を実現できる。また、本適用例によれば、トランジスターの両端電圧が基準値を上回った場合には、電源被供給回路への出力を、検出信号に基づく出力よりも低下させるようにスイッチング回路を制御するので、トランジスターでの発熱が少なく、小型化に適している電源回路を実現できる。
【0010】
[適用例2]
上述の電源回路において、
前記電源被供給回路は、フィラメントであり、
前記電源被供給回路の状態は、前記フィラメントのエミッション電流であってもよい。
【0011】
フィラメントを定エミッション電流で制御しようとすると、フィラメントが温まるまではエミッション電流が小さいので、フィラメントに出力される電流が過剰に大きくなりがちである。本適用例によれば、定電流回路によって出力電流が制限されるので、フィラメントに過負荷を与えにくい電源回路を実現できる。
【0012】
[適用例3]
本適用例に係る荷電粒子放出装置は、
上述のいずれかの電源回路を含む、荷電粒子放出装置である。
【0013】
本適用例によれば、出力電流が乱れにくく、小型化に適している電源回路を含んでいるので、出力電流が乱れにくく、小型化に適している荷電粒子放出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る荷電粒子放出装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る荷電粒子放出装置100の回路図である。
【0017】
本実施形態に係る荷電粒子放出装置100は、電源回路1と、電源被供給回路90と、を含んで構成されている。
【0018】
荷電粒子放出装置100は、電子やイオンなどの荷電粒子を放出する装置である。このような装置としては、例えば、電子銃、イオン銃、蒸着装置に用いられる電子銃などが挙げられる。本実施形態においては、荷電粒子放出装置100が電子銃である場合を例に取り説明する。
【0019】
電源回路1は、トランス10と、スイッチング回路20と、制御回路30と、平滑回路40と、定電流回路50と、電圧検出回路60と、状態検出回路70と、を備えている。
【0020】
トランス10は、1次巻線11と、2次巻線12と、を含んで構成されている。
【0021】
スイッチング回路20は、トランス10の1次側に接続されている。より具体的には、スイッチング回路20は、1次巻線11に接続されている。
【0022】
本実施形態においては、スイッチング回路20は、トランジスターM21〜M24を含むフルブリッジ回路として構成されている。なお、スイッチング回路20としてはこれに限らず、例えば、ハーフブリッジ回路などを採用してもよい。スイッチング回路20には、接地電位と、電源PS1で生成される電源電位と、が供給される。
【0023】
トランジスターM21とトランジスターM22とは、電源電位から接地電位までの間に直列に接続されている。トランジスターM21とトランジスターM22との接続点は、1次巻線11の一端に接続されている。トランジスターM21とトランジスターM22のゲート端子は、制御回路30に接続されている。
【0024】
トランジスターM23とトランジスターM24とは、電源電位から接地電位までの間に直列に接続されている。トランジスターM23とトランジスターM24との接続点は、1次巻線11の他端に接続されている。トランジスターM23とトランジスターM24のゲート端子は、制御回路30に接続されている。
【0025】
制御回路30は、スイッチング回路20を制御する。より具体的には、制御回路30は、トランジスターM21とトランジスターM24とをONにし、トランジスターM22とトランジスターM23とをOFFにする第1制御と、トランジスターM21とトランジスターM24とをOFFにし、トランジスターM22とトランジスターM23とをONにする第2制御と、を行う。制御回路30が第1制御と第2制御とを行うことで、例えば、パルス幅変調などを用いて、スイッチング回路20がトランス10に所望の電圧を出力することができる。
【0026】
平滑回路40は、トランス10の2次側に接続されている。より具体的には、平滑回路40は、2次巻線12に接続されている。本実施形態においては、平滑回路40は、整流回路41と、ローパスフィルター42と、を含んで構成されている。
【0027】
整流回路41は、トランス10の出力電流を整流する。本実施形態においては、整流回路41は、ダイオードD1〜D2を含んで構成されている。ダイオードD1のアノードは、2次巻線12の一端に接続されている。ダイオードD2のアノードは、2次巻線12の他端に接続されている。ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとは互いに接続されている。
【0028】
ローパスフィルター42は、整流回路41の出力電流から高周波成分を除去する。本実施形態においては、ローパスフィルター42は、コイルL1と、コンデンサーC1と、を含んで構成されている。コイルL1の一端は、ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとの接続点に接続されている。コイルL1の他端は、コンデンサーC1の一端に接続されている。コンデンサーC1の他端は、2次巻線12の他端およびダイオードD2のアノードと接続されている。
【0029】
定電流回路50は、平滑回路40と電源被供給回路90との間に接続されるトランジスターM51を含んで構成されている。本実施形態においては、定電流回路50は、さらに、フォトカプラP1と、抵抗R51〜R53と、トランジスターQ51と、を含んで構成されている。
【0030】
フォトカプラP1の一方(入力側)のアノードは、電源電位に接続されている。フォト
カプラP1の一方のカソードは、抵抗R51を介して接地電位に接続されている。フォトカプラP1の他方(出力側)のアノードは、トランジスターM51のゲート端子に接続されている。フォトカプラP1の他方のカソードは、電源被供給回路90に接続されている。
【0031】
フォトカプラP1と、抵抗R52と、トランジスターQ51とは、トランジスターM51のゲート端子と電源被供給回路90との間に並列に接続されている。トランジスターQ51のベース端子は、トランジスターM51のソース端子に接続されているとともに、抵抗R53を介して電源被供給回路90に接続されている。
【0032】
M51に流れる電流が基準値以下である場合には、フォトカプラP1で生成される電流によって、抵抗R52で生成される電圧がM51をONさせ続ける。M51に流れる電流が基準値よりも大きくなると、抵抗R53で生成される電圧がトランジスターQ51をONさせるので、トランジスターM51はOFFになる。これらの動作がバランスすることによって、定電流回路50は、入力される電流が基準値よりも小さい場合には入力される電流にほぼ比例した電流を電源被供給回路90に出力し、入力される電流が基準値よりも大きい場合にはほぼ基準値となる一定の電流を電源被供給回路90に出力する。
【0033】
電圧検出回路60は、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回ったか否かを検出する。本実施形態においては、電圧検出回路60は、トランジスターQ61と、抵抗R61〜R62と、フォトカプラP2と、ツェナーダイオードZ1と、を含んで構成されている。
【0034】
トランジスターQ61のコレクター端子は、トランジスターM51のドレイン端子に接続されている。トランジスターQ61のエミッター端子は、抵抗R61を介してフォトカプラP2の入力側のアノードに接続されている。フォトカプラP2の入力側のカソードは、トランジスターM51のソース端子に接続されている。トランジスターQ61のベース端子は、抵抗R62を介してトランジスターM51のドレイン端子に接続されている。トランジスターベース端子は、ツェナーダイオードZ1のカソードに接続されている。ツェナーダイオードZ1のアノードは、トランジスターM51のソース端子に接続されている。フォトカプラP2の出力側のコレクター端子は、電源電位に接続されている。フォトカプラP2の出力側のエミッター端子は、制御回路30に接続されている。
【0035】
定電流回路50が入力される電流にほぼ比例した電流を電源被供給回路90に出力している場合には、トランジスターM51の両端電圧(ドレイン端子とソース端子との間の電圧)は小さくなり、定電流回路50がほぼ基準値となる一定の電流を電源被供給回路90に出力には、トランジスターM51の両端電圧は大きくなる。
【0036】
本実施形態においては、トランジスターM51の両端電圧が基準値以下である場合には、トランジスターQ61がOFFになるので、フォトカプラP2の入力側には電流が入力されない。したがって、フォトカプラP2は、制御回路30に電流を出力しない。また、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回った場合には、トランジスターQ61がONになるので、フォトカプラP2の入力側に電流が入力される。したがって、フォトカプラP2は、制御回路30に電流を出力する。これらの動作によって、電圧検出回路60は、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回った否かを検出して、制御回路30に情報を伝達することができる。
【0037】
状態検出回路70は、電源被供給回路90の状態を検出して検出信号を生成する。本実施形態においては、電源被供給回路90は、フィラメントであり、状態検出回路70は、電源被供給回路90の状態として、フィラメントのエミッション電流を検出する。本実施
形態においては、状態検出回路70は、アノード電極71と、電源PS2と、を含んで構成されている。
【0038】
電源被供給回路90の一端は、定電流回路50の抵抗R53の他端に接続されている。電源被供給回路90の他端は、平滑回路40のコンデンサーC1の他端に接続されている。電源PS2の低電位側は、電源被供給回路90の他端に接続されている。電源PS2の高電位側は、アノード電極71に接続されている。アノード電極71は、制御回路30に接続されている。
【0039】
アノード電極71は、メッシュ状に構成され、電源被供給回路90としてのフィラメントと対向するように配置されている。電源被供給回路90としてのフィラメントは、熱電子をアノード電極71に向けて放出する。放出された熱電子の一部はアノード電極71に吸収され、検出信号となる電流が制御回路30に出力される。放出された熱電子の他の一部は、電子銃としての荷電粒子放出装置100の電子の出力となる。
【0040】
制御回路30は、トランジスターM51の両端電圧が基準値以下である場合には、検出信号に基づいてスイッチング回路20を制御し、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回った場合には、電源被供給回路90への出力を、検出信号に基づく出力よりも低下させるようにスイッチング回路20を制御する。例えば、制御回路30は、トランジスターM51の両端電圧が基準値以下である場合には、検出信号に基づいて、エミッション電流が所定値となるようにスイッチング回路20を制御し、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回った場合には、エミッション電流が検出信号に基づくエミッション電流よりも小さな電流値となるように、スイッチング回路20を制御する。
【0041】
本実施形態によれば、平滑回路40と電源被供給回路90との間に接続されるトランジスターM51を含む定電流回路50を有しているので、電源被供給回路90への出力電流が乱れにくい電源回路1を実現できる。また、本実施形態によれば、トランジスターM51の両端電圧が基準値を上回った場合には、電源被供給回路90への出力を、検出信号に基づく出力よりも低下させるようにスイッチング回路20を制御するので、トランジスターM51での発熱が少なく、小型化に適している電源回路1を実現できる。
【0042】
上述したように、本実施形態においては、電源被供給回路90は、フィラメントであり、電源被供給回路90の状態は、電源被供給回路90としてのフィラメントのエミッション電流である。
【0043】
フィラメントを定エミッション電流で制御しようとすると、フィラメントが温まるまではエミッション電流が小さいので、フィラメントに出力される電流が過剰に大きくなりがちである。本実施形態によれば、定電流回路50によって出力電流が制限されるので、フィラメントに過負荷を与えにくい電源回路1を実現できる。
【0044】
本実施形態の荷電粒子放出装置100によれば、出力電流が乱れにくく、小型化に適している電源回路1を含んでいるので、出力電流が乱れにくく、小型化に適している荷電粒子放出装置を実現できる。
【0045】
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0046】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0047】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0048】
1…電源回路、10…トランス、11…1次巻線、12…2次巻線、20…スイッチング回路、30…制御回路、40…平滑回路、41…整流回路、42…ローパスフィルター、50…定電流回路、60…電圧検出回路、70…状態検出回路、71…アノード電極、90…電源被供給回路、100…荷電粒子放出装置、C1…コンデンサー、D1〜D2…ダイオード、L1…コイル、M21〜M24…トランジスター、M51…トランジスター、Q51…トランジスター、Q61…トランジスター、P1〜P2…フォトカプラ、PS1〜PS2…電源、R51〜R53…抵抗、R61〜R62…抵抗、Z1…ツェナーダイオード
図1