特許第6464062号(P6464062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6464062ポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464062
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20190128BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20190128BHJP
   B29C 43/30 20060101ALI20190128BHJP
   B29C 65/40 20060101ALI20190128BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B27/32 E
   B29C43/30
   B29C65/40
   B29L7:00
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-174019(P2015-174019)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-60201(P2016-60201A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-186915(P2014-186915)
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】峯 英生
(72)【発明者】
【氏名】原田 一行
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅史
(72)【発明者】
【氏名】神田 卓志
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 英一郎
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−063018(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065692(WO,A1)
【文献】 特開2006−001035(JP,A)
【文献】 特開2012−072633(JP,A)
【文献】 特開2008−279700(JP,A)
【文献】 特開昭64−014031(JP,A)
【文献】 特開平06−335995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C39/00−39/24
39/38−41/36
41/46−43/34
43/44−43/48
43/52−43/58
45/00−45/24
45/46−45/63
45/70−45/72
45/74−45/84
63/00−63/48
65/00−65/82
70/00−70/88
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層の両表面に接着層を介して積層された織物層を含むポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートであって、
前記コア層はポリプロピレンを主成分とする樹脂であり、
前記織物層は、第1成分がポリプロピレン、第2成分が前記第1成分より低融点のポリオレフィン成分からなる複合繊維を含む糸で構成され、
前記接着層は熱融着ポリオレフィン系フィルムであり、
前記織物層の一方の表面にカバー層が積層されており、
前記カバー層は、ポリプロピレン系樹脂透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂保護層を含むことを特徴とするポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項2】
前記カバー層は、外部から織物層が見える程度の透明性がある請求項1に記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項3】
前記コア層のポリプロピレンを主成分とする樹脂は、プロピレンを50モル%以上含むプロピレン-エチレンランダムコポリマーである請求項1又は2に記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項4】
前記複合繊維は第1成分が芯、第2成分が鞘からなる芯鞘複合繊維である請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項5】
前記芯鞘複合繊維の芯成分がホモポリマーのポリプロピレンであり、鞘成分がプロピレン-エチレンランダムコポリマー又はポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物である請求項に記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項6】
前記熱融着ポリオレフィン系フィルムは低密度ポリエチレンフィルムである請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項7】
前記カバー層のポリプロピレン系樹脂透明層は、ホモポリマータイプポリプロピレンとランダムタイプポリプロピレンとのブレンド物である請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項8】
前記カバー層のポリプロピレン系樹脂透明層は、前記透明層を100重量%としたとき、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=50:50〜90:10の範囲のブレンド物である請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項9】
前記カバー層の保護層は、2軸延伸されたポリプロピレン系樹脂シートである請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項10】
前記ポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートの総厚が0.9〜1.6mmの範囲である請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項11】
前記コア層と前記織物層と前記カバー層の層厚の関係が、コア層>織物層>カバー層である請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートの製造方法であって、
コアシートの両表面に接着用フィルムを介して織物を積層し、
前記織物の一方の表面にカバー層を重ねて加熱加圧し、次いで冷却することを特徴とするポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体感があり、射出成形による部品一体化も可能なポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭素繊維やアラミド繊維などの強化繊維織物を複数枚積層したり、発泡体シートなどと一体化した積層体は知られている。特許文献1には、発泡体からなるコア層の表面に炭素繊維織物層を一体化した積層シートが提案されている。また、炭素繊維織物とアラミド繊維織物とをポリカーボネートフィルムを接着層として一体化した積層体も提案されている(特許文献2)。さらに、中空状芯体の両表面に一方向繊維体を積層することも提案されている(特許文献3)。これらの積層体は軽量で曲げ強度も高い利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−096482号公報
【特許文献2】特開平5−117411号公報
【特許文献3】特開2009−000933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の積層体は炭素繊維、アラミド繊維又は中空状芯体などの高価な材料を使用しており、コストが高いという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、層間剥離がなく、軽量であり、曲げに対する物理的強度も高く、コストも安価であり、立体感があり、射出成形による部品一体化も可能なポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シート及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートは、コア層の両表面に接着層を介して積層された織物層を含むポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートであって、前記コア層はポリプロピレンを主成分とする樹脂であり、前記織物層は、第1成分がポリプロピレン、第2成分が前記第1成分より低融点のポリオレフィン成分からなる複合繊維を含む糸で構成され、前記接着層は熱融着ポリオレフィン系フィルムであり、前記織物層の一方の表面にカバー層が積層されており、前記カバー層は、ポリプロピレン系樹脂透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂保護層を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートの製造方法は、前記のポリオレフィン系繊維強化樹脂積層シートの製造方法であって、コアシートの両表面に接着用フィルムを介して織物を積層し、前記織物の一方の表面にカバー層を重ねて加熱加圧し、次いで冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、繊維強化樹脂積層シートを構成するコア層、接着層、織物層、カバー層がいずれもオレフィン系樹脂であるため、コストを安価にすると同時に、層間剥離がなく、軽量であり、曲げに対する物理的強度も高く、立体感と美装感のある積層シートを提供できる。また、この積層シートは熱可塑性であり、真空成形、プレス成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等に好適である。さらに、織物層は熱融着ポリオレフィン系フィルムを介してコア層に接着しているため、後に加熱して成形しても織物を構成する繊維の収縮はなく、織物の美しい織柄がそのまま積層シートの表面に現れる成形体とすることができる。加えて、この積層シートは織物層が一方の外層に存在していることにより、この織物層に対して射出成形による部品一体化も可能な積層シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施態様の積層シートの模式的断面図である。
図2図2は本発明の一実施態様における積層シートの製造装置を示す模式的断面図である。
図3図3は本発明の一実施態様の積層シートを真空成形した成形体の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維強化樹脂積層シートは、コア層の両表面に接着層を介して織物層が貼り合わされた繊維強化層を含む。コア層はポリプロピレンを主成分とする樹脂である。このコア層はシート状又はフィルム状で積層されている。ポリプロピレンを主成分とする樹脂は、実用的に物理的特性を満足し、コストも安い利点がある。前記において主成分とは、樹脂成分全体を100モル%としたとき、プロピレンユニットが50モル%以上をいう。なお、繊維強化樹脂積層シートは単に積層シートということもある。
【0011】
コア層はプロピレン-エチレンランダムコポリマー(RPP)であっても良い。RPPはプロピレンユニットが50モル%以上、エチレンユニットが50モル%以下のランダムコポリマーで、融点は135〜150℃であり、一般的に市販されている。RPPは熱融着性に優れる利点がある。コア層の好ましい厚さは0.1〜2mmであり、より好ましくは0.2〜1.5mmである。
【0012】
コア層は非発泡ポリプロピレン系シートを使用するのが好ましい。非発泡ポリプロピレン系シートはプレス成形によってもコア層が潰れることはなく、真空成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等も容易にできる。
【0013】
織物層を構成する複合繊維は、第1成分が芯、第2成分が鞘からなる芯鞘複合繊維であるのが好ましい。具体的には、織物層は芯成分がポリプロピレン、鞘成分が芯成分より低融点のポリオレフィン系成分からなる芯鞘複合繊維を含む糸で構成するのが好ましい。鞘成分に低融点ポリオレフィン系成分することにより、加熱接着しやすくなる。さらに、接着層として熱融着ポリオレフィン系フィルムを使用することにより、コア層と織物層との加熱加圧接着が可能となり、積層一体化しやすい。
【0014】
芯鞘複合繊維の芯成分がホモポリマーのポリプロピレンであり、鞘成分がプロピレン-エチレンランダムコポリマー(RPP)、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物又はポリエチレン樹脂であるのが好ましい。これによりさらに加熱接着しやすくなる。
【0015】
熱融着ポリオレフィン系フィルムは低密度ポリエチレン(LLDPE)又はRPPであるのが好ましい。LLDPEやRPPは熱加工性、接着性、透明性に優れる。
【0016】
織物は平織、綾織(斜文織)、朱子織、その他の変化織など、どのような組織の織物であっても良い。織物を構成する糸は、単繊維繊度が1〜10deci tex、トータル繊度が1000〜3000deci texのマルチフィラメント又はモノフィラメントが好ましい。織物の単位面積当たりの重量(目付)は50〜500g/m2の範囲が好ましい。
【0017】
本発明の積層シートは、繊維強化層の一方の表層にカバー層を積層一体化させたものである。このカバー層は、外部から織物層が見える程度の透明性があるのが好ましい。外部から織物層が見えると高強度に見え、美装状態を高く保つことができる。この意味から、光学的カバー層ということもできる。カバー層は、ポリプロピレン系樹脂シート透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層で構成するのが好ましい。かかる透明カバー層のうち、ポリプロピレン系樹脂シート透明層は比較的厚いシートが好ましく、例えば100〜300μm、好ましくは150〜250μmの厚さにする。このようにすると、立体感と厚み感を発揮できる。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂シート透明層は、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)のブレンド物又はポリマーアロイであるのが好ましい。また、透明層を100重量%としたとき、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=50:50〜90:10の範囲が好ましく、さらに好ましくはHPP:RPP=60:40〜80:20である。前記の範囲であればランダムタイプポリプロピレン(RPP)の非晶質による高い透明性と、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)の耐摩耗性を併存できる。
【0019】
透明層の上には着色層を設けるのが好ましい。着色層は外面の美装のためのものであり、透明性を維持するために着色塗料を薄く塗るのが好ましい。着色層の好ましい厚さは0.1〜2μm、さらに好ましくは0.2〜1μmである。着色層は任意の色調を選択できる。 着色層の上にはプロピレン系樹脂シート保護層を設けるのが好ましい。この保護層は、2軸延伸されたポリプロピレン系樹脂シートが好ましい。2軸延伸ポリプロピレン系樹脂シートは耐摩耗性が高いことから好ましい。2軸延伸ポリプロピレン系樹脂シートの好ましい厚さは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜40μmである。
【0020】
本発明は、繊維強化層の一方の表層に好ましくは接着層を介してポリプロピレン系樹脂シート透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層を積層したことにより、外部から厚みのある透明層の下に織物層が透けて見え、織物のしっかりした美しい織柄がそのまま積層シートの表面に現れる。他方の表層は織物層であり、この織物層に対して射出成形による部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、かつ織物層は加熱による変形が無く、ヒケやシワ等の欠点も入りにくい。その結果、光沢や着色等の外観に優れた積層シートとすることができる
【0021】
さらに本発明の積層シートは、コア層と織物層の間に多軸繊維シートを加えることもできる。多軸繊維シートは倉敷紡績株式会社製、商品名“クラマス”を挙げることができる。一例として多軸繊維の方向は0°/+60°/−60°、1平方メートル当たりの重量(目付け)は350g/m2であり、トータル繊度1850deci texのPPフィラメントを多数本使用し、ステッチ糸としてポリエチレンテレフタレート糸を使用した多軸繊維シートがある。
【0022】
本発明の積層シートの製造方法は、一例として、予めポリプロピレン系樹脂シート透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層を積層一体化しておき、前記透明層の表面に接着用フィルムを介してコア層と、その両表面に接着用フィルムと、その両表面に織物層を配置して加熱加圧し、次いで冷却する。予めポリプロピレン系樹脂シート透明層と着色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層を積層一体化しておくのは、最終の積層処理工程の効率化のためである。加熱加圧工程の雰囲気温度は120〜150℃が好ましく、さらに好ましくは130〜145℃である。加圧力は1MPa程度が好ましい。加熱時間は0.5〜5分間が好ましく、さらに好ましくは1〜4分間である。冷却工程の時間は0.5〜5分間が好ましく、さらに好ましくは1〜4分間である。冷却温度は30程度℃以下になるまでが好ましい。
【0023】
成形後の積層シート全体の厚みは0.5〜5mmが好ましく、さらに好ましくは0.8〜4mmである。特に好ましくは、0.9〜1.6mmの範囲が好ましい。この範囲であれば軽量化ができるとともに外観性が向上する。また、コア層と織物層とカバー層の層厚の関係は、コア層>織物層>カバー層であるのが好ましい。これにより軽量化ができるとともに外観性が向上する。
【0024】
本発明の製造方法は連続法に限らず、1回ごとの加熱加圧プレスと冷却法によっても製造できる。サンプルを作製したり、小規模に製造する際にはこの方法で十分である。連続的方法は大量生産に好ましい。
【0025】
次に図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一部を示す。図1は本発明の一実施態様の積層シートの模式的断面図である。この積層シート8は、コア層1の両表面に接着層2a,2bを介して織物層3a,3bが貼り合わされ一体化されている。織物層3aの表面には接着層2cを介してポリプロピレン系樹脂透明層4と着色層5とポリプロピレン系樹脂保護層6が積層一体化されている。ここで、ポリプロピレン系樹脂透明層4と着色層5とポリプロピレン系樹脂保護層6は、カバー層7として予め積層一体化しておいても良い。
【0026】
図2は本発明の一実施態様における積層シート製造装置10を示す模式的断面図である。この積層シート製造装置10は、原料シートの供給ロール9a〜9gと、加熱加圧領域18と、冷却領域19から構成され、連続的生産が可能である。まずコアシート11は供給ロール9eから供給され、接着用フィルム12a,12bは供給ロール9d,9fから供給され、織物13a,13bは供給ロール9c,9gから供給され、接着用フィルム12cは供給ロール9bから供給され、カバー層用シート14は供給ロール9aから供給され、それぞれ加圧ロール15a,15bで積層される。加圧ロール15a,15b及び20a,20bには金属製加圧板16,17がエンドレス状に組み込まれており、まず加熱加圧領域18で加圧加熱される。次に、冷却領域19では冷却用エアーが矢印aから供給され矢印bから排出されることにより冷却される。効率の良い冷却をする場合は、冷却用エアーに加えて冷却領域19に水冷パイプを配置して冷却する。加圧ロール20a,20bから取り出された積層シート21は所定の長さにカットされる。
【0027】
図3は本発明の一実施態様の積層シートを真空成形した成形体22の模式的斜視図である。この成形体22は、横の最大長さ260mm,奥行きの最大長さ170mm,高さ500mmである。積層シートは深絞り成形できる利点がある。さらに、この積層シートは全体が熱可塑性樹脂であり、真空成形、プレス成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等が可能であり、成形サイクルが短く、加工コストも安価である。加えて、図1における織物層3bに対して射出成形により部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、かつ織物層は加熱による変形が無く、ヒケやシワ等の欠点も入りにくい。
【実施例】
【0028】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<曲げ弾性率と曲げ応力の測定方法>
JISK7171に準拠した3点曲げ試験で測定した。試験片サイズは幅20mm、長さ50mm、試験速度は1mm/minとした。押さえジグの形状はR5、支点の形状はR2、支点間隔24mmとした。
<光沢及び硬度>
成形体の光沢は、外観目視により判断した。光沢があるものを「A」、光沢がやや不足しているものを「B」、光沢が無いものを「C」とした。成形体の硬度は、実用上の硬度十分であるものを「A」、若干硬度が不足するものを「B」とした。なお、織物が表面に来る場合の硬度評価は実施しなかった。
【0030】
(実施例1)
<コア層>
図1に示すコア層1として市販のホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)のシート、融点160℃、厚み500μm、単位面積当たりの重量450g/m2を使用した。
<織物>
図1に示す織物層3a,3bとして、芯成分が融点160℃のポリプロピレン、鞘成分がポリプロピレンとポリエチレンのブレンド品(融点110℃)からなる芯鞘複合繊維を使用した。この複合繊維の複合割合は、芯成分65wt%、鞘成分35wt%、繊維本数240本、トータル繊度は1850 deci texであった。この芯鞘複合繊維糸を融着加工し、経糸と緯糸に使用して綾織組織の織物とした。得られた織物の単位面積当たりの重量(目付)は190g/m2であった。
<接着フィルム>
図1に示す接着層2a,2b,2cとして、市販の低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、融点110℃、厚み30μm、単位面積当たりの重量27g/m2を使用した。
<カバー層>
図1に示すカバー層7として、厚み200μmのホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)シート4と、厚み1μmに着色塗料をコーティングした着色層5と、厚み25μmのホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)2軸延伸シート7を予め積層一体化したカバー層7を使用した。
【0031】
<積層シートの作成>
図2に示すコアシート11の両面に接着フィルム12a,12bと織物13a,13bと、織物13aの表面に接着フィルム12cとカバー層用シート14をこの順番に積層し、温度145℃、圧力1Mpa、2分間プレス成形し、その後室温(27℃)まで冷却した。これにより接着フィルムを溶着させて全体を一体化し、積層シートを得た。この積層シートの模式的断面図は図1に示すとおりである。
【0032】
得られた積層シートの曲げ弾性率と曲げ応力を表1にまとめて示す。なお、光沢、硬度及び外観については、射出成型により部品を一体化した後の成形体を用いて評価した。実施例については、カバー層とは反対側の織物層13b側に射出成型により部品を一体化させた。
【0033】
(実施例2)
図1に示すカバー層7の透明層4として、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=75:25のブレンド物又はポリマーアロイのシート(厚み200μm)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。得られた積層シートの物性は表1にまとめて示す。
【0034】
(実施例3)
図1に示すカバー層7の透明層4として、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=25:75のブレンド物又はポリマーアロイのシート(厚み200μm)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。得られた積層シートの物性は表1にまとめて示す。
【0035】
(実施例4)
図1に示すカバー層7の透明層4として、プロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)のシート(厚み200μm)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。得られた積層シートの物性は表1にまとめて示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1においてカバー層を付与しないと共に、射出成型で部品を一体化させる側の織物層に、実施例1に記載した接着フィルムを介在させ、その外表面に表皮層としてホモポリマータイプポリプロピレン(HPP,融点160℃):25wt%とプロピレン−エチレンランダムタイプコポリマー(RPP,融点145℃):75wt%をブレンドした厚み200μm、単位面積当たりの重量180g/m2を積層した以外は実施例1と同様に実施した。なお、射出成形による部品の一体化は表皮層の表面側から行った。得られた積層シートの物性は表1にまとめて示す。なお、各例の曲げ弾性率及び曲げ応力のデータはMD(長さ方向)のデータである。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなとおり、本発明の実施例品は曲げ弾性率、曲げ応力、硬度が高く、層間剥離はなく、軽量であり、曲げに対する物理的強度も高く、立体感と光沢のある積層シートであった。また、この積層シートは熱可塑性であり、真空成形、プレス成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等に好適で、安価な成形体であった。さらに、織物層は熱融着ポリオレフィン系フィルムを介してコア層に接着しているため、後に加熱して成形しても織物を構成する繊維の収縮はなく、織物の美しい織柄がそのまま積層シートの表面に現れる成形体とすることができた。加えて、前記積層シートの片面は織物層であるので、この織物層に対して射出成形によりリブ部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、ヒケやシワ等の欠点も入りにくいことが確認できた。
【0039】
これに対して比較例1品は、カバー層を持たないため、立体感や光沢が不足した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の積層シートを用いた成形品は、自動車部品、自動車内装品、家電製品、医療用保護具、スーツケース、容器、棚、パレット、パネル、バッグ、自動倉庫用スリーブボックス、ドア、ロール回収用長尺ボックス、畳の芯材、展示ブース様壁材、Tボード(トラック用当て板)、簡易テーブルセット等の民生用積層品に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 コア層
2a,2b,2c 接着層
3a,3b 織物層
4 透明層
5 着色層
6 保護層
7 カバー層
8,21 積層シート
9a〜9g 供給ロール
10 積層シート製造装置
11 コアシート
12a,12b,12c 接着用フィルム
13a,13b 織物
14 カバー層用シート
15a,15b,20a,20b 加圧ロール
16,17 金属製加圧板
18 加熱加圧領域
19 冷却領域
22 成形体
図1
図2
図3