特許第6464064号(P6464064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464064
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】荷電粒子装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/295 20060101AFI20190128BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20190128BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20190128BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20190128BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20190128BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   H01J37/295
   H01J37/26
   H01J37/09 A
   H01J37/22 501Z
   H01J37/244
   H01J37/147 A
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-175938(P2015-175938)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-54606(P2017-54606A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和也
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−013650(JP,A)
【文献】 特開平01−267945(JP,A)
【文献】 特開昭59−119661(JP,A)
【文献】 特開2015−032384(JP,A)
【文献】 特開2006−228748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0034822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/09
H01J 37/147
H01J 37/244
H01J 37/26
H01J 37/28
H01J 37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子を試料に照射する照射光学系と、
前記試料を透過した前記荷電粒子で透過像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズの後段に配置され、前記試料を透過した前記荷電粒子を偏向させる偏向部と、
前記偏向部の後段に配置された絞りと、
前記対物レンズで結像された前記透過像を検出面上に結像する結像光学系と、
前記検出面に入射した前記荷電粒子を検出する検出器と、
前記偏向部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記試料で互いに異なる散乱角で散乱された前記荷電粒子が、順次、前記絞りを通過するように、前記偏向部を制御する、荷電粒子装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記偏向部は、第1偏向器と、前記第1偏向器の後段に配置された第2偏向器と、を有し、
前記制御部は、前記第1偏向器を制御して前記荷電粒子の偏向角度を連続的に変化させるとともに、前記第2偏向器を制御して前記第1偏向器で偏向された前記荷電粒子を光軸に沿って進行させる、荷電粒子装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記絞りの孔は、前記光軸上に配置され、
前記検出器は、前記絞りを通過した前記荷電粒子を検出する、荷電粒子装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記偏向角度の情報と前記検出器で得られた前記荷電粒子の強度の情報とを関連づけて記憶する記憶部を含む、荷電粒子装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は、前記記憶部から前記偏向角度の情報と関連付けて記憶された前記荷電粒子の強度の情報を読み出して、前記偏向角度を前記散乱角に変換し、回折パターンを生成する、荷電粒子装置。
【請求項6】
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子を試料に照射する照射光学系と、
前記試料を透過した前記荷電粒子で透過像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズの後段に配置され、前記試料を透過した前記荷電粒子を偏向させる偏向部と、
前記対物レンズで結像された前記透過像を検出面上に結像する結像光学系と、
前記結像光学系の後段に配置され、前記荷電粒子を検出する第1検出器と、
前記検出面に入射した前記荷電粒子を検出する第2検出器と、
前記偏向部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記試料で互いに異なる散乱角で散乱された前記荷電粒子が、順次、前記第1検出器で検出されるように、前記偏向部を制御する、荷電粒子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(TEM)では、透過像(試料像)や、回折パターンを取得することができる(例えば特許文献1参照)。透過像は試料を透過した電子(透過電子)で結像された像であり、回折パターンは電子回折により得られる図形である。
【0003】
図10は、従来の透過電子顕微鏡1000の構成を模式的に示す図である。
【0004】
図10に示すように、透過電子顕微鏡1000は、電子源1002と、電子源1002からの電子を試料に照射する照射光学系1004と、試料を保持する試料ステージ1006と、試料を透過した電子を用いて最初に結像する対物レンズ1008と、対物レンズ1008で結像された透過像または回折パターンを検出面上に結像する結像光学系1010と、検出面に入射した電子を検出して透過像または回折パターンを取得する検出器1012と、これらを制御する制御部1020と、を備えている。
【0005】
図11は、結像光学系1010がMAGモードの状態を模式的に示す図である。図12は、結像光学系1010がDIFFモードの状態を模式的に示す図である。
【0006】
透過電子顕微鏡1000で試料の透過像を取得する場合、ユーザーは、試料の透過像を観察しながら試料を探索する。このとき、透過電子顕微鏡1000の結像光学系1010の条件は、図11に示すように、対物レンズ1008が生成する最初の像を検出面上に結像する条件(MAGモード)となっている。
【0007】
そして、所望の観察領域が見つかると、ユーザーは、必要に応じて制御部1020を操作して結像光学系1010の条件を切り替えて倍率を調整し、検出器で透過像を取得する。
【0008】
通常、透過像のみでは、試料の構造を示す情報としては足りない場合が多い。透過電子顕微鏡1000では、試料で散乱した電子は、対物レンズ1008の後焦点面に回折パターンを形成している。そこで、結像光学系1010の条件を変えて、図12に示すように、回折パターンを検出面上に結像する条件(DIFFモード)にする。ユーザーは結像光学系1010の条件を変えて、回折パターンの拡大率(カメラ長)を調整し、検出器で回折パターンを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−32108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、透過電子顕微鏡では、透過像(実空間像)と回折パターン(逆空間像)の両方を取得することができる。
【0011】
しかしながら、透過像を検出面上に結像する結像光学系の条件と、回折パターンを検出面上に結像する結像光学系の条件とは、大きく異なる。したがって、1つの試料から透過
像と回折パターンを取得する場合は、必ず結像光学系の条件を変える必要がある。
【0012】
図13は、結像光学系を構成している、一般的な磁場レンズ1100を模式的に示す図である。
【0013】
電子を結像するために用いられる磁場レンズ1100は、図13に示すように、コイル1102と、ヨーク1104と、ポールピース1106と、を有している。磁場レンズ1100では、コイル1102に電流を流し、コイル1102で発生した磁場をヨーク1104を介してポールピース1106に集めることで磁場MFを発生させる。磁場レンズ1100では、コイル1102に流れる電流を調整することで磁場MFをコントロールすることができる。磁場レンズ1100は、磁場MFによって電子の軌道を変更し、レンズとして機能する。
【0014】
ヨーク1104およびポールピース1106は、磁性体で構成されている。ヨーク1104およびポールピース1106を構成する磁性体には、磁気ヒステリシスが存在する。
【0015】
図14は、磁場レンズの磁気ヒステリシスを説明するためのグラフである。図14に示すグラフの横軸は、磁場レンズのコイルに流れる電流量であり、縦軸は磁場レンズが発生させる磁場の大きさである。
【0016】
図14に示すように、コイル電流量がI1の状態からコイル電流量を増加させてコイル電流量をI2にした場合と、コイル電流量がI3の状態からコイル電流量を減少させてコイル電流量をI2にした場合では、コイル励磁量が同じI2であっても、磁場の大きさ(レンズ強度)は異なっている。
【0017】
したがって、透過電子顕微鏡において、結像光学系の条件を変えると、変える前の結像光学系の条件によって、同じ条件であっても結像光学系が実現している結像状態(倍率や、カメラ長)が変わってしまう。
【0018】
また、図13に示すコイル1102に電流を流すことで、コイル1102からジュール熱が発生する。このジュール熱によって、ヨーク1104およびポールピース1106が膨張する。コイル1102を流れる電流が一定であれば熱的平衡状態にあるため、特に大きな問題とならない。しかしながら、コイル1102を流れる電流を変化させると、熱的変化が発生して、ヨーク1104およびポールピース1106の形状の変化が起こる。これにより、磁場レンズ1100が発生させる磁場MFの形状も変わる。
【0019】
したがって、結像光学系の条件を変えることによって、結像光学系を構成している各レンズにおいて熱的変化が生じ結像状態が変動する可能性がある。
【0020】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、結像光学系の条件を変えることなく、透過像と回折パターンを取得することができる荷電粒子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)本発明に係る荷電粒子装置は、
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子を試料に照射する照射光学系と、
前記試料を透過した前記荷電粒子で透過像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズの後段に配置され、前記試料を透過した前記荷電粒子を偏向させる偏向部と、
前記偏向部の後段に配置された絞りと、
前記対物レンズで結像された前記透過像を検出面上に結像する結像光学系と、
前記検出面に入射した前記荷電粒子を検出する検出器と、
前記偏向部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記試料で互いに異なる散乱角で散乱された前記荷電粒子が、順次、前記絞りを通過するように、前記偏向部を制御する。
【0022】
このような荷電粒子装置では、制御部が試料で互いに異なる散乱角で散乱された荷電粒子が、順次、絞りを通過するように偏向部を制御することにより、回折パターンを取得することができる。そのため、このような荷電粒子装置では、結像光学系の条件を変えることなく、透過像と回折パターンを取得することができる。したがって、このような荷電粒子装置では、結像光学系の磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響により観察倍率やカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0023】
(2)本発明に係る荷電粒子装置において、
前記偏向部は、第1偏向器と、前記第1偏向器の後段に配置された第2偏向器と、を有し、
前記制御部は、前記第1偏向器を制御して前記荷電粒子の偏向角度を連続的に変化させるとともに、前記第2偏向器を制御して前記第1偏向器で偏向された前記荷電粒子を光軸に沿って進行させてもよい。
【0024】
このような荷電粒子装置では、制御部が第1偏向器を制御して荷電粒子の偏向角度を連続的に変化させるとともに、第2偏向器を制御して第1偏向器で偏向された荷電粒子を光軸に沿って進行させるため、試料で互いに異なる散乱角で散乱された荷電粒子を、順次、光軸上で進行させることができる。
【0025】
(3)本発明に係る荷電粒子装置において、
前記絞りの孔は、前記光軸上に配置され、
前記検出器は、前記絞りを通過した前記荷電粒子を検出してもよい。
【0026】
このような荷電粒子装置では、絞りの孔が光軸上に配置され、検出器が絞りを通過した荷電粒子を検出するため、試料で互いに異なる散乱角で散乱された荷電粒子が、順次、絞りを通過し、検出器において互いに異なる散乱角で散乱された荷電粒子を、順次、検出することができる。
【0027】
(4)本発明に係る荷電粒子装置において、
前記偏向角度の情報と前記検出器で得られた前記荷電粒子の強度の情報とを関連づけて記憶する記憶部を含んでいてもよい。
【0028】
このような荷電粒子装置では、記憶部が偏向角度の情報と荷電粒子の強度の情報とを関連づけて記憶するため、記憶部に記録された情報を読み出すことで、回折パターンを取得することができる。
【0029】
(5)本発明に係る荷電粒子装置において、
前記制御部は、前記記憶部から前記偏向角度の情報と関連付けて記憶された前記荷電粒子の強度の情報を読み出して、前記偏向角度を前記散乱角に変換し、回折パターンを生成してもよい。
【0030】
(6)本発明に係る荷電粒子装置は、
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子を試料に照射する照射光学系と、
前記試料を透過した前記荷電粒子で透過像を結像する対物レンズと、
前記対物レンズの後段に配置され、前記試料を透過した前記荷電粒子を偏向させる偏向部と、
前記対物レンズで結像された前記透過像を検出面上に結像する結像光学系と、
前記結像光学系の後段に配置され、前記荷電粒子を検出する第1検出器と、
前記検出面に入射した前記荷電粒子を検出する第2検出器と、
前記偏向部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記試料で互いに異なる散乱角で散乱された前記荷電粒子が、順次、前記第1検出器で検出されるように、前記偏向部を制御する。
【0031】
このような荷電粒子装置では、制御部が試料で互いに異なる散乱角で散乱された荷電粒子が、順次、第1検出器で検出されるように偏向部を制御することにより、回折パターンを取得することができる。そのため、このような荷電粒子装置では、結像光学系の条件を変えることなく、透過像と回折パターンを取得することができる。したがって、このような荷電粒子装置では、結像光学系の磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響により観察倍率やカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る荷電粒子装置の構成を模式的に示す図。
図2】第1実施形態に係る荷電粒子装置の動作を説明するための図。
図3】第1実施形態に係る荷電粒子装置の偏向部の動作を説明するための図。
図4】第1実施形態に係る荷電粒子装置の偏向部の動作を説明するための図。
図5】偏向角度φ(散乱角θ)と電子の強度の関係を示すグラフ。
図6】第2実施形態に係る荷電粒子装置の構成を模式的に示す図。
図7】第2実施形態に係る荷電粒子装置の動作を説明するための図。
図8】第2実施形態に係る荷電粒子装置の偏向部の動作を説明するための図。
図9】第2実施形態に係る荷電粒子装置の偏向部の動作を説明するための図。
図10】従来の透過電子顕微鏡の構成を模式的に示す図。
図11】従来の透過電子顕微鏡の結像光学系がMAGモードの状態を模式的に示す図。
図12】従来の透過電子顕微鏡の結像光学系がDIFFモードの状態を模式的に示す図。
図13】一般的な磁場レンズを模式的に示す図。
図14】磁場レンズの磁気ヒステリシスを説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0034】
1. 第1実施形態
1.1. 荷電粒子装置
まず、第1実施形態に係る荷電粒子装置について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る荷電粒子装置100の構成を模式的に示す図である。ここでは、荷電粒子装置100が透過電子顕微鏡(TEM)である場合について説明する。
【0035】
荷電粒子装置100は、図1に示すように、電子源(荷電粒子源の一例)102と、照
射光学系104と、試料ステージ106と、対物レンズ108と、偏向部110と、絞り112と、結像光学系114と、検出器116と、走査信号生成部118と、フレームメモリー(記憶部の一例)120と、制御部130と、画像表示部132と、を含む。
【0036】
電子源102は、電子(荷電粒子の一例)を発生させる。電子源102は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子ビームとして放出する電子銃である。
【0037】
照射光学系104は、電子源102で発生した電子を集束して試料に照射する。
【0038】
試料ステージ106は、試料を保持する。試料ステージ106は、試料ホルダーを介して、試料を保持していてもよい。試料ステージ106は、試料(試料ホルダー)を移動および静止させることができ、試料の位置決めを行うことができる。
【0039】
対物レンズ108は、試料を透過した電子(透過電子)で透過像を最初に結像する。すなわち、対物レンズ108は、試料を透過した電子で透過像を結像するための初段のレンズである。対物レンズ108の後焦点面には回折パターン(電子回折図形、逆空間像)が形成され、対物レンズ108の像面には透過像(実空間像)が形成される。
【0040】
偏向部110は、対物レンズ108の後段(電子の流れの下流側)に配置されている。偏向部110は、対物レンズ108と絞り112との間に配置されている。偏向部110は、第1偏向器110aと、第1偏向器110aの後段に配置された第2偏向器110bと、を有している。第1偏向器110aおよび第2偏向器110bは、試料を透過した電子を二次元的に偏向させることができる。第1偏向器110aおよび第2偏向器110bは、光軸Lと直交する平面内において、電子を二次元的に偏向させる。光軸Lは、荷電粒子装置100の光学系を構成している各レンズの中心を通る軸である。
【0041】
絞り112は、偏向部110の後段に配置されている。絞り112は、対物レンズ108の像面に配置されている。絞り112として、回折パターンを取得する試料の領域を制限する制限視野絞りを用いてもよい。
【0042】
結像光学系114は、対物レンズ108で結像された透過像または回折パターンを検出面115上に結像する。結像光学系114は、中間レンズ114aと、投影レンズ114bと、を含んで構成されている。
【0043】
結像光学系114は、透過像を検出面115上に結像するモード(MAGモード)と、回折パターンを検出面115上に結像するモード(DIFFモード)と、を備えている。MAGモードでは、対物レンズ108の像面と中間レンズ114aの物面とを一致させて、検出面115上に透過像を結像する。DIFFモードでは、対物レンズ108の後焦点面と中間レンズ114aの物面とを一致させて、検出面115上に回折パターンを結像する。例えば、中間レンズ114aの励磁(焦点距離)を切り替えることによって、MAGモードと、DIFFモードと、を切り替えることができる。
【0044】
検出器116は、検出面115に入射する電子を検出する。検出器116は、検出面115に入射する電子を計数する。検出器116は、計数された電子の数に応じた強度の情報を出力する。検出器116は、結像光学系114によって検出面115上に結像された透過像や回折パターンを取得することができる。検出器116は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラなどのデジタルカメラである。
【0045】
走査信号生成部118は、偏向部110に供給される走査信号を生成する。走査信号は、偏向部110において、試料を透過した電子を二次元的に走査させるための信号である
【0046】
フレームメモリー120は、走査信号生成部118で生成された走査信号に基づいて、検出器116で得られた電子の強度(計数された電子の数)の情報と、偏向部110での電子の偏向角度の情報と、を関連づけて記憶する。すなわち、フレームメモリー120は、偏向角度の情報と、その偏向角度における電子の強度の情報と、を1対1に対応させて記憶する。
【0047】
制御部130は、電子源102、照射光学系104、試料ステージ106、対物レンズ108、偏向部110、結像光学系114、を制御する。また、制御部130は、検出器116で取得された透過像や回折パターンを画像表示部132に表示する処理や、フレームメモリー120に記録された電子の強度の情報と偏向角度の情報とに基づいて回折パターンを生成して画像表示部132に表示する処理などを行う。なお、制御部130が行う制御の詳細については、後述する。
【0048】
制御部130は、専用回路により実現して各種制御や処理を行うようにしてもよい。また、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)が記憶部(図示せず)等に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、各種制御や処理を行うようにしてもよい。
【0049】
荷電粒子装置100は、図示はしないが、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得して制御部130に送る処理を行う操作部を有していてもよい。操作部は、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどであってもよい。
【0050】
画像表示部132は、制御部130で生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0051】
1.2. 荷電粒子装置の動作
次に、荷電粒子装置100の動作について説明する。以下、荷電粒子装置100で透過像および回折パターンを取得する例について説明する。
【0052】
(1)透過像の取得
まず、透過像を取得するときの荷電粒子装置100の動作について説明する。
【0053】
試料の所望の観察領域の透過像を取得するためには、試料の透過像(低倍率)を観察しながら、試料を探索する必要がある。そのため、結像光学系114は、MAGモードに設定される。例えば、ユーザーが操作部を介して結像光学系114をMAGモードにすることを要求すると、制御部130は、結像光学系114を制御して、対物レンズ108が結像する最初の像(透過像)を検出面115上に結像する条件にする。
【0054】
ユーザーは、所望の観察領域をみつけると必要に応じて倍率を変更してもよい(例えば高倍率にしてもよい)。ユーザーが操作部を介して所望の倍率を指定すると、制御部130が結像光学系114の条件を切り替えて倍率を変更する。そして、ユーザーが操作部を介して透過像の撮影を要求すると、制御部130は検出器116の出力信号を取得し、当該出力信号に基づいて透過像を生成する。このとき、検出器116の出力信号は、フレームメモリー120を介さずに、直接、制御部130に送られてもよい。そして、制御部130は、生成した透過像を画像表示部132に表示する処理を行う。
【0055】
(2)回折パターンの取得
次に、回折パターンを取得するときの荷電粒子装置100の動作について説明する。
【0056】
図2は、荷電粒子装置100の動作を説明するための図である。図2では、絞り112を光軸L上に挿入した状態を図示している。
【0057】
回折パターンを取得するときには、まず、図2に示すように、所望の観察領域を観察している状態で、絞り112を光軸L上に挿入する。このとき、結像光学系114はMAGモードであり、対物レンズ108で結像された透過像が検出面115上に結像されている。絞り112は、図2に示すように、絞り孔が光軸L上に位置するように挿入される。これにより、絞り112を通過する電子は主に透過波Tである。ここで、透過波Tとは、試料を透過して入射電子と同じ方向に出射する波である。
【0058】
次に、例えば、ユーザーが操作部を介して回折パターンの取得を要求すると、制御部130は、試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、絞り112を通過するように、偏向部110を制御する。
【0059】
具体的には、制御部130は、第1偏向器110aを制御して試料を透過した電子の偏向角度を連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させる。これにより、試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、絞り112を通過するため、検出器116において互いに異なる散乱角で散乱された電子を選択的に検出することができる。以下、この原理について説明する。
【0060】
図2に示す状態では、第1偏向器110aおよび第2偏向器110bは、電子を偏向させていない。このとき、主に透過波Tが絞り112を通過する。透過波Tは、散乱角θ=0°の透過電子である。絞り112を通過した電子は検出器116で検出される。すなわち、図2に示す状態では、透過波Tを選択的に検出することができる。
【0061】
なお、上記の「主に透過波Tが絞り112を通過する」とは、例えば後述する図3図4に示す他の状態に比べて、図2に示す状態では絞り112を通過する電子において透過波Tの割合が多いことをいう。
【0062】
図3および図4は、荷電粒子装置100の偏向部110の動作を説明するための図である。
【0063】
図3に示す状態では、第1偏向器110aは、試料を透過した電子を偏向角度φで偏向し、第2偏向器110bは、第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる(光軸に戻す)。これにより、試料において散乱角θで散乱された散乱波Aが光軸L上を進行し、主に散乱波Aが絞り112を通過する。絞り112を通過した電子は検出器116で検出される。すなわち、図3に示す状態では、散乱角θで散乱された散乱波Aを選択的に検出することができる。
【0064】
なお、上記の「主に散乱波Aが絞り112を通過する」とは、例えば図2図4に示す他の状態に比べて、図3に示す状態では絞り112を通過する電子において散乱波Aの割合が多いことをいう。
【0065】
図4に示す状態では、第1偏向器110aは、試料を透過した電子を偏向角度φで偏向し、第2偏向器110bは、第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる(光軸に戻す)。これにより、試料において散乱角θで散乱された散乱波Bが光軸L上を進行し、主に散乱波Bが絞り112を通過する。絞り112を通過した電子は検出器116で検出される。すなわち、図4に示す状態では、散乱角θ
で散乱された散乱波Bを選択的に検出することができる。
【0066】
なお、上記の「主に散乱波Bが絞り112を通過する」とは、例えば図2図3に示す他の状態に比べて、図4に示す状態では絞り112を通過する電子において散乱波Bの割合が多いことをいう。
【0067】
ここで、偏向角度φとは、対物レンズ108を通過して第1偏向器110aに入射する電子の進行方向(電子線の軸)と、第1偏向器110aで偏向された電子の進行方向(電子線の軸)と、がなす角度をいう。また、散乱角θとは、試料に電子を入射したときに、試料を構成する原子によって電子が散乱される角度をいう。偏向角度φと散乱角θとは、1対1に対応している。偏向角度φは、光学系の設計値、すなわち、例えば対物レンズ108の焦点距離や、対物レンズ108と第1偏向器110aとの間の光学的な距離などを用いることで、散乱角θに変換することができる。
【0068】
したがって、第1偏向器110aを制御して試料を透過した電子の偏向角度φを連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させることで、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、取り出すことができる。また、第1偏向器110aにおいて、試料を透過した電子を二次元的に偏向させることにより、試料で互いに異なる方向に散乱された電子を、順次、取り出すことができる。
【0069】
制御部130は、走査信号生成部118を制御して、所定の走査信号を第1偏向器110aおよび第2偏向器110bに送る。第1偏向器110aは、走査信号に基づいて試料を透過した電子を二次元的に偏向させる。また、第2偏向器110bは、走査信号に基づいて第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる。このように、制御部130が、第1偏向器110aと第2偏向器110bを連動(同期)させることにより、試料において互いに異なる散乱角θで散乱された電子が、順次、光軸L上を進行する。そのため、互いに異なる散乱角θで散乱された電子は、順次、絞り112を通過し、検出器116において、順次、検出される。
【0070】
フレームメモリー120は、偏向角度φの情報と、検出器116で得られた電子の強度の情報とを関連づけて記憶する。フレームメモリー120は、走査信号に基づいて、検出器116の出力信号を記憶することで偏向角度φの情報と、電子の強度の情報とを関連づけて記憶する。
【0071】
具体的には、荷電粒子装置100では、検出面115上に入射した電子は、検出器116で検出され、電気信号に変換される。この電気信号は、A/D変換器(図示せず)によりデジタル信号に変換され、走査信号に応じて指定されたフレームメモリー120内のアドレスの記憶領域に格納される。これにより、フレームメモリー120に、偏向角度φの情報と電子の強度の情報とが関連づけて記憶される。
【0072】
このようにしてフレームメモリー120に記憶された偏向角度φの情報と電子の強度の情報は、回折パターンに相当するものとなる。
【0073】
図5は、偏向角度φ(散乱角θ)と電子の強度の関係を示すグラフである。図5に示す例では、散乱角θ=0°(透過波T)に相当するピーク、散乱角θで散乱された電子に相当するピーク、散乱角θで散乱された電子に相当するピークが得られている。図5に示す例では、便宜上、偏向部110において電子を一次元的に偏向させて、偏向角度φを変化させた例を示しているが、偏向部110において電子を二次元的に偏向させて、偏向角度φを変化させることにより、回折パターンを得ることができる。
【0074】
ここで、偏向角度φの範囲を変えることで、得られる回折パターンの大きさ、すなわち、得られる回折パターンにおけるカメラ長を変えることができる。カメラ長とは、試料から回折パターンを形成する面までの有効距離である。
【0075】
制御部130は、フレームメモリー120から偏向角度φの情報と関連付けて記録された電子の強度の情報を読み出して、偏向角度φを散乱角θに変換して回折パターンを生成し、回折パターンを画像表示部132に表示させる処理を行う。
【0076】
なお、荷電粒子装置100では、制御部130が偏向部110の制御を停止して、絞り112を光軸L上から退避させることで、直ちに透過像の観察が可能となる。
【0077】
荷電粒子装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0078】
荷電粒子装置100は、対物レンズ108の後段に配置され、試料を透過した電子を偏向させる偏向部110と、偏向部110の後段に配置された絞り112と、を備え、制御部130は、試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、絞り112を通過するように偏向部110を制御する。荷電粒子装置100では、制御部130が偏向部110を制御することにより、上述したように、回折パターンを取得することができる。すなわち、荷電粒子装置100では、結像光学系114がMAGモードの状態で、回折パターンを取得することができる。したがって、荷電粒子装置100では、結像光学系114の条件を変えることなく、透過像と回折パターンを取得することができる。したがって、荷電粒子装置100では、結像光学系114の磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響により観察倍率やカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0079】
さらに、荷電粒子装置100では、上述したように、制御部130が試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、絞り112を通過するように偏向部110を制御することにより回折パターンを取得することができる。そのため、荷電粒子装置100では、結像光学系114の条件を変えることなく、回折パターンの大きさ(すなわちカメラ長)を変えることができる。したがって、荷電粒子装置100では、カメラ長を変更した場合であっても、結像光学系における磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響によりカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0080】
荷電粒子装置100では、偏向部110は、第1偏向器110aと、第1偏向器110aの後段に配置された第2偏向器110bと、を有し、制御部130は、第1偏向器110aを制御して電子の偏向角度φを連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させる。そのため、荷電粒子装置100では、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、光軸Lで進行させることができる。
【0081】
荷電粒子装置100では、絞り112の孔が光軸L上に配置され、検出器116が絞り112を通過した電子を検出するため、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子が、順次、絞り112を通過し、検出器116において互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、検出することができる。
【0082】
荷電粒子装置100では、フレームメモリー120が偏向角度φの情報と検出器116で得られ電子の強度の情報とを関連づけて記憶するため、フレームメモリー120に記録された情報を読み出すことで、回折パターンを生成することができる。
【0083】
2. 第2実施形態
2.1. 荷電粒子装置
次に、第2実施形態に係る荷電粒子装置について図面を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態に係る荷電粒子装置200の構成を模式的に示す図である。
【0084】
以下、第2実施形態に係る荷電粒子装置200において、上述した第1実施形態に係る荷電粒子装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
上述した荷電粒子装置100では、図1に示すように、絞り112を含んで構成されており、絞り112を通過した電子を検出器116で検出して、所定の散乱角θで散乱された電子を選択的に検出していた。
【0086】
これに対して、荷電粒子装置200では、図6に示すように、所定の散乱角θで散乱された電子を選択的に検出する検出器210(以下、「第1検出器210」ともいう)を含んで構成されている。
【0087】
第1検出器210は、結像光学系114の後段に配置されている。図示の例では、第1検出器210は、結像光学系114と検出器116(以下「第2検出器116」ともいう)との間に配置されている。第1検出器210は、移動可能であり、光軸L上に配置したり、光軸Lから退避させたりすることができる。第1検出器210は、偏向部110(第1偏向器110a)において所定の偏向角度φで偏向された電子、すなわち所定の散乱角θで散乱された電子を選択的に検出できるような検出面(検出領域)を有している。すなわち、第1検出器210は、結像光学系114を通過した電子の一部のみを検出できるような検出面(検出領域)を有している。第1検出器210の検出領域は、例えば、第2検出器116の検出領域に比べて小さい。第1検出器210の出力信号は、フレームメモリー120に送られる。
【0088】
2.2. 荷電粒子装置の動作
次に、荷電粒子装置200の動作について説明する。以下、荷電粒子装置200で透過像および回折パターンを取得する例について説明する。
【0089】
(1)透過像の取得
まず、透過像を取得するときの荷電粒子装置200の動作について説明する。
【0090】
透過像を取得するときの荷電粒子装置200の動作は、第1検出器210を光軸Lから退避させて第2検出器116を用いる点を除いて荷電粒子装置100の動作と同様でありその説明を省略する。
【0091】
(2)回折パターンの取得
次に、回折パターンを取得するときの荷電粒子装置200の動作について説明する。
【0092】
図7は、荷電粒子装置200の動作を説明するための図である。図7では、第1検出器210を光軸L上に挿入した状態を図示している。
【0093】
回折パターンを取得するときには、まず、図7に示すように、所望の観察領域を観察している状態で、第1検出器210を光軸L上に挿入する。このとき、結像光学系114はMAGモードである。第1検出器210が、光軸L上に配置されることにより、第1検出器210で検出される電子は主に透過波Tである。
【0094】
次に、例えば、ユーザーが操作部を介して回折パターンの取得を要求すると、制御部1
30は、試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、第1検出器210で検出されるように、偏向部110を制御する。
【0095】
具体的には、制御部130は、第1偏向器110aを制御して試料を透過した電子の偏向角度を連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させる。これにより、試料で互いに異なる散乱角で散乱された透過電子が、順次、第1検出器210で検出される。以下、この原理について図面を参照しながら説明する。
【0096】
図7に示す状態では、第1偏向器110aおよび第2偏向器110bは、電子を偏向させていない。このとき、主に透過波Tが第1検出器210で検出される。すなわち、図7に示す状態では、透過波Tを選択的に検出することができる。
【0097】
なお、上記の「主に透過波Tが第1検出器210で検出される」とは、例えば後述する図8図9に示す他の状態に比べて、図7に示す状態では第1検出器210で検出される電子において透過波Tの割合が多いことをいう。
【0098】
図8および図9は、荷電粒子装置200の偏向部110の動作を説明するための図である。
【0099】
図8に示す状態では、第1偏向器110aは、試料を透過した透過電子を偏向角度φで偏向し、第2偏向器110bは、第1偏向器110aで偏向された透過電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる(光軸に戻す)。これにより、試料において散乱角θで散乱された散乱波Aが光軸L上を進行し、主に散乱波Aが第1検出器210で検出される。すなわち、図8に示す状態では、散乱角θで散乱された散乱波Aを選択的に検出することができる。
【0100】
なお、上記の「主に散乱波Aが第1検出器210で検出される」とは、例えば図7図9に示す他の状態に比べて、図8に示す状態では第1検出器210で検出される電子において散乱波Aの割合が多いことをいう。
【0101】
図9に示す状態では、第1偏向器110aは、試料を透過した透過電子を偏向角度φで偏向し、第2偏向器110bは、第1偏向器110aで偏向された透過電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる(光軸に戻す)。これにより、試料において散乱角θで散乱された散乱波Bが光軸L上を進行し、主に散乱波Bが第1検出器210で検出される。すなわち、図9に示す状態では、散乱角θで散乱された散乱波Bを選択的に検出することができる。
【0102】
なお、上記の「主に散乱波Bが第1検出器210で検出される」とは、例えば図7図8に示す他の状態に比べて、図9に示す状態では第1検出器210で検出される電子において散乱波Bの割合が多いことをいう。
【0103】
上述したように、偏向角度φは散乱角θに変換することができるため、第1偏向器110aを制御して試料を透過した電子の偏向角度φを連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させることで、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、取り出すことができる。
【0104】
制御部130は、走査信号生成部118を制御して、所定の走査信号を第1偏向器110aおよび第2偏向器110bに送る。第1偏向器110aは、走査信号に基づいて試料
を透過した電子を二次元的に偏向させる。また、第2偏向器110bは、走査信号に基づいて第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行するように偏向させる。これにより、第1検出器210において、互いに異なる散乱角θで散乱された透過電子が、順次、検出される。
【0105】
フレームメモリー120は、偏向角度φの情報と、第1検出器210で得られた電子の強度の情報とを関連づけて記憶する。フレームメモリー120は、走査信号に基づいて、第1検出器210の出力信号を記憶することで偏向角度φの情報と、電子の強度の情報とを関連づけて記憶する。
【0106】
制御部130は、フレームメモリー120から偏向角度φの情報と関連付けて記録された電子の強度の情報を読み出して、偏向角度φを散乱角θに変換して回折パターンを生成し、回折パターンを画像表示部132に表示させる処理を行う。
【0107】
なお、荷電粒子装置200では、制御部130が偏向部110の制御を停止して、第1検出器210を光軸L上から退避させることで、直ちに透過像の観察が可能となる。
【0108】
荷電粒子装置200は、例えば、以下の特徴を有する。
【0109】
荷電粒子装置200は、対物レンズ108の後段に配置され、試料を透過した電子を偏向させる偏向部110と、結像光学系114の後段に配置された第1検出器210と、を備え、制御部130は、試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、第1検出器210で検出されるように偏向部110を制御する。荷電粒子装置200では、上述した荷電粒子装置100と同様に、制御部130が偏向部110を制御することにより、回折パターンを取得することができる。そのため、荷電粒子装置200では、荷電粒子装置100と同様に、結像光学系114の条件を変えることなく、透過像と回折パターンを取得することができる。したがって、荷電粒子装置200では、結像光学系114の磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響により観察倍率やカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0110】
さらに、荷電粒子装置200では、上述したように、制御部130が試料で互いに異なる散乱角で散乱された電子が、順次、第1検出器210で検出されるように偏向部110を制御することにより回折パターンを取得することができる。そのため、荷電粒子装置200では、荷電粒子装置100と同様に、結像光学系における磁気ヒステリシスや、磁場レンズの熱的変動の影響によりカメラ長にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0111】
荷電粒子装置200では、偏向部110は、第1偏向器110aと、第1偏向器110aの後段に配置された第2偏向器110bと、を有し、制御部130は、第1偏向器110aを制御して電子の偏向角度φを連続的に変化させるとともに、第2偏向器110bを制御して第1偏向器110aで偏向された電子を光軸Lに沿って進行させる。そのため、荷電粒子装置200では、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、光軸L上で進行させることができる。したがって、荷電粒子装置200では、第1検出器210を光軸L上に配置することで、試料で互いに異なる散乱角θで散乱された電子を、順次、検出することができる。
【0112】
荷電粒子装置200では、フレームメモリー120が、偏向角度φの情報と第1検出器210で得られ電子の強度の情報とを関連づけて記憶するため、フレームメモリー120に記録された情報を読み出すことで、回折パターンを得ることができる。
【0113】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
100…荷電粒子装置、102…電子源、104…照射光学系、106…試料ステージ、108…対物レンズ、110…偏向部、110a…第1偏向器、110b…第2偏向器、112…絞り、114…結像光学系、114a…中間レンズ、114b…投影レンズ、115…検出面、116…検出器、118…走査信号生成部、120…フレームメモリー、130…制御部、132…画像表示部、200…荷電粒子装置、210…第1検出器、1000…透過電子顕微鏡、1002…電子源、1004…照射光学系、1006…試料ステージ、1008…対物レンズ、1010…結像光学系、1012…検出器、1020…制御部、1100…磁場レンズ、1102…コイル、1104…ヨーク、1106…ポールピース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14