特許第6464071号(P6464071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464071
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190128BHJP
   H01R 4/30 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H01R4/30
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-202456(P2015-202456)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-76674(P2017-76674A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武一
(72)【発明者】
【氏名】菅家 篤
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−085245(JP,A)
【文献】 特開2007−073363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01R 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に基板が保持または載置される平板状の基体と、前記基体に埋設されている導電体と、前記導電体に電気的に接続される受電端子と、を備えている基板保持装置であって、
前記基体の裏面から前記導電体の一部まで縦方向に連続する縦穴が形成され、
前記基体の側面から前記縦穴まで横方向に連続する横穴が形成され、
前記受電端子が、前記基体の前記縦穴に配置されて前記導電体に対して接合され、前記横穴を通じて前記基体の側面に露出している箇所に給電端子を接続するための接続構造を有していることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板保持装置において、
前記受電端子が、前記横穴に連続する側面から窪んで形成されている雌ネジを前記接続構造として有していることを特徴とする基板保持装置。
【請求項3】
請求項1記載の基板保持装置において、
前記受電端子が、前記基体に形成されている前記縦穴の軸線方向について前記導電体の反対側に形成されている雌ネジまたは雄ネジを前記接続構造として有していることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板保持装置において、
前記受電端子が、その雌ネジまたは雄ネジに対して螺着される雄ネジまたは雌ネジを有する柱状の補完部材を備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項5】
請求項4記載の基板保持装置において、前記補完部材が、セラミックス焼結体により形成されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の基板保持装置において、
前記縦穴の少なくとも一部が前記基体の裏面から連続する非真円柱状に形成され、前記受電端子の少なくとも一部が前記縦穴の当該非真円柱状の部分に嵌合するように非真円柱状に形成されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の基板保持装置において、
前記横穴の断面形状が円形状であることを特徴とする基板保持装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の基板保持装置において、
前記横穴の軸線回りの周方向の少なくとも一部について前記横穴の内周面および前記給電端子の外周面に間隙が存在している状態で前記受電端子と前記給電端子とが接続されるように前記受電端子の前記接続構造が構成されていることを特徴とする基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体が埋設されている基体の表面に基板が保持または載置される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックの基体に埋設されている静電チャック電極に対して電圧を印加するため、次のような構成の接続端子が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、基体において基板が吸着される吸着側とは反対側に静電チャック電極と接続するための凹部が形成されている。略円筒状の接続端子が凹部に嵌入され、その一端面が静電チャック電極に対してロウ付けされている。接続端子の内側面には雌ネジが形成されており、これに対して外部電源に接続されている取り付け金具に形成されている雄ネジが螺着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−189696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基体の裏面側に接合される基台の構造によっては、給電端子またはそこに接続されている電線を基体の裏面側から延在させることができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、給電端子またはそこに接続されている電線を基体の側方から延在させることができる基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面に基板が保持または載置される平板状の基体と、前記基体に埋設されている導電体と、前記導電体に電気的に接続される受電端子と、を備えている基板保持装置に関する。
【0007】
本発明の基板保持装置は、前記基体の裏面から前記導電体の一部まで縦方向に連続する縦穴が形成され、前記基体の側面から前記縦穴まで横方向に連続する横穴が形成され、前記受電端子が、前記基体の前記縦穴に配置されて前記導電体に対して接合され、前記横穴を通じて前記基体の側面に露出している箇所に給電端子を接続するための接続構造を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の基板保持装置によれば、基体の裏面から導電体まで縦方向(基体の厚み方向)に連続して形成されている縦穴を通じて、受電端子と導電体とを接合(たとえばロウ付け)させることができる。基体の側面から縦穴まで横方向(基体の厚み方向に垂直な方向)に連続して形成されている横穴を通じて、受電端子の接続構造によって受電端子に対して給電端子を接続することができる。このため、横穴を通じて基体の側方から給電端子またはこれに接続されている電線を延在させることができる。
【0009】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記受電端子が、前記横穴に連続する側面から窪んで形成されている雌ネジを前記接続構造として有している。
【0010】
当該構成の基板保持装置によれば、少なくとも先端部の外周面に雄ネジが形成されている略柱状の給電端子を基体の横穴に挿入し、当該給電端子を回転させることでその雄ネジを受電端子の側面に形成されている雌ネジに螺着させることができる。これにより、受電端子および給電端子の電気的な接続が確立される。
【0011】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記受電端子が、前記基体に形成されている前記縦穴の軸線方向について前記導電体の反対側に形成されている雌ネジまたは雄ネジを前記接続構造として有している。本発明の一態様の静電チャックにおいて、前記受電端子が、その雌ネジまたは雄ネジに対して螺着される雄ネジまたは雌ネジを有する柱状の補完部材を備えている。
【0012】
当該構成の基板保持装置によれば、環状または半環状の先端部を有する給電端子を基体の横穴に挿入して、受電端子の(導電体との接合面を上端面として)下端面において雌ネジ(または雄ネジ)を除く部分にその先端部分を当接させることができる。この状態で、少なくとも先端部に雄ネジ(または雌ネジ)が形成された補完部材を基体の縦穴に挿入して回転させることで、その雄ネジ(または雌ネジ)を受電端子の雌ネジ(または雄ネジ)に螺着させることができる。これにより、給電端子の先端部が、相互に螺着している受電端子および補完部材によって挟まれるように接続され、受電端子と給電端子との電気的な接続が確立される。
【0013】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記補完部材が、セラミックス焼結体により形成されている。
【0014】
当該構成の基板保持装置によれば、基体表面(吸着面)付近から受電端子および縦穴の内周面を経由して基体に逃げる熱量の低減が図られる。このため、吸着面において受電端子の存在箇所が局所的に低温になる(コールドスポットが発生する)事態が抑制される。
【0015】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記縦穴の少なくとも一部が前記基体の裏面から連続する非真円柱状に形成され、前記受電端子の少なくとも一部が前記縦穴の当該非真円柱状の部分に嵌合するように非真円柱状に形成されている。
【0016】
当該構成の基板保持装置によれば、受電端子に基体の縦穴の軸線回りの回転力が加えられた場合、その回転力が縦穴の内側面を通じて基体に分散され、受電端子と導電体との接合箇所に集中するような事態が回避される。このため、受電端子に当該軸線回りの回転力が加わったとしても当該受電端子と導電体との接続状態が堅固に保持される。
【0017】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記横穴の断面形状が円形状である。
【0018】
当該構成の基板保持装置によれば、基体に対してその厚み方向に圧力が加えられる場合、当該圧力に応じた応力が横穴の軸線を基準としてその内側面の全方位に分散される。このため従来の手法でもある静電チャック裏面側に開放溝を設け、その溝に沿って導線等を配線する方法では溝底の角部に応力が集中することに比較して、横穴からクラックが入るなど、基体が損傷する可能性を低減させ、基体の耐久性の向上が図られる。このような圧力は、たとえば一対の静電チャックのそれぞれによりウエハ等の一対の基板のそれぞれが吸着保持され、当該一対の基板が張り合わせられる際に生じる。
【0019】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記横穴の軸線回りの周方向の少なくとも一部について前記横穴の内周面および前記給電端子の外周面に間隙が存在している状態で前記受電端子と前記給電端子とが接続されるように前記受電端子の前記接続構造が構成されている。
【0020】
当該構成の基板保持装置によれば、基体表面(吸着面)付近から受電端子、給電端子および横穴の内周面を経由して基体に逃げる熱量の低減が図られる。このため、吸着面において受電端子の存在箇所にコールドスポットが発生する事態が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態としての基板保持装置の部分断面図。
図2図1のII−II線に沿った断面図。
図3】本発明の第2実施形態としての基板保持装置の部分断面図。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
(構成)
図1および図2に示されている本発明の第1実施形態としての基板保持装置は、基体1と、導電体2と、受電端子21と、を備えている静電チャックとして構成されている。
【0023】
基体1は、セラミックス焼結体などの絶縁性誘電体からなり、表面101をウエハなどの基板(図示略)が吸着保持される吸着面とする平板状に形成されている。本実施形態における基体1は略円板状であるが、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。基体1の裏面102には金属製の略平板状の基台4がねじ止めなどの機械的に接合される。たとえば基台4に形成された貫通孔(図示略)に下方から挿通されたボルトが、基体1の裏面102から縦方向に形成された雌ネジに螺着されることにより、基体1および基台4が機械的に接合される。基台4は電気絶縁性部材であってもよい。
【0024】
基体1の吸着面には、当該吸着面から突出する略円柱状、略半球状または略円錐台状の複数のピン(図示略)が、三角格子状に配置されるように形成されている。なお、ピンの配置態様は正方格子状または同心円状など変更されてもよく、ピンが部分的にまたは全体的に省略されてもよい。
【0025】
基体1の縦方向(厚さ方向)についてその裏面102から導電体2まで縦穴11が形成されている。本実施形態では縦穴11の断面形状が真円形であるが(図2参照)、他の実施形態として基体1の縦方向について裏面102から連続する一部(下部)または全部の断面形状が、楕円形、長円形もしくは卵型、真円およびその径方向外側に突出した部分が合わせられた形状、多角形(三角形、正方形、正六角形もしくは正十二角形など)または台形などの非真円形であってもよい。
【0026】
基体1の横方向または径方向(厚さ方向に対して垂直な方向)についてその側面104から縦穴11まで連続する横穴12が形成されている。本実施形態では横穴12の断面形状は真円形であるが、他の実施形態として非真円形であってもよい。横穴12の軸線方向は基体1の表面101に対して平行であるが、表面101に対して傾斜していてもよい。
【0027】
導電体2は、基体1において吸着面に対して平行な姿勢で埋設されている薄板状または薄膜状の金属からなり、静電チャック電極を構成する。
【0028】
受電端子21は縦穴11の形状に対応する略真円柱状であり、縦穴11に嵌入された状態でその上端面が導電体2に対してロウ付け、はんだ付けまたは導電性接着剤による接着により電気的に接続されている。受電端子21は上端面が導電体2に対して接続されている状態で下端面が横穴12の下端よりも下方に位置するような長さであるが、その側面に雌ネジ211が形成可能であればこれよりも短くてもよい。なお、基体1の縦方向について縦穴11の下部または全部の断面形状が非真円形である場合、これに合わせて受電端子21の下部または全部の断面形状が非真円形であってもよい。複数の独立した静電チャック電極を構成する導電体2が基体1に埋設されている場合、各導電体2に対応する複数の受電端子21が基体1に設けられている。
【0029】
受電端子21において横穴12に連続するまたは面している側面が部分的に窪んで横方向を軸線方向とする雌ネジ211が形成されている。基体1の横穴12に略円柱状の給電端子22が挿入され、給電端子22の先端部に形成されている雄ネジ221が、受電端子21の側面に形成されている雌ネジ211に螺着される。受電端子21の雌ネジ211は、給電端子22の外周面がその全周(または少なくとも一部)にわたり横穴12の内周面から離間するような位置に形成されている。
【0030】
給電端子22の後端部には、給電端子22を外部電源に接続する電線が接続されている(図示略)。給電端子22は、その先端部において受電端子21に接続された状態で、後端部が横穴12から突出しているが、後端部が横穴12の中に納まるような長さであってもよい。
【0031】
(作製方法)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)は、たとえば次のような手順で作製される。すなわち、導電体2(静電チャック電極)が埋設されている原料粉末の成形体がホットプレス焼結される。原料粉末としては、たとえば高純度(例えば純度99.9%以上)の窒化アルミニウム粉末、必要に応じてこれに適量の酸化イットリウム粉末などの焼結助剤が添加された混合原料粉末が用いられる。そのほか、アルミナ粉末等、他のセラミックス粉末が原料粉末として用いられてもよい。導電体2としては、たとえばMo箔またはMoメッシュが用いられる。
【0032】
そのうえで、当該焼結体に複数のピン、縦穴11および横穴12がブラスト加工またはミリング加工などの適当な加工法にしたがって形成される。さらに、雌ネジ211が側面に形成されているニッケル、チタンまたはコバール等の金属製の受電端子21が縦穴11に嵌入され、その上端面が導電体2に対してロウ付け、はんだ付けまたは導電性接着剤により接着される。前記工程によって前記構成の静電チャックが製造される。
【0033】
(機能)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)によれば、給電端子22を基体1の横穴12に挿入してその軸線回りに回転させることで、給電端子22の先端部に形成されている雄ネジ221を受電端子21の側面に形成されている雌ネジ211に螺着させることができる。これにより、受電端子21および給電端子22の電気的な接続が確立される。このため、横穴12を通じて基体1の側方から給電端子22またはこれに接続されている電線(図示略)を延在させることができる。また、給電端子22を受電端子21に対する螺着時と逆方向に回転させることにより、基体1を基台4から取り外すことなく給電端子22を受電端子21から取り外すことができるので、給電端子22の交換または修理作業が簡易化される。
【0034】
横穴12の内周面および給電端子22の外周面に間隙が存在しているので、基体1の表面101(吸着面)付近から受電端子21、給電端子22および横穴12の内周面を経由して基体1に逃げる熱量の低減が図られ、吸着面101において受電端子21の存在箇所にコールドスポットが発生する事態が抑制される。
【0035】
受電端子21をロウ付けまたは導電性接着剤で接着する場合、断面形状が非円形であれば特別な回転方向の位置あわせを必要とすることなく雌ネジ211の軸が、横穴12の軸とほぼ同一にすることができ給電端子22を容易に受電端子21と接続することができる。
【0036】
(第2実施形態)
(構成)
図3および図4に示されている本発明の第2実施形態としての基板保持装置は、本発明の第1実施形態としての基板保持装置(図1および図2参照)とほぼ同様の構成であるので、共通する構成には同一の符号を用い、説明を省略する。
【0037】
本実施形態では縦穴11の断面形状が長円形であるが(図4参照)、他の実施形態として基体1の縦方向について裏面102から連続する一部(下部)または全部の断面形状が、真円形のほか、長円形以外の非真円形であってもよい。長円形はその短軸方向が基体1の径方向に一致するような姿勢であるが、その長軸方向が基体1の径方向に一致するような姿勢など、さまざまな姿勢であってもよい。
【0038】
受電端子21は縦穴11の形状に対応する略長円柱状である。受電端子21の下端面には縦方向を軸線方向とする雌ネジ212が形成されている。基体1の横穴12に略ロッドの給電端子22が挿入され、給電端子22の略円環状の先端部に形成されている穴222が、雌ネジ212に位置合わせされる。この状態で、基体1の縦穴11に略円筒状の補完部材23が挿入され、その上端に形成されている雄ネジ232が受電端子21の雌ネジ212に対して螺着される。給電端子22の先端部は略円環状のほか、略U字形状など、雌ネジ212および雄ネジ232を除く部分で受電端子21および補完部材23の間に挟み込まれる任意の形状であってもよい。
【0039】
受電端子21は上端面が導電体2に対して接続されている状態で下端面が横穴12の上端よりも下方である一方で横穴12の下端よりも上方に位置するような長さである。この長さは、給電端子22の外周面がその全周(または少なくとも一部)にわたり横穴12の内周面から離間するような位置に形成されている。補完部材23はセラミックス焼結体により形成されているが、金属または樹脂などの他の材料により形成されていてもよい。補完部材23は静電チャックの構成要素であってもなくてもよい。補完部材23は電気絶縁性が望ましいが基台4が電気絶縁性部材であれば導電性であってもよい。
【0040】
受電端子21に雌ネジ212に代えて雄ネジが形成され、補完部材23に雄ネジ232に代えて当該雄ネジに螺着される雌ネジが形成されていてもよい。
【0041】
(作製方法)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)は、受電端子21の構成のみが異なるのみで、本発明の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0042】
(機能)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)によれば、給電端子22が基体1の横穴12に挿入してその先端部の穴222を受電端子21の下端面に形成されている雌ネジ212に位置合わせされる。このうえで、補完部材23が基体1の縦穴11に挿入されて回転されることで、その雄ネジ232を受電端子21の雌ネジ212に螺着させることができる。これにより、給電端子22の先端部が受電端子21の下端面および補完部材23の上端面の間に挟まれ、受電端子21および給電端子22の電気的な接続が確立される。このため、横穴12を通じて基体1の側方から給電端子22またはこれに接続されている電線(図示略)を延在させることができる。また、基体1を基台4から取り外したうえで、補完部材23を受電端子21に対する螺着時と逆方向に回転させることにより、給電端子22を受電端子21から取り外すことができるので、給電端子22の交換または修理作業が簡易化される。
【0043】
受電端子21の少なくとも一部が縦穴11の当該非真円柱状の部分に嵌合するように非真円柱状に形成されているので、受電端子21に基体1の縦穴11の軸線回りの回転力が加えられた場合、その回転力が縦穴11の内側面を通じて基体1に分散され、受電端子21と導電体2との接合箇所に集中するような事態が回避される。このため、たとえば補完部材23の雄ネジ232を受電端子21の雌ネジ212に螺着させる際など、受電端子21に当該軸線回りの回転力が加わったとしても受電端子21と導電体2との接続状態が堅固に保持される。
【0044】
補完部材23がセラミックス焼結体により形成されているので、金属などの熱伝導率が高い材料により形成されている場合と比較して、基体1の表面101(吸着面)付近から受電端子21および縦穴11の内周面を経由して基体1に逃げる熱量の低減が図られ、吸着面101において受電端子21の存在箇所にコールドスポットが発生する事態が抑制される。
【0045】
(本発明の他の実施形態)
受電端子21が基体1の横穴12に挿入された給電端子22を電気的に接続させるための接続構造として前記実施形態とは異なる接続構造を有していてもよい。たとえば、受電端子21が横穴12に連通する箇所に、横穴12の軸線方向に平行に延在するスリットまたは穴を接続構造として有していてもよい。給電端子22の適当な形状に形成された先端部が当該スリットまたは穴に嵌合されることで、受電端子21および給電端子22の電気的な接続が確立されてもよい。また、給電端子22がその先端部を受電端子21に向かって付勢するコイルバネまたは板バネなどの付勢機構を備え、受電端子21の側面が給電端子22の先端部の形状に適合する形状に形成されている箇所が接続構造とされていてもよい。第2実施形態のように受電端子21が略長円柱状であり、かつ、給電端子22の先端部が平坦面である場合、受電端子21の側面のうち平坦または略平坦な箇所がそのまま接続構造を構成していてもよく、当該箇所に設けられた平坦な底面を有する凹部が接続構造を構成していてもよい。
【0046】
また、給電端子22のかわりに銅線やニッケル線のような金属より線とその一方の先端に圧着端子を接続したケーブルを横穴12に挿通させ、補完部材23で圧着端子を受電端子21に締結し電気的な接続をとる構造としてもよい。
【0047】
前記実施形態における静電チャックの基体1において、静電チャック電極を構成する導電体2に加えて、薄板状または薄膜状の金属からなり発熱抵抗体を構成する導電体が基体1に対して埋設されていてもよい。発熱抵抗体を構成する導電体は、基体1の縦方向について当該導電体2よりも裏面102に近い位置に、表面101に対して平行な姿勢で基体1に埋設されている。発熱抵抗体を構成する導電体についても、静電チャック電極を構成する導電体2と同様の構成の受電端子および給電端子を介して外部電源に接続される。
【0048】
この場合、静電チャックはたとえば特開2013−157570号公報に記載されている方法にしたがって製造される。すなわち、第1導電体(静電チャック電極)が埋設されている第1原料粉末の成形体と、第2導電体(発熱抵抗体)が埋設されている第2原料粉末の成形体とが重ね合わせられた状態で、まとめてホットプレス焼結される。その上で、当該焼結体にピン、縦穴11および横穴12等が適当な加工法にしたがって形成されることにより静電チャックが製造される。
【0049】
そのほか、第1導電体2およびこれを挟む一対の第1原料粉末の成形体と、第2導電体およびこれを挟む一対の第2原料粉末の成形体とが重ね合わせられた状態で、まとめてホットプレス焼結されることにより静電チャックが製造されてもよい。また、第1導電体2が埋設されている第1原料粉末の成形体と、第2導電体が埋設されている第2原料粉末の成形体とが別個にホットプレス焼結されることにより第1基体部分および第2基体部分が作製された上で、両基体部分が接合されることにより静電チャックが製造されてもよい。この場合、窒化アルミニウム焼結体の接合材としてアルミナ−酸化イットリウム系の接合材が用いられ、そのほかガラス系接合材が用いられてもよい。ガラス系材料としては、石英、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラスなどが採用される。
【0050】
前記実施形態における基板保持装置において、導電体2が高周波電圧印加用電極または接地用電極を構成していてもよい。この場合、当該導電体2およびこれと対をなす、基体1に埋設されているまたは基体1の外側に配置されている接地用電極(また高周波電圧印加用電極)の間に高周波電圧が印加されることによって基板の周囲にハロゲンガス等のプラズマが生成される。
【符号の説明】
【0051】
1‥基体、2‥導電体(静電チャック電極)、11‥縦穴、12‥横穴、21‥受電端子、22‥給電端子。
図1
図2
図3
図4