(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464098
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】ボルチオキセチンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 295/096 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
C07D295/096
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-558446(P2015-558446)
(86)(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公表番号】特表2016-509042(P2016-509042A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014053313
(87)【国際公開番号】WO2014128207
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】PA201300104
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】61/767,883
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ルーランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,キム ラッセ
【審査官】
村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−505585(JP,A)
【文献】
特表2009−541216(JP,A)
【文献】
Lee, C. C. et al.,Nucleophilic aromatic substitution reactions in cyclopentadienyliron complexes of chloroarenes and nitroarenes,Synthesis and Reactivity in Inorganic and Metal-Organic Chemistry,1986年,vol.16 no.4,pp.541-552
【文献】
Pearson, Anthony J. et al.,Studies on selective nucleophilic substitution reactions of [(cyclopentadienyl)(1,3- and 1,4-dichlorobenzene)Fe]+PF6- complexes: Applications to the synthesis of polymer monomers,Journal of Organic Chemistry ,1994年,vol.59 no.16,pp.4561-4570
【文献】
Abd-El-Aziz, A. S. et al.,Design of polyethers, thioethers, and amines with pendent iron moieties,Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry,2001年,vol.39 no.8,pp.1216-1231
【文献】
Lee, C. C. et al.,Nucleophilic substitution reactions of η6-o-dichlorobenzene-η5-cyclopentadienyliron hexafluorophosphate,Journal of Organometallic Chemistry,1986年,vol.315 no.1,pp.79-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルチオキセチンまたはその薬学的に許容できる塩の製造のための方法であって、式I
【化1】
(式中、各Halが、独立して、フルオロまたはクロロを表し;R’がHを表し、またはR’が、CHO、COOH、COOR’’’またはCOONR’’’
2から独立して選択される1つまたは2つの部分を表し、またはR’が、C
1〜6−アルキルから独立して選択される1〜5つの部分を表し;R’’’が、独立して、HまたはC
1〜6−アルキルを表し;X
−が、非配位性および非求核性アニオンを表す)の化合物を、式II
【化2】
(式中、Rが、Hを表す)
のピペラジン、
および式III
【化3】
(式中、R’’が、Hまたはカチオンを表す)の化合物および必要に応じて塩基と溶媒中で反応させて、式IV
【化4】
の化合物を得る工程と、続いて、前記任意選択的に置換されるシクロペンタジエニル鉄を脱錯体化して、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン(ボルチオキセチン)を得る脱錯体化工程とを含む方法。
【請求項2】
Halがクロロを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R’が水素を表す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
X−が、PF6−、AlCl4−、ClO4−、BF4−、[B[3,5−(CF3)2C6H3]4]−、B(C6F5)4−およびAl(OC(CF3)3)4−から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
X−がPF6−である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、MTBE(メチル第三級ブチルエーテル)、水、エタノール、2−プロパノール、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、TEA(トリエチルアミン)、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、DCM(ジクロロメタン)、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組合せから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R’’がHを表す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱錯体化工程が光分解を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1当量の式Iの化合物が、式IIの化合物(1〜5当量)および式IIIの化合物(1〜5当量)と、溶媒中で、必要に応じて塩基(0.5当量超)と一緒に混合されて、式IVの化合物が得られ、その後、脱錯体化により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1当量の式Iの化合物が、塩基(0.5〜20当量)、ピペラジン(1〜5当量)および2,4−ジメチルチオフェノール(1〜5当量)と、溶媒中で混合されて、式IVの化合物が得られ、その後、脱錯体化により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1当量のη
6−1,2−ジクロロベンゼン−η
5−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートが、1〜5当量の塩基、1〜3当量の2,4−ジメチルチオフェノールおよび1〜3当量のピペラジンと、溶媒中で、10℃〜50℃で混合されて、下式
【化5】
の化合物が得られ、その後、脱錯体化により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記得られた1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが、好適な酸と反応されて、当量の薬学的に許容できる塩が得られる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]−ピペラジンまたはその薬学的に許容できる塩の製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第03/029232号パンフレットおよび国際公開第2007/144005号パンフレットを含む国際特許出願には、化合物1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンおよびその薬学的に許容できる塩が開示されている。WHOは、それ以後、ボルチオキセチンが、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンの推奨される国際一般名(INN)であることを発表した。ボルチオキセチンは、これまでに、Lu AA21004のような文献において言及された。FDAおよびEMAは、それ以後、Brintellix(商標)という商標でうつ病の治療のためのボルチオキセチンを認可した。
【0003】
ボルチオキセチンは、5−HT
3、5−HT
7、および5−HT
1D受容体アンタゴニスト、5−HT
1B受容体部分アゴニスト、5−HT
1A受容体アゴニストおよび5−HT輸送体の阻害剤である。さらに、ボルチオキセチンは、脳の特定の領域において、神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンおよびヒスタミンのレベルを高めることを示した。これらの活性の全ては、臨床的関連を有するものと考えられ、潜在的に、化合物の作用機序に関与する[J.Med.Chem.,54,3206−3221,2011;Eur.Neuropshycopharmacol.,18(suppl 4),S321,2008;Eur.Neuropshycopharmacol.,21(suppl 4),S407−408,2011;Int.J.Psychiatry Clin Pract.5,47,2012]。
【0004】
ボルチオキセチンは、臨床試験において、安全であり、かつうつ病の有効な治療剤であることが示されている。Alvaresらによって作成された、大うつ病性障害(MDD)の患者における化合物の有効性および耐容性を評価するための概念実証試験の結果を報告する論文は、Int.J.Neuropsychopharm.18 July 2011によって、オンラインで閲覧可能になった。各群約100人の患者による6週間のランダム化プラセボ対照試験の結果は、ボルチオキセチンが、MDDの患者の抑うつ症状および不安症状の治療においてプラセボと著しく異なることを示す。臨床的に関連する変化が、臨床検査結果、バイタルサイン、体重、または心電図パラメータに見られなかったことも報告される。長期試験の結果も、ボルチオキセチンが、MDDに罹患した患者の再発を防ぐのに有効であることを示す[Eur.Neuropsychopharmacol.21(suppl 3),S396−397,2011]。Int.Clin.Psychopharm.,27,215−227,2012において報告される高齢のうつ病患者の研究は、ボルチオキセチンが、認知機能障害を治療するのに使用され得ることを示す。
【0005】
国際公開第03/029232号パンフレットに開示されるボルチオキセチンを調製するのに使用される製造方法は、固相合成に基づくものであり、多段階プロセスにおいてジアレーン鉄(di−arene iron)による芳香族求核置換反応を用いる。要約すれば、4−[ピペラジン−1−イル]カルボニルオキシメチル]フェノキシメチルポリスチレンを、ジアレーン鉄塩、すなわち、η
6−1,2−ジクロロベンゼン−η
5−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートと反応させた後、樹脂の単離および洗浄ならびに2,4−ジメチルチオフェノールとのさらなる反応を行った。最後に、このように得られた樹脂を、1,10−フェナントロリンおよび光で処理して、シクロペンタジエニル鉄を脱錯体化した(de−complex)。全収率は低く、わずか17%であった。同様のプロセスが、国際公開第01/49678号パンフレットに開示されており、この文献では、フェノキシフェニルピペラジンが、中間体として調製される。
【0006】
サンドイッチ構造中で鉄に結合された2つのペンタジエニル環からなるフェロセンによって例示されるジアレーン鉄化合物が、長い間知られていた。これらの化合物は、例えば複素環化合物の調製に有用な手段であることが分かっている。例として、Pearson et al,J.Org.Chem.61,1297−1305,1996には、環状第二級アミン、例えばピペラジンによる、1,4−ジクロロベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)からのクロロ原子の移動が開示されている。興味深いことには、この反応により、対称移動(symmetric displacement)、すなわち、ベンゼン部分からの両方のクロロ原子の移動が得られる。Sutherland et al,J.Heterocyclic Chem.,19,801−803,1982には、1,2−ジクロロベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)における両方のクロロ原子が、置換1,2−ジチオフェノールによって置換されて、対応するチアントレンが得られることが開示されている。Pearson et al[J.Org Chem.,59,4561−4570,1994]には、2つのクロロ原子がフェノキシおよびモルホリンによってそれぞれ置換される不斉化合物の製造における1,4−ジクロロベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートの使用が開示されている。特に、2つの置換基は、非常に異なる反応条件および中間体の単離を必要とし、一置換化合物が必要とされた。Ruhland et al,J.Org.Chem.,67,5257−5268,2002には、1,2−二置換ベンゼンの合成が開示されており、この合成では、化学的に同一のクロロ原子の異なる置換基による選択的置換が、固相におけるシクロペンタジエニル活性化によって達成される。
【0007】
固相化学は、トン規模の製造を必要とする医薬品製造では実現可能でない。必要とされ得る樹脂の大規模な処理および関連するコストが非常に高い。さらに、ボルチオキセチンについて得られる低い収率(わずか17%)により、この製造経路の魅力がなくなる。
【0008】
ボルチオキセチンの大規模な製造が、国際公開第2007/144005号パンフレットおよび国際公開第2010/094285号パンフレットに開示されている。ピペラジン、2,4−ジメチルチオフェノールおよび1,2−ジハロゲンベンゼンが、例えばトルエン中で、パラジウム触媒と混合されて、ボルチオキセチンが得られる。この反応は、高い収率を提供し、大規模に取り扱うことができるが、高価な触媒、すなわち、パラジウムの使用を必要とする。さらに、反応条件は、満足のいく結果を得るために高温を用いる厳しい条件であり、すなわち、還流温度または80〜120℃および強塩基の使用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、穏やかな条件で行うことができ、高い収率をもたらす、安価な出発材料を使用する、ボルチオキセチンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン(ボルチオキセチン)またはその薬学的に許容できる塩が、好適なジアレーン鉄塩、すなわち、任意選択的に置換される1,2−ジハロゲンベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)塩を、任意選択的に保護されたピペラジンおよび2,4−ジメチルチオフェノール(フェノレート)と反応させる反応、続いて、任意選択的に置換されるシクロペンタジエニル鉄の脱錯体化、および保護されたピペラジンがプロセスに適用される場合、必要に応じてピペラジンの脱保護により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得る工程において調製され得ることを見出した。所望の薬学的に許容できる塩が、好適な酸とのその後の反応によって得られる。
【0011】
したがって、一実施形態において、本発明は、ボルチオキセチンまたはその薬学的に許容できる塩の製造のための方法であって、式I
【化1】
(式中、各Halが、独立して、フルオロまたはクロロを表し;R’がHを表し、またはR’が、CHO、COOH、COOR’’’またはCOON
R’’’2から独立して選択される1つまたは2つの部分を表し、またはR’が、C1〜6−アルキルから独立して選択される1〜5つの部分を表し;R’’’が、独立して、HまたはC1〜6−アルキルを表し;X−が、非配位性および非求核性アニオンを表す)の化合物を、式II
【化2】
(式中、Rが、Hまたは保護基を表す)の任意選択的に保護されたピペラジン、
および式III
【化3】
(式中、R’’が、Hまたはカチオンを表す)の化合物および必要に応じて塩基と溶媒中で反応させて、式IV
【化4】
の化合物を得る工程と、続いて、任意選択的に置換されるシクロペンタジエニル鉄を脱錯体化する脱錯体化工程と、必要に応じて、任意選択的に保護されたピペラジン部分を脱保護して、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン、すなわち、ボルチオキセチンを得る脱保護工程とを含む方法を提供する。
【0012】
式Iの化合物、式IIの化合物および式IIIの化合物は、任意の順序でまたは同時に、反応混合物に加えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の反応のフローケミストリー設備(flow chemistry set−up)の概略図。式Iの化合物が、式IIの化合物および式IIIの化合物と混合されて、脱錯体化および必要に応じて脱保護の後、ボルチオキセチンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式Iの化合物は、シクロペンタジエニル断片の金属中心にη
6−結合されたジハロゲン置換ベンゼン部分を含む。前記ハロゲンは、独立して、フルオロおよびクロロから選択される。一実施形態において、ハロゲンは同一であり;特に、両方のハロゲンはクロロである。この実施形態において、ジアレーン鉄化合物は、非常に安価な出発材料、すなわち、1,2−ジ−クロロベンゼンから作製され得る。
【0015】
R’がHを表し、またはR’が、CHO、COOH、COOR’’’またはCOON
R’’’2から独立して選択される1つまたは2つの部分を表し、またはR’が、C
1〜6−アルキルから独立して選択される1〜5つの部分を表し;R’’’が、独立して、HまたはC
1〜6−アルキルを表す。一実施形態において、R’が、メチルなどの1つのC
1〜6−アルキルを表す。一実施形態において、R’が水素であり、すなわち、シクロペンタジエニル部分は非置換である。一実施形態において、R’’’がメチルを表す。
【0016】
Rが、ピペラジン窒素の1つにおける任意選択の保護基を表す。多くの保護基が当該技術分野において公知であり、有用な例としては、−C(=O)O−W、−C(=O)−W、Boc、BnおよびCbz、特にBocが挙げられる。Wが、アルキルまたはアリールを表し;Bnが、ベンジルの略記であり;Bocが、t−ブチルオキシカルボニルの略記であり;Cbzが、カルボベンジルオキシの略記である。モノ保護された(mono−protected)ピペラジンが、本発明の反応に使用される場合、保護基は、その後の工程において、典型的に、酸水溶液(aqueous acid)などの酸の添加によって除去される必要がある。適切に選択される場合、前記酸は、保護基を除去し、同一の工程においてボルチオキセチンの所望の薬学的に許容できる塩を提供し得る。HBr水溶液の使用により、1つの工程において、脱保護およびボルチオキセチンのHBr塩が実現され得る。本発明の反応は、非保護ピペラジンを用いて行うことができ、これは、処理工程の数の減少、ひいては固有の簡潔性のため有益である。
【0017】
本発明の文脈において、「C
1〜6−アルキル」という用語は、1〜6つの炭素原子を含有する直鎖状、分枝鎖状および/または環状の飽和炭化水素を示すことが意図され、ここで、アルキルは置換されていてもよい。例としては、メチル、エチル、イソプロピル、シクロペンチルおよび2−シクロプロピル−エチルが挙げられる。
【0018】
本発明の文脈において、「アリール」という用語は、任意選択的に置換される炭素環式芳香族炭化水素を示すことが意図される。
【0019】
R’’が、水素、または有機もしくは無機のいずれかであり得るカチオンのいずれかを表す。無機カチオンとしては、K
+、Na
+、Li
+およびMg
++などの一価または二価金属イオンなどの金属イオンが挙げられる。有機カチオンの例としては、2−ヒドロキシエチル−トリメチルアンモニウムおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。本発明の反応は、2,4−ジメチルチオレートが存在する場合、最も良く動作する。これは、例えば、チオレート塩(R’’がカチオンを表す)を反応混合物に加えることによって、またはチオフェノール化合物(R’’がHを表す)および必要に応じて好適な塩基を加えて、対応するチオレートを得ることによって行われ得る。チオフェノールと、チオレートと、塩基との好適な混合物も使用され得る。本発明の方法は、過酷な塩基性条件を必要とせず、プロセス化学に典型的に適用される塩基が適用され得る。有用な塩基の例としては、K
2CO
3、NaOEt、NaO(t−Bu)、KO(t−Bu)、NaOH、KOHおよびNaHが挙げられる。
【0020】
X
−が、非配位性および非求核性アニオンを表す。本発明の文脈において、非配位性アニオンは、式Iまたは式IIIの化合物における鉄に対する配位結合を実質的に形成しないアニオンを示すことが意図される。本発明の文脈において、非求核性アニオンは、式Iの化合物におけるHalを実質的に置換しないアニオンを示すことが意図される。典型例としては、BF
4−、PF
6−、ClO
4−、[B[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4]
−、B(C
6F
5)
4−およびAl(OC(CF
3)
3)
4−が挙げられる。PF
6−の使用には、式Iの化合物のPF
6−塩が容易に単離され、貯蔵されるという利点がある。これは、式Iの化合物が、本発明の方法と時間および場所が異なる方法において調製され得ることを意味する。
【0021】
多種多様な溶媒が、本発明の方法に適用され得る。有用な例としては、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)、水、エタノール、2−プロパノール、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、TEA(トリエチルアミン)、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、DCM(ジクロロメタン)、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0022】
任意選択的に置換されるシクロペンタジエニル−鉄断片は、脱錯体化工程において除去される。この工程は、文献から周知であり、様々な方法で達成され得る。J.Heterocycl.Chem.,19,801−803,1982には、脱錯体化が、200〜250℃における熱分解によって達成され得ることが開示されており;J.Org Chem,67,5257−5268,2002およびJ.Polymer.Sci.,35,447−453,1997は、CH
3CNおよび1,10−フェナントロリンの存在下で光分解を適用し;Chem.Soc.Perkin Trans I.,197−201,1994には、ピリジンまたはDMSOなどの高沸点溶媒中での高温におけるカリウムtert−ブトキシドの使用が開示されている。光解離または光分解(photodecomposition)としても知られている光分解(photolysis)は、化学結合が光の照射により破壊される化学反応である。本発明の反応では、光分解による脱錯体化が、可視スペクトルまたは近紫外スペクトルにおける光の照射により好都合に行われ得る。
【0023】
本発明に使用される式Iの化合物の製造は、文献から公知である。J.Org.Chem,67,5257−5268,2002には、1,2−ジクロロベンゼン、無水三塩化アルミニウム、アルミニウム粉末およびフェロセンを95℃で反応させた後、水系後処理(aqueous work−up)およびアンモニウムヘキサフルオロホスフェートによる処理を行うプロセスが開示されている。式I(式中、X
−が、ヘキサフルオロホスフェートと異なるアニオンを表す)の化合物が、異なる適切な塩、例えばアンモニウムBF
4によって同様の方法で得られる。好適に置換されるフェロセンが使用される場合、式I(式中、R’がHと異なる)の化合物が得られる。
【0024】
2,4−ジメチル−チオフェノール、その塩および(任意選択的に保護された)ピペラジンは全て周知の化合物であり、容易に、大量に入手可能である。
【0025】
式IIIの化合物は、例えば、グリニャール反応において、対応する臭化アリールまたは塩化アリール、すなわち、1−ブロモ−2,4−ジメチル−ベンゼンまたは1−クロロ−2,4−ジメチル−ベンゼンから得ることができ、この反応において、前記化合物を、Mg、続いて硫黄原子と反応させて、式III(式中、R’’が、MgCl
+またはMgBr
+を表す)の化合物を得る。
【0026】
本発明の方法の利点は、それが、周囲温度、例えば15〜30℃などの低温で動作することである。しかしながら、本発明の反応は、選択される溶媒が使用される温度(および圧力)で十分に流体である限り、はるかに高い温度およびはるかに低い温度の両方で動作する。一実施形態において、温度は、−25℃〜140℃、例えば0℃〜100℃などである。一実施形態において、温度は、10℃〜80℃、例えば15℃〜50℃などである。
【0027】
薬学的に許容できる塩が、非毒性の酸の酸付加塩を示すことが意図される。前記塩としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビス−メチレンサリチル酸(bis−methylenesalicylic acid)、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸などの有機酸から作製される塩、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば、8−ブロモテオフィリンが挙げられる。前記塩はまた、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機酸から作製され得る。臭化水素酸および乳酸から作製される塩が特に挙げられる。臭化水素酸塩が特に挙げられる。
【0028】
一実施形態において、1当量の式Iの化合物が、式IIの化合物(1〜5当量、例えば1〜3当量など)、式IIIの化合物(1〜5当量、例えば1〜3当量など)と、溶媒中で、必要に応じて塩基(0.5当量超、例えば0.5〜20当量など、例えば1〜5当量など)と一緒に、例えば、10〜50℃、例えば15〜25℃などで混合されて、式IVの化合物が得られる。次に、式IVの化合物は、例えば、光分解によって脱錯体化され、ピペラジンにおける保護基が、例えば、酸の添加によって、必要に応じて除去されて、ボルチオキセチンが得られる。薬学的に許容できる塩が、適切な酸とのさらなる反応によって得られる。脱錯体化の前に、必要に応じてピペラジンを脱保護することも実現可能であり得る。
【0029】
一実施形態において、1当量の式Iの化合物が、溶媒中で、塩基(0.5当量超、例えば0.5〜20当量など、例えば1〜5当量など)およびピペラジン(1〜5当量、例えば1〜3当量など)と混合される。混合物は、(例えば、10〜50℃、例えば15〜25℃などで)撹拌され、2,4−ジメチルチオフェノール(1〜5当量、例えば1〜3当量など)が加えられ、反応物は撹拌されて、式IVの化合物が得られる。次に、式IVの化合物は、例えば、光分解によって脱錯体化され、ボルチオキセチンが得られる。薬学的に許容できる塩が、適切な酸とのさらなる反応によって得られる。
【0030】
一実施形態において、1当量のη
6−1,2−ジクロロベンゼン−η
5−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートが、THF/水などの溶媒中で、1〜5当量の塩基およびピペラジン(1〜3当量、例えば2当量など)と混合される。撹拌した後、2,4−ジメチルチオフェノール(1〜3当量、例えば2当量など)が加えられ、得られた混合物が、例えば、10℃〜50℃で撹拌されて、式IVの化合物が得られる。ボルチオキセチンが、脱錯体化、例えば光分解によって得られる。
【0031】
光分解による脱錯体化は、例えば、バッチ式またはフロー式で行われ得る。脱錯体化は、以下の方法で好都合に行われ得る。式IVの化合物を含む反応混合物は、酸水溶液(例えば、HCl水溶液)と混合され、有機不純物が、例えば、n−ヘプタンなどの不混和性の有機溶媒の添加、続いて、相分離によって、任意選択的に除去される。上で得られる式IVの化合物を含有する相が、光分解が行われる照射されたガラス管に通されて、ボルチオキセチンが得られる。例として、水相は、照射されたガラス管に通して循環され得る。
【0032】
あるいは、式Iの化合物は、調製され、単離なしで、本発明の方法に直接使用され得る。例えば、1,2−ジクロロベンゼン(2〜20当量、例えば3〜6当量など)が、好適に置換されるフェロセン(1当量)、塩化アルミニウム(0.1〜2当量、例えば0.2〜1当量など)およびアルミニウム微粉末(0.01〜0.5当量、例えば0.05〜0.2当量など)と混合され、80〜120°、例えば100〜110°などに加熱されて、式Iの化合物が得られる。次に、式Iの化合物が、上述されるようにさらに反応されて、ボルチオキセチンが得られる。
【0033】
本発明の方法は、バッチ式で行われてもよく、バッチ式では、反応剤が槽または容器に加えられる。あるいは、本発明の方法は、フローケミストリーに適しており、フローケミストリーでは、反応剤が混合され、反応が行われる管を通して注入される。
図1は、本発明の反応のための概略的なフロー設備を示す。本発明の反応はまた、部分的にバッチ式でおよび部分的にフロー設備で行われてもよい。
【0034】
一実施形態において、本発明は、本発明の方法によって製造されるボルチオキセチンおよびその薬学的に許容できる塩に関する。
【0035】
例において示されるように、本発明は、ボルチオキセチンおよびその薬学的に許容できる塩のための非樹脂に基づく製造方法を提供し、ここで、対称的な反応剤(1,2−ジハロゲンベンゼン)からの2つの同一のハロゲン原子の非対称移動(asymmetric displacement)が、ワンポット合成で、すなわち、1つのみのハロゲンが置換される中間体などの、中間体の単離を必要とせずに行われる。本発明の方法は、高価な反応剤および触媒の使用を避け;低温で、および一般に、穏やかな条件で行うことができる。したがって、簡単でかつ安価な製造装置を適用することができ、望ましくない副反応のリスクが最小限に抑えられる。高い収率および高い純度が得られ、本発明の方法は、工業規模によく適している。
【0036】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参照文献は、特定の文献の別個に提供される援用が本明細書の他の箇所でなされるかどうかにかかわらず、各参照文献が参照により援用されることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度に全体が参照により本明細書に援用される。
【0037】
本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語および類似の指示対象の使用は、本明細書に特に示されない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。例えば、「化合物(the compound)」という語句は、特に示されない限り、本発明の様々な化合物または特定の記載される態様を示すものと理解されるべきである。
【0038】
1つまたは複数の要素に関する「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、または「含有する(containing)」などの用語を用いた本発明の任意の1つまたは複数の態様の本明細書における説明は、特に記載しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、該当する特定の1つまたは複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、または「を実質的に含む(substantially comprises)」本発明の類似の1つまたは複数の態様に裏付けを与えることが意図される(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書に記載される組成物は、特に記載しない限りまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、該当する要素からなる組成物も説明するものと理解されるべきである)。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)ボルチオキセチンまたはその薬学的に許容できる塩の製造のための方法であって、式I
【化6】
(式中、各Halが、独立して、フルオロまたはクロロを表し;R’がHを表し、またはR’が、CHO、COOH、COOR’’’またはCOONR’’’2から独立して選択される1つまたは2つの部分を表し、またはR’が、C1〜6−アルキルから独立して選択される1〜5つの部分を表し;R’’’が、独立して、HまたはC1〜6−アルキルを表し;X−が、非配位性および非求核性アニオンを表す)の化合物を、式II
【化7】
(式中、Rが、Hまたは保護基を表す)の任意選択的に保護されたピペラジン、
および式III
【化8】
(式中、R’’が、Hまたはカチオンを表す)の化合物および必要に応じて塩基と溶媒中で反応させて、式IV
【化9】
の化合物を得る工程と、続いて、前記任意選択的に置換されるシクロペンタジエニル鉄を脱錯体化する脱錯体化工程と、必要に応じて、前記任意選択的に保護されたピペラジン部分を脱保護して、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン(ボルチオキセチン)を得る脱保護工程とを含む方法。
(2)Halがクロロを表す、上記(1)に記載の方法。
(3)R’が水素を表す、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)RがHを表す、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)Rが保護基を表す、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法。
(6)Rが、Boc、Fmoc、BnおよびCbzから選択される保護基を表す、上記(5)に記載の方法。
(7)X−が、PF6−、AlCl4−、ClO4−、BF4−、[B[3,5−(CF3)2C6H3]4]−、B(C6F5)4−およびAl(OC(CF3)3)4−から選択される、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の方法。
(8)X−がPF6−である、上記(7)に記載の方法。
(9)前記溶媒が、トルエン、THF(テトラヒドロフラン)、MTBE(メチル第三級ブチルエーテル)、水、エタノール、2−プロパノール、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、TEA(トリエチルアミン)、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、DCM(ジクロロメタン)、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびこれらの組合せから選択される、上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の方法。
(10)R’’がHを表す、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の方法。
(11)前記脱錯体化工程が光分解を含む、上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の方法。
(12)1当量の式Iの化合物が、式IIの化合物(1〜5当量)および式IIIの化合物(1〜5当量)と、溶媒中で、必要に応じて塩基(0.5当量超)と一緒に混合されて、式IVの化合物が得られ、その後、脱錯体化および必要に応じて前記ピペラジンにおける保護基の除去により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、上記(1)に記載の方法。
(13)1当量の式Iの化合物が、塩基(0.5〜20当量)、ピペラジン(1〜5当量)および2,4−ジメチルチオフェノール(1〜5当量)と、溶媒中で混合されて、式IVの化合物が得られ、その後、脱錯体化により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、上記(1)に記載の方法。
(14)1当量のη6−1,2−ジクロロベンゼン−η5−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートが、1〜5当量の塩基、1〜3当量の2,4−ジメチルチオフェノールおよび1〜3当量のピペラジンと、溶媒中で、10℃〜50℃で混合されて、下式
【化10】
の化合物が得られ、その後、脱錯体化により、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが得られる、上記(1)に記載の方法。
(15)前記得られた1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが、好適な酸と反応されて、当量の薬学的に許容できる塩が得られる、上記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の方法。
(16)上記(1)〜(15)のいずれか一項に記載の方法で得られる1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンおよびその薬学的に許容できる塩。
[実施例]
【実施例】
【0039】
実施例1
η
6−1,2−ジクロロベンゼン−η
5−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート(25g、61mmol)、炭酸カリウム(16.7g、121mmol)およびピペラジン(10.3g、120mmol)を、THF(200mL)と水(50mL)との混合物に溶解させた。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した。反応混合物に、2,4−ジメチルチオフェノール(8.8g、63.7mmol)を加え、一晩、撹拌し続けた。
【0040】
反応混合物を、20分間の期間にわたって塩酸水溶液(2M、200mL)に注いだ。混合物にn−ヘプタン(15mL)を加え、相を分離した。有機相を水(15mL)で1回抽出した。THF/水相を、照射された螺旋状のガラス(glass spiral)(100Wの白熱光)を通して、室温で循環させた。この工程の間、水およびTHFが分離し、下側の水相のみが、光分解装置を通して注入され、遊離された1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが、上側のTHF中に濃縮された。
【0041】
完全な脱錯体化の後、相を分離し、水相をTHF(2×70mL)で2回抽出した。組み合わされたTHF相を、トルエン(50mL)で希釈し、続いて、水酸化ナトリウム水溶液で2回(1.0M、50mLおよび30mL)洗浄した。
【0042】
有機相を分離し、THFを、減圧下で、40℃で除去した。得られた溶液を、40℃で、臭化水素酸水溶液(48w/w%、7.0mL、62mmol)と、水(20mL)と、トルエン(10mL)との混合物にゆっくりと加えた。所望の
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンHBrをろ過によって単離した。ろ過ケーキを、トルエン(40mL)および水(10mL)で洗浄したところ、
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンHBr(13.3g、35.0mmol 64.1%)が白色の粉末として得られた。
Al 1ppm、Fe 401ppm、Na 291ppm、P 2453ppm(ICP−AESによって測定した際)。
純度:面積%:ボルチオキセチン99.73、1−[2−(3,5−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン0.08%、未知試料(unknown)0.19(GCによって測定した際)。
1H NMR(DMSO−d6):8.84(bs,2H)、7.34(d,1H、7.7hz)、7.26(s,1H)、7.16(m,2H)、7.11(dd,1H、7.8および1.7hz)、6.97(dd,1H、7.8および1.7hz)、6.41(dd,1H、7.8および1.3hz)、3.26(bm,4H)、3.20(bm,4H)、2.33(s,3H)、2.25(s,3H)。
結晶形:β−形態(XRPDによって測定した際)。ボルチオキセチンHBrのα−形態およびβ−形態の定義については、国際公開第2007/144005号パンフレットを参照されたい。
含水量:<0.1%(Karl Fisherによって測定した際)および<0.2%(熱重量分析によって測定した際)。
元素分析C18H23N2SBrは、C56.99 H6.11 N7.38を必要とし、実測値C57.10、H6.12、N7.26であった。
【0043】
実施例2
1,2−ジクロロベンゼン(158.4g、1.08mol)、フェロセン(40.6g、218mmol)、三塩化アルミニウム(13.8g、104mmol)およびアルミニウム微粉末(7.0g、26mmol)を混合し、110℃で6時間加熱した。反応混合物を25℃に冷却し、25分間にわたって氷(240g)とn−ヘプタン(100mL)との混合物にゆっくりと加えた。(注:水による未反応の三塩化アルミニウムの処理は、発熱性が高い)。
【0044】
混合物を、Celite 545(登録商標)(14g)で処理し、ろ過の前に、周囲温度で20分間撹拌した。ろ過ケーキを、水(15mL)で洗浄した。ろ液を組み合わせて、相を分離した。水相を、トルエン(2×50mL)で洗浄した。pHが6.5になるまで、水相に、水酸化ナトリウム水溶液(10.8M、70mL、0.76mol)をゆっくりと加えた。沈殿した酸化アルミニウムをろ過によって除去し、ろ過ケーキを、水(25mL)で洗浄した。
【0045】
収集された水相を、THF(100mL)中の炭酸カリウム(20g、0.14mol)とピペラジン(9.4g、0.11mol)との混合物に加え、周囲温度で3時間撹拌した。この混合物に、2,4−ジメチルチオフェノール(8.9g、64mmol)を加え、一晩、撹拌し続けた。
【0046】
反応混合物を、塩酸水溶液(4.0M、130mL、0.52mol)にゆっくりと注いだ。反応混合物を、照射されたガラス管(100Wの白熱光)を通して注入した。この工程の間、水およびTHFが分離し、下側の水相のみが、光分解装置を通して注入され、遊離された1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンが、上側のTHF相中に濃縮された。
【0047】
完全な脱錯体化の後、相を分離し、水相をトルエン(2×70mL)で2回抽出した。組み合わされた有機相を、水酸化ナトリウム(1.0M、70mL、70mmol)、次に水(25mL)で洗浄した。THFを、減圧下で、40℃で除去した。トルエン溶液を、35℃で、臭化水素酸水溶液(48w/w%、7.5mL、67mmol)と、水(20mL)と、トルエン(10mL)との混合物にゆっくりと加えた。
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンHBrをろ過によって単離した。ろ過ケーキを、トルエン(40mL)および水(10mL)で洗浄したところ、
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンHBr(7.3g、19.2mmol、フェロセンから8.8%)がオフホワイトの粉末として得られた。
Al 6ppm、Fe 18ppm、Na 3ppm、P 7ppm(ICP−AESによって測定した際)
純度:面積%:ボルチオキセチン99.96、1−[2−(3,5−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン0.04、未知試料0%(GCによって測定した際)
1H NMR(DMSO−d6):8.86(bs,2H)、7.34(d,1H、7.7hz)、7.26(s,1H)、7.16(m,2H)、7.11(d,1H、7.9)、6.97(dd,1H、7.8および1.8hz)、6.41(dd,1H、7.7および1.4hz)、3.27(bm,4H)、3.21(bm,4H)、2.33(s,3H)、2.25(s,3H)。
結晶形:α−形態とβ−形態との混合物(XRPDによって測定した際)。
含水量:0.14%(Karl Fisherによって測定した際)および<0.2%(熱重量分析によって測定した際)。
元素分析C18H23N2SBrは、C56.99 H6.11 N7.38を必要とし、実測値C56.94、H6.09、N7.31であった。