特許第6464344号(P6464344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6464344
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/06 20060101AFI20190128BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20190128BHJP
   C09D 11/105 20140101ALI20190128BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B41M1/06
   C09D11/037
   C09D11/105
   B41M1/30 D
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-42735(P2018-42735)
(22)【出願日】2018年3月9日
【審査請求日】2018年7月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】矢島 久夫
(72)【発明者】
【氏名】春山 直樹
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−021736(JP,A)
【文献】 特開2003−082258(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03165578(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00 − 3/18
B41M 7/00 − 9/04
C09D11/00 −13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷用光輝性インキを用いた印刷物の製造方法であって、
前記平版印刷用光輝性インキが、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmである金属顔料(A)と、バインダー樹脂とを含み、
前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂及び/または石油樹脂を、インキ全量に対して5〜90質量%含み、
前記アルキッド樹脂の重量平均分子量が、1,000〜150,000であり、
前記石油樹脂の重量平均分子量が、500〜5,000であり、
基材上に前記平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)と、
印刷物を40〜130℃かつ10〜500kgf/cm2の条件で加熱加圧処理する工程(ii)とを、この順に行う、印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂及び/または石油樹脂を、バインダー樹脂全量中20〜100質量%含む、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記金属顔料(A)が、アルミニウム顔料を含む、請求項1または2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(ii)の後に、更に、平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)を行う、請求項1〜3いずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記工程(i)と前記工程(ii)との間で、更に、平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)を行う、請求項1〜4いずれかに記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷用光輝性インキを用いた印刷物の製造方法、及び前記印刷物の製造方法により得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の意匠性を向上させることを目的とした、シルバー、ゴールド、ブロンズといった金属光沢を付与した印刷物が、市場のニーズとして高まっている。
【0003】
これらの印刷物は従来、グラビア、シルクスクリーン、フレキソなどの印刷方式により作成されていた。しかしながら上記の印刷方式は、絵柄の変更に伴う版材の交換に手間がかかることから、少量多品種の印刷物には向いておらず、また印刷速度の点においても問題があった。
【0004】
一方で、印刷速度の速い平版(オフセット)印刷を用いて金属光沢を付与した印刷物を作成する場合、これまでは、予め金属層を蒸着した用紙を使用したり、箔押しやインラインホイラーなどによる後加工を用いたりする必要があった。しかしながら、用紙や後加工による印刷物の製造方法は、特殊な装置を印刷機に設置する必要がある、専用糊を使用するため基材を選ぶ、繊細な絵柄や小さい文字の形成が困難であるなど、基材汎用性、生産面、コスト面での負荷が大きかった。特に上記の後加工方法は、必要とする絵柄以上の大きさに箔を当て、必要な絵柄分だけ型抜きするもので、小さな絵柄に使用する際には無駄が多くなってしまっていた。
【0005】
上記問題の解決のため、金属光沢を付与するための平版印刷用光輝性インキも検討・開発されてきたが、従来品は、上記グラビア、シルクスクリーン、フレキソなどの印刷方式により作成された印刷物に比べ、光沢度が著しく劣っている現状であった。
【0006】
その理由として、平版印刷用光輝性インキは、光輝性のみならず、平版印刷方式特有の、着肉性や乳化適性などにも留意して素材選定する必要があることが挙げられる。例えば、任意のアルミニウム顔料を用いただけでは、印刷適性に優れていたとしても鏡面性が発現しない恐れが高い。
【0007】
また、平版印刷では殆どの場合、用紙基材に印刷される。一般に用紙基材は、グラビア、シルクスクリーン、フレキソなどの印刷方式で使用されるフィルム基材と異なり、表面が粗い。その場合、基材表面の粗さの影響を受け光沢度が変化するため、用紙基材に対しても鏡面性を有する印刷物を得るためには、フィルム基材への印刷物と同等以上に印刷物の表面を平滑にすることが要求される。
【0008】
フィルム基材へ印刷する場合、たとえ印刷表面が平滑でなくても、平滑である基材側から見ることで、光沢度を高く見せることが可能である。しかしながら不透明である用紙基材ではそれができないため、印刷層自体を十分平滑にしなければならない。
【0009】
これまでに検討されている平版印刷用光輝性インキの例として、特許文献1にはアルミニウム顔料を用いたオフセット印刷用のペースト状金属粉印刷インキについて記載されている。しかしながら、印刷適性も優れた平版印刷用光輝性インキを得、更には高い光沢性、鏡面性を有する印刷物を得るための方策に関しては記載がない。
【0010】
また特許文献2〜3には、光輝性顔料を含有する印刷インキをオフセット印刷し、その上部にクリアー層を設けた印刷物に関する記載がある。しかしながら、実際に記載されている印刷機は、版材に樹脂凸版を使用した方式であり、水と油の反発を利用し画像形成を行う平版印刷方式とは異なる。また特許文献2〜3には、平版印刷用として使用する樹脂、植物油、溶剤などの記載はあるものの、具体的な種類、添加量は明記されておらず、使用する材料次第では、印刷時に汚れによる印刷不良を起こしたり、光沢性が発現しなかったりする恐れがある。更に上記文献では、上記クリアー層によって光輝性を向上させているものの、光輝性顔料を含有する印刷インキ層が凸凹であると、前記印刷インキ層表面で反射光が乱反射を起こし、光沢性の発現が不十分となる。
【0011】
その他、特許文献4には、フレキソ印刷でパールインキを印刷したのち、非光輝性インキをオフセット方式により印刷した印刷物が開示されている。しかしながら特許文献4にも記載されているように、前記パールインキによる印刷層は表面が凸凹になっているため、光の乱反射により、光沢度に劣る印刷物になってしまう。また上記の通り、特許文献4で具体的に開示されたパールインキは平版印刷用ではないため、光輝性インキを平版印刷方式で使用し、しかもその印刷適性を向上させる手法に関しては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−513206号公報
【特許文献2】特開2001−146221号公報
【特許文献3】特開2002−114934号公報
【特許文献4】特開2004−202749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、印刷・加工適性(着肉性、耐汚れ性)に優れる平版印刷用光輝性インキを用いた、従来よりも光沢度が高く鏡面性を有する印刷物の製造方法、及び、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らが鋭意研究した結果、特定の形状を有する金属顔料(A)を含む平版印刷用光輝性インキを用い、かつ、前記光輝性インキを印刷した後に、特定の条件で加熱加圧処理を施すことで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち本発明は、平版印刷用光輝性インキを用いた印刷物の製造方法であって、前記平版印刷用光輝性インキが、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmである金属顔料(A)と、バインダー樹脂とを含み、
前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂及び/または石油樹脂を、インキ全量に対して5〜90質量%含み、
前記アルキッド樹脂の重量平均分子量が、1,000〜150,000であり、
前記石油樹脂の重量平均分子量が、500〜5,000であり、
基材上に前記平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)と、
印刷物を40〜130℃かつ10〜500kgf/cm2の条件で加熱加圧処理する工
程(ii)とを、この順に行う、印刷物の製造方法に関するものである。
【0016】
更に本発明は、前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂及び/または石油樹脂を、バインダー樹脂全量中20〜100質量%含む、上記印刷物の製造方法に関するものである。
【0017】
更に本発明は、前記金属顔料(A)が、アルミニウム顔料を含む、上記印刷物の製造方法に関するものである。
【0018】
更に本発明は、前記工程(ii)の後に、更に、平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)を行う、上記印刷物の製造方法に関するものである。
【0019】
更に本発明は、前記工程(i)と前記工程(ii)との間で、更に、平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)を行う、上記印刷物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、印刷・加工適性(着肉性、耐汚れ性)に優れる平版印刷用光輝性インキを用いた、従来よりも光沢度が高く鏡面性を有する印刷物の製造方法、及び、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の印刷物の製造方法、及び、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物について、好ましい形態を上げながら詳細に説明する。
【0023】
<1.平版印刷用光輝性インキ>
まず、本発明における平版印刷用光輝性インキ(以下、単に「光輝性インキ」ともいう)について説明する。
本発明における光輝性インキは、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmである金属顔料(A)と、バインダー樹脂とを含む。
【0024】
上記の通り、本発明における金属顔料(A)の平均厚さは、15〜100nmであり、好ましくは15〜80nm、特に好ましくは15〜50nmである。平均厚さを15nm以上とすることで、ブロッキングや後胴残りなどがない、印刷適性に優れたインキとなるうえ、基材への密着性も向上する。また、基材の影響、例えば紙繊維による凸凹の影響を受けにくくなり、後述する加熱加圧処理を施すことで、光沢度の高い、鏡面の様な輝きを有する印刷物が得られる。一方、平均厚さを100nm以下とすると、金属顔料(A)が基材上で配向した際、前記金属顔料(A)同士が重なった部分の段差が十分小さくなることで、均一的な配向が実現でき、光沢度の著しい向上や、鏡面の様な輝きを有する印刷物を得ることができる。また、後述する加熱加圧処理を施した際の汚れ、例えば、プレス板へのインキ付着なども防止できる。
【0025】
更に、本発明における金属顔料(A)は、平均粒子径が1〜30μmであり、より好ましくは3〜20μmであり、更に好ましくは5〜15μmである。平均粒子径を1μm以上とすることで、基材上で前記金属顔料(A)が配向した際に粒子感が出ることがなくなり、光の乱反射を防ぎ光沢度が向上する。一方、30μm以下とすることで、基材上での金属顔料(A)の重なりが好適なものとなり、光の乱反射を防ぐことができる。また、印刷物の着肉不良を防ぐことができる。
【0026】
上記のように、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmである金属顔料(A)を用いることで、前記金属顔料(A)が、光輝性インキによって形成される印刷層表面で均一かつ平滑に配向すると考えられる。その結果、後述する加熱加圧処理の際に、軟化・溶解したバインダー樹脂が、加熱加圧処理装置に付着することを抑制することができる。
【0027】
なお、金属顔料(A)の平均厚さや平均粒子径は、走査型電子顕微鏡によって測定することができる。具体的には、平均厚さは、走査型電子顕微鏡写真(例えば、倍率30,000倍にて撮影した写真を利用する。なお写真は必要に応じて複数枚用いて良い。また、倍率、加速電圧、測定距離などは画像により厚さを測定できる範囲で変更しても良い。)から、顔料の厚みが確認できる部分を100か所抽出し、それぞれで顔料の厚さを測定したのち、その値を平均することで求める。また平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真(例えば、倍率5000倍にて撮影した写真を利用する。なお写真は必要に応じて複数枚用いて良い。また、倍率、加速電圧、測定距離などは画像により粒子径を測定できる範囲で変更しても良い。)から、粒子径が確認できる粒子を100個抽出し、それぞれで顔料の粒子径(計測した粒子の面積に相当する円の直径)を測定したのち、その値を平均することで求める。
【0028】
本発明における金属顔料(A)としては、上記平均厚さ及び平均粒子径を有しているものであれば、従来既知の金属顔料を任意に使用できる。なお本発明における「金属顔料」とは、単金属材料や合金材料を主として(50質量%以上)含む顔料を表し、具体的な材質として、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、銀などの単金属材料や、真鍮、青銅、ステンレスなどの合金材料が例示できる。また、顔料の表面が、無機物(金属酸化物、マイカ、ガラスなど)、有機物(着色顔料、界面活性剤、樹脂など)、シランカップリング剤などで処理されていてもよいし、顔料が金属層を含む積層体となっていてもよい。更に、2種類以上の金属顔料(A)を併用してもよい。
本発明では、後述する加熱加圧処理を施すことで光沢度の高い印刷物が得られることや、印刷適性に優れた光輝性インキが得られることから、金属顔料(A)がアルミニウム顔料であることが好ましい。
【0029】
なおアルミニウム顔料には複数の製造方法があり、本発明ではそのどちらで製造されたものであっても利用できる。例えば粉砕法は、アルミニウム塊(インゴット)を溶融した後、フレークまたは固形状で取り出し、必要に応じて表面処理を加えた後、溶剤中でミル粉砕して、粒径、厚さ及び表面状態を整形する手法である。なお本発明では、金属顔料(A)として、ミルから取り出したままの(溶剤中に分散された)形態のもの(アルミニウムペースト)を利用してもよい。
【0030】
また蒸着法は、フィルム上に剥離層を均一に塗り、更にその上にアルミニウム層を薄く展開したのち、剥離層を溶かすことで、偏平状となったアルミニウム顔料を採取する。そして得られたアルミニウム顔料に対し、撹拌処理、超音波処理、噴霧処理などによって、形状を整える手法である。
【0031】
本発明における金属顔料(A)としてアルミニウム顔料を用いる場合、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmの範囲内であれば、上記どちらの製法で製造されたものを用いてもよいが、蒸着法で精製されたアルミニウム顔料の方が、顔料膜厚が均一なために印刷した際の印刷物表面においても均一の薄膜を形成しやすく、印刷物の光沢度や印刷適性に優れるため、好ましく選択される。
【0032】
一方で金属顔料(A)には、印刷層内での分散状態による分類があり、具体的にはリーフィングタイプやノンリーフィングタイプが知られている。これらは例えば、金属顔料(A)の表面処理によって制御でき、具体的には金属顔料(A)に対し、特開2003−12964号公報記載の処理や、ステアリン酸などの高級脂肪酸による表面処理を施すことで、リーフィングタイプとなる。リーフィングタイプの金属顔料(A)は、印刷層表面に浮き出て平行配列するものであり、光沢性を発現しやすい。一方、ノンリーフィングタイプの金属顔料(A)は、印刷層内に均一に分散されており、浸透乾燥型、ヒートセット型などの乾燥方式をとるインキに対して用いることで、好適に光沢性を発現できる。
【0033】
本発明における金属顔料(A)は、上記いずれのタイプも使用可能であるが、リーフィングタイプの方が、印刷物の光沢度が高く、また加熱加圧処理の際に、バインダー樹脂の、加熱加圧処理装置への付着を防止する効果が高いことから好ましい。
【0034】
本発明における金属顔料(A)の添加量は、インキ全量中に3〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3.5〜15質量%、更に好ましくは4〜10質量%である。金属顔料(A)の添加量を3質量%以上とすることで、画像を均一に覆うに十分な量となり、白抜けなどの画像欠陥のない印刷物となる。また、下地の影響を受けなくなるため、白味を帯びることなく、光沢性に優れる印刷物が得られる。一方、20質量%以下とすることで、印刷後の基材上で金属顔料(A)同士が過度に重なることがなく、均一で乱反射を起こしにくい印刷表面が得られ、結果として光沢度が向上し、鏡面の様な輝きを有する印刷物が得られる。またパイリングや地汚れがない、印刷適性に優れたインキとなる。
【0035】
本発明における平版印刷用光輝性インキはバインダー樹脂を含む。中でも、前記バインダー樹脂として、アルキッド樹脂及び石油樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を、バインダー樹脂全量中20〜100質量%含むことが好ましく、40〜100質量%含むことがより好ましく、60〜95質量%含むことが特に好ましい。バインダー樹脂として上記の樹脂を用い、かつ、上記で述べた金属顔料(A)と併用することで、平版印刷適性を保持しながら、従来よりも光沢度が高く、鏡面性を有する印刷物を得ることができる。その理由は定かではないが、例えば以下の理由が考えられる。すなわち、アルキッド樹脂や石油樹脂は、構造中に極性基を含み、この極性基が金属顔料(A)の表面に吸着することで、互いの凝集を防ぎ、インキ中でも均一に分散されると考える。また均一に分散されることで、インキの粘弾性が平版印刷に好適なものとなり、印刷時のトラブルも抑制できると考えられる。
更には、アルキッド樹脂や石油樹脂は、分子構造上立体障害が少ないため、印刷後のインキ層内において、金属顔料(A)の配向を阻害することがない。その結果、金属顔料(A)が偏ることなく均一に配向することで、凸凹のない印刷物となり、後述する加熱加圧処理を施すことで、優れた光沢性や鏡面性が発現すると考えられる。加えて、アルキッド樹脂や石油樹脂は、平版印刷に必要な乳化適性、ローラー転移性、粘弾性をインキに付与できるとともに、軟化温度などの熱的特性の点で、本発明の加熱加圧処理によって鏡面性に優れた印刷物が得られる点からも好適である。一般に、軟化温度が低いバインダー樹脂に対して加熱加圧処理を施すと、それら樹脂が加熱加圧処理装置に付着する可能性があるが、本発明では、上記の通り、特定の形状を有する金属顔料(A)によって、その防止を図っている。
【0036】
なお、本発明における光輝性インキに含まれる、アルキッド樹脂及び/または石油樹脂の量は、インキ全量に対して5〜90質量%であることが好ましく、15〜87.5質量%であることがより好ましく、25〜85質量%であることがより好ましい。
【0037】
本発明における平版印刷用光輝性インキにアルキッド樹脂を用いる場合、その重量平均分子量は1,000〜150,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜30,000であり、更に好ましくは1,000〜10,000である。重量平均分子量が1,000以上であれば、インキに粘度をつけることができ、印刷時に汚れにくくなることから、粘度を付与し印刷適性を向上させるための増粘剤の添加を抑制できる。一般に、増粘剤を過剰添加すると、印刷紙面上の入射光と反射光の間で屈折を起こし易くなり光沢が低下する原因となるため、本発明では、重量平均分子量を1,000以上とすることが好適である。また、150,000以下とすることで、金属顔料(A)の配向阻害が起こらず、鏡面的な輝きが発現するとともに、印刷面のザラツキが防止できる。
【0038】
一方、本発明における平版印刷用光輝性インキに石油樹脂を用いる場合、上記アルキッド樹脂の場合と同様の理由により、その重量平均分子量は500〜5,000であることが好ましく、より好ましくは800〜3,000であり、更に好ましくは800〜2,000である。なお、アルキッド樹脂と好適な重量平均分子量範囲が異なるのは、分子構造の違いにより反応性が異なるためである。
【0039】
なお、上記重量平均分子量は、公知の方法、例えばゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定できる。
【0040】
本発明では、アルキッド樹脂または石油樹脂を単独で用いても良いし、両者を併用しても良い。中でも、金属顔料(A)の分散安定性と配向のしやすさの点から、少なくともアルキッド樹脂を含むことがより好ましい。その場合、本発明において使用されるアルキッド樹脂の添加量は、インキ全量中30〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜85質量%であり、更に好ましくは50〜80質量%である。添加量が30質量%以上であれば、金属顔料(A)の配向を阻害する材料や光を乱反射する材料の添加量が抑えられ、光沢度の低下を防止できる。また90質量%以下であれば、顔料比率の低下による光沢度や濃度の低下、インキの軟調化及び過乳化を引き起こすことがなくなり、また印刷適性も保持したインキを得ることができる。
【0041】
またアルキッド樹脂を含む場合、インキ中の全樹脂量に対する配合量は50〜100質量%であることが好ましく、75〜100質量%であることが特に好ましい。配向性の高いアルキッド樹脂の配合量を50質量%以上とすることで、金属顔料(A)に対する配向を好適なものとすることができ、結果として鏡面的な輝きの発現や、印刷面のザラツキ低減が可能となる。
【0042】
本発明における平版印刷用光輝性インキは、上記以外の樹脂も含むことができ、例えばロジン変性フェノール樹脂を併用することができる。その際、ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は5,000〜200,000であることが好ましい。5,000以上とすることで、粘弾性付与の効果が大きく、画像欠陥や印刷適性の悪化を防止でき、200,000以下とすることで金属顔料(A)の配向を阻害することなく、光沢度が高く鏡面性を有する画像が得られる。
【0043】
なお、本発明における光輝性インキに含まれる、バインダー樹脂の総量は、インキ全量に対して30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明における光輝性インキに用いられる溶剤は従来既知のものを任意に用いることができるが、上記バインダー樹脂との相溶性やインキの粘弾性、乾燥性を好適なものとする観点から、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、及び非芳香族系石油溶剤から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。なおこれらの材料は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0045】
なお上記「植物油」とは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応物であるトリグリセライド、エステル交換反応により生成されたモノグリセライド、ジグリセライドを表す。なお、前記脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも良い。
【0046】
本発明における植物油として代表的なものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カノーラ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、トール油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。特に大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、キリ油が好ましい。
【0047】
本発明において使用される「重合植物油」とは、例えば上記に列挙した1種類以上の植物油を、酸素を吹き込みながら加熱・攪拌し、重合することにより得られる。ただし、このときの重合反応は熱重合でもよく、酸化重合が必須であるわけではない。重合植物油の製造に用いる植物油としては特に、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、キリ油が好ましい。
【0048】
本発明において使用される「脂肪酸エステル」の例としては、上記に列挙した1種類以上の植物油、例えば大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、ナタネ油などから製造される植物油エステルが挙げられる。その他の例としては脂肪酸モノアルキルエステル化合物が挙げられる。このうちモノエステルを構成する脂肪酸としては炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などが例示できる。また脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する、アルコール由来のアルキル基としては炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基などが例示できる。これらアルコールは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
本発明における「非芳香族系石油溶剤」としては、パラフィン系、ナフテン系、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。非芳香族系石油溶剤の市販品の例として、JXTGエネルギー社製AFソルベント4号、5号、6号、7号などがある。なお、混入している芳香族炭化水素の含有量が、前記非芳香族系石油溶剤全量中1質量%以下であることが好ましい。また本発明で非芳香族系石油溶剤を用いる場合、そのアニリン点は60〜130℃であることが好ましい。アニリン点を130℃以下とすることで、インキ中のバインダー樹脂の溶解性に優れ、インキの流動性を十分確保できるため、レベリングが向上し鏡面性や光沢に優れる印刷物が得られる。また、60℃以上とすることで、乾燥時にインキ層からの溶剤の離脱性が良化し、乾燥性に優れたインキとなる。なお本発明におけるアニリン点は、例えばJIS K 2256記載の方法により測定できる。
【0050】
また本発明における平版印刷用光輝性インキは、エーテル類を併用することもできる。代表的なものは、ジ−n−オクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジへプチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルへキシルエーテル、ノニルヘプチルエーテル、ノニルオクチルエーテルなどが挙げられる。
【0051】
更に本発明における平版印刷用光輝性インキには、必要に応じて金属ドライヤーを添加することができる。金属ドライヤーとしては、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛錯体などが挙げられる。
【0052】
更に本発明における平版印刷用光輝性インキには、必要に応じて増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、カルボン酸系共重合体、特開2013−213112記載のゲル状脂肪酸グリセリド、及びイソブテン、ノルマルブテンからなる長鎖状炭化水素共重合体などが挙げられる。
【0053】
その他、本発明における平版印刷用光輝性インキには、必要に応じてゲル化剤、顔料分散剤、酸化防止剤、耐擦過剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤、多価アルコールなどの添加剤を適宜使用することができる。
【0054】
<2.平版印刷用非光輝性インキ>
続いて、後述する平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)にて使用する、平版印刷用非光輝性インキ(以下、単に「非光輝性インキ」ともいう)について説明する。
【0055】
なお、上記光輝性インキと非光輝性インキとは、インキ中の金属顔料の量によって区別される。具体的には、本発明における光輝性インキとは、金属顔料の量が、インキ中の全着色剤中50質量%以上であるものであり、非光輝性インキとは、金属顔料の含有量が、インキ中の全着色剤中50質量%未満であるものである。なお、非光輝性インキ中の、金属顔料の含有量は、インキ中の全着色剤に対して30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、2質量%以下であることが極めて好ましい。
【0056】
本発明における非光輝性インキは、着色剤として顔料を含むことが好ましい。顔料として、従来既知の有機顔料、及び/または無機顔料を任意に使用することができる。また前記顔料として、体質顔料を含んでもよい。本発明における顔料の配合量(ただし前記顔料の配合量に、体質顔料の配合量は含まない)は、本発明の効果を阻害することなく、印刷物の発色性や鮮明性を確保できる量とすることが好ましい。具体的には、非光輝性インキ全量に対し、10〜40質量%とすることが好ましく、15〜35質量%とすることが特に好ましい。
【0057】
本発明における非光輝性インキは、バインダー樹脂として、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、及び石油樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。なお、上記3種類の樹脂のいずれかを単独で用いても良いし、併用しても良い。特に本発明では、顔料の分散安定性や、印刷物の鏡面性を阻害しない点から、少なくともロジン変性フェノール樹脂を含むことが好ましい。非光輝性インキに含まれるバインダー樹脂の含有量は、前記非光輝性インキ全量に対し、15〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜25質量%である。
【0058】
本発明における非光輝性インキは、溶剤として従来既知のものを任意に用いることができ、例えば、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、及び非芳香族系石油溶剤から選ばれる少なくとも1種を使用できる。なお好適に使用できる、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、及び非芳香族系石油溶剤の種類や配合量は、上記光輝性インキの場合と同様である。
【0059】
また、本発明における非光輝性インキは、上記光輝性インキの場合と同様に、必要に応じて金属ドライヤーや増粘剤を使用できる。
【0060】
その他、本発明における非光輝性インキは、上記の成分以外にも、既存のゲル化剤、顔料分散剤、乳化剤、乳化抑制剤、酸化防止剤、耐擦過剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤、多価アルコールなどの各種添加剤を、適宜用いることができる。その配合量の総量は、非光輝性インキ全量に対して10質量%以下とすることが好ましい。
【0061】
<3.平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)>
続いて、上記で説明した平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)(以下、単に「印刷工程(i)」ともいう)について説明する。
印刷工程(i)では、平版(オフセット)印刷により、光輝性インキが後述する基材上に付与される。なお、前記平版印刷で使用される印刷機として、オフセット輪転印刷機とオフセット枚葉印刷機のどちらを使用してもよいが、金属顔料(A)の配向性や、インキの乾燥性の点から、オフセット枚葉印刷機を選択することが好ましい。
【0062】
本発明の印刷物の製造方法では、光輝性インキを基材上に付与した後、前記光輝性インキを乾燥させてから加熱加圧処理する工程(ii)に移ってもよいし、乾燥させずに加熱加圧処理する工程(ii)に移ってもよい。
【0063】
なお、光輝性インキを乾燥させる方式として、ヒートセット型、酸化重合型、浸透乾燥型のいずれを選択してもよいが、本発明の場合は、経時で徐々に金属顔料(A)をリーフィングさせることで、光輝性に優れた印刷物が得られる観点から、特に酸化重合型の乾燥方式を有する平版印刷において、好適に使用できる。また同様の理由により、酸化重合型の乾燥方式をとる光輝性インキの場合、前記光輝性インキを基材上に付与した後、乾燥させてから加熱加圧処理する工程(ii)に移る方法が好適に利用できる。
【0064】
<4.印刷物を加熱加圧処理する工程(ii)>
続いて、上記工程(i)の後に行う、光輝性インキが印刷された印刷物を加熱加圧処理する工程(ii)(以下、単に「加熱加圧工程(ii)」ともいう)について説明する。
本発明では、40〜130℃かつ10〜500kgf/cm2の条件で加熱加圧処理を行う。上記条件で加熱加圧処理を行うことで、紙面上に無秩序に配向した金属顔料(A)の配向を均一化することが可能となり、光沢度の著しい向上や、鏡面のような輝きを有する印刷物が得られると考えられる。
【0065】
上記効果をより好適に発現させるとともに、加熱加圧処理を施した際の装置の汚れ、例えば、プレス板へのインキ付着なども防止できる観点から、上記加熱温度は60〜130℃であることが好ましく、80〜130℃であることが特に好ましい。また上記加圧圧力は50〜500kgf/cm2であることが好ましく、100〜500kgf/cm2であることが特に好ましい。
【0066】
また、加熱加圧工程(ii)を行うための装置として、エンドレスプレス機、平プレス機などがあり、本発明ではいずれも好適に使用できるが、必要に応じて印刷装置に組み込むことができ、また連続的に加熱加圧処理を施すことができる、エンドレスプレス機が好適に使用できる。更に、上記印刷工程(i)で使用する印刷機と、上記装置と、必要に応じてインキの乾燥に使用する乾燥機とを直列に接続し、前記印刷工程(i)と加熱加圧工程(ii)とをインラインで実施してもよいし、オフラインで、両工程を別個に実施してもよい。なお、酸化重合型の乾燥方式をとる光輝性インキを用いる場合、オフラインで、両工程を別個に実施する方法が好適に選択される。
【0067】
また、加熱加圧処理を施す際の駆動速度や時間に関しては特に制限はないが、例えばエンドレスプレス機の場合は1〜40m/minの範囲、平プレス機の場合は1〜30秒の範囲で処理を行うことが好ましい。
【0068】
<5.平版印刷用非光輝性インキを印刷する工程(iii)>
続いて、必要に応じて実施できる、非光輝性インキを印刷する工程(iii)(以下、単に「印刷工程(iii)」ともいう)について説明する。
本発明では、必要に応じて、加熱加圧工程(ii)の後、または、印刷工程(i)と加熱加圧工程(ii)との間に、印刷工程(iii)を実施してもよい。印刷工程(iii)を実施することにより、優れた光輝性を有する有色印刷物(例えばゴールド(メタリックイエロー)色、ブロンズ色、メタリックブルー色、メタリックレッド色、メタリックブラック色)が得られる。
【0069】
加熱加圧工程(ii)の後に印刷工程(iii)を行う場合、有色化しながらも、印刷物の鏡面性を好適なまま維持できる観点から、非光輝性インキにより形成される層中に存在する、顔料の付与量は、0.03〜0.3g/m2であることが好ましく、0.05〜0.25g/m2であることがより好ましく、0.08〜0.25g/m2であることが特に好ましい。
【0070】
一方、印刷工程(i)と加熱加圧工程(ii)との間で、印刷工程(iii)を実施する場合、光輝性インキを印刷したのち、続けて非光輝性インキを印刷し、その後、上記に記載したような方式によりインキを乾燥した後、加熱加圧工程(ii)を実施することが好ましい。
【0071】
<6.印刷物の特性>
本発明における光輝性インキを用いた印刷物は、後述する条件により測定される光沢値が350〜600であることが好ましく、400〜600であることがより好ましく、450〜600であることが特に好ましい。
【0072】
<7.後処理工程>
本発明の印刷物の製造方法によって得られた印刷物に対して、従来既知の後処理を施してもよい。前記後処理として、例えばエンボス処理、ラミネート処理などが挙げられる。
【0073】
<8.基材>
本発明の印刷物の製造方法では、平版印刷方式にて印刷される用紙基材であれば、コート紙やアート紙に代表される塗工紙や、上質紙及び低級紙に代表される非塗工紙などのような一般的な印刷用紙が好適に使用できる。特に、用紙表面が平滑な塗工紙の方が、より光沢性が発現しやすく好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。また、特に断らない限り、「部」は、「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0075】
<金属顔料(A)の粒子径・厚さの測定条件>
金属顔料(A)の粒子径及び厚さは、日本電子社製走査型電子顕微鏡(JSM−6390LA)を用い、前述した方法にて計測した。
【0076】
<重量平均分子量の測定条件>
重量平均分子量の測定には、東ソー社製ゲルパーメーションクロマトグラフィー(HLC−8020)、及び東ソー社製カラム(TSK−GEL)を用いた。
【0077】
<粘度の測定条件>
樹脂及びインキの粘度は、Thermo ELECTRON CORPORATION社製レオメータ(HAAKE Rheostress600)を用い、25℃、シェアレート117/sの条件で測定した。
【0078】
<鏡面光沢度の測定条件>
印刷物の鏡面光沢度(60°光沢度)は、村上色彩技術研究所製デジタル光沢計(GM−26D)を用い、下記の条件にて測定した。なお、上記光沢度が高い程、鏡面性が高いことを表す。
測定面積:約3×3mm
測定窓面積:直径10mm
光源ランプ:ハロゲンランプ(12V、50W)
【0079】
<アルキッド樹脂1製造例>
大豆白絞油300部と、無水フタル酸50部を仕込み、280℃で2時間撹拌した後、ペンタエリスリトール30部と、キシレン100部を添加し、200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に3時間撹拌することで、重量平均分子量5,000、酸価14.0、粘度10.7Pa・sのアルキッド樹脂1を得た。
【0080】
<アルキッド樹脂2製造例>
大豆白絞油220部と、無水フタル酸80部を仕込み、280℃で2時間撹拌した後、ペンタエリスリトール30部と、パラトルエンスルホン酸0.02部と、キシレン100部を添加し、200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に7時間撹拌することで、重量平均分子量100,000、酸価19.4、粘度669.0Pa・sのアルキッド樹脂2を得た。
【0081】
<アルキッド樹脂3製造例>
大豆白絞油200部と、無水フタル酸100部を仕込み、280℃で2時間撹拌した後、ペンタエリスリトール30部と、パラトルエンスルホン酸0.02部と、キシレン100部を添加し、200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に10時間撹拌することで、重量平均分子量150,000、酸価9.6、粘度820.0Pa・sのアルキッド樹脂3を得た。
【0082】
<アルキッド樹脂4製造例>
大豆白絞油400部と、無水フタル酸20部を仕込み、280℃で2時間撹拌した後、ペンタエリスリトール30部と、キシレン100部を添加し、200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に30分撹拌することで、重量平均分子量700、酸価8.8、粘度6.0Pa・sのアルキッド樹脂4を得た。
【0083】
<石油樹脂ワニス1製造例>
石油樹脂(JXTGエネルギー社製日石ネオポリマー120、重量平均分子量1,500)40部と、大豆油60部を仕込み、140℃に昇温して30分間攪拌した後、放冷することで、石油樹脂ワニス1を得た。
【0084】
<石油樹脂ワニス2製造例>
石油樹脂(JXTGエネルギー社製日石ネオポリマー160、重量平均分子量3,500)20部と、石油樹脂(JXTGエネルギー社製日石ネオポリマー130、重量平均分子量1,800)20部と、大豆油60部とを仕込み、160℃に昇温して60分間攪拌した後、放冷することで、石油樹脂ワニス2を得た。
【0085】
<ロジン変性フェノール樹脂ワニス1製造例>
特開平09−249726号公報の、実施例5に記載の方法と同様にして合成した、重量平均分子量131,000、酸価24.3である、ロジン変性フェノール樹脂1を38部と、大豆油を30部と、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(JXTGエネルギー社製、アニリン点88.2度)31部とを仕込み、180℃に昇温して30分間攪拌した。その後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド(川研ファインケミカル社製ALCH)1.0部を仕込んだのち、190℃で30分間攪拌することで、ロジン変性フェノール樹脂ワニス1を得た。
【0086】
<ロジン変性フェノール樹脂ワニス2製造例>
特開2016−155907号公報の、樹脂合成の実施例2に記載の方法と同様にして合成した、重量平均分子量10,000、酸価23.6であるロジン変性フェノール樹脂2を44部と、大豆油を29部と、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(JXTGエネルギー社製、アニリン点88.2度)26部とを仕込み、190℃に昇温して30分間攪拌した。その後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド(川研ファインケミカル社製ALCH)1.0部を仕込んだのち、190℃で30分間攪拌することで、ロジン変性フェノール樹脂ワニス2を得た。
【0087】
<光輝性インキ製造例>
表1記載の金属顔料、アルキッド樹脂、石油樹脂ワニス、ロジン変性フェノール樹脂ワニスを、それぞれ表2の配合比で、ミキサーを備えた混合容器中に、前記ミキサーで混合・撹拌しながら投入した。投入後、撹拌したまま混合物を80℃まで昇温し、同温下で120分撹拌を続けた。前記混合物を30℃まで冷却したのち、金属ドライヤー(東洋インキ社製MKドライヤー)と、乳化抑制剤(イソトリデカノール)とを、それぞれ表2の配合比になるように混合容器内に投入し、ミキサーで均一になるまで撹拌した。そして更に、増粘剤(JXTGエネルギー社製ポリブテンHV−1900)と、キリ油と、重合植物油とを、それぞれ表2の配合比になるように混合容器内に投入し、インキの粘度が10.0〜40.0Pa・sになるように調整することで、光輝性インキ1〜27を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表2】
【0091】
【表2】
【0092】
<インキ1〜27の評価>
上記で製造した光輝性インキ1〜27を使用し、下記印刷条件の下で、単色ベタと網点(1〜100%の10%刻み)とが入った絵柄の印刷を行うことで、汚れ耐性、紙面の着肉性について評価を行った。評価結果は、表2に示す通りであった。
【0093】
<印刷条件>
印刷機 :LITHRONE26(小森コーポレーション社製)
用紙 :ミラーコート・プラチナ(127.9g/m2)(王子製紙社製)
湿し水 :アクワユニティC 2.0%水道水希釈液(東洋インキ社製)
水量値 :20ポイント(ただし汚れ耐性の評価では、下記記載の通りとした)
印刷速度:6000枚/時
版 :SUPERIA XP−F(富士フィルム社製)
印刷部数:2000枚(ただし汚れ耐性の評価では、下記記載の通りとした)
【0094】
<汚れ耐性の評価方法>
まず、上記印刷機において水量値を20ポイントに設定し、上記インキをそれぞれ200部印刷した。印刷後、印刷物を目視で観察して汚れが見られなかった場合は、前記水量値を1ポイント下げ、再度200部印刷を行った。上記を繰り返して、印刷物に汚れが見られたときの水量値を確認することで、汚れ耐性を評価した。評価基準は以下の通りとし、◎、○、△を実用範囲とした。
◎:水量値を10としても汚れが発生しなかった。
〇:水量値が10〜12のときに汚れが発生した。
△:水量値が13〜15のときに汚れが発生した。
×:水量値が16以上のときに汚れが発生した。
【0095】
<着肉性の評価方法>
上記印刷条件で印刷を行い、パイリングや白抜けの有無を目視で確認することで、着肉性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、○、△を実用範囲とした。
◎:パイリング、白抜けなどはなく着肉性は良好であった。
〇:パイリングや白抜けは見られたが、インキ21よりも良好であった。
△:インキ21におけるパイリングや白抜けの度合いと同程度であった。
×:パイリングや白抜けが見られ、インキ21よりも酷かった。
【0096】
<実施例1〜35、比較例1〜9>
上記で製造した光輝性インキ1〜27を使用し、上記印刷条件の下で行った印刷により得られた印刷物と、エンドレスプレス機(松本機械製作社製)を使用し、表3〜4に示した条件の下で、加熱加圧処理を行った。そして得られた印刷物について、鏡面光沢度、プレス板曇りの評価を行った。評価結果は、表3〜4に示す通りであった。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
<鏡面光沢度の評価方法>
エンドレスプレス機にて加熱加圧処理した後、上記印刷物のベタ部について、上記方法で鏡面光沢度を測定した。評価基準は以下の通りとし、◎、○、△を実用範囲とした。
◎:測定光沢度が450以上
〇:測定光沢度が400以上450未満
△:測定光沢度が350以上400未満
×:測定光沢度が350未満
【0100】
<プレス板汚れの評価方法>
エンドレスプレス機にて加熱加圧処理した後、前記エンドレスプレス機のプレス板を目視で観察し、汚れ度合いを確認した。評価基準は以下の通りとし、◎、○、△を実用範囲とした。
◎:インキ取られやプレス板の曇りは見られなかった。
〇:インキ取られやプレス板の曇りは見られたが、実施例3よりも良好であった。
△:実施例3におけるインキ取られやプレス板の曇り度合いと同程度であった。
×:インキ取られやプレス板の曇りが見られ、実施例3よりも酷かった。
【0101】
表2〜4の結果より、平版印刷用光輝性インキが平均厚さ15〜100nm且つ平均粒子径が1〜30μmである金属顔料及びバインダー樹脂とを含み、基材上に前記平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)と、印刷物を40〜130℃かつ10〜500kgf/cm2の条件で加熱加圧処理する工程(ii)をこの順に行うことにより、汚れ耐性、着肉性、鏡面光沢度、プレス板曇り耐性のいずれにおいても良好な結果であることが明らかとなった。
【0102】
<非光輝性黄インキの製造例>
特開2016−53143号公報の、実施例2に記載の方法と同様にして、非光輝性黄インキを製造した。
【0103】
<非光輝性黄インキを使用した印刷物の製造例と評価>
上記実施例15にて製造した印刷物(以下、「処理済印刷物」と呼ぶ)と、前記実施例15にて加熱加圧処理を施す前の印刷物(以下、「処理前印刷物」と呼ぶ)とをそれぞれ準備し、各印刷物のベタ部の上に、上記非光輝性黄インキをベタ印刷した。なお、非光輝性黄インキの印刷にあたっては、上記光輝性インキの印刷で使用したものと同じ印刷機、湿し水を使用し、水量値を15ポイント、印刷速度を6000枚/時とした。また、その他の印刷条件を調整し、黄顔料の付与量が0.05g/m2となるようにした。
【0104】
上記で得られた、処理済印刷物上に非光輝性黄インキを印刷したもの(以下、「処理済金色印刷物」と呼ぶ)の光沢性と、処理前印刷物上に非光輝性黄インキを印刷したもの(以下、「処理前金色印刷物」と呼ぶ)の光沢性とを、目視にて比較した。その結果、処理前金色印刷物に比べて、処理済金色印刷物の光沢性が優れていることが確認された。
【0105】
また、上記処理前金色印刷物について、エンドレスプレス機(松本機械製作社製)を使用し、温度80℃、圧力100kgf/cm2の条件で、加熱加圧処理を行った。その結果、加熱加圧処理前に比べ、前記加熱加圧処理後の印刷物の光沢性が向上していることが確認された。また前記加熱加圧処理後、前記エンドレスプレス機のプレス板を目視で観察したところ、インキ取られやプレス板の曇りは見られなかった。
【要約】
【課題】
本発明の目的は、印刷・加工適性(着肉性、耐汚れ性)に優れる平版印刷用光輝性インキを用いた、従来よりも光沢度が高く鏡面性を有する印刷物の製造方法、及び、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物を提供することにある。
【解決手段】
平版印刷用光輝性インキを用いた印刷物の製造方法であって、前記平版印刷用光輝性インキが、平均厚さが15〜100nm、かつ、平均粒子径が1〜30μmである金属顔料(A)と、バインダー樹脂とを含み、基材上に前記平版印刷用光輝性インキを印刷する工程(i)と、印刷物を40〜130℃かつ10〜500kgf/cm2の条件で加熱加圧処理する工程(ii)とを、この順に行う、印刷物の製造方法である。
【選択図】なし