特許第6464438号(P6464438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6464438染毛剤塗布具及び染毛剤塗布具の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464438
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】染毛剤塗布具及び染毛剤塗布具の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/00 20060101AFI20190128BHJP
   A45D 24/22 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   A45D19/00 B
   A45D24/22 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-52136(P2017-52136)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153380(P2018-153380A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】517095364
【氏名又は名称】青木 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】青木 幸治
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/169789(US,A1)
【文献】 特開2002−233811(JP,A)
【文献】 特開平08−052021(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3044294(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00
A45D 24/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の直線端部を有する第1塗布部と、
前記第1塗布部に隣接し、アールが形成された第2塗布部と、
前記第1塗布部に隣接し、前記第2塗布部のアールよりも半径の大きいアールが形成された第3塗布部と、
作業者が把持するための把持部と、
髪をかき分けるためのテール部と、を有し、
前記第1塗布部、前記第2塗布部、前記第3塗布部、及び前記把持部は、同一の弾性素材で一体的に形成されていることを特徴とする染毛剤塗布具。
【請求項2】
長手方向における断面形状は、前記長手方向に延びる中心線に対して線対称であって、
前記第1塗布部、前記第2塗布部、及び前記第3塗布部における前記断面形状は、前記長手方向の一端から他端に向かうにつれてテーパ状に厚くなっていることを特徴とする請求項1に記載の染毛剤塗布具。
【請求項3】
染毛剤を塗布する第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、をさらに有し、
前記把持部は、前記第1面及び前記第2面のそれぞれに内側に窪むように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の染毛剤塗布具。
【請求項4】
前記テール部を着脱可能且つ回転可能に保持するテール保持部をさらに有し、
前記テール保持部は、前記第1塗布部、前記第2塗布部、前記第3塗布部、及び前記把持部と同一の弾性素材で一体的に形成され、
前記テール部は、先端部分が湾曲していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の染毛剤塗布具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の染毛剤塗布具を用い、
前記第2塗布部でもみあげを染毛し、
前記第3塗布部でおでこの生え際又は襟足の少なくとも一方を染毛し、
前記第1塗布部で前記第2塗布部及び前記第3塗布部で染毛した部分以外の場所を染毛する染毛剤塗布具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛剤塗布具及び染毛剤塗布具の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、髪を染毛する際には、クシ又はブラシ形状の毛染用具が用いられていた。特許文献1に記載の毛染め用ブラシでは、生え際を染毛する際に使用する櫛部材又はヘラをブラシ本体に一体で装着することができるため、保管に便利でかつ一方を忘れたり紛失することがない。
【0003】
特許文献2に記載の毛染め用ブラシでは、スライスを取り外し可能に設け、取外し後のスライスを基台に固定可能とすることにより、コームの長さを短くし、収納箱に収納できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−52021号公報
【特許文献2】実用新案登録第3044294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の染毛用具はいずれもブラシ又はクシ形状をなしており、染毛する際に頭皮に刺激があった。特に、髪の生え際を染毛する際は、頭皮に直接染毛用具が触れることが多く、ブラシ又はクシの先端部分が頭皮に当たることにより地肌への刺激が強かった。また、伸びてきた髪を染めるため生え際を染毛することが多いが、ブラシまたはクシで染毛剤を塗布すると、ブラシ又はクシが髪の流れに沿って移動するため、生え際に十分に染毛剤を塗布することができないという問題があった。特に、生え際では、地肌が近いこともあって大量の染毛剤を塗布すると肌に直接多くの染毛剤が付着してしまうこととなり、少ない染毛剤で効率的に染毛する必要があるが、ブラシ又はクシによって生え際に十分な染毛剤を塗布することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明は肌に優しく生え際にも染毛剤を十分に塗布することができる染毛剤塗布具及び染毛剤塗布具の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明では、直線状の直線端部を有する第1塗布部と、前記第1塗布部に隣接し、アールが形成された第2塗布部と、前記第1塗布部に隣接し、前記第2塗布部のアールよりも半径の大きいアールが形成された第3塗布部と、作業者が把持するための把持部と、髪をかき分けるためのテール部と、を有し、前記第1塗布部、前記第2塗布部、前記第3塗布部、及び前記把持部は、同一の弾性素材で一体的に形成されていることを特徴とする染毛剤塗布具を提供する。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、長手方向における断面形状は、前記長手方向に延びる中心線に対して線対称であって、前記第1塗布部、前記第2塗布部、及び前記第3塗布部における前記断面形状は、前記長手方向の一端から他端に向かうにつれてテーパ状に厚くなっていることを特徴としている。
【0009】
第3の発明では、第1の発明又は第2の発明において、染毛剤を塗布する第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、をさらに有し、前記把持部は、前記第1面及び前記第2面のそれぞれに内側に窪むように設けられていることを特徴としている。
【0010】
第4の発明では、第1の発明から第3の発明において、前記テール部を着脱可能且つ回転可能に保持するテール保持部をさらに有し、前記テール保持部は、前記第1塗布部、前記第2塗布部、前記第3塗布部、及び前記把持部と同一の弾性素材で一体的に形成され、前記テール部は、先端部分が湾曲していることを特徴としている。
【0011】
第5の発明では、第1の発明から第4の発明の染毛剤塗布具を用い、前記第2塗布部でもみあげを染毛し、前記第3塗布部でおでこの生え際又は襟足の少なくとも一方を染毛し、前記第1塗布部で前記第2塗布部及び前記第3塗布部で染毛した部分以外の場所を染毛する染毛剤塗布具の使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0013】
第1の発明によると、第1塗布部は直線状の直線端部を備えているため、髪と第1塗布部とが直線状に接触し、髪の生え際であっても髪に十分に染毛剤を乗せることができる。従来のように、クシやブラシを用いて生え際に染毛剤を塗布すると、クシやブラシの毛が髪の凹凸に沿うように流れるため、クシやブラシが過剰に染毛剤を取り除いてしまい生え際に十分に染毛剤を塗布することが難しかった(図3(a))。しかし、本発明によると、第1塗布部の直線端部と髪とが直線状に接触するため髪の毛の凹凸の凹の部分には染毛剤が残ることとなり、生え際を染毛するのに十分な染毛剤を髪に乗せることができる(図3(b))。これにより、髪が伸びてきた部分を染め直すいわゆるリタッチの作業性を向上させることができる。また、第2塗布部及び第3塗布部にはそれぞれアールが形成されているため、生え際の様々な場所に対して効率的に染毛剤を塗布することができる。特に、第2塗布部は小さいアールであるため細かい部分であるもみあげの染毛に適しており、第3塗布部は大きいアールであるため襟足などの幅広くて湾曲している部分の染毛に適している。さらに、第1塗布部、第2塗布部、第3塗布部、及び把持部が同一の弾性素材で形成されているため、染毛剤を塗布する感覚が直接的に把持部に伝わってくる。これにより、染毛剤の粘度や状態に応じてどの程度の力で染毛剤を塗布すれば良いのかを感覚的に理解しやすくなり、さまざまな種類の染毛剤に対して、髪に十分に染毛剤を乗せることができる。また、把持部の押圧力が直接的に第1塗布部、第2塗布部、及び第3塗布部に伝達されるため、染毛剤を毛束の内側まで浸透させることができる。さらに、同一の素材で一体的に形成されているため、染毛剤塗布具の製造コストを削減することができる。また、髪をかき分けるテール部を有しているため、染毛の際に染毛剤塗布具とテールとを持ち替える必要がなくなり、染毛作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
第2の発明によると、染毛剤塗布具の断面は、上下の中心線に対して線対称であるため、いずれの面を髪に当てた場合であっても、同様の強さで染毛剤を髪に塗布することができる。これにより、染毛の際に2つの面を使用することができる。また、第1塗布部、第2塗布部、及び第3塗布部はいずれも断面がテーパ状に厚くなっているため、端部は曲がり易く、長手方向に向かうにつれて曲がりにくくなる。これにより、染毛剤塗布具を押圧する力に応じて髪と染毛剤塗布具との接触面積が変化し、細かい部分は狭い接触面積で丁寧に染毛剤を塗布し、広い部分は大きな接触面積で効率的に染毛剤を塗布することができる。
【0015】
第3の発明によると、把持部は、第1面及び第2面の両面に設けられているため、第1面又は第2面のいずれの面を髪に当てた場合であっても、染毛剤塗布具をしっかりと把持することができる。把持部は内側に窪んでいることにより、把持した際の指が窪みに収まり、染毛剤塗布具が落下することを抑制できる。
【0016】
第4の発明によると、テール部が着脱可能となっているため、形状が異なるテール部に差替えることができる。また、先端が湾曲していることにより、髪をかき上げ易くなっている。さらに、テール部を回転させることにより、湾曲している部分の方向を任意に設定することができ、使い勝手の良い染毛剤塗布具を提供することができる。また、テール保持部は、第1塗布部、第2塗布部、第3塗布部、及び把持部と同一の弾性素材で一体的に形成されているため、染毛剤塗布具の製造コストを削減することができる。
【0017】
第5の発明によると、半径の小さいアールが形成されている第2塗布部でもみあげ等に染毛剤を塗布することで、地肌に直接多量の染毛剤が付着することを抑制し、効率的に染毛剤を髪に塗布することができる。また、半径の大きいアールが形成されている第3塗布部で襟足やおでこの生え際などの湾曲している部分に染毛剤を塗布することにより、地肌に直接多量の染毛剤が付着することを抑制するとともに、効率的に染毛剤を髪に塗布することができる。これにより、染毛剤を塗布する際の作業性を向上させることができる。また、直線端部を有する第1塗布部で上記以外の部分を塗布することにより、髪の生え際に染毛するのに十分な量の染毛剤を塗布することができる。これにより、染ムラをなくし髪全体を均一に染めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態による染毛剤塗布具の斜視図。
図2】本発明の実施の形態による染毛剤塗布具の第1塗布部における断面図。
図3図3(a)は従来の染毛剤塗布具で染毛剤を塗布した状態を示す図であって、図3(b)は本発明の実施の形態による染毛剤塗布具で染毛剤を塗布した状態を示す図。
図4】本発明の実施の形態による染毛剤塗布具の第1塗布部で生え際を染毛している状態を示す図。
図5】本発明の実施の形態による染毛剤塗布具の第2塗布部でもみあげを染毛している状態を示す図。
図6】本発明の実施の形態による染毛剤塗布具の第3塗布部で襟足を染毛している状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態による染毛剤塗布具1を図1乃至図6に基づき説明する。図1に示すように、前後上下左右方向を定義する。なお、以下の説明において、直交、平行、とは完全なる直交及び平行に加え、略直交、略平行の概念も含むものとする。
【0020】
染毛剤塗布具1は、本体部2と、テール部3と、を備えている。本体部2は、弾性を有する素材(弾性素材)であってシリコンゴムからなる。本体部2は、例えば、天然ゴム、クロロプレンアクリロゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等を用いてもよい。本体部2は、髪と接触した際に所定の抵抗を持って移動する。テール部3は、熱可塑性樹脂であって、例えば、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリルニトル・スチレン樹脂等を使用することができる。テール部3は、髪と接触した際の抵抗が本体部2よりも小さい。本体部2は、前側の面である前面1Aと、後側の面である後面1Bと(図2)、第1塗布部21と、第2塗布部22と、第3塗布部23と、把持部24と、テール保持部25と、を有している。本体部2の左上端部には、前後方向に貫通する円形の貫通孔2aが形成されていて、染毛剤塗布具1をフック等に引掛ける際に使用する。前面1A及び後面1Bのいずれか一方が本発明の第1面に相当し、他方が第2面に相当する。
【0021】
図1に示すように、第1塗布部21は、染毛剤塗布具1の下部中央であって略平板形状をなし、下端に左右方向に直線状に延びる直線端部21Aを備えている。本体部2の左右方向略中央部分における上下方向(長手方向)の断面は、図2に示すように、上下方向に延びる中心線Aに対して線対称である。第1塗布部21は、下端(先端)から上方に向かうにつれてテーパ状に厚くなっており、先端部分の拡大図に示すように、直線端部21Aの前後方向の角にはアールR1が形成されている。直線端部21Aは直接地肌に接触する部分であるため、アールを形成することにより肌への刺激を低減している。第1塗布部21の断面のテーパ部分は、第1塗布部21で染毛剤を塗布する際には、直線端部21Aから把持部24にかけて湾曲し、直線端部21Aから上方に十数ミリの領域で直線状に髪と接触し、髪に染毛剤を塗布する。なお、第1塗布部21の断面の形状やテーパの傾斜等は、染毛剤塗布具1の素材に応じて任意に変更することができる。
【0022】
第2塗布部22は、第1塗布部21の右側に隣接し、前後方向から見て半径r2のアールR2が形成されている。ここでいう隣接とは、同一の素材で一体的に隙間なく形成されていることをいう。第2塗布部22は、第1塗布部21と同様に、上下方向の断面において、上下方向の中心線に対して線対称となっていて、下部から上方に向かうにつれて略テーパ状に厚くなっており、下端部の前後方向における各角にはアールが形成されている。第2塗布部22の下端部は直接地肌に接触する部分であるため、アールを形成することにより、肌への刺激を低減している。第2塗布部22で染毛剤を塗布する際は、第2塗布部22の右下端部から把持部24にかけて湾曲し、当該端部から十数ミリの領域でフラットに髪と接触し、髪に染毛剤を塗布する。なお、第2塗布部22の断面の形状やテーパの傾斜等は、染毛剤塗布具1の素材に応じて任意に変更することができる。
【0023】
第3塗布部23は、第1塗布部21の左側に隣接し、前後方向から見て半径r2よりも半径の大きい半径r3のアールR3が形成されている。第3塗布部23は、第1塗布部21と同様に、上下方向の断面において、上下方向の中心線に対して線対称となっていて、下部から上方に向かうにつれて略テーパ状に厚くなっており、下端部の前後方向における各角にはアールが形成されている。第3塗布部23の下端部は直接地肌に接触する部分であるため、アールを形成することにより、肌への刺激を低減している。第3塗布部23で染毛剤を塗布する際は、第3塗布部23の左下端部から把持部24にかけて湾曲し、当該端部から十数ミリの領域でフラットに髪と接触し、髪に染毛剤を塗布する。なお、第3塗布部23の断面の形状やテーパの傾斜等は、染毛剤塗布具1の素材に応じて任意に変更することができる。
【0024】
把持部24は、図1に示すように、本体部2の略中央部分であって、図2に示すように、前面1A及び後面1Bに内側に窪むように形成されている。前面1A及び後面1Bに形成された把持部24は同一形状であって、下方に向かうにつれて右方向に広がるような形状を成しており略中央部分が最も窪んでいる。作業者が染毛剤塗布具1を把持する際は、前面1A及び後面1Bのうちの一方の最も窪んだ部分に親指の腹を配置し、他方の最も窪んだ部分の周辺に中指の腹及び人差し指と薬指の一部を配置する。
【0025】
テール保持部25は略円筒形状をなし、テール部3を着脱可能且つ回転可能に保持する保持孔25aが形成されている。テール保持部25は、前面1A及び後面1Bにおいて前後方向に円弧状に突出していて、円筒の軸心は斜め左下と右上とを結ぶ方向に指向している。これにより、テール部3がテール保持部25に装着された状態では、テール部3は斜め左下方向に延びている。
【0026】
染毛剤塗布具1の本体部2において、第1塗布部21と、第2塗布部22と、第3塗布部23と、把持部24と、テール保持部25とは、同一の弾性素材で一体的に形成されている。
【0027】
テール部3は、テール保持部25との嵌合により所定の抵抗をもって回転する。例えばテール部3で髪を分けた際の負荷では回転しないが、作業者がテール部3を回すことにより回転する。テール部3は、湾曲部31と、先端部32と、被保持部33とを備えている。湾曲部31は、テール部3の先端部分に設けられていて、先端に向かうにつれて斜め右下方向に円弧状に湾曲している。この湾曲する方向は、テール部3を回転させることにより任意に設定することができる。先端部32は、丸みを帯びていて、略半球形状をなしている。先端部32は、テール部3で髪を分ける際に地肌に直接触れる部分であるため、丸みを帯びさせることにより肌への刺激を低減している。被保持部33が保持孔25aに挿入されることにより、テール部3がテール保持部25に保持される。
【0028】
次に、染毛剤塗布具1を用いて髪を染毛する方法について説明する。
【0029】
染毛する際には、染毛剤をカップやボウル等で溶いて染毛剤塗布具1又はマドラー等で混ぜ合わせる。第1塗布部21に染毛剤をとり、図4に示すように、第1塗布部21の直線端部21Aを分け目51と平行になるように配置し、髪の方向に沿って直線端部21Aを平行移動させるように生え際に染毛剤を塗布する。図3(a)に示すように、従来のブラシ121で染毛剤を塗布すると、ブラシ121の毛121Aが髪11の凹凸に沿うため凹部12の染毛剤10も毛121Aによって取り除かれてしまい生え際に十分な量の染毛剤10を塗布することが難しかった。また、押圧する力がブラシ121の毛121Aの1本1本に分散してしまい、強く押圧したとしても毛121Aが湾曲してしまうため、染毛剤10が浸透する深さD1が浅く毛束の内側まで染毛剤10を浸透させ難かった。図3(b)に示すように、第1塗布部21の直線端部21A又は直線端部21Aから数十ミリの領域でフラットに染毛剤10を塗布することにより、髪11の凹凸の凹部12に染毛剤10が残ることとなり、染毛するために必要な量の染毛剤10を髪11に塗布することができる。また、髪11と、把持部24と一体的に形成された第1塗布部21と、が直線状に接触するため、染毛剤塗布具1を押圧する力が髪にダイレクトに伝わり、深さD1よりも深い深さD2まで、つまり、毛束の内側まで染毛剤10を浸透させることができる。ヘナなどの天然成分を原料とする染毛剤は粘性が高く天然成分の粒子も残存しているため、従来のブラシでは生え際に染毛剤を必要な量だけ塗布することが難しかった。しかし、本実施の形態の染毛剤塗布具1によると、ヘナを含む染毛剤を第1塗布部21の直線端部21Aで塗布することにより、粘性のあるヘナなどの染毛剤であっても髪に染毛剤を残すとともに毛束の内側まで染毛剤を浸透させ、染め残しをなくし効率的に髪11を染毛することができる。第2塗布部22及び第3塗布部23についても髪11へフラットに接触するため、第1塗布部21と同様の効果を得ることができる。
【0030】
図5に示すように、もみあげ52を染毛する際は、第2塗布部22のアールR2の部分を利用して、染毛剤10を塗布する。第2塗布部22は、第1塗布部21及び第3塗布部23に比べて髪との接触面積が小さいため、感触が柔らかく細かい部分を丁寧に染毛することができる。従来のブラシは直線状であって幅も広いためもみあげ52などの細かい部分に染毛剤10を塗布することは難しかった。これに対し、第2塗布部22を利用することで染毛剤10を塗布する部分が湾曲しているアールR2であって染毛剤塗布具1を押圧する力によって髪と接触する幅を任意に変更することができるため、地肌に付着する染毛剤10を抑えつつ効率的に染毛剤10を塗布することができる。
【0031】
図6に示すように、襟足53の生え際を染毛する際は、第3塗布部23のアールR3の部分を利用して、染毛剤10を塗布する。第3塗布部23は、第2塗布部22よりもアールの半径が大きいため、効率的に染毛剤10を襟足53に塗布することができる。また、襟足53やおでこの生え際などのカーブしている部分であっても、アールR3を利用することで、染毛剤10が地肌に触れる量を最小限に抑えることができる。従来のブラシは直線状であって幅も広いため、襟足53などの湾曲した部分の生え際に染毛剤10を塗布することは難しかった。これに対し、第3塗布部23を利用することで染毛剤10を塗布する部分が湾曲しているアールR3であって染毛剤塗布具1を押圧する力によって髪と接触する幅を任意に変更することができるため、地肌に付着する染毛剤10を抑えつつ効率的に染毛剤10を塗布することができる。
【0032】
毛束の内側に染毛剤10を塗布する際には、テール部3を用いて髪11をかき分け、内部の髪11に染毛剤10を塗布する。頭の形に応じて、テール部3を回転させて湾曲部31の位置を変更させてもよい。染毛剤10が髪11全体もしくは髪11の毛の生え際全体に略均等に塗布したら、所定時間放置して髪をすすぐ。放置する時間は、髪の質や染毛剤の材料などによって任意に設定する。
【0033】
このような染毛剤塗布具1によると、第1塗布部21は直線状の直線端部21Aを備えているため、髪11と第1塗布部21とが直線状に接触し、髪11の生え際であっても髪11に十分に染毛剤10を乗せることができる。例えば、ブラシ121を用いて生え際に染毛剤10を塗布すると、ブラシ121の毛121Aが髪11の凹凸に沿うように流れるため、ブラシ121が過剰に染毛剤10を取り除いてしまい生え際に十分に染毛剤10を塗布することが難しかった。しかし、第1塗布部21の直線端部21Aと髪11とが直線状に接触するため髪11の凹凸の凹部12には染毛剤10が残ることとなり、生え際を染毛するのに十分な染毛剤10を髪11に乗せることができる。これにより、髪11が伸びてきた部分を染め直すいわゆるリタッチの作業性を向上させることができる。また、第2塗布部22及び第3塗布部23にはそれぞれアールR2、R3が形成されているため、生え際の様々な場所に対して効率的に染毛剤10を塗布することができる。さらに、第1塗布部21、第2塗布部22、第3塗布部23、及び把持部24が同一の弾性素材で形成されているため、染毛剤10を塗布する感覚が直接的に把持部24に伝わってくる。これにより、染毛剤10の粘度や状態に応じてどの程度の力で染毛剤10を塗布すれば良いのかを感覚的に理解しやすくなり、さまざまな種類の染毛剤10に対して、髪11に十分に染毛剤10を乗せることができる。また、把持部24の押圧力が直接的に第1塗布部21、第2塗布部22、及び第3塗布部23に伝達されるため、染毛剤10を毛束の内側まで浸透させることができる。さらに、本体部2が同一の素材であるため、染毛剤塗布具1の製造コストを削減することができる。また、髪11をかき分けるためのテール部3を有しているため、染毛の際に染毛剤塗布具1とテール部3とを持ち替える必要がなくなり、染毛作業の作業性を向上させることができる。
【0034】
このような染毛剤塗布具1によると、染毛剤塗布具1の断面は、上下の中心線Aに対して線対称であるため、前面1A及び後面1Bのいずれの面を髪11に当てた場合であっても、同様の強さで染毛剤10を髪に塗布することができる。これにより、染毛の際に2つの面を使用することができる。また、第1塗布部21、第2塗布部22、及び第3塗布部23はいずれも断面がテーパ状に厚くなっているため、端部は曲がり易く、長手方向に向かうにつれて曲がりにくくなる。これにより、染毛剤塗布具1を押圧する力に応じて髪11と染毛剤塗布具1との接触面積が変化し、細かい部分は狭い接触面積で丁寧に染毛剤10を塗布し、広い部分は大きな接触面積で効率的に染毛剤10を塗布することができる。
【0035】
このような染毛剤塗布具1によると、把持部24は、前面1A及び後面1Bの両面に設けられているため、前面1A又は後面1Bのいずれの面を髪11に当てた場合であっても、染毛剤塗布具1をしっかりと把持することができる。把持部24は内側に窪んでいることにより、把持した際の指が窪みに収まり、染毛剤塗布具1が落下することを抑制できる。
【0036】
このような染毛剤塗布具1によると、テール部3が着脱可能となっているため、形状が異なるテール部に差替えることができる。また、先端が湾曲していることにより、髪をかき上げ易くなっている。さらに、テール部3を回転させることにより、湾曲している部分の方向を任意に設定することができ、使い勝手の良い染毛剤塗布具を提供することができる。また、テール保持部25は、第1塗布部21、第2塗布部22、第3塗布部23、及び把持部24と同一の弾性素材で一体的に形成されているため、染毛剤塗布具1の製造コストを削減することができる。
【0037】
このような染毛剤塗布具1の使用方法によると、半径の小さいアールが形成されている第2塗布部でもみあげ等に染毛剤を塗布することで、地肌に直接多量の染毛剤が付着することを抑制し、効率的に染毛剤を髪に塗布することができる。また、半径の大きいアールが形成されている第3塗布部で襟足やおでこの生え際などに染毛剤を塗布することで、地肌に直接多量の染毛剤が付着することを抑制するとともに、効率的に染毛剤を髪に塗布することができる。これにより、染毛剤を塗布する際の作業性を向上させることができる。また、直線端部を有する第1塗布部で上記以外の部分を塗布することにより、髪の生え際に染毛するのに十分な量の染毛剤を塗布することができる。これにより、染ムラをなくし髪全体を均一に染めることができる。
【0038】
本発明による染毛剤塗布具及び染毛剤塗布具の使用方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0039】
上述の染毛剤塗布具1では、テール部3はテール保持部25に対して回転可能であったが、これに限定されない。テール部及びテール保持部のいずれか一方に溝を設けて他方に当該溝に係合する突起を設けることにより、テール部をテール保持部に対して回転不能としてもよい。これにより、所望の位置でテール部3を固定することができる。また、テール部3は左下方向に延びるように設けられていたが、テール部3の延出方向は任意に設定することができる。
【0040】
上述の染毛剤塗布具1では、テール部3の形状は、先端部が円弧状に湾曲していたが、これに限定されない。例えば、より細かな場所に対して染毛剤を塗布できるように薄いシリコン等で形成されたヘラ状の塗布部をテール部の先端に設けてもよい。また、湾曲のアールをより小さくしてもよい。これにより、頭皮の形状に沿ったアールとなり、より髪をかき分け易くなる。
【0041】
上述の染毛剤塗布具1では、本体部2は前後方向から見て略鳥のような毛状をなしていたが、これに限定されない。例えば、略矩形であってもよく、略楕円形状や略円形であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 染毛剤塗布具
1A 前面
1B 後面
2 本体部
3 テール部
21 第1塗布部
22 第2塗布部
23 第3塗布部
24 把持部
25 テール保持部
31 湾曲部
52 もみあげ
53 襟足
図1
図2
図3
図4
図5
図6