(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ICチップは、前記第1導波素子と前記給電部との間に亘って設けられ、かつ前記第1絶縁基材の前記第1主面上に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のRFタグ付き導体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、読み取り性能を向上させることが可能なRFタグ用アンテナ及びその製造方法、並びにRFタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るRFタグ用アンテナは、
第1主面、及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、
前記第1主面に設けられた第1導波素子と、
前記第2主面に設けられた第2導波素子と、
前記第1絶縁基材の側面に設けられ、前記第2導波素子に一端が電気的に接続された給電部と、
前記第1絶縁基材の前記側面に設けられ、前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続された短絡部と、を備え、
前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成され、
前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されることを特徴とする。
【0008】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記第1導波素子及び前記第2導波素子のいずれか一方の導波素子の側辺から延在し、他方の導波素子の上に第2絶縁基材を介して貼り付けられた延長部をさらに備えてもよい。
【0009】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記延長部は、前記側面と反対側の側面上を通るように設けられていてもよい。
【0010】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記第1導波素子及び第2導波素子は同一形状であり、前記第1導波素子及び第2導波素子の側辺の長さの合計はλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8(λ:前記電波の波長)のいずれかに等しいようにしてもよい。
【0011】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記第1絶縁基材が誘電体であるようにしてもよい。
【0012】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記第1絶縁基材は、RFタグを取り付ける位置における被取付物の表面形状に応じた形状を有するようにしてもよい。
【0013】
また、前記RFタグ用アンテナにおいて、
前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部は、可撓性を有する絶縁性のシート上に形成されていてもよい。
【0014】
本発明に係るRFタグは、
前記RFタグ用アンテナと、
前記電波に基づいて動作するICチップと、を備え、
前記共振回路は、前記インダクタパターンのインダクタンス、前記コンデンサの静電容量及び前記ICチップ内部の等価容量を考慮して設定された共振周波数を有することを特徴とする。
【0015】
また、前記RFタグにおいて、
前記第1導波素子及び/又は前記第2導波素子が導体に接触し、前記導体が前記第1導波素子及び/又は第2導波素子とともに前記電波を受信するようにしてもよい。
【0016】
また、前記RFタグにおいて、
前記第1導波素子及び/又は第2導波素子が第3絶縁基材を介して導体に接触し、前記導体が前記第1導波素子及び/又は第2導波素子とともに前記電波を受信するようにしてもよい。
【0017】
また、前記RFタグにおいて、
前記第3絶縁基材は、前記RFタグを格納するケースの一部であるようにしてもよい。
【0018】
また、前記RFタグにおいて、
前記導体と、前記第3絶縁基材と、前記第1導波素子及び第2導波素子のうち前記第3絶縁基材を介して前記導体に接触する導波素子とで構成されるコンデンサの容量は、前記ICチップ内部の等価容量以上であるようにしてもよい。
【0019】
また、前記RFタグにおいて、
前記ケースには接続導体が嵌め込まれ、前記接続導体を介して前記第2導波素子と前記導体とが電気的に接続されるようにしてもよい。
【0020】
また、前記RFタグにおいて、
前記ケースは、上側が開口し、前記RFタグを格納する蓋体と、前記蓋体を格納する筐体とを有し、前記筐体は孔が設けられた外縁部を有し、前記孔を利用して固定手段により前記ケースは前記導体に固定されるようにしてもよい。
【0021】
また、前記RFタグは、絶縁性又は導電性のケースに格納されていてもよい。
【0022】
また、前記RFタグにおいて、
前記RFタグと前記ケースの第1内面との間の隙間には、前記RFタグを前記第1内面と対向する第2内面に向けて押圧する付勢部材が設けられていてもよい。
【0023】
また、前記RFタグにおいて、
前記ケースの第1内面には、前記RFタグを前記第1内面と対向する第2内面に向けて押圧する突起が設けられていてもよい。
【0024】
また、前記RFタグにおいて、
前記ケースは導電材料からなり、前記ケースには前記電波が通過するための開口が設けられていてもよい。
【0025】
本発明に係るRFタグ用アンテナの製造方法は、
前記RFタグ用アンテナの製造方法であって、
前記給電部及び前記短絡部の長手方向に直交する方向に沿って、前記給電部及び前記短絡部をそれぞれ、前記第1導波素子及び前記第2導波素子との接合箇所近傍において折り曲げて、前記第1導波素子と前記第2導波素子とを対向させ、
前記第1導波素子を前記第1絶縁基材の前記第1主面に貼り付け、
前記第2導波素子を前記第1絶縁基材の前記第2主面に貼り付ける、
ことを特徴とする。
【0026】
また、前記RFタグ用アンテナの製造方法において、
前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部は、可撓性を有する絶縁性のシート上に形成されており、前記シートとともに前記給電部及び前記短絡部を折り曲げるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、第1絶縁基材、第1導波素子、第2導波素子、給電部及び短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成される。さらに、第1導波素子、短絡部、第2導波素子及び給電部により構成されるインダクタパターンと、第1導波素子、第2導波素子及び第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、読取装置から送信された電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される。これにより、板状逆Fアンテナは読取装置から送信された電波を高感度で受信することができる。よって、本発明によれば、読み取り性能を向上させることが可能なRFタグ用アンテナ及びその製造方法、並びにRFタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】第1の実施形態に係るRFタグ100を上方から見た斜視図である。
【
図1B】第1の実施形態に係るRFタグ100を下方から見た斜視図である。
【
図1C】第1の実施形態に係るRFタグ100のシート70の展開図である。
【
図1D】第1の実施形態に係るRFタグ100の製造方法を説明するための図である。
【
図1E】被取付物150の表面形状に応じた形状を有するRFタグ100の斜視図である。
【
図1F】
図1Eに示すRFタグ100が被取付物150に取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るRFタグ100の等価回路図である。
【
図3】第1の実施形態に係るRFタグ100を導体200に設置した状態を示す斜視図である。
【
図4A】第2の実施形態に係るRFタグ100Aを上方から見た斜視図である。
【
図4B】第2の実施形態に係るRFタグ100Aを下方から見た斜視図である。
【
図4C】第2の実施形態に係るRFタグ100Aのシート70の展開図である。
【
図5】第2の実施形態に係るRFタグ100Aの縦断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係るRFタグ302の縦断面図である。
【
図7】第3の実施形態に係るRFタグ302、ケース303及び導体200を含むシステムの等価回路図である。
【
図8A】第3の実施形態の第1の変形例に係るRFタグの縦断面図である。
【
図8B】第3の実施形態の第2の変形例に係るRFタグの縦断面図である。
【
図9】第3の実施形態の第3の変形例に係るRFタグの縦断面図である。
【
図10】第3の実施形態の第4の変形例に係るRFタグの縦断面図である。
【
図11A】第4の実施形態に係るRFタグの縦断面図である。
【
図11B】第4の実施形態の変形例に係るRFタグの縦断面図である。
【
図12A】第5の実施形態の第1の例に係るケースの斜視図である。
【
図12B】第5の実施形態の第2の例に係るケースの斜視図である。
【
図12C】第5の実施形態の第3の例に係るケースの斜視図である。
【
図12D】第5の実施形態の第4の例に係るケースの斜視図である。
【
図12E】第5の実施形態の第5の例に係るケースの斜視図である。
【
図13】導体200上への複数のRFタグ100の好ましい配置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るRFタグ用アンテナ10及びRFタグ100について図面を用いて説明する。
【0030】
図1A及び
図1Bに示すように、RFタグ用アンテナ10は第1導波素子20、第2導波素子30、第1絶縁基材40、給電部50及び短絡部60を備えている。
【0031】
第1絶縁基材40は、上面(第1主面)、及び第1主面の反対側の下面(第2主面)を有する。第1絶縁基材40は、例えば略直方体であるが、これに限らない。例えば、円盤状であってもよいし、あるいは断面が円弧状に湾曲したものであってもよい。好ましくは、第1絶縁基材40は、RFタグ100を取り付ける位置における被取付物の表面形状に応じた形状を有する。これにより、取り付け位置の制限がなくなり、RFタグの用途を拡げることができる。例えば、
図1E及び
図1Fに示すように、RFタグ100が筒状の被取付物150の外周面に取り付けられる場合、第1絶縁基材40として、筒体の外周面の形状に合わせて湾曲した形状を有するものを用いる。
【0032】
第1導波素子20は第1絶縁基材40の上面に設けられている。第2導波素子30は第1絶縁基材40の下面に設けられている。第1導波素子20及び第2導波素子30は、いずれも長方形状であり、アルミ等の金属薄膜のエッチング又はパターン印刷等によって形成される。
【0033】
第1導波素子20と第2導波素子30は、同一形状である。なお、本願において「同一形状」とは、厳密な意味での同一に限られるものではなく、アンテナの構造に起因して僅かな差異が生じる場合も「同一形状」に含むものとする。例えば、後述のICチップ80を第1導波素子20と同一平面上に設ける場合、ICチップ80を配置するために、
図1Aに示すように、例えば四角形状の第1導波素子20の一部に凹部を設ける必要がある。この場合、第1導波素子20と第2導波素子30の形状は厳密には同一ではない。しかし、第1導波素子20は第2導波素子30と同様の四角形状であるので、第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状であるというものとする。
【0034】
給電部50は、第1絶縁基材40の側面に設けられ、第2導波素子30に一端が電気的に接続されている。短絡部60は、第1絶縁基材40の側面に設けられ、第1導波素子20に一端が電気的に接続され、第2導波素子30に他端が電気的に接続されている。
図1Aに示すように、給電部50及び短絡部60は、第1導波素子20と第2導波素子30とに架け渡されるようにシート70上に互いに平行に設けられる部材である。
【0035】
なお、給電部50及び短絡部60は、互いに並行に設けられなくてもよい。また、給電部50及び短絡部60は、第1導波素子20及び第2導波素子30と同時に一体成形してもよい。あるいは、第1導波素子20及び第2導波素子30とは別体に成形した後、各々の端部を第1導波素子20及び第2導波素子30に接合してもよい。
【0036】
図1A、
図1B及び
図1Cに示すように、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60は、絶縁性のシート70上に形成されており、第1絶縁基材40の辺の部分で折り曲げられたシート70を介して第1絶縁基材40に貼り付けられている。後ほど詳しく説明するように、片面に第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60が形成された可撓性のシート70を、給電部50及び短絡部60とともに屈曲させて第1絶縁基材40に貼り付けることにより容易にRFタグアンテナ10を製造することができる。
【0037】
なお、シート70の材料としては、PET、ポリイミド、ビニールなど可撓性を有する絶縁材料を用いることが可能である。シート70の厚さは特に限定されるものではないが、一般的には数十μm程度である。また、各導波素子20,30の表面に絶縁被膜処理を施してもよい。
【0038】
また、本実施形態では第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70(基材)上に形成しているが、必ずしもシート70上に形成されたものである必要はない。例えば、第1導波素子20及び第2導波素子30を単体で形成してもよい。あるいは、第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70上に形成した後で当該シート70を剥がしてもよい。
【0039】
上記の第1絶縁基材40、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60により、板状逆Fアンテナが構成される。この板状逆Fアンテナは、読取装置(図示せず)から送信された電波を受信する。第1導波素子20が電波を吸収する場合には、第2導波素子30が導体地板として働く。一方、第2導波素子30が電波を吸収する場合には、第1導波素子20が導体地板として働く。すなわち、導波素子20,30は、RFタグ100の使用態様に応じて、導波素子と導体地板のどちらの機能も果たすことが可能である。
【0040】
第1導波素子20は、その側辺20a〜20fの長さの合計Aがλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれかになるように設計されている。ここで、λは読取装置から送信された電波の波長である。なお、電波の波長λは、RFタグとして使用可能な範囲内であれば特に限定されない。第2導波素子30は、その側辺30a〜30dの長さの合計Bが合計Aとほぼ等しくなるように設計されている。
【0041】
上記のように、第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状であり、各導波素子20,30の側辺の長さの合計A,Bはλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれかにほぼ等しい。これにより、板状逆Fアンテナの共振周波数を容易に設定することができる。さらに、設置場所の影響を受けることなく(例えば導波素子20,30を導体に接触させることなく)、RFタグ100を単体で動作させることができる。
【0042】
なお、各導波素子20,30の側辺の長さの合計A,Bが上記値のいずれかであれば、導波素子20,30の平面形状は長方形状に限られない、例えば、各導波素子20,30の中心部を切り取ったロ字状にしてもよい。
【0043】
また、第1絶縁基材40として絶縁体を用いてもよい。これにより、ある程度の大きさの開口面積を確保し、板状逆Fアンテナの感度向上を図ることができる。例えば、第1絶縁基材40として発泡スチロールを使用することが可能である。
【0044】
また、第1絶縁基材40は誘電体であってもよい。第1絶縁基材40として、例えば比誘電率が1以上〜20以下の誘電体を用いる。誘電率が大きい誘電体(例えばセラミック)を用いた場合、コンデンサ93の静電容量が大きくなるため、第1導波素子20及び第2導波素子30の開口面積が小さくなり、RFタグ100を小型化することができる。ただし、RFタグ用アンテナ10の利得が小さくなるため、読取装置との間で通信可能な距離(通信距離)が短くなる。数メートル以上といった比較的長い通信距離が必要な場合は、第1絶縁基材40として誘電率が小さい誘電体を用いる。この場合、比誘電率は5以下であることが好ましい。
【0045】
RFタグ用アンテナ10では、読取装置から送信され、上記の板状逆Fアンテナで受信される電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される。この共振回路は、インダクタパターンLとコンデンサ(第1コンデンサ)93により構成される(
図2参照)。ここで、インダクタパターンLは、第1導波素子20、短絡部60、第2導波素子30及び給電部50により構成され、コンデンサ93は、第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40により構成される。この共振回路によって、読取装置から送信された電波を板状逆Fアンテナが高感度で受信できるようになるため、RFタグの読み取り性能を向上させることができる。さらに、後述のICチップ80が生成する電源電圧を高くすることができる。
【0046】
なお、本実施形態に係るRFタグ用アンテナ10は、読取装置用のアンテナに適用することもできる。
【0047】
ここで、RFタグ用アンテナ10の製造方法について説明する。まず、
図1B及び
図1Cに示すように、給電部50及び短絡部60の長手方向に直交する方向Hに沿って、給電部50及び短絡部60をそれぞれ、第1導波素子20及び第2導波素子30との接合箇所近傍において折り曲げて、第1導波素子20と第2導波素子30とを対向させる。次に、第1導波素子20を第1絶縁基材40の上面に接着剤等で貼り付け、第2導波素子30を第1絶縁基材40の下面に貼り付ける。これにより、RFタグ用アンテナ10としての板状逆Fアンテナを製造できる。
【0048】
板状逆Fアンテナとして機能するRFタグ用アンテナ10は、上記のように、給電部50及び短絡部60を屈曲させて、第1絶縁基材40の表面及び裏面に第1導波素子20及び第2導波素子30をそれぞれ貼り付けることにより作製される。したがって、給電用の同軸線路やストリップ線路を設ける従来のパッチアンテナの場合と比較して、RFタグ用アンテナの構造を簡略化でき、製造コストを抑えることができる。
【0049】
次に、RFタグ100について説明する。RFタグ100は、上記のRFタグ用アンテナ10と、給電部50に接続されるICチップ80とを備えている。
【0050】
ICチップ80は、
図1Aに示すように、第1導波素子20と給電部50の間に設けられている。ICチップ80は、第1絶縁基材40の上面側(第1導波素子20と同一平面上)に配置されている。なお、板状逆Fアンテナとして機能する範囲内であれば、ICチップ80を第1絶縁基材40の側面に配置してもよい。また、ICチップ80に外部電源を接続して、当該外部電源から供給される電圧によりICチップ80が動作するようにしてもよい。
【0051】
ICチップ80は、RFタグ用アンテナ10の板状逆Fアンテナが受信した電波に基づいて動作する。具体的には、ICチップ80は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流し、動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ80は、生成した電源電圧によって、ICチップ80内の制御用の論理回路、商品の固有情報等が格納された不揮発性メモリを動作させる。また、ICチップ80は、読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
【0052】
ICチップ80には、内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ80は浮遊容量を有する。このため、共振回路の共振周波数を設定する際、ICチップ80内部の等価容量を考慮することが好ましい。換言すれば、共振回路は、インダクタパターンLのインダクタンス、コンデンサ93の静電容量、及びICチップ80内部の等価容量を考慮して設定された共振周波数を有することが好ましい。
【0053】
RFタグ100の等価回路では、
図2に示すように、インダクタパターンLと、コンデンサ93と、ICチップ80とは互いに並列接続されている。インダクタパターンL、コンデンサ93及びICチップ80が、読取装置から送信される電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成する。この共振回路の共振周波数f[Hz]は、式(1)により与えられる。共振周波数fの値は、読取装置から送信される電波の周波数帯域に含まれるように設定される。
【数1】
【0054】
ここで、L
a:インダクタパターンLのインダクタンス、C
a:コンデンサ93の静電容量、C
b:ICチップ80内部の等価容量である。なお、C
bとしては、例えば、使用するICチップの仕様諸元の一つとして公表されている静電容量値を用いることができる。
【0055】
上記のように、ICチップ80内部の等価容量を考慮することで、共振回路の共振周波数を電波の周波数帯域に精度良く設定することができる。その結果、RFタグ100の読み取り性能をさらに向上させることができる。また、ICチップ80が生成する電源電圧をさらに高くすることができる。
【0056】
次に、
図1Dを参照して、RFタグ100の製造方法について詳しく説明する。
図1Dは、RFタグの製造装置と、この製造装置にセットされた基材1及び第1絶縁基材40とを図示している。ここで、基材1は、上面に接着剤(図示せず)が塗布されたシート70と、シート70の下面に形成された導電部(図示せず)と、シート70の下面に搭載されたICチップ80(後述)とを有している。ここで、導電部とは、第1導体素子20、第2導体素子30、給電部50及び短絡部60のことである。なお、導電部は、金属薄膜のエッチング又はパターン印刷等によって、第1導体素子20、第2導体素子30、給電部50及び短絡部60が一体的に形成されたものであってもよい。
【0057】
図1Dに示すように、RFタグの製造装置は、載置台3と、ガイド部4と、押込部材5と、位置決め部材6と、空気管7と、一対のゴムローラ8と、付勢部材9とを備えている。載置台3は、基材1が載置される台である。この載置台3の中央部には第1絶縁基材40が通り抜けるための通り抜け用孔3aが設けられている。また、載置台3には、載置台3を厚さ方向に貫通する吸引用空気孔3bが設けられている。
【0058】
ガイド部4は、第1絶縁基材40の端部が基材1の所定の位置に当接するように、第1絶縁基材40を鉛直方向に摺動させる。ここで、所定の位置とは、基材1の給電部50及び短絡部60が設けられた位置のことである。
【0059】
押込部材5は、ガイド部4に挿通された第1絶縁基材40を鉛直下方に押し込むための部材である。位置決め部材6は載置台3上に配置されている。この位置決め部材6により、基材1は載置台3上の所定の位置に位置決めされる。空気管7は、一端が吸引用空気孔3bに連通し、他端が吸引ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0060】
一対のゴムローラ8は、押込部材5により、基材1を巻き込みながら下方に押し込まれた第1絶縁基材40を挟み込む。ゴムローラ8は、ICチップ80に損傷を与えないように、弾性質の材料からなる。付勢部材9は、
図1Dに示すように、一端が一方のゴムローラ8に接続され、他端が他方のゴムローラ8に接続されている。この付勢部材9により、一対のゴムローラ8は、押込部材5により押し込まれた第1絶縁基材40を挟み込むことができる。
【0061】
上記の製造装置によるRFタグの製造方法は次の通りである。まず、基材1を位置決め部材6により位置決めし、載置台3上に載置する。次に、吸引ポンプを動作させて吸引用空気孔3bを介して基材1を吸引し、基材1を載置台3に固定する。次に、第1絶縁基材40をガイド部4に装着する。そして、押込部材5を駆動して、ガイド部4に装着された第1絶縁基材40を鉛直下方に押し込んでいく。第1絶縁基材40が基材1に当接したら、吸引ポンプの吸引力を弱めて基材1が移動できるようにする。その後、さらに第1絶縁基材40が鉛直下方に押し込まれていき、基材1と第1絶縁基材40が一対のゴムローラ8に到達し、一対のゴムローラ8の間に挟まれる。その後、ゴムローラ8が回転することにより、基材1と第1絶縁基材40は一対のゴムローラ8に挟まれた状態で下方に移送される。このように移送される間、付勢部材9の付勢力を受けた一対のゴムローラ8の挟み込み力により、第1絶縁基材40に基材1が接着される。
【0062】
<導体200上に設置されたRFタグ100>
図3を参照して導体200上に設置されたRFタグ100について説明する。
図3は、RFタグ100を導体200の上面に設置した状態の斜視図を示している。
【0063】
RFタグ100は、第2導波素子30が導体200に接触するように設置されている。なお、本願において「導波素子が導体に接触する」とは、導波素子が導体に直接接触する場合のみならず、導波素子が導体に電気的に接続していると見做せる状態であれば、何らかの物質が導波素子と導体の間に挟まれている状態も含むものとする。
【0064】
本実施形態では、導体200は金属板である。なお、本願において「導体」とは、一般的な辞書的意味と同様に、「電気の伝導率が比較的大きな物質の総称」であり、金属が典型的な例である。ただし、「導体」は、金属に限定されるものではなく、例えば人体、草木、水、地面などであってもよい。
【0065】
第2導波素子30が導体200に接触して電気的に接続され、導体200が第2導波素子30とともに電波を受信する。なお、第1導波素子20が導体200に接触してもよいし、あるいは、第1導波素子20と第2導波素子30の両方が導体200に接触してもよい。導体200は、第1導波素子20及び/又は第2導波素子30とともに電波を受信する。
【0066】
このように第1導波素子20及び/又は第2導波素子30を導体200に接触させることで、当該導波素子は導体200に電気的に接続される。RFタグ用アンテナ10は板状逆Fアンテナであるため、当該導波素子と導体200は、大きな開口面積を有する一つの導波素子として、読取装置の電波を吸収(受信)することができる。よって、板状逆Fアンテナの感度向上を図ることができる。
【0067】
上記のようにRFタグ100を導体200上に設置した場合、導体200自体も一つの導波素子として機能する。このため、RFタグ100を設置した面に電波を照射した場合のみならず、RFタグ100を設置していない面(RFタグが見えない面)に電波を照射した場合でも、RFタグ100を動作させることができる。したがって、RFタグ100を視認できない位置に隠して貼ることも可能になる。
【0068】
さらに、第1導波素子20及び/又は第2導波素子30を導体200に接触させる場合には、導体200と導波素子20,30とが一つの大きな導波素子として機能するので、導波素子20,30のサイズや導体200のサイズに特に制限はない。
【0069】
上述のとおり、RFタグ100は、導体200自体を一つの導波素子として機能させる。RFタグ100を設置した設置面(上面)201に対して読取装置から電波が照射された場合のみならず、RFタグ100を設置していない非設置面(下面)202に対して電波が照射された場合でもRFタグ100は動作する。
【0070】
導体200は、
図3に示すように第2導波素子30側に設置するだけでなく、第1導波素子20側に設置してもよい。すなわち、第1導波素子20が導体200に接触するようにRFタグ100を設置してもよい。あるいは、第1導波素子20と第2導波素子30の両方が導体に接触するようにしてもよい。例えば、2枚の金属板でRFタグ100を挟み込んでもよい。ただし、第1導波素子20を導体200に接触させる場合は、ICチップ80と導体200とが電気的に接続されてショートするおそれがある。ショートを防止するために、ICチップ80の表面を導体200で覆わないようにする(例えばICチップ80を露出させておく)、あるいはICチップ80を第1絶縁基材40の側面に設けるなどの対策をとる必要がある。
【0071】
なお、RFタグ100をゴム等の非導体(絶縁体)上に設置した場合についても同様である。すなわち、RFタグ100を設置していない面に対して電波が照射された場合でもRFタグ100は動作する。この場合は、絶縁体を透過した電波をRFタグ100が受信して動作する。
【0072】
<RFタグ100の配置方法>
複数のRFタグ100を矩形状の導体200上に配置する場合について説明する。この場合、
図13に示すように、複数のRFタグ100を、各RFタグ100の給電部50が導体200の端(側辺)の方向に向くように設置することが好ましい。このように複数のRFタグ100を電流が流れる方向に沿って配置することで、RFタグ100の動作効率が向上し、電波を効率良く放射することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るRFタグ用アンテナ11及びRFタグ100Aについて説明する。但し、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
本実施形態においては、RFタグ用アンテナ11が第2導波素子30の側辺から延びる延長部90を備える。この延長部90は、第1導波素子20及び第2導波素子30のいずれか一方の導波素子の側辺から延在し、他方の導波素子の上に第2絶縁基材91を介して貼り付けられている。
【0075】
本実施形態では、
図4A、
図4B、
図4C及び
図5に示すように、延長部90は、第2導波素子30の側辺から延在し、第1導波素子20の表面に第2絶縁基材91を介して接着剤等で貼り付けられている。延長部90は、
図4Aに示すように、第1絶縁基材40の側面のうち、給電部50及び短絡部60が設けられた側面と反対側の側面上を通るように設けられている。
【0076】
このように、延長部90を第1導波素子20の表面に第2絶縁基材91を介して貼り付けることで、
図5に示すように、延長部90、第2絶縁基材91及び第1導波素子20によって小容量のコンデンサ92が形成される。
【0077】
このコンデンサ92と、第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40で構成されるコンデンサ93とによって静電容量結合効果が得られる。よって、コンデンサ93の静電容量を調節することで、コンデンサ92とコンデンサ93の合成容量を調節し、RFタグ用アンテナ11の共振周波数を容易に調節することができる。コンデンサ93の静電容量は、例えば、延長部90の形状や面積、第2絶縁基材91の誘電率や厚さにより調節することができる。
【0078】
なお、第2絶縁基材91は別途成形することにしてもよい。例えば、別途成形された絶縁膜を延長部90と第1導波素子20との間に挿入するようにしてもよい。
【0079】
また、各導波素子20,30の表面に絶縁被膜処理が施されている場合には、当該絶縁被膜を第2絶縁基材91として使用してもよい。
【0080】
また、本実施形態に係るRFタグ用アンテナ11は、読取装置用のアンテナに適用することもできる。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るRFタグ用アンテナ及びRFタグについて説明する。但し、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
本実施形態においては、第2導波素子30は第3絶縁基材300を介して導体200に接触する。また、第2導波素子30、導体200及び第3絶縁基材300で構成されるコンデンサ部301(第2コンデンサ)の容量を、ICチップ80の内部の等価容量以上にする。
【0083】
本実施形態では、第3絶縁基材300はケース303の一部である。
図6に示すように、RFタグ302はプラスチック等の非導電性のケース303に格納され、RFタグ302を格納したケース303が導体200上に設置されている。ケース303内にRFタグ302を格納することで防水性や防塵性を高めることができる。なお、ケース303の素材としては、例えばABS樹脂や繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
図7は、RFタグ302、ケース303及び導体200を含むシステムの等価回路図を示している。
図7に示すように、コンデンサ301は、第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40で構成されるコンデンサ93(第1コンデンサ)と直列に接続されている。このため、コンデンサ93とコンデンサ301の合成容量が変化して、RFタグの共振回路の共振周波数が大きく変化する可能性がある。
【0085】
具体的には、コンデンサ301の容量がコンデンサ93の容量よりも非常に小さい場合には、合成容量がコンデンサ93の容量に比べて大きく低下する。このことは、非導電性のケースに格納されたRFタグを導体上に設置した場合、RFタグの共振回路の共振周波数が大きく変化して、RFタグの読み取り性能が低下することを意味する。
【0086】
そこで、本実施形態では、コンデンサ301の容量をICチップ80内部の等価容量以上にする。これにより、コンデンサ93とコンデンサ301の合成容量が大幅に低下することを防ぎ、RFタグ302の性能低下を抑制することができる。コンデンサ301の容量はICチップ80内部の等価容量の2倍以上にすることが好ましい。
【0087】
第1の実施形態と同様に、導体は、第2導波素子30側に設置するだけでなく、第1導波素子20側に設置してもよい。あるいは、第1導波素子20と第2導波素子30の両方に導体を設けてもよい。
【0088】
なお、
図8Aに示すように、第2導波素子30と第3絶縁基材300(ケース303)の間に、接着剤が硬化してなる接着層400を設け、当該接着層400によって第2導波素子30を第3絶縁基材300(ケース303)に強固に固定する構造にしてもよい。
【0089】
また、
図8Bに示すように、第3絶縁基材300(ケース303)と導体200の間に、接着剤が硬化してなる接着層401を設け、当該接着層401によって第3絶縁基材300(ケース303)を導体200に強固に固定する構造にしてもよい。
【0090】
また、
図9に示すように、ケース303に接続導体305が嵌め込まれ、この接続導体305を介して第2導波素子30と導体200とが電気的に接続されるようにしてもよい。本実施形態では、接続導体305は、ケース303の下面(導体200と対向する面)に嵌め込まれている。これにより、第2導波素子30と接続導体305と導体200とが一つの大きな導波素子として機能する。よって、板状逆Fアンテナの感度向上を図ることができる。
【0091】
また、RFタグを格納するケースは上記ケース303に限られない。
図10は、変形例に係るケース500の縦断面図を示している。このケース500は、下面が開口した筐体501と、上側が開口した蓋体502とを有する。蓋体502の内部にRFタグ302を格納した状態でこの蓋体502を筐体501内に格納する。筐体501はその左右の側面から伸びる外縁部501aを備えている。この外縁部501aには孔501bが設けられている。孔501bを利用してケース500を導体200にボルト・ナット等の固定手段で固定することができる。
【0092】
上記のように、ケース500は、RFタグ302を格納する蓋体502と、蓋体502を格納する筐体501とを有し、孔501bを利用して固定手段により導体200に固定される。
【0093】
なお、図示は省略するが、前述の接着層401を介してケース500を導体200に固定してもよい。また、筐体501の内側面と蓋体502の外側面との間に生じる隙間503に接着剤を充填してもよい。これにより、ケース500の水密性及び防塵性を高めることができる。
【0094】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るRFタグ用アンテナ及びRFタグについて説明する。但し、第1〜第3の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態は、
図8A及び
図8Bに示した構造との比較で言えば、RFタグ302とケース303の間の隙間600に付勢部材601をさらに設けたものに相当する。
【0095】
図11A及び
図11Bに示すように、RFタグ302とケース303の上側内面(第1内面)との間の隙間600には、RFタグ302を上側内面と対向する下側内面(第2内面)に向けて押圧する付勢部材601が設けられている。これにより、アンテナ感度を向上させることができる。さらに、ケース303に振動が加わった場合でも、RFタグ302がケース303内でぐらつかないようにでき、RFタグ302の長寿命化を実現できる。なお、第1内面はケース303の下側内面であってもよい。
【0096】
本実施形態では、付勢部材601は、隙間600を充填する接着層からなる。この接着層は、接着剤が硬化してなる層である。なお、付勢部材601は隙間600の厚さよりも厚くするのが好ましい。これにより、RFタグ302がケース303内に格納された状態において、RFタグ302は付勢部材601により下方(すなわち導体200側)にしっかりと押し付けられる。
【0097】
なお、付勢部材601としては、接着層以外にも、例えば、ウレタン等の収縮性を備えた素材からなる部材や、樹脂製のバネを用いてもよい。
【0098】
また、ケース303の上側内面に突起(リブ)を設け、RFタグ302を当該突起により下側内面に向けて押圧するようにしてよい。すなわち、ケース303の第1内面には、RFタグ302を第2内面に向けて押圧する突起が設けられていてもよい。第1内面はケース303の下側内面であってもよい。
【0099】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るRFタグ用アンテナ及びRFタグについて説明する。本実施形態においては、RFタグを格納するケース700を金属等の導電材料で構成し、ケース700に電波が通過するための開口を設ける。
【0100】
図12A〜
図12Eに示すように、導電材料からなるケース700には、読取装置の電波が通過するための開口701が設けられている。開口701はケース700の上面に設けられている。この開口701を通過した電波が、ケース700に格納されたRFタグ用アンテナにより受信される。
【0101】
ケース700は、
図9に示すケース303と同様に、その下面が導体(図示せず)に接触するように固定されており、ケース700の下面を介して第2導波素子30と導体とが電気的に接続されている。第2導波素子30、ケース700及び導体200が一つの大きな導波素子として機能することになる。よって、板状逆Fアンテナの感度向上を図ることができる。
【0102】
開口701の形状は、電波の特性に応じて変えることが好ましい。例えば、開口701の形状は、
図12A〜
図12Cに示す1本の直線形状、
図12Dに示す2本の直線が交差した形状、
図12Eに示す楕円形状等、適宜変更可能である。
【0103】
なお、開口701の形状は、長方形状、十字形状、円形状に限るものではなく、その他の形状、例えば楕円形状、星形形状などであってもよい。
【0104】
また、開口701の面積は、ケースの表面(上面及び前後左右の側面)の面積に対して10%程度が好ましいが、電波の種類やケースの設置場所に応じて調節すればよい。
【0105】
本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。