(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コバルトと、白金かパラジウムかニッケルかイリジウムのうちの少なくとも一つとが交互になっている部分を含む、人工超格子構造と、前記人工超格子構造のすぐ上にある、ルテニウムを含む結合材料と、前記結合材料のすぐ上にある、コバルトと、白金かパラジウムかニッケルかイリジウムのうちの少なくとも一つとが交互になっている部分を含む、別の人工超格子構造とを、前記磁性領域が含むことを特徴とする、請求項1の半導体デバイス。
コバルトと、白金かパラジウムかニッケルかイリジウムのうち少なくとも一つとが交互になっている部分を含む、人工超格子構造と、前記人工超格子構造のすぐ上にある、ルテニウムを含む結合材料と、前記結合材料のすぐ上にある、コバルトと、白金かパラジウムかニッケルかイリジウムのうちの少なくとも一つとが交互になっている部分を含む、別の人工超格子構造とを、前記別の磁性領域が含むことを特徴とする、請求項1の半導体デバイス。
前記シード材料の上に磁性材料を形成することが、固定された磁気配向を示す磁性材料を前記シード材料の上に形成することを含むことを特徴とする、請求項16の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に添えて含まれている図面は、いかなる特定のシステムないし半導体構造体の実際の見え方を意図したものでもなく、単に、本明細書で説明される実施形態を説明するために使われる、理想化された表現に過ぎない。図面同士の間で共通の要素および特徴は、同じ数値的呼称を保持することがある。
【0009】
以下の説明は、本明細書に記述される実施形態の完全な記述を与えるために、材料の種類や、材料の厚さや、加工条件などの具体的詳細を与えている。しかし、本明細書に開示されている実施形態が、これらの具体的詳細を用いることなく実施されてもよい、ということを当業者は理解するだろう。実際、実施形態は、半導体工業で使われている従来の製造技法とともに実施されてもよい。さらに、本明細書で与えられる説明は、半導体構造体、磁気セル構造体、またはメモリセルを製造するための完全な工程の流れをなす訳ではなく、また、以下に記述する半導体構造体、磁気セル構造体、およびメモリセルは、完全な半導体構造体、磁気セル構造体、またはメモリセルをなす訳ではない。本明細書に記述される実施形態を理解するのに必要な、工程上の行為および構造のみが、以下で詳しく記述される。完全な半導体構造体や当該半導体構造体を含むメモリセルを形成するための付加的な行為が、従来の技法によって行われてもよい。
【0010】
ある実施形態によれば、磁気メモリセル構造体が、シード材料の上に一つ以上の磁性領域を含んでもよい。シード材料は、当該シード材料の上にある磁性領域の結晶構造および磁気配向に影響することがある。シード材料は、当該シード材料の上にある磁性領域と類似の結晶構造を示すように、調製および構成されてもよい。シード材料は、タンタルと白金とルテニウムといった三つの材料を含んでもよく、本明細書では「白金含有シード材料」と呼ばれることがある。本開示のタンタルと白金とルテニウムは、シード材料の別個の部分を形成し得る。本開示のシード材料を含む磁気セル構造体は、従来のシード材料を含む磁気セル構造体と比べて、改善した磁気異方性(例えば、改善したPMA)を示し得る。白金含有シード材料を含む磁気セル構造体は、約300℃よりも上の温度での焼きなましの後で、磁気特性の劣化(例えば、減少したPMA、または、面内磁気モーメントの増加)を示すことなく、改善した接着をも示し得る。よって、白金含有シード材料を用いた、磁気セル構造体および当該磁気メモリセル構造体を含むメモリセルは、ただ二つの材料(例えば、タンタルとルテニウム)のみを含む従来のシード材料を用いた磁気セル構造体と比べて、改善した磁気特性と反転特性とを示し得る。
【0011】
図1Aは、磁気メモリセル構造体の一部分をなすことがある、シード材料110の上にある人工超格子(「ASL」)構造120を含む磁気構造体105を示す。シード材料110は、タンタル部分112と、白金部分114と、ルテニウム部分116とを含んでもよい。人工超格子構造120は、シード材料110のすぐ上にあって、シード材料110に接触していてもよい。ルテニウム部分116の結晶構造と配向は、人工超格子構造120の結晶構造と実質的に類似していることがある。
【0012】
シード材料110は、タンタル部分112と白金部分114とルテニウム部分116というように、一つよりも多くの部分を含んでいてもよい。タンタル部分112は、基板(不図示)の上、または磁気メモリセルの別の部分の上にあってもよい。白金部分114は、タンタル部分112のすぐ上にあって、タンタル部分112に接触していてもよく、ルテニウム部分116は、白金部分114のすぐ上にあって、白金部分114に接触していてもよい。白金部分114は、タンタル部分112とルテニウム部分116との間に配置されていてもよく、タンタル部分112とルテニウム部分116の各々に直接接触していてもよい。タンタル部分112と白金部分114とルテニウム部分116の各々は、別個の材料であり得るとともに、隣接する部分との間の一つの界面を形成し得る。タンタル部分112は、原子百分率で約90%から原子百分率で約100%までの間のタンタルを含んでもよく、白金部分114は、原子百分率で約90%から原子百分率で約100%までの間の白金を含んでもよく、ルテニウム部分116は、原子百分率で約90%から原子百分率で約100%までの間のルテニウムを含んでもよい。
【0013】
タンタル部分112は、約20Åから約25Åまで、約25Åから約35Åまで、または約35Åから約40Åまで、というように、約20Åから約40Åまでの厚みを有していてもよい。ある実施形態では、タンタル部分112が約30Åの厚さを有する。白金部分114は、約10Åから約50Åまで、約50Åから約100Åまで、約100Åから約200Åまで、約200Åから約300Å、約300Åから約500Åまで、または約500Åから約1000Åまで、というように、約10Åから約1000Åまでの厚みを有していてもよい。ある実施形態では、白金部分114が約50Åの厚さを有する。ルテニウム部分116は、約35Åから約45Åまで、約45Åから約55Åまで、または約55Åから約65Åまで、というように、約35Åから約65Åまでの厚みを有していてもよい。ある実施形態では、ルテニウム部分116が約50Åの厚さを有する。ある実施形態では、タンタル部分112の厚さが約30Åでもよく、白金部分114の厚さが約50Åでもよく、ルテニウム部分の厚さが約50Åでもよい。
【0014】
マグネトロン・スパッタリング(例えば、高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS)、DCマグネトロン・スパッタリングなど)、イオンビーム・スパッタリング、または他の物理蒸着(PVD)方法などの、スパッタ蒸着により、シード材料110を形成してもよい。また、原子層堆積(ALD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、または他の薄膜蒸着プロセスのうちの少なくとも一つにより、シード材料110を形成してもよい。タンタル部分112をベース材料(不図示)の上に形成することによって、シード材料110を形成してもよい。白金部分114は、タンタル部分112の上に、かつ、タンタル部分112に直接接触して、形成されてもよい。ルテニウム部分116は、白金部分114の上に、かつ、白金部分114に直接接触して、形成されてもよい。シード材料110の、タンタル部分112と白金部分114とルテニウム部分116の各々を、室温で形成してもよい。
【0015】
図1Bを参照すると、人工超格子構造120は、磁性材料117と導電性材料119の交互になっている部分を含んでいてもよい。導電性材料119は、隣接する磁性材料117同士の間にあってもよい。導電性材料119は、磁性材料117が垂直異方性(つまり、縦方向の磁気配向)を示すことを可能にする場合がある。磁性材料117は、コバルトと鉄のうち、少なくとも一つを含んでもよい。導電性材料119は、白金とパラジウムとイリジウムとニッケルのうち、少なくとも一つを含んでもよい。ある実施形態では、磁性材料117がコバルトを含み、導電性材料119が、白金とパラジウムとニッケルとイリジウムのうちの少なくとも一つを含む。
図1Bは、人工超格子構造120の中の、磁性材料117でできた六つの領域と導電性材料119でできた六つの領域とを図示しているが、人工超格子構造120は、そのように限られるわけではなく、磁性材料117と導電性材料119の交互になっている領域を任意の個数(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、または五つ)含み得る。
【0016】
磁性材料117は、およそ1モノレイヤの厚みを有していてもよい。限定としてではなく例示として、磁性材料117は、約1.0Åから約2.0Åまで、約2.0Åから約3.0Åまで、約3.0Åから約4.0Åまで、または約4.0Åから約6.0Åまでというように、約1.0Åから約6.0Åまでの厚さを有していてもよい。ある実施形態では、磁性材料117が約2.4Åの厚さを有する。導電性材料119は、およそ1モノレイヤの厚みを有していてもよい。限定としてではなく例示として、導電性材料119は、約1.2Åから約1.6Åまで、または約1.6Åから約2.0Åまでというように、約1.2Åから約2.0Åまでの厚さを有していてもよい。ある実施形態では、導電性材料119が約1.6Åの厚さを有する。
【0017】
ある実施形態では、人工超格子構造120のうちの導電性材料119の領域が、シード材料110のすぐ上にあって、シード材料110に接触していてもよい。例えば、導電性材料119の領域が、シード材料110のルテニウム部分116のすぐ上にあって、これに接触していてもよい。他の実施形態では、磁性材料117の領域が、シード材料110のすぐ上にあって、これに接触していてもよい。
【0018】
シード材料110の結晶構造は、シード材料110を焼きなまし状態にさらすことによって、(例えば、シード材料110の結晶粒組織における欠陥を取り除くことによって)改良され得る。
図1Aの磁気構造体105を焼きなますことは、また、人工超格子構造120の磁性材料117と導電性材料119との間の結合強度(例えば、接着)を増大させ得る。シード材料110と人工超格子構造120とを、約300℃から約500℃までの温度に約1分(1min.)から約1時間(1hr.)の間さらすことによって、人工超格子構造120も、あるいはシード材料110に隣接する他のいかなる材料も、損傷することなしに、シード材料110と人工超格子構造120とを焼きなますことができる。ある実施形態では、シード材料110と人工超格子構造120とを、約300℃よりも高温で約1時間にわたって焼きなましてもよい。他の実施形態では、シード材料110と人工超格子構造120とを、約400℃の温度で約15分から約30分の間、焼きなます。さらに別の実施形態では、シード材料110と人工超格子構造120とを、300℃で約1時間、または約360℃の温度で約1時間、焼きなます。焼きなましを真空中で行ってもよい。タンタルとルテニウムのみを含むシード材料のような従来のシード材料を含むメモリセルと比較して、シード材料110と人工超格子構造120は、改善したPMAおよびMAを示し得る。例えば、シード材料110と人工超格子構造120とを含む
図1Aの構造は、従来のシード材料の上に形成された磁性材料よりも、磁気配向の変化を起こしにくい可能性がある。
【0019】
したがって、磁気セル構造体が開示されている。その磁気セル構造体は、基板の上にあるタンタル部分と、タンタル部分の上にある白金部分と、白金部分の上にあるルテニウム部分と、シード材料の上にある磁性領域と、を含む。
【0020】
したがって、磁気セル構造体を形成する方法が開示されている。その方法は、タンタルと白金とルテニウムとを含むシード材料を基板の上に形成することを含み、ここで、シード材料を形成することは、タンタルを基板の上に形成することと、白金をタンタルの上に形成することと、ルテニウムを白金の上に形成することとを含み、上記方法はさらに、磁性材料をシード材料の上に形成することを含む。
【0021】
図2を参照すると、ある実施形態による、シード材料110を含む磁気セル構造体100が図示されている。磁気セル構造体100は、基板102の上に磁気セル・コア101を含む。磁気セル・コア101は、上側電極136と下側電極104との間に配置されていてもよい。磁気セル・コア101は、ある磁性領域ともう一つの磁性領域――例えば、それぞれ「固定領域」130と「自由領域」132――を含んでいてもよい。絶縁領域128が、固定領域130と自由領域132との間に配置されていてもよい。
【0022】
メモリセル内の構成部品などの構成部品がその上に形成された、ベース材料または他の構成を、基板102が含んでいてもよい。基板102は、半導体基板か、支持基板上のベース半導体材料か、金属電極か、または、一つ以上の材料、構造体、もしくは領域がその上に形成された半導体基板であってもよい。基板102は、従来のシリコン基板か、または、半導体材料を含む他のバルク基板であってもよい。本明細書で用いられるとおり、「バルク基板」という用語は、シリコン・ウェーハを意味し、かつ含むだけではなく、とりわけ、シリコン・オン・サファイア(「SOS」)基板もしくはシリコン・オン・グラス(「SOG」)基板のようなシリコン・オン・インシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体下地の上のシリコンのエピタキシャル層、または、シリコン・ゲルマニウム(Si
1−xGe
xであって、ここでxは、例えば0.2から0.8の間のモル分率である)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、もしくはリン化インジウム(InP)のような、他の半導体材料もしくは光電子材料をも、意味し、かつ含む。さらに、以下の説明において「基板」を参照する場合には、材料、領域、または接合をベース半導体構造体または下地に形成するために、前の工程段階が利用されたことがあってもよい。
【0023】
下側電極104は、基板102の上にあってもよい。下側電極104は、銅、タングステン、白金、パラジウム、チタン、タンタル、ニッケルのような金属、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、ポリシリコン、金属シリサイド、金属合金、またはそれらの組み合わせを、含んでいてもよい。
【0024】
一つ以上の下側中間領域106が、随意で、磁性領域(例えば、固定領域130と自由領域132)の下に配置されていてもよい。下側中間領域106は、もし含まれていれば、下側電極104と、下側電極104の上にある材料との間での、種の拡散を妨げるように構成されていてもよい。下側中間領域106は、銅、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、窒化タンタル、および窒化チタンのうちの一つ以上といったような、導電性材料を含んでいてもよい。
【0025】
随意で、非晶質材料108が、下側中間領域106がもしあればその上にあってもよく、下側中間領域106とシード材料110との間に配置されていてもよい。ある実施形態では、非晶質材料108が下側電極104のすぐ上にあってもよい。
図2に図示されているものなど、他の実施形態では、非晶質材料108が下側中間領域106のすぐ上にあってもよい。非晶質材料108は、シード材料110および磁気セル構造体100の結晶構造における欠陥の数を減少させ得る。シード材料110(例えば、シード材料110のうちのタンタル部分112(
図1A))などのような上に載る材料がその上に形成される、滑らかなテンプレートを、非晶質材料108は提供し得る。非晶質材料108は、磁気セル構造体100のPMAおよび磁気結合を向上させ得る。
【0026】
ある実施形態では、シード材料110の形成が所望の結晶構造を示すことを可能とするように、非晶質材料108が調製かつ構成される。非晶質材料108は、磁気セル構造体100全体を通じて、磁気セル構造体100の各構成部分に類似の磁気配向を示させることがある。よって、磁気セル構造体100の固定領域130は、非晶質材料
108と類似の結晶方位を示すことがある。
【0027】
非晶質材料108は、実質的に非晶質の材料を含んでいてもよい。非晶質材料108は、非晶質タンタル、非晶質酸化タンタル、ニッケルとクロムとそれらの酸化物とを含む非晶質材料、酸化ニッケルと酸化クロムとを含む非晶質材料、およびそれらの組み合わせを含んでいてもよい。非晶質材料108の上部は、酸化されていてもよい。例えば、上部が酸化タンタルを含んでいる状態のタンタルを、非晶質材料108が含んでいてもよいし、または、その上部が酸化ニッケルと酸化クロムとを含んでいる状態のニッケルとクロムとを、非晶質材料108が含んでいてもよい。ある実施形態では、非晶質材料108が、原子百分率で約40%のニッケルと原子百分率で約60%のクロム(例えば、Ni
60Cr
40)を含んでいてもよい。
【0028】
非晶質材料108は、約5Åから約10Åまで、または約10Åから約15Åまでなどの、約5Åから約15Åまでの厚さを有していてもよい。ある実施形態では、非晶質材料108は約10Åの厚さを有する。
【0029】
シード材料110は、下側電極104の上に配置され得る。ある実施形態では、シード材料110が下側電極104に直接接触していてもよい。他の実施形態では、下側中間領域106が下側電極104とシード材料110との間に介在していてもよいし、あるいは、非晶質材料108がもしあれば、これにシード材料110が直接接触していてもよい。
【0030】
シード材料110は、
図1Aを参照して上述したものと同じであってもよい。例えば、シード材料110は、タンタル部分112と、白金部分114と、ルテニウム部分116とを含んでいてもよい。白金部分114は、タンタル部分112とルテニウム部分116とのまさに間に、配置されていてもよい。ルテニウム部分116は、上にある人工超格子構造120に直接接触していてもよい。
【0031】
固定領域130を、シード材料110のすぐ上に形成してもよい。固定領域130は、人工超格子構造120と、人工超格子構造120の上にある結合材料122と、結合材料122の上にある別の人工超格子構造124とを、含んでいてもよい。人工超格子構造120および別の人工超格子構造124は、
図1Bを参照して上述したものと同じであってもよい。よって、人工超格子構造120および別の人工超格子構造124は、磁性材料117と導電性材料119の交互になっている領域を含んでいてもよい。人工超格子構造120と別の人工超格子構造124は、同じ材料を含んでいてもよいし、実質的に同じであってもよい。ある実施形態では、人工超格子構造120と別の人工超格子構造124の各々が、コバルト磁性材料と白金導電性材料の交互になっている部分を含んでいてもよい。
【0032】
人工超格子構造120は、シード材料110のすぐ上にあってもよい。ある実施形態では、人工超格子構造120の導電性材料119が、シード材料110のルテニウム部分116に直接接触していてもよい。他の実施形態では、人工超格子構造120の磁性材料117が、シード材料110に直接接触していてもよい。
【0033】
結合材料122は、人工超格子構造120のすぐ上にあってもよい。結合材料122は、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの組み合わせを含んでいてもよい。結合材料122は、約1Åから約10Åまでの厚さを有していてもよい。ある実施形態では、結合材料122が、約4Åから約5Åまでの厚さを有する。
【0034】
別の人工超格子構造124は、結合材料122のすぐ上にあってもよい。上記のとおり、別の人工超格子構造124は、人工超格子構造120と同じ材料を含んでいてもよく、人工超格子構造120と実質的に同じであってもよい。
【0035】
他の実施形態では、固定領域130が、コバルトと鉄とを含む強磁性材料(例えばCo
xFe
yであり、ここで、x=10から80、かつy=10から80である)を含み、また、ある実施形態では、固定領域130が、ホウ素をも含む(例えばCo
xFe
yB
zであり、ここで、x=10から80、かつy=10から80、かつz=0から50である)。このように、固定領域130は、Co、Fe、およびBのうち少なくとも一つ(例えば、CoFeB材料、FeB材料、CoB材料)を含んでいてもよい。他の実施形態では、その代わりに、またはそれに加えて、固定領域130がニッケルを含んでいてもよい(例えばNiB材料)。
【0036】
図2に示すように、固定領域130の人工超格子構造120と別の人工超格子構造124は、固定された磁気配向を含んでいてもよく、これが矢印121で示されている。固定された磁気配向は、北向き、南向き、東向き、西向きなどであり得る。人工超格子構造120と別の人工超格子構造124の固定された磁気配向は、同じであってもよい。
【0037】
キャッピング材料126が、別の人工超格子構造124の上にあってもよい。キャッピング材料126は、CoFeB材料を含んでいてもよい。本明細書で使われるとおり、「CoFeB材料」という用語は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、およびホウ素(B)を含む材料(例えばCo
xFe
yB
zであり、ここで、x=10から80、かつy=10から80、かつz=0から50である)を、意味し、かつ含む。CoFeB材料は、その構成(例えば、その厚さ)によって、磁気を示すこともあるし、あるいは、示さないこともある。キャッピング材料126は、別の人工超格子構造124のすぐ上にあって、これに直接接触していてもよい。キャッピング材料126は、
別の人工超格子構造124の磁性材料117または導電性材料119に接していてもよい。キャッピング材料126は、約5Åから約10Åまで、または約10Åから約15Åまでなどといった、約5Åから約15Åまでの厚さを有していてもよい。ある実施形態において、キャッピング材料126は、約10Åの厚さを有する。
【0038】
絶縁領域128がキャッピング材料126の上にあってもよい。ある実施形態では、絶縁領域128が、キャッピング材料126のすぐ上にあって、これに接触している。酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化チタン(TiO
2)、窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウム(AlN)、または、従来の磁気トンネル接合(MTJ)領域における他の酸化物材料もしくは窒化物材料のような、酸化物材料と窒化物材料とを含む非磁性の(例えば磁気的に絶縁性の)材料を、絶縁領域128が含んでいてもよい。絶縁領域128は、自由領域132に磁気異方性を誘起するように、かつ、固定領域130と絶縁領域128と自由領域132との相互作用によって生じるMTJの、トンネル領域として機能するように、構成されていてもよい。他の実施形態では、絶縁領域128が、スピン・バルブ構造で使われる材料などの、導電性のある非磁性材料を含んでいてもよい。
【0039】
磁気セル・コア101は、絶縁領域128の上に配置された自由領域132をさらに含んでいてもよい。自由領域132は、均質であってもよく、あるいは、一つより多くの部分領域を含んでいてもよい。矢印133により示される反転可能な磁気配向をメモリセルの使用中および動作中に示す磁性材料を、自由領域132が含んでいてもよい。反転可能な磁気配向は、磁気セル構造体100に対する電流の印加、または磁気セル構造体100にかけられた電磁場により、平行な配置と反平行な配置との間で反転され得る。
【0040】
ある実施形態では、自由領域132が、従来の自由領域(つまり、人工超格子構造120や別の人工超格子構造124や結合材料122とは異なる材料を含む磁性領域)であってもよい。他の実施形態では、自由領域132は、固定領域130の人工超格子構造120および別の人工超格子構造124の各々と、同じ材料を含んでいてもよい。自由領域132は、人工超格子構造120および別の人工超格子構造124に類似した、磁性材料117と導電性材料119の交互になっている部分を含んでいてもよい。しかし、自由領域132は、そのように限定されるわけではなく、反転可能な磁気配向を示す他の適切な磁性材料を含んでいてもよい。
【0041】
一つ以上の上側中間領域134が、随意で、自由領域132の上に配置されていてもよい。上側中間領域134は、もし含まれていれば、メモリセルの動作中における上側電極136と下にある材料との間での種の拡散を、妨げるように構成されていてもよい。上側中間領域134は、導電性キャッピング領域を形成し得る導電性材料(例えば、銅、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、窒化タンタル、または窒化チタンなどの、一つ以上の材料)を含んでいてもよい。他の実施形態では、上側中間領域134が、MgO、Al
2O
3、TiO
2、およびそれらの組み合わせなどの、絶縁材料をも含んでいてよい。
【0042】
上側電極136は、上側中間領域134の上にあってもよい。上側電極136は、銅、タングステン、白金、パラジウム、チタン、タンタル、ニッケル、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、ポリシリコン、金属シリサイド、金属合金、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態では、上側電極136は、下側電極104と同じ材料を含む。
【0043】
図2の磁気セル構造体100は、「下側が固定された(bottom−pinned)」メモリセル(つまり、固定領域130が自由領域132の下に配置されたメモリセル)として、構成されている。しかし、
図3の実施形態などの他の実施形態では、固定領域130′が自由領域132′の上にあってもよい。よって、
図3を参照すると、上側が固定された(top−pinned)メモリセルとして、磁気セル構造体150が構成されていてもよい。磁気セル構造体150は、下側電極104と上側電極134との間に配置された磁気セル・コア101′を含んでいてもよい。
【0044】
磁気セル構造体150は、下側電極104の上にある下側中間領域106を含んでいてもよい。下側中間領域106がもしあれば、その上に非晶質材料108があってもよい。非晶質材料108がもしあれば、その上にシード材料110があってもよい。他の実施形態において、シード材料110は、下側中間領域106がもしあれば、そのすぐ上にあってもよいし、あるいは、下側電極104のすぐ上にあってもよい。シード材料110は、
図1Aおよび
図2を参照して上述したものと同じものであってもよい。例えば、シード材料110は、タンタル部分112と白金部分114とルテニウム部分116とを含んでいてもよい。白金部分114は、タンタル部分112とルテニウム部分116とのまさに間に配置されていてもよい。
【0045】
自由領域132′がシード材料110のすぐ上にあってもよい。例えば、自由領域132′は、シード材料110のルテニウム部分116のすぐ上にあって、これに接触していてもよい。自由領域132′は、
図2を参照して上述したものと同じ材料を含んでいてもよい。自由領域132′は、矢印133により示される反転可能な磁気配向を含んでいてもよい。
【0046】
絶縁領域128′が自由領域132′の上にあってもよい。絶縁領域128′は、
図2を参照して上述したものと同じ材料を含んでいてもよい。絶縁領域128′は、自由領域132′と固定領域130′とのまさに間に配置されていてもよい。
【0047】
固定領域130′が絶縁領域128′のすぐ上にあってもよい。固定領域130′は、矢印121により示される固定された磁気配向を含んでいてもよい。固定領域130′は、人工超格子構造120′、結合材料122′、別の人工超格子構造124′、およびキャッピング材料126′を含んでいてもよい。人工超格子構造120′、結合材料122′、別の人工超格子構造124′、およびキャッピング材料126′の各々は、
図2を参照して上述したような、人工超格子構造120、結合材料122、別の人工超格子構造124、およびキャッピング材料126と、それぞれ同じであってもよい。しかし、固定領域130′は、
図2の磁気セル構造体100におけるのと同様にシード材料110のすぐ上にある、という訳ではなくてもよい。むしろ、固定領域130′の人工超格子構造120′は、下にある絶縁領域128′に直接接触していてもよい。
【0048】
随意的な上側中間領域134が、キャッピング材料126′の上にあってもよい。上側電極136は、上側中間領域134がもしあれば、その上にあってもよい。
【0049】
本開示の実施形態のメモリセルは、「面外」STT−MRAMセルとして構成されていてもよい。「面外」STT−MRAMセルは、主に垂直方向(例えば、それぞれの領域の幅および長さに対して垂直な方向、または、STT−MRAMセルがその上に配置される基板の主表面に対して垂直な方向)に配向された磁気配向を示す磁性領域を、含んでいてもよい。例えば、
図2と
図3に示したとおり、STT−MRAMセルは、磁性領域(例えば、固定領域130と自由領域132)のうち少なくとも一つにおいて、垂直な磁気配向を示すように構成されていてもよい。
図2と
図3に示したとおり、固定領域130と自由領域132の各々が、矢印121と矢印133により示されるような垂直な磁気配向を示していてもよい。固定領域130の磁気配向は、STT−MRAMセルの使用中および動作中を通してずっと、本質的に同じ方向――例えば、矢印121により示される方向――に向いたままであってもよい。他方、自由領域132の磁気配向は、セルの使用中および動作中の間に、矢印133により示されるとおり、平行な配置と反平行な配置との間で反転され得る。
【0050】
一対の電極の間に配置された本開示の磁気セル構造体を含むメモリセルを、少なくとも一つ、半導体デバイスが含んでいてもよい。
【0051】
したがって、半導体デバイスが開示されている。半導体デバイスは、基板の上にある電極の上にある、少なくとも一つの磁気セル構造体を含み、その少なくとも一つの磁気セル構造体は、基板上の電極の上にあってタンタルと白金とルテニウムとを含むシード材料と、シード材料の上にある磁性領域と、磁性領域の上にある絶縁材料と、絶縁材料の上にある別の磁性領域と、別の磁性領域の上にある別の電極とを含む。
【0052】
図4Aから
図4Dを参照すると、
図2の磁気セル構造体100を形成する方法が示されている。その方法は、基板202の上に磁気セル構造体200を形成することを含んでいてもよい。下側電極材料204を基板202の上に形成してもよい。下側電極材料204は、下側電極104を参照して上述した材料のうちのいずれを含んでいてもよい。
【0053】
随意で、中間領域材料206を下側電極材料204の上に形成してもよい。下側中間領域材料206は、下側中間領域106を参照して上述した材料のうちのいずれから形成されていてもよい。ある実施形態では、下側中間領域材料206が、下側電極材料204の導電性材料と一体化されていてもよい。例えば、下側中間領域材料206が下側電極材料204の一番上の部分領域であってもよい。
【0054】
下側電極材料204の上に、または、下側中間領域材料206がもしあればその上に、非晶質材料208を形成してもよい。非晶質材料208は、非晶質材料108を参照して上述したのと同じ材料を含んでいてもよい。非晶質材料208の上部を酸化するために、非晶質材料208を酸化状態にさらしてもよい。非限定的な例として、約20℃から約50℃までの温度で、約1分から約30分にわたり、非晶質材料208を酸化性雰囲気にさらしてもよい。
【0055】
図4Bを参照すると、非晶質材料208がもしあればその上に、または、下側中間領域材料206がもしあればその上に、または、下側電極材料204の上に、シード材料210を形成してもよい。
図1Aを参照して上述したようにして、シード材料210を形成してもよい。例えば、タンタル材料212を非晶質材料208の上に形成してもよい。白金材料214をタンタル材料212の上に形成してもよく、ルテニウム材料216を白金材料214の上に形成してもよい。タンタル材料212とルテニウム材料216とのまさに間に、白金材料214を形成してもよい。マグネトロン・スパッタリング(例えば、高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HIPIMS)、DCマグネトロン・スパッタリングなど)、イオンビーム・スパッタリング、または他のPVD方法などのスパッタ蒸着により、タンタル材料212と白金材料214とルテニウム材料216の各々を形成してもよい。シード材料
210も、ALD、CVD、PECVD、LPCVD、または他の薄膜蒸着プロセスのうち少なくとも一つにより、形成され得る。タンタル材料212と白金材料214とルテニウム材料216の各々を、シード材料110を参照して上述した厚さに形成してもよい。
【0056】
図4Cを参照すると、シード材料210の上に固定領域材料230を形成してもよい。固定領域材料230は、シード材料210の上の人工超格子構造材料220と、人工超格子材料220の上の結合材料222と、結合材料222の上の別の人工超格子材料224と、別の人工超格子材料224の上のキャッピング材料226とを含んでいてもよい。固定領域材料230は、固定された磁気配向を含んでいてもよく、これは矢印221により示されている。
【0057】
シード材料210のうちのルテニウム材料216のすぐ上に、人工超格子構造材料220を形成してもよい。
図1Bの人工超格子構造120を参照して上述したような、磁性材料117と導電性材料119の交互になっている部分から、人工超格子構造材料220を形成してもよい。
【0058】
人工超格子構造材料220の上に結合材料222を形成してもよい。人工超格子構造材料220と別の人工超格子構造材料224との間に、結合材料222を形成してもよい。結合材料122を参照して上述したのと同じ材料で、結合材料222を形成してもよい。ALD、CVD、PVD、PECVD、LPCVD、または他の薄膜蒸着プロセスのうち少なくとも一つにより、結合材料222を形成してもよい。
【0059】
結合材料222のすぐ上に、別の人工超格子材料224を形成してもよい。人工超格子材料220と同じ方法で、人工超格子材料220と同じ材料から、別の人工超格子材料224を形成してもよい。
【0060】
別の人工超格子材料224のすぐ上に、キャッピング材料226を形成してもよい。CoFeBなどの磁性材料で、キャッピング材料226を形成してもよい。約5Åから約10Åまで、または約10Åから約15Åまでといった、約5Åから約15Åまでの厚さに、キャッピング材料226を形成してもよい。ある実施形態では、キャッピング材料226を約10Åの厚さに形成する。
【0061】
図4Dを参照すると、キャッピング材料226の上に、絶縁材料228を形成してもよい。固定領域材料230のキャッピング材料226と、自由領域材料232との間に、絶縁材料228を形成してもよい。絶縁領域128を参照して上述したのと同じ材料から、絶縁材料228を形成してもよい。ALD、CVD、PECVD、LPCVD、PVD、または他の薄膜蒸着プロセスのうち少なくとも一つにより、絶縁材料228を形成してもよい。
【0062】
絶縁材料228のすぐ上に、自由領域材料232を形成してもよい。固定領域材料230の人工超格子材料220および別の人工超格子材料224と同じ材料から、かつ、これらと類似の方法により、自由領域材料232を形成してもよい。自由領域材料232は、矢印233により示されている反転可能な磁気配向を示す磁性材料を含んでいてもよい。
【0063】
随意で、自由領域材料232の上に上側中間領域材料234を形成してもよく、上側中間領域材料234は、下側中間領域材料206と同じ材料を含んでいてもよい。このように、磁気セル・コア201は、下側中間領域材料206、非晶質材料208、シード材料210、固定領域材料230、絶縁材料228、自由領域材料232、および上側中間領域材料234を含んでいてもよい。
【0064】
上側中間領域材料234がもしあればその上に、または、自由領域材料232の上に、上側電極材料236を形成してもよい。上側電極材料236は、上側電極136を参照して上述したのと同じ材料を含んでいてもよい。
【0065】
図2に示したような磁気セル構造体100(
図2)を形成するように、磁気セル構造体200を加工してもよい。本明細書には詳しく記述されていない、従来の、フォトリソグラフィ、材料除去、エッチング、または他のプロセスによって、磁気セル構造体200を加工してもよい。
【0066】
磁気セル構造体100の異なる部分を結晶化させるために、シード材料210、および、磁気セル構造体100または磁気セル構造体200を、焼きなまし状態にさらしてもよい。例えば、磁気セル構造体100を、約300℃から約500℃まで(例えば約400℃)の温度にさらしてもよく、約1分(約1min.)から約1時間(約1hr.)にわたって焼きなまし温度のままに保っておいてもよい。ある実施形態では、磁気セル構造体100を、約1時間にわたり約300℃で焼きなます。磁気セル構造体100の材料に基づいて、焼きなましの温度と時間とを調整してもよい。ある実施形態では、段階的に磁気セル構造体100を焼きなます。例えば、磁気セル構造体100を、300℃で約1時間にわたり焼きなまし、それから、約360℃で約1時間にわたり焼きなましてもよい。他の実施形態では、磁気セル構造体100を、約400℃で約15分から約30分にわたり焼きなます。
【0067】
図4Aから
図4Dを参照して記述した磁気セル構造体200は、
図2の磁気セル構造体100を形成する様子を記述しているが、類似の方法によって
図3の磁気セル構造体150を形成してもよい。しかし、自由領域132はシード材料110の上に形成されるだろうし、絶縁材料228は自由領域132の上に形成されるだろうし、固定領域130は絶縁材料228の上に形成されるだろうし、その結果として、
図3の磁気セル構造体150ができあがるだろう。
【0068】
磁気セル構造体100を焼きなますことで、PMA、ならびに、人工超格子構造120および別の人工超格子構造124の結合材料122への結合強度を、向上させ得る。人工超格子構造120と別の人工超格子構造124とを反強磁性的に結合するように、磁気セル構造体100を焼きなましてもよい。厚さが約4Åから約5Åまでの結合材料は、人工超格子構造120と別の人工超格子構造124との間の向上した反強磁性結合を示すこともあるし、材料同士の強磁性結合を示さないこともある。
【0069】
シード材料110の白金部分114は、磁気セル構造体100の熱安定性を向上させ得る。例えば、ある実施形態では、磁気特性を劣化させること(例えば、面内磁気双極子モーメントの形成)なしに、約400℃までの温度またはそれを超える温度で、磁気セル構造体100を焼きなまし得る。
【0070】
図5を参照すると、STT−MRAMセル514と動作可能に接続している周辺デバイス512を含むSTT−MRAMシステム500が図示されており、システム要件および製造技術に応じた、多数の行および列を含むグリッド・パターン状または他の様々な配置になった、メモリセルのアレイを形成するように、STT−MRAMセル514の集まりが製造されていてもよい。STT−MRAMセル514は、磁気セル・コア502と、アクセス・トランジスタ503と、データ/センス線504(例えばビット線)として機能し得る導電性材料と、アクセス線505(例えばワード線)として機能し得る導電性材料と、ソース線506として機能し得る導電性材料とを含んでいてもよい。STT−MRAMシステムの周辺デバイス512は、読み書き回路507と、ビット線基準508と、センスアンプ509とを含んでいてもよい。磁気セル・コア502は、上述した磁気セル・コア101、101′のうちのいずれか一つであってもよい。
【0071】
メモリセルのアレイは、基板の上にアレイ状に配置された、複数の磁気セル構造体100、150を含む。磁気セル構造体100、150は、それぞれ磁気セル・コア101、101′を含んでいてもよく、その
磁気セル・コア101、101′は、上記の方法により形成されたものであってもよい。メモリセルのアレイは、グリッド・パターンに配置された複数のメモリセル構造体を含んでいてもよい。メモリセルのアレイの各メモリセルは、クロスポイント型のメモリセルのアレイにおけるのと同様に、下側電極104と上側電極136との間に配置されていてもよい。
【0072】
したがって、半導体デバイスが開示されている。その半導体デバイスは、スピン・トルク・トランスファ磁気ランダム・アクセス・メモリ(STT−MRAM)セルのアレイを含み、ここで各STT−MRAMセルは、基板上の第1の電極の上にあるシード材料――なお、そのシード材料は、タンタルと白金とルテニウムとを含む――と、シード材料の上にある磁性領域と、磁性領域の上にある絶縁材料と、絶縁材料の上にある別の磁性領域とを含み、また、半導体デバイスは、STT−MRAMセルのそれぞれの上にある第2の電極を含む。
【0073】
したがって、半導体デバイスを形成する方法が開示されている。その方法は、基板上の電極の上に磁気セル構造体のアレイを形成すること――なお、磁気セル構造体のアレイを形成することは、タンタルと白金とルテニウムとを含むシード材料を基板上の電極の上に形成することと、シード材料の上に磁性材料を形成することと、磁性材料の上に絶縁材料を形成することと、絶縁材料の上に別の磁性材料を形成することとを含む――を含み、前記方法は、アレイの磁気セル構造体それぞれの前記別の磁性領域の上に別の電極を形成することを、さらに含む。
【0074】
使用中および動作中のとき、STT−MRAMセル514がプログラムされるべく選択されると、プログラミング電流がSTT−MRAMセル514に印加され、その電流は、磁気セル・コア502の固定領域によりスピン分極されて、セル・コア502の自由領域にトルクをかけ、すると、そのことが、STT−MRAMセル514「に書き込む」かまたはSTT−MRAMセル514「をプログラムする」よう自由領域の磁化を反転させる。STT−MRAMセル514の読み出し動作では、磁気セル・コア502の抵抗状態を検出するために電流が使われる。
【0075】
STT−MRAMセル514のプログラミングを開始するために、読み書き回路507が、データ/センス線504およびソース線506に対する書き込み電流(つまりプログラミング電流)を生成してもよい。データ/センス線504とソース線506との間の電圧の極性が、磁気セル・コア502内の自由領域の磁気配向の反転を定める。スピン極性を使って自由領域の磁気配向を変化させることによって、プログラミング電流のスピン極性にしたがって自由領域が磁化され、プログラムされた論理状態がSTT−MRAMセル514に書き込まれる。
【0076】
STT−MRAMセル514を読み出すには、セル・コア502とアクセス・トランジスタ503とを通る、データ/センス線504とソース線506に対しての読み出し電圧を、読み書き回路507が生成する。STT−MRAMセル514のプログラムされた状態は、セル・コア502両端の電気抵抗に関連しており、これは、データ/センス線504とソース線506との間の電圧差によって特定され得る。ある実施形態では、電圧差が、ビット線基準508と比較されてセンスアンプ509によって増幅されてもよい。
【0077】
図5は、少なくとも一つのメモリセルを含むSTT−MRAMシステム500の一例を示している。しかし、磁気セル・コア101、101′は、磁性領域を有する磁気セル・コアを組み込むように構成された任意のSTT−MRAMシステムに組み込まれてもよいし、そこで利用されてもよい、と考えられる。また、STT−MRAMセルだけでない他の磁気メモリセルにおいて、磁気セル・コア101、101′を利用してもよい、ということも考えられる。
【0078】
[例]
[例1]
図6は、(例えば、タンタルとルテニウムのみを含む)従来のシード材料を含む磁気構造体と比べた、白金含有シード材料を含む磁気構造体の異方性磁界(つまり、H
k)のグラフ的表現である。コバルトと白金の交互になっている領域を含む磁気構造体を、白金含有シード材料と従来のシード材料のそれぞれの上に形成した。白金含有シード材料は、基板の上の約30Åのタンタルと、タンタルの上の約50Åの白金と、白金の上の約50Åのルテニウムとを含んでいた。従来のシード材料は、基板の上の約30Åのタンタルと、タンタルのすぐ上の約50Åのルテニウムとを含んでいた。白金含有シード材料を含む磁気構造体の異方性磁界は、従来のシード材料を含む磁気構造体の異方性よりも、約25パーセント(25%)大きかった。例えば、面内ループ評価は、従来のシード材料を使った磁気構造体の約12,000 Oeに比べて、白金含有シード材料を含む磁気構造体に対しては、約15,000 OeというHk値(MA強度の指標)を示した。面内ループ評価は、白金含有シード材料を含む磁気構造体について、改善したPMAを示した。また、白金を含むシード材料を含む磁気構造体は、従来のシード材料の上に形成された磁気構造体よりも、磁気配向の変化を起こしにくかった。
【0079】
[例2]
図7は、従来のシード材料を含む磁気セル構造体の磁気特性を、白金含有シード材料を含む磁気セル構造体の磁気特性と比較する、面外ループである。
図2の磁気セル構造体100と類似の磁気セル構造体を、白金含有シード材料の上と従来のシード材料の上に形成した。白金含有シード材料は、基板の上の約30Åのタンタルと、タンタルの上の約50Åの白金と、白金の上の約50Åのルテニウムとを含んでいた。従来のシード材料は、基板の上のタンタルと、タンタルの上のルテニウムとを含んでいた。磁気セル構造体の各々を、約1時間にわたり約300℃の焼きなまし状態にさらした。白金含有シード材料を含む磁気セル構造体は、従来のシード材料を含む磁気セル構造体と比べて、改善した交換結合を示した。従来のシード材料を使った磁気セル構造体が、固定領域の上側の人工超格子構造と下側の人工超格子構造との間(例えば、人工超格子構造120と別の人工超格子構造124との間)での、約7,750 Oeという交換結合強度を示したのに対して、白金含有シード材料を使った磁気セル構造体は、固定領域の上側人工超格子構造(例えば、別の人工超格子構造124)についての、約8,255 Oeという交換結合磁場を示した。このように、白金含有シード材料を含む磁気セル構造体は、他の磁気セル構造体と比べて、約7パーセント(7%)の面外磁界の増加(例えばPMAの増加)を示した。
【0080】
図8Aを参照すると、約360℃での約1時間にわたる焼きなましにもう一度磁気セル構造体をさらした後での、
図7を参照して説明した磁気セル構造体の磁気特性同士を比較する、面外ループ図が示されている。約360℃での追加の焼きなましの後で、白金含有シード材料を含む磁気セル構造体は、従来のシード材料を含む磁気セル構造体よりも軽度の磁気的な劣化しか示さなかった。例えば、白金含有シード材料を用いた磁気セル構造体の上側の磁性領域(例えば
図2の別の人工超格子構造124)は、従来のシード材料を用いた磁気セル構造体よりも、改善したPMAと、結合材料(例えば
図2の結合材料122)に対するより強い結合とを示した。白金含有シード材料は、磁気セル構造体の磁気抵抗効果が焼きなましの後に減らされてしまう量を、最小化した。例えば、従来のシード材料を用いた磁気セル構造体を焼きなますことは、その構造体の磁気抵抗効果を約46パーセント(46%)減らしてしまうが、これに対して、白金含有シード材料を用いた磁気セル構造体を焼きなますことは、その構造体の磁気抵抗効果を約27パーセント(27%)減らした。
【0081】
図8Bを参照すると、白金含有シード材料を用いた磁気セルは、最小の磁気的劣化で、改善した面外磁界(例えばPMA)を示した。例えば、白金含有シード材料を含む磁気セル構造体の面内ループは、面内磁気モーメントを示さなかった。他方、従来のシード材料を用いた磁気セル構造体は、360℃での焼きなましの後、磁気的劣化(例えば、減少したPMAや、面内磁気モーメントの増加や、劣化した反転特性)を示した。
【0082】
[例3]
図9Aは、
図7を参照して上述したような白金含有シード材料を用いた磁気セル構造体に類似した磁気セル構造体の、面外磁界を示すグラフ的表現である。
図9Aの磁気セル構造体のうちの一方における白金含有シード材料を結晶基板上に成長させ(左側目盛)、
図9Aの他方の磁気セル構造体を非晶質基板上に成長させた(右側目盛)。結晶基板上に成長させた磁気セル構造体のシード材料のタンタル部分もまた、結晶質であった。結晶質タンタルの上に形成された白金およびルテニウムは、異なる結晶方位を持った結晶粒を有する、多結晶の特徴を示した。シード材料の上に形成された人工超格子構造(例えば、固定領域のCo/Pt人工超格子構造)は、PMAの減少と、ルテニウム結合材料を介した人工超格子構造同士の間の弱い反強磁性結合とを示した。非晶質基板の上に形成されたタンタル部分は、非晶質だった。シード材料の白金とルテニウムの部分は、一様な結晶構造を示し、シード材料の上に形成された人工超格子構造は、強いPMAと、ルテニウム結合材料への反強磁性結合とを示した。グラフに示されているとおり、非晶質基板上に成長させた磁気セル構造体は、結晶基板上に成長させた磁気セル構造体と比べて、鋭い反転特性を示した。
【0083】
図9Bを参照すると、非晶質基板の上に成長させた磁気セル構造体と、結晶基板の上に成長させた別の磁気セル構造体との、面外磁界を示すグラフ的表現が示されている。磁気セル構造体の各々は、基板とシード材料(例えば、タンタルと白金とルテニウムとを含むシード材料)との間に形成された、非晶質材料を含んでいた。基板の上の非晶質材料は、約10ÅのNi
60Cr
40材料だった。非晶質材料のうち、露出している部分が酸化された。磁気セル構造体の各々のシード材料のタンタル部分は非晶質であり、磁気セル構造体の各々は、高いPMAと、人工超格子構造と結合材料の間の強い反強磁性結合とを示した。
【0084】
図面に関連して、ある種の例示的な実施形態を記述してきたが、本開示に含まれる実施形態が、本明細書において明示的に示されて記述されたそれらの実施形態に限られるわけではないということを、当業者は認識し、かつ、よく理解するだろう。むしろ、本明細書に記述した実施形態に対する多くの追加や削除や改変が、この後に請求項に記述したもの――法的な均等物を含む――などのように、本開示に含まれる実施形態の範囲から逸脱することなく、なされ得る。さらに、開示された一つの実施形態の特徴を、開示された別の実施形態の特徴と組み合わせてもよく、これは、発明者らによって想定されているとおり、本開示の範囲内に依然として含まれる。