【実施例】
【0014】
以下、本発明の各種の実施例を、
図1〜
図7を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の支持構造を有する海底設置型フラップゲート式防波堤の概略構成を説明する図、
図2は港外側の水位が上昇した時に、本発明の支持構造を有する防波堤の下面に作用する静水圧分布を説明する図である。
【0015】
図1,2において、11は本発明の構造によって支持された、海底設置型の例えばフラップゲート式防波堤であり、例えば港口の海底の地盤12上に基礎捨石を構築したマウンド13に設置されている。
【0016】
この防波堤11は、前記マウンド13の上に載せ置いた函体14と、この函体14の港内側の端部に配置した軸受を基端側の支点15として、港外側に位置する先端側が起立揺動する扉体16を備えた構成である。17は前記扉体16に大きな水圧荷重が作用しても扉体16が転倒しないように、港外側に設置したテンションロッドである。
【0017】
本発明では、前記構成の防波堤11を設置するマウンド13の港内側から港外側に向けて、埋設物、例えば鋼製或いはコンクリート製の円筒形の配管18を、前記防波堤11の幅方向(防波堤11を上方から見て港内外方向と直交する方向)に所定の間隔、例えば10m間隔で埋設している。
【0018】
前記配管18は、外周壁面に多数の開口18aを設けて配管18の内外を連通させることで前記マウンド13よりも透水性が高くなるようにし、その港内側の開口端面18bは前記マウンド13から突出させる一方、港外側の開口端面18cは前記マウンド13の内部に位置するように配置する。
【0019】
このような支持構造とした場合、配管18は港内側と連通しているので、配管18の内部の圧力は港内側の水位H2に支配されることになる。そして、配管18には多数の開口18aを設けているので、配管18の内部の圧力は配管18の埋設部分に及び、配管18が埋設されたマウンド13内の静水圧を港内の静水圧P2と同じ値まで低下することができる。
【0020】
従って、港外側の水位H1が上昇した時には、
図2に示すように、防波堤11の下面11a全域に港内側の静水圧P2が作用することになって静水圧の上昇が緩和されるので、港外側の水位H1の上昇に伴う揚圧力の増加を軽減することができる。
【0021】
加えて、上記本発明の支持構造の場合、防波堤11(函体14)の下面11aに溝などを加工しないので、防波堤11とマウンド13との間の摩擦力を損なうことがなく、摩擦増大マットなどの設置も容易に行うことができる。
【0022】
上記本発明の支持構造では、前記配管18の港外側の開口端面18cに例えば格子19を設置して、配管18の内部にマウンド13を形成する基礎捨石が侵入しないようにすることが望ましい。
【0023】
ところで、従来の防波堤の場合、津波による水位上昇が堤高を超えて越流が生じた場合、港内側のマウンド13が洗掘されて地盤支持力が低下し、堤体が転倒する事例が報告されている。
【0024】
しかしながら、本発明では、配管18の設置間隔を狭くした場合、
図3に示すように、前記越流による流水圧を配管18で受けることになるので、マウンド13を構成する基礎捨石の飛散を軽減することができる。
【0025】
また、港内外の水位差によって、マウンド13内に顕著な浸透流が生じた場合も、
図4に示すように、抵抗の小さい配管18の内部に流れが集中するので、マウンド13の支持力の低下を抑制することができる。
【0026】
また、
図5(a)に示すように、マウンド13を形成する基礎捨石の粒径を、港内側に比べて港外側を小さくすれば、港外側の透水性を港内側の透水性に比べて下げることができる。これにより、
図5(b)に示すように、港外側の静水圧の圧力勾配が増加する一方、港内側の静水圧の圧力勾配が低下して、防波堤11の下面11aに作用する静水圧を低下させる効果が高くなる。加えて、港内側の基礎捨石の粒径が大きいので、前記のように越流が発生した時に基礎捨石の飛散を抑制することができる。
【0027】
マウンド13の港外側の透水性を下げる手段は、基礎捨石の粒径を、港外側を港内側に比べて小さくするものに限らず、
図6に示すように、配管18の港外側の開口端面18cよりも港外側のマウンド13内に遮水材20を配置したものでも良い。なお、遮水材20としては、遮水シート或いは遮水板を使用する。
【0028】
以上は、港外側の水位が上昇した場合に、本発明の支持構造を有する防波堤11の下面11aに作用する静水圧の上昇緩和について説明したが、次に、引き波時の場合について説明する。
【0029】
図1で説明した本発明の支持構造を有する防波堤11における引き波時に作用する静水圧は、
図7(a)に示すように、マウンド13に配管18を埋設しない従来の支持構造に比べて防波堤11の下面11aに作用する静水圧は上昇する。
【0030】
このような問題に対しては、僅かな圧力差で動作するように、地盤12から離れる方が突出するように傾斜させた配管18の港内側の開口端面18bに、例えばフラップ式の逆止弁21を設置すれば、引き波時には逆止弁21が港内側の開口端面18bを閉止する。
【0031】
従って、防波堤11の下面11aに作用する静水圧は、
図7(b)に示すように、マウンド13に配管18を埋設しない従来の支持構造と同程度とすることができる。
【0032】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0033】
例えば、上記の実施例では、起伏ゲート式防波堤を対象として説明したが、通常のケーソン式防波堤であっても適用することができる。また、静水圧を伝達するために配管18の外周面に設ける開口18aは、
図1〜
図7に示したような孔でなく、スリットでも良い。
【0034】
また、マウンド13に埋設する埋設物として、
図1〜
図7で説明した実施例では円筒形の配管18を使用しているが、流路を確保しやすい断面形状であれば、円筒形でなくても角筒形等どのような形状でも良い。また、必要な流路を確保できるものであれば、配管18のような閉断面でなくても、溝型鋼のような開断面でも良い。
【0035】
また、
図1〜
図7で説明した実施例では、円筒形の配管18を防波堤11の幅方向に所定の間隔で埋設しているが、防波堤11の幅と同じ長さを持ち、流路を確保しやすい断面形状、例えば角筒形のようなものを埋設してもよい。
【0036】
また、
図1〜
図7で説明した実施例では、埋設物として使用した鋼管18は鋼製或いはコンクリート製であるが、埋設物が損傷しないようにするため、より高強度の材料を使用しても良い。