特許第6464529号(P6464529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6464529骨分化誘導方法及び骨化促進・抑制分子のスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464529
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】骨分化誘導方法及び骨化促進・抑制分子のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20190128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20190128BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20190128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C12N5/077
   C12N5/10
   C12Q1/02ZNA
   C12N15/09 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-501502(P2015-501502)
(86)(22)【出願日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2014054055
(87)【国際公開番号】WO2014129550
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-32333(P2013-32333)
(32)【優先日】2013年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102015
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】江良 択実
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−079033(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129881(WO,A1)
【文献】 特表2007−534725(JP,A)
【文献】 Stem Cells, 2012, Vol.30, p.2437-2449
【文献】 Journal of Bone and Mineral Research, 2010, Vol.25, No.6, p.1208-1215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−5/28
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、Sox2遺伝子及びc-Myc遺伝子を含む初期化遺伝子を導入した進行性骨化性維異形成症に罹患したヒトに由来する維芽細胞を用いてインビトロにて骨化の促進を誘導する方法であって、以下の工程:
a)進行性骨化性維異形成症に罹患したヒトに由来する維芽細胞に前記4つの遺伝子を含むセンダイウイルスベクターを感染させ、次いで該細胞をドルソモルフィン及び/又はLDN-193189の存在下培養する工程;
b)前記細胞を回収する工程;及び
c)回収した細胞を、10〜50ng/mlの骨誘導因子BMP−6を含みかつドルソモルフィン及びLDN-193189のいずれも含まない培地で培養することにより、該細胞の骨化の促進を誘導する工程、
を含むことを特徴とする誘導方法。
【請求項2】
前記工程c)におけるBMP−6存在下での細胞の培養を、BMP−6を50ng/mlの濃度で含有する培地で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記維芽細胞が皮膚維芽細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記維芽細胞が、以下の遺伝子:
1)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、
を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記初期化遺伝子が、さらにMyc遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:a)進行性骨化性維異形成症に罹患したヒトに由来する維芽細胞に、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、Sox2遺伝子及びc-Myc遺伝子を含む初期化遺伝子をもつセンダイウイルスベクターを感染させ、次いで該細胞をドルソモルフィン及び/又はLDN-193189の存在下培養する工程;
b)前記細胞を回収する工程;及び
c)回収した細胞を、10〜50ng/mlの骨誘導因子BMP−6を含みかつドルソモルフィン及びLDN-193189のいずれも含まない培地で、被験物質の存在下培養し、次いで、培養後の該細胞の骨化を評価することにより骨化を抑制する又は骨化を促進する被験物質を選別する工程、
を含むスクリーニング方法。
【請求項7】
前記工程c)におけるBMP−6存在下での細胞の培養を、BMP−6を50ng/mlの濃度で含有する培地で行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記維芽細胞が皮膚維芽細胞である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記維芽細胞が、以下の遺伝子:
1)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、
を有する、請求項6〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記初期化遺伝子がさらに、Myc遺伝子を含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨芽細胞へ分化する細胞を用いた骨化を促進又は抑制する分子のスクリーニング方法に関し、特には、進行性骨化性線維異形成症に罹患した個体からの細胞を用いた骨化を促進又は抑制する分子のスクリーニング方法に関する。本発明はまた、そのような細胞の骨分化を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とが絶えず繰り返されている動的組織である。骨芽細胞と破骨細胞の機能バランスに異常が生じると、この動的平衡状態が破綻し様々な骨代謝異常疾患が引き起こされることが知られている。
また近年、骨や軟骨への損傷、歯科治療などで、骨再生能力を利用することが研究されている。骨形成は、未分化間葉系が凝集して軟骨芽細胞に分化し、骨を形作るための鋳型として軟骨が形成される内軟骨性骨形成と、間葉系細胞が凝集し、内部から骨芽細胞に分化する膜性骨形成があるが、いずれの場合も、骨芽細胞が骨形成を担当としているといわれている
【0003】
幹細胞から骨芽細胞への分化を誘導する転写因子として、Runx2(CBFA1,AML3)が、また分化促進に関わる転写因子としてosterixが知られている。また、これらの転写因子に対する制御因子として、骨形成タンパク質 (bone morphogenetic protein, BMP)などのTGFβファミリー増殖因子の関与が既に見出されている。BMPは骨を誘導するサイトカインで、そのシグナルはI型およびII型のセリン・スレオニンキナーゼ型受容体によって細胞内に伝達され、さらにI型受容体による転写調節因子Smadのリン酸化によって核内に伝達される。BMPシグナルの不足は短指症や軟骨形成不全症を引き起こし、一方、過剰なBMPシグナルは進行性骨化性維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressiva;FOP)などを引き起こすことが明らかとなってきた(非特許文献1)。
【0004】
FOPは、全身の軟部組織が骨化していく難治性疾患の1つで、10歳までに発症し40歳ぐらいまでに拘束性の呼吸障害によって死亡する治療方法が確立されていない疾患である(非特許文献1〜3)。BMP1型受容体である、ALK2キナーゼ遺伝子の点変異によって起こる過剰な活性亢進異常が原因であることが判明している(非特許文献3〜9)。最も一般的な突然変異はR206Hであり、ALK2のキナーゼ活性を変化させ、その結果、ALK2のキナーゼ活性が構成的に高まると考えられている。例えば、ALK2におけるG356Dのような幾つかのほかの突然変異がFOPの表現型変異で報告されており、それらもキナーゼ活性に影響を及ぼしてALK2の構成的な活性化を引き起こすことが報告されている(非特許文献10)。ALK2(G356D)のキナーゼ活性がALK2(R206H)よりも弱いことが示されており、臨床上の変化はALK2変異体における生物活性の差異に起因することが示唆されている(非特許文献11)。
【0005】
このような背景のもと、BMPシグナル伝達を阻害することで骨分化を阻害する低分子化合物が探索され、ドルソモルフィン(dorsomorphin)とその誘導体であるLDN-193189が見いだされた。(非特許文献12、非特許文献13)。BMPI型受容体キナーゼの特異的阻害剤LDN-193189は、病態モデルマウスを用いた実験で、進行性骨化性線維異形成症の主要な症状である異所性骨形成と機能障害とを軽減することが知られている(非特許文献14)。
【0006】
また従来、ヒト正常間葉系細胞を用いた骨芽細胞への分化システムについては、多くの研究がなされている。しかし、疾患由来の間葉系細胞を用いた研究はほとんど見当たらない。FOPについては、先行研究として、FOP患者の歯から間葉系細胞を単離し、その細胞をBMP2及びBMP4で刺激して骨芽細胞へ分化を誘導したとの報告が一つある(非特許文献4)。しかし、患者の歯から細胞を単離しなければならず、一般的な手法としては問題がある。
【0007】
そこで、個体に由来するES細胞を用いて効率よく骨芽細胞へ分化させる方法が試みられているが未だに開発されていない。そのため、ES細胞を一旦、間葉系幹細胞に分化させ、次いで間葉系幹細胞を純化・増殖させた後に、骨芽細胞に分化させることによって効率のよい骨芽細胞への分化誘導法の確立が試みられている(非特許文献15、16)。
【0008】
このような背景のもと、骨化を制御(抑制又は促進)する化合物を直接かつ簡易に検索できるツールが望まれていた。すなわち、インビトロでの、効率よく骨化の制御にかかわる化合物をスクリーニングする方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】F. S. Kaplan et al., Methods Enzymol 484, 357 (2010).
【非特許文献2】E. M. Shore, F. S. Kaplan, Bone 43, 427 (2008).
【非特許文献3】T. Fukuda et al., J Biol Chem 284, 7149 (2009).
【非特許文献4】P. C. Billings et al., J bone Miner Res 23, 305 (2008)
【非特許文献5】J. L. Fiori, P. C. Billings, L. S. de la Pena, F. S. Kaplan, E. M. Shore, J Bone Miner Res 21, 902 (2006).
【非特許文献6】F. S. Kaplan et al., Hum Mutat 30, 379 (2009).
【非特許文献7】A. B. Shafritz et al., N Engl J Med 335, 555 (1996).
【非特許文献8】Q. Shen et al., J Clin Invest 119, 3462 (2009).
【非特許文献9】E. M. Shore et al., Nat Genet 38, 525 (2006).
【非特許文献10】H. Furuya et al., Am J Med Genet A 146A, 459 (2008).
【非特許文献11】T. Fukuda et al., Biochem Biophys Res Commun 377, 905 (2008).
【非特許文献12】Yu PB et al., Nat Chem Biol、4、33-41 (2008).
【非特許文献13】Cuny et al、Bioorg Med Chem Lett、18、4388-4392 (2008).
【非特許文献14】Yu PB et al., Nat Med. Dec; 14(12): 1363-9 (2008).
【非特許文献15】T. Barberi et al., PLOS Medicine, June 2005, Vol. 2, Issue 6, e161, 0554-0560.
【非特許文献16】C. Xu et al., Stem Cells, 2004; 22:972-980.
【非特許文献17】M. Hamasaki et al., Stem Cells, 2012; 30:2439-2449.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、インビトロ(細胞レベル)での、比較的簡易な、骨化の制御(促進又は抑制)にかかわる分子をスクリーニングする方法を提供することにある。本発明の目的はまた、このようなスクリーニング方法に用いることができる細胞及び分化誘導方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、進行性骨化性線維異形成症の患者由来の線維芽細胞に初期化遺伝子である4因子(Oct4、Sox2、KLF4、及びc-Myc)を導入した細胞を、BMP−6の存在下で培養すると、FOPの臨床所見である骨化の促進をインビトロで容易に再現できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
1.iPS細胞の作成のための初期化遺伝子を導入した進行性骨化性維異形成症に罹患した個体に由来する体細胞又はその細胞由来の継代された細胞を骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することを含む体細胞又はそれに由来する細胞の骨芽細胞への分化誘導方法。
2.前記体細胞が皮膚維芽細胞である前記1に記載の方法。
3.前記細胞がヒト細胞である、前記2に記載の方法。
4.前記細胞が、以下の遺伝子:
1)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、
を有する、前記1〜3のいずれか一つに記載の方法。
5.前記初期化遺伝子が、少なくともOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子を含む、前記1〜4いずれか一つに記載の方法。
6.前記初期化遺伝子がさらに、Myc遺伝子を含む、前記5に記載の方法。
7.前記細胞の培養を、BMP−6を10〜100ng/mlの濃度で含有する培地で行う、前記1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【0013】
8.以下の工程:
a)進行性骨化性維異形成症に罹患した個体に由来する体細胞にiPS細胞の作成ための初期遺伝子が導入された細胞又はその細胞由来の継代された細胞を、骨誘導因子BMP−6及び被験物質の存在下で培養する;及び
b)前記細胞の骨化を評価することにより、骨化を抑制する又は骨化を促進する被験物質を選別する:
ことを含む骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)分子のスクリーニング方法。
9.前記体細胞が皮膚維芽細胞である前記8に記載の方法。
10.前記細胞がヒト細胞である、前記9に記載の方法。
11.前記細胞が、以下の遺伝子:
1)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、
を有する、前記8〜10のいずれか一つに記載の方法。
12.前記初期化遺伝子が、少なくともOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子、を含む、前記8〜11のいずれか一つに記載の方法。
13.前記初期化遺伝子がさらに、Myc遺伝子を含む、前記12に記載の方法。
14.前記細胞の培養を、BMP−6を10〜100ng/mlの濃度で含有する培地で行う、前記8〜13のいずれか一つに記載の方法。
【0014】
15.以下の遺伝子:
1)iPS細胞の作成のための初期化遺伝子であるOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子、並びに
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むALK2変異遺伝子、
を導入した哺乳動物由来の細胞(体細胞(好ましくは皮膚維芽細胞)又はiPS細胞)を、骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することを含む、該細胞の骨芽細胞への分化誘導方法。
16.前記哺乳動物由来の細胞が、初期化遺伝子としてさらにMyc遺伝子が導入された、前記15に記載の分化誘導方法。
17.前記哺乳動物由来の細胞が、ヒト細胞である前記15又は16に記載の方法。
18.前記細胞の培養を、BMP−6を10〜100ng/mlの濃度で含有する培地で行う、前記15〜17のいずれか一つに記載の方法。
19.以下の遺伝子:
1)iPS細胞の作成のための初期化遺伝子であるOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子並びに
2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子含むALK2変異遺伝子、
を導入した哺乳動物由来の細胞(体細胞(好ましくは皮膚維芽細胞)又はiPS細胞)であって、
骨誘導因子BMP−6の存在下(好ましくは10〜100ng/ml、より好ましくは約50ng/mlの濃度で)で培養することにより骨芽細胞へと分化する細胞。
20.前記哺乳動物由来の細胞が、初期化遺伝子としてさらにMyc遺伝子が導入された、前記19に記載の細胞。
21.前記細胞がヒト細胞である前記19又は20に記載の細胞。
【0015】
22.以下の工程:
a)前記19〜21のいずれか一つに記載の細胞を、骨誘導因子BMP−6及び被験物質の存在下で培養する;及び
b)前記細胞の骨化を評価することにより、骨化を抑制する又は骨化を促進する被験物質を選別する:
ことを含む骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)物質のスクリーニング方法。
23.前記培養を、BMP−6を10〜100ng/mlの濃度で含有する培地で行う、前記22に記載のスクリーニング方法。
24.骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)物質をスクリーニングするためのキットであって、前記19〜21のいずれかに記載の細胞、骨誘導因子BMP−6、及び該細胞を培養するための培地を含むキット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的簡易なインビトロ(細胞レベル)でのスクリーニング系で、骨化の制御(促進又は抑制)にかかわる分子をスクリーニングすることができる。また本発明によれば、骨疾患に関する薬剤候補を簡便かつ効率的に取得できる薬剤スクリーニング系として利用可能なスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】健常人皮膚維芽細胞からのiPS細胞形成(及び細胞のリプログラミング)に対するBMP−4及びBMP−7の作用を、ALK2キナーゼ阻害剤であるLDN193189の存在及び非存在下で検討した結果である。(A)は、実験計画を示す。左下の写真は、顕微鏡での細胞の状態を観察した結果である(図1B)。右下の写真は、典型的(typical)な及び異常(atypical)なiPS細胞コロニーの数及び比率を示した結果である(図1C)。
図2】健常人皮膚維芽細胞からのiPS細胞形成(及び細胞のリプログラミング)に対するBMP−6の作用を検討した結果である。上段は、実験計画を示す。
図3】健康人とFOP患者(F206H変異患者及びG356D変異患者)由来の皮膚線維芽細胞にBMP−6を添加し骨芽細胞誘導について検定した結果である。左側の写真が一週間後、右側の写真が二週間後の状態である。
図4】BMP−6存在及び非存在下における、FOP患者由来の皮膚線維芽細胞の骨芽細胞誘導に対するALK2キナーゼ阻害剤であるLDN193189とDorsomorphinの作用について検定した結果である。培養2週間後に顕微鏡で観察した結果である。
図5】BMP−6存在及び非存在下における、FOP患者(F206H変異患者及びG356D変異患者)由来の皮膚線維芽細胞の骨芽細胞誘導に対するALK2キナーゼ阻害剤であるLDN193189とDorsomorphinの作用について検定した結果である。培養2週間後に、骨芽細胞をALP染色にて検出した結果である。
図6】健常人とFOP患者由来の皮膚維芽細胞に対する各BMP(BMP−4,6及び7)処理によりALP活性の影響を測定した結果である。対照は、健常人の皮膚維芽細胞におけるBMP非添加でのAPL活性である。なお、ALP活性測定のポジティブコントロールとして、健常人のiPS細胞を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、進行性骨化性維異形成症に罹患した個体に由来する皮膚維芽細胞にiPS細胞の作成ための初期遺伝子が導入された細胞(又はその細胞由来の継代された細胞)を、骨誘導因子BMP−6及び被験物質の存在下で培養し、前記細胞の骨化を評価することにより、骨化を抑制する又は骨化を促進する被験物質を選別することを含む骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)物質のスクリーニング方法に関する。
【0019】
本明細書において、「分化」とは、ある細胞が特殊化した細胞になることをいう。また、本明細書において、「骨化」又は「骨分化」とは、細胞が骨の特徴を有する特殊化した細胞、例えば骨芽細胞になることをいう。骨芽細胞は、例えば、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色にて検出できる。
【0020】
本発明の一態様において用いる進行性骨化性維異形成症(FOP)の患者の皮膚線維芽細胞から、iPS細胞樹立が困難なことを本発明者らは以前に見いだし報告している(非特許文献17)。ここで、iPS細胞樹立が困難とは、患者に由来する細胞(体細胞)に後述の初期化遺伝子を導入し、従来の手法により人工多能性幹細胞(iPS細胞)への誘導を行っても、iPS細胞の製造が不可能であるか、或いは極めて低い効率でしか人工多能性幹細胞が出現しないことを意味する。より具体的には、該疾患の患者に由来する細胞に初期化遺伝子を導入し、各種iPS培地において培養することにより人工多能性幹細胞の誘導を行っても、培地上にiPS細胞コロニーが全く出現しないか、或いは、健常な固体に由来する細胞からiPS細胞の誘導を行った場合と比較して培地上におけるiPS細胞コロニーの形成頻度が極めて低いことを意味する。さらにより具体的には、該疾患の患者に由来する細胞に初期化遺伝子(特に、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、Sox2遺伝子、及びc-Myc遺伝子)を導入し、100mmシャーレ当たり1〜2×105個の細胞を播種してiPS細胞の誘導を行った場合に、健常な固体に由来する細胞からiPS細胞の誘導を行った場合と比較して形成されるコロニー数がより少なく、かつ形成されるiPS細胞のコロニーの数が、例えば、50以下であることを意味する。
【0021】
FOPの責任遺伝子は、ALK2遺伝子(ACVR1)であることが知られている。ヒトALK2遺伝子のmRNAの塩基配列(Homo sapiens activin A receptor, type I (ACVR1), transcript variant 1, mRNA)はNCBIアクセション番号:NM_001105として公開されている。そのCDS領域の塩基配列を配列番号1に示し、アミノ酸配列を配列番号2に示す。健常者とFOP患者のALK2遺伝子を比較すると、そのCDS領域の塩基配列において第617番目の塩基がグアニン(G)であるのに対し、FOP患者ではその塩基がアデニン(A)に変異していることが知られており、この塩基の変異により、ALK2遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異(R206H)する。さらに、FOP患者におけるALK2遺伝子の変異の希な事例として、CDS領域の塩基配列において第1067番目の塩基がグアニン(G)からアデニン(A)へと変異し、アミノ酸配列において第356番目のグリシンからアスパラギンへと変異(G356D)するケースが知られている。ALK2キナーゼは、骨組織を誘導する成長因子として知られるBMP(Bone morphogenetic protein)の1回膜貫通型受容体として機能し、細胞外領域でBMPと結合すると活性化して細胞内に骨形成シグナルを伝達する。健常者では、ALK2キナーゼはBMPが結合していない状態では不活性化された「オフ」の状態であるが、FOP患者では、ALK2キナーゼはBMPが結合していない場合でも活性化された「オン」の状態であることが明らかとされており、FOPでは常にALK2キナーゼが活性化状態にあるため、骨形成を促進するシグナルが伝達されて異所性骨形成が進行するものと考えられている。
【0022】
本発明において、「個体」は、哺乳動物を意味し、好ましくはヒトである。また、本発明において体細胞とは、生体を構成する細胞の内生殖細胞以外の全ての細胞を包含し、分化した体細胞でもよいし、未分化の幹細胞でもよい。加えて、本発明において「由来する」とは、個体から採取した細胞をそのまま本発明の方法に用いて初期化遺伝子を導入してもよいし、採取した細胞を培養して樹立した培養細胞株を本発明の方法に用いて初期化遺伝子を導入してもよいことを意味する。また、細胞を凍結保存する場合は、初期化遺伝子の導入前に凍結保存を行ってもよく、また初期化遺伝子を導入した後に凍結保存してもよい。本発明における細胞の具体例としては、例えば、疾患に罹患した個体から採取した皮膚を培養することにより得られた皮膚線維芽細胞が挙げられる。さらに、本発明における細胞として、上記したR206H及び/又はG356Dの突然変異を有するALK2キナーゼをコードする遺伝子を含む細胞を用いることができる。具体的には、配列番号2に示されるアミノ酸配列においてR206H及び/又はG356Dの突然変異を有するALK2キナーゼをコードする遺伝子を含むヒトの細胞を用いることができる。これら突然変異を有するALK2キナーゼをコードする遺伝子は、常法により、任意の細胞に導入することができ、そのような細胞も同様に用いることができる。これらの細胞に、初期化遺伝子を導入することにより本発明の方法に用いることができる。
【0023】
本発明において、「初期化遺伝子が導入された細胞又はその細胞由来の継代された細胞」とは、上記した、初期化遺伝子が導入された細胞をそのまま本発明の、例えばスクリーニング方法に用いても良いし、初期化遺伝子を導入したのち、細胞を培養して継代した培養細胞(又は培養細胞株)を、本発明の本発明の方法に用いてもよい。或いは、初期化遺伝子を導入した細胞又はそれを培養した細胞を凍結保存し、後日、細胞を解凍して必要により培養し本発明の方法に用いても良い。かかる場合には、初期化遺伝子を導入した細胞を後述するようなiPS細胞を生成できる条件で培養してiPS細胞を作成したのち、生成されたiPS細胞を本発明の方法に用いることもできる。
【0024】
本発明の方法では、まず、少なくとも1種類以上の初期化遺伝子を細胞に導入する。初期化遺伝子とは、体細胞を初期化してiPS細胞とする作用を有する初期化因子をコードする遺伝子である。初期化遺伝子の組み合わせの具体例としては、以下の組み合わせをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
(i)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子
(ii)Oct遺伝子、Sox遺伝子、NANOG遺伝子、LIN28遺伝子
(iii)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子、Myc遺伝子、hTERT遺伝子、SV40 large T遺伝子
(iv)Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子
【0025】
Oct遺伝子、Klf遺伝子、Sox遺伝子及びMyc遺伝子にはそれぞれ、複数のファミリー遺伝子が含まれている。それぞれのファミリー遺伝子の具体例としては、国際公開WO2007/069666号公報の明細書の第11頁から第13頁に記載されているものを用いることができる。具体的には、以下の通りである。
【0026】
Oct遺伝子に属する遺伝子の具体例としては、Oct3/4(NM_002701)、Oct1A(NM_002697)、及びOct6(NM_002699)などを挙げることができる(括弧内は、ヒト遺伝子のNCBI accession 番号を示す)。好ましくはOct3/4である。Oct3/4はPOUファミリーに属する転写因子であり、未分化マーカーとして知られており、また多能性維持に関与しているとの報告もある。
【0027】
Klf遺伝子に属する遺伝子の具体例としては、Klf1(NM_006563)、Klf2(NM_016270)、Klf4(NM_004235)、及びKlf5(NM_001730)などを挙げることができる(括弧内は、ヒト遺伝子のNCBI accession 番号を示す)。好ましくはKlf4である。Klf4(Kruppel like factor-4)は腫瘍抑制因子として報告されている。
【0028】
Sox遺伝子に属する遺伝子の具体例としては、例えば、Sox1(NM_005986)、Sox2(NM_003106)、Sox3(NM_005634)、Sox7(NM_031439)、Sox15(NM_006942)、Sox17(NM_0022454)、及びSox18(NM_018419)を挙げることができる(括弧内は、ヒト遺伝子のNCBI accession 番号を示す)。好ましくはSox2である。Sox2は初期発生過程で発現し、転写因子をコードする遺伝子である。
【0029】
Myc遺伝子に属する遺伝子の具体例としては、c-Myc(NM_002467)、N-Myc(NM_005378)、及びL-Myc(NM_005376)などを挙げることができる(括弧内は、ヒト遺伝子のNCBI accession 番号を示す)。好ましくは、c-Myc である。c-Mycは細胞の分化及び増殖に関与する転写制御因子であり、多能性維持に関与しているとの報告がある。
【0030】
上記した遺伝子は、ヒトを含む哺乳類動物において共通して存在する遺伝子であり、本発明において任意の哺乳類動物由来(例えばヒト、マウス、ラット、サルなどの哺乳類動物由来)の遺伝子を用いることができる。また、野生型の遺伝子に対して、数個(例えば1〜30個、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1から3個)の塩基が置換、挿入及び/又は欠失した変異遺伝子であって、野生型の遺伝子と同様の機能を有する遺伝子を使用することもできる。
【0031】
本発明では特に好ましくは、初期化遺伝子として、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子の組み合わせを、さらに好ましくは、それら3つとc-Myc遺伝子の組合せを用いることができる。
【0032】
初期化遺伝子を細胞に導入する方法は、導入された初期化遺伝子が発現して細胞の初期化を達成できる限り特に限定されない。例えば、少なくとも1種類以上の初期化遺伝子を含む発現ベクターを用いて該初期化遺伝子を細胞に導入することができる。ベクターを用いて2種類以上の初期化遺伝子を細胞に導入する場合には、一つの発現ベクターに2種類以上の初期化遺伝子を組み込んで、該発現ベクターを細胞に導入してもよいし、1種類の初期化遺伝子を組み込んだ発現ベクターを2種類以上用意して、それらを細胞に導入してもよい。
発現ベクターの種類は特に限定されず、ウイルスベクターでもプラスミドベクターでもよいが、好ましくはウイルスベクターである。本発明で使用できるウイルスベクターとしては、レトロウィルスベクター(レンチウィルスベクターを含む)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどを挙げることができる。上記の中でも好ましくはセンダイウイルスベクターである。
【0033】
本発明の方法では、初期化遺伝子が導入された細胞をBMP−6と共に被験物質の存在下で培養するが、この工程では、骨芽細胞の誘導又は維持に用いられ得る任意の培地にBMP−6及び被験物質を添加して当該細胞を培養すればよい。具体的には、ES細胞や人工多能性幹細胞の未分化性及び多能性を維持可能な培地は当業界で公知であり、適当な培地を組み合わせて用いることができる。即ち、本発明の方法において初期化遺伝子が導入された細胞をBMP−6と共に被験物質の存在下で培養するために用いられ得る培地としては、ES培地、ES培地に10ng/ml FGF-2を添加後にマウス胚性線維芽細胞を24時間培養した上清であるMEF馴化ES培地(以下MEF馴化ES培地)、所定量のKnockOut Serum Replacement(KSR)(インビトロジェン社)及び/又はbFGFを添加したDMEM培地などをあげることができる。本発明において初期化遺伝子が導入された細胞を培養するための培地には、各種の成長因子、サイトカイン、ホルモンなど(例えば、FGF-2、TGFb-1、アクチビンA、ノギン(Nanoggin)、BDNF、NGF、NT-1、NT-2、NT-3等のヒトES細胞の増殖・維持に関与する成分)を添加してもよい。
【0034】
本発明の方法において用いるBMP−6は、天然に存在するBMP−6タンパク質(BMP−6タンパク質及び天然に提供される改変体を含む)、及び本発明の目的である細胞の骨分化誘導の作用を有する限り改変されたBMP−6タンパク質を含む。改変BMP−6タンパク質とは、ポリペプチド中のアミノ酸の一部が置換されたものだけでなく、欠失又は付加されたものも含み、また、ペプチドの一部の残基が改変されたものも含む。更には、一部のペプチド配列からなるポリペプチド、及びキメラ型のタンパク質も含む。BMP−6のDNA配列およびタンパク質配列ならびにそれを生成するための方法は、特開2004−073208号公報及び米国特許第5,187,076号に記載されており、これらの開示は、本明細書中に参考として引用され、本明細書の一部である。
【0035】
本発明の方法において培地に添加するBMP−6の濃度は、本発明の目的である細胞の骨分化誘導を引き起こす濃度であればいずれの濃度でも良いが、10〜100ng/ml、好ましくは約50ng/mlの濃度で用いることができる。
【0036】
本発明において初期化遺伝子が導入された細胞をBMP−6と共に被験物質の存在下で培養する際には、適切な支持細胞を用いてもよい。本発明で用いられる支持細胞としては、一般に多能性幹細胞を誘導及び維持できる細胞であれば、特に限定されるものではない。支持細胞の具体例としては、MEF細胞などが挙げられる。また、支持細胞は、マイトマイシンC処理又は放射線照射により細胞増殖を失わせたものを用いることができる。MEF細胞(ICRマウスより)は、ATCCにカタログ番号ATCC#SCRC−1046として登録されている。また、MEF細胞は、文献(Nagy A, et al. Manipulating The Mouse Embryo: A Laboratory Manual. Third Edition Cold Spring Harbor Press; 2003)の記載に従って入手可能である。
【0037】
本発明で用いる初期化遺伝子が導入された細胞は、iPS細胞を生じる条件で培養した後、培地を交換し、培地から不要な成分を除いた後、BMP−6と共に被験物質の存在下で培養してもよく、iPS細胞を生じる条件は、本発明で用いる初期化遺伝子が導入された細胞からiPS細胞を生成できる条件であれば特に制限がないが、FOP患者由来の維芽細胞を用いた場合は、例えば、ドルソモルフィン及び/又はLDN-193189の存在下での培養をあげることができる。ドルソモルフィンを用いる場合は、その濃度は、例えば、1〜4μMである。LDN-193189を用いる場合は、その濃度は、例えば、200nM〜1μMである。
【0038】
本発明で用いる被験物質としては任意の物質を使用することができる。被験物質の種類は特に限定されず、低分子化合物であってもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、合成ペプチドでもよい。あるいは、被験物質はまた、化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリーもしくはコンビナトリアルライブラリーでもよい。被験物質は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーでもよい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。
【0039】
上述のように、本発明に用いる初期遺伝子が導入された細胞はBMP−6と共に培養することにより細胞の骨化(骨分化)が起こるので、それを被験物質の存在下で培養することにより、骨化を制御する(骨化を抑制又は促進する)被験物質を選別できる。骨化を制御するか否かの判断については、例えば、被験物質が添加されていない培地で細胞を培養した陰性対照群と、被験物質を添加した培地で細胞を培養した被験試料群とを比較し、細胞の骨化(骨分化)を確認することにより行える。骨化の確認は、例えば、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色を行い、細胞の状態を顕微鏡により確認することにより行うことができるが、方法は特に限定されず、他の方法として、例えば、骨化又は骨分化の指標として、アリザリンレッド染色、カルシウム定量、および、ELISA法による培養上清中のosteocalcinタンパク濃度の測定があげられる。
【0040】
さらに本発明の別の態様によれば、iPS細胞の作成のための初期化遺伝子を導入した進行性骨化性維異形成症に罹患した個体に由来する体細胞又はその細胞由来の継代された細胞を骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することを含む体細胞又はそれに由来する細胞の骨芽細胞への分化誘導方法、が提供される。
【0041】
本発明の骨芽細胞への分化誘導方法において用いる、「分化」、「個体」、「由来する」、「体細胞」、「その細胞由来の継代された細胞」、「初期化遺伝子」、「BMP−6」の各用語は、本発明の骨化(骨分化)制御物質のスクリーニング方法に関し上記に説明した通りであり、骨芽細胞への分化誘導方法は、本発明の初期化遺伝子を導入した進行性骨化性線維異形成症の個体由来の細胞を、BMP−6と共に培養することにより行うことができる。分化誘導のための培地、骨化又は骨分化の確認、その他の条件及び方法は、本発明の骨化(骨分化)制御物質のスクリーニング方法に関し上記した条件及び方法を用いることができる。
【0042】
また本発明の別の態様によれば、以下の遺伝子:(1)iPS細胞の作成のための初期化遺伝子(例えば、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子(場合により、さらにc-Myc遺伝子を含む))、並びに(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むALK2変異遺伝子を導入した哺乳動物由来の細胞を、骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することを含む細胞の骨芽細胞への分化誘導方法、が提供される。
【0043】
下記の実施例で示されるように、FOP患者由来の細胞は、ALK2遺伝子に関して上記した変異を有する。従って、上記した初期化遺伝子及び上記した変異を有するALK2遺伝子を有する細胞は、骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することにより、骨芽細胞へと分化誘導できる。
上記初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞は、哺乳動物由来の細胞であって、それらの遺伝子を導入できかつそれらの遺伝子が発現できる細胞であれば特に制限されず、任意の細胞を用いることができる。哺乳動物は特に制限されないが、例えばヒト、マウス、ラット、サルなどをあげることができ、特にヒトが好ましい。また、細胞の例としては、例えば、哺乳動物個体から採取した維芽細胞、幹細胞、樹立培養細胞、等をあげることができ、好ましくは皮膚維芽細胞、マウス胎児維芽細胞であり、特に好ましくはヒト皮膚維芽細胞である。また、用いる細胞が既に初期化遺伝子を有する場合(例えば樹立iPS細胞)は、細胞に上記ALK2変異遺伝子を導入することにより、本発明の細胞として用いることができる。具体的には、それらの遺伝子を有する細胞を調製した後、BMP−6存在下で細胞を培養することにより、細胞が骨芽細胞に分化することを確認し、本発明に用いることができる。
【0044】
上記の初期化遺伝子を細胞に導入する方法は、骨化制御物質のスクリーニング方法に関して記載した遺伝子の導入方法を用いることができる。また、上記ALK2変異遺伝子を導入する方法としては、常法を用いることができるが、例えば、リポフェクチン法により導入できる。さらに、上記初期化遺伝子と上記ALK2変異遺伝子を、同時に細胞に導入することもできる。
【0045】
本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞を用いた細胞の骨芽細胞への分化誘導方法において、「分化」、「BMP−6」、及び「初期化遺伝子」の各用語は、本発明の骨化(骨分化)制御物質のスクリーニング方法に関し上記に説明した通りであり、骨芽細胞への分化誘導方法は、本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を導入した細胞を、BMP−6と共に培養することにより行うことができる。分化誘導のための培地、骨化又は骨分化の確認、その他の条件及び方法は、本発明の骨化(骨分化)制御物質のスクリーニング方法に関し上記したものを用いることができる。
【0046】
さらに本発明の別の態様によれば、以下の遺伝子:(1)iPS細胞の作成のための初期化遺伝子(例えば、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子(場合により、さらにc-Myc遺伝子を含む))、並びに(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子含むALK2変異遺伝子を導入した哺乳動物由来の細胞であって、骨誘導因子BMP−6の存在下で培養することにより骨芽細胞へと分化する細胞、が提供される。
【0047】
本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞において、「分化」、「哺乳動物」、「細胞」、「BMP−6」、及び「初期化遺伝子」の各用語は、本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞を用いた細胞の骨芽細胞への分化誘導方法に関し上記に説明した通りであり、本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を導入した細胞は、BMP−6と共に培養することにより骨芽細胞へと分化する。遺伝子の導入方法、分化誘導のための培地、骨化又は骨分化の確認、その他の条件及び方法は、既に上記した条件及び方法を用いることができる。
【0048】
またさらに本発明の別の態様によれば、以下の遺伝子:(1)iPS細胞の作成のための初期化遺伝子(例えば、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、及びSox2遺伝子(場合により、さらにc-Myc遺伝子を含む))、並びに(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第206番目のアルギニンがヒスチジンに変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列において第356番目のグリシンがアスパラギン酸に変異したアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むALK2変異遺伝子を導入した哺乳動物由来の細胞を、骨誘導因子BMP−6及び被験物資の存在下で培養し、前記細胞の骨化を評価することにより、骨化を抑制する又は骨化を促進する被験物質を選別することを含む骨化制御(骨化促進又は骨化抑制)物質のスクリーニング方法、が提供される。
【0049】
本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞を用いた骨化制御物資のスクリーニング方法において、「分化」、「哺乳動物」、「細胞」、「BMP−6」、及び「初期化遺伝子」の各用語は、本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を有する細胞を用いた細胞の骨芽細胞への分化誘導方法に関し上記に説明した通りであり、本発明の初期化遺伝子及びALK2変異遺伝子を導入した細胞を、BMP−6及び被験物資と共に培養することにより行うことができる。遺伝子の導入方法、分化誘導のための培地、骨化又は骨分化の確認、その他の条件及び方法は、既に上記した条件及び方法を用いることができる。
【0050】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
(A)材料及び方法
(1)皮膚由来の線維芽細胞の生成
倫理委員会に承認されたプロトコールにより、インフォームドコンセントの下、FOP患者及び健常者の皮膚生検の外植片から線維芽細胞を作出した。患者及び健常者からの皮膚試料を細かく刻み、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したDMEM培地で培養した。線維芽細胞が出現したことを確認した後、初期化遺伝子を導入するために線維芽細胞を増殖させ、その後、10%DMSO+90%FBSからなる凍結溶液に入れ、凍結保存した。
【0052】
(2)iPS細胞の維持及び生成
20%のKNOCKOUT(商標)血清置換物(KSR、インビトロゲン)、2mMのL−グルタミン、1×10-4Mの非必須アミノ酸(NEAA、シグマ)、1×10-4Mの2−メルカプトエタノール(シグマ)、0.5%のペニシリンとストレプトマイシン(日本、ナカライテスク)、及び5ng/mLの基本線維芽細胞増殖因子(bFGF、和光、日本)を添加したDMEM/F12(シグマ)を含有するヒトiPS培地において、マイトマイシンC(MMC)処理したMEF支持細胞上でヒトiPS細胞を維持した。
【0053】
N. Fusaki, H. Ban, A. Nishiyama, K. Saeki, M. Hasegawa, Proc. Jpn. Acad. Ser., B. Phys. Biol. Eci., 85, 348 (2009)に記載される方法により、ヒト由来の線維芽細胞からiPS細胞を生成した。感染1日前に、6穴プレートにおいてウエル当たり5×105個のヒト線維芽細胞を播種し、その後、感染多重度(multiplicity of infection;MOI)3にて、下記センダイウイルス(SeV)ベクターを細胞に感染させた。感染の7日後、トリプシンによって感染させた線維芽細胞を回収し、60mmのシャーレ当たり5.4×104個の細胞、或いは100mmのシャーレ当たり1〜2×105個の細胞をMMC処理したMEF支持細胞上に播種した。翌日、ヒトiPS細胞培地に置き換え、感染の30日後まで培養を継続し、コロニーを観察した。
iPS細胞の生成に対する骨形成タンパク質(BMP−4,6,及び7)の影響は、感染8日目に置き換える上記ヒトiPS細胞培地に、それぞれ、BMP−4(10ng/ml)、BMP−6(50ng/ml)、及びBMP−7(10ng/ml)を添加した培地を用い、30日目まで培養することにより確認した。また、一部の実験では、ALK2キナーゼ阻害剤であるLDN−193189(STEMGENT;ステムジェント)を200nMの濃度で上記ヒトiPS培地に添加した。
【0054】
(3)センダイウイルス(SeV)ベクターの構築及び検出
Oct3/4遺伝子、Sox2遺伝子、K1f4遺伝子及びc−Myc遺伝子を含むSeVベクターは、N. Fusaki, H. Ban, A. Nishiyama, K. Saeki, M. Hasegawa, Proc. Jpn. Acad. Ser., B. Phys. Biol. Eci., 85, 348 (2009)に記載される通り作成した。SeVのゲノムを検出するために、ネストPCRを行った。皮膚線維芽細胞及びiPS細胞から抽出した1マイクログラムのトータルRNAをcDNAに逆転写した。次いで、一対のSeV特異的プライマーを用いてcDNAを増幅し、これらPCR産物の1/10容積をさらに、一対にネストプライマーを用いて増幅させた。プライマーの配列及び増幅条件を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(4)FOP患者由来皮膚維芽細胞の骨芽細胞への分化誘導
上記(2)と同様にして行った。FOP患者又は健常人から由来する皮膚維芽細胞に、Oct3/4遺伝子、Sox2遺伝子、K1f4遺伝子及びc−Myc遺伝子を含むSeVベクターを感染させ、感染7日後に感染した維芽細胞を回収し、MEF支持細胞上に播種した。翌日、BMP−6を50 ng/ml添加したヒトiPS細胞培地に置き換え、感染後30日目まで培養を続けた。一部の実験では、ALK2キナーゼ阻害剤であるLDN−193189(STEMGENT;ステムジェント)及びドルソモルフィン(シグマ)をそれぞれ、200nM及び1μM添加したヒトiPS培地を用いた。
【0057】
(5)アルカリフォスファターゼ染色及び免疫組織化学
白血球アルカリフォスファターゼキット(Leukocyte Alkaline Phosphatase kit;シグマ)を用いてアルカリフォスファターゼ染色を行った。免疫細胞化学については、4%パラホルムアルデヒドを含有するPBSで4℃にて30分間細胞を固定した。核に局在する分子については、室温にて15分間、0.2%トリトンX−100にて試料を処理した。2%FBSを含有するPBSで細胞を3回洗浄し、次いで一次抗体と共に2%FBSを含有するPBSにて4℃で一晩インキュベートした。一次抗体には、SSEA4(1:500、ミリポア)、TRA−160(1:500、ミリポア)、Nanog(1:1000、R&Dシステムズ)及びOct3/4(1:500、Santa-Cruz)が含まれる。二次抗体には、アレクサ488が結合したヤギ抗マウスIgG(1:1000、インビトロジェン)及びアレクサ488が結合したロバ抗ヤギIgG(1:1000、インビトロジェン)を用いた。分化マーカーの染色については、Sox17(1:200、R&Dシステムズ)、Foxa2(1:200、R&Dシステムズ)及びブラキュリ(Brachyury)(1:200、R&Dシステムズ)を用いた。核は1μg/mLのヘキスト33258(インビトロジェン)で染色した。
【0058】
(5)DNAの単離及び塩基配列決定
DNAの塩基配列決定によってFOP由来のiPS細胞株におけるALK2遺伝子の突然変異(R206H:617G>A及びG356D:1067G>A)を確認した。50mMのトリス−HCl(pH7.5)、20mMのEDTA(pH8.0)、0.1MのNaCl、1%のSDS及び0.15mg/mLのプロテイナーゼKを含有する溶解緩衝液においてiPS細胞株を55℃で一晩インキュベートした。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールによってゲノムDNAを抽出した。次いでPCRによって100ngのゲノムDNAを増幅させた。ABI PRISM(商標)310 Genetic Analyzer(BigDye(登録商標)ターミネータv1.1サイクル・シーケンシング・キット、アプライドバイオシステムズ)によって、得られたPCR産物の塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定に使用したプライマーの配列を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(B)結果
(1)FOP患者及び健常者の情報
上記材料及び方法に従い、センダイウイルス(SeV)法によってFOP患者(F1、F2、F3、F4)と健常者(N1、N2、N3)の皮膚由来の維芽細胞からiPS細胞の生成し、ALK2遺伝子の突然変異を確認した。以下に、本実施例で用いた細胞が由来する患者及び正常者の情報を示す
【0061】
【表3】
【0062】
(2)骨形成タンパク質のiPS細胞生成に対する影響
上記材料及び方法に従い、センダイウイルス(SeV)法によって健常人(N1)の皮膚由来の線維芽細胞からiPS細胞を生成することを試みた。iPS細胞生成における、ALK2キナーゼ阻害剤であるLDN−193189(200nM添加)、及び骨形成タンパク質BMP−4(10ng/ml添加)及びBMP−7(10ng/ml添加)の影響を検討した。結果を図1に示す。(A)は、実験計画を示す。左下の写真は、LDN−193189、BMP−4及びBMP−7の存在下及び非存在下で培養した細胞を、感染後30日目に顕微鏡で細胞の状態を観察した結果である(図1B)。右下の写真は、感染後30日目における、典型的(typical)な及び異常(atypical)なiPS細胞コロニーの数及び比率を示した結果である(図1C)。
また、健常人(N1)の皮膚由来の線維芽細胞からのiPS細胞の生成におけるBMP−6(50ng/ml添加)の影響を検討した。結果を図2に示す。上段は、実験計画を示し、下段の左写真は、BMP−6を添加しない場合、右写真は、BMP−6を添加した場合の結果を示している。
BMP−4添加においては、iPS細胞のコロニー数は少量の減少にとどまり、分化型コロニーが増加するのに対して、BMP−6添加では、iPS細胞コロニーそのものが激減する。この結果はBMP−4とBMP−6の下流シグナルが異なることを示唆している。したがって、1)FOPの原因がBMPの受容体異常であること、2)FOPからはiPS細胞樹立が困難なことを合わせ考えると、FOPの異常は正常細胞へBMP−6を添加した状態に類似していることが考えられる。
【0063】
(3)FOP患者由来皮膚維芽細胞の骨芽細胞への分化誘導
上記材料及び方法に従い、センダイウイルス(SeV)法によって健常人(N1)及びFOP患者(F206H変異患者(F2)及びG356D変異患者(F4))の皮膚由来の線維芽細胞に初期化遺伝子を導入し、BMP−6(50ng/ml添加)の存在下及び非存在下で培養を行った。iPS細胞培地に変換後の培養1週間後及び2週間後における骨芽細胞の出現をアルカリフォスファターゼ染色により確認した。結果を図3に示す。
健康人由来の皮膚線維芽細胞では骨芽細胞への誘導がほとんど起こらないのに対して、FOP患者由来皮膚線維芽細胞ではBMP−6存在下で効率よく骨芽細胞へ分化を誘導できることが確認された。
【0064】
(4)FOP患者由来皮膚維芽細胞を用いた骨分化制御物質のスクリーニング
維芽細胞を用いた上記の方法では、正常(健常人由来線維芽細胞)ではほとんど分化が誘導されないのに対して、FOP患者由来皮膚芽細胞は骨芽細胞への分化が容易に増強される。そこで上記方法に従い、FOP患者(F2)由来皮膚維芽細胞を用いた骨芽細胞への分化誘導における、ALK2キナーゼ阻害剤であるLDN−193189とドルソモルフィンの影響を確認した。LDN−193189、ドルソモルフィン、及びBMP−6の添加量は、それぞれ、200nM、1μM、及び50ng/mlである。iPS細胞培地に変換後の培養2週間後における骨芽細胞の出現をアルカリフォスファターゼ染色により確認した結果を図4に示す。LDN−193189又はドルソモルフィンを添加するとFOP由来皮膚線維芽細胞では優位に骨芽細胞への分化を抑制することができた。
同様にして、F206H変異FOP患者(F2)及びG356D変異FOP患者(F4)由来の皮膚維芽細胞を用いて、LDN−193189とドルソモルフィンの影響を確認した。LDN−193189、ドルソモルフィン及びBMP−6の添加量は上記と同様である。iPS細胞培地に変換後の培養2週間後における骨芽細胞の出現をアルカリフォスファターゼ染色により確認した結果を図5に示す。いずれの変異のFOP患者由来の皮膚維芽細胞においても、ALK2キナーゼ阻害剤(LDN−193189とドルソモルフィン)により、骨芽細胞への分化が抑制されることが確認された。
【0065】
(5)健常人及びFOP患者由来の皮膚維芽細胞に対する骨形成タンパク質の影響
上記材料及び方法に従い、センダイウイルス(SeV)法によって健常人(N1)及びFOP患者(F2)の皮膚由来の線維芽細胞に初期化遺伝子を導入し、BMP−4(10ng/ml添加)、BMP−6(50ng/ml添加)又はBMP−7(10ng/ml添加)の存在下及び非存在下で培養を行った。iPS細胞培地に変換後の培養1週間後及び2週間後におけるアルカリフォスファターゼ活性を測定した。アルカリフォスファターゼ活性は、ラボアッセイTMALP(和光純薬工業)を用いて、製造元の手順書に従って測定した。結果を図6に示す。
【0066】
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
FOP患者の皮膚由来の線維芽細胞に初期化遺伝子を導入した細胞を、BMP−6の存在下で培養することにより、細胞の骨分化を誘導できることが明らかになった。この骨分化誘導システムを用いて、比較的簡易なインビトロ(細胞レベル)でのスクリーニング系で、骨分化の制御(促進又は抑制)にかかわる分子をスクリーニングすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]