特許第6464546号(P6464546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464546
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】ゴマ加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20190128BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20190128BHJP
   A23L 25/00 20160101ALI20190128BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61P39/06
   A23L25/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-10148(P2015-10148)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132652(P2016-132652A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮介
(72)【発明者】
【氏名】二井 広平
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−299269(JP,A)
【文献】 特開2002−142789(JP,A)
【文献】 特開2003−342568(JP,A)
【文献】 特開平10−313812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A23L 25/00
A61P 39/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマ加工物の製造方法であって、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後、ペクチンを添加する工程を含み、カルシウムを添加することで生成する凝集物を回収することを特徴とする、ゴマ加工物の製造方法。
【請求項2】
さらに、アルコールを添加する工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記カルシウムがカルシウム塩である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ペクチンが低メトキシルペクチンである、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルコールがエタノールである、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマを原料とする加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴマ(Sesamum indicum)は、古くから食品素材として利用され、栄養成分、機能性成分を含む食品としてよく知られている。ゴマの機能性成分としては、オレイン酸やリノール酸等の脂肪酸やビタミンE、また、セサミンに代表されるゴマリグナンやアントシアニン等のポリフェノール、さらには、カルシウム、鉄、マンガン等のミネラルが、それぞれ知られている。
【0003】
ゴマを原料とした機能性成分に関する技術には、例えば、脱皮胡麻種子を原料とし、脱皮胡麻種子を抽出溶剤としてエタノールを用い且つその沸点以下の温度で操作する抽出処理に供し、次いでその抽出系から溶液分を分離して、抽出溶剤の含浸した中間処理物を得る工程及び前工程で得た中間処理物から室温〜120℃の温度で抽出溶剤を留去し、実質的に抽出溶剤を含有しない食品材料を得る工程を経て得られる食品材料であって、乾燥重量当たり、セサミノール3配糖体を0.3重量%以上且つ油分を3〜10重量%の割合で含有して成ることを特徴とする胡麻種子由来の食品材料(特許文献1)が開示されている。また、ゴマ種子に加湿ないし発芽処理を施すことにより該処理物中に新規リグナン配糖体を増加せしめ、前記処理物の粉砕物または脱脂粕を低級アルコールあるいは含水低級アルコールを用いて抽出し、ついで該抽出物から脂溶性物質および水溶性物質を除去することを特徴とする前記リグナン配糖体の製造法(特許文献2)が開示されている。また、濃度0.04mg/ml水溶液において500nmでのUV−VIS吸収値が約0.10から0.16のゴマ抽出物を含む組成物(特許文献3)等が開示されている。
【0004】
ゴマを起源とする種々の機能性組成物については、原料由来の特有の風味が残存することにより汎用性が損なわれるといった問題があった。また、従前の方法は、その工数が多く煩雑であるため、依然として、汎用性があり、かつ、安定して効率的に調製することができるゴマ由来の機能性を有する組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−234342号公報
【特許文献2】特開平8−325289号公報
【特許文献3】特表2011−529099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、原料由来の風味が残存していないゴマ由来の機能性を有する組成物を、安定して効率的に調製することができる、新規のゴマ加工物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ゴマ種子をアルカリ溶液で抽出した抽出液に、少なくともカルシウムを添加して処理することで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ゴマ種子をアルカリ溶液で抽出した抽出液に、カルシウムを添加して処理することにより、原料由来の風味が残存していないゴマ由来の抗酸化活性を有する加工物を、安定して効率的に調製することができる、新規のゴマ加工物の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明には、下記の態様が含まれる。
項(1)
ゴマ加工物の製造方法であって、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後、カルシウムを添加することで生成する凝集物を回収することを特徴とする、ゴマ加工物の製造方法。
項(2)
さらに、ペクチンを添加する工程を含む、項(1)に記載の製造方法。
項(3)
さらに、アルコールを添加する工程を含む、項(1)又は項(2)に記載の製造方法。
項(4)
前記カルシウムが可溶性カルシウム塩である、項(1)乃至項(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
項(5)
前記ペクチンが低メトキシルペクチンである、項(2)乃至項(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
項(6)
前記アルコールがエタノールである、項(3)乃至項(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然物であるゴマを原料としながらも、原料特有の風味をほとんど感じることのないゴマ由来の抗酸化活性を有する加工物を安定して効率的に製造することができる。本発明により得られるゴマ加工物は、抗酸化活性を有していることから、ゴマ由来の風味を懸念することなく各種飲食品や医薬部外品等に汎用的に用いることが可能となる。また、本発明により得られるゴマ加工物は、鮮やかで濃い黒色を有しており、各種飲食品や医薬部外品等に用いることで、黒い色調を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、原料のゴマ種子は、ゴマ(Sesamum indicum)の種子であって、一般的に食用に供されるものであれば、いわゆる黒ゴマ、金ゴマ又は白ゴマ等のいずれを用いてもよい。中でも、着色効果を求めるのであれば、黒ゴマを用いることが好ましい。原料であるゴマ種子は、単独種で用いても又は複数種を用いてもよい。また、生のままでも、さらに、煎り(炒り)ゴマ等の加熱処理したものでも用いることもできる。
【0012】
本発明において、原料のゴマ種子は、そのままの形状で用いてもよく、また、粉砕物として用いてもよい。
【0013】
本発明において、ゴマ種子の粉砕物は、原料のゴマ種子を細切処理又は粉砕処理した粉砕物であればよい。原料のゴマ種子を粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法を単独又は組み合わせて処理することができる。粉砕処理に用いる機器としては、例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられる。
【0014】
本発明において、原料のゴマ種子は、アルカリ性溶液を用いて抽出処理が行われる。当該抽出処理に用いるアルカリ性溶液のpHは、pH7以上であればよいが、好ましくはpH8以上、より好ましくはpH9〜pH13.5である。アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水等が挙げられる。
【0015】
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理する方法は、特に限定されず、公知の手段を単独又は組み合わせて抽出することができる。抽出方法としては、例えば、常温抽出、加熱抽出、加圧抽出、攪拌抽出、超音波抽出等が挙げられる。
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理する温度は、通常10℃〜150℃、好ましくは30℃〜140℃、より好ましくは50℃〜130℃である。
また、本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理する時間は、通常1分間〜12時間、好ましくは5分間〜6時間である。
【0016】
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理後の処理液は、抽出後そのまま又は固液分離して得られた液部として用いることができる。また、当該処理液は、その濃縮物を用いることができる。さらに、当該処理液は、適宜pH調整剤等の添加物を配合したり、中和処理等を行ったりして用いることができる。
【0017】
本発明においては、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液にカルシウムを添加して混合処理を行う。本発明において用いるカルシウムは、カルシウムを含むものであればいずれも用いることができる。例えば、塩化カルシウムや乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウムといった可溶性カルシウム塩、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウムといった不溶性カルシウム塩等が挙げられる。中でも、可溶性カルシウム塩を用いることが好ましい。また、カルシウムは、水溶液等として用いてもよい。
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液にカルシウムを添加する量は、通常、当該処理液のゴマ種子由来固形分100重量部に対して、カルシウムとして0.5重量部〜100重量部であって、好ましくは1重量部〜50重量部である。
【0018】
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液にカルシウムを添加して混合処理を行うことにより、凝集物が生成される。この凝集物を回収することにより、原料由来の風味が残存していない天然物由来の抗酸化活性を有するゴマ加工物をえることができる。
【0019】
本発明においては、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液にカルシウムを添加し混合する工程の他に、当該処理液にペクチンを添加して混合処理を行うか又は当該処理液にアルコールを添加して混合処理を行うか少なくとも一方を行うことができる。
【0020】
本発明において用いるペクチンは、通常食品に用いられるペクチンであればいずれでもよく、そのエステル化度(DE値)が50%以上である高メトキシルペクチン(HMペクチン)や同じくエステル化度(DE値)が50%未満である低メトキシルペクチン(LMペクチン)のいずれを用いてもよい。中でも、LMペクチンを用いることが好ましい。また、ペクチンは水溶液等として用いてもよい。
【0021】
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液に添加するペクチンの量は、通常、当該処理液のゴマ種子由来固形分100重量部に対して、ペクチンとして0.1重量部〜50重量部であって、好ましくは0.2重量部〜20重量部である。
【0022】
本発明において用いるアルコールは、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられるが、中でもエタノールが好ましい。また、これらアルコールは、水溶液等として用いることができる。
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理した後の処理液に添加するエタノールの量は、通常、当該処理液のゴマ種子由来固形分100重量部に対して、アルコールとして100重量部以上であって、好ましくは100重量部〜10000重量部、より好ましくは200重量部〜5000重量部である。
【0023】
本発明において、ゴマ種子をアルカリ性溶液で抽出処理後の処理液にカルシウムを添加し混合する工程の他に、当該処理液にペクチンを添加して混合処理を行うか又は当該処理液にアルコールを添加して混合処理を行うか少なくとも一方を行うことにより、より多くの凝集物が生成される。この凝集物を回収することにより、原料由来の風味が残存していない天然物由来の抗酸化活性を有するゴマ加工物を得ることができる。
【0024】
本発明において得られるゴマ加工物は、原料由来の風味が残存しておらず、そのままの形態でも利用可能であるが、さらに、該ゴマ加工物を乾燥して用いることもできる。乾燥は、いずれの方法を用いてもよいが、例えば、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、エアードライヤー等の公知の手段を用いることができる。また、デキストリン等の賦形剤を添加して乾燥物としてもよく、酵素処理等をした上で乾燥物としてもよい。さらに、これら乾燥物を粉砕後、粉末等として用いてもよく、必要に応じて造粒機等を用いて顆粒品とすることができる。
【0025】
本発明において得られるゴマ加工物は、原料由来の風味が残存しておらず、ほとんど呈味を感じないことから、水等で希釈して喫食できるほか、種々の加工食品、例えば、穀物加工品、大豆加工品、油脂加工品、食肉加工品、水産加工品、野菜・果実加工品、乳製品、菓子類、冷菓類、調味料、嗜好飲料、乳飲料、アルコール飲料、などの各種食品や飲料に適宜添加、配合して用いることもできる。さらに、本発明により得られるゴマ加工物は、鮮やかな濃い黒色を有していることから、これら各種食品や飲料に使用することで食品に好ましい黒い色調を与えることができる。また、必要に応じて、糖類、アミノ酸類、油脂類、塩類、甘味料、有機酸、乳化剤、増粘剤、栄養強化剤、色素、香料、保存料など、通常の飲料及び食品の原料として使用されているものと併用することもできる。
【0026】
また、本発明において得られるゴマ加工物は、医薬部外品や、特定保健用食品、機能性食品、栄養補助食品等に用いることができる。形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液剤、ゲル、気泡、等とすることができる他、各種食品中に配合することも可能である。これら組成物の調製に当たっては、賦形剤、結合剤、潤沢剤等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0028】
[調製1]
1%水酸化ナトリウム水溶液3000gに、黒いりごま(かどや製油株式会社製)1000gを加えて、90℃で30分間加熱抽出処理した(pH12.3)。次いで、不織布を用いて固液分離し、得られた液部を、塩酸を用いてpH6に中和することで、ゴマ抽出液1700g(ゴマ種子由来固形分:1.5%、調製1)を得た。
【0029】
[実施例1]
調製1で得られたゴマ抽出液50gに、20%塩化カルシウム水溶液2.5gを加えて5分間攪拌混合した後、ナイロンメッシュ(目開き75μm)を用いて固液分離し、得られた固形部を、105℃で2時間乾燥することにより、本発明によるゴマ加工物0.5g(実施例1)を得た。
【0030】
[実施例2]
調製1で得られたゴマ抽出液50gに、ペクチン(GENU(登録商標)LMペクチン LM−101AS−J、エステル化度35%、CP Kelco社製)を5%水溶液に調製したものを2.5g加えて5分間攪拌混合した。次いで、20%塩化カルシウム水溶液2.5gを加えて5分間攪拌混合した後、ナイロンメッシュ(目開き75μm)を用いて固液分離し、得られた固形部を、105℃で2時間乾燥することにより、本発明によるゴマ加工物0.5g(実施例2)を得た。
【0031】
[比較例1]
調製1で得られたゴマ抽出液50gを、105℃で2時間乾燥することにより、ゴマ抽出液の乾燥物1.5g(比較例1)を得た。
【0032】
[比較例2]
調製1で得られたゴマ抽出液50gに、ペクチン(GENU(登録商標)LMペクチン LM−101AS−J、エステル化度35%、CP Kelco社製)を5%水溶液に調製したものを2.5g加えて5分間攪拌混合した後、ナイロンメッシュ(目開き75μm)を用いて固液分離し、得られた固形部を、105℃で2時間乾燥することにより、ゴマ抽出液のペクチン処理分離乾燥物0.2g(比較例2)を得た。
【0033】
[対比試験1]
実施例1及び実施例2で得られた本発明によるゴマ加工物、比較例1で得られたゴマ抽出液の乾燥物及び比較例2で得られたゴマ抽出物のペクチン処理分離乾燥物をそれぞれ検体として、SOD Assay Kit−WST(株式会社同仁化学研究所製)を用いてSOD様活性を測定した。試薬及び検体の調製並びに測定は、本キットの操作方法に従って行った。具体的には、純水にて適宜希釈した各検体を用い、発色試薬であるテトラゾリウム塩WST−1の還元反応により生成するWST−1ホルマザンの極大吸収波長付近である450nmの吸光度を測定することで、各検体の前記還元反応に対する阻害率を求め、阻害曲線を作成した。さらに、還元の阻害率50%を示す検体溶液20μlに含まれるSODを1単位(U:ユニット)として、前記阻害曲線より阻害率50%が得られる時の希釈率を求めることで、検体1gあたりのユニット数を算出した。結果を表1に示す。
また、各検体20mgをそれぞれ1%水酸化ナトリウム水溶液100mlに溶解した後、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長350nm、波長450nm及び波長550nmにおける吸光度を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1に示すとおり、実施例1及び実施例2で得られた本発明によるゴマ加工物のSOD様活性は、比較例1で得られたゴマ抽出液の乾燥物及び比較例2で得られたゴマ抽出物のペクチン処理分離乾燥物のいずれと比較しても顕著に高い値を示した。
また、表2に示すとおり、実施例2で得られた本発明によるゴマ加工物の水酸化ナトリウム水溶液における吸光度(350nm、450nm、550nm)は、比較例1で得られたゴマ抽出液の乾燥物及び比較例2で得られたゴマ抽出物のペクチン処理分離乾燥物のいずれと比較しても高く、黒色色調の色価が顕著に強かった。
【0037】
[調製2]
水1350gに、黒いりごま(かどや製油株式会社製)450g、48%水酸化ナトリウム水溶液42gを加えて混合した後、121℃で15分間加熱抽出処理した(pH13.0)。40℃まで冷却した後、塩酸を用いてpH6に中和処理を行った上で200メッシュのふるい(JIS Z 8801−1:2006準拠の標準ふるい:公称目開き75μm)を用いて固液分離し液部を回収することで、ゴマ抽出液1120g(ゴマ種子由来固形分:7.6%、調製2)を得た。
【0038】
[実施例3]
調製2で得られたゴマ抽出液20gに、20%塩化カルシウム水溶液1gを加えて5分間攪拌混合した後、95%(v/v)エタノール20gを加えて5分間攪拌混合した。次いで、遠心分離(遠心加速度:2000×G、5分間)を行い固形部を回収し、さらに該固形部を凍結乾燥することにより、本発明によるゴマ加工物0.4g(実施例3)を得た。
【0039】
[実施例4]
調製2で得られたゴマ抽出液20gに、ペクチン(GENU(登録商標)LMペクチン LM−101AS−J、エステル化度35%、CP Kelco社製)を1%水溶液に調製したものを1g加えて5分間攪拌混合した。さらに、20%塩化カルシウム水溶液1gを加えて5分間攪拌混合した後、95%(v/v)エタノール20gを加えて5分間攪拌混合した。次いで、遠心分離(遠心加速度:2000×G、5分間)を行い固形部を回収し、さらに該固形部を凍結乾燥することにより、本発明によるゴマ加工物0.6g(実施例4)を得た。
【0040】
[比較例3]
調製2で得られたゴマ抽出液20gに、95%(v/v)エタノール20gを加えて5分間混合した。次いで、遠心分離(遠心加速度:2000×G、5分間)を行い固形部を回収し、さらに該固形部を凍結乾燥することにより、ゴマ抽出物のエタノール処理乾燥物0.6g(比較例3)を得た。
【0041】
[比較例4]
調製2で得られたゴマ抽出液20gに、ペクチン(GENU(登録商標)LMペクチン LM−101AS−J、エステル化度35%、CP Kelco社製)を1%水溶液に調製したものを1g加えて5分間攪拌混合した後、95%(v/v)エタノール20gを加えて5分間攪拌混合した。次いで、遠心分離(遠心加速度:2000×G、5分間)を行い固形部を回収し、さらに該固形部を凍結乾燥することにより、ゴマ抽出物のペクチン及びエタノール処理乾燥物0.2g(比較例4)を得た。
【0042】
[対比試験2]
実施例3及び実施例4で得られた本発明によるゴマ加工物、比較例3で得られたゴマ抽出物のエタノール処理乾燥物及び比較例4で得られたゴマ抽出処理物のペクチン及びエタノール処理乾燥物をそれぞれ検体として、DPPHラジカル消去活性を下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
また、各検体20mgをそれぞれ1%水酸化ナトリウム水溶液100mlに溶解した後、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長350nm、波長450nm及び波長550nmにおける吸光度を測定した。結果を表4に示す。
【0043】
<DPPHラジカル消去活性の測定方法>
DPPHラジカル消去活性の測定は、参考文献(篠原ら編、食品機能研究法、光琳、2000年、p.218)を参照し、以下の通り測定した。
80%(w/v)エタノールにて適宜希釈した各検体50μLに、200mMの2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(200mM、pH6.0)50μL、20%エタノール50μL及び400μMの1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)エタノール溶液50μLの混合液を添加して混和し、さらに20分間静置した後、マイクロプレートリーダーを用いて520nmにおける吸光度を測定した。
0〜200μMのα−トコフェロール(和光純薬工業株式会社製)について同様の操作を行うことで検量線を作成し、得られた検量線をもとに、各検体1gあたりのラジカル消去活性をα−トコフェロール相当量(濃度)として算出した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
表3に示すとおり、実施例3及び実施例4で得られた本発明によるゴマ加工物のDPPHラジカル消去活性は、比較例3のゴマ抽出物のエタノール処理乾燥物及び比較例4のゴマ抽出物のペクチン及びエタノール処理乾燥物のいずれと比較しても顕著に高い値を示した。
また、表4に示すとおり、実施例3及び実施例4で得られた本発明によるゴマ加工物の水酸化ナトリウム水溶液における吸光度(350nm、450nm、550nm)は、比較例3のゴマ抽出物のエタノール処理乾燥物及び比較例4のゴマ抽出物のペクチン及びエタノール処理乾燥物のいずれと比較しても高く、黒色色調の色価が顕著に強かった。