(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464547
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】車両用制動装置及び、緊急制動システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20190128BHJP
B60T 8/172 20060101ALI20190128BHJP
B60T 8/1763 20060101ALI20190128BHJP
B60T 1/14 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B60T8/172 B
B60T8/1763
B60T1/14
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553339(P2016-553339)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公表番号】特表2017-508657(P2017-508657A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】SE2015050247
(87)【国際公開番号】WO2015137863
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】14158729.5
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518238850
【氏名又は名称】ヴィオニア スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】サンダー、ウルリッチ
(72)【発明者】
【氏名】スベンソン、クリスティアン
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−175350(JP,A)
【文献】
特開2002−211377(JP,A)
【文献】
特開2004−161112(JP,A)
【文献】
特開2007−196892(JP,A)
【文献】
米国特許第04896749(US,A)
【文献】
特表2009−501101(JP,A)
【文献】
特開平01−262238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 8/172
B60T 8/1763
B60T 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常走行時に地面(4)に接触する車輪(2,3)を有する車両(1)に搭載される車両用制動装置(39)において、
緊急ブレーキ制御ユニット(12)と;前記車両の車輪(2,3)とは別に独立して動作する非可逆制動手段(7)を含む第1の緊急制動システム(6)と;少なくとも1つの加速度検出器(35)と;車輪ブレーキアンチロックシステム(13a,13b)とを含み、
前記緊急ブレーキ制御ユニット(12)は、前記車輪ブレーキアンチロックシステム(13a,13b)がアクティブの時に前記加速度検出器(35)からの車両加速度データ(a)を入力し、重力加速度(g)で割った前記加速度データ(a)として、前記車輪(2,3)と前記地面(4)との間の摩擦係数(μ)を算出するように構成され、
前記緊急ブレーキ制御ユニット(12)は、前記摩擦係数μを含む第1のパラメータに基づく判定によって、通常の制動及び/またはステアリング操作によって事故の回避が不可の場合に、前記第1の緊急制動システム(6)をアクティブ化することを特徴とする、車両用制動装置(39)。
【請求項2】
前記車両用制動装置(39)が、前記車輪ブレーキアンチロックシステム(13a,13b)がアクティブに維持されるように、制動を自動で実行するように構成されている、第2の緊急制動システム(34)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記第2の緊急制動システム(34)がブレーキアシストシステムで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記緊急ブレーキ制御ユニット(12)は、前記第2の緊急制動システム(6)が、第2の複数のパラメータに依存してアクティブ化されるべきか否かを判定するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記車両用制動装置(39)が、前記車両(1)の外部環境の少なくとも一部を走査するために構成されたセンサ(14,15)を備え、前記緊急ブレーキ制御ユニット(12)は、前記センサ(14,15)からのデータを入力するように構成され、前記データは前記パラメータに含まれていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
【請求項6】
前記第1の緊急制動システム(6)が、静止位置から制動位置に下降するように構成された制動板(7)を備え、
前記制動板(7)は、周方向に走りかつ前記制動位置で前記地面(4)と少なくとも部分的に接触する密封リム(9)を備え、これにより、少なくとも部分的に囲まれたボリューム(10)が、前記制動板(7)と、前記密封リム(9)と、前記地面(4)との間に形成されるように構成され、
前記制動位置において、前記少なくとも部分的に囲まれた前記ボリューム(10)外の空気と前記少なくとも部分的に囲まれた前記ボリューム(10)内の空気との間で与えられる圧力差によって、前記制動板(7)が前記地面(4)に押し付けられるように、圧力が前記ボリューム(10)内で低減され、これにより、前記制動板(7)と前記地面(4)との間の保持力が得られることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用制動装置(39)を備えた車両(1)。
【請求項8】
車両(1)に非可逆制動手段(7)を有する第1の緊急制動システム(6)を制御する方法であって、前記車両は、通常走行時に地面(4)に接触する車輪(2,3)を有し、前記第1の緊急制動システム(6)は、アクティブな状態では、前記車両の車輪(2,3)から独立して作動する、当該方法において、
(36)車輪ブレーキアンチロックシステム(13a,13b)の使用中に車両加速度データ(a)を入力するステップと、
(37)重力加速度(g)で前記加速度データ(a)を割ることにより、前記車輪(2,3)と前記地面(4)との間の摩擦係数(μ)を算出するステップと、
(38)前記摩擦係数μを用いた判定によって、通常の制動及び/またはステアリング操作によって事故を回避可能か否かを判定するステップと、
回避不可の場合に、前記第1の緊急制動システム(6)をアクティブ化するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記方法が、前記車輪ブレーキアンチロックシステム(13a,13b)がアクティブに維持されるように、制動を自動で実行するための第2の緊急制動システム(34)を使用するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
前記車両(1)の外部環境の少なくとも一部に関するデータを入力するステップと、
前記入力されたデータを使用して、物体との衝突の可能性があるかどうかを評価するステップと、
緊急制動システム(6,34)がアクティブ化されるべきか否かを判定するための前記評価を使用するステップとを含むことを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常走行時に地面に接触するように適合されている車輪を備えた車両のための車両用制動装置に関する。車両用制動装置は、緊急ブレーキ制御ユニット、車両の車輪と独立して作動するように構成された非可逆制動手段を備えた第1の緊急制動システム、少なくとも1つの加速度検出器、および車輪ブレーキアンチロックシステムを含む。
【0002】
本発明はまた、車両に非可逆制動手段を有する第1の緊急制動システムがアクティブ化されるべきか否かを判定するための方法に関する。車両は、通常走行時に地面に接触するように適合されている車輪を有する。第1の緊急制動システムは、アクティブ化されると、車両の車輪と独立して作動する。
【背景技術】
【0003】
混雑した交通状況において、例えば、衝突の可能性がある状況で、路面グリップが失われたとき、補助制動装置によって、強化された制動効果を得ることが望まれる。このような補助制動装置の一例が、欧州特許第2311695号明細書に記載されており、ここでは、制動マットが、チャンバ内の少なくとも1つのエアバッグによって路面に押し付けられる。
【0004】
別の例が、米国特許第8356685号明細書に開示されており、ここでは、制動板を下降させことができる。制動板は、下降すると、制動板の真空チャンバ内の低減された圧力により路面に押し付けられる。
【0005】
ただし、そのような補助制動装置は可逆的ではなく、交通状況に影響を与え、増大した減速による増加した力に車両内の人員をさらすため、補助制動装置をアクティブ化するか否か、およびいつアクティブ化するかに関する、正しい判定に到達することが重要である。欧州特許第2311695号明細書には、例えば、ABS(アンチロック制動システム)がアクティブ化されているか否かが検出されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2311695号
【特許文献2】米国特許第8356685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、車両の車輪と独立して作動する非可逆制動手段がいつアクティブ化されるべきかを判定する、改善された緊急制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、通常走行時に地面に接触するように適合されている車輪を備えた車両のための車両用制動装置によって実現される。車両用制動装置は、緊急ブレーキ制御ユニット、車両の車輪と独立して作動するように構成された非可逆制動手段を備えた第1の緊急制動システム、少なくとも1つの加速度検出器、および車輪ブレーキアンチロックシステムを含む。
【0009】
緊急ブレーキ制御ユニットは、車輪ブレーキアンチロックシステムがアクティブ化されると前記加速度検出器から車両加速度データを入力するように、および車輪と地面との間の摩擦係数を算出するように構成されている。摩擦係数は、重力加速度で割った加速度データとして算出される。緊急ブレーキ制御ユニットは、第1の緊急制動システムが、第1の複数のパラメータに依存してアクティブ化されるべきか否かを判定するように構成され、これらのパラメータの1つが前記摩擦係数である。
【0010】
前記目的はまた、車両に非可逆制動手段を有する第1の緊急制動システムがアクティブ化されるべきか否かを判定するための方法によって実現される。車両は、通常走行時に地面に接触するように適合されている車輪を有する。第1の緊急制動システムは、アクティブ化されると、車両の車輪と独立して作動する。
【0011】
方法は、
車輪ブレーキアンチロックシステムの使用中に車両加速度データを入力するステップと、
重力加速度で前記加速度データを割ることにより、車輪と地面との間の摩擦係数を算出するステップと、
第1の緊急制動システムがアクティブ化されるべきか否かを判定するときに、前記摩擦係数を使用するステップと
を含む。
【0012】
一例によれば、車両用制動装置は、第2の緊急制動システム、例えばブレーキアシストシステムを備え、これは、車輪ブレーキアンチロックシステムがアクティブに維持されるように、制動を自動で実行するように構成されている。
【0013】
別の例によれば、緊急ブレーキ制御ユニットは、第2の緊急制動システムが、第2の複数のパラメータに依存してアクティブ化されるべきか否かを判定するように構成されている。
【0014】
別の例によれば、第1の緊急制動システムは、静止位置から制動位置に下降されるように構成された制動板を備えている。制動板は密封リムを備え、少なくとも部分的に囲まれたボリュームが、制動板と、密封リムと、地面との間に形成されるように、この密封リムは、周方向に走りかつ制動位置で地面と少なくとも部分的に接触するように構成されている。制動位置において、制動板が、少なくとも部分的に囲まれたボリューム外の空気と少なくとも部分的に囲まれたボリューム内の空気との間で与えられる圧力差によって地面に押し付けられるように、圧力がボリューム内で低減される。このようにして、制動板と地面との間の保持力が得られる。
【0015】
他の例は、従属請求項から明らかである。
【0016】
いくつかの利点は、本発明の手段によって得られる。主に、車両の車輪と独立して作動する非可逆制動手段がいつアクティブ化されるべきかについての向上した判定が、提供される。
【0017】
ここで、本発明を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】制動位置に第1の緊急制動装置を備えた車両の概略側面図である。
【
図4】緊急制動処理の一例のフローチャートである。
【
図5】本発明による方法のためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、車両1の側面図が示されており、車両1は、通常走行時に地面4に接触している車輪2,3を備えている。ここでは、車両1は順方向Fに走行しているものとする。車両1の後部で、底床5に取り付けられて、第1の緊急制動システム6が構成され、その静止位置に示されている。第1の緊急制動システム6は、例えば衝突を回避するために必要であると判定された場合に、下降するように構成された制動板7を備え、この制動板7は、リンク装置8によって、車両1に接続されている。車両1は、第1の緊急制動システム6を制御するように構成されている緊急ブレーキ制御ユニット12を備えている。
【0020】
図2では、制動位置に制動板7を有する第1の緊急制動システム6が、示されて、
図3では、制動板7を有する第1の緊急制動システム6は、下から見た斜視図で示される。制動位置において、制動板7は、制動板7の周方向に走っている密封リム9が地面4と接触するように急速に変位している。制動板7が制動位置にあるときに、少なくとも部分的に囲まれたボリューム10は、制動板7と、密封リム9と、地面4との間に形成される。
【0021】
制動板7が、ボリューム10外の空気とボリューム10内の空気との間で与えられる圧力差によって地面4に押し付けられるように、圧力がボリューム10内で低減され、これにより、制動板7と地面4との間の保持力が得られる。多くの方法で圧力が低減され得、この例では、制動板7に取り付けられた低圧力容器11が存在する。
【0022】
第1の緊急制動システム6は、非可逆的であり、これは、アクティブ化されたときに、容易に除去したり無効にしたりすることができないことを意味するが、第1の緊急制動システム6がアクティブ化されたときに、いわゆる「リンプホーム」機能で、車両を自宅や仕事場に走らせることができる必要がある。また、第1の緊急制動システム6は、非常に効率的であり、アクティブ化されると、当該車両1における乗員は、比較的高い減速にさらされる。したがって、第1の緊急制動システム6が高精度でいつアクティブ化されるべきかを判定することが望ましい。
【0023】
車両は、ABS(アンチロック制動システム)13a,13bをさらに備えている。ABS13a,13bがアクティブで動作しているとき、車輪2,3は、地面4との付着性を制限されている。
【0024】
可能なシナリオにおいては、緊急ブレーキ制御ユニット12は、例えば、カメラ14やレーダ装置15から、入力データが提供される。これらの入力から、物体との衝突の可能性があるかどうかを、緊急ブレーキ制御ユニット12が評価する。物体との衝突の可能性がある場合、通常の制動および/またはステアリングによる回避の可能性が評価される。通常の制動とステアリングによる回避が可能である限り、緊急ブレーキ制御ユニット12は、さらなる動作を実行しない。このとき、ABS13a,13bは、運転者によってアクティブ化されてもよい。
【0025】
ただし、通常の制動とステアリングによる回避がもはや可能でない場合、緊急ブレーキ制御ユニットは、少なくとも1つの車輪に作用する第2の緊急制動システム34を起動することができ、この例では、ABS13a,13bがアクティブに維持されるようなレベルで制動を維持するブレーキアシストシステムである。
【0026】
本発明によれば、その時点の加速度aが、少なくとも1つの加速度検出器35によって検出され、測定され、そして、ABS13a,13bがアクティブである場合、緊急ブレーキ制御ユニット12は、前記加速度検出器35からの車両加速度データを入力するように構成されている。前記加速度検出器35は、車両に備えられ、緊急ブレーキ制御ユニット12に接続されている。
【0027】
緊急ブレーキ制御ユニット12は、9.81m/s
2〜9.82m/s
2である重力加速度gで割った加速度aとして、車輪2,3と地面4との間の摩擦係数μを算出するようにさらに構成されている。また、計算式を、垂直力で割ったいわゆるKammscher circle(力のサークル)における最大の力xおよびyを用いて表すことができる。
【0028】
ABS13a,13bがアクティブで動作し、車輪2,3が地面4との付着性を制限されるという事実は、その瞬間の重力加速度gで割った加速度aが、その時点の摩擦係数μの非常に良好な近似値であることを意味している。
【0029】
衝突の可能性に関する他のセンサ入力を伴って、その時点の摩擦係数μを取得したことにより、緊急ブレーキ制御ユニット12は、車輪2,3だけの制動で、可能なステアリング回避動作と共に衝突を回避するのに十分であるかどうかの可能性を判定することができる。
【0030】
緊急ブレーキ制御ユニット12が、車輪2,3だけの制動で、取得したその時点の摩擦係数μに基づいて、可能なステアリング回避動作と共に衝突を回避するのに十分であると判定するのであれば、さらなる動作は実行されず、第2の緊急制動システム34は、アクティブに維持される。
【0031】
緊急ブレーキ制御ユニットが、衝突の危険性がある閾値を下回ったことを判定したとすると、第2の緊急制動システム34は、非アクティブ化され、車両1の完全な制御が運転者に戻される可能性がある。
【0032】
緊急ブレーキ制御ユニットが、車輪だけの制動で、取得したその時点の摩擦係数μに基づいて、可能なステアリング回避動作を伴って衝突を回避するのに十分であると判定するのであれば、第1の緊急制動システムがアクティブ化され、この例では、これは、制動板が下降すること、および、ボリューム内の圧力が、上述のように保持力を提供するように低減されることを意味する。
【0033】
上記を、
図4のフローチャートを参照した処理としてより詳細に以下に説明する。フローチャートは、緊急ブレーキ制御ユニット12で処理される。
【0034】
前記レーダ14やカメラ15などのセンサからのセンサ入力16は、それぞれ、モーション推定18とオブジェクト分類17のために使用され、可能なオブジェクトのモーション推定18は、前記センサ14,15によって検出される。車両の他のシステムからのCAN(コントロールエリアネットワーク)入力19は、自車両1のモーション推定のために使用される。他のセンサ入力の例は、GPS(全地球測位システム)を介した警告、据え付けの路側センサまたは他の車両内のセンサからの警告である。一般に、センサ14,15は、車両1の外部環境の少なくとも一部を走査するために構成される。
【0035】
取得された入力から、衝突コースが存在するか否かに関する第1の判定21が、実行される必要がある。Noの場合、処理は、モーション推定18に戻される。Yesの場合、処理は、快適性回避(CA)22と物理的回避(PA)23の2つに分岐される。
【0036】
快適性回避は、当該オブジェクトが、車両1の物理的な範囲から離れて特定の距離を走る特定の快適性範囲外に保持されることを意味する。物理的回避は、当該オブジェクトが、車両1の物理的な範囲外に保持されることを意味する。
【0037】
快適性回避の分岐では、制動および/またはステアリングによる快適性回避が可能であるか否かに関する第2の判定24が実行される。Noの場合、処理は、物理的回避の分岐に移動され、制動および/またはステアリングによる物理的回避が可能であるか否かに関する第3の判定30が実行される。第2の判定24でYesの場合、警告25が運転者に出力される。
【0038】
次に、運転者が制動をかけるか否かに関する第4の判定26が実行される。Noの場合、処理は、物理的回避の分岐に移動され、制動および/またはステアリングによる物理的回避が可能であるか否かに関する第3の判定30が実行される。第4の判定26でYesの場合、ABS13a,13bがアクティブ化されているか否かに関する第5の判定27が実行される。Noの場合、処理は、物理的回避の分岐に移動され、制動および/またはステアリングによる物理的回避が可能であるか否かに関する第3の判定30が実行される。第5の判定27でYesの場合、摩擦係数μ(COF)が、上記のように、加速度aを測定し、摩擦係数μを算出することによって取得される28。
【0039】
次に、取得した摩擦係数μは、快適性回避の分岐22と物理的回避の分岐23に入力される29。物理的回避の分岐で、制動および/またはステアリングによる物理的回避が可能であるか否かに関する第3の判定30が実行される。Yesの場合、処理は、モーション推定18に戻され、つまり快適性回避は十分である。第3の判定30でNoの場合、摩擦係数μが事前に取得されていたか否か、すなわち摩擦係数μが第3の判定30で使用されていたか否かに関する第6の判定31が実行される。
【0040】
Yesの場合、その時点の摩擦係数μを考慮して、物理的回避は不可能であると判定され、その後、第1の緊急制動システム6がアクティブ化される。第6の判定31でNoの場合、ABS13a,13bがアクティブに維持されるようなレベルで制動を維持しながら、第2の緊急制動システム(EBS)34がアクティブ化される。次に、上記のように加速度aを測定し、摩擦係数μを算出し、その後、快適性回避の分岐22と物理的回避の分岐23に取得した摩擦係数μを入力する29ことによって、摩擦係数μを取得する28ことができる。
【0041】
おそらく、制動および/またはステアリングによる物理的回避がこの段階では不可能であるため、第3の判定30は第6の判定31につながり、そして、摩擦係数μが第3の判定30で取得され使用されていたため、第1の緊急制動システム(EBS)6がアクティブ化される。
【0042】
制動および/またはステアリングによる物理的回避が第3の判定30で可能であると見なされれば、処理は、モーション推定18に戻され、つまり快適性回避は十分である。
【0043】
第1の緊急制動システム6は、記載された種類のものである必要はないが、一般に、車両の車輪2,3と独立して作動する、任意のタイプの非可逆制動手段によって構成され得る、および/または任意のタイプの非可逆制動手段を備え得る。例としては、車両の下で移動可能、または拡張可能なビームであってもよく、これにより、地面4に移動したとき、または地面に向かって拡張したときに、地面に対して圧力が印加され、ビームと地面との間の摩擦μにより制動機能が実行される。
【0044】
第2の緊急制動システム34は、例えばブレーキアシストシステムの形式で、ABS13a,13bがアクティブに維持されるように、制動を自動で実行することによって動作する任意の適切な種類のものである。
【0045】
図5を参照すると、本発明は、車両1に非可逆制動手段7を有する第1の緊急制動システム6がアクティブ化されるべきか否かを判定するための方法に関するものであり、ここで、車両は、通常の走行方法の間に地面4に接触するように適合されている車輪2,3を有する。方法は、以下のステップ:
−36:車輪ブレーキアンチロックシステム13a,13bの使用中に車両加速度データaを入力するステップと、
−37:重力加速度gで前記加速度データaを割ることにより、車輪2,3と地面4との間の摩擦係数μを算出するステップと、
−38:第1の緊急制動システム6がアクティブ化されるべきか否かを判定するときに、前記摩擦係数μを使用するステップとを含む。
【0046】
本発明は上記例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で自由に変形することが可能である。緊急ブレーキ制御ユニット12に接続されている第2の緊急制動システム34が示されているが、車輪ブレーキやABS13a,13bに直接接続されていてもよい。
【0047】
ABSは、単なる例であり、任意のタイプの車輪ブレーキアンチロックシステムを使用することができる。
【0048】
第2の緊急制動システム34は、本発明のために必要不可欠ではなく、摩擦係数μを取得するために、ABSがアクティブ化されることのみを必要としている。ただし、アクティブ化されるとき、第2の緊急制動システム34は、摩擦係数μを加速度測定から算出できるように、ABSがアクティブ化されることを確実にする。
【0049】
緊急ブレーキ制御ユニット12は、1つまたは複数のユニットによって構成されていてもよい。
【0050】
一般的に、緊急ブレーキ制御ユニット12は、第1の緊急制動システム6が、第1の複数のパラメータに依存してアクティブ化されるべきか否かを判定するように構成され、これらのパラメータの1つが前記摩擦係数μである。緊急ブレーキ制御ユニット12は、第2の緊急制動システム6が、第2の複数のパラメータに依存してアクティブ化されるべきか否かを判定するようにさらに構成されている。第1の複数のパラメータおよび第2の複数のパラメータのうちの、1つの、多くの、またはすべてのパラメータは、同じパラメータ(複数可)で構成されていてもよい。第1の複数のパラメータおよび第2の複数のパラメータのうちの少なくとも1つに含まれるパラメータの一例は、カメラ14やレーダ装置15のようなセンサからの入力データで構成されていてもよい。
【0051】
図1および
図2に示すように、制動および/または緊急制動に関与するような上述されている構成要素はすべて、車両用制動装置39に含まれる。これらの構成要素の例は、緊急ブレーキ制御ユニット12、第1の緊急制動システム6、前記加速度検出器35、車輪ブレーキアンチロックシステム13a,13b、第2の緊急制動システム34、および車両1の外部環境の少なくとも一部を走査するために構成されるセンサ14,15である。