特許第6464597号(P6464597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464597
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの加硫装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/04 20060101AFI20190128BHJP
   B29C 35/04 20060101ALI20190128BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
   B29C33/04
   B29C35/04
   B29L30:00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-154896(P2014-154896)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30422(P2016-30422A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】北井 宏尚
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−201206(JP,A)
【文献】 特開2006−021420(JP,A)
【文献】 特開昭57−087348(JP,A)
【文献】 特開昭57−185134(JP,A)
【文献】 特開昭57−087349(JP,A)
【文献】 特開平02−147207(JP,A)
【文献】 特開2010−110970(JP,A)
【文献】 特開昭61−037405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/04
B29C 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の加硫ブラダと、この加硫ブラダを上下に挿通するセンターポストと、このセンターポストに支持されて前記加硫ブラダの上下端部をそれぞれ保持する上側クランプ保持部および下側クランプ保持部と、前記センターポストの外周側の位置で、かつ、前記上側クランプ保持部および前記下側クランプ保持部の外周縁部よりも前記センターポスト側の位置に配置された注入口とを備え、グリーンタイヤを加硫する際の前記上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間が100mm以下であり、前記注入口から液体の媒体を前記上下すき間の前記上側クランプ保持部および前記下側クランプ保持部の外周縁部の周方向全長に延在している領域を通じて前記加硫ブラダの内部に注入してこの加硫ブラダを膨張および加熱させることにより、タイヤモールドの内部に横置き状態で配置されたグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫装置であって、
前記下側クランプ保持部の上面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜していて、前記下側クランプ保持部の外周面に、前記媒体を前記加硫ブラダの内部から外部に排出させる排出口が前記上下すき間よりも下方位置に配置されて形成されていることを特徴とする空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項2】
前記上側クランプ保持部の下面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜している請求項1に記載の空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項3】
前記上側クランプ保持部の下面または前記下側クランプ保持部の上面に、前記注入口から注入された前記媒体を、平面視で前記センターポストを中心にして旋回させる向きにガイドするガイド体が形成されている請求項1または2に記載の空気入りタイヤの加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの加硫装置に関し、さらに詳しくは、加硫ブラダの上下端部を保持する上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間が狭い場合に、簡易な構成でありながら加硫ブラダの上下温度差を効果的に小さくできる空気入りタイヤの加硫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のORタイヤなどの大型タイヤを加硫する際には、高圧および高温の温水を加硫ブラダの内部に注入、充填してグリーンタイヤを加硫する温水加硫が用いられている。温水加硫によれば、スチーム加硫に比べて温度設定範囲が広く、また、圧力を高くすることができるためである。また、温水は単位体積当たりのエネルギー密度が高いので、相対的に肉厚になる大型タイヤの加硫には適している。
【0003】
温水加硫の場合は加硫ブラダ内壁に接触した温水が熱を奪われて温度が低下する。これに伴って密度が高くなり、冷水塊として下方に移動して、ほぼ同じ温度の高さで留まる。そのため、加硫ブラダ内部では上下温度差が生じ、これに伴い、グリーンタイヤに接する加硫ブラダの外表面にも温度差が生じる。このようにして加硫ブラダの上下温度差が過大になると、加硫したタイヤの加硫程度が上下で大きく異なることになり、品質にばらつきが生じる。それ故、加硫ブラダの上下温度差を極力小さくすることが重要である。
【0004】
加硫ブラダの上下温度差を小さくするための加硫方法、加硫装置は種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、加硫ブラダ内部に攪拌羽根を設置した加硫機が提案されている。この加硫機では、攪拌羽根を回転させることにより、加硫ブラダ内部のスチームと窒素ガスとが攪拌混合されて加硫ブラダの上下温度差を小さくすることができる。しかしながら、この提案では、加硫ブラダ内部に攪拌羽根を新設しなければならない。これに伴って加硫設備が複雑になるという問題がある。加硫設備が複雑になると設備故障が発生し易くなるため、簡素な設備にすることが好ましい。
【0005】
特許文献2では、注入口および排出口を備え、センターポストの外周側の位置に配置されるハブ部に、ガイド部材を外嵌する構造が提案されている。このガイド部材には、注入口に接続されるノズルが形成されていて、このノズルを通じて加熱媒体や加圧媒体を加硫ブラダに注入する。
【0006】
ところで、ORタイヤなどの大型タイヤはビード部が太径になるので、加硫ブラダの上下端部を保持する上下のクランプ保持部どうしの上下すき間が狭くなる場合がある。このような場合には、特許文献1、2で提案されている構造はスペースの問題から採用することが難しく、採用しても加硫ブラダの上下温度差を十分に縮小させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−29035号公報
【特許文献2】特開昭61−37405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加硫ブラダの上下端部を保持する上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間が狭い場合に、簡易な構成でありながら加硫ブラダの上下温度差を効果的に小さくできる空気入りタイヤの加硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの加硫装置は、筒状の加硫ブラダと、この加硫ブラダを上下に挿通するセンターポストと、このセンターポストに支持されて前記加硫ブラダの上下端部をそれぞれ保持する上側クランプ保持部および下側クランプ保持部と、前記センターポストの外周側の位置で、かつ、前記上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の外周縁部よりも前記センターポスト側の位置に配置された注入口とを備え、グリーンタイヤを加硫する際の前記上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間が100mm以下であり、前記注入口から液体の媒体を前記上下すき間の前記上側クランプ保持部および前記下側クランプ保持部の外周縁部の周方向全長に延在している領域を通じて前記加硫ブラダの内部に注入してこの加硫ブラダを膨張および加熱させることにより、タイヤモールドの内部に横置き状態で配置されたグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫装置であって、前記下側クランプ保持部の上面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜していて、前記下側クランプ保持部の外周面に、前記媒体を前記加硫ブラダの内部から外部に排出させる排出口が前記上下すき間よりも下方位置に配置されて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グリーンタイヤを加硫する際の上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間が100mm以下の加硫装置でありながら、下側クランプ保持部の上面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜しているので、注入口から注入される媒体は、下側クランプ保持部の上面に沿って上向きで加硫ブラダの内部に流入する。これにより、加硫ブラダの内部では媒体が上下に循環し易くなる。そのため、簡易な構成でありながらも加硫ブラダの上下温度差を効果的に小さくできる。
【0011】
ここで、前記上側クランプ保持部の下面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜している仕様にすることもできる。この仕様によれば、注入口から注入される媒体は、上側クランプ保持部の下面に沿って上向きで加硫ブラダの内部に流入するので、加硫ブラダの内部では、媒体がより確実に上下に循環し易くなる。それ故、加硫ブラダの上下温度差を小さくするには一段と効果的である。
【0012】
前記上側クランプ保持部の下面または前記下側クランプ保持部の上面に、前記注入口から注入された媒体を、平面視で前記センターポストを中心にして旋回させる向きにガイドするガイド体が形成されている仕様にすることもできる。この仕様によれば、上側クランプ保持部および下側クランプ保持部の上下すき間を通じて加硫ブラダの内部に流入する媒体が、加硫ブラダの内部でセンターポストを中心にして旋回流を生じさせる。これにより、加硫ブラダの内部で媒体の循環が活発になり、加硫ブラダの上下温度差を小さくするには益々効果的になる。
【0013】
前記下側クランプ保持部の外周面に、前記媒体を前記加硫ブラダの内部から外部に排出させる排出口が形成されている仕様にすることで、排出口を別途設けることなく、不要になった媒体をこの排出口を通じて加硫ブラダの内部から外部に排出させることができる。しかも、この排出口は加硫ブラダの下端部側に形成されているので、媒体を加硫ブラダの内部に残留させずに排出するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の空気入りタイヤの加硫装置の全体概要を縦断面視で例示する説明図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図1の下側クランプ保持部の上面を平面視で例示する説明図である。
図4】加硫ブラダの内部の旋回流を平面視で例示する説明図である。
図5】加硫ブラダの内部の媒体を排出している状態を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の空気入りタイヤの加硫装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1図3に例示する本発明の空気入りタイヤの加硫装置1(以下、加硫装置1という)は、ゴム製の筒状の加硫ブラダ2を有している。加硫ブラダ2の上端開口部の周辺の上側クランプ部3a、下端開口部の周辺の下側クランプ部3bはそれぞれ、中心機構4を構成するセンターポスト4aに取り付けられた円盤状の上側クランプ保持部5a、下側クランプ保持部5bにより保持されている。
【0017】
センターポスト4aの外周側の位置には、注入口6が配置されている。注入口6は、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの外周縁部よりもセンターポスト4a側の位置に配置されている。この実施形態では、4つの注入口6が下側クランプ保持部5bの上面に開口し、周方向の等間隔に配置されている。注入口6は1つでもよいが、複数設けることが好ましい。注入口6は、加硫装置1から下方に延びる注入ライン6Lに接続されている。注入ライン6Lを通じて供給された液体の媒体M(高温高圧の温水)が注入口6から加硫ブラダ2の内部に注入される。
【0018】
この実施形態では、下側クランプ保持部5bの外周面に、排出口7が形成されている。排出口7は、加硫装置1から下方に延びる排出ライン7Lに接続されている。加硫ブラダ2の内部の不要になった媒体Mは、排出口7からは排出ライン7Lを通じて加硫ブラダ2の外部に排出される。排出口7は複数設けることが好ましく、また、できるだけ低い位置に配置することが好ましい。排出口7は、別の位置に形成することもできる。
【0019】
この加硫装置1は、グリーンタイヤGを加硫する際の上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの上下すき間Sが100mm以下であり、通常の加硫装置に比して上下すき間Sが非常に小さくなっている。上下すき間Sの下限値は、例えば50mm程度である。大型ORタイヤ等を製造するためのグリーンタイヤGの場合は、ビード部が非常に太径になるため、この上下すき間Sがこのように過小になることがある。
【0020】
下側クランプ保持部5bの上面の外周縁部は、外周側に向かって上方に傾斜している(傾斜部SLを有している)。この実施形態では、上側クランプ保持部5aの下面の外周縁部も外周側に向かって上方に傾斜している。したがって、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの外周縁部では、縦断面視で外周側に向かって上方に傾斜した略一定厚さの流路が形成されている。本発明では、少なくとも、下側クランプ保持部5bの上面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜していればよい。
【0021】
傾斜部SLは、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの外周縁から内周側に例えば、20mm〜150mmの位置にまで形成される。即ち、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bにおける傾斜部SLの半径方向長さは、例えば20mm〜150mm程度である。傾斜部SLの水平に対する傾斜角度Aは例えば5°以上50°以下である。上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bに傾斜部SLを設ける場合は、互いの傾斜部SLの傾斜角度Aを同じに設定することが好ましい。
【0022】
下側クランプ保持部5bの上面には、注入口6から注入された媒体Mを、平面視でセンターポスト4aを中心にして旋回させる向きにガイドするガイド体8が形成されている。この実施形態ではガイド体8が、下側クランプ保持部5bの上面から上方に突出する突起になっている。即ち、ガイド体8が、平面視でセンターポスト4aを中心にして周方向に均等配置されて、センターポスト4aから外周側に向かって湾曲した複数本の突起により構成されている。
【0023】
ガイド体8を設けることは任意である。このガイド体8は、上側クランプ保持部5aの下面にも設けることもできる。或いは、下側クランプ保持部5bの上面および上側クランプ保持部5aの下面の両方に設けることができる。また、ガイド体8は突起に限らず、下側クランプ保持部5bの上面や上側クランプ保持部5aの下面に形成した溝をガイド体8として採用することもできる。
【0024】
本発明の加硫装置1を用いてグリーンタイヤGを加硫するには、まず、グリーンタイヤGをモールド9の内部に横置き状態で配置する。この実施形態では、モールド9は周方向に複数に分割された環状のセクタ9aと、上側に配置される環状のサイドプレート9b、下側に配置される環状のサイドプレート9cで構成されている。加硫ブラダ2はグリーンタイヤGの内側に挿入され、モールド9を閉型した状態にする。
【0025】
次いで、注入ライン6Lを通じて供給した媒体Mを、注入口6から注入する。この時、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの上下すき間Sは100mm以下になっている。注入口6から注入した媒体Mは、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの上下すき間Sを通って加硫ブラダ2の内部に流入する。
【0026】
注入した媒体Mによって加硫ブラダ2は、膨張および加熱されてグリーンタイヤGの内周面を押圧する。継続的に媒体を加硫ブラダ2の内部に注入しつつ、適宜の量の媒体Mを排出口7から排出ライン7Lを通じて加硫ブラダ2の外部に排出する。これに伴い、グリーンタイヤGは、モールド9に押圧されつつ加熱されて、予め設定された時間で加硫される。排出口7は、加硫ブラダ2の下端部側に形成されているので、相対的に低温になった媒体Mを効率よく加硫ブラダ2の外部に排出させるには有利になっている。
【0027】
本発明では、下側クランプ保持部5bの上面の外周縁部が外周側に向かって上方に傾斜しているので図1図2に例示するように、媒体Mは下側クランプ保持部5bの上面に沿って上向きで加硫ブラダ2の内部に流入する。これに伴い、加硫ブラダ2の内部では媒体Mが上下に循環する水流が生じて媒体Mが上下に循環し易くなる。そのため、加硫ブラダ2の上下温度差を効果的に小さくすることが可能になっている。ひいては、加硫したタイヤの加硫程度のばらつきが上下で小さくなるので、タイヤ品質の向上にもつながる。
【0028】
この実施形態では、上側クランプ保持部5aの下面の外周縁部も外周側に向かって上方に傾斜しているので、媒体Mは上側クランプ保持部5aの下面に沿って上向きで加硫ブラダ2の内部に流入する。そのため、加硫ブラダ2の内部では、媒体Mがより確実に上下に循環し易くなるので、加硫ブラダ2の上下温度差を小さくするには一段と効果的である。
【0029】
さらに、この実施形態では、上述したガイド体8が設けられているので、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの上下すき間Sを通じて加硫ブラダ2の内部に流入する媒体Mが、加硫ブラダ2の内部において、図4に例示するように平面視でセンターポスト4aを中心にして旋回流を生じさせる。これにより、加硫ブラダ2の内部では、媒体Mの旋回流と上下循環流とが生じて、媒体Mの循環が活発になるので、加硫ブラダ2の上下温度差を小さくするには益々効果的になっている。
【0030】
傾斜部SLを、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの外周縁から内周側に20mm〜150mmの位置にまで形成すると、加硫ブラダ2の上下温度差を小さくするには、より効果的である。また、加硫ブラダ2の上下温度差を小さくするために効果的な傾斜部SLの水平に対する傾斜角度Aは、5°以上50°以下、より好ましくは15°以上45°以下である。
【0031】
ガイド体8により生じさせる旋回流は、半径方向に対して10°〜50°程度の角度で交差するようにするとよい。このような旋回角度の旋回流が生じると、加硫ブラダ2の内部での媒体Mの循環がより活発になり、加硫ブラダ2の上下温度差を小さくするには有利になる。
【0032】
予め設定された加硫時間が経過した後は、図5に例示するように、加硫ブラダ2の内部に存在している媒体Mを排出口7から排出ライン7Lを通じて加硫ブラダ2の外部に排出する。この実施形態では、排出口7が加硫ブラダ2の下端部側に形成されているので、媒体Mを加硫ブラダ2の内部に残留させずに排出するには有利になっている。
【0033】
排出口7の開口総面積は、例えば、下側クランプ保持部5bの外周面の総面積の5%以上50%以下にすると、優れた排出効果を有しつつ、下側クランプ保持部5bの強度を過度に低下させることもない。
【0034】
次いで、上側のサイドプレート9bを上方移動させ、それぞれのセクタ9aを拡径方向に移動させてモールド9を開型する。次いで、加硫したタイヤを上方移動させて収縮した加硫ブラダ2から抜き出して加硫装置1から取り出す。
【0035】
上記のとおり、本発明の加硫装置1では、下側クランプ保持部5b(および上側クランプ保持部5a)を巧みに細工することで、簡易な構成でありながら、上側クランプ保持部5aおよび下側クランプ保持部5bの上下すき間Sが狭い場合にも、加硫ブラダ2の上下温度差を効果的に小さくすることを可能にしている。
【符号の説明】
【0036】
1 加硫装置
2 加硫ブラダ
3a 上側クランプ部
3b 下側クランプ部
4 中心機構
4a センターポスト
5a 上側クランプ保持部
5b 下側クランプ保持部
6 注入口
6L 注入ライン
7 排出口
7L 排出ライン
8 ガイド体
9(9a、9b、9c) タイヤモールド
G グリーンタイヤ
S すき間
SL 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5