(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークに形成されたワーク孔の内周面に接着剤、シール剤等の塗布物を塗布するために、塗布装置を用いて塗布を行っている。
【0003】
特許文献1においては、押し込み操作で吐出される定量の内容物(本発明の塗布物に相当)の吐出動作を、少量ずつゆっくり吐出させる吐出ポンプが開示されている。この吐出ポンプは、ポンプ本体に、吐出された内容物を貯留させる予備室を有するノズルヘッドを組付けて構成されている。予備室にスプリングの弾性力を付与すると共に、予備室からノズル口までの流路部分に流量規制機能を付与している。予備室のスプリングの弾性力と流路部分の流量規制機能により、ポンプ本体から吐出された内容物を、一定して少量ずつゆっくりと吐出する。
【0004】
この吐出ポンプを作動させると、一定量の内容物が吐出側弁を押し上げて予備室内に吐出される。予備室内の内容物は、吐出口から流量規制を受けつつ流路部分を通って少量ずつノズル口から吐出される。残りの内容物は、予備室内の吐出ピストンをスプリングの弾性力に逆らって押し上げることにより、予備室内に残留する。ポンプ本体は、内容物の予備室への吐出動作が終了すると、吐出側弁が閉じてポンプ本体とノズルヘッド側とが遮断される。しかし、この状態になっても、予備室内に残留した内容物には吐出ピストンを介してスプリングの弾性力が印加されているので、吐出ピストンにより流量規制を受けつつ流路部分を通ってノズル口から、一定して少量ずつゆっくりと吐出される。
【0005】
特許文献2においては、流動性材料(本発明の塗布物に相当)の非塗布時に、流動性材料が塗布装置外に垂れ落ちることを防止することが可能な塗布装置が開示されている。該塗布装置においては、回転可能に支持され、かつ、流動性材料を噴出するノズル孔が形成されたロータを備え、ノズル孔がワーク孔に進入した状態でロータを回転させることによりワーク孔の内周面に流動性材料を塗布する。また、該塗布装置においては、ノズル孔の周囲を囲む姿勢及びノズル孔の周囲を囲まない姿勢(ノズル孔を露出させる姿勢)の間で移動可能に支持されたカバー部材をさらに備えている。該カバー部材は、ロータがワーク孔に進入したときにノズル孔を露出させる姿勢になり、ロータがワーク孔から退出したときにノズル孔形成箇所の周囲を囲む姿勢になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の吐出ポンプにおいては、ポンプ作動と同時に内容物がノズル口から吐出するため、ワーク孔の内周面に塗布する場合においては、ノズルヘッドをワーク孔の所定位置にセットする前に内容物の吐出が起こり、所望の箇所以外の箇所に内容物が付着するおそれがあった。また、ノズルヘッドにはワーク孔に対する位置決めができないので、ワーク孔のワーク表面からの一定の距離の箇所に内容物を塗布できないおそれがあった。
【0008】
特許文献2の塗布装置においては、流動性材料を塗布するためには、ノズルを回転駆動させるモータ等の回転装置や流動性材料をノズル孔に供給するポンプ、流動性材料の量を制御する制御装置が必要になり、設備が複雑化、専用化されてしまう。そのため、この塗布装置を市販の容器に取付けて使用することが困難になるおそれがある。また、ロータの回転による遠心力で流動性材料を塗布するので、流動性材料が飛び散った場合には、本来塗布されてはならない箇所にも流動性材料が付着するおそれがあった。
【0009】
上記問題に鑑み、本発明は、簡単な構造で所望の箇所に一定量の塗布物を塗布することができると共に、市販の容器に取付けて使用可能な定量塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る定量塗布装置の特徴構成は、塗布物が流通する第1流通孔と、前記第1流通孔を流通した塗布物が充填される充填室と、前記充填室から外方に向けて形成された貫通孔とを有するノズルと、前記ノズルと共通の軸心を有し、前記充填室内を摺動する第1摺動部と、前記第1流通孔内を摺動する第2摺動部と、塗布物が流通する第2流通孔と、前記第1流通孔と前記第2流通孔とを連通させる連通部と、塗布物が収容された容器の開口を塞ぐように取付ける接続部とを有するピストンと、を備え、
前記容器内の塗布物が前記開口から前記第2流通孔と前記連通部と前記第1流通孔とを介して前記充填室に一定量充填された後、
前記ピストンに印加された力によって前記ピストンが前記軸心に沿う方向に一定量移動することにより前記第1摺動部が前記充填室に進入して前記充填室の塗布物に圧力が印加され、前記貫通孔から前記ノズルの外周面に一定量の塗布物が漏出する点にある。
【0011】
このような特徴構成とすれば、一定量の塗布物が充填室に充填された後、ピストンが一定量だけ移動することにより塗布物が貫通孔からノズルの外周面に漏出する。このとき、塗布物は、充填室に進入した第1摺動部の体積に相当する量だけ漏出する。これにより、ノズルの外径よりやや大きい内径を有するワークのワーク孔にノズルを挿入した状態で、塗布物をノズルの外周面に漏出させると、一定量の塗布物をワーク孔の内周面に確実に塗布することができる。
【0012】
本発明に係る定量塗布装置においては、前記ノズルは、先端に前記充填室に塗布物が充填されたか否かを目視により確認することができる確認機構を有すると好適である。
【0013】
充填室に塗布物が完全に充填されていないときは、充填室には空気が残存している。この状態でピストンを一定量移動させても、空気が残存しているので、充填室に進入した第1摺動部の体積に相当する量の塗布物がノズルの外周面に漏出せず、一定量の塗布物をワーク孔の内周面に塗布することができない。しかし、このような構成とすれば、塗布物が充填室に完全に充填されたか否かを塗布前に目視により確認することができるので、ワーク孔の内周面に一定量の塗布物を確実に塗布することができる。
【0014】
本発明に係る定量塗布装置においては、前記第2摺動部の外周面は、前記第1流通孔の内周面から離間した部分を有すると好適である。
【0015】
このような構成であれば、第2摺動部の外周面と第1流通孔の内周面との接触面積が小さくなるので、第2摺動部が第1流通孔の内部を摺動するときの摩擦力を下げることができるので、より少しの力でピストンを移動させて塗布物を塗布することができる。
【0016】
本発明に係る定量塗布装置においては、前記貫通孔を覆って塗布物の漏出を防ぐノズルカバーを前記ノズルの外側にさらに備えると好適である。
【0017】
このような構成であれば、意図しない力がピストンに印加された場合でも、貫通孔がノズルカバーに覆われているので、塗布物がノズルの外周面に漏出することはない。また、塗布物が嫌気性の場合、ノズルカバーにより塗布物が外気に触れるのを防ぐことにより、塗布物の硬化を防止することができる。
【0018】
本発明に係る定量塗布装置においては、前記ノズルと前記ノズルカバーとの間に亘って設けられ、前記軸心に沿って前記貫通孔を覆う方向に前記ノズルカバーを付勢する第1付勢部材と、前記ノズルと前記ピストンとの間に亘って設けられ、前記軸心に沿って前記第1摺動部が前記充填室から退出する方向に前記ピストンを付勢する第2付勢部材と、をさらに備え、前記第1付勢部材の付勢力は前記第2付勢部材の付勢力よりも小さいと好適である。
【0019】
このような構成であれば、通常状態においては、ノズルカバーが貫通孔を覆っているので、塗布物が貫通孔を通ってノズルの外周面に漏出することはない。また、第1付勢部材の付勢力が第2付勢部材の付勢力よりも小さいので、ノズルカバーが移動して貫通孔が露出した状態になって初めてピストンが移動する。これにより、ノズルカバーを使用していても、その存在を意識することなく、ワーク孔の内周面に一定量の塗布物を塗布することができる。
【0020】
本発明に係る定量塗布装置においては、前記ノズルから前記ピストンに亘って延在し、前記ピストンに外側に嵌合されて前記ピストンと一体となって移動するガイド部をさらに備え、前記ガイド部は前記ノズルに設けられたフランジに当接して前記ピストンが前記充填室から退出する方向の移動を規制する第1規制部を有し、前記ピストンは前記フランジに当接して前記第2摺動部が前記充填室に進入する方向の移動を規制する第2規制部を有することにより、前記ピストンの前記ノズルに対する移動量を規定しており、前記ガイド部は前記ピストンとの嵌合長さを変化させることにより、前記移動量を変化させることができると好適である。
【0021】
ピストンのノズルに対する移動量を変化させると、充填室に進入する第1摺動部の体積が変化するので、ノズルの外周面に漏出する塗布物の量を変化させることができる。これにより、ワーク孔や塗布物の種類に応じて最適な量の塗布物を塗布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.定量塗布装置の構造
以下、本発明に係る定量塗布装置の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る定量塗布装置1の構造を表す縦断面図である。
図1に示すように、定量塗布装置1は、ノズル100、ピストン200、ノズルカバー300、ガイド部400を備えて構成される。以後、本実施形態の説明における「右」と「左」は
図1の定量塗布装置1の状態に基づいて使用するものとする。
【0024】
〔ノズル〕
ノズル100は、アルミ等の金属からなり、有底の円筒形状を有している。ノズル100は4種類の外径と3種類の内径を有している。ノズル100は、右から左に向かって第1部分110、第2部分120、第3部分130、第4部分140を有しており、この順に外径は小さくなっている。第1部分110、第2部分120、第3部分130、第4部分140は共通の軸心Xを有している。なお、第1部分110はフランジの一例である。
【0025】
内部空間は第1部分110の側が開口しており、右から左に向かって大径孔150、小径孔155、充填室160が形成されており、この順に内径は小さくなる。大径孔150、小径孔155、充填室160は軸心Xに対して同軸心である。なお、内部空間のうち、大径孔150と小径孔155とを合わせた空間が第1流通孔の一例である。大径孔150は第1部分110から第2部分120にかけて形成され、小径孔155は第2部分120から第3部分130にかけて形成され、充填室160は第3部分130から第4部分140にかけて形成されている。
【0026】
第4部分140の先端(左端)近傍には、充填室160から軸心Xに垂直で且つ径方向に沿う貫通孔162が、周方向に沿って均等間隔で3ヶ所に開けられている。この貫通孔162を通って充填室160に充填された塗布物20が第4部分140の外周面に漏出する。塗布物20は、例えば、接着剤やシール剤等、貫通孔162を通って外部に漏出可能なものであればその種類は問わない。また、貫通孔162は、漏出させるものの粘度により孔径を変化させてもよい。貫通孔162の数も3個に限るものではなく、2個以下でもよいし、4個以上であってもよい。
【0027】
第4部分140の先端には確認機構170が設けられている。確認機構170は、確認孔171と、第3付勢部材172と、確認部材173と、Eリング178とを備えている。確認孔171は、充填室160から軸心Xと同軸心に開けられた貫通孔である。確認部材173は棒状部174と、棒状部174の端部に棒状部174と一体的に形成された円板状の鍔部175を有している。
【0028】
確認機構170は、確認孔171に第3付勢部材172を介して確認部材173の棒状部174を挿通し、第4部分140の外側で該棒状部174に確認孔171の内径より大きい外径を有するEリング178を嵌め込んだものである。確認部材173の鍔部175の外径は充填室160の内径より少し小さく、棒状部174の外径は確認孔171の内径より少し小さいので、確認部材173は軸心Xの方向に滑らかに移動可能である。
【0029】
図1に示すように、確認部材173に塗布物20の圧力がかかっていない状態では、第3付勢部材172の付勢力により、確認部材173は右方に変位しており、Eリング178が第4部分140に当接した状態となっている。なお、本実施形態においては、第3付勢部材172としてコイルバネを用いたが、後述するように、確認部材173のストロークはわずかでいいので、コイルバネの代わりに波バネや皿バネを用いてもよい。
【0030】
〔ピストン〕
ピストン200は第1部品210と第2部品250とからなる。第1部品210は、第1摺動部215と第2摺動部220とを有する。第1摺動部215は充填室160の内径よりわずかに小さい外径を有し、充填室160内を滑らかに摺動する。第1摺動部215の一方の先端にはテーパ235が形成されている。第1摺動部215の先端は少なくともその一部が充填室160内に入り込んでおり、テーパ235が小径孔155と充填室160との境界部分に位置している。これにより、
図1の状態で、塗布物20はテーパ235と充填室160の内周面との間の空隙を通って流通し、充填室160に充填される(
図4参照)。
【0031】
第2摺動部220は、第1摺動部215の他方の先端に形成された板状の部分である。
図2に示すように、第2摺動部220は、大径孔150の内径よりわずかに小さい外径の円の外周から4ヶ所が切り落とされた角丸の四角形状を有している。このように、円の外周の一部を切り落とすことにより、大径孔150の内周面と第2摺動部220の外周面との間に離間した部分が形成されることになるので、第2摺動部220の外周面と大径孔150の内周面との接触面積が小さくなり、第2摺動部220が軸心Xの方向に移動するときの大径孔150の内周面との間の摩擦力を下げることができる。
【0032】
第2摺動部220の第1摺動部215が延在する側と反対側の面は中央部に凹部230が形成されている。また、第2摺動部220には、4ヶ所の長円状の連通部225が軸心Xに沿って貫通形成されている。本実施形態においては、連通部225は長円状であるが、円形その他の形状であってもよい。また、連通部225は第2摺動部220の中で閉じた孔状ではなく、第2摺動部220の外周と繋がって開口した形状であってもよい。
【0033】
第2部品250は外径の大きいキャップ部255と外径の小さい第3摺動部260が軸心Xに沿って同軸心に積層された形状を有する。第3摺動部260の外径は、ノズル100の大径孔150の内径よりわずかに小さくなっており、その先端は第1部品210の第2摺動部220に当接している。当該先端近傍には外周に沿って溝が形成され、環状シール290が取り付けられている。これにより、ノズル100内の塗布物20が第3摺動部260の外周を伝って漏出するのを防止している。
【0034】
キャップ部255と第3摺動部260との境界には第2規制部285が形成されている。第2規制部285の詳細については後述する。
【0035】
キャップ部255の中央には接続孔265が形成されており、第3摺動部260には接続孔265と繋がり且つ接続孔265より小径の第2流通孔270が形成されている。接続孔265の内周面には、後述する容器40の開口を塞ぐように取り付けるための雌ねじ部275が形成されている。また、キャップ部255の第3摺動部260寄りの外周面には、後述するガイド部400を取り付けるための雄ねじ部280が形成されている。なお、雌ねじ部275は接続部の一例である。
【0036】
なお、本実施形態においては、ピストン200は第1部品210と第2部品250の二部品から構成されているが、必ずしもこれだけに限られるものではない。第1部品210と第2部品250とが一体化された一部品で構成されていてもよい。
【0037】
〔ガイド部〕
ノズル100から第2部品250のキャップ部255に亘って円筒形状のガイド部400が取り付けられている。ガイド部400のノズル100側の端部には、ノズル100の第1部分110と第2部分120の境界面112に当接可能に内方に延在する環状の第1規制部410を有する。第1規制部410の内径は第2部分120の外径よりもわずかに大きい。
【0038】
ガイド部400のキャップ部255側の内周面には雌ねじ部420が形成されており、キャップ部255の雄ねじ部280と螺合している。また、雌ねじ部420の端部寄りには、径方向に貫通する雌ねじが形成されている。該雌ねじには、先端が雄ねじ部280に当接するように貫通したボルト430が取り付けられている。これにより、雌ねじ部420と雄ねじ部280の螺合の緩みを防止して、ピストン200とガイド部400とが一体となって移動するように構成されている。ガイド部400の内周面、ピストン200の第2規制部285と第3摺動部260の外周面、ノズル100の端面114により、空間440が形成されている。空間440の軸心Xに沿う方向の長さ、すなわち、第2規制部285と端面114との距離が、ピストン200のストローク長になる。
【0039】
小径孔155の底面から第2摺動部220に亘って第2付勢部材550が取り付けられている。第2付勢部材550はノズル100に対してピストン200を右方に付勢する。ピストン200は、ガイド部400の第1規制部410とノズル100の境界面112とが当接した状態で係止している。
【0040】
〔ノズルカバー〕
ノズル100の第3部分130から第4部分140に亘って円筒形状のノズルカバー300が取り付けられている。ノズルカバー300の外径は一定で、内径は大径の第1孔310と第1孔310と繋がった小径の第2孔320の2種類である。第1孔310の内径は第3部分130の外径よりわずかに大きく、第2孔320の内径は第4部分140の外径よりわずかに大きい。これにより、ノズルカバー300は、ノズル100に対して軸心Xの方向に沿って滑らかに移動可能である。
【0041】
ノズルカバー300には、第1孔310の内周面から外方に向かって貫通し、軸心Xに沿う方向に延在する長円孔330が形成されている。ノズルカバー300は、長円孔330を貫通し第3部分130に形成された雌ねじ132に螺合されたボルト340によりノズル100に取り付けられている。ノズルカバー300は、ボルト340に対する長円孔330の相対位置が変化する範囲で、軸心Xの方向に沿って移動可能である。
【0042】
ノズルカバー300から第2部分120と第3部分130との境界面に亘って第1付勢部材500が取り付けられている。第1付勢部材500はノズル100に対してノズルカバー300を左方に付勢する。ノズルカバー300は、ボルト340と長円孔330の右側の縁が当接した状態で係止している。このとき、貫通孔162は、第2孔320の内周面により覆われて塞がれている。なお、第1付勢部材500の付勢力は第2付勢部材550の付勢力よりも小さい。
【0043】
ノズルカバー300を有していれば、意図しない力がピストン200に印加された場合でも、貫通孔162がノズルカバー300に覆われているので、塗布物20がノズル100の第4部分140の外周面に漏出することはない。また、塗布物20が嫌気性の場合、ノズルカバー300により塗布物20が外気に触れるのを防ぐことにより、塗布物20の硬化を防止することができる。
【0044】
2.定量塗布装置の動作
次に、定量塗布装置1の動作について説明する。
図3に示すように、定量塗布装置1は、塗布物20が充填された容器40の開口に形成された雄ねじ(不図示)に雌ねじ部275が螺合されて取り付けられている。このとき、定量塗布装置1の内部には塗布物20は流入しておらず、定量塗布装置1の各構成要素の位置は
図1の状態と同じである。すなわち、第2付勢部材550の付勢力により、第1部品210の第1摺動部215は充填室160からほぼ退出した状態になっていると共に、ガイド部400の第1規制部410とノズル100の境界面112が当接するまでピストン200は右方へ移動している。また、ノズルカバー300は、第1付勢部材500の付勢力によりボルト340が長円孔330の右側の縁に当接しており、貫通孔162を覆って塞いでいる。さらに、確認機構170においては、第3付勢部材172の付勢力により、確認部材173が右方に変位し、Eリング178が第4部分140に当接した状態となっている。以後、この状態を初期状態と称する。
【0045】
初期状態から、容器40に圧力をかけると、充填された塗布物20が容器40から定量塗布装置1の第2流通孔270に向けて吐出される。吐出された塗布物20は、ピストン200の第2流通孔270、連通部225、大径孔150、小径孔155を通り、充填室160に充填される(
図4参照)。このとき、第1部品210の第2摺動部220には塗布物20による圧力が作用するが、第2付勢部材550の付勢力の方が塗布物20の圧力よりも大きいためピストン200は初期状態の位置から変化していない。その他の構成要素は外力を受けていないので、いずれの構成要素も初期状態の位置から変化していない。
【0046】
図4に示す充填室160の左端まで塗布物20が到達した状態から、さらに容器40に圧力をかけると、鍔部175に塗布物20の圧力が作用する。塗布物20の圧力が第3付勢部材172の付勢力を上回ると、確認部材173は付勢力に抗してわずかに左方に動く。この確認部材173の左方へのわずかな動きを目視で確認することにより、塗布物20が充填室160に充填されたことを確認することができる。
【0047】
なお、本実施形態の確認機構170は必ずしも必要はなく、その場合は、確認孔171も設ける必要はない。塗布物20が充填室160に充填されると容器40から塗布物20をさらに吐出させるために必要な圧力が大きくなる。従って、この圧力を検出することにより、塗布物20が充填室160に充填されたか否かを確認することができる。
【0048】
次に、容器40を把持して、
図5に示すように、第4部分140の先端をワーク60のワーク孔62に挿入し、ノズルカバー300の左方の端面をワーク60の表面に当接させる。ワーク孔62の内径は、第4部分140の外径よりもやや大きい。そしてそのまま容器40を左方に押圧すると、押圧力が第1付勢部材500の付勢力を上回り、ノズルカバー300を除いて定量塗布装置1は左方に移動する。このとき、ノズルカバー300はワーク60の表面に当接した状態を維持し、容器40に印加された押圧力は第2付勢部材550の付勢力よりも小さいため、第2付勢部材550は初期状態を維持する。これにより、
図6に示すように、ボルト340が長円孔330の左側の縁に当接するまでノズルカバー300に対して第4部分140が左方に移動し、第4部分140はノズルカバー300の端面から突出し、貫通孔162はノズルカバー300から露出して、ワーク孔62の内周部64に対向する。
【0049】
次に、さらに容器40を左方に押圧すると、
図7に示すように、押圧力が第2付勢部材550の付勢力を上回り、ピストン200がノズル100に対して左方に移動する。ピストン200が左方に移動すると、第1摺動部215が充填室160内を進入し、塗布物20は第1摺動部215により圧力が印加される。これにより、充填室160内へ進入した第1摺動部215の体積に相当する量の塗布物20は貫通孔162を通って第4部分140の外周に押し出され、ワーク孔62の内周部64に塗布される。このとき、前述のように、大径孔150の内周面と第2摺動部220の外周面との間には離間した部分があるので、より小さい押圧力でピストン200を移動させることができる。
【0050】
ピストン200は、第2部品250の第2規制部285がノズル100の端面114に当接するまで左方に移動してそこで停止する。これにより、第1摺動部215の左方への移動も停止する。このとき、第2摺動部220は大径孔150と小径孔155との境界の面には当接しない。その後、容器40に印加した左方への押圧力を低下させていくと、第2付勢部材550、第1付勢部材500の順で初期状態に戻り、
図5に示す状態に戻る。
ただし、このときは、充填室160には塗布物20はほとんど残存していない。この状態で容器40を把持して第4部分140をワーク孔62から退出させる。
【0051】
本実施形態の定量塗布装置1によれば、塗布物20が充填室160に一定量充填され、ピストン200が一定量移動することにより、一定量の塗布物20が充填室160から第4部分140の外周面に押し出されてワーク孔62の内周面に塗布物20を塗布することができる。このように、簡単な構造で一定量の塗布物20をワーク孔62の内周面に塗布することができる。
【0052】
本実施形態の定量塗布装置1は第1付勢部材500と第2付勢部材550を有しているので、初期状態においては、ノズルカバー300が貫通孔162を覆っており、塗布物20が貫通孔162を通って第4部分140の外周面に漏出することはない。また、第1付勢部材500の付勢力は第2付勢部材550の付勢力よりも小さいので、ノズルカバー300が移動して貫通孔162が露出してワーク孔62の所望の位置に到達した後に、初めてピストン200が移動可能となる。これにより、ノズルカバー300を使用していても、その存在を意識することなく、ワーク孔62の内周面に一定量の塗布物20を塗布することができる。
【0053】
ピストン200の雄ねじ部280とガイド部400の雌ねじ部420との噛み合い長さを変化させると初期状態における第2規制部285と端面114との距離、すなわち、ピストン200のストローク長が変化するので、第1摺動部215の充填室160への進入長さを変化させることができる。これにより塗布物20の塗布量を変化させることができる。従って、ワーク孔62や塗布物20の種類に応じて最適な量の塗布物20を塗布することができる。なお、噛み合い長さは嵌合長さの一例である。
【0054】
また、ノズルカバー300の長円孔330の軸心Xに沿う方向の長さや位置を変化させることにより第4部分140のノズルカバー300からの突出量を変化させることができ、貫通孔162のワーク60の表面からの距離を変化させることができる。この場合、長円孔330の長さや位置を変えた各別のノズルカバー300を準備してもよいが、1個のノズルカバー300に長さや位置を変えた複数の長円孔330を設けてもよい。もちろん、ノズル100の貫通孔162の位置を変えてもよいが、この場合は、各別のノズル100を準備する必要がある。