(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るシリカ濃度測定装置について説明する。
【0017】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るシリカ濃度測定装置1の全体構成を示す。シリカ濃度測定装置1は、モリブデンイエロー法(モリブデン黄吸光光度法)により検査水W1のシリカ濃度を測定する装置である。
図1に示すように、測定セル2と、試薬注入部3と、吸光度測定部の一部を構成する光学検出部4と、攪拌部5と、表示部6と、温度測定部の一部を構成する温度検出部7と、制御部10と、検査水導入ラインL1と、検査水排出ラインL2と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0018】
測定セル2は、シリカ濃度を測定する検査水W1を収容する容器である。測定セル2は、不透明の樹脂材料により形成されている。測定セル2は、その側壁に一対の光透過窓21,22を備える。光透過窓21,22には、透明な板材211,221が嵌め込まれている。
【0019】
検査水導入ラインL1は、測定セル2への検査水W1の導入を行うラインである。検査水導入ラインL1は、
図1に示すように、測定セル2の光透過窓21,22よりも下方の側壁に接続されている。検査水導入ラインL1は、測定セル2へ検査水W1を導入する流路である。検査水導入ラインL1には、電磁弁23が設けられている。電磁弁23は、検査水W1を採取する際に用いられる弁である。電磁弁23の開閉は、制御部10から出力される駆動信号により制御される。
【0020】
検査水排出ラインL2は、測定セル2からの検査水W1(試薬W2を含む)の排出を行うラインである。検査水排出ラインL2は、
図1に示すように、測定セル2の光透過窓21,22よりも上方の側壁に接続されている。検査水排出ラインL2は、測定セル2から検査水W1を排出する流路である。
【0021】
試薬注入部3は、測定セル2の内部へ試薬W2を注入する設備である。試薬注入部3は、試薬W2を内部に保持しており、所望の量の試薬W2を測定セル2の内部に吐出して供給する。試薬W2には、検査水W1に含まれるシリカと反応して、発色する呈色物質が配合されている。本実施形態では、モリブデンイエロー法によりシリカ濃度を測定しており、試薬としては、七モリブデン酸六アンモニウムおよび無機酸を含む水溶液を用いる。本実施形態に好適な一液型の試薬水溶液の組成は、本願の出願人による特許第5169809号公報に詳細に開示されているため、当該特許文献を引用して詳細な説明を省略する。
【0022】
試薬注入部3は、試薬カートリッジ31と、ローラポンプ機構32と、を備える。試薬カートリッジ31は、試薬W2(上述した一液型の試薬水溶液)が充填された試薬パック(不図示)と、試薬パックに一端側が接続され且つ他端にノズルを有する弾性チューブを備えた注入体(不図示)とが収納された容器である。
【0023】
ローラポンプ機構32は、
図1に示すように、測定セル2の上方に設けられている。ローラポンプ機構32の上部には、カートリッジ差込口33が設けられている。試薬カートリッジ31は、カートリッジ差込口33に着脱自在に装着される。
【0024】
ローラポンプ機構32は、ローラポンプ34を備える。ローラポンプ34を駆動して、試薬カートリッジ31に収納された注入体の弾性チューブをしごくことにより、試薬パック内の試薬W2をノズルから測定セル2の内部に向けて注入することができる。ローラポンプ34の駆動は、制御部10から出力される駆動信号により制御される。
【0025】
光学検出部4は、試薬W2と共に攪拌された検査水W1の吸光度を測定する設備である。光学検出部4は、
図1に示すように、発光素子41と、発光基板42と、受光素子43と、受光基板44と、を備える。なお、光学検出部4は、吸光度測定部の一部を構成している。
【0026】
発光素子41は、発光基板42に実装されている。発光素子41は、測定セル2の光透過窓21に向けて光を照射する素子である。発光素子41は、LED(発光ダイオード)により構成される。発光素子41は、低濃度のシリカ濃度を測定するため、360〜480nmの波長の光を発光可能な発光素子である。本実施形態において、発光素子41は、375nmの波長を使用している。発光素子41の点灯/消灯は、制御部10から出力される駆動信号により制御される。
【0027】
受光素子43は、受光基板44に実装されている。受光素子43は、測定セル2の光透過窓22を通過した透過光を受光する素子である。受光素子43は、フォトトランジスタにより構成される。受光素子43は、受光した透過光量に対応した検出値信号を制御部10に出力する。
【0028】
攪拌部5は、測定セル2の内部に収容された検査水W1及び試薬W2を攪拌する設備である。
図1に示すように、攪拌部5は、測定セル2の底部に設けられている。攪拌部5は、攪拌子51と、ステータコイル52と、を備える。攪拌子51は、測定セル2の底部に、回転可能に配置されている。ステータコイル52は、測定セル2の周囲を囲むようにリング状に形成された電磁誘導コイルである。ステータコイル52に駆動電流を供給すると、電磁誘導の作用により、測定セル2の底部に配置された攪拌子51が非接触で回転する。ステータコイル52の動作は、制御部10から供給される駆動電流により制御される。
【0029】
表示部6は、測定した検査水W1のシリカ濃度の測定値やシリカ濃度測定装置1の動作状況等を表示する装置である。表示部6は、液晶表示パネルにより構成される。
【0030】
温度検出部7は、検査水W1の反応温度を検出する装置である。温度検出部7は、
図1に示すように、測定セル2の側壁に配置されており、測定セル2の内部に収容された検査水W1の液面より下の位置に配置される。温度検出部7は、測定した検査水W1の反応温度に対応した検出値信号を制御部10に出力する。温度検出部7は、温度測定部の一部を構成している。
【0031】
制御部10は、シリカ濃度測定装置1の動作を制御する装置である。制御部10は、発光素子41の点灯/消灯を制御し、受光素子43からの出力を受信する。制御部10は、光学検出部4により検出された吸光度に基づいて、検査水W1に含まれるシリカ成分の濃度を測定する。制御部10は、測定した検査水W1のシリカ濃度の測定値を表示部6に表示させる。
【0032】
制御部10は、シリカ濃度を測定するために、吸光度測定部の一部を構成する吸光度算出部11と、温度測定部の一部を構成する温度算出部12と、計時部13と、差分量算出部14と、シリカ濃度検出部15と、を備える。
【0033】
吸光度算出部11は、光学検出部4により検出された透過光量の検出値に基づいて、第1時間t1及び第2時間t2(
図5参照)において、検査水W1の吸光度を算出する。本実施形態においては、光学検出部4及び吸光度算出部11は、試薬W2が添加された検査水W1における375nmの吸光度を測定する。なお、吸光度算出部11は、吸光度測定部の一部を構成しており、吸光度算出部11と、光学検出部4とで吸光度測定部を構成している。
【0034】
第1時間t1は、試薬W2が添加された直後の時間である(
図5参照)。第1時間t1は、規定量の試薬W2の添加を実行可能な範囲で、規定量の試薬W2の添加を完了した直後に近い時間が採用される。本実施形態においては、第1時間t1は、試薬W2が添加されてから1分程度経過した時間である(
図5参照)。
【0035】
第2時間t2は、試薬W2が添加されてから第1時間t1よりも長い時間であって、検査水W1と試薬W2との反応が終了する前の時間である(
図5参照)。第2時間t2は、好ましくは、第1時間t1から30秒以上経過した時間である。第2時間t2は、予め制御部10のメモリ(不図示)に記憶されている。本実施形態においては、第2時間t2は、第1時間t1を経過してから30秒程度経過した時間である(
図5参照)。
【0036】
温度算出部12は、温度検出部7により検出された検出値に基づいて、検査水W1の温度を算出する。本実施形態においては、温度算出部12は、試薬W2が注入されてから吸光度の測定が終了するまでの平均温度Tsを算出する。温度算出部12は、温度測定部の一部を構成しており、本実施形態においては、温度算出部12と、温度検出部7とで温度測定部を構成している。
【0037】
計時部13は、第2時間t2を計時する。計時部13により計時された第2時間t2において、吸光度算出部11は、検査水W1の吸光度を算出する。
【0038】
差分量算出部14は、光学検出部4及び吸光度算出部11により測定された検査水W1(試薬W2を含む)の吸光度に基づいて、吸光度の変化量(差分)ΔAsを算出する。具体的には、差分量算出部14は、試薬W2が添加されてから第1時間t1経過後の検査水W1の第1吸光度A1と、第2時間t2経過後の検査水W1の第2吸光度A2との変化量ΔAs、即ち差分A2−A1を算出する。
【0039】
シリカ濃度検出部15は、差分量算出部14により算出された吸光度の変化量(差分)ΔAsと、温度算出部12により算出された平均温度Tsに基づいて、シリカ濃度を検出する。本実施形態では、シリカ濃度検出部15は、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係を示す濃度判定基準を備えており、吸光度の差分ΔAsと、平均温度Tsと、濃度判定基準に基づいて、シリカ濃度を検出する。シリカ濃度の検出方法の詳細については、後述する。
【0040】
次に、モリブデンイエロー法による吸光度測定の問題点と本発明の態様とについて、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、シリカ濃度一定で反応温度が異なる試液を用いてモリブデンイエロー法により吸光度を測定した場合における測定開始からの経過時間と吸光度の変化との関係を示すグラフである。
図3は、反応温度一定でシリカ濃度が異なる試液を用いてモリブデンイエロー法により吸光度を測定した場合における測定開始からの経過時間と吸光度の変化との関係を示すグラフである。なお、
図2及び
図3に示すグラフは、一液型の試薬を用いてモリブデンイエロー法により測定した検査水W1の吸光度に基づいて作成されたものである。本明細書において、一液型の試薬とは、予めモリブデン溶液と酸の溶液とを混ぜた状態とした試薬を意味する。
【0041】
モリブデンイエロー法において、一液型の試薬を用いて吸光度を測定する場合、
図2に示すように、シリカ濃度が同じであっても、反応温度と、測定開始からの経過時間(吸光度の測定時間)とによって、吸光度が変化する。また、
図3に示すように、シリカ濃度が変わると、反応温度と経過時間とが吸光度測定に与える影響も変化する。これらは、モリブデンイエロー法による吸光度の測定に一液型の試薬を用いていることに起因する。
【0042】
通常、モリブデンイエロー法では、モリブデン溶液と酸の溶液とを別々に検査水に投入し、反応に適したpHとなるように、2つの溶液の配合を調整している。しかし、本実施形態で用いられる一液型の試薬においては、予めモリブデン溶液と酸の溶液とを混ぜた状態となっているため、モリブデンイエロー法を行うのに最適なpHに調整することができない。また、一液型の試薬においては、保存安定性の観点から、モリブデン溶液と酸の溶液との配合が決定されているため、予めモリブデンイエロー法を行うのに最適なpHでモリブデン溶液と酸の溶液とを配合することもできない。このため、一液型の試薬を用いてモリブデンイエロー法による吸光度の測定では、
図2及び
図3に示すように、反応温度及び測定時間によって吸光度が変化し、またシリカ濃度によって反応温度及び測定時間が吸光度の変化に与える影響も変化する。したがって、一液型の試薬を用いてモリブデンイエロー法によりシリカ検出を行う場合、シリカ濃度を精度良く検出することができないという問題がある。
【0043】
本発明の一態様におけるシリカ濃度測定装置1は、試薬W2が注入された検査水W1の吸光度の差分ΔAsと、検査水W1の平均温度Tsに基づいてシリカ濃度を検出する。具体的には、シリカ濃度測定装置1は、検査水W1に試薬W2を添加した直後の第1時間t1の第1吸光度A1と、第1時間t1から所定時間経過後の第2時間t2の第2吸光度A2とを測定し、第1吸光度A1と第2吸光度A2とから吸光度の差分ΔAsを算出する。また、シリカ濃度測定装置1は、試薬W2の注入開始から第2吸光度A2の測定が終了するまでの検査水W1の温度を測定し、平均温度Tsを算出する。シリカ濃度測定装置1は、吸光度の差分ΔAsと、平均温度Tsに基づいてシリカ濃度を検出する。
【0044】
本実施形態のシリカ濃度測定装置1は、シリカ濃度が低濃度の場合、例えば、0.1〜10mg/Lのシリカ濃度を精度良く検出することができるものである。シリカ濃度測定装置1では、低濃度のシリカ濃度を精度よく測定するため、シリカ濃度が0mg/Lと0.1mg/Lとにおいて、吸光度の変化量を算出するため、吸光度の差が大きいことが好ましい。測定波長が480nmよりも大きいと、シリカ濃度が0mg/Lと0.1mg/Lとにおいて、吸光度の差が小さくなるため、測定波長は480nm以下であることが好ましい。
また、シリカ濃度が0mg/Lにおいて、未反応の試薬W2の影響を少なくするため、吸光度が高くないことが好ましい。測定波長が360nmよりも小さいとシリカ濃度が0mg/Lにおいて吸光度が高くなるため、測定波長は360nm以上であることが好ましい。
したがって、低濃度のシリカ濃度を精度よく測定するための測定波長は、360〜480nmの範囲であることが好ましい。
【0045】
更に、シリカ濃度を一層精度よく測定するための測定波長は、シリカ濃度が0mg/Lと0.1mg/Lとの場合において、吸光度の差が大きいことが明確な範囲が好ましく、また、シリカ濃度が0mg/Lの場合において、吸光度が高くないことが明確な範囲が好ましい。そのため、シリカ濃度を一層精度よく測定するための測定波長は、370〜400nmの範囲であることが更に好ましい。また、本実施形態においては、測定波長として375nmを使用している。375nmの測定波長は、370〜400nmの範囲に含まれている。
【0046】
[動作]
シリカ濃度測定装置1の動作について、
図1、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、シリカ濃度測定装置1の動作を示すフローチャートである。
図5は、吸光度を測定する第1時間t1と第2時間t2とを示す。なお、本実施形態におけるシリカ濃度測定装置1の動作の説明においては、低濃度のシリカ濃度を精度よく測定するための動作について説明する。
【0047】
図4に示すように、測定セル2内に検査水W1を導入する(ステップST11)。ステップST11では、制御部10は、検査水導入ラインL1に設けられた電磁弁23を開状態になるように制御し、測定セル2内に検査水W1を導入する。制御部10は、所定量の検査水W1が測定セル2内に貯留されると、電磁弁23を閉状態になるように制御する。また、ステップST11においては、
図1に示すように、測定セル2内に、前回の測定時に導入された検査水W1が貯留されている場合がある。この場合においても、制御部10は、電磁弁23を開状態になるように制御することにより、新たな検査水W1を、検査水導入ラインL1から測定セル2へ導入する。制御部10は、測定セル2の内部が新たな検査水W1で置換され、且つ所定量が貯留されると、電磁弁23を閉状態になるように制御する。
【0048】
測定セル2内に検査水W1が導入された後、検査水W1の温度を安定させる(ステップST12)。ステップST12では、制御部10は、検査水W1の温度が安定するまで、動作を所定時間の間待機させる。本実施形態では、制御部10は、検査水W1が測定セル2内に導入されてから約12分程度待機させる。これは、温度検出部7が測定セル2の外部に取り付けられているため、より正確に検査水W1の温度を検出するために行われる。また、制御部10は、攪拌部5のステータコイル52を制御して、攪拌子51を回転させる。
【0049】
検査水W1の温度を安定させた後、ブランク透過度を測定する(ステップST13)。ステップST13では、制御部10は、光学検出部4によって試薬W2を注入する前の検査水W1のブランク透過度を測定する。このブランク透過度は、光学検出部4のベースラインとなる。
【0050】
ブランク透過度を測定した後、試薬注入部3から測定セル2内に試薬W2を注入する(ステップST14)。ステップST14では、制御部10は、試薬注入部3のローラポンプ34を駆動して、試薬カートリッジ31から測定セル2の内部に向けて試薬W2を所定量注入させる。また、温度検出部7は、測定セル2内の検査水W1の温度を検出する。温度検出部7は、少なくとも試薬W2が注入されてから第2吸光度の測定が終了するまでの間の測定セル2内の検査水W1の温度を検出する。
【0051】
試薬W2が測定セル2内の検査水W1に注入された後、第1時間t1が経過したとき、第1回吸光度測定が行われる(ステップST15)。ステップST15では、検査水W1にシリカ成分が含まれる場合、試薬W2に含まれる七モリブデン酸六アンモニウムがこのシリカ成分と反応し、検査水W1が黄色に発色する。制御部10は、光学検出部4において375nmの波長の光を発光する発光素子41を点灯させる。制御部10は、光学検出部4において受光素子43から透過光量の検出値信号を取得する。制御部10では、吸光度算出部11が、取得した透過光量の検出値に基づいて、第1時間t1における検査水W1の第1吸光度A1を算出する。第1時間t1は、
図5に示すように、試薬W2が測定セル2内に添加された直後の時間である。
【0052】
第1回吸光度測定が終了した後、測定セル2内の検査水W1と試薬W2とを撹拌する(ステップST16)。ステップST16では、制御部10は、攪拌部5のステータコイル52を制御して、攪拌子51を回転させる。
【0053】
試薬W2が測定セル2内の検査水W1に注入されてから第2時間t2が経過したとき、第2回吸光度測定が行われる(ステップST17)。ステップST17では、第1回吸光度測定と同様に、制御部10は、光学検出部4において375nmの波長の光を発光する発光素子41を点灯させ、光学検出部4において受光素子43から透過光量の検出値信号を取得する。そして、吸光度算出部11が、取得した透過光量の検出値に基づいて、第2時間t2における検査水W1の第2吸光度A2を算出する。なお、第2時間t2は、
図5に示すように、第1時間t2から約30秒程度の時間である。計時部13は、第2時間t2を計時する。
【0054】
第2吸光度測定が終了した後、シリカ濃度を検出する(ステップST18)。ステップST18では、差分量算出部14は、第1回吸光度測定で測定された第1吸光度A1と、第2回吸光度測定で測定された第2吸光度A2とから変化量ΔAs、即ち差分A2−A1を算出する。次に、温度算出部12は、温度検出部7によって検出された温度に基づいて、試薬W2の添加が開始されてから第2回吸光度測定が終了するまでの測定セル2内の検査水W1の平均温度Tsを算出する。シリカ濃度検出部15は、差分量算出部14で算出された吸光度の差分ΔAsと、温度算出部12で算出された平均温度Tsとに基づいて、シリカ濃度を検出する。シリカ濃度検出部15により検出されたシリカ濃度は、制御部10により、表示部6に表示される。
【0055】
[シリカ濃度の検出方法]
次に、本実施形態におけるシリカ濃度の検出方法について
図6〜9を用いて説明する。
図6は、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係を示す濃度判定基準を示す。
図7〜9は、
図6に示す濃度判定基準と、吸光度の差分と、反応温度とに基づいてシリカ濃度を検出する方法を示す。本実施形態において、濃度判定基準とは、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係をグラフで表したものである。
【0056】
シリカ濃度検出部15は、
図6に示す濃度判定基準を備えている。本実施形態の濃度判定基準は、検査水W1の吸光度の差分ΔAsと、検査水W1の反応温度と、シリカ濃度との関係を示すグラフである。本実施形態では、
図6に示すように、濃度判定基準は、0mg/L,1.0mg/L,5.0mg/L,10.0mg/Lのシリカ濃度において、反応温度に対する吸光度の差分の変化を表したものであり、反応温度5℃の間隔毎に測定点を有する。濃度判定基準は、試薬W2の添加開始時間と、試薬W2の添加終了時間と、吸光度の測定時間(第1時間t1及び第2時間t2)とを固定し、予め各シリカ濃度における反応温度と、吸光度差分の変化とを測定することによって作成されるものである。なお、0mg/Lのシリカ濃度において、吸光度が検出されている理由は、未反応の試薬W2が光を吸収する傾向があるからである。
【0057】
図7に示すように、シリカ濃度検出部15は、温度算出部12で算出された平均温度Tsと、差分量算出部14で算出された吸光度の差分ΔAsとに関する実測結果S1を濃度判定基準にプロットする。
【0058】
シリカ濃度検出部15は、濃度判定基準にプロットされた実測結果S1の近くにある複数の測定点M1a,M1b,M2a,M2bを決定する。複数の測定点M1a,M1b,M2a,M2bは、実測結果S1を囲む測定点から決定される。本実施形態においては、
図7に示すように、濃度判定基準にプロットされた実測結果S1を囲むように、5.0mg/Lのシリカ濃度から2つの測定点M1a,M1bを決定し、1.0mg/Lのシリカ濃度から2つの測定点M2a,M2bを決定している。
【0059】
次に、シリカ濃度検出部15は、決定された測定点M1a,M1b,M2a,M2bから吸光度差分データΔA1s,ΔA2sを算出する。具体的には、
図8に示すように、5.0mg/Lのシリカ濃度における2つの測定点M1a,M1bから直線近似で5.0mg/Lのシリカ濃度ラインLs1を作成する。また、1.0mg/Lのシリカ濃度における2つの測定点M2a,M2bから直線近似で1.0mg/Lのシリカ濃度ラインLs2を作成する。シリカ濃度検出部15は、シリカ濃度ラインLs1,LS2と、実測結果S1における平均温度Tsとに基づいて、吸光度差分データΔA1s,ΔA2sを算出する。
【0060】
次に、シリカ濃度検出部15は、吸光度差分データΔA1s,ΔA2sと、実測結果S1における吸光度の差分ΔAsに基づいて、シリカ濃度Scを算出する。具体的には、
図9に示すように、吸光度差分データΔA1s,ΔA2sから吸光度の差分ΔAsとシリカ濃度Scとに関する検量線Ls3を作成する。シリカ濃度検出部15は、この検量線Ls3と、実測結果S1における吸光度の差分ΔAsとに基づいて、シリカ濃度Scを算出する。
【0061】
[効果]
上述した本実施形態のシリカ濃度測定装置1によれば、例えば、以下のような効果が奏
される。
【0062】
本実施形態のシリカ濃度測定装置1は、試薬W2の添加を終了する第1時間t1が経過した後の検査水W1の第1吸光度As1と第1時間より長い第2時間t2が経過した後の検査水W1の第2吸光度As2との差分ΔAsと、検査水W1の反応温度を測定する構成を有する。そのため、シリカ濃度測定装置1は、吸光度差分ΔAsと、反応温度に基づいて、シリカ濃度を精度良く検出することができる。例えば、シリカ濃度測定装置1は、低濃度のシリカ濃度、例えば、0.1〜10mg/Lのシリカ濃度を精度良く検出することができる。
【0063】
本実施形態のシリカ濃度測定装置1は、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係を示す濃度判定基準を有している。そのため、シリカ濃度測定装置1は、検査水W1の吸光度の差分ΔAsと、検査水W1の温度と、濃度判定基準とに基づいて、簡易な方法でシリカ濃度を精度良く検出することができる。
【0064】
本実施形態のシリカ濃度測定装置1は、試薬W2が検査水W1に添加されてから第2吸光度As2の測定が終了するまでの平均温度Tsを検出している。そのため、シリカ濃度測定装置1は、測定する温度のばらつきを抑制し、シリカ濃度をより一層精度良く検出することができる。
【0065】
本実施形態のシリカ濃度測定装置1は、試薬W2と検査水W1との反応が終了する前の時間である第2時間t2の第2吸光度A2を用いて吸光度差分ΔAsを算出している。例えば、第2時間は、第1時間t2から30以上経過した時間である。これにより、シリカ濃度測定装置1は、吸光度差分ΔAsを精度よく測定することができるため、シリカ濃度をより一層精度よく検出することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。例えば、本実施形態においては、検査水W1の測定波長を375nmとしたが、これに制限されない。検査水W1の測定波長は、360〜480nmの波長の範囲であることが好ましく、370〜400の波長の範囲であることが更に好ましい。
【0067】
本実施形態においては、温度測定部が検査水W1の平均温度Tsを測定するように構成したが、これに制限されない。例えば、検査水W1の平均温度Tsではなく、試薬W2が添加されてから第2吸光度A2の測定が終了するまでの間で測定された温度であってもよい。
【0068】
本実施形態においては、シリカ濃度検出部15は、濃度判定基準として、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係を表したグラフを用いているが、これに制限されない。例えば、濃度判定基準は、吸光度の差分と、反応温度と、シリカ濃度との関係を表したテーブルであってもよい。
【0069】
本実施形態においては、第1時間t1を試薬W2の添加を完了した直後に近い時間(試薬W2添加から1分程度)とし、第2時間t2を第1時間t1から30秒経過した時間としているが、吸光度の差分が算出できるのであれば、これらに限定されない。例えば、第1時間t1は、試薬W2が添加されてから1分以上経過した時間であってもよいし、第2時間t2は、第1時間t1から30秒以上経過した時間であってもよい。
【0070】
本実施形態においては、低濃度のシリカ濃度を検出する際に検査水W1における375nmの波長の吸光度の変化量を算出してシリカ濃度を検出するように構成したが、これに限定されない。例えば、シリカ濃度測定装置1は、高濃度のシリカ濃度を検出する構成を備えていてもよい。高濃度のシリカ濃度を検出する構成としては、例えば、450nmの波長の吸光度を測定する光学検出部を備える構成である。