(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した加熱炉を用いたガラスリボンの製造では、加熱炉内で上昇気流が発生することで、加熱炉内の気体が加熱炉上方の第1開口部から排出される。このとき、加熱炉外の気体が加熱炉下方の第2開口部から加熱炉内に流入する。このように加熱炉内へ流入した気体は、加熱炉内で成形中のガラスリボンの温度にばらつきを生じさせたり、ガラスリボンに不要な外力を加えたりすることで、ガラスリボンに皺や弛みが発生するおそれがある。すなわち、シート状の母材ガラスからガラスリボンを安定して製造する点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート状の母材ガラスからガラスリボンを安定して製造することを容易にしたガラスリボンの製造方法及び加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラスリボンの製造方法は、加熱炉内でシート状の母材ガラスを加熱しながら下方へ延伸することでガラスリボンを成形するガラスリボンの製造方法であって、前記加熱炉は、前記母材ガラスが挿入される第1開口部と、前記ガラスリボンが引き出される第2開口部とを有し、前記第2開口部から前記加熱炉内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材を用いる。
【0007】
この方法によれば、加熱炉の第2開口部から加熱炉内への気体の流入が抑えられるため、加熱炉外から流入した気体による加熱炉内の温度変動を抑えることができ、それによって生じる加熱炉内の対流を抑えることができると共に、加熱炉内で成形中のガラスリボンの温度にばらつきが生じることを抑えることができる。また、加熱炉外から流入した気体が加熱炉内で成形中のガラスリボンに接することを抑えることができる。
【0008】
上記ガラスリボンの製造方法において、前記気体流入抑制部材は、前記第2開口部の開口面積を変化させるように進退可能に設けられていることが好ましい。
この方法によれば、加熱炉の第2開口部から加熱炉内への気体の流入を好適に抑えることができる。
【0009】
上記ガラスリボンの製造方法において、前記気体流入抑制部材は、前記ガラスリボンを厚さ方向に挟みこむように配置される一対の気体流入抑制部材を含むことが好ましい。
加熱炉内へ気体が流入すると、加熱炉内の温度が大きく変動し対流が生じる。また、流入した気体が成形中のガラスリボンの主面に接しやすくなる。その結果、成形中のガラスリボンの温度のばらつきがさらに生じ易くなり、また成形中のガラスリボンの主面に不要な外力が加わり易くなる。これにより、ガラスリボンに皺や弛みがさらに発生し易くなる。上記方法によれば、加熱炉の第2開口部とガラスリボンの主面との隙間を好適に削減することができるため、加熱炉内への気体の流入を抑えることが容易となり、ガラスリボンに皺や弛みの発生を抑えることができる。
【0010】
上記ガラスリボンの製造方法において、前記一対の気体流入抑制部材は、難燃性又は不燃性を有する繊維材料から構成されることが好ましい。
この方法によれば、各気体流入抑制部材の柔軟性が発揮され易くなるため、例えば、ガラスリボンの主面と各気体流入抑制部材とが接触した際にガラスリボンに加わる衝撃が緩和される。
【0011】
上記ガラスリボンの製造方法において、前記一対の気体流入抑制部材は、難燃性を有する合成樹脂繊維の編物又は織布から構成されることが好ましい。
編物又は織布から構成した各気体流入抑制部材として使用すると、繊維が脱落し難いため、例えば、加熱炉内に脱落繊維が浮遊することを抑えることができる。また、合成樹脂繊維によって各気体流入抑制部材の良好な柔軟性も発揮されるため、例えば、ガラスリボンの主面に気体流入抑制部材を接触させた場合であっても、ガラスリボンの主面において傷が発生するのを抑えることができる。
【0012】
上記ガラスリボンの製造方法において、前記母材ガラスを前記第2開口部から引き出す準備工程を有し、前記準備工程では、前記一対の気体流入抑制部材を前記母材ガラスと離間して配置させることが好ましい。
【0013】
上記準備工程では、加熱炉の第2開口部から引き出される母材ガラスに対して各気体流入抑制部材が離間して配置されるため、各気体流入抑制部材よりも下流側に母材ガラスを容易に引き出すことが可能となる。また、母材ガラスを加熱する際には、ガラスリボンに各気体流入抑制部材を接触させることで、加熱炉の第2開口部から加熱炉内への気体の流入を好適に抑えることができる。
【0014】
上記課題を解決する加熱炉は、シート状の母材ガラスを加熱しながら下方に延伸することでガラスリボンを成形するための加熱炉であって、前記母材ガラスが挿入される第1開口部と、前記ガラスリボンが引き出される第2開口部とを有し、前記第2開口部から前記加熱炉内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材を備える。
【0015】
この方法によれば、加熱炉の第2開口部から加熱炉内への気体の流入が抑えられるため、加熱炉外から流入した気体による加熱炉内の温度変動を抑えることができ、それによって生じる加熱炉内の対流を抑えることができると共に、加熱炉内で成形中のガラスリボンの温度にばらつきが生じることを抑えることができる。また、加熱炉外から流入した気体が加熱炉内で成形中のガラスリボンに接することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート状の母材ガラスからガラスリボンを安定して製造することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ガラスリボンの製造方法及び加熱炉の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。まず、加熱炉について説明する。
【0019】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態の加熱炉11は、シート状の母材ガラスG1を加熱しながら下方に延伸することでガラスリボンG2を成形するために用いられる。すなわち、この加熱炉11は、リドロー法を用いて母材ガラスG1からガラスリボンG2を成形(再成形)する際に用いられる。
【0020】
加熱炉11は、加熱炉本体12と、加熱炉本体12内を加熱する加熱器13とを備えている。加熱炉11(加熱炉本体12)は、母材ガラスG1が挿入される第1開口部14と、ガラスリボンG2が引き出される第2開口部15とを有している。第2開口部15は、第1開口部14よりも下方に位置し、ガラスリボンG2は第2開口部15から下方に向けて引き出される。
【0021】
詳述すると、加熱炉本体12は、上部断熱壁12aと、下部断熱壁12b、上部断熱壁12aと下部断熱壁12bとを連結する筒状の側部断熱壁12cとを備え、加熱炉本体12の内部空間が加熱室として構成されている。上部断熱壁12a及び下部断熱壁12bは、それぞれ加熱炉本体12の内外を連通する第1開口部14及び第2開口部15を有している。第1開口部14及び第2開口部15の幅寸法は、例えば、母材ガラスG1の幅寸法の1.2倍以上であり、母材ガラスG1の厚さ寸法の10倍以上の寸法に設定される。なお、本実施形態の第1開口部14及び第2開口部15の形状は、スリット状であるが、正方形や円形であってもよい。加熱炉11の加熱器13としては、母材ガラスG1を延伸し得る温度まで加熱可能な加熱器13であれば特に限定されず、例えば、電熱器や炭化ケイ素等の発熱体を用いることができる。
【0022】
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、加熱炉11は、第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材16を備えている。気体流入抑制部材16は、第2開口部15から引き出されたガラスリボンG2を厚さ方向Tに挟みこむように配置される一対の第1気体流入抑制部材16a,16aと、そのガラスリボンG2を幅方向Wに挟み込むように配置される一対の第2気体流入抑制部材16b,16bとから構成されている。
【0023】
図2〜
図4に示すように、本実施形態の各第1気体流入抑制部材16a,16aは、ガラスリボンG2の厚さ方向Tに沿って進退可能に設けられている。また、各第2気体流入抑制部材16b,16bは、ガラスリボンG2の幅方向Wに沿って進退可能に設けられている。詳述すると、気体流入抑制部材16の進出位置は、気体流入抑制部材16が第2開口部15の開口面積を狭くする位置であり、気体流入抑制部材16の退避位置は、進出位置よりも第2開口部15の開口面積を広くする位置である。気体流入抑制部材16のうち、少なくとも各第1気体流入抑制部材16a,16aは、ガラスリボンG2と接触されるまで進出されることが好ましい。また、気体流入抑制部材16のうち、少なくとも各第1気体流入抑制部材16a,16aは、第2開口部15と重ならない位置まで退避されることが好ましい。
【0024】
図4に示すように、退避位置の各第1気体流入抑制部材16a,16aは、進出位置における各第2気体流入抑制部材16b,16bによって挟まれるように構成されている。このように構成された気体流入抑制部材16では、各第1気体流入抑制部材16a,16aの退避位置から進出位置への移動が各第2気体流入抑制部材16b,16bによって案内される。
【0025】
次に、気体流入抑制部材16の支持構造の一例について説明する。各第1気体流入抑制部材16a,16a及び各第2気体流入抑制部材16b,16bは、加熱炉本体12の下部断熱壁12bの外面に支持されている。各第1気体流入抑制部材16a,16a及び各第2気体流入抑制部材16b,16bは、図示を省略するが、例えば、下部断熱壁12bに固定される支持部材と、下部断熱壁12bとの間に配置することで、所定の方向に移動可能に支持することができる。
【0026】
上述した気体流入抑制部材16の材質としては、例えば、耐熱性板ガラス、金属板等の不燃性板材、及び難燃性又は不燃性を有する繊維材料が挙げられる。繊維材料を構成する繊維としては、例えば、難燃性を有する合成樹脂繊維、及び不燃性を有する無機繊維が挙げられる。難燃性を有する合成樹脂繊維としては、例えば、アラミド繊維、及びポリイミド繊維が挙げられる。不燃性を有する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維等のセラミックス系繊維、及び金属繊維が挙げられる。繊維材料の形態としては、例えば、織布、不織布、及び編物が挙げられる。繊維材料は、バインダー等を含有していてもよい。
【0027】
各第1気体流入抑制部材16a,16aは、それぞれ異なる材料から構成してもよい。また、各第2気体流入抑制部材16b,16bは、それぞれ異なる材料から構成してもよい。気体流入抑制部材16のうち、少なくとも各第1気体流入抑制部材16a,16aは、難燃性又は不燃性を有する繊維から構成される繊維材料から構成されることが好ましく、難燃性を有する合成樹脂繊維の編物又は織布から構成されることがより好ましい。この合成樹脂繊維としては、芳香族ポリアミド系樹脂繊維(例えば、ケブラー(登録商標)等)が好ましい。各第2気体流入抑制部材16b,16bは、変形を抑制し、上述した各第1気体流入抑制部材16a,16aの進退移動の案内を円滑にするという観点から、耐熱性板ガラス等の不燃性板材から構成されることが好ましい。
【0028】
このように構成された加熱炉11の上方には、図示を省略するが、母材ガラスG1を一定の速度で加熱炉11に供給する供給装置が設置されている。また、加熱炉11の下方には、図示を省略するが、母材ガラスG1の供給速度よりも速い引取速度でガラスリボンG2を引き取る引取装置が設置されている。また、引取装置よりも下流側には、必要に応じて、ガラスリボンを巻き取る巻取装置やガラスリボンを切断する切断装置が設置される。
【0029】
次に、ガラスリボンG2の製造方法について説明する。
図3に示すように、準備工程では、気体流入抑制部材16は退避位置に配置される。この準備工程では、加熱炉11の第1開口部14から母材ガラスG1を挿入し、第2開口部15から母材ガラスG1を引き出す。この準備工程における気体流入抑制部材16は、第2開口部15から引き出す母材ガラスG1と離間して配置される。
【0030】
次に、加熱炉11の第1開口部14から加熱炉11内へ母材ガラスG1を一定の供給速度で供給するとともに、加熱炉11の第2開口部15から引き出された母材ガラスG1を供給速度よりも速い引取速度で引き取る。これにより、加熱炉11内の母材ガラスG1を延伸することでガラスリボンG2を仮成形する。仮成形されたガラスリボンG2は、加熱炉11の第2開口部15から引き出される。
【0031】
続いて、
図4に示すように、各第2気体流入抑制部材16b,16bを
図4の二点鎖線で示す退避位置から
図4の実線で示す進出位置まで進出させる。このとき、各第2気体流入抑制部材16b,16bは、各第1気体流入抑制部材16a,16aに当接するように配置される。
【0032】
次に、各第1気体流入抑制部材16a,16aを
図4に示す退避位置から
図2に示す進出位置まで進出させることで、各第1気体流入抑制部材16a,16aをガラスリボンG2の主面(ガラスリボンG2の表裏面)に接触させる。これにより、ガラスリボンG2の周囲は、気体流入抑制部材16によって取り囲まれる。
【0033】
このように気体流入抑制部材16が配置された状態で、ガラスリボンG2の成形が開始される。成形されたガラスリボンG2は、加熱炉11の第2開口部15から連続的に引き出される。
【0034】
ガラスリボンG2は、例えば、連続的に巻き取られたロール製品や所定の長さ寸法に裁断された平板製品の形態にすることができる。
以上の加熱炉11及びガラスリボンG2の製造方法で用いられる母材ガラスG1は、加熱された状態で延伸可能なガラスであれば特に限定されない。母材ガラスG1としては、例えば、ケイ酸塩ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミ珪酸ガラス、シリカガラス、及び結晶化ガラスが挙げられる。母材ガラスG1は、溶融ガラスをシート状に成形する周知の方法で得られる。母材ガラスG1を成形する方法としては、例えば、ロールアウト法、アップドロー法、フロート法、及びダウンドロー法(スロットダウンドロー法又はオーバーフローダウンドロー法)が挙げられる。
【0035】
加熱炉11及びガラスリボンG2の製造方法は、例えば、幅寸法が0.5mm以上、50mm以下、厚さ寸法が1μm以上、100μm以下のガラスリボンG2の製造に好適である。加熱炉11及びガラスリボンG2の製造方法は、厚さが50μm以下のガラスリボンG2の製造に適用されることが好ましい。
【0036】
ガラスリボンG2の用途としては、例えば、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、光電変換パネル用途、電子デバイス用途、分析機器用途、窓ガラス用途、建材用途、蓄電用途、及び車両用途が挙げられる。
【0037】
次に、加熱炉11及びガラスリボンG2の製造方法の主な作用について説明する。
加熱炉11は、母材ガラスG1が挿入される第1開口部14と、ガラスリボンG2が引き出される第2開口部15とを有し、この第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材16を備えている。この構成によれば、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入が抑えられるため、加熱炉11外から流入した気体による加熱炉11内の温度変動を抑えることができ、それによって生じる加熱炉11内の対流を抑えることができると共に、加熱炉11内で成形中のガラスリボンG2に接することを抑えることができる。これにより、例えば、加熱炉11内で成形中のガラスリボンG2の温度のばらつきやそのガラスリボンG2に不要な外力が加わることを抑えることが可能となる。
【0038】
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
(1)ガラスリボンG2の製造方法は、シート状の母材ガラスG1を加熱しながら下方に延伸することでガラスリボンG2を成形する。この成形では、母材ガラスG1を加熱するための加熱炉11を用いる。この加熱炉11は、母材ガラスG1が挿入される第1開口部14と、ガラスリボンG2が引き出される第2開口部15とを有している。加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材16を用いる。この方法によれば、上記作用が得られるため、シート状の母材ガラスG1からガラスリボンG2を安定して製造することが容易となる。従って、例えば、ガラスリボンG2における皺や弛みの発生を抑えることができる。
【0039】
(2)ガラスリボンG2の製造方法において、気体流入抑制部材16は、第2開口部15の開口面積を変化させるように進退可能に設けられていることが好ましい。この場合、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を好適に抑えることができる。
【0040】
(3)ガラスリボンG2の製造方法において、気体流入抑制部材16は、第1気体流入抑制部材16a,16aのようにガラスリボンG2を厚さ方向Tに挟みこむように配置されることが好ましい。
【0041】
ここで、加熱炉11内へ気体が流入すると、加熱炉11内の温度が大きく変動し対流が生じる。また、流入した気体が成形中のガラスリボンG2の主面に接しやすくなる。その結果、成形中のガラスリボンG2の温度のばらつきがさらに生じ易くなり、また成形中のガラスリボンG2の主面に不要な外力が加わり易くなる。これにより、ガラスリボンG2に皺や弛みがさらに発生し易くなる。
【0042】
上記方法の場合、加熱炉11の第2開口部15とガラスリボンG2の主面との隙間を好適に削減することができるため、加熱炉11内への気体の流入を抑えることが容易となる。これにより、シート状の母材ガラスG1からガラスリボンG2をさらに安定して製造することが可能となる。従って、例えば、ガラスリボンG2における皺や弛みの発生をさらに抑えることができる。
【0043】
(4)ガラスリボンG2の製造方法において、各第1気体流入抑制部材16a,16aは、難燃性又は不燃性を有する繊維材料から構成されることが好ましい。この場合、各第1気体流入抑制部材16a,16aの柔軟性が発揮され易くなるため、例えば、ガラスリボンG2の主面と各第1気体流入抑制部材16a,16aとが接触した際にガラスリボンG2に加わる衝撃が緩和される。これにより、例えば、第1気体流入抑制部材16a,16aによってガラスリボンG2を挟み込む際に、ガラスリボンG2に過剰な負荷が加わり難く、第1気体流入抑制部材16a,16aを配置して成形を開始する際のトラブルの発生が抑えられる。
【0044】
(5)ガラスリボンG2の製造方法において、各第1気体流入抑制部材16a,16aは、難燃性を有する合成樹脂繊維の編物又は織布から構成されることが好ましい。この場合、編物又は織布から構成した各第1気体流入抑制部材16a,16aでは、繊維が脱落し難いため、例えば、加熱炉11内に脱落繊維が浮遊することを抑えることができる。これにより、ガラスリボンG2に脱落繊維が付着することを抑えることができる。また、合成樹脂繊維によって各第1気体流入抑制部材16a,16aの良好な柔軟性も発揮されるため、例えば、ガラスリボンG2の主面に各第1気体流入抑制部材16a,16aを接触させた場合であっても、ガラスリボンの主面における傷の発生を抑えることができる。従って、清浄性や外観品質を高めたガラスリボンG2を製造することが容易となる。
【0045】
(6)ガラスリボンG2の製造方法は、母材ガラスG1を加熱炉11の第2開口部15から引き出す準備工程を有する。この準備工程では、各第1気体流入抑制部材16a,16aを母材ガラスG1と離間して配置させることが好ましい。この準備工程では、加熱炉11の第2開口部15から引き出される母材ガラスG1に対して各第1気体流入抑制部材16a,16aが離間して配置されるため、各第1気体流入抑制部材16a,16aよりも下流側に母材ガラスG1を容易に引き出すことが可能となる。また、母材ガラスの加熱時には、ガラスリボンG2に各第1気体流入抑制部材16a,16aを接触させるため、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を好適に抑えることができる。従って、各第1気体流入抑制部材16a,16aを用いた成形を円滑に開始することができるとともに、シート状の母材ガラスG1からガラスリボンG2を安定して製造することが容易となる。
【0046】
(7)加熱炉11は、シート状の母材ガラスG1を加熱しながら下方に延伸することでガラスリボンG2を成形するために用いられる。加熱炉11は、母材ガラスG1が挿入される第1開口部14と、ガラスリボンG2が引き出される第2開口部15とを有している。この加熱炉11は、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制する気体流入抑制部材16を備えている。この構成によれば、上記作用が得られるため、ガラスリボンG2を安定して製造することが容易となる。
【0047】
(8)ガラスリボンG2の厚さが50μm以下の場合、ガラスリボンG2自体の剛性が低いため、ガラスリボンG2の成形において、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入による影響を特に受け易い。従って、上記のガラスリボンG2の製造方法及び加熱炉11は、母材ガラスG1から厚さが50μm以下のガラスリボンG2を安定して製造することが容易になる点で特に有利となる。
【0048】
(9)ガラスリボンG2の製造方法に用いる加熱炉11は、気体流入抑制部材16として、ガラスリボンG2を厚さ方向Tに挟みこむように配置される一対の第1気体流入抑制部材16a,16aと、ガラスリボンG2を幅方向Wに挟み込むように配置される一対の第2気体流入抑制部材16b,16bとを備えている。そして、加熱炉11は、一対の第1気体流入抑制部材16a,16aを一対の第2気体流入抑制部材16b,16bの間で進退させる構成を有している。この場合、各第1気体流入抑制部材16a,16aの退避位置から進出位置への移動が各第2気体流入抑制部材16b,16bの間において案内されるため、例えば、各第1気体流入抑制部材16a,16aを進出位置に円滑に移動させることができる。従って、準備工程から上記の成形へ円滑に移行させることができる。
【0049】
(10)加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制せずに、加熱炉11の第1開口部14から加熱炉11外への気体の排出を抑制することによっても、加熱炉11内への気体の流入を抑制することが可能である。ところが、加熱炉11の第1開口部14から排出される気体は、加熱炉11内の下部に位置する気体よりも高温である。このため、加熱炉11の第1開口部14から加熱炉11外への気体の排出を抑制する部材を用いた場合、その部材は高温の気体に曝されるため、耐久性の確保が困難となる。この点、本実施形態の気体流入抑制部材16は、加熱炉11の第2開口部15から加熱炉11内への気体の流入を抑制するため、比較的低温の気体に曝されることになる。従って、気体流入抑制部材16の耐久性が確保され易く、また気体流入抑制部材16の選択の自由度も増すため、例えば、上記(5)欄に記載するように、合成樹脂繊維の長所(柔軟性等)を生かすことも可能となる。
【0050】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記ガラスリボンG2の製造方法及び加熱炉11における気体流入抑制部材16の数や形状は、例えば、第2開口部15の形状や寸法に応じて変更することができる。
図5は、前記実施形態の気体流入抑制部材16のうち、各第2気体流入抑制部材16b,16bを省略した変更例を示している。この変更例では、
図5の実線で示すように各第1気体流入抑制部材16a,16aをガラスリボンG2の幅寸法よりも大きい幅寸法を有するように構成することが好ましい。また、
図5に二点鎖線で示すように、各第1気体流入抑制部材16a,16aを第2開口部15における幅寸法よりも大きい幅寸法を有するように構成することができる。このように、例えば、各第1気体流入抑制部材16a,16aの幅寸法を調整することで、第2開口部15の開口面積をより小さくすることができる。また、各第1気体流入抑制部材16a,16aを難燃性又は不燃性を有する繊維材料から構成することにより、ガラスリボンG2の周囲において第1気体流入抑制部材16a,16a同士を接触させることが可能であるため、第2開口部15とガラスリボンG2との隙間を好適に削減することができる。
【0051】
・前記加熱炉11の気体流入抑制部材16は、加熱炉11(加熱炉本体12)の外面に設けられているが、気体流入抑制部材16は加熱炉本体12の内面に設けることもできる。但し、例えば、気体流入抑制部材16の交換が容易であるという観点から、気体流入抑制部材16は、加熱炉11(加熱炉本体12)の外面に設けることが好ましい。
【0052】
・前記ガラスリボンG2の製造方法及び加熱炉11は、溶融ガラスから成形された母材ガラスG1の成形に用いているが、母材ガラスG1を延伸して得られたガラスリボンG2をさらに延伸する成形に用いることもできる。
【0053】
・前記ガラスリボンG2の製造方法は、空気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。すなわち、加熱炉11は、空気雰囲気下に配置してもよいし、不活性ガス雰囲気下に配置してもよい。
【0054】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)上記加熱炉において、前記気体流入抑制部材は、前記第2開口部の開口面積を狭くする進出位置と、前記進出位置よりも前記開口面積を広くする退避位置との間を進退可能に設けられてなる加熱炉。
【0055】
(ロ)上記加熱炉において、前記気体流入抑制部材は、前記ガラスリボンと接触されるまで進出可能に設けられてなる加熱炉。