特許第6465107号(P6465107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465107
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20190128BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20190128BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20190128BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20190128BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20190128BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20190128BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCFG
   C08L77/00
   F16L11/04
   B29C47/38
   B29C47/20 Z
   B29K77:00
   B29L23:00
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-512642(P2016-512642)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2015057597
(87)【国際公開番号】WO2015156086
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-81426(P2014-81426)
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】菊地 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】小林 政之
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/077238(WO,A1)
【文献】 特開平10−230540(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114634(WO,A1)
【文献】 特開2012−122066(JP,A)
【文献】 特開平05−156155(JP,A)
【文献】 特開平04−198329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B29C 47/00−47/96
B29K 77/00
B29L 23/00
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有する成形体であって、
ポリアミド樹脂(A)が、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)であり、
樹脂(B)が、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49の範囲であり、
樹脂(B)の平均分散粒子径が150nm以上であり、
炭素繊維を含まない、成形体。
【請求項2】
半芳香族系ポリアミド樹脂が、
ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B1)、又は、
ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B2)である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12からなる群より選択されるいずれか一つ以上である請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
樹脂(B)が、ポリメタキシリレンアジパミドである請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
成形体が、筒状構造体である請求項1〜4のいずれかに記載の成形体。
【請求項6】
筒状構造体が、燃料用チューブ、燃料用パイプ、燃料用ホース、又はコネクタである請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、シリンダーとスクリューとを有する押出機を用いて、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有する成形体の製造方法であって、
押出機が単軸押出機であり、
ポリアミド樹脂(A)が、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)であり、
樹脂(B)が、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49となる範囲でドライブレンドし、単軸押出機にて、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を押し出す成形体の製造方法(ただし、該成形体は炭素繊維を含まない。)
【請求項8】
半芳香族系ポリアミド樹脂が、
ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B1)、又は、
ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B2)である請求項7に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12からなる群より選択されるいずれか一つ以上である請求項7又は8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
樹脂(B)が、ポリメタキシリレンアジパミドである請求項7〜9のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
単軸押出機のスクリューが、フルフライトスクリューである請求項7〜10のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
単軸押出機のスクリューの直径Dに対するスクリューの有効長Lの比L/Dが、20〜40である請求項7〜11のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
単軸押出機のスクリューが供給部と計量部とを有し、かつ、供給部のスクリューの断面積(F)と計量部のスクリューの断面積(M)との比(F/M)が、2.0〜3.5である請求項7〜12のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
単軸押出機のシリンダーの温度が、樹脂(B)の融点Tm〜樹脂(B)の融点Tm+50℃の範囲である請求項7〜13のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項15】
成形体が、筒状構造体である請求項7〜14のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミド樹脂は、その耐薬品性等の高さから幅広い用途に使用されており、例えば、各種のパイプ、ホース、チューブ等の構造体に広く使用されている。近年、環境汚染防止の観点から、厳しい排ガス規制が課せられており、例えば燃料油用に使用される上記各種の構造体は、揮発性炭化水素等の揮発性成分が構造体を透過して大気中に拡散するのを抑えるために、高いバリア性が必要とされている。
【0003】
しかし、ポリアミド樹脂、特に、強度、靭性、耐薬品性、及び柔軟性に優れるポリアミド11又はポリアミド12から形成された各種構造体は、揮発性炭化水素等に対するバリア性が十分でなく、その改良が望まれている。また、近年、メタノール、エタノール等のアルコールをブレンドしたアルコールガソリンが実用化されつつあるが、アルコールガソリンは透過性が高く大気中に揮発しやすいので、バリア性をより高める必要がある。
バリア性を高める手段としては、ポリアミド11又はポリアミド12からなるポリアミド層に加えて、バリア性に優れるバリア層を設けた多層構造体が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなるポリアミド層と、ポリアミド9Tからなるバリア層を含む多層構造体が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、異種のポリアミド樹脂及びカルボジイミド化合物を含む可塑性樹脂組成物層と、ポリアミド11及び/又はポリアミド12からなるポリアミド樹脂層を有する積層体が記載されている。
更に、例えば、特許文献3には、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂及びメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂と相溶し柔軟性のある樹脂を特定量含む障壁層を備えるチューブが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2004−203012号公報
【特許文献2】特開第2009−279927号公報
【特許文献3】特開第2008−18702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載される多層構造体又は積層体からなる燃料用チューブ、並びに特許文献3に記載のチューブは、耐燃料透過性(バリア性)と柔軟性とを両立するためには、燃料バリア層を2層以上としなければならなかった。多層構造の燃料バリア層は、樹脂を混練押し出しする押出機を2台以上用意する必要があることから、生産性の観点で課題があった。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、柔軟性及び耐燃料透過性に優れ、かつ、燃料バリア層を単層とすることができる成形体、及び、生産効率に優れ、かつ、柔軟性及び耐燃料透過性に優れる成形体を得ることができる成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、成形体の燃料バリア層が、連続相として炭素数10以上の炭化水素鎖を有するポリアミド樹脂(A)と、分散相として半芳香族系ポリアミド樹脂からなる樹脂(B)とを特定量比で含み、樹脂(B)の平均分散粒子径を150nm以上とすることで、燃料バリア層が単層であっても、優れた柔軟性及び耐燃料透過性を両立することを見出し、以下の本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(6)の成形体及び、(7)〜(16)の成形体の製造方法に関する。
【0008】
(1)ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有する成形体であって、
ポリアミド樹脂(A)が、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)であり、
樹脂(B)が、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49の範囲であり、
樹脂(B)の平均分散粒子径が150nm以上である成形体。
【0009】
(2)半芳香族系ポリアミド樹脂が、
ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B1)、又は、
ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B2)である上記(1)に記載の成形体。
(3)ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12からなる群より選択されるいずれか一つ以上である上記(1)又は(2)に記載の成形体。
(4)樹脂(B)が、ポリメタキシリレンアジパミドである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形体。
【0010】
(5)成形体が、筒状構造体である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の成形体。
(6)筒状構造体が、燃料用チューブ、燃料用パイプ、燃料用ホース、又はコネクタである上記(5)に記載の成形体。
【0011】
(7)ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、シリンダーとスクリューとを有する押出機を用いて、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有する成形体の製造方法であって、
押出機が単軸押出機であり、
ポリアミド樹脂(A)が、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)であり、
樹脂(B)が、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49となる範囲でドライブレンドし、単軸押出機にて、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を押し出す成形体の製造方法。
【0012】
(8)半芳香族系ポリアミド樹脂が、
ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B1)、又は、
ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B2)である上記(7)に記載の成形体の製造方法。
(9)ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12からなる群より選択されるいずれか一つ以上である上記(7)又は(8)に記載の成形体の製造方法。
(10)樹脂(B)が、ポリメタキシリレンアジパミドである上記(7)〜(9)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【0013】
(11)単軸押出機のスクリューが、フルフライトスクリューである上記(7)〜(10)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(12)単軸押出機のスクリューの直径Dに対するスクリューの有効長Lの比L/Dが、20〜40である上記(7)〜(11)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(13)単軸押出機のスクリューが供給部と計量部とを有し、かつ、供給部のスクリューの断面積(F)と計量部のスクリューの断面積(M)との比(F/M)が、2.0〜3.5である上記(7)〜(12)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(14)単軸押出機のシリンダーの温度が、樹脂(B)の融点Tm〜樹脂(B)の融点Tm+50℃の範囲である上記(7)〜(13)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【0014】
(15)成形体が、筒状構造体である上記(7)〜(14)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(16)筒状構造体が、燃料用チューブ、燃料用パイプ、燃料用ホース、又はコネクタである上記(15)に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、柔軟性及び耐燃料透過性に優れ、かつ、燃料バリア層を単層とすることができる成形体、及び、生産効率に優れ、かつ、柔軟性及び耐燃料透過性に優れる成形体を得ることができる成形体の製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例2で得られたチューブの断面を示すSEM画像である。
図2】比較例3で得られたチューブの断面を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の成形体は、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有し、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49の範囲であり、樹脂(B)の平均分散粒子径が150nm以上である。
ポリアミド樹脂(A)は、具体的には、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)である。
また、樹脂(B)は、具体的には、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂である。
上記構成の燃料バリア層を、本発明の燃料バリア層と称することがある。
また、上記構成の樹脂組成物を、本発明の樹脂組成物と称することがある。
なお、「燃料バリア層」とは、アルコール、アルコールガソリン等の燃料の耐透過性を有する層を意味する。本発明において「燃料の耐透過性を有する」とは、燃料として次のアルコールガソリンを用いた場合に、下記燃料透過性評価において、透過率が15g/(m・day)以下であることを意味する。
(燃料透過性評価)
燃料として、FuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを、FuelC/エタノール=90/10体積比に混合したアルコールガソリンを用意する。
肉厚1mmの燃料バリア層を有し、外径8mm、長さ200mmの単層チューブを用意し、チューブ内部に、調製したアルコールガソリンを入れ、チューブの他端も密栓し、試験チューブを得る。その後、試験チューブの質量を測定し、次いで試験チューブを40℃のオーブンに入れる。試験チューブをオーブンに入れてから300時間後に取り出し、質量変化を測定し、1mあたりのアルコールガソリン透過性を算出する。
【0018】
本発明の成形体を上記構成とすると、燃料バリア層が単層であっても、優れた柔軟性及び耐燃料透過性を両立することとなる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
成形体の柔軟性は、一般に、樹脂層を構成する樹脂として、ポリアミド11、ポリアミド12等の柔軟性に富む樹脂を用いたり、樹脂層の厚みを小さくしたりすることで達成することができる。しかし、柔軟性に富む樹脂は、一般的に燃料を構成する分子(燃料分子と称する)が透過し易い。一方、燃料分子を透過しにくい樹脂(耐燃料透過性を有する樹脂)は一般的に硬質であり、柔軟性を得るために樹脂層の厚みを小さくすると、耐燃料透過性が低下してしまうことがある。
このように、柔軟性と耐燃料透過性とは二律背反の効果であり、樹脂層に柔軟性と耐燃料透過性とを付与するためには、柔軟性のある樹脂層と、耐燃料透過性のある樹脂層との多層構成とする必要があった。
また、柔軟性のある樹脂と耐燃料透過性を有する樹脂とを溶融混練して得た樹脂組成物を燃料バリア層として用いても、通常、樹脂組成物は、二軸押出機等によりよく混練されるため、耐燃料透過性を有する樹脂が微分散し、樹脂粒子径が小さくなり易かった。従って、燃料分子が耐燃料透過性を有する樹脂の樹脂粒子間を透過し易く、十分な耐燃料透過性が得られなかった。
【0019】
これに対し、本発明の燃料バリア層は、柔軟性のポリアミド樹脂(A)を連続相とするため、成形体に柔軟性を与え、樹脂(B)の分散平均粒子径が大きいため、樹脂粒子間を透過する燃料分子の透過経路が長くなり、耐燃料透過性に優れると考えられる。
本発明の燃料バリア層は、ポリアミド樹脂(A)と、樹脂(B)とを、単軸押出機で混練して押し出すため、二軸押出機による混練に比べ穏やかな条件により樹脂(B)が混練され、樹脂(B)の平均分散粒子径を大きく保つことができると考えられる。
以下、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)についてより詳細に説明する。
【0020】
<ポリアミド樹脂(A)>
ポリアミド樹脂(A)は、本発明の燃料バリア層を構成する樹脂組成物の連続相を形成する樹脂であり、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)である。
本発明では、ポリアミド樹脂(A)が本発明の燃料バリア層を構成する樹脂組成物の連続相としてポリアミド樹脂(A1)又はポリアミド樹脂(A2)を含むことで、成形体の柔軟性を良好にすることができる。
【0021】
〔ポリアミド樹脂(A1)〕
ポリアミド樹脂(A1)は、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む。
ラクタム由来の構成単位及びアミノカルボン酸由来の構成単位の炭素数は、柔軟性、入手容易性等の観点から11〜12が好ましい。
炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位は、通常、下記一般式(A−1)で表されるω−アミノカルボン酸単位からなる。
【0022】
【化1】

ここで、上記式において、pは9〜11の整数を表し、好ましくは10〜11である。
炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位を構成する化合物としては、具体的には、デカンラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタムが挙げられる。また、炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位を構成する化合物としては、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸が挙げられる。
【0023】
ポリアミド樹脂(A1)は、炭素数10〜12のラクタム及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位のみからなるものに限られず、これら構成単位を主成分とするものであればよい。なお、ここで、「主成分とする」とは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の構成単位を含むことを許容する趣旨であり、特に限定されるわけではないが、ポリアミド樹脂(A1)の構成単位のうち、炭素数10〜12のラクタムの構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方が、モノマーとして、例えば60モル%以上、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%の範囲を占める。
ポリアミド樹脂(A1)における他の構成単位としては、例えば、炭素数10〜12のラクタム以外のラクタム、炭素数10〜12のアミノカルボン酸以外のアミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩由来の構成単位が挙げられる。
【0024】
炭素数10〜12のラクタム以外のラクタムとしては、3員環以上のラクタムが挙げられ、具体的には、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどが例示される。また、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸などが例示される。
【0025】
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,3−又は1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチルシクロペンタンメタナミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメタナミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環族ジアミン;パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香環を有するジアミン等を挙げることができる。
【0026】
ポリアミド塩を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−、2,6−又は2,7−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0027】
また、ポリアミド樹脂(A1)としては、ウンデカンラクタム由来の構成単位及び11−アミノウンデカン酸由来の構成単位の少なくとも一方を主成分とするポリアミド11、又は、ドデカンラクタム由来の構成単位及び12−アミノドデカン酸由来の構成単位の少なくとも一方を主成分とするポリアミド12、或いは、これらポリアミド11とポリアミド12の混合物が好ましい。
【0028】
〔ポリアミド樹脂(A2)〕
ポリアミド樹脂(A2)は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含む。
ポリアミド樹脂(A2)のジアミン単位を構成し得る化合物は炭素数6〜12の脂肪族ジアミンである。炭素数6〜12の脂肪族ジアミンの脂肪族基は、直鎖状又は分岐状の2価の脂肪族炭化水素基であり、飽和脂肪族基であっても、不飽和脂肪族基であってもよいが、通常は、直鎖状の飽和脂肪族基である。脂肪族基の炭素数は、好ましくは8〜12であり、より好ましくは9〜12であり、更に好ましくは10〜12である。
ポリアミド樹脂(A2)のジアミン単位を構成しうる化合物は、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ポリアミド樹脂(A2)中のジアミン単位は、柔軟性等の観点から、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
このように、ポリアミド樹脂(A2)におけるジアミン単位は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位のみからなってもよいが、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン以外のジアミン由来の構成単位を含有してもよい。
【0030】
ポリアミド樹脂(A2)において、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
ポリアミド樹脂(A2)中のジカルボン酸単位を構成し得る化合物は、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸であり、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド樹脂(A2)中のジカルボン酸単位は、柔軟性をより良好にできる観点から、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含むものであり、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
このように、ポリアミド樹脂(A2)におけるジカルボン酸単位は、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位のみからなってもよいが、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸由来の構成単位を含有してもよい。
【0032】
ポリアミド樹脂(A2)において、炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸等の炭素数9以下又は13以上の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ポリアミド樹脂(A2)は、柔軟性を良好にできる観点から、ジアミン構成単位として炭素数10以上の脂肪族ジアミン由来の構成単位を主成分とするポリアミドが好ましく、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12が挙げられる。更に好ましくは、炭素数10の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位をそれぞれ主成分とするポリアミド10,10、炭素数10の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位をそれぞれ主成分とするポリアミド10,12又は、これらの混合物である。
【0034】
ポリアミド樹脂(A)は、以上の中でも、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド6,11、及びポリアミド6,12からなる群より選択されるいずれか一つ以上が好ましく、ポリアミド11及びポリアミド12の少なくとも一方がより好ましい。
【0035】
[ポリアミド樹脂(A1)及びポリアミド樹脂(A2)の製造方法]
ポリアミド樹脂(A1)は、上記構成モノマーを重合することにより得ることができ、ラクタムを開環重合し、又はアミノカルボン酸を重縮合することにより得られる。
その重合方法は、特に限定されず、溶融重合、溶液重合、固相重合など公知の方法を採用できる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機などの混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置を用いることができる。
【0036】
ポリアミド樹脂(A2)は、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分とを重縮合して得られる。例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミド樹脂を製造することができる。また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0037】
ポリアミド樹脂(A1)及びポリアミド樹脂(A2)の重縮合時には、分子量調整剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸等を加えてもよい。
さらに、ポリアミド樹脂(A1)及びポリアミド樹脂(A2)の重縮合時には、アミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0038】
<樹脂(B)>
樹脂(B)は、本発明の成形体を構成する樹脂組成物の分散相を形成する樹脂であり、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂である。
本発明の樹脂組成物が、分散相として樹脂(B)を含み、樹脂(B)の平均分散粒子径が150nm以上であることで、成形体の耐燃料透過性を良好にすることができる。
【0039】
〔半芳香族系ポリアミド樹脂〕
半芳香族系ポリアミド樹脂とは、ジアミン構成単位又はジカルボン酸構成単位のいずれか一方が、芳香族化合物に由来する構成単位を、50モル%を超えて含む樹脂をいう。
例えば、ジアミン構成単位の50モル%超がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、ジカルボン酸構成単位の50モル%超が非芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂;ジアミン構成単位の50モル%超が非芳香族ジアミンに由来する構成単位であり、ジカルボン酸構成単位の50モル%超がフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0040】
成形体の耐燃料透過性をより良好にする観点から、半芳香族系ポリアミド樹脂は、ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B1)、又は、ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂(B2)であることが好ましい。
以下、ポリアミド樹脂(B1)及びポリアミド樹脂(B2)について、より詳細に説明する。
【0041】
[ポリアミド樹脂(B1)]
ポリアミド樹脂(B1)は、ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を含む。
【0042】
ポリアミド樹脂(B1)中のジアミン単位は、耐燃料透過性、及びガラス転移温度、融点等の熱的性質を適切に発現させる観点から、メタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
ポリアミド樹脂(B1)におけるジアミン単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位のみからなってもよいが、メタキシリレンジアミン以外のジアミン由来の構成単位を含有してもよい。
【0043】
メタキシリレンジアミン以外のジアミン単位構成する化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
ポリアミド樹脂(B1)における炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸単位を構成し得る化合物としては、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、及びスベリン酸が挙げられるが、成形体の耐燃料透過性及び入手容易性の観点から、アジピン酸が好ましい。
【0045】
また、ポリアミド樹脂(B1)中のジカルボン酸単位は、成形体の耐燃料透過性、及びガラス転移温度、融点等の熱的性質を適切に発現させる観点から、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
このように、ポリアミド樹脂(B1)におけるジカルボン単位は、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位のみからなってもよいが、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸由来の構成単位を含有してもよい。
ポリアミド樹脂(B1)において、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸;アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、ポリアミド樹脂(B1)としては、全てのジアミン単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位からなり、全てのジカルボン酸単位がアジピン酸由来の構成単位からなるポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)が最も好ましい。
【0046】
ポリアミド樹脂(B1)の融点Tmは、耐熱性及び溶融成形性の観点から、好ましくは200〜245℃、より好ましくは220〜240℃である。
なお、ポリアミド樹脂(B1)の融点は、示差走査熱量計〔島津製作所社製、商品名:DSC−60〕を用い、昇温速度10℃/分で、窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行うことにより測定される。
【0047】
[ポリアミド樹脂(B2)]
ポリアミド樹脂(B2)は、ジアミン構成単位の70モル%以上が炭素数9〜12の脂肪族ジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位を含む。
ポリアミド樹脂(B2)のジアミン単位を構成し得る化合物は炭素数9〜12の脂肪族ジアミンである。炭素数9〜12の脂肪族ジアミンの脂肪族基は、直鎖状又は分岐状の2価の脂肪族炭化水素基であり、飽和脂肪族基であっても、不飽和脂肪族基であってもよいが、通常は、直鎖状の飽和脂肪族基である。
炭素数9〜12の脂肪族ジアミンとしては、例えば、ノナメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0048】
ポリアミド樹脂(B2)中のジアミン単位は、耐燃料透過性を良好に維持する観点から、炭素数9〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位を70モル%以上含み、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
このように、ポリアミド樹脂(B2)におけるジアミン単位は、炭素数9〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位のみからなってもよいが、炭素数9〜12の脂肪族ジアミン以外のジアミン由来の構成単位を含有してもよい。
【0049】
ポリアミド樹脂(B2)において、炭素数9〜12の脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等の炭素数8以下の脂肪族ジアミン;1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
ポリアミド樹脂(B2)中のジカルボン酸単位を構成し得る化合物は、テレフタル酸であり、耐燃料透過性をより良好にできる観点から、テレフタル酸由来の構成単位を70モル%以上含むものであり、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。
このように、ポリアミド樹脂(B2)におけるジカルボン酸単位は、テレフタル酸由来の構成単位のみからなってもよいが、テレフタル酸以外のジカルボン酸由来の構成単位を含有してもよい。
ポリアミド樹脂(B2)において、テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、ポリアミド樹脂(B2)としては、ノナメチレンジアミン由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位をそれぞれ主成分とするポリアミド9T(PA9T)が好ましい。
【0052】
ポリアミド樹脂(B2)の融点Tmは、耐熱性及び溶融成形性の観点から、好ましくは250〜315℃、より好ましくは260〜300℃、更に好ましくは260〜280℃である。
なお、ポリアミド樹脂(B2)の融点は、ポリアミド樹脂(B1)と同様に測定される。
【0053】
樹脂(B)は、以上の中でも、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)及びポリアミド9T(PA9T)からなる群より選択されるいずれかが好ましく、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)がより好ましい。
【0054】
[樹脂(B)の製造方法]
ポリアミド樹脂(B1)及びポリアミド樹脂(B2)は、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分を重縮合して得られる。その製造方法は、ポリアミド樹脂(A2)と同様である。
【0055】
<樹脂組成物>
本発明の成形体を構成する樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含み、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49の範囲である。また、樹脂(B)の平均分散粒子径は150nm以上である。
樹脂(B)の平均分散粒子径は、成形体の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察することにより測定することができる。より具体的には、成形体をミクロトームにて切削して試料片を得て、その試料片を、80℃の雰囲気下で、リンタングステン酸10質量%水溶液に8時間浸漬する。その後、SEMにより試料片の断面を倍率10000倍にて観察し、観察した断面の画像の画像処理を行い、樹脂(B)の平均分散粒子径を算出する。画像処理は、例えば、三谷商社(株)製の「WinROOF」を用いて行うことができる。
樹脂(B)の平均分散粒子径の上限は、樹脂(B)が分散相であれば特に限定されないが、概ね3000nmである。樹脂(B)の平均分散粒子径は、成形体の耐燃料透過性の観点から、350nm以上であることが好ましく、450nm以上であることがより好ましく、550nm以上であることが更に好ましい。また、樹脂(B)の平均分散粒子径は、成形体の柔軟性の観点から、2500nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1200nm以下であることが更に好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率は、成形体の柔軟性と耐燃料透過性との両立の観点から、92:8〜53:47であることが好ましく、92:8〜63:37であることがより好ましく、84:16〜72:28であることが更に好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)以外に各種添加剤を含んでいてもよい。各種添加剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、トルエンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類等の可塑剤、ゴム状重合体等からなる衝撃改良材、カーボンブラック、グラファイト、金属含有フィラー等で例示される導電性フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤等が挙げられる。
【0058】
[樹脂組成物の調製]
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)、並びに、必要に応じて含み得る各種添加物を混合して樹脂混合物を得て、樹脂混合物を押出機で溶融混練することにより調製することができる。ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)は、それぞれ1種用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
このとき、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)は、各々の比重を勘案して質量を秤量し、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)が体積比率で95:5〜51:49となるように混合する。
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)の比重にもよるが、概ね、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)が、質量比率で94:6〜46:54となる範囲で混合することにより、体積比率で95:5〜51:49となる樹脂組成物を調製することができる。
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)の比重は、例えば、JIS K 7112(1999)に準じた方法により測定することができる。
【0059】
<成形体の構造及び成形体の製造方法>
本発明では、燃料バリア層を単層とすることができるが、成形体は、燃料バリア層と他の層(例えば、着色層、紫外線吸収層等の機能性層)とを積層した多層構成であってもよい。
なお、本発明の成形体が他の層を複数層有する場合、複数の他の層は同一でも異なっていてもよい。
【0060】
本発明の成形体は、筒状構造体であることが好ましい。筒状構造体は、筒状の空洞部分を有する構造体であり、空洞部分に、液体、気体等の流動体の燃料を一方から他方へと移動させることができる。筒状構造体は、具体的には、燃料用パイプ、燃料用ホース、燃料用チューブ等の他、これらを連結可能なコネクタが挙げられる。
成形体が多層の筒状構造体である場合、耐燃料透過性、耐薬品性等の点から、筒状構造体の空洞部分、すなわち内側に本発明の燃料バリア層が位置することが好ましい。
【0061】
本発明の成形体の厚みは、用途に応じ適宜設定すればよいが、耐燃料透過性及び柔軟性の観点から、成形体の厚みは0.01〜10mmであることが好ましく、0.1〜5mmであることがより好ましい。
本発明の成形体を適用し得る燃料は、特に制限されず、例えば、ヘキサン、オクタンなどのアルカン、トルエン、ベンゼン等の芳香族化合物、メタノール、エタノール等のアルコール、イソオクタンとトルエンとアルコールとを混合したアルコールガソリン等が挙げられる。中でも、アルコールガソリンの耐透過性に優れる。
本発明の成形体は、本発明の燃料バリア層に含まれる樹脂(B)の平均分散粒子径を150nm以上とする観点から、次の方法により製造される。
【0062】
すなわち、本発明の成形体の製造方法は、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、シリンダーとスクリューとを有する押出機を用いて、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を有する成形体の製造方法であって、
押出機が単軸押出機であり、
ポリアミド樹脂(A)が、炭素数10〜12のラクタム由来の構成単位及び炭素数10〜12のアミノカルボン酸由来の構成単位の少なくとも一方を含むポリアミド樹脂(A1)、又は、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン由来の構成単位及び炭素数10〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(A2)であり、
樹脂(B)が、半芳香族系ポリアミド樹脂より選択されるいずれかの樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を、ポリアミド樹脂(A):樹脂(B)の体積比率が95:5〜51:49となる範囲でドライブレンドし、単軸押出機にて、ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる燃料バリア層を押し出す方法である。
上記構成の手法によりポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を混合し、単軸押出機で押し出すことにより、ポリアミド樹脂(A)を連続相とし、樹脂(B)を分散相として含む樹脂組成物からなる燃料バリア層中の樹脂(B)は、平均分散粒子径が150nm以上となる。
以下、本発明の成形体の製造方法で用いる単軸押出機の好ましい構成及び好ましい押出条件について説明する。
【0063】
〔単軸押出機〕
本発明の成形体の製造方法で用いる押出機は、シリンダーと、シリンダーの内部に挿通されるスクリューとを有する単軸押出機である。
ポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を単軸押出機で混練し、押し出すことで、樹脂(B)の微分散を抑制し、平均分散粒子径を150nm以上とすることができる。また、燃料バリア層が単層であっても成形体は耐燃料透過性及び柔軟性に優れるため、成形体の燃料バリア層の製造に用いる押出機は、1台の単軸押出機で済む。
【0064】
単軸押出機が備えるスクリューは、樹脂(B)の微分散を抑制し、本発明の樹脂組成物の増粘を抑制する観点から、マドック形状等の混練部を有さないフルフライトスクリューであることが好ましい。
スクリューは、スクリュー軸の側面に螺旋状に形成されたねじ切り部が形成されており、ねじ切り部の外径は、シリンダーの内周面の内径よりも若干小さく、かつ一定に設定されている。
スクリューは、通常、供給部と、圧縮部と、計量部とから構成されている。供給部は、スクリューのねじ切り部が施された、ねじの切り始めから溝深さ(高さ、又はねじ深さとも言う)が一定となっている範囲をいう。圧縮部は、溝深さが徐々に浅くなる範囲をいう。計量部は、スクリュー先端部の溝深さが浅く一定となっている範囲をいう。
【0065】
供給部のスクリューの断面積(F)と計量部のスクリューの断面積(M)との比(F/M)をスクリューの圧縮比という。本発明において、単軸押出機のスクリューは、樹脂(B)の微分散を抑制する観点から、スクリューの圧縮比が、2.0〜3.5であることが好ましく、2.5〜3.5であることがより好ましい。
スクリューの圧縮比が2.0以上であれば、本発明の樹脂組成物に効果的に剪断効果を与えることができ、樹脂(B)以外の成分を十分に可塑化することができる。また、圧縮比が3.5以下であると、本発明の樹脂組成物中の樹脂(B)が、単軸押出機内部で微細な粒状に分散されることが防止される。
スクリューの形状は、樹脂(B)の微分散を抑制する観点から、スクリューの直径(ねじ切り部の外径)Dに対するスクリューの有効長Lの比L/Dが、20〜40であることが好ましく、24〜36であることがより好ましい。
【0066】
単軸押出機には、スクリューの供給部、圧縮部、及び計量部に対応する部分のいずれか又は全部にヒーターを備えることができ、供給部、圧縮部、及び計量部に対応する部分のシリンダーを加熱し、シリンダー温度を調整することができる。
単軸押出機のシリンダーの温度は、本発明の樹脂組成物の増粘を抑制する観点から、樹脂(B)の融点Tm〜樹脂(B)の融点Tm+50℃の範囲であることが好ましく、融点Tm+5℃〜融点Tm+40℃であることがより好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物が、2種以上の樹脂(B)を含む場合、シリンダーの温度は、全樹脂(B)中、最も融点が高い樹脂の融点を基準にする。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0068】
(1)樹脂(B)の平均分散粒子径
実施例1〜11、及び比較例3〜4で得られたチューブの長さ方向に対して垂直な断面をミクロトームにて切削して試料片を得た。その試料片を、80℃の雰囲気下で、リンタングステン酸10質量%水溶液に8時間浸漬した。その後、SEMにより試料片の断面を倍率10000倍にて観察し、観察した断面の画像の画像処理を行い、樹脂(B)の平均分散粒子径を算出した。
画像処理の方法は、三谷商社(株)製の「WinROOF」にて、SEM観察画像を2値化処理し、樹脂(B)ドメインのみを機械的に画像抽出し、樹脂(B)分散粒子径として、計測した円相当径の算術平均値を採用した。
得られた結果を表1、2に示す。ただし、比較例4では、樹脂(B)が分散相とならなかったため、表1、2では「−」とした。また、実施例2及び比較例3で得られたチューブの断面観察結果を、それぞれ図1及び図2に示した。
【0069】
(2)柔軟性評価
実施例、比較例、及び参考例で得たチューブを100mmにカットし、チューブの長さ方向に平行に切削し、幅10mm×長さ100mmの試験片を得た。得られた試験片に対し、試験片の長さ方向に50mm/minの引張速度で引張試験を行い、その引張弾性率、及び引張伸び率を測定した。
引張弾性率が1500MPa以下であり、かつ、引張伸び率が350%以上のものを合格(G:Good)とし、いずれか一方又は両方を満たさないものを不合格(P:Poor)とした。結果を表1、2に示した。
【0070】
(3)耐アルコールガソリン透過性評価
実施例、比較例、及び参考例で得たチューブを200mmにカットし、チューブの片端を密栓した。次いで、チューブ内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを、FuelC/エタノール=90/10体積比に混合したアルコールガソリンを入れ、チューブの他端も密栓し、試験チューブを得た。その後、試験チューブの質量を測定し、次いで試験チューブを40℃のオーブンに入れた。試験チューブをオーブンに入れてから300時間後に取り出し、質量変化を測定し、1mあたりのアルコールガソリン透過性を評価した。
透過率が15g/(m・day)以下であるものを合格とし(G:Good)とし、透過率が15g/(m・day)を超えるものを不合格(P:Poor)とした。結果を表1、2に示した。
【0071】
<樹脂>
実施例1〜11、比較例1〜4、及び参考例1〜2で用いた樹脂は、次の樹脂である。
1.ポリアミド樹脂(A)
1)ポリアミド11〔PA11;ポリアミド樹脂(A1)〕
アルケマ社製、リルサン(登録商標)BESN P20 TL、密度1.04g/cm
2)ポリアミド12〔PA12;ポリアミド樹脂(A1)〕
宇部興産社製、UBESTA(登録商標)3030U、密度1.02g/cm
3)ポリアミド10,10〔PA1010;ポリアミド樹脂(A2)〕
アルケマ社製、リルサン(登録商標)TESN P413 TL、密度1.04g/cm
2.樹脂(B)
1)ポリメタキシリレンアジパミド〔MXD6;ポリアミド樹脂(B1)〕
下記製造方法で得られた樹脂
2)ポリアミド9T〔PA9T;ポリアミド樹脂(B2)〕
クラレ社製、ジェネスタ(登録商標)N1001D、融点262℃、密度1.10g/cm
【0072】
[ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)の製造]
撹拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸730.8g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6322g及び酢酸ナトリウム0.4404gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。250℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学社製)681.0gを滴下し約2時間重合を行い、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)を得た。得られたポリアミド樹脂(MXD6)の融点は237℃であり、密度は1.22g/cmであった。
【0073】
<実施例1〜11及び比較例4>
表1、2に示す種類のポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を表1、2に示す質量比で混合(ドライブレンド)して樹脂混合物とした。次いで、樹脂混合物を単軸押出機に投入し、1台の単軸押出機からなる単層チューブ成形機にて、外径8mm、肉厚1mmの単層チューブを得た。単軸押出機の押出条件は次のとおりである。
なお、ポリアミド樹脂(A)と樹脂(B)との体積比は、樹脂の仕込み時の質量比および樹脂の密度から算出し、表1、2に示した。
1)シリンダー設定温度:
実施例1〜9、11及び比較例4は260℃(MXD6の融点+23℃)、実施例10は280℃(PA9Tの融点+18℃)とした。
2)スクリュー種:フルフライトスクリュー
3)スクリュー形状:L/D=25
4)圧縮比: 3.0
【0074】
<比較例1〜2>
表2に示す種類のポリアミド樹脂(A)を単軸押出機に投入し、1台の単軸押出機からなる単層チューブ成形機にて、外径8mm、肉厚1mmの単層チューブを得た。単軸押出機の押出条件は次のとおりである。
1)シリンダー設定温度:240℃
2)スクリュー種:フルフライトスクリュー
3)スクリュー形状:L/D=25
4)圧縮比: 3.0
【0075】
<比較例3>
表2に示す種類のポリアミド樹脂(A)及び樹脂(B)を表2に示す質量比で混合(ドライブレンド)して樹脂混合物とした。次いで、樹脂混合物を二軸押出機に投入し、1台の二軸押出機からなる単層チューブ成形機にて、外径8mm、肉厚1mmの単層チューブを得た。
ポリアミド樹脂(A)と樹脂(B)との体積比を、樹脂の仕込み時の質量比および樹脂の密度から算出し、表2に示した。
なお、二軸押出機の押出条件は次のとおりである。
1)シリンダー設定温度:260℃
2)スクリュー種:スクリューの直径の6倍の長さを有するニーディングディスクからなる混練部を有するスクリュー
3)スクリュー形状:L/D=32
【0076】
<参考例1>
ポリアミド12と、ポリアミド9Tとを、それぞれ単軸押出機に投入し、2台の単軸押出機からなる多層チューブ成形機にて、外径8mm、肉厚1mmの多層チューブを得た。ポリアミド12(PA12)層の厚みは800μmであり、ポリアミド9T(PA9T)層の厚みは200μmである。なお、参考例1のチューブは、外側からPA12、PA9Tの順に並んでなる。
【0077】
<参考例2>
ポリメタキシリレンアジパミド(45質量%)及びポリアミド11(55質量%)からなる樹脂混合物100質量部と、脂肪族ポリカルボジイミド化合物〔日清紡績社製「カルボジライトLA−1」〕0.7質量部とをドライブレンドした。その後、得られた熱可塑性樹脂混合物を秤量フィーダーにて6kg/hrの速度で、シリンダー径37mm、逆目エレメントによる滞留部を有する強練りタイプのスクリューをセットした二軸押出機に供給した。シリンダー温度270℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、溶融ストランドを冷却エアーにて冷却、固化した後、ペレタイズ化して熱可塑性樹脂組成物1のペレットを製造した。
次に、参考例1のポリアミド9Tの代わりに、熱可塑性樹脂組成物1を用い、参考例1と同様にして、PA12層/(MXD6+PA11+カルボジイミド)層の層構成を有する2種2層の多層チューブを製造した。なお、多層チューブは、外径8mmで、肉厚1.0mmであり、PA12層の厚みは800μmであり、(MXD6+PA11+カルボジイミド)層の厚みは200μmである。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1、2の結果から明らかなように、参考例1及び2はアルコールガソリンに対してバリア性を発揮するために燃料バリア層を2層構成にしなければならないのに対して、実施例1〜11の成形体は、アルコールガソリンに対してバリア性を発揮する燃料バリア層が単層でありながらも、参考例1および2と同等の柔軟性及び耐燃料透過性を示した。
一方、比較例1及び2に示すように、柔軟性に富む樹脂のみで構成される樹脂層は、成形体の柔軟性に優れるものの、耐燃料透過性は十分ではなかった。比較例3は、燃料バリア層の樹脂組成が実施例2と同じであるが、樹脂組成物が二軸押出機で混練されており、樹脂(B)の平均分散粒子径が150nmに満たないため、十分な耐燃料透過性が得られなかった。このことは、図1及び図2の対比からも明らかである。
また、比較例4のように、原料である樹脂混合物を単軸押出機で混練しても、ポリアミド樹脂(A)が体積基準で樹脂(B)よりも少なくなると、十分な柔軟性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の成形体は、柔軟性及び耐燃料透過性に優れるため、各種の筒状構造体、特に、燃料用チューブ、燃料用パイプ、燃料用ホース、及びこれらを結合するコネクタに好適に使用される。
図1
図2