(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インナーライナーのドーム部の中央に位置する筒部を筒状の口金の内側に位置させ、前記口金の軸心を中心として環状に拡がる第1環状面に前記筒部を当接した状態で熱変形させ、前記筒部の周囲の前記ドーム部の箇所を、前記口金の軸心を中心として環状に拡がり前記第1環状面と反対の方向を向いた第2環状面に当接して接着材により取着し、前記口金は前記第1環状面の内周端と前記第2環状面の内周端とを接続する内周面を有する航空機用水タンクのインナーライナーと口金とを取り付ける装置であって、
上型と、前記上型の下方で前記上型と同軸上に配置される下型とを備え、
前記上型は、上型本体と加熱部とを有し、
前記上型本体は、前記筒部を前記第1環状面に当接し前記加熱部で加熱される外側当接面と、前記外側当接面の内周端に接続された上型側位置合わせ外周面とを有し、
前記下型は、前記筒部の周囲の前記ドーム部の箇所を前記第2環状面に当接する内側当接面と、前記上型側位置合わせ外周面に係合可能な下型側位置合わせ内周面とを有する外周部を備え、
前記外側当接面は、前記筒部を前記第1環状面に当接した状態で前記第1環状面の内周端に当接された前記インナーライナーの部分の半径方向内側に変位した箇所まで延在し、
前記インナーライナーの筒部を前記口金の内側に位置させ前記上型と前記下型とを合わせた状態で、前記外側当接面の内周端およびこの内周端に続く前記上型側位置合わせ外周面の箇所と、前記内周面に当接される前記インナーライナーの部分との間の隙間を閉塞する突出部が、前記内側当接面の内周端に突出形成されている、
ことを特徴とする航空機用水タンクのインナーライナーに口金を取り付ける取り付け装置。
前記上型本体と前記下型とを近づける方向に付勢し前記第1環状面と前記第2環状面とで挟まれた口金の箇所を、前記インナーライナーを介在させた状態で前記内側当接面と前記外側当接面とにより挟持する付勢部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5記載の航空機用水タンクのインナーライナーに口金を取り付ける取り付け装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず
図1を参照して航空機用水タンク10について説明する。
航空機用水タンク10は、航空機に設置されて飲料水を収容するものであり、航空機用水タンク10は、その内部が水収容空間とされるタンク本体12を備えている。
タンク本体12は、円筒部14と、円筒部14の両側に設けられたドーム部16とを有している。
図2に示すように、両側のドーム部16の中央に、タンク本体12の内部の清掃を行なうための開口部18が設けられ、開口部18は蓋34により開閉される。
また、円筒部14の上部に、水を航空機の各所に供給するための不図示の配管用のノズル部が設けられ、円筒部14の下部に、水を排出するための不図示の配管用のノズル部が設けられている。
【0009】
タンク本体12は、
図1に示すように、航空機用水タンク10の内面を形成するインナーライナー22と、インナーライナー22の外面を覆う繊維強化樹脂層24とを含んで構成されている。
インナーライナー22は、航空機用水タンク10の輪郭を形成する中空体をなし、ブロー成形によって形成される。ブロー成形は、合成樹脂を溶融してパイプ状としたものを金型で挟み込み、パイプの内側に空気を吹き込むことで成形品を得るものである。
ブロー成形により得られたインナーライナー22は、
図4に示すように、円筒部22Aと、円筒部22Aの両側に設けられたドーム部22Bと、ドーム部22Bの中央から突設する筒部22Cとを有している。
インナーライナー22には、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂など、FDA認定を受けた従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0010】
繊維強化樹脂層24は、熱硬化性樹脂を含浸した強化繊維(フィラメント)をインナーライナー22の外周面に巻き付けるフィラメントワインディング法によって形成される。
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂など従来公知のさまざまな合成樹脂が使用可能である。また、強化繊維として、カーボン繊維、ガラス繊維など従来公知のさまざまな繊維が使用可能である。
【0011】
開口部18は、インナーライナー22の両端と、繊維強化樹脂層24の両端との間に取着された環状の口金26により形成され、航空機用水タンク10の使用時、
図3に示すように、開口部18は蓋34により閉塞される。
図5に示すように、口金26は、ドーム部16の中央に配置される筒状部30と、スカート部32と、膨出部38とを含んで構成されている。
筒状部30の軸心方向の一端の内周部に、蓋34が結合される口金側結合部として雌ねじ36が設けられている。
スカート部32は、筒状部30の軸心方向の他端の外周部全周から筒状部30の半径方向外方に拡がっている。
膨出部38は、筒状部30の軸心方向の他端の内周部全周から半径方向内側に膨出し、膨出部38は、雌ねじ36の内径よりも半径方向内側に膨出している。
膨出部38は筒状部30の軸心方向の一端側に向いた外側膨出面40と、外側膨出面40の内周端に続く内周面41とを有し、内周面41は湾曲面で形成されている。
外側膨出面40は、傾斜面4002と、環状の面4004と、平坦面4006とを含んで構成されている。
傾斜面4002は、筒状部30の軸心方向の一端側に至るにつれて次第に内径が大きくなる円錐面で形成され、傾斜面4002の軸心方向の他端は内周面41に接続している。
環状の面4004は、傾斜面4004の軸心方向の一端に接続し傾斜面4004の一端の内径よりも大きい外径で軸心方向と直交する平面で環状に形成されている。
平坦面4006は、環状の面4004よりもインナーライナー22の厚さ分軸心方向の一端側に離れた膨出部38の箇所に環状の面4004の半径方向外側で軸心方向と直交する環状の平面で形成されている。
【0012】
また、筒状部30の内周部で雌ねじ36と膨出部38との境の箇所に、雌ねじ36の谷径よりも大きい寸法の内周面を有する凹溝42が形成されている。
凹溝42を構成する互いに対向する一対の側面のうちの膨出部38側の側面は平坦面4006と同一面上に位置している。
【0013】
スカート部32は、膨出部38から離れるにつれて次第に外径が大きくなり、また、肉厚が薄くなるように形成されている。
スカート部32は筒状部30の軸心方向の一端と反対の方向をむいた内側スカート面3202と、筒状部30の軸心方向の一端側に向いた外側スカート面3204とを有している。
内側スカート面3202の内周端は内周面41に接続され、内側スカート面3202と内周面41は、
図10に示すように、インナーライナー22のドーム部22Bの中央部と筒部22Cの基部とに対応した形状で形成され、後述するインナーライナー22が内側スカート面3202から膨出部38の表面にわたり円滑に取着できるように図られている。
図2に示すように、繊維強化樹脂層24は、インナーライナー22の円筒部22A、ドーム部22Bから口金26の外側スカート面3204、筒状部30の外周面にわたって取着されている。
インナーライナー22は、筒部22Cの周囲のドーム部22Bの箇所が内側スカート面3202に当接して接着剤により取着され、筒部22Cが外側膨出面40に当接した状態に熱変形されている。
本実施の形態では、外側膨出面40が特許請求の範囲の第1環状面(以下第1環状面40ともいう)に相当しており、内側スカート面3202が特許請求の範囲の第2環状面(以下第2環状面3202ともいう)に相当している。
また、口金26の内周面41は、第1環状面40の内周端と第2環状面3202の内周端とを接続している。
熱変形されたインナーライナー22の端部2202は、環状の面4004上で雌ねじ36の内径よりも半径方向内側に位置している。これにより、筒部22Cの外側膨出面40への熱変形時、雌ねじ36の内側からインナーライナー22が外側膨出面40に確実に当接された状態で取り付けられているか否か簡単に視認できるように図られ、生産効率の向上が図られている。
【0014】
蓋34は、環板部44と、環板部44の厚さ方向の一方の端面の内周部から突設された筒部46と、筒部46の先端を接続する端面部48とを備えている。
環板部44の外周部には、口金側結合部に結合される蓋側結合部として雄ねじ50が形成され、雄ねじ50は雌ねじ36に螺合可能である。
また、本実施の形態では、端面寄りの筒部46の外周面の箇所に、シール部材としてOリング52が装着されている。Oリング52を蓋34に装着させることで、蓋34による開口部18の開閉作業の簡易化が図られている。
なお、本実施の形態では、口金26と蓋34はFDA認定を受けた同一の合成樹脂材料で形成され、雄ねじ50と雌ねじ36とが円滑に結合できるように図られている。
【0015】
図3に示すように、雌ねじ36に雄ねじ50を介して蓋34が開口部18に結合された状態で、雌ねじ36からタンク本体12の内部に突出する蓋34の部分と、傾斜面4002に位置するインナーライナー22の部分との間でOリング52が圧縮されることで開口部18が液密に閉塞されてタンク本体12の内部に閉塞された水収容空間12Aが形成される。
本実施の形態では、Oリング52を圧縮する蓋34の部分は、環板部44の端面4402と筒部46の外周面4602とで構成される角部であり、Oリング52を圧縮するインナーライナー22の部分は、傾斜面4002に位置する部分である。
そして、膨出部38の表面に取着されたインナーライナー22の端部2202は、Oリング52が圧縮される箇所よりも水収容空間12Aから離れた膨出部38の表面の箇所に位置している。
【0016】
このような航空機用水タンク10によれば、開口部18が蓋34により閉塞された状態で、飲料水中に位置する口金26のスカート部32の内側スカート面3202および膨出部38の表面はインナーライナー22で覆われ、インナーライナー22の端部2202は、タンク本体12の内部を液密に閉塞するOリング52よりも水収容空間12Aから離れた膨出部38の表面に位置している。すなわち、インナーライナー22の端部2202は、水収容空間12Aの外側に位置している。
したがって、航空機用水タンク10の使用時、タンク本体12の内部に収容された水がインナーライナー22の端部2202に接触することはない。
そのため、インナーライナー22の端部2202の周辺のスカート部32の表面(内側スカート面3202)への、FDA認定を受けた材料による水漏れ防止のコーティング作業を省略でき、航空機用水タンク10の生産効率を高めコストダウンを図る上で有利となる。また、メンテナンス時に、FDA認定を受けた材料による水漏れ防止のコーティングを点検し、補修する作業も省略でき、メンテナンス作業の効率を高める上で有利となる。
また、航空機用水タンク10の使用時、飲料水中に位置する口金26の内側スカート面3202および膨出部38の表面はインナーライナー22で覆われているので、口金26と飲料水とが直接接触することはない。
したがって、口金26を製造するに際して、FDA認定を受けた材料に限定されることなく、種々の性状を備えた所望の材料を用いることができ、設計の自由度を拡大する上で有利となる。
【0017】
次に、このような航空機用密タンクのインナーライナー22と口金26とを取り付ける取り付け装置について説明する。
図6〜
図9に示すように、取り付け装置54は、上型56、下型58、付勢部60を含んで構成されている。
上型56は、上型本体62と加熱部64とを含んで構成されている。
上型56は、剛性を有する材料で形成され、このような材料として金属を含む従来公知の様々な材料が採用可能であり、本実施の形態では、アルミ合金を用いている。
図11(A)、(B)に示すように、上型本体62はほぼ円板状を呈し、上型本体62には、軸挿通孔6202、加熱部収容凹部6204、上部円筒面部6206、上型側位置合わせ外周面6208、外側当接面6210が設けられ、軸挿通孔6202、上部円筒面部6206、上型側位置合わせ外周面6208、外側当接面6210は同軸上に位置している。
軸挿通孔6202は、上型本体62の中央部のボス部61に嵌合された軸受63の内周面で形成されている。上型本体62の軸心と軸受63の軸心とは合致しており、軸挿通孔6202は、後述する軸部材70と共に、上型56と下型58とを同軸上に位置合わせするために機能し、軸受63は軸部材70を回転可能に支持する。
加熱部収容凹部6204は、上型本体62の上面に周方向に延在して設けられ、加熱部64は加熱部収容凹部6204に収容されて外側当接面6210を加熱する。加熱部64として電気ヒータなど従来公知の様々な加熱部材が使用可能である。
上部円筒面部6206は、上型本体62の上部に雌ねじ36の内径よりも小さい寸法の外径の外周面で形成されている。
上型側位置合わせ外周面6208は、上型本体62の下部に上部円筒面部6206よりも小さい寸法の外径の外周面で形成され、言い換えると、上型本体62の軸心と中心とした円筒面で形成されている。この上型側位置合わせ外周面6208は、上型56と下型58とを同軸上に位置合わせするために機能する。
上型側位置合わせ外周面6208の下端には、下方に至るにつれて次第に外径が小さくなる傾斜面6208Aが形成され、上型側位置合わせ外周面6208と後述する下型側位置合わせ内周面5804とが円滑に係合されるように図られている。
【0018】
外側当接面6210は、インナーライナー22の筒部22Cを口金26の外側膨出面40に当接する箇所であり、上部円筒面部6206の下端と上型側位置合わせ外周面6208の上端を接続している。
外側当接面6210は、筒部22Cの端部2202を環状の面4004に当接する第1当接面6210Aと、端部2202に続く筒部22Cの箇所を傾斜面4002に当接する第2当接面6210Bとを含んで構成されている。
第1当接面6210Aは、環状の面4004よりも大きな外径の環状の平坦な面で形成され、筒部22Cの端部2202を環状の面4004に当接すると共に、平坦面4006に当接する。
第2当接面6210Bは、第1当接面6210Aの内周端から上型側位置合わせ外周面6208に向かうにつれて次第に外径が小さくなる傾斜面で形成され、本実施の形態では、円錐面で形成されている。
図9に示すように、外側当接面6210を構成する第2当接面6210Bは、インナーライナー22の筒部22Cを、第1環状面40を構成する傾斜面4002に当接した状態で、傾斜面4002の内周端に当接されたインナーライナー22の部分の半径方向内側に変位した箇所まで延在している。
図11に示すように、さらに、本実施の形態では、外側当接面6210を構成する第2当接面6210Bの内周端(下端)と、上型側位置合わせ外周面6208の上端とは湾曲面6212で接続されている。
【0019】
図6〜
図9に示すように、下型58は、上型56の下方で上型56と同軸上に配置される。
下型58は、内側当接面5802と下型側位置合わせ内周面5804と突出部6802とを有し、それら内側当接面5802と下型側位置合わせ内周面5804と突出部6802とは下型58の同軸上に位置し、言い換えると、内側当接面5802と下型側位置合わせ内周面5804と突出部6802とは下型58の軸心を中心軸として環状に形成されている。
内側当接面5802は、筒部22Cの周囲のドーム部22Bの箇所を第2環状面3202に当接し接着剤により取着する箇所である。
下型側位置合わせ内周面5804は、下型58の軸心を中心軸とした円筒面で形成され、上型側位置合わせ外周面6208に係合可能である。
下型側位置合わせ内周面5804と上型側位置合わせ外周面6208とが係合することで上型56と下型58とが同軸上に位置合わせされる。
突出部6802は、インナーライナー22の筒部22Cを口金26の内側に位置させ上型56と下型58とを合わせた状態で、外側当接面6210の内周端およびこの内周端に続く湾曲面6212を含む上型側位置合わせ外周面6208の箇所と、内周面41に当接されるインナーライナー22の部分との間の隙間を閉塞する箇所であり、突出部6802は内側当接面5802の内周端に突出形成されている。
図9に示すように、突出部6802の半径方向内側の面は、上型側位置合わせ外周面6208に係合可能な円筒面6802Aと、湾曲面6212に係合可能な湾曲面6802Bと、外側当接面6210の内周端に係合可能な円錐面6802Cとを有し、したがって、突出部6802の半径方向内側の面は、下型側位置合わせ内周面5804と連続状に設けられている。
また、突出部6802の半径方向外側の面は、口金26の内周面41に合されたインナーライナー22の部分に係合可能な湾曲面6802Dを有している。
なお、軸部材70が軸挿通孔6202に挿通されることで上型56と下型58とが同軸上に位置合わせされ、下型側位置合わせ内周面5804と上型側位置合わせ外周面6208とが係合することで上型56と下型58とが同軸上に位置合わせされる。本実施の形態では、軸部材70が軸挿通孔6202に挿通されることで上型56と下型58とが同軸上に位置合わせされ、下型側位置合わせ内周面5804と上型側位置合わせ外周面6208とが係合することで上型56と下型58とが同軸上に補助的に位置合わせされる。
下型58は、下型側位置合わせ内周面5804を有する箇所が上型56よりも熱伝導性の低い材料で形成されている。
【0020】
本実施の形態では、下型58は、基板部66と外周部材68とを含んで構成されている。本実施の形態では、外周部材68が特許請求の範囲の外周部に相当している。
基板部66は、第2環状面3202の外径に対応した外径を有する均一厚さの円板状の部材で構成されている。
基板部66は、剛性を有する材料で形成され、このような材料として金属を含む従来公知の様々な材料が採用可能であり、本実施の形態では、アルミ合金を用いている。
外周部材68は、基板部66の外周部にねじNにより着脱可能に取着されている。
外周部材68は、上型56よりも熱伝導性が低く剛性およびインナーライナー22に比較して高い耐熱性を有する材料で形成されている。
このような熱伝導性が低く剛性および耐熱性を有する材料としてフッ素樹脂などの従来公知の様々な材料が採用可能である。
外周部材68は環板状を呈し、その内周面は上型側位置合わせ外周面6208に係合可能な下型側位置合わせ内周面5804として形成されている。
また、外周部材68の上面は、内側当接面5802として形成されて、内側当接面5802の内周端に突出部6802が突出形成されている。
【0021】
基板部66の中心から下型58の軸心方向に沿って軸部材70が突設されている。
軸部材70は、基板部66の中心に嵌合された軸受67に挿通されている。
インナーライナー22と口金26との取り付け時、軸部材70は、上型56の軸挿通孔6202に挿通される。
付勢部60は、軸部材70に巻装され上型本体62を下型58に向けて付勢するコイルスプリング72を含んで構成されている。
すなわち、コイルスプリング72の一端は、上型本体62の内周部の上面に当接し、コイルスプリング72の他端は、軸部材70に螺合されたナット74に当接している。
そして、ナット74を回動することによりコイルスプリング72の圧縮長さが調節され、上型本体62を下型58に押し付ける力が調節される。
【0022】
本実施の形態では、インナーライナー22の円筒部22Aは単一であるため、口金26の軸心方向の一方の端部は閉塞された空間となっている。
そのため、
図12〜
図15に示すように、下型58を2つの分割体で構成し、2つの分割体を折曲した状態で口金26の内側からインナーライナー22の内部に挿入し、その後、インナーライナー22の内部で2つの分割体を開くようにしている。
すなわち、
図12(A)〜(D)、
図13(A)、(B)に示すように、基板部66は、平面上に展開された展開状態と互いに近づく方向に折曲された折曲状態との間でヒンジ78を介して揺動可能に連結された2つの基板分割体66A、66Bで構成されている。
2つの基板分割体66A、66Bのうちの一方の基板分割体66Aには、基板部66の中央に位置するように肉厚の円筒状ボス部6602が設けられ、軸受67はこの円筒状ボス部6602の孔に嵌合されている。
また、2つの基板分割体66A、66Bのうちの他方の基板分割体66Bには、円筒状ボス部6602に係合可能な半円弧状の欠部6604が設けられている。
図13(C)に示すように、軸部材70は、2つの基板分割体66A、66Bのうちの一方の基板分割体66Aの軸受67に回転可能に結合されて一方の基板分割体66Aから軸挿通孔6202に向けて突設されている。
上型本体62と反対に位置する一方の基板部分割体66Aの箇所で、軸部材70の端部に軸部材70と一体に回転するように保持部材76が取着されている。
保持部材76は、2つの基板分割体66A、66Bが折曲される際には、
図13(A)、(C)に示すように、軸部材70が設けられた基板分割体66Aの下面に位置し、展開状態では、
図13(B)に示すように、双方の基板分割体66A、66Bの下面にわたって延在し、展開状態を保持するように機能する。
すなわち、本実施の形態では、2つの基板分割体66A、66Bの展開状態の保持を可能とした保持部が、保持部材76により構成されている。
図14(A)〜(D)に示すように、外周部材68は、2つの基板分割体66A、66Bの外周部に設けられた外周分割体68A、68Bで構成されている。
2つの基板分割体66A、66Bの展開状態で、各基板分割体66A、66Bに取着された外周分割体68A、68Bの上面により内側当接面5802が形成され、外周分割体68A、68Bの内周面により下型側位置合わせ内周面5804が形成され、外周分割体68A、68Bの内側当接面5802の内周端に突出部6802が突出形成されている。
【0023】
なお、インナーライナー22の円筒部22Aは、実施の形態のように単一であってもよく、あるいは、円筒部22Aは、その軸心方向に分割された複数の円筒部分割体を接合することで構成することも可能である。
インナーライナー22の円筒部22Aが、複数の円筒部分割体が接合することで構成される場合、口金26の軸心方向の両端はそれぞれ開放された空間が位置するので、下型58は実施の形態のような2つの分割体で構成する必要はなく、上型56と同様に下型58を単一体で構成すればよい。
この場合には、軸挿通孔6202、軸部材70、付勢部60を省略し、上型56と下型58とをそれぞれ昇降手段により昇降させるようにしてもよい。また、この場合には、下型側位置合わせ内周面5804と上型側位置合わせ外周面6208とを係合させることのみで、上型56と下型58とを同軸上に位置合わせするようにしてもよい。
【0024】
次に、取り付け装置54を用いてインナーライナー22と口金26とを取り付ける手順について説明する。
ブロー成形により成形されたインナーライナー22は、
図4に示すように、円筒部22Aと、円筒部22Aの両側のドーム部22Bと、ドーム部22Bの中央から突設された筒部22Cとを有している。
まず、
図10に示すように、筒部22Cの周囲のドーム部22Bの表面に接着剤を塗布し、筒部22Cが膨出部38の内側に挿入されるように口金26を筒部22Cの周囲のドーム部22Bの表面に載置する。
次に、筒部22Cの内側から下型58をドーム部22Bの内側に挿入する。
この挿入は、
図15(A)、(B)、(C)に示すように、2つの基板分割体66A、66Bを折曲状態として軸部材70を介して筒部22Cの内側からインナーライナー22の内部に挿入することで行なう。
【0025】
次に、作業者は、筒部22Cの内側から手を入れて、
図13(A)に示すように、2つの基板分割体66A、66Bを展開状態とし、
図13(B)に示すように、軸部材70により保持部材76を回転させ、2つの基板分割体66A、66Bの展開状態を保持部材76により保持させる。
そして、
図6に示すように、下型58の内側当接面5802を内側スカート面3202に当接されたインナーライナー22の部分に当接する。
次に、
図6〜
図8に示すように、軸部材70を上型56の軸挿通孔6202に挿通させ、上型56の上型側位置合わせ円筒面6208をインナーライナー22の筒部22Cに挿入する。
次に、上型56の上にコイルスプリング72、ナット74を配置し、加熱部64により上型56の外側当接面6210を加熱する。
【0026】
次に、ナット74の回転操作により上型56を下型58に近接させる方向に作用するコイルスプリング72の弾性力を調節する。
図9に示すように、このコイルスプリング72の弾性力により上型56と下型58は互いに近づく方向に付勢され、上型56の第2当接面6210Bは、筒部22Cを半径方向外側に熱変形させて口金26の傾斜面4002に当接する。
また、上型56の第1当接面6210Aは、筒部22Cの端部2202を半径方向外側に熱変形させ、筒部22Cの端部2202を環状の面4004に当接する。
また、コイルスプリング72の弾性力により外周部材68の内側当接面5802は、筒部22Cの周囲に位置するインナーライナー22のドーム部22Bの箇所を口金26の内側スカート面3202に当接する。
コイルスプリング72の弾性力が作用した状態で、上型56の第1当接面6210Aと第2当接面6210Bによる筒部22Cの環状の面4004、傾斜面4002への当接と、下型58の内側当接面5802による筒部22Cの周囲のドーム部22Bの箇所の内側スカート面3202への当接は、所要の時間継続して行なわれる。
このような加工時、軸部材70が上型56の軸挿通孔6202に挿入されることで、また、下型58の下型側位置合わせ円筒面5804に上型56の上型側位置合わせ円筒面6208が挿入されることで、上型56と下型58とが同軸上に位置合わせされた状態となっている。
【0027】
所要時間経過後、ナット74を操作して軸部材70からナット74、コイルスプリング72を取り外し、また、上型56を取り外す。
次に、軸部材70により下型58を口金26の下方に変位させ、軸部材70により保持部材76を回転させて基板分割体66A、66Bを折曲可能な状態とする。
次に、作業者は、筒部22Cの内側から手を入れて、2つの基板分割体66A、66Bを折曲状態とし、軸部材70を介して下型58を口金26の内側からインナーライナー22の外部に取り出し、作業を終了する。
【0028】
本実施の形態によれば、上型56の外側当接面6210によりインナーライナー22の筒部22Cを口金26の第1環状面(外側膨出面)40に当接して熱変形させる際、外側当接面6210の内周端および外側当接面6210の内周端に続く上型側位置合わせ外周面6208の箇所と、内周面41に当接されるインナーライナー22の部分との間の隙間を塞ぐ突出部6802が設けられているため、熱変形されたインナーライナー22の部分が第1環状面40に沿って口金26の半径方向内側に変位することが阻止される。
したがって、インナーライナー22と口金26とが取り付けられた状態で、口金26の膨出部38の半径方向内側に尖ったバリの発生を阻止でき、欠陥の無い航空機用水タンク10を効率よく製造する上で有利となる。
また、外側当接面6210は、筒部22Cを第1環状面40に当接した状態で第1環状面40の内周端に当接されたインナーライナー22の部分の半径方向内側に変位した箇所まで延在しており、外側当接面6210の内周端(下端)に接続する上型位置合わせ外周面6208の箇所は、インナーライナー22の筒部22Cの半径方向内側に位置するため、上型56の筒部22Cの内側への挿入を、筒部22Cの上端に干渉することなく円滑に行なえ、欠陥の無い航空機用水タンク10を効率よく製造する上で有利となる。
また、筒部22Cの内径、外径にブロー成形時の成形誤差があった場合でも、外側当接面6210の内周端と上型側位置合わせ外周面6208の上端とは湾曲面6212で接続されているため、筒部22Cを湾曲面6212を介して外側当接面6210により第1環状面40に円滑に当接でき、欠陥の無い航空機用水タンク10を効率よく製造する上で有利となる。
さらに、筒部22Cの内径、外径にブロー成形時の成形誤差があった場合でも、上型位置合わせ外周面6208の下端に傾斜面6208Aが形成されているため、傾斜面6208Aを介して筒部22Cの内側に上型側位置合わせ外周面6208を円滑に挿入でき、欠陥の無い航空機用水タンク10を効率よく製造する上で有利となる。
【0029】
また、下型側位置合わせ内周面5804を有する箇所である外周部材68が、上型56よりも熱伝導性の低い材料で形成されているので、上型56の外側当接面6210の熱の下型58への伝導を抑制する上で有利となる。
また、外周部材68がインナーライナー22に比較して高い耐熱性を有する材料で形成されているので、上型56の熱による外周部材68の変形または劣化を防止する上で有利となる。
そのため、上型56の外側当接面6210の熱が下型58に逃げないため、インナーライナー22の筒部22Cを口金26の筒状部30の内周部(第1環状面40)に沿わせて短時間で確実に熱変形させることができ、成形時間の短縮を図る上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、下型58は、第2環状面3202の外径に対応した外径を有する基板部66と、基板部66の外周部に取着され上型56よりも熱伝導性の低い材料で形成された外周部材68とを含んで構成され、上型56に係合する下型側位置合わせ内周面5804と内側当接面5802は外周部材68に設けられている。
そのため、簡単な構造により上型56の外側当接面6210の熱の下型58への伝導を抑制することができ、成形時間の短縮を図る上で有利となり、インナーライナー22の耐久性を確保する上で有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、外側膨出面40と内側スカート面3202とで挟まれた口金26の箇所を内側当接面5802と外側当接面6210とにより挟持する付勢部60をさらに備え、付勢部60は、上型56の軸挿通孔6202、軸部材70、コイルスプリング72、ナット74を含んで構成されている。
したがって、付勢部60により上型本体62と下型58とを近づける方向に付勢し、下型58の内側当接面5802と上型56の外側当接面6210とによりインナーライナー22を介在させた状態で外側膨出面40と内側スカート面3202とで挟まれた口金26の箇所を挟持でき、簡単な構成によりインナーライナー22と口金26とを確実に取り付けることが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態では、第1環状面40は、口金26の軸心方向の一端側に至るにつれて次第に内径が大きくなる傾斜面4002と、傾斜面4002の軸心方向の一端に接続し傾斜面4002の一端の内径よりも大きい外径で軸心方向と直交する環状の面4004とを含んで構成され、外側当接面6210は、筒部22Cの端部2202を環状の面4004に当接する第1当接面6210Aと、端部2202に続く筒部22Cの箇所を傾斜面4002に当接する第2当接面6210Bとを含んで構成されている。
したがって、筒部22Cの端部2202が傾斜面4002の上端の半径方向外側の平坦な環状の面4004に当接した状態で熱変形され、熱変形された後の筒部22Cの内周部が見やすくなる。
そのため、口金26の雌ねじ36側から筒部22Cが傾斜面4002に沿って熱変形されているか否か、また、筒部22Cの端部2202が環状の面4004に沿って熱変形されているか否かを容易に視認する上で有利となる。
【0033】
なお、本実施の形態では、突出部6802が、インナーライナー22の筒部22Cを口金26の内側に位置させ上型56と下型58とを合わせた状態で、外側当接面6210の内周端に続く上型側位置合わせ外周面6208の箇所と、内周面41に当接されるインナーライナー22の部分との間の隙間の全域を塞ぐように設けられた場合について説明したが、突出部6802と、口金26の膨出部38の内周面41に当接されたインナーライナー22部分との間に1mm程度の隙間が残存している場合であっても本発明と同様の効果が奏され、本発明において突出部6802が隙間を閉塞するとは、口金26の膨出部38の内周面41に当接されるインナーライナー22部分との間に1mm程度の隙間が残存する場合を含む。
なお、本実施の形態では、口金側結合部が雌ねじ36で形成され、蓋側結合部が雄ねじ50で形成されている場合について説明したが、本発明は、口金側結合部が雄ねじで形成され、蓋側結合部が雌ねじで形成され、筒状部30に蓋34を被せる形式のものにも無論適用される。
また、付勢部60に代えリンク機構やエアシリンダを用いて構成するなど任意である。例えば、
図8の状態において口金26と上型56を上方に移動不能に支持し、リンク機構やエアシリンダなどを用いて軸部材70を上方に移動させるようにしてもよく、付勢部60の構成は実施の形態に限定されず、従来公知の様々な構成が採用可能である。ただし、実施の形態のように付勢部60をコイルスプリング72を含んで構成すると、付勢部60の構造の簡単化、部品点数の削減化を図る上で有利となり、装置のコストダウンを図る上で有利となる。