(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
「第1実施形態」
[リチウム二次電池]
図1は、第1実施形態に係るリチウム二次電池100の断面模式図である。
図1に示すリチウム二次電池100は、発電部40と、外装体50と、リード60、62とを備える。外装体50は、発電部40を密閉した状態で収容する。一対のリード60、62の一端は、発電部40に接続され、他端は外装体50の外部まで延在している。また図示されていないが、発電部40とともに電解液が、外装体50内に収容されている。
【0020】
(発電部)
発電部40は、正極20と負極30とが、セパレータ10を挟んで対向配置されている。
図1では、外装体50内に発電部40が一つの場合を例示したが、複数積層されていてもよい。
【0021】
<負極>
負極30は、負極集電体32と負極活物質層34とを備える。負極30において金属リチウムの析出、溶解反応を行う場合、負極活物質層34は初期状態では無くてもよい。電解液中のリチウムイオンが負極集電体32の一面に金属リチウムとして析出するためである。一方で、1回以上充電を行うと析出した金属リチウムが残存するため、この金属リチウムを含む層を負極活物質層34とみなすことができる。また充放電に寄与するリチウム量が不足することに備えて、充放電前の初期状態から集電体の一面にリチウム箔を設けてもよい。
【0022】
負極集電体32は、銅、ニッケル、鉄、及びチタンからなる群から選択された主元素を含む金属箔と、金属箔の少なくとも一面上の表面層とを有する。「主元素」とは金属箔を構成する元素のうち最も物質量(モル数)が多い元素を意味し、X線光電子分光法(XPS)やICP発光分光分析法等によって決定することができる。銅、ニッケル、鉄、及びチタンは、いずれも導電性に優れるので、上記金属箔はリード60を介して発生した電子を速やかに外部に出力できる。
【0023】
本願において「表面層」は0.1〜1μm、例えば1nm〜100nm、例えば1nm〜30nm、例えば1nm〜10nmの厚さを有する層である。表面層と金属箔の組成が異なる場合、負極集電体の組成を厚さ方向に分析することによって表面層の存在を確認することができる。しかし表面層と金属箔の組成は同じでもよく、この場合、負極集電体の表面付近の部分(例えば表面近傍10nmの部分)が本願の「表面層」に対応する。また、金属箔と表面層の組成が異なる場合であっても、両者の間に明確な界面が観測されない場合もある。
【0024】
表面層は、金属箔と同じ主元素と、スズ、シリコン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種のドーパント元素とを含む。これらのドーパント元素は、銅、ニッケル、鉄、及びチタンよりもリチウムとの反応性が高い。従って、表面層が所定のドーパント元素を含むことにより、リチウム二次電池100を充電する際に、ドーパント元素が優先的にリチウムと反応して合金を形成する。
【0025】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)は1.8〜21.9重量%であり、例えば2.0〜10.0重量%でもよく、例えば2.5〜5.0%でもよい。表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)は、例えばX線光電子分光法(XPS)により求めることができる。この場合、表面汚染の影響を除去した最表面の測定結果を、表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)としてよい。表面層に複数種のドーパント元素が含まれる場合、重量濃度Wb(1)は、表面層における各ドーパント元素の重量濃度の合計である。重量濃度Wb(1)が当該範囲内にあると、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上する。この特性の向上は以下のように理解することができる。
【0026】
即ち、ドーパント元素が負極集電体32の表面上で均一に分散して存在していると、リチウム二次電池100の充電時に、負極集電体32の表面上ではドーパント元素とリチウムとの合金が均一に形成される。このように負極集電体32の表面上に均一に形成されたドーパント元素とリチウムとの合金を起点としてリチウム金属の核形成が起こり、リチウム金属が成長する結果、負極集電体32の表面でリチウム金属が均一に析出する。従って、負極集電体32におけるデンドライトの成長が抑制される。リチウム二次電池100を充電する際にデンドライトの成長が抑制されるので、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上すると考えられる。
【0027】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)が1.8重量%未満の場合、ドーパント元素とリチウムとの合金化が負極集電体32上で均一に生じないことがある。即ち、ドーパント元素とリチウムとの合金化が負極集電体32上で不均一に生じてしまうことがある。不均一に生じた合金を核としてリチウム金属が成長すると、リチウム金属も不均一に析出してしまい、リチウム二次電池100のサイクル特性が低下してしまうことがある。
【0028】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)が21.9重量%よりも高い場合、表面層は単相ではなく多相共存相になってしまうことがある。異なる相に存在するドーパント元素はリチウムとの反応性も異なる。従って、表面層が多層共存相である場合、リチウム二次電池100の充電時に、負極集電体32上でドーパント元素とリチウムとの不均一な合金化が生じてしまうことがある。負極集電体32上で合金が不均一に生じると、リチウム金属も不均一に析出してしまい、リチウム二次電池100のサイクル特性が低下してしまうことがある。
【0029】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)は、金属箔におけるドーパント元素の重量濃度Wb(2)よりも高いことが好ましい。金属箔におけるドーパント元素の重量濃度Wb(2)は、例えば負極集電体32をスパッタして表面層を除去して金属箔を露出させて、金属箔のXPS測定を行うことにより求めることができる。金属箔に複数種のドーパント元素が含まれる場合、重量濃度Wb(2)は、金属箔における各ドーパント元素の重量濃度の合計である。
【0030】
負極集電体32の内部よりも表面にドーパント元素が多く存在することによって、リチウム二次電池100の充電時に、ドーパント元素とリチウムとの合金化が負極集電体32の表面部で終了する。そうすると、ドーパント元素とリチウムとの合金化が速やかに完了するので、負極集電体32の表面上に合金が均一に形成される。均一に形成された合金を起点としてリチウム金属が平滑に成長し、負極集電体32上でのリチウム金属の析出形態が平滑になる結果、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上する。
【0031】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)と、金属箔におけるドーパント元素の重量濃度Wb(2)とは、以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.85<Wb(1)/(Wb(1)+Wb(2))≦1
【0032】
表面層におけるドーパント元素の重量濃度Wb(1)と、金属箔におけるドーパント元素の重量濃度Wb(2)が上記の関係を満たす場合、負極集電体32の内部と比較して負極集電体32の表面部分にドーパント元素が多く存在しているので、リチウム二次電池100の充電時にリチウム金属が負極集電体32上に平滑に析出する。その結果、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上する。
【0033】
本実施形態に係る金属箔と表面層とを有する負極集電体32は様々な方法で作製することができる。例えば、主元素とドーパント元素とを含有する金属箔を真空中で熱処理することによって本実施形態に係る負極集電体32を作製することができる。この方法によれば熱処理中にドーパント元素が金属箔の表面に析出して所望の負極集電体32を得ることができる。従って、熱処理の温度と時間、熱処理の雰囲気、熱処理前の金属箔の組成等を変更することによって、所望の表面層を有する負極集電体32を得ることができる。
【0034】
代替的に、本実施形態に係る負極集電体32は、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ、真空蒸着、スパッタ等の方法を用いて金属箔上に表面層を形成することによって作製することもできる。また、所望の表面状態を得るために、金属箔上に表面層を形成した後に、真空中で熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで負極集電体の表面状態が均一化し、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上することがある。
【0035】
<正極>
正極20は、正極集電体22と、その一面に設けられた正極活物質層24とを有する(
図1参照)。正極集電体22は、導電性を有する材料により構成されていればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
【0036】
正極活物質層24に用いる正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとリチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF
6−)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。
【0037】
例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zM
a2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどが挙げられる。
【0038】
また正極活物質層24は、導電材を有していてもよい。導電材としては、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。正極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、正極活物質層24は導電材を含んでいなくてもよい。
【0039】
また正極活物質層24は、バインダーを含む。バインダーは、公知のものを用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、が挙げられる。
【0040】
また、上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
【0041】
<セパレータ>
セパレータ10は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0042】
(電解液)
電解液は、発電部40内に含浸される。電解液には、リチウム塩等を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する非水系電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いため、充電時の耐用電圧が低く制限される。そのため、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水系電解質溶液)であることが好ましい。
【0043】
非水系電解質溶液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
【0044】
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0045】
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
【0046】
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
【0047】
また非水系電解質溶液としてイオン液体を用いてもよい。イオン液体は、カチオンとアニオンの組合せによって得られる100℃未満でも液体状の塩である。イオン液体は、イオンのみからなる液体であるため、静電的な相互作用が強く、不揮発性、不燃性と言う特徴を有する。電解液としてイオン液体を用いたリチウム二次電池100は、安全性に優れる。
【0048】
(外装体)
外装体50は、その内部に発電部40及び電解液を密封する。外装体50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウム二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。
【0049】
例えば、外装体50として、
図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
【0050】
「リード」
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。リード60、62を正極20、負極30にそれぞれ溶接し、正極20と負極30との間にセパレータ10を挟んだ状態で、電解液と共に外装体50内に挿入し、外装体50の入り口をシールする。
【0051】
上述のように、本実施形態に係るリチウム二次電池は、負極集電体32の平均結晶子サイズが所定の範囲内である。そのため、負極30におけるデンドライトの発生がより抑制され、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上する。
【0052】
[リチウム二次電池の製造方法]
本実施形態に係るリチウム二次電池100の製造方法について説明する。まず正極20及び負極30を作製する。
【0053】
正極20は、正極集電体22上に正極活物質を含む塗料を塗布、乾燥して作製する。正極活物質を含む塗料は、正極活物質、バインダー及び溶媒を含み、必要に応じて導電材が混合されている。溶媒には、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン等を用いることができる。
【0054】
塗料における正極活物質、導電材、バインダーの構成比率は、質量比で80wt%〜98wt%:0.1wt%〜10wt%:0.1wt%〜10wt%であることが好ましい。これらの質量比は、全体で100wt%となるように調整される。塗料を構成する成分の混合方法は特に制限されず、混合順序もまた特に制限されない。
【0055】
そして作製した塗料を、正極集電体22に塗布する。塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0056】
続いて、正極集電体22に塗布された塗料中の溶媒を除去する。除去方法は特に限定されない。例えば、塗料が塗布された正極集電体22を、80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。そして、正極集電体22上に正極活物質層24が形成された正極20が得られる。
【0057】
負極30は、まず、主元素とドーパント元素とを含有する金属箔を準備する。ドーパント元素の重量濃度は0.01重量%〜10重量%、例えば0.1重量%〜3重量%でよい。次に、金属箔を熱処理する。熱処理雰囲気としては、酸素が除かれることが好ましい。熱処理雰囲気から酸素を除くことで、金属箔の酸化を防ぐことができる。従って、熱処理は、例えば真空下又は不活性ガス雰囲気下等で行うことができる。熱処理温度としては100℃〜1000℃、例えば150℃〜500℃、例えば200℃〜300℃を採用することができる。保持時間としては1時間〜10時間、例えば2〜5時間を採用することができる。このようなドーパント元素の重量濃度、熱処理雰囲気、熱処理温度、保持時間を採用することにより、所望の表面層を有する負極集電体32を得ることができる。
【0058】
代替的に、本実施形態に係る負極集電体32は、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ、真空蒸着、スパッタ等の方法を用いて金属箔上に表面層を形成することによって作製してもよい。また、所望の表面状態を得るために、金属箔上に表面層を形成した後に、真空中で熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで負極集電体32の表面状態が均一化し、リチウム二次電池100のサイクル特性が向上し得る。
【0059】
次いで作製した正極20と負極30とを、セパレータ10を介して積層し、電解液と共に、外装体50内に封入する。例えば、正極20と、負極30と、セパレータ10とを積層し、予め作製した袋状の外装体50に、発電部40を入れる。電解液は、外装体50内に注入してもよいし、発電部40内に含浸させてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
まず正極を準備した。正極活物質としてNCA(組成式:Li
1.0Ni
0.78Co
0.19Al
0.03O
2)、導電材としてカーボンブラック、バインダーとしてPVDFを準備した。これらを溶媒中で混合し、塗料を作製し、アルミ箔からなる正極集電体上に塗布した。正極活物質と導電材とバインダーの質量比は、95:2:3とした。塗布後に、溶媒は除去した。
【0062】
次いで負極集電体を準備した。まず、金属箔として0.1重量%のスズを含有する厚さ8μmの銅箔を用意した。即ち、実施例1では主元素として銅を用い、ドーパント元素としてスズを用いた。用意した銅箔を真空炉に入れた。真空炉の内部から酸素を除去するために、真空炉の内部を50Pa以下へと減圧し、アルゴンガスで0.5気圧まで復圧する工程を3セット繰り返し、その後、50Pa以下まで減圧した。その後、200℃まで5℃/分の昇温レートで昇温し、200℃で3時間保持した。その後、電気炉の加熱を停止し、電気炉温度が下がるのに合わせて銅箔を徐冷し、負極集電体を得た。得られた負極集電体を負極として用いた。
【0063】
XPS測定を行い、負極集電体の表面層の組成と負極集電体の金属箔の組成とを決定した。具体的には、負極集電体をアルゴンスパッタしながらXPS測定を行うことで、負極集電体の表面側から内部まで連続的に組成を観測した。エッチングレートはSiO
2に対して4.1nm/分とし、表面汚染の影響を除く目的で、初めに15秒間のアルゴンスパッタを行ってから測定を行った。測定開始直後に観測された負極集電体の組成を表面層の組成とした。また、約20nmスパッタすると厚さ方向に組成が凡そ一定になったため、表面から約20nmの領域で観測された組成を金属箔の組成とした。熱処理後の金属箔の組成は、熱処理前と同様であった。
【0064】
作製された正極と負極とをセパレータを介して積層し発電部を作製した。正極と負極の積層数は1層とした。セパレータには、ポリエチレンとポリプロピレンの積層体を用いた。得られた発電部を非水電解液に含浸させてから外装体内に封入した。電解液にはN−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(P
13−FSI)を用い、1mol/Lの濃度となるようにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li−TFSI)を溶解させたものを用いた。そして得られたリチウム二次電池の充放電を行い、初回クーロン効率を測定した。一般に、リチウム二次電池は、初回のクーロン効率が最も低く、サイクルにつれてクーロン効率が改善していく傾向を有する。従って、初回クーロン効率が高ければ寿命特性も良好であると考えることができる。
【0065】
(実施例2〜13)
実施例2〜13は、熱処理の温度と時間を変えることで表面層のドーパント元素の重量濃度を変えたことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0066】
(実施例14〜19)
実施例14〜19は、ドーパント元素としてシリコン、ジルコニウム又はアルミニウムを用い、熱処理の温度と時間を調節したことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0067】
(実施例20〜25)
実施例17〜25は、主元素としてニッケル、チタン、又は鉄を用い、熱処理の温度と時間を調節したことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0068】
(実施例26)
実施例26ではスパッタリングを用いて負極集電体を作製したことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。まず、金属箔として、ドーパント元素を含まない厚さ8μmの高純度銅箔を用意した。その後、高純度銅箔の表面上にスパッタリングで表面層を形成した。2.6重量%のスズを含有する銅箔をスパッタリングターゲットとして使用した。スパッタリング時の雰囲気ガスとしてAr(アルゴン)を50sccm供給した。1Paの圧力下で500Wの電力を投入して、室温で表面層を形成した。形成された表面層の厚さは5nmであった。スパッタリング後に、銅箔を真空炉に入れた。真空炉の内部から酸素を除去するために、真空炉の内部を50Pa以下へと減圧し、アルゴンガスで0.5気圧まで復圧する工程を3セット繰り返し、その後、50Pa以下まで減圧した。その後、200℃まで5℃/分の昇温レートで昇温し、200℃で3時間保持した。その後、電気炉の加熱を停止し、電気炉温度が下がるのに合わせて銅箔を徐冷し、負極集電体を得た。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0069】
(実施例27〜30)
実施例27〜30は、熱処理前の金属箔に含まれるドーパント元素の重量濃度を変え、熱処理の温度と時間を調節したことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0070】
(比較例1)
比較例1は、熱処理前の金属箔としてドーパント元素を含まない高純度銅箔を用いたことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0071】
(比較例2〜7)
比較例2〜7は、熱処理の温度と時間を変えることで表面層のドーパント元素の重量濃度を変えたことを除いて、実施例1と同様にリチウム二次電池を作製した。実施例1と同様に負極集電体の表面層及び金属箔の組成を測定し、作製したリチウム二次電池の初回クーロン効率を測定した。
【0072】
実施例及び比較例の結果を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示す通り、表面層が所定濃度のドーパント元素を含んでいる場合、初回クーロン効率が向上した。即ち、表面層が所定濃度のドーパント元素を含んでいる場合、リチウム二次電池の寿命が改善した。
【0075】
また、100サイクル後の実施例1に係る負極表面の光学顕微鏡の画像を
図2に示し、100サイクル後の比較例1に係る負極表面の画像を
図3に示す。表面層がドーパント元素を含まない比較例1では、リチウム二次電池の充電池の充電時に、リチウム金属の析出起点が、負極集電体上で不均一に形成される。その結果、リチウム金属が負極集電体上で樹上に成長してしまい、所謂デンドライトが形成されていることが分かる。一方で、表面層が所定量のドーパント元素を含有する実施例1では、リチウム金属が負極集電体上で比較的平坦に成長しおり、デンドライトの成長が抑制されていることが分かる。実施例1でデンドライトの成長が抑制されたのは、リチウム金属の析出起点が負極集電体上に多数かつ均一に存在していることによって、リチウム金属が負極集電体上で比較的均一に析出したからであると考えられる。
【解決手段】本発明に係る負極集電体は、銅、ニッケル、鉄、及びチタンからなる群から選択された主元素を含む金属箔と、前記金属箔の少なくとも一面上の表面層とを有し、前記表面層は、前記主元素と、スズ、シリコン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種のドーパント元素とを含み、前記表面層における前記ドーパント元素の重量濃度Wb(1)が1.8〜21.9重量%である。