(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。尚、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、当該範囲に数Aが下限値として、数Bが上限値として含まれる。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。また、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。
【0018】
本発明の電磁波シールドフィルムは、導電層および保護層を有してなる電磁波シールドフィルムであって、前記電磁波シールドフィルム0.16質量部を、水100質量部中、85℃、72時間の条件で抽出された抽出液中に含まれるリン元素の濃度(以下、電磁波シールドフィルムのリン抽出濃度と省略)が、300mg/L以下であることを特徴とする。
【0019】
<導電層>
電磁波シールドフィルム中の導電層は、電磁波等のノイズをシールドし、主にFPCのカバーコート層に貼り付ける層である。
導電層は、導電性接着剤から形成した導電層の第一の態様、および金属層と導電性接着剤から形成した導電層とを有する第二の態様の2つの態様が好ましい。第二の態様を採用するとシールド効果がさらに向上する。また、導電層は、等方導電性または異方導電性を有することが好ましい。等方導電性とは、電磁波シールドフィルムを水平に置いたときに垂直方向(縦方向)と水平方向(面方向)に導電することをいう。また異方導電とは、電磁波シールドフィルムを水平に置いたときに垂直方向(縦方向)に導電することをいう。等方導電性は、フレーク状や樹枝状の導電性フィラーを使用する方法等公知の方法で得られる。また、異方導電性は、球状または樹枝状の導電性フィラーを使用する方法等で得られる。なお、導電層が樹枝状の導電性フィラーを大量に含む場合、等方導電性が得られる。また導電層が樹枝状の導電性フィラーを少量含む場合、異方導電性が得られる。
【0020】
導電層は、導電性接着剤を使用して形成できる。導電性接着剤は、導電性を有する層を形成できる接着剤であれば特に制限はないが、熱硬化性樹脂、硬化剤、および導電性フィラーを含むことが好ましい。
【0021】
[熱硬化性樹脂]
本発明で使用する熱硬化性樹脂とは、硬化剤と反応可能な官能基を複数有する樹脂である。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらの中でも屈曲性と絶縁信頼性の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0022】
[硬化剤]
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えば、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物等の公知の化合物が挙げられる。硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。硬化剤は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜50質量部含むことが好ましく、3〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部がさらに好ましい。
【0023】
[導電性フィラー]
導電性フィラーは、導電特性を有し、電磁波シールド性を発揮できれば、特に限定されないが、金属フィラー、導電性セラミックス粒子、カーボンフィラーおよびそれらの混合物が挙げられる。金属フィラーとしては、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉等がある。カーボンフィラーとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノナノチューブからなる粒子、グラフェン粒子、グラファイト粒子、カーボンナノウォール等が例示できる。銀を含有することにより、より優れた導電性が得られる。これらのうちでは、コストの観点から、銀コート銅粉が特に好ましい。金属粉に対するコート層の被覆率は、被覆層による平均被覆率を60%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。平均被覆率を60%以上とすることで銅の溶出を抑制しマイグレーション耐性が向上する。
【0024】
導電性フィラーの形状は、特に限定されないが、好ましくは鱗片状粒子、デンドライト(樹枝)状粒子、繊維状粒子、針状粒子および球状粒子からなる群から選択される粒子である。これらは、単独でも混合して用いてもよい。
【0025】
本明細書における導電性フィラーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定されたD50平均粒子径であり、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。
【0026】
導電性フィラーは、熱硬化性樹脂100質量部に対して、50〜1500質量部を配合することが好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。
【0027】
導電層に加えて、保護層と導電層の間に金属層を設けても良い。導電層と金属層とを積層する方法は公知の方法を使用できる。方法は、例えば、剥離性シート上に金属層を形成する。さらに、別途、剥離性シート上に形成した導電層を、前記金属層とラミネートする方法等が挙げられる。
【0028】
金属層は、例えば、アルミニウム、銅、銀、金等の導電性の金属箔が好ましく、シールド性、接続信頼性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましく、金属層の薄さを追及すると電解銅がより好ましい。金属箔の場合、厚みは0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
また、金属は、金属箔以外に真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキ等で形成しても良い。これらの中でも量産性を考慮すれば真空蒸着が好ましい。金属箔以外の金属層の厚みは、通常0.005〜10μm程度である。
【0029】
導電性接着剤は、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0030】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して得ることができる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等に公知の攪拌装置を使用できる。
【0031】
<保護層>
保護層は、絶縁性樹脂組成物を使用して形成できる。絶縁性樹脂組成物は、絶縁性を有する層を形成できる組成物であれば特に制限はないが、導電性接着剤で説明した熱硬化性樹脂、硬化剤および上記任意成分を含むことができる。なお、保護層および導電層に使用する熱硬化性樹脂、硬化剤は、同一、または異なっていてもよい。絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤と同様の方法で得ることが出来る。
【0032】
<電磁波シールドフィルムのリン抽出濃度>
本発明の電磁波シールドフィルムは、0.16質量部を、水100質量部中、85℃、72時間の条件で抽出された抽出液中に含まれるリン元素の濃度(「リン抽出濃度」と略記することがある)が、300mg/L以下であって、240mg/L以下が好ましく、180mg/L以下がより好ましい。リン抽出濃度を300mg/L以下とすることで電磁波シールドフィルムを貼り付けたプリント配線板が高い難燃性を有しながらマイグレーション耐性を向上できる。
リン抽出濃度は、導電層および/または保護層に含まれるリン系化合物に由来する。より具体的には専らリン系難燃剤に由来する。リン系難燃剤は少量の添加で高い難燃性を付与する反面、マイグレーション試験のような高湿高温環境下外部に溶出しマイグレーション耐性を大幅に悪化させることが検討の末判明した。このような溶出を抑制する方策としてはリン系難燃剤を表面処理することで抑制できる。また、耐水性の高い熱硬化性樹脂や硬化剤を選定し、熱硬化後の架橋密度を上げることによっても調整できる。尚、本明細書におけるリン抽出濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって求めた数値であり、具体的な測定方法は実施例で後述する。すなわち本発明の電磁波シールドフィルムは高い難燃性を付与するため一定量のリン系難燃剤を含有しつつも、溶出するりん元素の濃度が低いため、貼り付けたプリント配線板のマイグレーションが発生しにくい。
【0033】
[リン系難燃剤]
リン系難燃剤について説明する。リン系難燃剤としては、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート等の(ポリ)リン酸塩系化合物、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物等が好ましく、ホスファゼン化合物、ホスフィン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、を用いることがより好ましく、特にホスフィン化合物のうちホスフィン酸塩が好ましく、ホスフィン酸アルミニウムがさらに好ましい。
【0034】
リン系難燃剤に加え、炭酸アンモニウム、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、等の無機難燃剤を併用することができる。これらの中でもメラミンシアヌレート、水酸化化合物等を用いることが好ましい。
【0035】
これら難燃剤を粒子状で使用する場合、粒子の平均粒子径は、0.1〜25μmであることが好ましい。0.1μmに近い平均粒子径を示す難燃剤を用いた場合、難燃剤による改質効果が得やすく、さらに分散性や分散液の安定性が向上しやすい。また、25μmに近い平均粒子径を示す難燃剤を用いた場合、硬化物の機械特性が向上しやすくなる。
なお、本発明でいう難燃剤の平均粒子径D95は、粒度分布において体積積算値95%が含まれる時の粒径を示す。
【0036】
上記難燃剤は表面処理されていることが、電磁波シールドフィルムのリン抽出濃度を300mg/L以下にし、マイグレーション耐性を向上する点から好ましい。
【0037】
表面処理難燃剤は、難燃剤の表面の少なくとも一部に、無機酸化物を付着させたものである。付着させる無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが好ましく、シリカおよびジルコニアがより好ましい。
【0038】
付着させる無機酸化物の量は、前記の難燃剤100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部〜10質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部であることがより好ましい。0.01質量部以上とすることによりリン抽出濃度を抑制しマイグレーション耐性を向上できる。また10質量部以下とすることにより難燃性が優れる。
【0039】
難燃剤の表面の少なくとも一部に、無機酸化物を付着させる方法としては特に限定されないが、噴霧法、ゾルゲル法等が用いられる。例えば、無機酸化物の原料を表面処理の対象である難燃剤に噴霧したり、無機酸化物の原料と表面処理の対象である難燃剤とを混合しスラリーにしたりした後に、無機酸化物の原料を加水分解したり焼成したりすることによって、難燃剤の表面の少なくとも一部に無機酸化物を付着することができる。前記スラリーは、融解状態の無機酸化物の原料と表面処理の対象である難燃剤とを混合することによって得ることもできるし、いわゆる有機溶媒中に無機酸化物の原料と表面処理の対象である難燃剤とを分散することによって得ることもできる。
【0040】
本発明では、難燃剤の表面の少なくとも一部に、無機酸化物を付着させた表面処理難燃剤の表面に、さらにシランカップリング剤を付着させたものを用いることが好ましい。シランカップリング剤を付着させたものを用いることによって、難燃剤表面の疎水性が向上し、さらにマイグレーション耐性を上げることができる。
【0041】
上述のシランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−エタンジアミン,N−{3−(トリメトキシシリル)プロピル}−,N−{(エテニルフェニル)メチル}誘導体・塩酸塩、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシランに加え、官能基がアルコキシ基で保護されたシランカップリング剤や、スルフィド・ポリスルフィド系のシランカップリング剤、ポリマー型のアルコキシオリゴマータイプや多官能基タイプシランカップリング剤などを用いることができる。
【0042】
付着させるシランカップリング剤の量は、前記の難燃剤100質量部に対し、0,005〜5質量部であることが好ましく、0.01〜0.5質量部であることがより好ましい。付着させるシランカップリング剤量が0.005質量部以上であることによってマイグレーション耐性が向上する。また付着量が5質量部以下であることによって難燃性が優れる。
【0043】
表面処理難燃剤の表面にさらにシランカップリング剤を付着させる方法としては特に限定されないが、乾式法もしくは高精度な処理が可能である湿式法が好適に利用される。この湿式法は無機酸化物の付着した表面処理難燃剤を分散させた分散液中にシランカップリング剤を添加し、表面処理難燃剤の表面にシランカップリング剤を結合させ、その後分散媒を除去して乾燥させる方法である。
【0044】
リン系難燃剤は導電層、保護層のいずれに含有してもよいが、難燃性を向上する点から最外層となる保護層に含有することが好ましい。
【0045】
リン系難燃剤は導電層または、保護層の固形分中それぞれにおいて3〜26質量%含有することが好ましく、5〜22質量%がより好ましく、7〜20質量%がさらに好ましい。3質量%以上とすることで難燃性を高めることができる。26質量%以下とすることでマイグレーション耐性及び屈曲性を良好なものとすることができる。
【0046】
<電磁波シールドフィルムの銅抽出濃度>
本発明の電磁波シールドフィルムは0.16質量部を、水100質量部中、85℃、72時間の条件で抽出された抽出液中に含まれる銅元素の濃度(「銅抽出濃度」と略記することがある)が、400mg/L以下が好ましく、300mg/L以下がより好ましく、200mg/L以下がさらに好ましい。銅抽出濃度を400mg/L以下とすることで電磁波シールドフィルムを貼り付けたプリント配線板のマイグレーション耐性および屈曲性を向上できる。
銅抽出濃度は主に導電層の銅を主剤とする導電性フィラー並びに銅系の金属層に由来するものであり、導電性フィラーは銅が溶出しないよう、銅とは異なる金属で被覆率が70%以上となるように被覆された導電性フィラーを使用することが好ましい。また、導電層に銅系の金属層を積層する場合には金属層の表面を銅以外の金属で表面保護することによって、銅抽出濃度を抑制できる。また、リン抽出濃度と同様に、疎水性の高い熱硬化性樹脂や硬化剤を配合したり、熱硬化後の架橋密度をコントロールすることによっても調整できる。
【0047】
銅抽出濃度はリン抽出濃度と同様の方法で測定し、銅元素の定量分析を行うことで得ることができる。
【0048】
電磁波シールドフィルムの作製方法を説明する。まず導電層の作製は、公知の方法を使用できる。例えば、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電層を形成する方法、または、Tダイのような押出成形機を使用して導電性接着剤をシート状に押し出すことで形成することもできる。
【0049】
塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等の公知の塗工方法を使用できる。塗工に際して、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。
【0050】
導電層の厚みは、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましく、4〜15μmがさらに好ましい。厚みが1〜100μmの範囲にあることで導電性と、その他の物性とのバランスを取り易くなる。
【0051】
保護層は、絶縁性樹脂組成物を使用して導電層と同様の方法で作成することができる。または、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の絶縁性樹脂を成形したフィルムを使用することもできる。保護層の厚みは、通常2〜12μm程度である。
【0052】
電磁波シールドフィルムは、例えば、導電層と保護層と貼り合わせて作製できる。なお、前記したとおり、保護層と導電層との間には、公知の方法で金属層を設けてもよい。
【0053】
電磁波シールドフィルムは、導電層に含まれる熱硬化性樹脂と硬化剤が未硬化状態で存在し、配線板と加熱圧着により硬化することで、所望の接着強度を得ることが出来る。なお、前記未硬化状態は、硬化剤の一部が硬化した半硬化状態を含む。
【0054】
剥離性シートは、紙やプラスチック等の基材に公知の剥離処理を行ったシートである。
【0055】
なお、電磁波シールドフィルムは、異物の付着を防止するため、導電層および保護層に剥離性シートを貼り付けた状態で保存することが一般的である。
【0056】
電磁波シールドフィルムは、導電層および保護層のほかに、他の機能層を備えることができる。他の機能層とは、ハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、熱伝導性、低誘電率、高誘電率性または耐熱性等の機能を有する層である。
【0057】
本発明の電磁波シールドフィルムは、電磁波をシールドする必要がある様々な用途に使用できる。例えば、フレキシブルプリント配線板は元より、リジッドプリント配線板、COF、TAB、フレキシブルコネクタ、液晶ディスプレイ、タッチパネル等に使用できる。
【0058】
《プリント配線板》
続いて、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、電磁波シールドフィルムと、カバーコート層と、信号配線および絶縁性基材を含む配線板とを備えている。
【0059】
<カバーコート層>
カバーコート層は、配線板の信号配線を覆い外部環境から保護する絶縁材料である。本発明のプリント配線板におけるカバーコート層は、紫外線硬化型のソルダーレジスト、ドライレジストフィルムから形成されてなることが好ましく、プリント配線板の製造コストダウンの点からドライレジストフィルムがより好ましい。このようなソルダーレジストまたはドライレジストフィルムから形成されてなるカバーコート層を用いることで、信号配線の狭ピッチ化に対応した、微細な穴の形成が可能である。
【0060】
カバーコート層は意匠性を高め、信号回路の設計情報の流出を防止する観点から、黒色とすることが好ましい。この場合、ソルダーレジストおよびドライレジストフィルムは黒色系着色剤を含有する。黒色系着色剤は、黒色顔料、ならびに赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアンおよびマゼンタ等の顔料を複数含む混合系着色剤が好ましい。混合系着色剤は、複数の顔料を減色混合することで黒色を得ることができる。
【0061】
黒色顔料は、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、アニリンブラック等が挙げられる。これらの中でも漆黒性とマイグレーション耐性を向上する観点から、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒および、混合系着色剤が好ましく、ペリレンブラックおよびチタンブラックがより好ましい。特に好ましくは、チタンブラックである。
【0062】
黒色系着色剤は、ドライレジストフィルム100質量%中に0.5〜40質量%含むことが好ましく、1〜30質量%がより好ましい。黒色系着色剤を0.5〜40質量%含むことで、高い漆黒性と、マイグレーション試験耐性を両立し易くなる。
【0063】
ソルダーレジストおよびドライレジストフィルムは、従来公知のものを用いることができ、通常、熱硬化性樹脂、感光性樹脂、モノマー、光開始剤および増感剤等を含む。
【0064】
ドライレジストフィルムによりカバーコート層を形成する場合、絶縁性基材の信号配線上に真空ラミネーターによってドライレジストフィルムを貼り合わせる。その後、ドライレジストフィルムに紫外線を照射し光硬化させた後、アルカリ水溶液によって現像することで、未照射部が洗い流される。現像後ドライレジストフィルムを130〜190℃でキュアし硬化させてカバーコート層を形成する。
ソルダーレジストを使用する場合は、ソルダーレジストを信号配線上にコーティングし乾燥させる。その後の工程はドライレジストフィルムと同様の手順でカバーコート層を形成する。
【0065】
カバーコート層の厚みは10〜70μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。カバーコート層の厚みを10〜70μmの範囲にすることで、プリント配線板の屈曲性とマイグレーション耐性を向上することができる。
【0066】
カバーコート層のガラス転移温度(Tg)は40℃〜120℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましい。カバーコート層のガラス転移温度(Tg)を40℃〜120℃にすることで、屈曲性とマイグレーション耐性を向上することができる。
【0067】
<信号配線および絶縁性基材を含む配線板>
信号配線は、アースを取るグランド配線、電子部品に電気信号を送る配線回路を含み、銅箔をエッチング処理することで形成することが一般的である。
絶縁性基材は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド等の屈曲可能なプラスチックが好ましく、ポリイミド、液晶ポリマーがより好ましい。
【0068】
カバーコート層を形成した配線板と、電磁波シールドフィルムとの加熱圧着は、温度150〜190℃程度、圧力1〜3MPa程度、時間1〜60分程度の条件で行うことが一般的である。加熱圧着により熱硬化性樹脂と硬化剤が反応する。なお、硬化を促進させるため、加熱圧着後に150〜190℃で30〜90分ポストキュアを行う場合もある。なお、電磁波シールドフィルムは、加熱圧着後に電磁波シールド層ということがある。
【0069】
本発明のプリント配線板は、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に備えることが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」とは、それぞれ「質量部」及び「質量%」に基づく値である。
【0071】
<平均粒子径D50およびD95>
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性複合微粒子を測定して得た平均粒子径D50の数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。分布は体積分布、屈折率の設定は1.6とした。当該粒子径であればよく、一次粒子でも二次粒子でもよい。難燃剤の平均粒子径D95は平均粒子径D50と同様に測定して得た平均粒子径D95の数値であり、粒子径累積分布における累積値が95%の粒子径である。
【0072】
<酸価の測定>
共栓付き三角フラスコ中に熱硬化性樹脂を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
酸価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.1)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
F:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0073】
<被覆率>
被覆率は、X線光電子分光分析(ESCA)により求めた。専用の台に両面粘着テープを貼り、両面粘着テープ上に導電性フィラーを落とした後、圧縮空気で余分な導電性フィラーを飛ばした。そして、X線光電子分光分析装置(ESCA AXIS-HS、島津製作所社製)にて、異なる5箇所を測定した。そして、解析ソフト(Kratos社製)により被覆層(銀)と核体(銅)のピーク面積から算出される、被覆層(銀)の質量濃度%の平均値を銀の被覆率とした。詳細な条件は、AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)、X線源:Dual(Mg)15kV,10mA Pass energy 80eV、Step:0.1 eV/Step、Speed:120秒/元素、Dell:300、積算回数:8の条件でAg3d:2とCu2P:1のピーク面積から銀と銅の質量濃度を求め、銀の質量濃度の割合を被覆率とした。
【0074】
以下、実施例で使用した材料を示す。
熱硬化性樹脂1:ポリウレタン系樹脂 酸価10[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
熱硬化性樹脂2:ポリカーボネート系樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
熱硬化性樹脂3:スチレン系樹脂 酸価11[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
熱硬化性樹脂4:フェノキシ系樹脂 酸価15[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
硬化剤1:エポキシ樹脂、「デナコールEX830」(2官能エポキシ樹脂 エポキシ当量=268g/eq)ナガセケムテックス社製
硬化剤2:エポキシ樹脂、「YX8000」(水添ビスフェノールエポキシ樹脂 エポキシ当量=210g/eq)三菱化学社製
硬化剤3:エポキシ樹脂、「jER157S70」(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量=208g/eq)三菱化学社製
硬化剤4:アジリジン化合物、「ケミタイト PZ−33」(日本触媒社製)
【0075】
導電性フィラー1:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50平均粒子径= 11.0μm、銀の被覆率=70%」( 福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー2:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50平均粒子径= 11.0μm、銀の被覆率=80%」( 福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー3:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50平均粒子径= 11.0μm、銀の被覆率=90%」( 福田金属箔粉工業社製)
導電性フィラー4:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50平均粒子径= 11.0μm、銀の被覆率=100%」( 福田金属箔粉工業社製)
<銅箔>
キャリア付き電解銅箔:18μmのキャリア銅箔に3μmの電解銅箔(電解銅箔部は、開口部面積1590μm
2、開口部数600個/cm
2、 開口率1%が形成されている)
剥離性シート:表面にシリコーン離型剤をコーティングした厚みが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム
【0076】
[リン系難燃剤1]
表面処理がなされていない平均粒子径D95が5μmのホスフィン酸アルミニウムを用いた。
【0077】
[リン系難燃剤2]
オルトケイ酸テトラエチル(以下、TEOSともいう)のエタノール溶液(濃度:0.4%)800mlに、後述する方法で求めたD95粒子径が5μmのホスフィン酸アルミニウムを10g加え、濃NH
3水でpHを12に調整した後、3時間撹拌し、ろ過、エタノールで洗浄することで、ホスフィン酸アルミニウム1の表面にシリカが付着しているリン系難燃剤2を得た。
表面に付着しているシリカの量を、後述するICP発光分光分析法により求めたところ、ホスフィン酸アルミニウム1が100部に対し、0.01部であった。
【0078】
[リン系難燃剤3]
TEOSのエタノール溶液に加えるホスフィン酸アルミニウムの量を代えた以外は合成例1と同様にして、ホスフィン酸アルミニウムが100部に対し、表面に付着しているシリカの量が0.1部であるリン系難燃剤3を調整した。
【0079】
[リン系難燃剤4、5]
リン系難燃剤2を100部ミキサーに入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、シランカップリング剤である東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6610を10部、エタノール10部を噴霧し、150℃で2時間加熱撹拌し、溶剤を除去して冷却した。このようにして前記リン系難燃剤2の表面にさらにシランカップリング剤が付着したリン系難燃剤4を得た。噴霧に使うシランカップリング剤の量を変更する以外は同様にして、リン系難燃剤5を調整した。リン系難燃剤4およびリン系難燃剤5中のシランカップリング剤の量は、ホスフィン酸アルミニウム100部に対して、それぞれ0.01および0.5部であった。
【0080】
[リン系難燃剤6]
平均粒子径D95が20μmのホスフィン酸マグネシウム6水和物を用いた。
【0081】
[リン系難燃剤7]
平均粒子径D95が17μmのポリリン酸メラミンを用いた。
【0082】
[リン系難燃剤8]
平均粒子径D95が20μmの赤リンを用いた。
【0083】
<ICP発光分光分析法によるシリカ表面処理の定量>
表面処理難燃剤0.25gを精秤し、硝酸7mlを加え、マイクロウェーブ型湿式分解装置を用い、150℃で2分、180℃で2分、210℃で10分と段階的に続けて加熱し、硝酸で分解処理した後、蒸留水で50ml定溶とし室温にてICP測定(装置名:ICP発光分光分析装置 SPECTRO ARCOS アメテック社製)を行った。
【0084】
[実施例1]
熱硬化性樹脂1を100部、導電性フィラー1を320部、硬化剤1を30部、硬化剤2を10部および硬化促進剤を1部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性樹脂組成物を得た。次いで、導電性樹脂組成物を剥離性シート上に、乾燥厚みが10μmになるようにバーコーターを使用して塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電層を得た。
【0085】
別途、熱硬化性樹脂1を100部、硬化剤1を30部、硬化剤2を10部、リン系難燃剤2を3部および硬化促進剤を1部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性性樹脂組成物を得た。この絶縁性樹脂組成物を剥離性シートにバーコーターを用いて乾燥厚みが10μmになるように塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥し保護層を得た。この保護層をキャリア付き電解銅箔の電解銅箔側に貼り合せた後、キャリア銅箔を剥がし、保護層上に電解銅箔を積層した。次に、電解銅箔面に導電層を貼り合わせることで、「剥離性シート/保護層/電解銅箔/導電層/剥離性シート」からなる電磁波シールドフィルムを得た。
【0086】
[実施例2〜19、比較例1]
組成を表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様に行うことで実施例2〜19、比較例1の電磁波シールドフィルムをそれぞれ得た。尚、表中の数値は特に断りのない限り部を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0087】
[実施例20]
熱硬化性樹脂1を100部、導電性フィラー4を320部、硬化剤1を30部、硬化剤2を10部および硬化促進剤を1部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性樹脂組成物を得た。次いで、導電性樹脂組成物を剥離性シート上に、乾燥厚みが10μmになるようにバーコーターを使用して塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電層を得た。
【0088】
別途、熱硬化性樹脂1を100部、硬化剤1を30部、硬化剤2を10部、リン系難燃剤2を3部および硬化剤4を1部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性樹脂組成物を得た。
この絶縁性樹脂組成物を剥離性シートにバーコーターを用いて乾燥厚みが10μmになるように塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥し保護層を得た。さらに導電層と保護層をラミネーターで張り合わせることで実施例1の電磁波シールドフィルムを得た。
【0089】
得られた電磁波シールドフィルムについて以下の物性を評価した。
【0090】
<電磁波シールドフィルムのリン抽出濃度>
10cm×10cmのサイズにカットした電磁波シールドフィルムを用意した。電磁波シールドフィルムの保護層および導電層面にはそれぞれ剥離性シートが貼り付けてあり、これをそのまま150℃、2MPa、30分の条件で熱プレスし、保護層および導電層を熱硬化させた試験片を得た。試験片の両面の剥離性シートを剥がした後、試験片0.16部を切り取って、イオン交換水100部に浸した。次いで、これを85℃、72時間の条件で静置し、ろ過処理することで抽出液を得た。抽出液を超純水で1〜100倍に希釈し、ICP発光分光分析装置(AMETEK社製「SPECTRO ARCOS(登録商標);FHS12」)によってリン元素の定量分析を行うことでリン抽出濃度を測定した。定量分析の際には72時間85℃加熱したイオン交換水をブランクとして測定し、抽出液中に含まれる正味のリン抽出濃度を求めた。
【0091】
<電磁波シールドフィルムの銅抽出濃度>
リン抽出濃度と同様の方法で銅抽出濃度を決定した。
【0092】
<マイグレーション試験>
カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂(トーヨーケム株式会社製:酸価=67mgKOH/g、エチレン性不飽和基当量=765g/eq)の固形分100部に対して、硬化剤として、エピコート1031S(三菱化学株式会社製:多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂);10部、BL3175(住化バイエルウレタン株式会社製:イソシアヌレート型ブロックイソシアネート)10部、難燃剤としてホスフィン酸アルミニウムEXOLITOP−935(クラリアントジャパン株式会社製);20部、着色剤として銅フタロシアニン顔料LIONOL BLUE FG7350(トーヨーカラー株式会社製);1部、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン);5部、光増感剤としてDETX−S(日本化薬株式会社製:2,4−ジエチルチオキサントン);0.5部を均一に溶解・混合し、横型サンドミルDYNO−MILL(株式会社シンマルエンタープライズ製)を使用して、グラインドゲージによる粒子径が10μm未満になるまで分散し、感光性樹脂組成物を得た。
【0093】
上記で得られた感光性樹脂組成物を、ドクターブレードを使用して乾燥後の厚さが40μmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(S-12 厚さ12μm 東レ・デュポン社製)上に均一塗工して100℃で5分乾燥させた後、室温まで冷却し被膜を形成した。さらに得られた被膜を二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)製の剥離性フィルムに貼り合わせることで感光性カバーレイフィルムを得た。
【0094】
図1を参照してマイグレーション試験を説明する。厚さ16μmの銅箔と厚さ25μmポリイミドフィルムの積層体をエッチング処理することで
図1(1)の平面図に示した通り、ポリイミドフィルム1上にライン/スペース=0.05mm/0.05mmの、カソード電極接続点2’を備えたカソード電極用櫛型信号配線2と、アノード電極接続点3’を備えたアノード電極用櫛型信号配線3とをそれぞれ形成した。次いで感光性カバーレイフィルムから、OPPフィルムを剥がし、
図1(2)の平面図に示した通り、カソード電極用櫛型信号配線2およびアノード電極用櫛型信号配線3を覆い、カソード電極接続点2’付近およびアノード電極接続点3’付近が露出する程度の大きさに感光性カバーレイフィルを重ね、真空ラミネートすることで感光性カバーレイフィルムを積層体に貼り合わせた。なお真空ラミネート条件は加熱温度60℃、真空時間60秒、真空到達圧2hPa、圧力0.4MPa、加圧時間60秒であった。さらに積層体の感光性カバーレイフィルムの上に厚さ120μmのPETマイラーシートを重ね、その上方から水銀ショートアークアンプ(5kW)を使用して5分間露光した。次いで、PETマイラーシートを剥がし、現像機で40秒間現像(現像液:濃度1%の炭酸ナトリウム水溶液、液温30℃、スプレー圧0.2 MPa)した。現像後、150℃の熱風乾燥器で感光性カバーレイフィルムを1時間熱硬化(ポストキュア)することでカバーコート層4付き配線板を得た。
さらに得られた電磁波シールドフィルムの導電層側から剥離性シートを剥がし、露出した導電層面をカバーコート層4の上に貼り合わせることで
図1(3)に示す平面図の通りに積層した試料を得た。得られた試料は、
図1(4)に示す試料のA−A’断面図に記載した通り導電層5bはカソード電極用櫛型信号配線2と電気的に接続している。5aは導電層5bの表面に積層された保護層である。
【0095】
得られた試料を150℃、2.0MPa、30minの条件で熱プレスすることで熱硬化性樹脂を硬化させた。次いで、試料を85℃−85%RH(相対湿度)の雰囲気下で、アノード電極接続点3’にアノード電極を接続し、カソード電極接続点2’にカソード電極を接続した上で、電圧50Vを印加し500時間継続した。そして500時間を経過するまでの抵抗値の変化を継続して測定した。なお下記「リークタッチ」とは、短絡による絶縁破壊があり、瞬間的に抵抗が低下し電流が流れることをいう。リークタッチがない場合は絶縁性が低下しない。評価基準は以下の通りである。
◎:500時間経過後の抵抗値が1×10
7Ω以上、かつリークタッチ無し。極めて良好。
○:500時間経過後の抵抗値が1×10
7Ω以上、かつリークタッチ1回有り。良好。
△:500時間経過後の抵抗値が1×10
7Ω以上、かつリークタッチ2回有り。実用上問題ない。
×:500時間経過後の抵抗値が1×10
7Ω未満、または、
500時間経過後の抵抗値が1×10
7Ω以上、かつリークタッチ3回以上有り。実用不可。
【0096】
<屈曲性>
屈曲性をJIS C6471に準拠して屈曲性についてMIT試験にて測定した。
電磁波シールドフィルムを幅15mm、長さ120mmの大きさに準備した。また、電磁波シールドフィルムを貼り付ける被着体は、ポリイミドフィルム(厚さ12.5μm)と銅箔(厚さ18μm)とを積層した2層CCLを元に、JIS C6471に基づく形状に配線を形成した。次いで配線上に上記マイグレーション試験と同様に感光性カバーレイフィルムを貼付、露光、現像後、にポストキュアを行なうことでカバーコート層を形成した。さらに、電磁波シールドフィルムの導電層側の剥離性シートを剥離して露出した導電層をカバーコート層に対して、150℃、30分間、2.0MPaの条件で圧着することで試料を得た。得られた試料についてPCT試験(条件:121℃、100%RH、2気圧、24時間)を行った。PCT試験後の試料について、温度25℃、湿度50%雰囲気下で、曲率半径0.38mm、荷重500g、速度180回/minの条件でMIT試験機を使用して屈曲性を測定した。評価は、屈曲を3000回行い配線が断線するまでの屈曲回数を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:3000回以上で断線しなかった。 極めて良好。
○:断線までに2700回以上、3000回未満 良好
△:断線までに2500回以上、2700回未満 実用上問題ない。
×:2500回未満で断線した。 実用不可。
【0097】
<難燃性>
(2)難燃性試験
剥離性シート2を剥がした電磁波シールドフィルムを用意し、露出した導電性接着剤層に、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン50H」)を150℃、1MPa、30minの条件で圧着し、「電磁波シールドフィルム/カプトン50H/電磁波シールドフィルム」の難燃性試験用試料を得た。UL94規格V−0、VTM−0グレードを達成できるか否かにより難燃性を評価した。
◎:UL94規格V−0グレードを達成できる。極めて良好。
○:UL94規格VTM−0グレード試験で、試験片10本中 全て燃焼せず。良好。
△:UL94規格VTM−0グレード試験で、試験片10本中1本 燃焼。実用上問題ない。
×:UL94規格VTM−0グレード試験で、試験片10本中2本以上燃焼。実用不可。
【0098】
【表1】
【解決手段】導電層および保護層を有してなる電磁波シールドフィルムであって、 前記電磁波シールドフィルム0.16質量部を、水100質量部中、85℃、72時間の条件で抽出された抽出液中に含まれるリン元素の濃度が、300mg/L以下である電磁波シールドフィルム。好ましくは、更に前記抽出液中に含まれる銅元素の濃度が、400mg/L以下である電磁波シールドフィルム。