(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二次元コードが設けられる領域における前記サイドゴムの平均厚さは、前記二次元コードを囲み、前記二次元コードと接する縁における前記サイドゴム部材の平均厚さより厚い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記二次元コードは、2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域と、前記ドットパターン領域の周りを、前記濃淡要素のうち淡い要素が囲む空白領域と、を備え、
前記ドットパターン領域におけるサイドゴム部材の平均厚さは、前記空白領域における前記サイドゴム部材の平均厚さより厚い、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
前記二次元コードにおける前記サイドゴムの厚さの分布の中で前記サイドゴムの最大厚さとなる位置は、前記ドットパターン領域にある、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
前記二次元コード中の2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域におけるタイヤ径方向の最外位置と、最内位置と、前記最外位置と前記最内位置の間を2等分する中間位置と、から定まる前記サイドウォールの表面の曲率半径が30〜200mmである領域に、前記ドットパターン領域は形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような二次元コードをサイドウォールに刻印して複数のドット孔を設けた空気入りタイヤは、新品時において二次元コードの読み取りは十分可能であるが、屋外の環境下、荷重を負荷して転動した場合に二次元コードの読み取りが低下する場合があった。二次元コードの読み取りとは、二次元コード読み取り器、例えば、携帯端末による二次元コードの読み取りであり、読み取りの低下とは、読み取りを失敗する場合が多くなることをいう。
また、ドット孔はサイドウォール表面から略垂直に凹んだ形状を有するので、クラックの発生の核となり易く、サイドゴムの深さ方向に、さらに、サイドウォール表面に沿ってクラックが進展し易い。このため、サイドゴムの耐久性、ひいては空気入りタイヤの耐久性の低下が懸念される可能性がある。
空気入りタイヤに設けられる二次元コードは、空気入りタイヤの使用中に二次元コードに記録された情報を読み取って活用することが行われるため、長期使用の際の二次元コードの読み取り性の低下を抑制することは好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、空気入りタイヤを長期使用しても二次元コードの読み取り性の低下を抑制することができる、二次元コードの刻印された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びて環状を成したトレッド部をタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられた一対のサイドウォールを備える。
前記サイドウォールのいずれか一方には、サイドゴムの表面に、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成される2種類の濃淡要素でドットパターンを形成した二次元コードが刻印されており、
前記二次元コードの刻印位置における前記サイドゴムの厚さは、前記サイドゴム全体の平均厚さの110%〜150%である。
【0008】
前記二次元コードが設けられる領域における前記サイドゴムの平均厚さは、前記二次元コードを囲み、前記二次元コードと接する縁における前記サイドゴム部材の平均厚さより厚い、ことが好ましい。
【0009】
前記二次元コードは、2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域と、前記ドットパターン領域の周りを、前記濃淡要素のうち淡い要素が囲む空白領域と、を備え、
前記ドットパターン領域におけるサイドゴム部材の平均厚さは、前記空白領域における前記サイドゴム部材の平均厚さより厚い、ことが好ましい。
【0010】
前記二次元コードにおける前記サイドゴムの厚さの分布の中で前記サイドゴムの最大厚さとなる位置は、前記ドットパターン領域にある、ことが好ましい。
【0011】
前記二次元コードは、QRコード(登録商標)であり、
前記QRコード(登録商標)のデータセルを表示したデータセル領域におけるサイドゴムの平均厚さは、前記QRコード(登録商標)の切り出しシンボルを表示した切り出しシンボル領域におけるサイドゴム部材の平均厚さに比べて厚い、ことが好ましい。
【0012】
前記二次元コードにおける前記サイドゴムの厚さの分布の中で前記サイドゴムの最大厚さとなる位置は、前記データセル領域にある、ことが好ましい。
【0013】
前記二次元コード中の2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域におけるタイヤ径方向の最外位置と、最内位置と、前記最外位置と前記最内位置の間を2等分する中間位置と、から定まる前記サイドウォールの表面の曲率半径が30〜200mmである領域に、前記ドットパターン領域は形成される、ことが好ましい。
【0014】
前記空気入りタイヤは、前記サイドウォールにタイヤ周方向に一周するリッジ状に突出したリムプロテクバーが設けられ、
前記二次元コードは、タイヤ径方向において、前記空気入りタイヤのカーカスプライのタイヤ幅方向の最大幅位置と前記リムプロテクトバーとの間の領域に形成される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述の空気入りタイヤによれば、空気入りタイヤを長期使用しても二次元コードの読み取り性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて詳細に説明する。
本明細書において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤ赤道線CL(
図1参照)から離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道線CLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
【0018】
本明細書で言う二次元コードは、横方向にしか情報を持たない一次元コード(バーコード)に対し、二方向に情報を持つマトリックス表示方式のコードである。二次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)、データマトリクス(登録商標)、Maxicode、PDF−417(登録商標)、16Kコード(登録商標)、49コード(登録商標)、Aztecコード(登録商標)、SPコード(登録商標)、ベリコード(登録商標)、及び、CPコード(登録商標)を含む。
【0019】
(空気入りタイヤ)
図1は、一実施形態の空気入りタイヤ10(以降、単にタイヤ10という)の構成の一例を示す図である。
図1は、タイヤ赤道線CLに対してタイヤ幅方向の一方の側のプロファイル断面を示す。
【0020】
タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、タイヤ幅方向両側の一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイドウォール部10Sと、を備える。トレッド部10Tは路面と接触する部分である。サイドウォール部10Sは、トレッド部10Tをタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられた部分である。ビード部10Bは、サイドウォール部10Sに接続され、サイドウォール部10Sに対してタイヤ径方向内側に位置する部分である。
【0021】
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16と、を有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム18と、サイドゴム20と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26と、を主に有する。
【0022】
カーカスプライ12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ12は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延びている。カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるべルト14が設けられている。ベルト14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材で構成され、下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅が上層のベルト材14bのタイヤ幅方向の幅に比べて長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ12の膨張を抑制する。
【0023】
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム18が設けられ、トレッドゴム18の両端部には、サイドゴム20が接続されてサイドウォール部10Sを形成している。サイドゴム20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわした後のカーカスプライ12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム26が設けられている。
この他に、ベルト材14bとトレッドゴム18との間には、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した3層のベルトカバー30を備える。ベルトカバー30は、必要に応じて設ければよく、必須ではない。ベルトカバー30の層数も3枚に限定されず、1枚あるいは2枚であってもよい。
このようなタイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に二次元コード40が設けられている。
図1では、2次元コード40の配置位置は太線で示されている。
【0024】
(サイドウォール部10S、二次元コード40)
図2は、タイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に設けられた一実施形態の二次元コード40の例を説明する図である。
サイドウォール部10Sのいずれか一方には、サイドゴム20の表面に、二次元コード40が刻印されている。二次元コード40は、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成したものである。二次元コード40は、レーザ光をサイドウォール部10Sの表面で集束させてエネルギを集中しサイドゴム20を局所的に加熱焼却して表面に微小なドット孔を複数刻印することにより形成されたパターンである。ドット孔は、例えば円錐形状の孔であり、トレッド表面における直径は、例えば0.1〜1.0mmであり、深さは、例えば0.3〜1.0mmである。
二次元コード40は、二次元コードの濃淡要素を区分けする単位セルのうち濃領域の単位セル領域に1つのドット孔(凹部)が設けられて構成されている。単位セルのうち淡い領域の単位セル領域には、ドット孔(凹部)は設けられない。すなわち、二次元コード40は、格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域に対応して、ドット孔(凹部)それぞれが濃淡要素の濃い1つの単位セル領域を形成するように、ドット孔(凹部)が配置された構成を有する。
図2中、単位セル領域の濃領域は、黒く塗りつぶされた領域で示されている。
【0025】
図2に示す2次元コード40は、QRコード(登録商標)であり、2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域42と、ドットパターン領域42の周りを、濃淡要素のうち淡い要素が囲む、淡い要素で構成された空白領域44と、を備える(
図2では、空白領域44の外縁を明確にするために、枠線を記載している)。空白領域44の幅は、例えば、ドットパターン領域42内の単位セル領域の寸法サイズの4〜5倍であることが好ましい。例えば、空白領域44は、ドットパターン領域42の幅の15〜25%であることが好ましい。
図2に示す二次元コード40はQRコード(登録商標)であるので、ドットパターン領域42は、QRコード(登録商標)のデータセルを表示したデータセル領域42aと、切り出しシンボルを表示した切り出しシンボル領域42bと、を含む。
【0026】
このような二次元コード40が設けられる位置は、二次元コード40の各位置におけるサイドゴム20の厚さが、サイドゴム20全体の平均厚さの110%〜150%である領域に限定される。サイドゴム20は、タイヤ周方向に沿って一定の厚さを有するが、タイヤ径方向では、厚さが変化する。このようなサイドゴム20を、タイヤ径方向の限定された領域に設けることにより、タイヤ10が紫外線及び酸素雰囲気に晒される屋外で長期使用されても二次元コード40の読み取り性の低下を抑えることができる。二次元コード40の設けられる位置について、サイドゴム20の厚さによって制限をすることにより、二次元コード40の隣り合う単位セル領域にドット孔が連続して設けられても、サイドゴム20の厚さが厚いので、負荷状態でタイヤ10が転動してドット孔が転動に応じて変形してもこの変形をサイドゴム20が緩和して、ドット孔周辺の歪の増大を抑制する。このため、ドット孔の周辺に微小クラックは生じ難く、このクラックの進展も抑制される。二次元コード40の位置におけるサイドゴム20の厚さG1が、サイドゴム20全体の平均厚さGaveの110%未満の場合、サイドゴム20がドット孔の変形を緩和する効果が小さくなり微小クラックはドット孔の深さ方向に進展し易くなる。また、サイドゴム20の厚さは薄いので、微小クラックの深さ方向の進展により、サイドゴム20の内側に位置するタイヤ骨格材であるカーカスプライ12に微小クラックが到達し易くなる。タイヤ骨格材であるカーカスプライ12に微小クラックが到達することは、タイヤ10の耐久性の点から好ましくない。一方、二次元コード40における厚さG1が、サイドゴム20全体の平均厚さGaveの150%超の場合、負荷状態でタイヤが転動したときにドット孔が変形することによるサイドウォール表面の歪が大きくなり、サイドウォール部10Sの表面に沿って進展し易くなる。また、サイドゴム20の厚さが厚い部分は発熱し局所的に高温になることから、高温状態で変形を受けるゴムのゴム劣化は促進し、微小クラックの進展はますます増大する。このため、微小クラックの進展により、ドット孔のない単位セル領域にも表面凹凸ができ、二次元コード40における濃淡要素の濃淡の程度が小さくなる。このため、二次元コード40の読み取り誤差が生じ易くなる。上記平均厚さGaveは、例えば2.0〜5.0mmである。
【0027】
上記厚さG1は、上記平均厚さGaveに対して120%以上であることが好ましい。また、上記厚さG1は、上記平均厚さGaveに対して140%以下であることが好ましい。ここで、二次元コード40におけるサイドゴム20の厚さとは、以降で説明する各種平均厚さも含め、ドット孔の刻印前の厚さである。この厚さとして、タイヤ周方向において二次元コードの領域から外れた、同じタイヤ径方向の位置におけるサイドゴム20の厚さを用いることができる。
【0028】
ここで、サイドゴム20全体の平均厚さGaveは、
図3に示すように、サイドゴム20のプロファイル断面におけるサイドゴム20の一方の端からサイドウォール部10Sの表面に沿った3mm毎の各位置における厚さの平均値(単純平均)である。この厚さは、サイドゴム20の下層に隣接するカーカスプライ12の延在方向に対して直交する方向に沿ったサイドゴム20の厚さである。
図3は、サイドゴム20の平均厚さを測る方法を説明する図である。
図3に示すように、3mm毎の各位置における厚さβ1〜β20とすると、平均厚さは、(β1+・・・+β20)/20となる。
一方、二次元コード40の位置におけるサイドゴム20の厚さG1は、サイドゴム20の下層に隣接するカーカスプライ12の延在方向に対して直交する方向に沿った上記各位置における厚さである。
【0029】
このような二次元コード40では、一実施形態によれば、二次元コード40が設けられる領域におけるサイドゴム20の平均厚さG1aveは、二次元コード40を囲み、二次元コード40と接する縁におけるサイドゴム部材の平均厚さG2aveより厚いことが好ましい。このように、平均厚さG1aveを、二次元コード40を囲む上記縁におけるサイドゴム部材の平均厚さG2aveより厚くすることにより、効果的に微小クラックの進展を抑制することができるので、タイヤ10の長期使用に伴う二次元コード40の読み取り性の低下を抑制することができる。
平均厚さG2aveは、二次元コード40を囲み、二次元コード40に接する縁、具体的には線上のサイドゴム20の平均厚さであり、サイドゴム20の下層に隣接するカーカスプライ12の延在方向に対して直交する方向に沿った、各位置における厚さの平均値である。各位置は、具体的には、上記線上の3mm間隔の位置である。
平均厚さG2aveは、二次元コード40を囲み、二次元コード40に接する線上の平均厚さに代えて、二次元コード40を取り巻く10mmの帯領域におけるサイドゴム20の平均厚さとすることも好ましい。平均厚さG1aveを平均厚さG2aveよりも厚くすることにより、微小クラックの発生及び進展を抑制して読み取り性の低下をより抑制することができる。
【0030】
二次元コード40が設けられる領域におけるサイドゴム部材の平均厚さG1aveには、空白領域44における厚さも含まれることが好ましい。この場合の平均厚さG1aveは、二次元コード40のタイヤ径方向の一方の端を開始点として、この開始点からサイドウォール部10Sのタイヤ径方向に延びる表面に沿って3mm毎に計った、開始点を含む各位置における、カーカスプライ12の延在方向に対して直交する方向の厚さの平均値(単純平均)である。空白領域44も、読み取りに寄与する部分であり、この部分の濃淡の劣化によっても読み取りは低下する。この場合、平均厚さG1aveを定める領域の一部である空白領域44の幅は、ドットパターン領域42内の単位セル領域の寸法サイズの5倍とすることが好ましい。また、一実施形態によれば、空白領域44の幅寸法と10mmのうち大きい寸法の幅を、空白領域44の幅として用いることも好ましい。
【0031】
さらに、一実施形態によれば、ドットパターン領域42におけるサイドゴム20の平均厚さG3aveは、空白領域44におけるサイドゴム20の平均厚さG4aveより厚いことが読み取り性の低下を抑制する点から好ましい。平均厚さG3ave及び平均厚さG4aveも上述した平均厚さG1aveと同じ方法で定められる厚さである。
なお、平均厚さG4aveを定める空白領域44の幅は、上述したように、ドットパターン領域42内の単位セル領域の寸法サイズの4〜5倍の幅であるが、平均厚さG4aveを定める空白領域44に代えて、空白領域44の幅寸法と10mmのうち大きい寸法の幅でドットパターン領域42を取り巻く帯領域を用いてもよい。平均厚さG3aveを平均厚さG4aveより厚くすることにより、微小クラックの発生及び進展を抑制して読み取り性の低下をより抑制することができる。
【0032】
一実施形態によれば、二次元コード40は、QRコード(登録商標)の場合、データセル領域42aにおけるサイドゴム20の平均厚さG5aveは、切り出しシンボルを表示した切り出しシンボル領域42bにおけるサイドゴム20の平均厚さG6aveに比べて厚い、ことが読み取りの低下を抑制する点から好ましい。平均厚さG5ave及び平均厚さG6aveも上述した平均厚さG1aveと同じ方法で定められる厚さである。
この場合、二次元コード40におけるサイドゴム20の厚さの分布の中でサイドゴム20の最大厚さとなる位置は、データセル領域42aにある、ことが読み取り性の低下を抑制する点から好ましい。このとき、シンボル領域42bにも、上記最大厚さとなる位置があってもよい。
また、二次元コード40がQRコード(登録商標)でない場合、サイドゴム20の厚さの分布の中でサイドゴム20の最大厚さとなる位置は、ドットパターン領域42にあることが読み取り性の低下を抑制する点から好ましい。
【0033】
また、一実施形態によれば、ドットパターン領域42におけるタイヤ径方向の最外位置と最内位置と最外位置と最内位置の間を2等分する中間位置から定まるサイドウォール部10Sの表面の曲率半径R、すなわち、最内位置の点と最外位置の点と中間位置の点を通る円弧の半径が30〜200mmである領域に、ドットパターン領域42は形成される、ことがドット孔をばらつきなく形成する点から好ましい。これにより、読み取り性の低下を抑制することができる。レーザ光を集束させて刻印を行う刻印装置は、カメラを用いて二次元コード40を設ける領域を設定し、この領域を等間隔に区分けした単位セル領域に対応させて打刻位置を定めるので、曲率が大きい部分の打刻位置は、レーザ光の照射方向の奥行き方向の位置が変化するので、レーザ光の集束位置から外れ易く、十分な光エネルギが打刻位置に集中されず、ドット孔の深さや直径が変化し易い。この結果、濃領域の濃さが変動し、読み取りの低下が生じ易い他、ドット孔の形状が場所によって変化するので、微小クラックの発生の要因になり易い。また、曲率が大きい部分では、ドット孔の深さ方向に関して、サイドウォール表面に対する直交方向からずれる程度が大きくなるため、ドット孔の深さ方向はばらつき易い。このドット孔の深さ方向のばらつきも、微小クラックの発生の要因となり易い。
一方、曲率が小さい部分は、サイドゴム20の外側表面が、所定の範囲の曲率半径で湾曲しているカーカスプライ12から乖離する程度が大きく、サイドゴム20の厚さが大きく変化する部分である。このようなサイドゴム20の厚さの変化が大きい部分は、サイドウォール部10Sの剛性分布が変化する部分であり、この部分を二次元コードの打刻領域とすることは、サイドウォール部10Sの剛性確保の点から好ましくない。
【0034】
以上の点から、上記曲率半径Rが30〜200mmである領域に、ドットパターン領域42が形成されることが好ましい。ここで、上記曲率半径Rは、サイドウォール部10Sの表面が、外側に向けて凸状に突出した曲率半径及び内側に凹んだ曲率半径の双方を含む。
【0035】
また、
図1に示すように、タイヤ10は、サイドウォール部10Sにタイヤ周方向に一周するリッジ状に突出したリムプロテクバー32が設けられる場合がある。この場合、一実施形態によれば、二次元コード40は、タイヤ径方向において、タイヤ10のカーカスプライ12のタイヤ幅方向の最大幅位置34とリムプロテクトバー32の間の領域に形成されることが好ましい。この領域には、サイドゴム20の最大厚さとなる位置があるので、この領域では、サイドゴム部材20に作用する撓みや歪は比較的小さい。このため、ドット孔の周辺に微小クラックが発生する可能性は他の領域に比べて低い。空白領域44も、読み取りの低下の抑制に寄与する部分であるので、空白領域44にサイドゴム20の最大厚さとなる部分があってもよい。
【0036】
(実施例、比較例)
タイヤ10の効果を確認するために、二次元コード40、具体的にはQRコード(登録商標)をサイドウォール部10Sの種々の場所に刻印してタイヤ10を走行させた後、二次元コード40の読み取りを行った。
二次元コード40を設けたタイヤ10(タイヤサイズ275/40R210 107Y)をリム21×9.5Jに装着した。タイヤ10に対して、オゾン濃度100pphmの条件でオゾン照射をした後、FMVSS139に準拠した低圧試験(XL:空気圧160kPa、荷重100%LI)による室内ドラム走行(速度120km/時)を行いつつ、上記濃度のオゾン照射を所定の時間間隔で行って、1.5時間走行させた。
実施例、比較例それぞれについて、二次元コード40を設けたタイヤを5本ずつ用意して上記試験を行った。
【0037】
二次元コード40の読み取りは、二次元コード読み取り器で行い、二次元コード40に所定の方向から所定の照明光を当てて5本とも問題なく読み取りができた場合を評価Aとし、5本とも読み取りができたが、一本のタイヤについては照明光の当て方を変更して読み取りができた場合を評価Bとし、二本のタイヤについては照明光の当て方を変更して読み取りができた場合を評価Cとし、三本のタイヤについては照明光の当て方を変更して読み取りができた場合を評価Dとし、四、五本のタイヤについては照明光の当て方を変更して読み取りができた場合を評価Eとし、5本のタイヤのうち少なくとも1本のタイヤについて読み取りができない場合を評価Fとした。評価A〜Eは合格であり、評価Fは不合格である。
下記表に各仕様と評価結果を示す。
【0038】
下記表における“二次元コードの位置”とは、二次元コード40が、カーカスプライ12のタイヤ幅方向の最大幅位置34のタイヤ径方向外側にある場合“上”と記し、二次元コード40が、最大幅位置34のタイヤ径方向内側にあり、リムプロテクトバー32のタイヤ径方向外側にある場合“下”と記している。
また、表中の“サイドゴム20の最大厚さの位置”に関して、サイドゴム20の最大厚さの位置が、二次元コード40の領域内にある場合“二次元コード内”と記し、二次元コード40の領域の外部にある場合“二次元コード外”と記している。
【0039】
なお、表中のG1等の符号は下記のとおりである。
G1:二次元コード40の各位置におけるサイドゴム20の厚さ
Gave:サイドゴム20全体の平均厚さ
G1ave:二次元コード40が設けられる領域におけるサイドゴム20の平均厚さ
G2ave:二次元コード40を囲む縁におけるサイドゴム20の平均厚さ
R:ドットパターン領域42におけるタイヤ径方向の最外位置と最内位置と中間位置から定まるサイドウォール部10Sの表面の曲率半径
【0043】
比較例1〜4と実施例1〜4の比較から、G1/Gaveを110〜150%とすることにより読み取り性が向上することがわかる。
また、実施例2,5の比較から、G1ave>G2aveとすることにより、さらに、読み取り性が向上することがわかる。
また、実施例5〜9から、曲率半径Rを30〜200mmとすることにより、さらに、読み取り性が向上することがわかる。
実施例7、10の比較から、二次元コード40がタイヤ径方向の最大幅位置34とリムプロテクトバー32との間にあり、サイドゴム20の最大厚さの位置が、二次元コード40の領域内にある場合、さらに、読み取り性が向上することがわかる。
これより、タイヤ10における二次元コード40の読み取りの効果は明らかである。
【0044】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
空気入りタイヤのサイドウォールのいずれか一方には、サイドゴムの表面に、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成される2種類の濃淡要素でドットパターンを形成した二次元コードが刻印されている。前記二次元コードの刻印位置における前記サイドゴムの厚さは、前記サイドゴム全体の平均厚さの110%〜150%である。