特許第6465291号(P6465291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465291
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】コーナーリフレクタとその作製方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20190128BHJP
   G01S 7/38 20060101ALI20190128BHJP
   F41J 2/00 20060101ALI20190128BHJP
   H01Q 15/20 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   G01S7/03 200
   G01S7/38
   F41J2/00
   H01Q15/20
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-32549(P2015-32549)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156510(P2016-156510A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】森 護
(72)【発明者】
【氏名】片岡 久尚
(72)【発明者】
【氏名】坂川 幸代
(72)【発明者】
【氏名】高木 進
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/008513(WO,A1)
【文献】 特開2002−200682(JP,A)
【文献】 特開2014−132222(JP,A)
【文献】 特開2014−059233(JP,A)
【文献】 特開2013−213726(JP,A)
【文献】 特開2011−127956(JP,A)
【文献】 特開2008−279933(JP,A)
【文献】 特開昭53−047299(JP,A)
【文献】 米国特許第6300893(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − G01S 7/42
G01S 13/00 − G01S 13/95
F41J 2/00 − F41J 2/02
H01Q 15/00 − H01Q 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を反射させるコーナーリフレクタであって、
可撓性と気密性を有し、内部にガスが供給されると、ガス圧により、仮想中心軸まわりの環状方向に延びた環状に膨張する環状バルーンと、
環状バルーンの膨張により、平面に展開するように外周縁部が前記環状バルーンに取り付けられた電波反射膜と、を備え、
3つの前記環状バルーンが膨張時に互いに直交するように設けられ、
さらに、前記環状方向と直交する巻き付け方向に各環状バルーンに巻き付けられた拘束用布を備え、
該拘束用布は、環状バルーンが環状に膨張した膨張状態で、環状バルーンからの面圧を支えることにより、環状バルーンの膨張を抑制し、
前記拘束用布は、前記膨張状態で環状バルーンの前記仮想中心軸の側に位置して前記環状方向に延びる内周側布部分と、前記膨張状態で前記仮想中心軸と反対側に位置して前記環状方向に延びる外周側布部分とを含み、
前記拘束用布の伸長特性を表わす伸度について、前記環状方向における外周側布部分の該伸度は、前記環状方向における内周側布部分の該伸度よりも大きい、ことを特徴とするコーナーリフレクタ。
【請求項2】
拘束用布は、互いに織られた経繊維糸と緯繊維糸とにより形成されており、前記膨張状態で、各経繊維糸は、環状方向に延び、各緯繊維糸は、環状方向と交差する方向に延び、
各経繊維糸の伸長特性を表わす伸度について、外周側布部分を形成する各経繊維糸の該伸度は、内周側布部分を形成する各経繊維糸の該伸度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項3】
拘束用布は、互いに織られた経繊維糸と緯繊維糸とにより形成されており、前記膨張状態で、各経繊維糸は、環状方向に延び、各緯繊維糸は、環状方向と交差する方向に延び、
外周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度が、内周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項4】
前記緯繊維糸として、第1繊維糸と第2繊維糸とがあり、
緯繊維糸の伸長特性を表わす伸度について、第2繊維糸の該伸度は、第1繊維糸の該伸度よりも小さく、
第2繊維糸の強度は、第1繊維糸の強度よりも大きく、
前記膨張状態で、第2繊維糸は、環状方向において、第1繊維糸よりも疎に配列される、ことを特徴とする請求項2または3に記載のコーナーリフレクタ。
【請求項5】
電波を反射させるコーナーリフレクタの作製方法であって、
(A)内部にガスが供給されていることにより円筒形に膨張したバルーンと、拘束用布とを用意し、
(B)円筒形の前記バルーンに拘束用布を巻き付け、
(C)拘束用布が巻き付けられた円筒形の前記バルーンの軸方向端部同士を結合させて、該バルーンを、仮想中心軸まわりの環状方向に延びた環状バルーンに変形させ、
(D)該環状バルーンの前記環状方向における拘束用布の端部同士を結合させ、
3つの環状バルーンの各々を、前記(A)(B)(C)(D)により作製し、
(E)3つの環状バルーンのそれぞれの環状を含む平面が互いに直交するように3つの環状バルーンを互いに組み付け、
(F)各環状バルーンの内側に電波反射膜を取り付けることによりコーナーリフレクタを形成し、
(G)各環状バルーンの内部からガスを抜いて、各環状バルーンを収縮させておき、
環状バルーンが仮想中心軸まわりの前記環状方向に延びて環状に膨張した膨張状態で、前記拘束用布は、環状バルーンからの面圧を支えることにより、環状バルーンの膨張を抑制するものであり、
前記拘束用布は、前記膨張状態で環状バルーンの前記仮想中心軸の側に位置して前記環状方向に延びる内周側布部分と、前記膨張状態で前記仮想中心軸と反対側に位置して前記環状方向に延びる外周側布部分とを含み、
前記拘束用布の伸長特性を表わす伸度について、前記環状方向における外周側布部分の該伸度は、前記環状方向における内周側布部分の該伸度よりも大きい、ことを特徴とするコーナーリフレクタの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾用レーダ装置やミサイルのレーダシーカなどからの電波を反射することで、おとりとして機能するコーナーリフレクタとその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーナーリフレクタは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1のコーナーリフレクタは、図1(A)の構成を有する。コーナーリフレクタは、図1(A)のように、互いに直交する電波反射膜21を有する。これにより、コーナーリフレクタに対し、どの角度から電波が入射してきても、コーナーリフレクタによって、電波を入射してきた方向に反射することができる。
例えば、図1(B)のように、電波Aと電波Bのいずれについても、互いに直交する電波反射膜21により、入射してきた方向に反射することができる。
【0003】
コーナーリフレクタは、飛翔体、船、地上などから放出され、その後、空中や水上で図1の形状に展開する。そのために、特許文献1のコーナーリフレクタは、互いに直交する3つの仮想平面にそれぞれ配置された3つの環状バルーン23a,23b,23cを有する。各環状バルーン23a,23b,23cは、内部にガスが供給されて膨張すると環状となる。この膨張により、各電波反射膜21が図1(A)のように展開するように電波反射膜21が3つの環状バルーン23a,23b,23cに取り付けられている。
【0004】
上述のような構成により、例えば、空中で展開したコーナーリフレクタに、追尾用レーダ装置やミサイルのレーダシーカから電波が入射すると、コーナーリフレクタは、図1(B)のように電波を入射してきた方向に反射することができる。これにより、コーナーリフレクタをレーダのおとりにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/008513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は、環状バルーン23a,23bまたは23cの環状方向と直交する平面による環状バルーン23a,23bまたは23cの断面図である。図2に示すように、特許文献1では、環状バルーン23a,23b,23cが膨張した時に、その膨張量を制限するための拘束用布25が設けられている。拘束用布25は、環状バルーン23a,23b,23cを取り巻くように設けられている。拘束用布25は、糸27により、電波反射膜21に縫い付けられている。
【0007】
各環状バルーン23a,23b,23cは、次の手順で作製することができる。
【0008】
図3(A)のように、適度の体積に膨張した円筒形バルーン29と拘束用布25を用意する。円筒形バルーン29の軸方向長さLは、長方形の拘束用布25の長辺方向長さLと同じである。
【0009】
その後、図3(B)のように、拘束用布25を円筒形バルーン29に巻き付ける。この状態で、拘束用布25の短辺方向端部同士25aを、例えば縫い付けることにより結合させる。
【0010】
次に、円筒形バルーン29を環状に曲げて、その環状方向端部29a同士を(例えば接着剤で)結合させる。これにより、図3(C)のように、円筒形バルーン29を、仮想中心軸C0まわりに環状に延びた環状バルーン23a,23bまたは23cに変形させる。
次に、拘束用布25の長辺方向端部25b同士を、例えば縫い付けることにより結合させる。これにより、拘束用布25が巻かれた環状バルーン23a,23bまたは23cが作製される。
【0011】
このように作製した環状バルーン23a,23b,23cを互いに直交するように互いに組み付け、その後、電波反射膜21を環状バルーン23a,23b,23cに取り付けてコーナーリフレクタを作製する。その後、各環状バルーン23a,23b,23cの内部からガスを抜き取り、コーナーリフレクタの使用時まで、各環状バルーンを収縮させておく。
【0012】
ところで、上述のように円筒形バルーン29を環状に曲げて、拘束用布25の長辺方向端部25b同士を結合させた状態では、環状バルーンの外周側部分(上述の仮想中心軸C0側と反対側の部分)の環状方向長さは、環状バルーンの内周側部分(上述の仮想中心軸C0側の部分)の環状方向長さよりも長くなる。
一方、拘束用布25の内周側布部分と外周側布部分は、環状バルーンからの同じ面圧を支えることにより、同じ量だけ環状方向に伸びようとする。しかし、拘束用布25の内周側布部分の環状方向長さは、外周側布部分の環状方向長さよりも小さくなるので、内周側布部分は、環状方向への伸びが制限されて、環状方向へ自由に延びることができない。
このような理由で、拘束用布25の内周側部分において、環状方向の伸び量にばらつきが生じて、拘束用布25の形状が正確な環状(円形)にはならず、環状方向の一部で、拘束用布25が、環状方向とは異なる方向に変形してしまう。
その影響で、環状バルーンの環状の形状精度も低下してしまう。
【0013】
そのため、拘束用布25において、内周側部分のタック加工(拘束用布25の一部をつまんで縫うことによりひだ(タック)を作る加工)を、環状方向に等間隔で施すことができる。これにより、環状バルーンの形状精度の低下を抑えることができる。
【0014】
しかし、タック加工は手間がかかり複雑であるため、高精度な円環形状のバルーンが得られるようなタックを作るには、コストが高くなってしまう。
【0015】
そこで、本発明の目的は、拘束用布によって膨張量が制限される環状バルーンを備えるコーナーリフレクタであって、拘束用布にタック加工や他の加工を施さなくても、環状バルーンの形状精度が高くなるコーナーリフレクタとその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明によると、電波を反射させるコーナーリフレクタであって、
可撓性と気密性を有し、内部にガスが供給されると、ガス圧により、仮想中心軸まわりの環状方向に延びた環状に膨張する環状バルーンと、
環状バルーンの膨張により、平面に展開するように外周縁部が前記環状バルーンに取り付けられた電波反射膜と、を備え、
3つの前記環状バルーンが膨張時に互いに直交するように設けられ、
さらに、前記環状方向と直交する巻き付け方向に各環状バルーンに巻き付けられた拘束用布を備え、
該拘束用布は、環状バルーンが環状に膨張した膨張状態で、環状バルーンからの面圧を支えることにより、環状バルーンの膨張を抑制し、
前記拘束用布は、前記膨張状態で環状バルーンの前記仮想中心軸の側に位置して前記環状方向に延びる内周側布部分と、前記膨張状態で前記仮想中心軸と反対側に位置して前記環状方向に延びる外周側布部分とを含み、
前記拘束用布の伸長特性を表わす伸度について、前記環状方向における外周側布部分の該伸度は、前記環状方向における内周側布部分の該伸度よりも大きい、ことを特徴とするコーナーリフレクタが提供される。
【0017】
本発明のコーナーリフレクタは、好ましくは、以下の構成を有する。
【0018】
拘束用布は、互いに織られた経繊維糸と緯繊維糸とにより形成されており、前記膨張状態で、各経繊維糸は、環状方向に延び、各緯繊維糸は、環状方向と交差する方向に延び、
各経繊維糸の伸長特性を表わす伸度について、外周側布部分を形成する各経繊維糸の該伸度は、内周側布部分を形成する各経繊維糸の該伸度よりも大きい。
【0019】
このように、外周側布部分を形成する経繊維糸として、相対的に伸度の大きい繊維糸を用い、内周側布部分を形成する経繊維糸として、相対的に伸度の小さい繊維糸を用いることにより、外周側布部分で伸度が大きく、内周側布部分で伸度が小さい拘束用布を形成できる。
【0020】
代わりに、拘束用布は、互いに織られた経繊維糸と緯繊維糸とにより形成されており、前記膨張状態で、各経繊維糸は、環状方向に延び、各緯繊維糸は、環状方向と交差する方向に延び、
外周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度が、内周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度よりも小さくてもよい。
【0021】
このように、外周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度が、内周側布部分を形成する各経繊維糸の織密度よりも小さいことにより、外周側布部分で伸度が大きく、内周側布部分で伸度が小さい拘束用布を形成できる。
【0022】
前記緯繊維糸として、第1繊維糸と第2繊維糸とがあり、
緯繊維糸の伸長特性を表わす伸度について、第2繊維糸の該伸度は、第1繊維糸の該伸度よりも小さく、
第2繊維糸の強度は、第1繊維糸の強度よりも大きく、
前記膨張状態で、第2繊維糸は、環状方向において、第1繊維糸よりも疎に配列される。
【0023】
このように、緯繊維糸として、環状方向に密に配列され相対的に低強度で高伸度な第1繊維糸と、環状方向に疎に配列され相対的に高強度で低伸度な第2繊維糸とを設ける。
したがって、第1繊維糸が環状バルーンの膨張を抑制する力を、より高強度で低伸度な第2繊維糸により補強できる。第2繊維糸は高価であるが、第2繊維糸を、環状方向において第2繊維糸よりも疎に配置することにより、費用を抑えつつ、環状バルーンの膨張を抑える力を補強できる。
【0024】
また、上述の目的を達成するため、本発明によると、電波を反射させるコーナーリフレクタの作製方法であって、
(A)内部にガスが供給されていることにより円筒形に膨張したバルーンと、拘束用布とを用意し、
(B)円筒形の前記バルーンに拘束用布を巻き付け、
(C)拘束用布が巻き付けられた円筒形の前記バルーンの軸方向端部同士を結合させて、該バルーンを、仮想中心軸まわりの環状方向に延びた環状バルーンに変形させ、
(D)該環状バルーンの前記環状方向における拘束用布の端部同士を結合させ、
3つの環状バルーンの各々を、前記(A)(B)(C)(D)により作製し、
(E)3つの環状バルーンのそれぞれの環状を含む平面が互いに直交するように3つの環状バルーンを互いに組み付け、
(F)各環状バルーンの内側に電波反射膜を取り付けることによりコーナーリフレクタを形成し、
(G)各環状バルーンの内部からガスを抜いて、各環状バルーンを収縮させておき、
環状バルーンが仮想中心軸まわりの前記環状方向に延びて環状に膨張した膨張状態で、前記拘束用布は、環状バルーンからの面圧を支えることにより、環状バルーンの膨張を抑制するものであり、
前記拘束用布は、前記膨張状態で環状バルーンの前記仮想中心軸の側に位置して前記環状方向に延びる内周側布部分と、前記膨張状態で前記仮想中心軸と反対側に位置して前記環状方向に延びる外周側布部分とを含み、
前記拘束用布の伸長特性を表わす伸度について、前記環状方向における外周側布部分の該伸度は、前記環状方向における内周側布部分の該伸度よりも大きい、ことを特徴とするコーナーリフレクタの作製方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
上述した本発明によると、拘束用布において、外周側布部分の伸度が、内周側布部分の伸度よりも大きいことにより、形状精度の高い環状バルーンが得られる。詳しくは、次の通りである。
環状バルーンが膨張すると、環状バルーンの内周側の環状方向長さと、環状バルーンの外周側の環状方向長さとに差が生じる。
これについて、本発明では、拘束用布において、外周側布部分の伸度は、内周側布部分の伸度よりも大きいので、外周側布部分は伸びやすいが、内周側布部分は伸びにくい。すなわち、環状バルーンを膨張させる前から、内周側布部分は、外周側布部分よりも環状方向に伸びにくくなっている。これにより、環状バルーンの膨張状態で、内周側布部分において、環状方向の伸び量のばらつきが抑制され、または無くなる。
したがって、環状方向の一部で、拘束用布が、環状方向とは異なる方向に変形してしまうことを抑えることができ、または、このような変形を無くすことができる。
よって、拘束用布の内周側布部分にタック加工を施さなくても、形状精度の高い環状バルーンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】特許文献1のコーナーリフレクタを示す。
図2】環状バルーンの断面図である。
図3】環状バルーンの作製方法の説明図である。
図4】本発明の実施形態によるコーナーリフレクタを示す。
図5】拘束用布の構成を示す。
図6】本発明の実施形態によるコーナーリフレクタの作製方法のフローチャートである。
図7】本発明の実施形態によるコーナーリフレクタの作製方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0028】
図4(A)は、本発明の実施形態によるコーナーリフレクタ10の斜視図である。図4(A)に示すように、コーナーリフレクタ10は、環状バルーン3a,3b,3cと、電波反射膜5と、各環状バルーン3a,3b,3cの外周面に巻かれた拘束用布7を備える。
【0029】
環状バルーン3a,3b,3cは、可撓性と気密性を有し、内部にガスが供給されると、図4(A)のように、ガス圧により、仮想中心軸まわりの環状方向に延びた環状に膨張する。3つの環状バルーン3a,3b,3cは、膨張時に、各環状バルーン3a,3b,3cの環状を含む仮想平面が互いに直交するように組まれる。好ましくは、各環状バルーン3a,3b,3cの環状を二等分する弦が互いに直交するように3つの環状バルーン3a,3b,3cが組まれる。なお、環状バルーン3a,3b,3cは、例えば、ポリオレフィンやポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムで形成されてよい。
【0030】
電波反射膜5は、環状バルーン3a,3b,3cの膨張により、平面に展開するように、その外周縁部5aが環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられる。各環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられた各電波反射膜5は、環状バルーン3a,3b,3cの膨張により、対応する環状バルーンの環状を含む仮想平面上に展開する。本実施形態では、環状バルーン3a,3b,3cの膨張により、図4(A)のように、互いに直交する、電波反射膜5の3つの外表面を1組として、8組の外表面が形成される。なお、「電波反射膜5の外周縁部5aが環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられる」とは、後述するように外周縁部5aが拘束用布7を介して取り付けられることを意味してもよいし、他の手段によって外周縁部5aが環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられることを意味してもよい。
【0031】
電波反射膜5の外表面は、電波を反射する導電性材料で形成されている。好ましい例では、電波反射膜5は、導電性繊維で形成された布である。ここで、導電性繊維は、例えば、ナイロンの繊維に金属膜(銅や銀など)をコーティングしたものであってよい。
【0032】
図4(B)は、1つの環状バルーン3a,3bまたは3cの環状方向と直交する平面による、この環状バルーン3a,3bまたは3cおよび拘束用布7の断面図である。各環状バルーン3a,3b,3cおよびその拘束用布7は、環状方向における各位置において、図4(B)に示す断面構造を有する。
【0033】
拘束用布7は、電波が透過する繊維(例えばナイロンやポリエステルなど)で形成されている。
【0034】
拘束用布7は、環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられ、環状バルーン3a,3b,3cの膨張量を抑制する。すなわち、環状方向と直交する巻き付け方向(図4(B)を参照)に延びて各環状バルーン3a,3b,3cに巻き付けられている。拘束用布7は、環状バルーン3a,3b,3cが環状に膨張した状態(以下、単に膨張状態ともいう)で、環状バルーン3a,3b,3cからの面圧(環状バルーン内部のガスの圧力)を支えることにより、環状バルーン3a,3b,3cの膨張を抑制する。一例では、拘束用布7は、環状バルーン3a,3b,3cに接するように、巻き付け方向に、環状バルーン3a,3b,3cに巻き付けられている。
【0035】
なお、本願において、環状方向とは、環状バルーン3a,3b,3cが膨張した状態において、環状バルーン3a,3b,3cが仮想中心軸Cまわりに環状に延びている方向を意味する。
【0036】
環状バルーンの膨張状態で、拘束用布7は、対応する環状バルーン3a,3b,3cの環状方向全体にわたって環状方向に延びている。
【0037】
拘束用布7は、図4(B)の破線Xで囲まれた内周側布部分7aと、図4(B)の破線Yで囲まれた外周側布部分7bを含む。内周側布部分7aは、膨張状態で上述の仮想中心軸Cの側に位置し環状方向に延びている。外周側布部分7bは、膨張状態で仮想中心軸Cと反対側に位置し環状方向に延びている。環状方向における外周側布部分7bの伸度は、環状方向における内周側布部分7aの伸度よりも大きい。ここで、伸度は、拘束用布7の伸長特性を表わし、次のように定義される。すなわち、拘束用布7に外力が作用していない状態から一定の引っ張り力が拘束用布7に作用することにより、拘束用布7の一定の単位長さが伸びる量を示す数値を、拘束用布7の伸度とする。この伸度が大きいほど、一定の引っ張り力で拘束用布7が伸びる量も大きくなる。したがって、外周側布部分7bに外力が作用していない状態から引っ張り力が環状方向に外周側布部分7bに作用することにより、外周側布部分7bの単位長さが環状方向に伸びる量は、内周側布部分7aに外力が作用していない状態から同じ引っ張り力が環状方向に内周側布部分7aに作用することにより、内周側布部分7aの同じ単位長さが環状方向に伸びる量よりも大きい。
【0038】
本実施形態では、拘束用布7は、内周側布部分7aと外周側布部分7bとの間に位置する中間布部分7c(図4(B)の破線Zで囲まれた)を含む。環状方向における中間布部分7cの伸度は、環状方向における外周側布部分7bの伸度と同じである。ただし、環状方向における中間布部分7cの伸度は、環状方向における外周側布部分7bの伸度よりも小さく、かつ、環状方向における内周側布部分7aの伸度よりも大きくてもよい。
【0039】
図5(A)は、環状バルーン3a,3b,3cに巻いていない状態(展開された状態)の拘束用布7である。図5(A)では、拘束用布7は、展開された状態では、細長い長方形の形状を有している。図5(A)の状態では、拘束用布7には、その外部から力が作用しておらず、拘束用布7は、いずれの方向にも伸長していない。図5(A)において、拘束用布7の長辺方向は、対応する環状バルーン3a,3b,3cの環状方向に対応する。すなわち、環状バルーン3a,3b,3cが膨張することにより、環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられた拘束用布7も、環状バルーン3a,3b,3cの環状形状に合わせて環状に変形し、拘束用布7の長辺方向が環状バルーン3a,3b,3cの環状方向になる。図5(A)において、内周側布部分7aの範囲をXで示し、外周側布部分7bの範囲をYで示し、中間布部分7cの範囲をZで示している。図5(B)も同様である。
【0040】
図5(A)において、拘束用布7の短辺方向は、上述の長辺方向に直交する。拘束用布7は、図4(B)のように、環状バルーン3a,3b,3cに巻かれ、拘束用布7における短辺方向の両端部7d同士が、例えば縫合糸9で縫い合わせることにより結合されている。
【0041】
なお、図4(B)に示すように、拘束用布7における短辺方向の両端部7dに、電波反射膜5の外周縁部5aが結合用糸6で縫い付けられている。これにより、電波反射膜5が、拘束用布7における短辺方向の両端部7dを介して環状バルーン3a,3b,3cに取り付けられている。
【0042】
図5(B)は、図5(A)の部分拡大図である。拘束用布7は、互いに織られた経繊維糸11と緯繊維糸13とにより形成されている。言い換えると、図5(B)に示すように、拘束用布7は、多数の経繊維糸11と多数の緯繊維糸13とが互いに交錯することにより形成されている。すなわち、拘束用布7は、多数の経繊維糸11と多数の緯繊維糸13とが互いに交錯するように、多数の経繊維糸11と多数の緯繊維糸13とにより織られたものである。膨張状態で、多数の経繊維糸11は、環状バルーンの環状方向全長にわたって、環状方向に延び、多数の緯繊維糸13は、環状方向と交差(好ましくは直交)する方向に、拘束用布7におけるこの方向の一端から他端まで延びている。図5(B)の状態では、多数の経繊維糸11は、拘束用布7の長辺方向一端から長辺方向他端まで長辺方向に延び、多数の緯繊維糸13は、拘束用布7の短辺方向一端から短辺方向他端まで短辺方向に延びている。また、図5(B)において、多数の経繊維糸11は、短辺方向に配列され、多数の緯繊維糸13は、長辺方向に配列されている。環状バルーン3a,3b,3cが膨張して環状形状を有するようになると、多数の経繊維糸11が環状方向に延び、多数の緯繊維糸13が環状方向に交差する方向に延びた状態となる。
【0043】
なお、図5(B)は、平織りにより織った拘束用布7を示すが、他の織り方(例えば、綾織り、朱子織り、袋織りなど)により拘束用布7を織ってもよい。すなわち、拘束用布7は、多数の経繊維糸11と多数の緯繊維糸13とが互いに交錯することにより形成されていれば、任意の織り方により織られていてよい。
【0044】
本実施形態によると、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11(以下、経繊維糸11bという)の伸度は、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11(以下、経繊維糸11aという)の伸度よりも大きい。ここで、伸度は、拘束用布7の構成要素となる1本の経繊維糸(例えば各経繊維糸11aまたは11b)の伸長特性を表わし、次のように定義される。すなわち、1本の経繊維糸11に外力が作用していない状態から引っ張り強力(引っ張り力)がこの経繊維糸11に作用した時に、この経繊維糸11の一定の単位長さが伸びる量を示す数値を、この経繊維糸11の伸度とする。経繊維糸11の伸度が大きいほど、一定の引っ張り力でこの経繊維糸11が伸びる量も大きくなる。
したがって、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bに外力が作用していない状態から引っ張り力が該各経繊維糸11bに環状方向に作用することにより、該各経繊維糸11bの単位長さが環状方向に伸びる量は、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aに外力が作用していない状態から同じ引っ張り力が該各経繊維糸11aに環状方向に作用することにより、該各経繊維糸11aの同じ単位長さが環状方向に伸びる量よりも大きい。
【0045】
一例では、緯繊維糸13として、第1繊維糸13aと第2繊維糸13bとが設けられる。
第1繊維糸13aは、長辺方向(膨張状態では環状方向)に密に配列される。第2繊維糸13bは、長辺方向(膨張状態では環状方向)に疎に配列される。すなわち、第2繊維糸13bは、長辺方向(膨張状態では環状方向)において、第1繊維糸13aよりも疎に配列される。図5(B)では、隣接する2つの第2繊維糸13bを1組として、各組の2つの第2繊維糸13bの間に、5本の第1繊維糸13aが配置されている。ただし、各組の2つの第2繊維糸13bの間に、5本以外の複数本の第1繊維糸13aが配置されていてもよい。
【0046】
第2繊維糸13bの伸度は、第1繊維糸13aの伸度よりも小さい。ここで、伸度は、拘束用布7の構成要素となる1本の緯繊維糸13(第1繊維糸13aまたは第2繊維糸13b)の伸長特性を表わし、次のように定義される。1本の緯繊維糸13に外力が作用していない状態から引っ張り強力(引っ張り力)がこの緯繊維糸13に作用した時に、この緯繊維糸13の一定の単位長さが伸びる量を示す数値をこの緯繊維糸13の伸度とする。この伸度が大きいほど、一定の引っ張り力でこの緯繊維糸13が伸びる量も大きくなる。
したがって、第2繊維糸13bに外力が作用していない状態から引っ張り力が第2繊維糸13bに作用することにより、第2繊維糸13bの単位長さが伸びる量は、第1繊維糸13aに外力が作用していない状態から同じ引っ張り力が第1繊維糸13aに作用することにより、第1繊維糸13aの同じ単位長さが伸びる量よりも小さい。
【0047】
第2繊維糸13bの強度は、第1繊維糸13aの強度(すなわち、引っ張り強さ)よりも大きい。
【0048】
拘束用布7を構成する各繊維糸の材質の具体例を述べる。一例では、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bと、中間布部分7cを形成する各経繊維糸11(以下、経繊維糸11cという)とは、ナイロンで形成され、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aは、ポリエステルで形成され、第1繊維糸13aは、ナイロンで形成され、第2繊維糸13bは、液晶ポリエステルまたはアラミド繊維(例えば、ケブラー(登録商標))で形成される。
【0049】
また、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aの伸度をAとし、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bの伸度をBとした場合、Bに対するAの割合は、一例では5%〜30%であり、別の例では5〜20%であり、さらに別の例では5〜15%である。
ただし、本発明によると、Bに対するAの割合は、次のように、これらの例に限定されない。本発明によると、環状バルーン3a,3b,3cを膨張させる前から、内周側布部分7aが、外周側布部分7bよりも環状方向に伸びにくくなっていることにより、環状バルーン3a,3b,3cの膨張状態で、内周側布部分7aにおいて、環状方向の伸び量のばらつきが抑制され、または無くなる。このような作用効果が得られるように、Bに対するAの割合が定められていればよい。
【0050】
緯繊維糸13は、伸度が小さく、高強度であることが望ましい。緯繊維糸13により、膨張状態の環状バルーン3a,3b,3cを拘束するためである。そのため、緯繊維糸13は、例えば、液晶ポリエステルまたはアラミド繊維で形成することが好ましい。しかし、全ての緯繊維糸13を、液晶ポリエステル繊維またはアラミド繊維にすると、拘束用布7が硬く、重く、高価になる。これを考慮して、上述のように、安価で軽いが伸度が大きく低強度のナイロンで形成された第1繊維糸13aを密に配置し、液晶ポリエステルまたはアラミド繊維で形成された第2繊維糸13bを疎に配置することが好ましい。これにより、安価で軽い拘束用布7により、膨張状態の環状バルーン3a,3b,3cを拘束できる。ただし、本発明は、このような構成に限定されず、全ての緯繊維糸13を、液晶ポリエステル繊維またはアラミド繊維で形成してもよいし、他の材料で形成してもよい。
【0051】
次に、本発明の実施形態によるコーナーリフレクタ10の作製方法を説明する。図6は、この作製方法のフローチャートであり、図7は、この作製方法の説明図である。
【0052】
ステップS1において、図7(A)のように、内部にガスが供給されていることにより円筒形に膨張したバルーン4と、拘束用布7とを用意する。拘束用布7の短辺方向端部7dと長辺方向端部7eは、適宜の手段により、ほつれないようになっている。
【0053】
なお、ステップS1において、バルーン4に設けたガス供給孔からバルーン4の内部にガスを供給して、バルーン4を膨張させ、次いで、ガス供給孔を適宜の手段で塞ぐことにより、バルーン4の膨張状態を維持する。
【0054】
ステップS2において、図7(B)のように、円筒形のバルーン4に拘束用布7を巻き付ける。具体的には、円筒形のバルーン4に拘束用布7を巻き、この状態で、拘束用布7における短辺方向の端部7d同士を、例えば縫合糸9(図4(B)を参照)で縫い付けることにより結合させる。
【0055】
ステップS3において、図7(C)のように、円筒形バルーン4を曲げて環状にする。すなわち、拘束用布7が巻き付けられた円筒形バルーン4の軸方向端部同士を結合させて、円筒形バルーン4を環状バルーン3a,3b,3cに変形させる。ここで、バルーン4の軸方向端部4a同士の結合は、粘着テープ、接着剤、または他の手段によりなされてよい。
【0056】
ステップS4において、拘束用布7における長手方向(図7(C)の状態では、環状方向)の端部7e同士を、巻き付け方向(図4(B)を参照)の全体にわたって、例えば縫い付けることにより結合させる。この状態では、拘束用布7における外周側布部分7bの経繊維糸11bが環状方向に伸長した量は、拘束用布7における内周側布部分7aの経繊維糸11aが環状方向に伸長した量よりも大きい。すなわち、拘束用布7において、外周側布部分7bの経繊維糸11bの環状方向長さは、内周側布部分7aの経繊維糸11aの環状方向長さよりも長くなっている。
【0057】
上述のステップS1〜S4により、拘束用布7が巻かれた環状バルーン3a,3bまたは3cが1つ作製される。拘束用布7が巻かれた他の2つの環状バルーンも、上述のステップS1〜S4により作製される。このようにして、拘束用布7がそれぞれ巻かれた3つの環状バルーン3a,3b,3cの各々を、ステップS1〜S4により作製する。
【0058】
ステップS5において、図4(A)のように、拘束用布7が巻かれた3つの環状バルーン3a,3b,3cを、互いに組み付ける。この時、3つの環状バルーン3a,3b,3cのそれぞれの環状を含む平面が互いに直交するようにする。一例では、上述のステップS3において、3つの円筒形バルーン4の各々における軸方向の端部同士を結合させる時に、これにより作製される3つの環状バルーン3a,3b,3cの各々の環状の内部を、他の環状バルーンが貫通した状態(図4(A)の状態)にすることができる。ただし、本発明によると、3つの環状バルーン3a,3b,3cのそれぞれの環状を含む平面が互いに直交した状態に、3つの環状バルーン3a,3b,3cを互いに組み付けさえすればよい。このように、3つの環状バルーン3a,3b,3cを互いに組み付けた状態を維持するために、2つの環状バルーンが互いに隣り合って交差している各部分(図4(A)の破線Nで囲んだ各部分)において、これら2つの環状バルーン同士を、紐で結びつけたり、マジックテープ(登録商標)でくっつけたりすることにより結合させる。
【0059】
ステップS6において、図4(A)のように、各環状バルーン3a,3b,3cの内側に電波反射膜5を取り付ける。この時、図4(A)のように、電波反射膜5における互いに直交する3つの外表面を1組として、8組の外表面が形成されるようにする。
【0060】
例えば、ステップS6は、次のように行われてよい。中心角が90度の扇形の電波反射膜5を12枚用意する。
図4(B)に示すように、各電波反射膜5の円弧の部分(すなわち、外周縁部5a)を、この円弧全体にわたって環状バルーンに巻かれた拘束用布7の短辺方向端部7dに結合用糸6で縫い付けることにより、各電波反射膜5の円弧の部分(外周縁部5a)を、対応する環状バルーンに結合させる。
また、図4(A)に示すように、各電波反射膜5の直線状の外縁部5b同士を、縫合用糸(図示せず)で互いに縫い付けることにより結合させる。
【0061】
ステップS7において、各環状バルーン3a,3b,3cの内部からガスを抜いて、各環状バルーン3a,3b,3cを収縮させておく。また、各環状バルーン3a,3b,3c内にガスを供給するガス供給装置(図示せず)を、コーナーリフレクタ10に取り付けておく。
【0062】
このように各環状バルーンが収縮された状態で、例えば、コーナーリフレクタ10が船(艦船)や地上などから空中へ打ち上げられ、コーナーリフレクタ10に取り付けられたガス供給装置により、各環状バルーン3a,3b,3c内にガスが供給されることで、図4(A)のように展開する。すなわち、3つの環状バルーン3a,3b,3cは、それぞれ環状の膨張状態で上述のステップS5において互いに組み付けられて、この組み付けを維持したままステップS7で収縮させておくので、各環状バルーン3a,3b,3cは、収縮された状態から、内部にガスが供給されると、このガス圧により環状に膨張する。なお、ガス供給装置は、例えば、ガスボンベや、火薬を用いたガスジェネレータなどであってよく、所望のタイミングで、環状バルーン3a,3b,3c内にガスが供給するように作動させられる。
【0063】
コーナーリフレクタ10が、例えば空中で展開することで、ミサイルレーダシーカは、コーナーリフレクタ10からの反射レーダにより、コーナーリフレクタ10を追尾目標とする。これにより、コーナーリフレクタ10をミサイルのおとり(デコイ)とすることができる。
【0064】
上述した本発明の実施形態によると、拘束用布7において、外周側布部分7bの伸度が、内周側布部分7aの伸度よりも大きいことにより、形状精度の高い環状バルーン3a,3b,3cが得られる。詳しくは、次の通りである。
環状バルーン3a,3b,3cが膨張すると、環状バルーン3a,3b,3cの内周側の環状方向長さと、環状バルーンの外周側の環状方向長さとに差が生じる。
これについて、本実施形態では、拘束用布7において、外周側布部分7bの伸度は、内周側布部分7aの伸度よりも大きいので、外周側布部分7bは伸びやすいが、内周側布部分7aは伸びにくい。すなわち、環状バルーン3a,3b,3cを膨張させる前から、内周側布部分7aが、外周側布部分7bよりも環状方向に伸びにくくなっている。これにより、拘束用布7が、環状方向とは異なる方向に変形してしまうことを抑えることができ、または、このような変形を無くすことができる。
したがって、拘束用布7の内周側部分7aにタック加工を施さなくても、形状精度の高い環状バルーン3a,3b,3cが得られる。
【0065】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明によると、以下の変更例1〜4のいずれかを採用してもよいし、変更例1〜4の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
【0066】
(変更例1)
本発明によると、拘束用布7において、環状方向における外周側布部分7bの伸度が、環状方向における内周側布部分7aの伸度よりも大きくなっていればよい。
変更例1によると、一例では、外周側布部分7bおよび中間布部分7cからなる布と、内周側布部分7aとを、互いに縫い合わせることにより、拘束用布7を形成してもよい。
【0067】
(変更例2)
図5における範囲Zの中間布部分7cを形成する各経繊維糸11cの伸度は、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aの伸度よりも大きく、かつ、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bの伸度よりも小さくてもよい。
【0068】
(変更例3)
上述では、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bの伸度を、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aの伸度よりも大きくすることにより、環状方向における外周側布部分7bの伸度を、環状方向における内周側布部分7aの伸度よりも大きくしている(この場合、経繊維糸11bの織密度と、経繊維糸11aの織密度は、同じであってよい)。
これに対し、変更例3によると、図5(A)(B)の状態で、外周側布部分7bを形成する各経繊維糸11bの織密度を、内周側布部分7aを形成する各経繊維糸11aの織密度よりも小さくすることにより、環状方向における外周側布部分7bの伸度を、環状方向における内周側布部分7aの伸度よりも大きくしてもよい。この場合、経繊維糸11bの伸度は、経繊維糸11aの伸度と同じであってもよいし、経繊維糸11aの伸度と異なっていてもよい。
【0069】
(変更例4)
膨張状態で、中間布部分7cの環状方向の伸度は、仮想中心軸C側へ移行するにつれて、段階的に小さくなっていてもよい。同様に、膨張状態で、外周側布部分7bの環状方向の伸度は、仮想中心軸C側へ移行するにつれて、段階的に小さくなっていてもよい。さらに、膨張状態で、内周側布部分7aの環状方向の伸度は、仮想中心軸C側へ移行するにつれて、段階的に小さくなっていてもよい。このような場合、中間布部分7cにおける最も仮想中心軸C側の部分の環状方向伸度は、内周側布部分7aにおける最も仮想中心軸Cと反対側の部分の環状方向伸度以上であればよい。また、中間布部分7cにおける最も仮想中心軸Cと反対側の部分の環状方向伸度が、外周側布部分7bにおける最も仮想中心軸C側の部分の環状方向伸度以下であればよい。
【符号の説明】
【0070】
3a,3b,3c 環状バルーン、4 バルーン、4a バルーンの軸方向端部、5 電波反射膜、5a 外周縁部、5b 外縁部、6 結合用糸、7 拘束用布、7a 内周側布部分、7b 外周側布部分、7c 中間布部分、7d 短辺方向端部、7e 長辺方向端部、9 縫合糸、10 コーナーリフレクタ、11,11a,11b,11c 経繊維糸、13 緯繊維糸、13a 第1繊維糸、13b 第2繊維糸、C 仮想中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7