特許第6465303号(P6465303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6465303吸入プロセスを訓練するためのシステム、方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465303
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】吸入プロセスを訓練するためのシステム、方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-534931(P2015-534931)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公表番号】特表2015-536697(P2015-536697A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013002958
(87)【国際公開番号】WO2014053242
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】12006897.8
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12007259.0
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】アダムス パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】フランク マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァハテル ヘルベルト
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/038903(WO,A2)
【文献】 特表2012−500702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0116241(US,A1)
【文献】 特開2012−110499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤吸入プロセスの際に患者を訓練する吸入訓練システム(1)であって、
前記患者による前記吸入プロセス中に空気流が生じるマウスピース(2)を有し、
前記空気流を可聴ホイッスルに変換するよう構成された変換器(3)を有し、前記変換器(3)は、前記空気流を前記可聴ホイッスル音に変換するためにホイッスルを含み、前記変換器(3)は前記マウスピース(2)内に、または前記マウスピース(2)に設けられ、
携帯型通信装置(12)を有し、前記携帯型通信装置(12)は、前記携帯型通信装置(12)のマイクロホン(17)によって前記可聴ホイッスルをマイクロホン信号に変換するように構成され、前記マイクロホン信号を対話形式でフィードバックし、前記患者がこの対話形式のフィードバックを適合できるように構成されている、吸入訓練システム。
【請求項2】
前記携帯型通信装置(12)は、前記患者が前記対話形式のフィードバックの表現の選択及び/又は形式を適合できるように構成されている、請求項1記載の吸入訓練システム。
【請求項3】
前記吸入訓練システム(1)は、可能な限り最善の有効吸入時間について患者を訓練するよう構成され、前記携帯型通信装置(12)は、前記有効吸入時間を定めるよう構成されている、請求項1又は2記載の吸入訓練システム。
【請求項4】
前記吸入訓練システム(1)は、前記携帯型通信装置(12)を解除可能に保持するよう構成された保持器具(11)を有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の吸入訓練システム。
【請求項5】
前記保持器具(11)は、2つの保持領域を有し、これら2つの保持領域は、前記保持器具(11)に前記携帯型通信装置(12)を挿入できるように、及び前記保持器具(11)から前記携帯型通信装置(12)を取出せるように、互いに対して動くことができる、請求項4記載の吸入訓練システム。
【請求項6】
前記変換器(3)は、前記マウスピース(2)のタイプを示す、特徴のあるホイッスル音を生じさせ、前記マウスピース(2)の検出及び評価を可能にする、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の吸入訓練システム。
【請求項7】
薬剤吸入プロセスの際に患者を訓練するための呼吸訓練システムの作動方法であって、
前記呼吸訓練システムの変換器(3)が、前記患者による吸入プロセス中に生じる空気流を、ホイッスルによって可聴ホイッスルに変換し、
前記呼吸訓練システムの携帯型通信装置(12)のマイクロホン(17)又は前記変換器(3)のマイクロホン(17)が前記可聴ホイッスルをマイクロホン信号に変換し、
前記携帯型通信装置(12)は、前記マイクロホン信号を処理すると共に/或いは評価し、吸入を是正すると共に/或いは前記吸入プロセスを最適化するように、前記患者に対話形式でフィードバックし、前記患者がこの対話形式のフィードバックを適合できるようにする、方法。
【請求項8】
前記携帯型通信装置(12)は、前記患者が前記対話形式のフィードバックの表現の選択及び/又は形式を適合できるようにする、請求項7記載の作動方法。
【請求項9】
前記携帯型通信装置(12)が、有効吸入時間、薬剤の吸入投与量、前記吸入プロセス中に生じる流量及び/又は前記吸入プロセスにより生じる流速を、前記マイクロホン信号に基づいて定め又は概算する、請求項7又は8に記載の作動方法。
【請求項10】
前記変換器(3)は、マウスピース(2)のタイプを示す、特徴のあるホイッスル音を生じさせ、前記マウスピース(2)のタイプが検出される、請求項7〜9のうちいずれか一に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に請求項1及び請求項5の前提部に記載された吸入プロセス又は技術の際に患者を訓練するための吸入訓練システム、吸入プロセス又は技術の際に患者を訓練するための方法及び携帯型通信装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入用の薬剤は、喘息、慢性閉塞性肺疾患又は他の慢性若しくは急性気道疾患のある患者のための好ましい治療となる。
【0003】
薬剤は、いわゆる吸入器を用いて吸入される。最も一般的に用いられている吸入器は、加圧計量投与型吸入器(pMDI)及び乾燥粉末吸入器(DPI)である。pMDIは、患者が吸息しているときにエーロゾル液滴の雲の形態をした薬剤の正確な量又は投与分を患者の肺に送り出すために開発された。乾燥粉末吸入器は、患者が吸息を行っているときに測定された量の乾燥粉末状粒子を肺に送り出すよう構成されている。
【0004】
吸入用の薬剤の有効性は、多くの場合、患者による吸入器の使い方で決まる。理想的には、正確な量の薬剤は、適切な時間で患者の所望の領域に達する。もしそうでなければ、治療効果が損なわれると共に/或いは逆作用の恐れが高まる。
【0005】
多くの患者が自分の吸入器を不正確に用いているという多くのエビデンスが存在する。患者を正確な吸入技術について教示することにより、吸入器の使用を向上させることができる。書面による又は口頭による教示の他に、この目的のために実技が有効である。
【0006】
吸息は、一般的に言って、無意識の活動であって人の存命中の全体にわたりその人なりのやり方を身につけていくので、患者が吸入されるべき薬剤の有効性を高めることを目的として自分の吸入の仕方を変えることは特に困難である。というよりもむしろ、大抵の患者は教示後短時間のうちに最適以下の吸入状態に戻ってしまう。したがって、吸入及びそのチェックについて繰り返し行われる好ましくは定期的な訓練が推奨される。
【0007】
この目的のため、吸入訓練システムが開発された。これらシステムを用いることによって、吸入器を用いて薬剤の吸入について患者を訓練することができる。これらシステムは、市販されている吸入器又は吸入器若しくはその部品のシミュレータを用いる場合がある。公知の吸入訓練システムは、とりわけ、患者を訓練するための吸入器の設計、患者に対するフィードバックの形式(例えば、音響的又は視覚的)、必要とする寸法(例えば、吸入量又は吸入体積、流量又は吸入中に生じる貫流又は質量流量、吸入プロセス中の吸入粒子の速度)、用いられるセンサ及びアクチュエータ(例えば、機械式、磁気式又は電子式)及びサイズ、取り扱い及びコストにおいて様々である。
【0008】
本発明の出発点となる国際公開第2010/023591(A2)号パンフレットは、吸入器、吸入器のためのハウジング、マウスピース及び変換器装置を含む吸入訓練システムを示している。変換器装置は、患者による吸入プロセス中にマウスピース内で生じた空気流を音響信号に変換するよう構成されている。
【0009】
公知の吸入訓練システムのハウジングには、音響発生器が取り付けられ、この音響発生器は、1つ又は2つ以上のイベントが生じた場合、患者のための可聴教示を提供することができる。対応のイベントを騒音発生器、例えばホイッスルによって生じさせることができる。騒音発生器は、ハウジング内に配置され、この騒音発生器は、吸入の際に空気流によって作動される。発生した騒音は、センサ、例えばマイクロホンによって検出される。
【0010】
米国特許出願公開第2012/0116241(A1)号明細書は、ハウジング、ガス検出モジュール、ガス入口管及び信号伝送ユニットを備えた携帯型喘息検出器具を示している。患者の呼吸状態を判定するためには、患者は、ガス入口管の入口中に呼息しなければならない。呼息ガスは、ガス検出モジュールのタービンを回転状態に設定し、これは、空気流センサによって検出される。携帯型喘息検出器具は、データ処理、ワイヤレス伝送、位置検出及びリアルタイムでの表示結果のために用いられるスマートフォンと協働することができる。
【0011】
英国特許出願公開第2479953(A)号明細書は、ハウジング、マウスピース及びハウジング内に設けられたマイクロホンを有する吸入器を示している。マウスピース内で生じる空気流は、この場合音響信号には変換されず、これとは異なり、吸入中に空気チャネル中で生じた騒音は、マイクロホンによって直接ピックアップされる。次に、このピックアップ信号のエネルギーを分析し、訓練目的のために吸入プロセスに関する対応の可聴又は視覚的情報を患者に提供する。
【0012】
欧州特許出願公開第0933092(A1)号明細書は、吸入器及び流量測定装置を備えた吸入訓練器具を示している。流量測定装置は、吸入中に曲げられるデフレクタ及びデフレクタの曲げを測定することができる磁気センサを有する。
【0013】
国際公開第97/13553(A1)号パンフレットは、任意所望のMDI上に配置できる吸入訓練器具を示している。マウスピース中に生じる空気流は、サーミスタ及びセンサを用いて測定される。
【0014】
米国特許第5,839,429(A)号明細書は、吸入器及びプロセッサを備えた吸入訓練器具を示している。吸入流量を測定するため、吸入器内に配置されたマイクロホンが吸入中に空気流により生じる騒音を計測する。
【0015】
国際公開第00/69496(A1)号パンフレットは、吸入器の正しい使用について患者を訓練するシステムを示している。吸入中に生じる空気流を計測するため、システムは、空気流を導いて吸入中の圧力の変化を生じさせる圧力変化チャネルを含む。圧力の変化は、圧力計によって検出される。
【0016】
米国特許出願公開第2010/192948(A1)号明細書は、吸入器に解除可能に取り付けられていて、患者による吸入器の使用をモニタする装置を示している。この装置は、ハウジング、薬剤投与量の光学式カウンタ及び電子制御モジュールを有する。制御モジュールは、外部電子装置、例えば移動電話と対話形式で通信可能な例えば移動電話チップの携帯をしたワイヤレス送信機及び受信機を含む。
【0017】
米国特許出願公開第2009/263773(A1)号明細書は、グラフィックディスプレイ、入力要素及び制御装置を備えた呼吸実技及び思考トレーニング用の器具を示している。この器具は、ソフトウェアとしてパーソナルコンピュータ上にインストール可能である。
【0018】
国際公開第2011/056889(A1)号パンフレットは、吸入器用の吸入模擬システムを示している。このシステムは、吸入訓練器具及び処理システムを含む。処理システムは、通信装置を含むのが良い。通信装置上のソフトウェアプログラムによって、グラフィカルユーザインターフェースを初期化することができ、そして視覚起動ディスプレイを評価することができる。マウスピース中に生じた空気流により生じる騒音は、マイクロホンによって直接計測される。計測値は、ディジタル形式でコンピュータに送られる。吸入時間及び薬剤の吸入投与量を計測値によって求めることができる。
【0019】
肺活量測定法による分析を実施するためのスマートフォン用のソフトウェアプログラム“SpiroSmart”も又知られている。このために、ユーザは、スマートフォンのマイクロホン中に息を吹き込む。
【0020】
米国特許出願公開第2004/0187869(A1)号明細書は、マウスピース及び変換器装置を含む専用吸入訓練システムを示している。変換器装置は、患者による吸入中にマウスピース内で生じた空気流を圧力降下又は負の圧力に変換する。制御回路は、圧力降下又は負の圧力をアナログの線形化信号に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2010/023591(A2)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0116241(A1)号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2479953(A)号明細書は、ハウジング、
【特許文献4】欧州特許出願公開第0933092(A1)号明細書
【特許文献5】国際公開第97/13553(A1)号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,839,429(A)号明細書
【特許文献7】国際公開第00/69496(A1)号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願公開第2010/192948(A1)号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/263773(A1)号明細書
【特許文献10】国際公開第2011/056889(A1)号パンフレット
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0187869(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、患者及び/又は第三者への電子フィードバック方式による薬剤吸入プロセス又は技術について患者の有効で簡単な且つ高信頼度であると共に/或いは安価な訓練を可能にすると共に/或いは携帯型通信装置の簡単且つ安価なしかも/或いは頑丈な構造及び/又は使用を可能にする吸入訓練システム、方法及び使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題は、請求項1記載の吸入訓練システム、請求項5記載の吸入訓練システム、請求項14記載の方法又は請求項19記載の使用によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、それぞれの従属形式の請求項の内容である。
【0024】
本発明の一観点によれば、吸入訓練システムは、電子装置及び電子装置を保持するよう構成された保持器具を含み、電子装置は、特に純粋に機械的に作動する変換器によって送られた信号、特に音響信号を測定し又は検出することができるようになっている。
【0025】
本発明の意味における電子装置は、好ましくは変換器とは別体であり又は独立していて、変換器に接続される必要のない装置である。
【0026】
好ましくは、保持器具は、電子装置が変換器からの信号をマイクロホンによってマイクロホン信号に変換することができるよう構成されている。本発明の意味におけるマイクロホン信号は、マイクロホンからの出力信号である。マイクロホンは、音波(例えば、音響信号の音波)又は音波の結果として生じた空気の運動を電気信号電圧に変換する。マイクロホン信号は、通常、対称に伝送され、そしてマイクロホン前置増幅器によって電圧が増幅される。
【0027】
保持器具は、特に次に解除可能であるように、即ち、電子装置を永続的に固定することなく、電子装置を特定の所望の位置に保持するのに役立つ。本発明の保持器具を用いると、患者が電子装置を変換器と位置合わせする必要がない。本発明の保持器具により、好ましくは、電子装置と変換器との最適位置合わせが可能であり、しかも所望の位置からの電子装置の動きが阻止され又は減少する。患者が電子装置を繰り返し再位置合わせする必要がない。
【0028】
さらに、提案する保持器具により、患者は、電子装置を片手又は両手で保持する必要がない。
【0029】
提案する吸入訓練システムにより、吸入プロセス又は技術について有効で快適な且つ信頼性の高い訓練を提供することができる。さらに、保持器具は、例えば損傷からの電子器具の保護をもたらす。
【0030】
本発明の変換装置は、好ましくは、信号のそれ以上の処理、評価及び/又はフィードバックを行うよう構成されてはいない。本発明によれば、これらステップは、好ましくは、電子装置によってのみ実施される。この目的のため、電子装置は、信号を測定し又は検出し、これをマイクロホン信号に変換する。
【0031】
本発明の吸入訓練システムの構成により、特にホイッスルとしての変換器の簡単且つ頑丈であり、しかも安価な構成が可能であり、しかも電子フィードバックを患者及び/又は第三者に提供することができる。
【0032】
本発明の吸入訓練システムにより、電子装置の機能を特に信号の処理及び/又は評価のため且つ/或いは患者及び/又は第三者へのフィードバックのために簡単且つ高信頼度の、しかも安価な仕方で用いることができる。
【0033】
それと同時に、提案する吸入訓練システムにより、電子装置の機能を吸入プロセスに関する患者の訓練について簡単且つ安価な仕方で拡張することができる。
【0034】
本発明の別の観点によれば、マウスピース中で生じる空気流を音響信号に変換するよう構成されていて、この目的のためにホイッスルを含む変換器は、マウスピースと関連している。具体的に言えば、変換器は、吸入訓練システム用に用いられる吸入器とは関連せず、電子装置とも関連していない。最も具体的に言えば、変換器は、吸入器内には設けられず、電子装置内にも設けられない。むしろ、変換器は、マウスピース内、マウスピース上、マウスピースの前且つ/或いはマウスピースの後ろに設けられる。
【0035】
この構成は、変換器を迅速且つ容易に取り付けたり取り外したり又は交換したりすることができるという利点を有する。さらに、従来型吸入器を訓練のために用いるには、これら吸入器の構成を変更必ず変えなければならず、しかも追加のコンポーネントをこれら吸入器内に取り付ける必要がある。
【0036】
好ましくは、電子装置は、音響信号をマイクロホンによってマイクロホン信号に変換するよう構成されている。変形例として、電子装置は、変換器による音響信号の変換によって生じたマイクロホン信号を評価するよう構成される。
【0037】
別の観点では、本発明は、吸入プロセスについて患者を訓練する方法に関する。この観点では、患者による吸入プロセス中に生じる空気流は、変換器によって音響信号に変換され、この音響信号は、電子的に評価される。このため、音響信号は、電子装置のマイクロホン又は変換器のマイクロホンによってマイクロホン信号に変換される。マイクロホン信号は、電子装置で処理されると共に/或いは評価される。
【0038】
本発明の方法により、簡単であり頑丈な、且つ高信頼度のしかも安価な変換器を使用することができる。加うるに、この方法により、吸入プロセスについて患者の有効で簡単な且つ高信頼度のしかも安価な訓練を実施することができる。
【0039】
さらに、本発明の方法により、吸入プロセスにおいて簡単で高信頼度の且つ安価な仕方で訓練を行うための電子装置の機能を利用することができる。それと同時に、提案する方法により、電子装置の機能を吸入プロセスに関する患者の訓練の観点で簡単且つ安価に拡張することができる。
【0040】
音響信号が変換器のマイクロホンによってマイクロホン信号に変換される場合、マイクロホン信号は、好ましくは、処理及び/又は評価のための電子装置に伝送される。マイクロホン信号は、ケーブルにより伝送されても良く、ワイヤレスで伝送されても良い。
【0041】
別の観点では、本発明は、携帯型通信装置の使用に関する。この観点では、携帯型通信装置は、吸入プロセスについて患者を訓練するために用いられる。
【0042】
好ましくは、患者による吸入プロセス中に生じる空気流は、音響信号に変換され、これは、マイクロホンによってマイクロホン信号に変換される。次に、マイクロホン信号は、携帯型通信装置によって評価される。
【0043】
本発明の携帯型通信装置は、特に、情報の検出、入力、伝送及び/又は出力のために構成されると共に人が持ち運びしやすい電子装置である。情報は、性質上、音響、視覚及び/又は違った感覚のものであるのが良い。携帯型通信装置の代表的な用途は、電話、データ伝送、ゲーミング、テキスト処理、スプレッドシート処理、画像処理、写真及び音楽再生である。携帯型通信装置の代表的な例は、移動電話、スマートフォン、タブレットPC、ハンドヘルド装置及びPDAである。
【0044】
携帯型通信装置の本発明による使用により、携帯型通信装置の機能を吸入技術に関する患者の訓練の観点で容易且つ安価に拡張することができる。
【0045】
これと同時に、提案する使用により、特に信号の処理及び評価に関し且つ吸入技術に関する患者の訓練のために患者及び/又は第三者へのフィードバックに関する対話形式のマルチメディア可能性の観点で代表的な携帯型通信装置の多岐にわたる機能を利用することができる。
【0046】
携帯型通信装置の利用可能性が広いことに基づいて、純粋に吸入訓練のための専用の装置を習得する気のない患者に対しても吸入訓練がやりやすくなる。携帯型通信装置の所有者は、かかる携帯型通信装置を取り扱うのに慣れているので、本発明による使用によっても、最適吸入技術を速やかに且つ容易に学習することができる。多くの人が常時少なくとも1つの携帯型通信装置を携帯しているので、本発明の使用によっても、頻繁な、場合によっては定期的な吸入訓練が可能である。
【0047】
加うるに、提案する使用は、操作の容易さを高めると共に吸入訓練の携帯性を高める。
【0048】
別の観点では、本発明は、特に携帯型通信装置用のデータ記憶媒体に関する。命令が本発明のデータ記憶媒体上に記憶され、かかる命令がプロセッサにより実行されると、好ましくは、かかる命令は、次のステップを実施させる。
‐グラフィックユーザインターフェースを初期化するステップ、
‐視覚開始プロンプトを評価するステップ、
‐電気信号値を音響信号レコーダから読み取るステップ、
‐電気信号値をディジタル化すると共に記憶するステップ、及び
‐実際の吸入時間及び/又は吸入された薬剤の投与量を求めるステップ。
【0049】
本発明のデータ記憶媒体により、吸入技術に関する患者の有効で簡単な且つ高信頼度のしかも安価な訓練が可能である。さらに、本発明のデータ記憶媒体により、本発明の方法及び/又は提案する使用を有効で簡単であり且つ/或いは安価な仕方で実施することができる。
【0050】
図面の説明を行う前に、幾つかの用語について詳細に説明する。
【0051】
「吸入プロセス」という用語は、好ましくは、本発明によれば、吸息を短時間中断させながら行われる患者による吸息プロセスを含み、即ち、吸入プロセスは、次々に迅速に続く多数回の吸息を含む場合がある。加うるに、吸入プロセスは、患者が空気の流れを止めること、又は患者が自分の息をつめること及び/又は患者が呼息すること及び/又は患者が咳をすることを更に含む場合がある。
【0052】
本発明における「患者」という用語は、好ましくは、吸入器を使用することを必要とし又はそのようにしたい人、特に気道の疾患、特に喘息又は慢性閉塞性肺疾患に罹っており、吸入器によって疾患を治療している人を意味している。
【0053】
「空気流」という用語は、好ましくは、本発明の目的上、乱流の有無を問わず、空気の測定可能な流れ運動を意味している。本発明による「空気流連結部」という用語は、好ましくは、空気流のうちの少なくとも何割かを通すことができる流れている空気のための連結部を意味している。
【0054】
本発明の上述の観点及び特徴並びに以下の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載で見受けられる本発明の観点及び特徴は、互いに別個独立に具体化可能であるが、任意所望の組み合わせで具体化されても良い。
【0055】
本発明の別の利点、別の特徴、別の特性及び別の観点は、特許請求の範囲の記載及び添付の図面を参照して行われる好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】電子装置を備えた本発明の吸入訓練システムの第1の好ましい実施形態の概略斜視図である。
図2図1の吸入訓練システムの概略側面図であるが、マウスピース及び電子装置が省かれている図である。
図3図2のIII‐III線矢視部分概略断面図である。
図4】本発明の吸入訓練システムの第2の好ましい実施形態の概略正面図である。
図5】電子装置を備えた本発明の吸入訓練システムの第3の好ましい実施形態の概略斜視図である。
図6図5の吸入訓練システムの概略正面図であるが、電子装置が省かれている図である。
図7図6の吸入訓練システムの概略背面図である。
図8】特に本発明のデータ記憶媒体を用いて実行可能な好ましいシーケンス又は“app”(アプリケーション、アプリ)の概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図中、同一の参照符号は、説明が繰り返されない場合であっても対応の特性及び利点が得られる同一又は類似の部分について用いられている。
【0058】
図1は、電子装置12を備えた本発明の吸入訓練システム1の第1の好ましい実施形態を示している。図2は、マウスピース2及び電子装置12が省かれている側面図を概略的に示している。図3は、図2のIII‐III線矢視概略部分断面図である。
【0059】
吸入訓練システム1は、吸入プロセス又は技術について患者(図示せず)を訓練するために用いられ、この吸入訓練システムは、マウスピース2及び変換器3を含む。
【0060】
用いられるマウスピース2は、好ましくは、必要ならばアクチュエータ付きの又はなしの特に乾燥粉末吸入器及び/又は加圧計量投与型吸入器の種々のマウスピースのうちの任意のものであって良い。
【0061】
好ましくは、マウスピース2は、吸入訓練システム1又は変換器3に解除可能に連結されると共に/或いは交換可能であるように構成されている。具体的に言えば、マウスピース2は、変換器3に押し込められ又はこれに嵌められる。しかしながら、マウスピース2は、ねじ山、磁石、クリップ等によって変換器3に連結されても良く又は連結可能であって良い。
【0062】
マウスピース2は、少なくとも吸入プロセスの間、変換器3に流体結合され、従って、吸入中、特に吸息中、空気は、マウスピース2を通って、そして少なくとも部分的に、変換器3も通って、流れ又は吸い込まれる。
【0063】
使用のため、患者は、マウスピース2を自分の口の中に入れる。吸入プロセスの際、特に、患者が息を吸い込んでいるとき、空気は、変換器3及びマウスピース2を通って流れ、即ち、空気の流れが生じる。
【0064】
変換器3は、空気流を非光学的、特に音響信号に変換するよう構成されている。この目的のため、変換器3は、好ましくは、ホイッスルを含み又はホイッスルとして構成される。ホイッスル又は変換器3は、好ましくは、空気の吸い込み又は吸入が音響信号を発生させ、そして又呼息がオプションとして、同じ音響信号又は異なる音響信号(例えば、異なるホイッスル音)を発生させるよう構成されている。
【0065】
まず最初に、以下において、図3を参照して変換器3の好ましい設計について説明する。
【0066】
好ましくは、変換器3は、特に側部に空気入口4を有する。図示の実施形態では、好ましくはテーパした入口チャネル5が空気入口4で始まって、特に、2つの対応して形作られた壁相互間に形成され、次に、特に絞り部を経て共鳴チャンバ7が形成されている。空気入口4を通って流入し、入口チャネル5を通って案内される空気は、特に絞り部6の後ろに又は共鳴チャンバ7内に配置された好ましくは側方の開口部を通って出口チャネル9内に流れることができる。空気流は、好ましくは、開口部のエッジ8に斜めに当たり、エッジ8に対する空気の衝撃の結果として、エッジ8のところに乱流が生じ、かくして共鳴チャンバ7内に定在波が生じるようになる。定在波は、音響信号又は1つ若しくは2つ以上の音を発生させ、かかる音は、特に出口チャネル9又は音響出口10を通って変換器3から出る。
【0067】
好ましくは、音響信号は、可聴信号、特に可聴ホイッスルである。
【0068】
空気は、出口チャネル9又は音響出口10から、次に、マウスピース2中に流れ、マウスピースは、隣接して位置し、即ち、空気流連結部内に配置されている。これは、吸息中の場合である。呼息中、空気は、逆方向に流れることができると共に/或いはオプションとして別の流路を辿ることができる。さらに、所望ならば、呼息中、音響信号を生じさせる必要はない。
【0069】
ホイッスル又は変換器3は、好ましくは、純粋に機械式であると共に/或いは固定部品だけで作られる。好ましくは、ホイッスル又は変換器3は、少なくとも主として一体に形成される。変換器3は、かくして、その構造が簡単であり、頑丈であり、しかも安価である。
【0070】
必要ならば、変換器は又、複数個のホイッスルを含み又はこれら複数個のホイッスルを形成しても良い。これらは、例えば、空気流の方向及び流量又は流速の関数として音又は信号に応答すると共にこれらを発生させることができる。この場合、種々のホイッスルの音又は信号は、好ましくは、例えば周波数、スペクトル、可聴性及び/又は音量の面で互いに異なる。このように、患者の吸息又は呼息が好ましくは指示可能であり、従って、それに応じて検出されると共に評価可能である。
【0071】
代替的に又は追加的に、マウスピース2は又、変換器3と協働することができ、その結果、特徴のある音響信号(例えば、特定のホイッスル音)が特定のマウスピース2又はその特性(例えば、流れ抵抗)の関数として生じ、その目的は、マウスピース2又はマウスピース2の固有の特性を指示し、マウスピース2を検出して評価することができるようにすることにある。
【0072】
ホイッスルは又、特定形式のマウスピース2に適合しているのが良い。特に、ホイッスルは、種々の形式のマウスピース2が生じるホイッスル音の質、例えば、音のピッチに影響を及ぼすよう構成されるのが良い。このように、用いられる特定のマウスピース2を検出することが可能である。この場合、この情報は、信号又はホイッスルを評価する際、特に、吸入訓練を有効に実施することができるよう考慮に入れるのが良い。
【0073】
特定のマウスピース2又はその特性の上述の指示は、例えば、変換器3又はそのホイッスル信号発生器が可変であり又は調節可能であり又は交換可能である場合又はマウスピース2が少なくとも部分的に、共鳴チャンバ7及び/又はホイッスルの他の何らかの部分を形成している場合、可能にされるのが良い。代替的に又は追加的に、マウスピース2は又、特定的に又は別々に(部分的に又は完全に)変換器3の1つ又は2つ以上のホイッスルを覆い又は露出させることができる。代替的に又は追加的に、マウスピース2は又、変換器3を形成することができ且つ/或いはこの変換器3と一緒に交換可能である。
【0074】
好ましくは、吸入訓練システム1は、電子装置12を保持するよう構成された保持器具11を含み、電子装置12は、変換器3によって発生し又は調製された信号を測定し又は検出し、これをマイクロホン信号に変換し、特にこれを評価することができるようになっている。
【0075】
好ましくは、保持器具11は、後壁13、第1の又は上側の保持領域14及び第2又は下側の保持領域15を有している。保持領域14,15は各々、好ましくは、電子装置12をインターロック係合関係をなして保持すると共に/或いは特に電子装置12の互いに反対側の側部又は端領域を受け入れ、保持し又は包囲するための凹部、窪み等を表示領域に有する。
【0076】
保持領域14,15は、好ましくは、電子装置12を受け入れることができ、又オプションとして、再び解除することができるよう互いに対して動くことができ、調節可能であり、又は交換可能である。保持器具11又は後壁13は、好ましくは、この目的のため、入れ子式スライドアウト21(図6及び図7の第3の実施形態に示されている)を有し、その結果、例えば、上側保持領域14は、下側保持領域15に向かって動くことができるようになっている。例えば、保持器具11又は後壁13及び/又は保持領域14,15は又、この目的のために柔軟性又は弾性構造のものであって良い。
【0077】
電子装置12を受け入れるため、好ましくは、電子装置12の下側部分をまず最初に下側保持領域15内に挿入し、そして電子装置12を後壁13に当てて支持し又はこれに圧接させる。次に、上側保持領域14を入れ子式スライドアウト21によって下方に押し又は下側保持領域15に向かって動かすのが良く、ついには、上側保持領域が電子装置12を頂部のところを含むインターロック係合関係をなして保持し又は包囲するようになる。
【0078】
保持器具11又は入れ子式スライドアウト21は、好ましくは、電子装置12の解除(望ましくない解除)を阻止するよう構成されている。この目的のため、例えば特に入れ子式スライドアウト21のためのラチェット、十分な剛性又はクランプ作用又は固定手段等が設けられるのが良い。保持器具11は、好ましくは、電子装置12を解除することができるよう構成されている。
【0079】
挿入位置では、保持器具11は、かくして、電子装置12の互いに反対側の側部を包囲する。電子装置12は、保持器具11によって部分的に覆われる。しかしながら、電子装置12の表示スクリーン16、作動ボタン又はマイクロホン17及びオプションとしてスピーカは、保持器具11によっては覆われず、その結果、特に、患者は、表示スクリーン16を見ることができ、そして作動ボタン又はマイクロホン17及びオプションとしてスピーカに接近することができる。これにより、例えば、電子装置12が挿入位置にある状態で通話することができる。加うるに、マイクロホン17によるマイクロホン信号への変換器3の音響信号の変換は、影響を受けず又は実質的に影響を受けない。
【0080】
保持器具11は、好ましくは、種々の電子装置12の形状及び/又は寸法に適合するようになっているのが良い。
【0081】
好ましくは、保持器具11は、電子装置12を解除可能に保持するよう構成されている。電子装置12は、特に上側保持領域14を上方に押すことによって再び取り外し可能である。
【0082】
好ましいインターロック係合方式又は上述の固定形式に対する変形例として又は追加例として、保持器具11は又、磁気又は弾性機構体によって電子装置12を解除可能に保持するよう構成されていても良い。
【0083】
保持器具11は、好ましくは、電子装置12を変換器3に対して位置決めし又は位置合わせするよう構成され、電子装置12又はそのマイクロホン17は、特に信号を最適に又は高信頼度で測定することができるようになっている。
【0084】
好ましくは、マウスピース2、変換器3及び/又は保持器具11は、組立体を形成する。特に、保持器具11と変換器3を互いに取り外すことができない。
【0085】
また、好ましくは、マウスピース2、変換器3及び/又は保持器具11は、プラスチックで作られると共に/或いは電子部品をなんら備えてない。
【0086】
以下において、他の図を参照して別の実施形態について説明するが、特に本質的な差異についてのみ説明し、その結果、上記において提供された注意事項及び説明は、引き続き補完的な又は対応した仕方で当てはまる。
【0087】
図4は、本発明の吸入訓練システム1の第2の好ましい実施形態の概略正面図である。特に、吸入訓練システム1は、保護キャップ18を有し、この保護キャップは、マウスピース2を非使用位置で覆い、そして使用可能にするよう保護キャップを取り外すことができ又は邪魔にならないところまで回すことができる。
【0088】
図5図7は、本発明の吸入訓練システム1の第3の好ましい実施形態を示している。図5は、電子装置12を含む吸入訓練システム1を示しており、上側保持領域は、まだ電子装置12に押し嵌めされていない。図6は、電子装置12のない吸入訓練システム1を正面図で示している。図7は、電子装置12のない吸入訓練システム1を背面図で示している。
【0089】
第3の実施形態では、吸入訓練システム1は、マウスピース2の付近では幾分異なる形態のものである。具体的に説明すると、患者のためのマウスピース2又はその隣接の保持部分は、この場合、変換器3又は保持器具11全体にわたり、一方の平坦な側部又は両方の平坦な側部上で側方に伸びている。
【0090】
図6及び図7は、特に回すことができ又はラッチ留め可能な保護キャップ18(図示せず)のためのオプションとしての取り付け部19を示している。取り付け部19は、例えばマウスピース2上に形成されている。
【0091】
加うるに、マウスピース2は、1つ又は2つ以上の給気開口部20を有するのが良く、空気は、吸息時、これら給気開口部を通って、即ち変換器3を超えて吸い込むことができる。
【0092】
種々の実施形態の個々の観点及び特徴並びに実施形態自体を任意所望の仕方で互いに組み合わせることができるが、互いに別個独立に実施しても良い。
【0093】
以下の注意事項は、実施形態の全てに当てはまる。
【0094】
電子装置12は、特に、携帯型通信装置、例えば電話、スマートフォン等である。
【0095】
好ましくは、電子装置12は、変換器3により発生し又は提供された信号を測定し、信号の値を測定し、信号の測定値を処理すると共に/或いは信号の測定値を評価し又は処理するよう構成されている。
【0096】
信号を測定し又は検出するため、電子装置12は、好ましくは、マイクロホン17によって信号をピックアップする。次に、電子装置12は、検出した信号をマイクロホン17によってマイクロホン信号に変換する。マイクロホン信号を更に処理するため、電子装置12は、好ましくは、マイクロホン信号をディジタル化するよう構成されている。好ましくは、電子装置12は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ及び/又は信号の検出、測定、評価及び/又は表示のためのプログラムを有する。
【0097】
好ましくは、電子装置12は、音響信号の振幅、周波数及び/又は位相を求め又は推定するよう設計されている。
【0098】
好ましくは、電子装置12は、信号の測定され、処理されると共に/或いは評価された値を記憶し、患者及び/又は第三者に出力すると共に/或いは特に対話形式でフィードバックするよう設計されている。特に、電子装置12は、評価結果を音響的にフィードバックする装置、例えば、1つ又は複数のスピーカ及び/又は評価結果を視覚的にフィードバックする装置、例えば表示スクリーン16を有する。
【0099】
電子装置12は、特に、正確な吸入に関する助言及び/又は改善のための忠告を提供することができる。患者をより効果的に訓練するため、電子装置12は、更に、最適吸入プロセスを示す画像及び/又は映像を示すことができる。
【0100】
「対話形式で」という用語は、患者に個別的にカスタマイズされた訓練のためのインターベンション及び制御オプションを提供する性質を示している。この目的のため、情報の表示の選択及び仕方は、患者のあらかじめ持っている知識、関心及び要望に適合するのが良く又は患者によって操作されるのが良い。情報を単に提供することは、本発明の意味において対話形式のフィードバックとはならない。
【0101】
好ましくは、電子装置12は、特に信号の測定され、処理されると共に/或いは評価された値を別の電子装置にワイヤレスで伝送するよう構成されている。このように、この種の値を例えばこれらの値に基づく診断結果に達すると共に/或いは吸入プロセスを改善するための忠告を出すことができる医師に伝達されるのが良い。
【0102】
好ましくは、電子装置12は、追加の機能、特に電話、データ伝送、ゲーミング、テキスト処理、スプレッドシート処理、画像処理、写真又は音楽再生を提供するよう構成されている。このようにして本発明の吸入訓練システム1の有効性が高められる。
【0103】
吸入訓練システム1は又、吸入プロセスの作動をモニタするよう設計されているのが良い。かくして、例えば、吸入訓練システム1は、吸入プロセスが患者によって正しい時間に開始されたかどうかを評価するのが良い。このようにして訓練の有効性を高めることができる。
【0104】
この目的のため、電子装置12は、例えば、患者による行為、例えば、作動ボタン17の作動により、吸入プロセスの開始が記録されるよう構成されているのが良い。変形例として、吸入訓練システム1、特にマウスピース2は、例えば吸入器内で用いられるアクチュエータを有するのが良い。アクチュエータは、アクチュエータを押すと共に/或いは放すことにより音響信号が生じるよう構成されているのが良い。この音響信号は、マイクロホン17によって電子装置12でピックアップされるのが良く、次に、電子装置12によって評価されるのが良い。最後に、電子装置12は、アクチュエータが正しい時間に押されると共に/或いは放されたかどうか及び/又は吸入が作動後正しい時間で起こったかどうかに関してフィードバックを提供することができる。
【0105】
吸入訓練システム1は、好ましくは、患者を可能な限り最善の有効な吸入時間(best possible effective inhalation time)Tin,effについて訓練するために用いられるよう構成され又は設計されている。このようにすると、患者は、好ましくは、可能な限り最善の有効な吸入時間を達成することができるはずである。吸入器では、有効な吸入時間は、好ましくは、吸入器が薬剤の或る量又は投与分を放出したとき、吸入プロセス中、特に吸息中の時間を示している。特に、有効な吸入時間は、吸入プロセスと薬剤の投与量の放出がオーバーラップする時間の長さを示している。
【0106】
有効吸入時間に基づき、薬剤の吸入投与量(iDoD、inhaled dose of drug)を求めることができる。これは、特に、薬剤が一定速度で放出されている場合に当てはまる。薬剤の吸入投与量を薬剤の放出投与量の百分率として与えることができる。有効吸入時間及び薬剤の吸入投与量は、吸入プロセスの質の特に良好な予想指標である。
【0107】
患者を有効吸入時間について訓練するため、電子装置12は、好ましくは、有効吸入時間を求めるよう構成されている。好ましくは、マウスピース2は、アクチュエータ(図示せず)を有する。変形例として、アクチュエータは、例えば作動ボタン17により、表示スクリーン16を押すことにより、或いは視覚作動ディスプレイを作動させることによって形成され又はシミュレートされても良い。薬剤の実際の投与量を送り出す必要はない。
【0108】
有効吸入時間を求めるため、電子装置12は、小出し時間又はスプレー時間を定めるのが良い。小出し時間又はスプレー時間は、薬剤の1回投与量の小出しが実施され又はシミュレートされる時間を意味している。具体的に言えば、小出し時間又はスプレー時間は、薬剤の投与量の小出し(実際の又はシミュレートされた小出し)を開始させるためのアクチュエータの作動と小出しの終わりとの間で経過する時間として定められるのが良い。小出しの終わりは、好ましくは、一定の小出し持続時間又はスプレー持続時間(SDur)によって又はアクチュエータの2回目の、後の作動によって設定される。好ましくは、有効吸入時間は、スプレー持続時間の百分率として与えられる。
【0109】
好ましい実施形態では、有効吸入時間は、小出し時間が吸入プロセス又は吸入の時間(Tin)の範囲を超えている場合、即ち、アクチュエータの最初の又は唯一の作動が吸入プロセスの終了後に起こったとき、或いは吸入プロセスが始まる前に小出し時間が終了した場合、0%である。この実施形態では、有効吸入時間は、小出し時間が吸入プロセスの時間の範囲内に完全に収まっている場合、即ち、アクチュエータの最初の又は唯一の作動が吸入プロセスの開始後に起こり、小出し時間が吸入プロセスの終了前に終了した場合、100%である。
【0110】
小出しが吸入プロセスの開始前に始まった場合及び小出しが吸入プロセスの終了後に終わった場合、有効吸入時間は、好ましくは、以下の公式に従って求められる。
【数1】
【0111】
小出しが吸入プロセスの開始後であって吸入プロセスの終了前に始まった場合及び小出しが吸入プロセスの終了後に終了した場合、有効吸入時間は、好ましくは、以下の公式に従って求められる。
【数2】
上式において、Δは、小出しの開始と吸入プロセスの開始との差を示し、即ち、Δは、小出しが吸入プロセスの開始後に始まった場合には正の値を有し、Δは、小出しが吸入プロセスの開始前に始まった場合には負の値を有する。
【0112】
小出しが吸入プロセスの開始前に始まった場合及び小出しが吸入プロセスの開始後であって吸入プロセスの終了前に終了した場合、有効吸入時間は、好ましくは、以下の公式に従って求められる。
【数3】
上式において、Δは、この場合も又、小出しの開始と吸入プロセスの開始との差を示している。
【0113】
特に、有効吸入時間を求める場合、吸息時間だけを吸入時間Tinとして考慮に入れることができる。かくして、患者が自分の息を詰め又は呼息することによって吸息が中断された場合、これら時間は、好ましくは、吸入時間から導き出される。
【0114】
代替的に又は追加的に、電子装置12は、吸入プロセス中に生じた流量又は貫流量及び/又はかくして生じた流速を求め又は推定するよう構成されていても良い。これら2つの物理的変数は、吸入プロセスの質を強く示す。
【0115】
好ましくは、マウスピース2、変換器装置3、保持器具11及び/又は後壁13は、広告資料及び/又は使用に関する説明書きを貼り付けるための少なくとも1つの表面を有する。
【0116】
全体として、吸入訓練システム1は、吸入プロセス、肺の機能及び/又は患者のクオリティオブライフを確証可能に向上させる簡単な方法を提供する。
【0117】
提案する方法では、患者による吸入プロセス中に生じる空気流は、好ましくは、変換器3によって音響信号としての可聴ホイッスルに変換され、この可聴ホイッスルは、電子的に評価される。
【0118】
この目的のため、音響信号は、携帯型通信装置12又は変換器3のマイクロホンによってマイクロホン信号に変換される。次に、マイクロホン信号は、携帯型通信装置12で処理されると共に/或いは評価される。
【0119】
音響信号が変換器3のマイクロホンによってマイクロホン信号に変換される場合、マイクロホン信号は、好ましくは、処理及び/又は評価のために携帯型通信装置12に伝送される。マイクロホン信号は、ケーブルにより又はワイヤレスで伝送可能である。
【0120】
好ましくは、ホイッスル音は、電子装置12、特に通信装置又は電話によって検出され又は測定される。好ましくは、電子装置12は、マイクロホン又は他の適当なセンサによってホイッスル音をピックアップする。例えば、変換器3は、代替的に又は追加的に、電子装置12内に設けられたカメラによって検出される光信号を提供しても良い。
【0121】
ピックアップした信号を用いて、有効吸入時間Tin,eff及び/又は薬剤の吸入投与量iDoDは、好ましくは、上述したように電子装置12によって求められる。代替的に又は追加的に、電子装置12は、吸入プロセス中に生じた空気流量及び/又はそれにより生じる流速を推定することができる。かくして、電子装置12は又、信号の電子評価を実施する。
【0122】
好ましくは、吸入を是正すると共に/或いは吸入プロセスを改善するための音響及び/又は視覚的教示は、特に対話形式で患者及び/又は第三者に対するフィードバックとして提供される。この実施形態は、訓練の有効性を高める。
【0123】
好ましくは、上述の方法又は吸入に関する訓練は、電子装置12又は通信装置と適合性があり、特にオンラインポータルを介して得てインストールできるソフトウェアを用いて実施できる。代表的には、この種のソフトウェアは、“app”(アプリケーション、アプリ)と呼ばれている。appの使用は、使用の融通性及び容易さを向上させる。“app”という用語は、好ましくは、好ましい手順又は好ましい方法をも意味している。
【0124】
appは、例えば、測定された信号を処理すると共に解釈し、そして患者及び/又は第三者へのフィードバックを行うために用いられるのが良い。このため、appは、提案するデータ記憶媒体によって実行され又は提供されるのが良い。データ記憶媒体は、好ましくは、携帯型通信装置内で使用可能に構成され、特に、スペースの最適利用、最適エネルギー消費量、最適信頼性及び最適データ伝送速度が得られるよう設計される。
【0125】
好ましくは、命令がデータ記憶媒体上に記憶され、かかる命令がプロセッサにより実行されると、かかる命令により以下に説明すると共に図8において概略的に表示したステップの流れ図に示されたステップを実施させる。図8は又、好ましいプロセスシーケンスを示している。
【0126】
他のステップを図8に示された好ましいプロセスシーケンスに追加することができ又はappに示されたステップに追加することができる。また、個々のステップを好ましいシーケンス又はappから省くことが可能である。個々のステップの順序は、変更可能であり、互いに異なるステップを互いに組み合わせることができる。
【0127】
図8に示された好ましいプロセスシーケンス及びappのステップの場合、app又は携帯型通信装置12を第1ステップS100で開始する。
【0128】
後のステップS101では、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を開始させ、好ましくは携帯型通信装置12のスクリーン16上に表示する。特に、視覚的開始プロンプト又は視覚的アクチュエータプロンプトも又示されている。
【0129】
別のステップS102では、ループ関数を開始させ、このループ関数によりGUIを更新して例えばGUIの変更したコンテンツを表示する。
【0130】
好ましくは、app又は携帯型通信装置12を用いて開始プロンプト又はアクチュエータプロンプトを評価する。特に、ステップS103では、ユーザ又は患者による行為、特に、ユーザ又は患者による開始プロンプト又はアクチュエータプロンプトの作動をモニタする。
【0131】
行為のモニタにより、好ましくは、ステップS104に示されているように開始プロンプト又はアクチュエータプロンプトが作動されたかどうかに関する決定が下される。
【0132】
ステップS104において開始プロンプト又はアクチュエータプロンプトが作動されたことが決定された場合、好ましくは2つの並列の枝に続きapp又はプロセスが行われる。一方において、第1の枝Z1では、視覚的停止プロンプト(特に、表示スクリーン16上における)が作動されたかどうかを決定するためにモニタが実施される。このモニタにより、好ましくは、ステップS105aに示されているように停止プロンプトが作動されたかどうかの決定が下される。
【0133】
他方、停止プロンプトのモニタに並列の第2の枝Z2では、ステップS105において、音響信号レコーダ、例えば携帯型通信装置12のマイクロホンの電気信号値又は複数個の電気信号値を読み取る。音響信号レコーダの電気信号値を例えば本発明の方法によって得ることができる。好ましくは、ステップS105では、app又は携帯型通信装置12により、電気信号値を処理し、特にディジタル化して記憶する。
【0134】
別のステップS106では、app又は携帯型通信装置12を用いて吸入プロセス中に生じた空気流又は貫流量及び/又は貫流プロファイルを枝Z2で生じさせる。
【0135】
枝Z2内において、好ましくは、app又は携帯型通信装置12により吸入プロセスの開始をモニタする。モニタにより、好ましくは、ステップS107に示されているように吸入プロセスが始まったかどうかの決定が下される。
【0136】
app又は携帯型通信装置12は、好ましくは、アクチュエータの作動が吸入プロセスの開始として解釈されるよう設計され、それにより吸入プロセスが開始されたという決定が下される。アクチュエータの作動により、例えば、音響信号を発生させることができる。この音響信号を音響信号レコーダにより記録し、次にapp又は携帯型通信装置12によって評価するのが良い。
【0137】
変形例として、app又は携帯型通信装置12は又、アクチュエータプロンプトの作動が吸入プロセスの開始として解釈されるよう設計されても良い。
【0138】
一方において、ステップS107において吸入プロセスが開始されたことが判定された場合、ステップS108において、開始時間を好ましくはapp又は携帯型通信装置12によって求める。加うるに、例えばステップS109においてタイムレコーダによってapp又は携帯型通信装置12により他の時間の値も又求めることができる。
【0139】
他方、ステップS107において吸入プロセスが開始したことが決定された場合、app又は携帯型通信装置12によって吸入プロセスの終わりをモニタする。モニタにより、好ましくは、ステップS110に示されているように吸入プロセスが終了したかどうかの決定が下される。
【0140】
app又は携帯型通信装置12は、好ましくは、アクチュエータの解除が吸入プロセスの終了として解されるよう設計され、それにより、吸入プロセスが終了したという決定が下される。アクチュエータを解除することにより、例えば、音響信号を発生させることができる。音響信号レコーダによってこの音響信号を記録し、次にapp又は携帯型通信装置12によってこの音響信号を評価するのが良い。
【0141】
変形例として、app又は携帯型通信装置12は又、アクチュエータプロンプトの別の作動又は終了表示(特に、表示スクリーン16上における)の作動が吸入プロセスの終了として解されるよう設計されても良い。
【0142】
ステップS110において吸入プロセスが終了したことが決定された場合、好ましくは、ステップS111においてapp又は携帯型通信装置12によって停止時間を求める。
【0143】
吸入プロセスの終了のモニタによっては吸入プロセスが終了したという決定が下されない場合、指定された時間(例えば、20秒)が吸入プロセスの検出された開始から経過した後、app又はプロセスを好ましくは終了させ又はシャットダウンする。好ましくは、ステップS114がシャットダウンされたかどうかをチェックするよう実施される。app又は携帯型通信装置12がシャットダウンを検出した場合、ステップS115においてapp又はプロセスを終了させる。
【0144】
ステップS115では、GUIを例えばシャットダウンさせるのが良く、その結果、GUIは、もはや表示されないようになる。さらに、ステップS115において、時間の値をリセットするのが良く且つ/或いは記憶装置をクリアするのが良い。
【0145】
ステップS111において、停止時間が求められた場合、図8の好ましいプロセスシーケンスにおいて、好ましくは、ステップS112においてapp又は携帯型通信装置12によってタイマを定める。さらに、好ましくは、電気信号値の評価を実施する。かくして、ステップS116において、例えばapp又は携帯型通信装置12を用いて有効吸入時間及び/又は薬剤の吸入投与量を上述したように求めることができる。
【0146】
評価の結果をグラフィカルユーザインターフェース又は表示スクリーン16上に表示するのが良く、この目的のため、グラフィカルユーザインターフェースをステップS117で更新するのが良い。
【0147】
また、app又は携帯型通信装置12は、好ましくは、フィードバックが患者及び/又は第三者に提供され、特に、app又は携帯型通信装置12により検出される貫流量が毎分約40リットルの値を超えている場合且つ/或いは毎分約20リットルの値を下回っている場合、警告を出すように構成される。
【0148】
ステップS105aにおいて停止プロンプトが作動されたことが判定された場合、ステップS117においてGUIを好ましくは更新すると共に/或いはステップS114においてシャットダウンが生じたかどうかをチェックする。
【0149】
シャットダウン表示(特に、表示スクリーン16上における)を作動させることによってapp又は訓練プロセスも又終了させ又はシャットダウンさせるのが良い。
【0150】
appの個々のステップは又、他のステップとは独立して実施できる。
【符号の説明】
【0151】
1 吸入訓練システム
2 マウスピース
3 変換器
4 空気入口
5 入口チャネル
6 絞り部
7 共鳴チャンバ
8 エッジ
9 出口チャネル
10 音出口
11 保持器具
12 電子装置
13 後壁
14 上側保持領域
15 下側保持領域
16 表示スクリーン
17 作動ボタン/マイクロホン
18 保護キャップ
19 マウント
20 給気開口部
21 入れ子式スライドアウト
S 段部
Z1 第1の枝部
Z2 第2の枝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8