(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465304
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】誘導加熱・締固めシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20190128BHJP
H05B 6/02 20060101ALI20190128BHJP
H05B 6/14 20060101ALI20190128BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20190128BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
B29C70/38
H05B6/02 Z
H05B6/14
B29C35/02
B29K105:06
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-551767(P2015-551767)
(86)(22)【出願日】2014年1月3日
(65)【公表番号】特表2016-508085(P2016-508085A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】US2014010138
(87)【国際公開番号】WO2014107555
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年11月1日
(31)【優先権主張番号】13/734,661
(32)【優先日】2013年1月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598174370
【氏名又は名称】ノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン,ヴァーノン・エム
(72)【発明者】
【氏名】マハック・デイヴィッド・アール
(72)【発明者】
【氏名】ラブレス,ブライアン・ジェイ
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04992133(US,A)
【文献】
特表2010−519074(JP,A)
【文献】
特開2005−297513(JP,A)
【文献】
特表2011−524291(JP,A)
【文献】
特表2012−533445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29C 43/00−43/58
B29C 35/00−35/18
C08J 5/24
H05B 6/00−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱・締固めシステムであって、前記システムが、
形成ツールの表面の上にレイアップされて位置決めされた前記プリプレグ材料を締固めしながらin−situで前記プリプレグ材料から熱を抽出するように構成されおよび配置される締固め部材を備え、
前記締固め部材が、締固めローラであり、
該締固め部材内に受け入れられる誘導加熱部材と、冷却組立体とを備え、
前記誘導加熱部材は、プリプレグ材料内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つを加熱させるため、選択された周波数で電磁場を発生させるように構成され、
前記冷却組立体は、in−situ締固め・堆積プロセス中にプリプレグ材料のプライ層をコンパクトな構成となるように固めるためにプリプレグ材料から熱エネルギーを抽出するように構成および配置される、
誘導加熱・締固めシステム。
【請求項2】
前記誘導加熱部材が前記締固め部材内に含有され、前記締固め部材が、前記誘導加熱部材によって発生される電磁場の前記選択される周波数に対して透過性である材料から作られる少なくとも一部分を有し、前記誘導磁場が、前記締固め部材の前記少なくとも一部分を分離しながら、統合される複合プリプレグ材料に当てられ得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記誘導磁場の加熱効果から、前記誘導加熱部材によって発生される前記電磁場に対して透過性ではない前記締固め部材の少なくとも1つの反応性部分を遮蔽するように配置される少なくとも1つの遮蔽部材
をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記締固めローラが、
反対側にある第1および第2の端部分を有するローラアクスルと、
前記ローラアクスルの上で受けられるように構成されおよび配置される円筒形遮蔽物と、
前記遮蔽物の上で受けられるように構成されおよび配置される誘導加熱部材と、
前記ローラアクスルの前記第1の端部分の上で受けられる第1の軸受と、
前記ローラアクスルの前記第2の端部分の上で受けられる第2の軸受と、
前記ローラアクスルの上で受けられて前記第1の軸受と前記第2の軸受に係合される主ローラ支持体であって、前記主ローラ支持体が前記ローラアクスルに回転可能に結合される、主ローラ支持体と、
前記主ローラ支持体の上で受けられるローラカバーであって、前記ローラカバーが複合プリプレグ材料を締固めするように構成されおよび配置される、ローラカバーと
をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記反対側にある第1の端部分と第2の端部分との間にある円筒形中間部分をさらに有する前記ローラアクスルであって、前記第1および第2の端部分が前記中間部分より小さい直径を有する、前記ローラアクスルと、
前記ローラアクスルの前記中間部分の上で受けられる前記円筒形遮蔽物と、
前記ローラアクスルの前記第1の端部分と前記中間部分との間に形成される第1のショルダに係合される前記第1の軸受と、
前記ローラアクスルの前記第2の端部分と前記中間部分との間に形成される第2のショルダに係合される前記第2の軸受と、
複数の冷却通路を有する前記主ローラ支持体と
をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記冷却組立体が、前記主ローラ支持体内で前記複数の冷却通路を通してガスまたは液体のうちの少なくとも1つのための流れを供給するように構成されおよび配置される冷却デバイスを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記締固め部材を所望されるロケーションに位置決めするように構成されおよび配置される位置決め組立体をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記位置決め組立体を制御するように結合される制御装置をさらに備え、前記制御装置が、連続締固めプロセスで前記システムを前記材料の上を通過させるときに前記プリプレグ材料を固まった状態にするために加熱、締固めおよび冷却を制御するようにさらに構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
誘導加熱・締固めシステムであって、前記システムが
プリプレグ材料のプライ層を締固めするように構成されおよび配置される締固め部材と、
前記締固め部材内で受け入れられる誘導加熱部材であって、前記誘導加熱部材が選択される周波数の電磁場を発生させるように構成され、前記選択される周波数が、プリプレグ材料内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つを温度上昇させる、誘導加熱部材と、
前記誘導加熱部材によって発生される前記電磁場の前記選択される周波数に対して透過性である材料から作られる少なくとも一部分を有する前記締固め部材であって、前記締固め部材を温度上昇させずに前記誘導磁場が統合される複合プリプレグ材料に当てられ得る、前記締固め部材と、
in−situ締固め・堆積プロセス中にプリプレグ材料の前記プライ層をコンパクトな構成となるように固めるために前記プリプレグ材料から熱エネルギーを抽出するように構成されおよび配置される、前記締固め部材内に受け入れられる冷却組立体部材と
を備え、前記締固め部材が、締固めローラである、
誘導加熱・締固めシステム。
【請求項10】
プリプレグ材料のプライ層を統合する方法であって、前記方法が、
締固め部材の誘導加熱部材で、加熱されるエリア内のマトリックスを軟化させるために、形成ツールの表面の上にレイアップされた少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つのエリアを誘導加熱するステップと、
前記締固め部材で、前記少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層を第2のプリプレグ材料のプライ層の上にレイアップするときに前記少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層の前記加熱されるエリアを締固めするステップと、
前記少なくとも1つの第1のプリプレグ材料の層および前記第2のプリプレグ材料のプライ層をコンパクトな状態に固めるために前記加熱されるエリアを前記締固め部材で締固めしながら、前記締固め部材の冷却組立体で、第1のプリプレグ材料のプライ層および前記第2のプリプレグ材料の層の前記少なくとも1つから熱エネルギーを抽出するステップと
を含み、前記締固め部材が、締固めローラである、
方法。
【請求項11】
前記第1のプリプレグ材料のプライ層の少なくとも一部分を前記少なくとも1つの第2のプリプレグ材料のプライ層の上に自動でレイアップするステップと、
前記第1のプリプレグ材料のプライ層の前記少なくとも一部分内のマトリックスを軟化させるために、前記第1のプリプレグ材料のプライ層の前記少なくとも一部分内の繊維およびマトリックスの少なくとも1つを誘導加熱するステップと、
前記少なくとも1つの第2のプリプレグ材料のプライ層の上で前記第1のプリプレグ材料のプライ層の前記少なくとも一部分を締固めするステップと、
前記プライ層をコンパクトな状態に固めるために締固めするときに前記第1のプリプレ
グ材料の層の前記少なくとも一部分および前記少なくとも1つの第2のプリプレグ材料のプライ層から熱エネルギーを抽出するステップと
をさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記締固め部材内に収容される誘導加熱器を用いて、前記少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つを温度上昇させる所与の周波数の誘導熱エネルギーを発生させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
誘導加熱部材の加熱効果から前記締固め部材の少なくとも一部の要素を遮蔽するステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの前記第1のプリプレグ材料のプライ層および前記第2のプリプレグ材料のプライ層から熱エネルギーを抽出するために、前記加熱されるエリアを締固めする前記締固め部材を冷却するステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0002】
複合材料製品は予め充填される(プリプレグ)材料のプライから作られ得る。プリプレグ材料には、熱硬化性もしくは熱可塑性の樹脂またはセラミックマトリックスなどの、マトリックス材料によって囲まれる繊維が含まれる。積層物内に複合ラミネートを形成するために個別のプライ層を一体に統合するにより、しばしば、最終の複合材料製品の品質が左右される。硬化プロセス
、プレス手段
、または別の手段などによりさらなる統合が行われる前では、積層中にラミネート内での締固めが不足することにより、ラミネート内の繊維がしわをよせる可能性があり、それにより最終製品の機械的性能が低下し、かつ、最終製品の寸法特性が影響を受ける。統合中、一般に、マトリックス材料を温度上昇させて統合中にプライの適合性を向上させることを目的として、プリプレグ材料のプライに熱が加えられる。複合材料の加熱・統合の通常の手法
は締固め部材の前のエリアに注入するのに高温ガスを使用することと、締固め部材の前の材料の材料を暖めるために赤外線加熱を利用することと、圧延および締固めする前に材料を加熱するためにレーザビームを使用することと、
を含む。これらの手法の各々で、それらの加熱源のための割り当てスペースおよびそれらの締固め部材のための割り当てスペースが必要となる。これらのシステムの多くはエネルギー集約的および時間集約的であり、または、操作者が近接するときの本質的な安全上の問題がある。
【0003】
上述した理由のため、および、本明細書を読んで理解することにより当業者には明らかとなる後で説明される理由のため、当技術分野では、プリプレグ材料のプライを統合するための安全で、効果的および効率的なシステムが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
現在のシステムの上で言及した問題は本発明の実施形態によって対処され、以下の本明細書を読んで研究することにより理解される。以下の概要は限定的ではなく例として提供される。以下の概要は単に読者が本発明の一部の態様を理解するのを補助するために提供される。
【0005】
一実施形態では、誘導
システムまたは加熱
部材と、締固め部材とを有する誘導加熱・締固めシステムが提供される。誘導加熱部材が、選択される周波数の電磁場を発生させるように構成される。選択される周波数が、プリプレグ材料内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つを温度上昇させる。締固め部材が、プリプレグ材料を締固めしながらプリプレグ材料から熱を抽出するように構成されおよび配置される。
【0006】
別の実施形態では、別の誘導加熱・締固めシステムが提供される。このシステムが、締固め部材
またはデバイスと、誘導加熱部材と、冷却組立体とを有する。締固め部材が、プリプレグ材料のプライ層を締固めするように構成されおよび配置される。誘導加熱部材が締固め部材内で受けられる。誘導加熱部材が、選択される周波数の電磁場を発生させるように構成される。選択される周波数が、プリプレグ材料内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つを温度上昇させる。締固め部材が、誘導加熱部材によって発生される電磁場の選択される周波数に対して透過性である材料から作られる少なくとも1つの部分を有し、その結果、締固め
部材を温度上昇させずに、誘導磁場が統合される複合プリプレグ材料に当てられ得る。冷却組立体が、in−situ締固め・堆積プロセス中にプリプレグ材料のプライ層をコンパクトな構成となるように固めるためにプリプレグ材料から熱を抽出するように構成されおよび配置される。
【0007】
別の実施形態では、プリプレグ材料のプライ層を統合する方法が提供される。この方法が、加熱されるエリア内のマトリックスを軟化させるために、少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層内の繊維およびマトリックスのうちの少なくとも1つの繊維およびマトリックスのエリアを誘導加熱することと、少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層を第2のプリプレグ材料のプライ層の上にレイアップするときに少なくとも1つの第1のプリプレグ材料のプライ層の加熱されるエリアを締固めすることとを含む。
【0008】
詳細な説明および以下の図を考慮して考察することにより本発明がより容易に理解され得、別の利点およびその使用がより容易に明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の誘導加熱・締固めシステムを示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の別の誘導加熱・締固めシステムを示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態のin−situ締固め・堆積プロセスを示す流れ図である。
【
図4】
図4Aは、本発明の一実施形態の誘導加熱・締固めシステムを示す側面斜視図である。
図4Bは、
図4Aの誘導加熱・締固めシステムの一部分を示す側面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態の別の誘導加熱・締固めシステムを示す側面斜視図である。
【
図5B】
図5Aの誘導加熱・締固めシステムを示す側面斜視図である。
【
図5C】
図5Aの誘導加熱・締固めシステムを示す側面斜視図である。
【
図6A】
図4Aの誘導加熱・締固めシステムで使用される誘導加熱・締固めローラを示す正面図である。
【
図6B】
図6Aの誘導加熱・締固めローラを示す正面斜視図である。
【
図6C】
図6Aの誘導加熱・締固めローラを示す正面斜視分解図である。
【
図7】
図7Aは、
図5Aの誘導加熱・締固めシステムで使用される誘導加熱・締固めフット(induction heating compaction foot)を示す側面斜視図である。
図7Bは、
図7Aの誘導加熱・締固めフットを示す側面斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
慣例に従い、説明される種々の特徴は正確な縮尺で描かれず、本発明に関連する特定の特徴を強調するように描かれる。
本図および
本明細書の全体を通して同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0011】
以下の詳細な説明では、以下の詳細な説明の一部を形成する添付図面を参照し、これらの添付図面では、本発明を実施することができる特定の実施形態が例示として示される。これらの実施形態は当業者が本発明を実施することを可能にするために十分に詳細に説明され、また、別の実施形態が利用され得ることおよび本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更形態が作られ得ることも理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されず、本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等物のみによって画定される。
【0012】
本発明の一部の実施形態の1つの利点は、スペースを節約してパッケージングをより容易にするように比較的コンパクトであるような誘導加熱・締固めシステムを提供することである。パッケージがより密であることにより、オートメーションシステムでの機能の適合性が向上する。本発明の一実施形態では、プリプレグ材料内の導電繊維を加熱するのに誘導加熱が利用され、それによりさらに周囲のマトリックスが溶解または軟化され、それにより、一般に「オンザフライ」または「in−situ」プロセスとして知られるように、前に配置された1つまたは複数のプライに対して1つのプライをネスト(nest)または統合することが可能となる。プリプレグ材料で使用される導電繊維の種類の1つの例は炭素繊維である。炭素繊維は導電性であることから、誘導加熱器組立体によって提供される所与の周波数の交番電磁場の影響下にあるときに温度上昇する。導電繊維に加えて、金属コーティングされる非導電繊維も使用され得る。別の実施形態では、マトリックスは誘導加熱に直接に反応するように構築(formulate)される。これらの実施形態では、マトリックスには導電粒子が含まれてよい。
導電粒子は、金属、炭素ナノ繊維、ナノフィルタなどであってよい。マトリックスの導電成分が誘導加熱を吸収してプリプレグを軟化させる。別の実施形態では、繊維およびマトリックスの両方が誘導加熱に反応してよい。
【0013】
次いで、締固め部材が、in−situ締固め・堆積プロセスの一部として、依然として暖かい/高温であるプライを締固めするのに使用される。複数の実施形態の締固め部材は、統合された状態または硬化された状態でラミナまたはラミネートを締固めしながらプリプレグ材料から熱を抽出する。一部の実施形態では、締固め部材は、より高温の材料に対しては、または、プロセス速度を上げるのを可能にするために、強制冷却される。複数の実施形態では、合成材料の方に向けられる誘導磁場の特にいわゆる「視覚」に入る締固め部材の部分は、複合プリプレグ材料を温度上昇させるのに使用される電磁場の選択される周波数の影響を受けない材料から作られる。したがって、一部の実施形態では、締固め部材の少なくとも一部分が、誘導加熱部材によって作られる電磁場の選択される周波数に対して透過性である材料から作られる。さらに、一部の実施形態では、誘導磁場の周波数に対して透過性ではない、締固め部材の少なくとも一部の部分が、誘導磁場から遮蔽される。
【0014】
図1が、一実施形態の誘導加熱締固めシステム100のブロック図を示す。誘導加熱・締固めシステム100が、締固め部材110に結合される位置決め組立体106を有する。位置決め組立体106が、後でさらに考察するように、プリプレグ材料を基準として締固め部材110を位置決めするように構成される。位置決め組立体106が制御装置102によって制御される。制御装置102が誘導加熱・締固めシステム100の機能を制御する。制御装置102がユーザ入力104からコマンドを受信する。締固め部材110が、後でさらに考察するように、プリプレグ材料のプライを統合するように設計される。締固め部材110が、この実施形態では、加熱部材112と冷却
部材組立体111とを有する。すなわち、この実施形態の締固め部材110は、その組立体内に加熱部材112と冷却部材111とを有する。締固め部材110内に加熱部材112と冷却部材111とを配置することによりコンパクトな組立体が得られる。複数の実施形態では、上で考察したように、加熱部材112は、プリプレグ材料内の繊維およびマトリックスを温度上昇させる所与の周波数の電磁場を発生させる誘導加熱部材である。加熱部材112は、加熱部材112を動作させるためのエネルギー源を提供する電源108に電気接続される。一実施形態では、制御装置102が、電源108からエネルギーを入れるときの電力レベルおよび時間を制御する。上で考察したように、締固め部材110は冷却組立体111をさらに有する。冷却組立体111は、限定しないが、冷却通路またはヒートシンク材料(heat sink material)などのように受動的であってよいか(すなわち、外部エネルギー源を必要としない)、または、
冷却部材111は、限定しないが、ファン駆動式システムまたは冷却液圧送システムなどのように能動的な冷却組立体であってもよい。冷却システムが能動的である場合、制御装置102は、一実施形態では、
破線で示されるように、冷却源109に接続され、この冷却源109がさらに冷却部材111内での冷却レベルを管理する。例示の冷却システムを後で説明する。
図2が別の誘導加熱・締固めシステム200を示す。システム200は
図1に関連して説明したシステム100に類似する。しかし、
図2の実施形態では、加熱部材122が締固め部材120の中ではなく締固め部材120の近傍に配置される。この実施形態はまた、締固め部材120の中ではなく締固め部材120の近傍に配置され得る第2の冷却部材121の使用を示す。複数の実施形態では、制御装置102が、冷却部材111および121のための冷却媒体を供給するために冷却源109を起動させる。複数の実施形態では、冷却部材111および121ならびに/または加熱部材112
(図1)および122が、加熱部材112および122によって発生される熱の量ならびに冷却部材111および121に対してなされる冷却量を少なくとも部分的に制御するために制御装置102によって使用される1つまたは複数の温度センサを有する。
【0015】
図3を参照すると、一実施形態のシステムを実装する方法を説明する、in−situ締固め・堆積プロセスの流れ図が示される。プロセスが、ツール表面上に、または、ツール上にレイアップされた少なくとも1つの別のプリプレグ材料のプライ(複数可)の上に、プリプレグ材料の1つまたは複数の層を最初に配置することにより、開始される(302)。一実施形態では、層は互いの上で、用途および所望される結果に応じて一度に一回または一度に複数回締固めされてよい。次いで、締固め部材120がプリプレグ材料を基準として位置決めされる(304)。締固め部材120が締固めを開始するための正確な位置にくると、誘導加熱部材112が始動する(306)。誘導加熱部材112は、プリプレグを温度上昇させるためにプリプレグ材料のマトリックスの導電繊維および/または導電成分中の電子を励起するのに、選択される電力、周波数および時間の電磁波を使用する(308)。プリプレグ材料が加熱されると、締固め部材が中のプリプレグ材料に係合され、それによりプリプレグ材料が締固めされる(310)。締固め部材がプリプレグ材料を締固めするとき、締固め部材がプリプレグ材料から熱も取り去る(312)。したがって、締固め部材と共に熱がプリプレグ材料のプライを密にネストまたは統合し、また、締固め部材により熱が抽出されることにより積層状態(すなわち、プロセスで使用される合成材料に応じた部分的な統合状態または完全な統合状態)でラミネートが固められる。締固めの流れ
図300の実施形態では、ここで、プリプレグ材料の最後の1つまたは複数のプライがステップ(314)で加えられたかどうかが判断される。最後の1つまたは複数のプライが加えられていない場合(314)、ステップ(302)で形成ツールの上に前に積層されて締固めされたプライの上にプリプレグ材料の別の1つまたは複数のプライを加えることにより、ステップ(302)においてプロセスが継続される。最後の1つまたは複数のプライが加えられている場合(314)、プロセスが終了する。複数の実施形態では、プライ層は前に形成されたプライ層を完全に覆うようにin−situプロセスで加えられてよく、または、後のプライ層は所望される結果によっては前に形成されたプライ層の一部のみを覆ってもよい。
【0016】
一実施形態の誘導加熱・締固めシステム400の一実施例が
図4Aに示される。この実施形態は締固めローラ450を使用する。さらに、誘導加熱・締固めシステム400が位置決め保持ヘッド(positioning holding head)402を有する。位置決め保持ヘッド402が、別の位置決めシステムのアーム(図示せず)に結合され得る設置プレート420を有する。設置プレート420がブラケット組立体422に結合される。ブラケット組立体422が、位置決め保持ヘッド402を所望の向きで位置決めすることを目的として位置決め保持ヘッド402を枢動させるのを可能にする枢動接続部424を有する。スペーサ426がブラケット組立体422から延在する。スペーサ426が、スペーサ426を上方および下方に選択的に移動させる1つまたは複数のアクチュエータ427に結合される。保持ブラケット428がスペーサ426に結合される。保持ブラケット428は締固めローラ450を保持するように設計される。具体的には、保持ブラケット428は、第1の保持アーム428aと、離間される第2の保持アーム428bとを有する。締固めローラ450のローラ
軸462が、保持ブラケット428の第1の保持アーム428aと第2の保持アーム428bとの間に結合される。
図4Aが、形成ツール404の上にレイアップされているプリプレグ材料のプライに係合されている締固めローラ450をさらに示す。具体的には、
図4Aは、形成ツール404の上にレイアップされている1つまたは複数のプライ層406の上で1つまたは複数のプライ層406aを締固めする(in−situ)ことを示している。
図4Bに示される側面図を参照すると、誘導加熱および熱伝達の説明が提示されている。具体的には、
図4Bは、
図6Cに関連して後でさらに説明されるように、
矢印で示されるように、締固めローラ450内に収容される誘導加熱部材によって作られる誘導磁場440を示している。誘導磁場440が1つまたは複数のプライ層406aを加熱する。締固めローラ450がプライ層406
aに係合されるとき、プライ層406
aからの熱447が締固めローラ450に戻るように抽出され、プライ層
406aがコンパクトな状態で固められる。この実施形態
では、締固めローラ450は、締固めローラ450を低温状態に維持するのを補助する冷却通路451を有する。
図4Bは、材料406aの温度を調べて感知するようにおよび制御装置102にフィードバックを提供するように配置される温度センサ429をさらに示す
(図1および図2)。第2の誘導温度センサ(induction temperature sensor)(図示せず)が、締固めローラカバー452の温度を測定して
(図6Bを参照のこと)制御装置102にフィードバックを提供するのに使用され得る。また、
図4Aおよび4Bには、ローラ450に対して1つまたは複数のプライ層406aを分配して配置するように設計される材料分配部材425が示される。材料分配部材425は、通常、積層材内で必要に応じて材料
406aを切断し、かつ再開させる能力を有する。
【0017】
誘導加熱・締固めシステム500の別の例示の実施形態が
図5Aに示される。誘導加熱・締固めシステム500では、締固め部材として、締固めフット502(または、締固めシュー(compaction shoe))が使用される。この実施形態では、締固めフット502が保持ブラケット428を介して位置決め保持ヘッド402に結合される。具体的には、締固めフット502は保持ブラケット428の第1の保持アーム428aと第2の保持アーム428aとの間に結合される。
図5Aに示されるように、締固めフット502は、ツール404の上に配置されたプリプレグ材料406のプライを締固めするように配置される。この実施形態では、冷却部材が冷却通路508bを有する。締固めフット502内の冷却通路508bが、プライをコンパクトな状態で固めることを目的として締固めフット502によりプリプレグ材料
406から熱を抽出するのを可能にするために締固めフット502を低温状態で維持するのを補助する。締固め部材のローラ・フット構成の実施例のみしか提示されないが、別の構成が使用されてもよく、本発明はローラ・フット構成のみに限定されない。
図5Bを参照すると、プリプレグ材料406に誘導熱530を供給するように配置される誘導加熱・締固めシステム500の図が提示されている。示されるように、この実施形態では、締固めフット502が、誘導磁場530を形成するときにプリプレグ材料406から選択される距離だけ離間される。別の実施形態では、誘導磁場
530を励起するとき、締固めフット
502はプリプレグ
材料406に接触するように既に動作しているかまたは既にプリプレグ
材料406に接触していてよい。プリプレグ材料406が加熱されると、誘導加熱・締固めシステム500の締固めフット502が
図5Cに示されるようにプリプレグ材料
406を締固めする。また、
図5Cには、コンパクトな構成でプリプレグ材料
406を固めるためにプリプレグ材料406から締固めフット502内へと抽出される熱520が示される。
【0018】
さらに、締固めローラ450が
図6Aから6Cに示される。具体的には、
図6Aが組み立てられた締固めローラ450の正面図を示し、
図6Bが締固めローラ450の正面斜視図を示し、
図6Cが締固めローラ450の組み立てられていない分解図を示す。
図6Cを参照すると、この実施形態の締固めローラ450は、円筒形中間部分462aと、反対側にある第1の端部分462bおよび第2の端部分462cとを有するローラ
軸462を有する。第1の端部分462bおよび第2の端部分462cは中間部分462aより小さい直径を有する。別の実施形態では、一対のスタブシャフトがローラ
軸462の代わりに使用される。一対のスタブは、ローラ
軸462の第1の端部分462bおよび第2の端部分462cのように機能する。この実施形態では、円筒形遮蔽物453が
軸462の中間部分462a上で受けられる。遮蔽物453が、誘導加熱部材458によって発生される電磁波から
軸462の少なくとも一部分を遮蔽する。一実施形態では、遮蔽物453は電磁波遮蔽材料で作られる。例えば、遮蔽材料は、プロセスで使用される周波数に合わせて調整される、銅および/もしくはアルミニウムの薄いシートまたはニッケル含有量が高いフォイルから作られてよい。例えば、周波数が高い場合、より薄いシートが使用される。当業者には既知の別の種類の電磁波遮蔽材料が使用されもてよい。次いで、誘導加熱部材458が遮蔽物
453の上でさらに受けられる。また、電源から誘導加熱部材458にエネルギーを供給する一対のリードワイヤ457aおよび457bが
図6Cに示される。第1の軸受456がローラ
軸462の第1の端部分462b上で受けられる。第1の軸受456が、ローラ
軸462の第1の端部分462bと中間部分462aとの間に形成されるショルダ462dに係合される。第2の軸受464がローラ
軸462の第2の端部分462c上で受けられる。第2の軸受464が、ローラ
軸462の第2の端部分462cと中間部分462aとの間に形成される第2のショルダ462eに係合される。主ローラ支持体(main roller support)454がローラ
軸462上で受けられる。主ローラ支持体454が第1の軸受456および第2の軸受464に係合され、その結果、主ローラ支持体454がローラ
軸462に回転可能に結合される。主ローラ支持体454は、この実施形態では、
図6Bで最も良好に見られるように、複数の冷却通路451を有する。さらにこの実施形態では、冷却デバイス466がローラ
軸462の第2の端部分462c上に設置される。この実施形態の冷却デバイス466は、主ローラ支持体454内の複数の冷却通路451を通る流体またはガスの流れを供給する。別の実施形態では、受動的な冷却が利用されてよく、冷却デバイス466が必要とならなくてよい。ローラカバー452が主ローラ支持体454上で受けられる。ローラカバー452はプリプレグ材料のプライ層を締固めするように設計される。ローラカバー452は、固体、または、統合される形状に従う適合性を有する材料(compliant material)であってよい。さらに、一部の実施形態では、ローラカバー452は交換されるように設計される。
【0019】
締固めフット(または、シュー)502を使用する実施形態が
図7Aの組み立てられた側面斜視図および
図7Bの分解(組み立てられていない)側面斜視図に示される。締固めフット502がスタンプ部材508を有する。スタンプ部材508は、この実施形態では、長方形ベース部分507eを有する。スタンプ部材508は、長方形ベース部分507eの両端部から延在する反対側にある第1の端壁507aと第2の端壁507bとをさらに有する。スタンプ部材508はまた、長方形ベース部分507eの両側部から延在する反対側にある第1の側壁507cと第2の側壁507dとを有する。第1の端壁507aおよび第2の端壁507b、第1の側壁507cおよび第2の側壁507d、ならびに、ベース部分507eが、スタンプ部材508の内部チャンバ509を形成する。複数の冷却通路508aおよび508bがスタンプ部材508の第1の側壁507cおよび第2の側壁507dを通って延在し、冷却組立体の少なくとも一部を形成する。係合部材510
−(または、係合カバー)がスタンプ部材508のベース部分507eの底部に結合される。係合部分510は、固体の表面、または、局部的な外形に対応するような適合性を有する表面(compliant surface)であってよい。一実施形態では、係合部材510は、プリプレグ材料から容易に解放されるように低接着性の材料で覆われる。係合部材510は、プリプレグ材料のプライ層に係合されてそのプライ層を締固めするように設計される。誘導加熱部材506がスタンプ部材508の内部チャンバ509内で受けられる。
図7Bにはまた、電源から誘導加熱部材506に電力を供給するリードワイヤ519aおよび519bが示される。この実施形態の締固めフット502はシールド部材504をさらに有する。シールド部材504は、シールド頂部カバー504aと、シールド頂部カバー504aから延在するシールド側方延在部分504bとを有し、それにより、誘導加熱部材506を中で受けるための内部チャンバが形成される。シールド側方延在部分504bはさらにスタンプ部材508の内部チャンバ509内で受けられる。シールド頂部カバー504aがスタンプ部材508の内部チャンバ509を覆う。シールド
部材504のデザインは、誘導磁場を望まないようなエリアを保護する目的に応じて変化してよく、誘導磁場が集中するような材料をコンパクトにすることを可能にする。したがって、シールド
部材504は、誘導加熱部材506によって発生される電磁場から別の構成要素を遮蔽するために電磁波遮蔽材料から作られる。別の実施形態では、締固めフット502が互いに独立して移動することができるセクションで形成され、それにより、締固めフット502がin−situ締固め・堆積プロセスでプリプレグ材料を横切って動き回ることができるようになる。さらに、別の実施形態では、2つ以上の締固めシュー502がin−situ締固めビルドアッププロセスで使用される。また、示される締固めシュー502の形状は長方形であるが、締固めシュー502は、プリプレグ層を形成される複合構造の所望される形状に従わせるような任意の形状を有してよい。同じことが上で考察した
ように締固めローラ450にも当てはまる。
【0020】
本明細書で特定の実施形態を示して説明してきたが、示される特定の実施形態に対して、同じ目的を達成するように計算される任意の構成が代用され得ることを当業者であれば認識するであろう。本出願は本発明のいかなる適合および変形も包含することを意図される。したがって、本発明は特許請求の範囲およびその均等物のみによって限定されることを明確に意図される。