特許第6465351号(P6465351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6465351火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
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  • 特許6465351-火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465351
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/00 20060101AFI20190128BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20190128BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   F23G5/00 109
   F23G5/50 HZAB
   F23G5/50 L
   F23L15/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-65941(P2015-65941)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186382(P2016-186382A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 江梨
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213652(JP,A)
【文献】 特開2005−201553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 − 5/50
F23J 3/00 − 11/12
F23L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子式廃棄物焼却炉であって、火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼室に連設されて燃焼室からの可燃性ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込手段と、燃焼室のガス出口に設けられ二次燃焼空気を吹き込む二次燃焼空気吹込手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、
燃焼室内の火炎視認状況を撮像して、撮像した瞬時の画像を画像処理し、明るさ、色彩、火炎形状のうち少なくとも一つを数値化した画像情報を得て、その時間平均値を算出して得る火炎視認状況を示す画像情報信号を、火炎視認状況信号として発する監視手段を備え、
高温ガス吹込手段は、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき高温ガス供給量を制御する高温ガス吹込制御手段を備え、
二次燃焼空気吹込手段は、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき二次燃焼空気供給量を制御する二次燃焼空気吹込制御手段を備え、
高温ガス吹込制御手段と二次燃焼空気吹込制御手段は、煤が発生している燃焼状況を、火炎を含む燃焼室内の燃焼状況を撮像した画像から得る画像情報の変動から検知し、燃焼室内で廃棄物の不完全燃焼が生じていて燃焼状況が正常燃焼状態から変動していると判定し、監視手段から発信された火炎視認状況信号である画像情報の時間平均算出値を、予め正常燃焼し煤が発生していない時に撮像して得られた画像情報の基準値と比較した差分を求め、この差分が許容範囲内にあるかどうかを判定し、差分が許容範囲内にない場合に、燃焼状況が正常燃焼状態から変動していると判定し、差分が許容範囲内に収まるまで、その差分にもとづいて高温ガス供給量と二次燃焼空気供給量を制御することを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項2】
火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法であって、火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼室に連設されて燃焼室からの可燃性ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込手段と、燃焼室のガス出口に設けられ二次燃焼空気を吹き込む二次燃焼空気吹込手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法において、
監視手段により燃焼室内の火炎視認状況を撮像して、撮像した瞬時の画像を画像処理し、明るさ、色彩、火炎形状のうち少なくとも一つを数値化した画像情報を得て、その時間平均値を算出して得る火炎視認状況を示す画像情報信号を、火炎視認状況信号として発し、
高温ガス吹込手段に備えられる高温ガス吹込制御手段で、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき高温ガス供給量を制御し、
二次燃焼空気吹込手段に備えられる二次燃焼空気吹込制御手段で、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき二次燃焼空気供給量を制御し、
高温ガス吹込制御手段と二次燃焼空気吹込制御手段で、煤が発生している燃焼状況を、火炎を含む燃焼室内の燃焼状況を撮像した画像から得る画像情報の変動から検知し、燃焼室内で廃棄物の不完全燃焼が生じていて燃焼状況が正常燃焼状態から変動していると判定し、監視手段から発信された火炎視認状況信号である画像情報の時間平均算出値を、予め正常燃焼し煤が発生していない時に撮像して得られた画像情報の基準値と比較した差分を求め、この差分が許容範囲内にあるかどうかを判定し、差分が許容範囲内にない場合に、燃焼状況が正常燃焼状態から変動していると判定し、差分が許容範囲内に収まるまで、その差分にもとづいて高温ガス供給量と二次燃焼空気供給量を制御することを特徴とする廃棄物焼却方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられている。その代表的なものの構成の概要を以下に説明する。
【0003】
火格子式廃棄物焼却炉は、廃棄物を燃焼する燃焼室の下部に廃棄物の移動方向に配置され三段から成る火格子(乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子)を有し、後燃焼火格子の上方に位置する燃焼室の出口に二次燃焼室が連設されている。上記燃焼室には乾燥火格子の上方に位置して廃棄物投入口が設けられている。そして後燃焼火格子の廃棄物の移動方向下流側下方には灰落下口が設けられている。通常、上記二次燃焼室は廃熱回収用の廃熱ボイラの一部でもあり、その入口近傍部分である。また、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子それぞれの火格子下から燃焼用一次空気を吹き込む燃焼用一次空気吹込み機構が設けられている。
【0004】
このような火格子式廃棄物焼却炉において、廃棄物投入口から燃焼室内に投入された廃棄物は、乾燥火格子上に堆積され、乾燥火格子の下からの空気と炉内の輻射熱により乾燥されると共に、昇温されて着火する。すなわち、上記乾燥火格子の直上方では、廃棄物の移動方向の上流側空間で乾燥領域が形成され、乾燥火格子の直上方の下流側空間から燃焼火格子の直上方の上流側空間にかけて燃焼開始領域が形成される。燃焼開始領域で着火して燃焼を開始した廃棄物は、乾燥火格子から燃焼火格子上に送られ、廃棄物が熱分解されて可燃性ガスが発生し、燃焼火格子の下から送られる燃焼用一次空気により可燃性ガスと固形分が燃焼し、燃焼火格子の直上方空間で主燃焼領域が形成される。そして、更に後燃焼火格子上で、固定炭素など未燃分が完全に燃焼し、該後燃焼火格子の直上方空間で後燃焼領域が形成される。しかる後、燃焼後に残った灰は、灰落下口より外部に排出される。
【0005】
かくして、火格子式廃棄物焼却炉では、廃棄物は燃焼室にて三段の火格子の下から吹き込まれる燃焼用一次空気により燃焼する。さらに、燃焼室からの燃焼ガスに含まれている可燃性ガスの未燃分(未燃ガスという)は、廃熱ボイラの一部である二次燃焼室で二次燃焼用空気を受けて燃焼(二次燃焼という)する。二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラで熱回収される。
【0006】
従来の火格子式廃棄物焼却炉では、実際に焼却炉内に供給する空気量を廃棄物の燃焼に必要な理論空気量で除した比(空気比)は、通常、1.6程度である。これは、一般燃料の燃焼に必要な空気比である1.05〜1.2に比べて大きくなっている。その理由は、廃棄物には、一般燃料としての液体燃料や気体燃料に比べて不燃分が多く、かつ不均質なため、空気の利用効率が低く、燃焼を行うには多量の空気が必要となるためである。しかし、単に供給空気を多くすると、空気比が大きくなるにしたがって排ガス量も多くなるので、これに伴ってより大きな排ガス処理設備が必要となる。
【0007】
火格子式廃棄物焼却炉において空気比を小さくした状態で、支障なく廃棄物を燃焼することができれば、排ガス量は低減し、排ガス処理設備がコンパクトになり、その結果、廃棄物焼却施設全体が小型化して設備費を低減できる。これに加えて、排ガス処理のための薬剤使用量も低減するので、運転費を低減できる。さらには、排ガス量の低減により廃熱ボイラの熱回収率を向上できるので、熱回収できずに大気に捨てられる熱量を低減させ、これに伴って廃棄物焼却廃熱を利用する発電の効率を上げることができる。
【0008】
このように、低空気比燃焼を行う利点は大きいが、一方で、空気比が1.5以下の低空気比燃焼では燃焼が不安定になるという問題が生じる。すなわち、低空気比で廃棄物を燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生量が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したりして排ガス中の有害物が増加するという問題が生じ、また、局所的な高温により廃棄物や灰が溶融して炉壁に付着してクリンカが発生したり、炉壁の耐火物の寿命が短くなるという問題点がある。
【0009】
このような状況のもとで、空気比が1.5以下の低空気比で安定して燃焼することができる火格子式廃棄物焼却炉が検討されており、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、火格子式廃棄物焼却炉の燃焼室の天井から高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、以下の効果が得られるとしている。
【0010】
即ち、高温ガスの顕熱と輻射により廃棄物の熱分解を促進すること、酸素を含んだ高温ガスの吹込みにより廃棄物の熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼を促進すること、さらに高温ガスを燃焼室の天井に設けたノズルから燃焼室内に吹き込み、この高温ガスの流れと、廃棄物から発生した可燃性ガスと燃焼ガスとの上昇流とを衝突させ、廃棄物層直上に流れの遅いよどみ領域を形成することにより、可燃性ガスの流れが緩やかになり、可燃性ガスが酸化剤成分と十分に混合されるため安定した燃焼が行われ、平面状火炎を形成し定在させることなどの効果があり、高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、低空気比燃焼操業下で廃棄物の燃焼を安定して行わせることができるとしている。
【0011】
このような火格子式廃棄物焼却炉において、炉内は、廃棄物の移動方向で上流側から、乾燥領域、燃焼開始領域、主燃焼領域と後燃焼領域が順に形成される。主燃焼領域において燃焼火格子上の廃棄物は熱分解そして部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する。可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成して燃焼する。しかる後、後燃焼領域において、残った廃棄物中の固定炭素などの固形分の未燃分が後燃焼火格子上で完全に燃焼される。固形分が燃焼する際には火炎は発生せず熾燃焼する。
【0012】
主燃焼領域とは、廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼しているとともに廃棄物の固形分が燃焼する燃焼領域である。火炎を伴う燃焼が実質的に完了する点を燃切点と言い、主燃焼領域と後燃焼領域との境界となる。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形分の未燃分が燃焼する熾燃焼領域(後燃焼領域)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013−213652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
廃棄物焼却炉による廃棄物の燃焼においては、廃棄物が熱分解されて発生する可燃性ガスの燃焼を安定して行うことが、燃焼によって発生するCO,NOxなどの有害物質の発生量を抑制することに大きく寄与する。そこで、特許文献1に記載の廃棄物焼却炉では、燃焼室天井に設けたノズルから高温ガスを燃焼室内に吹き込むようにして燃焼の安定を図っている。
【0015】
このような特許文献1の廃棄物焼却炉によれば、焼却炉天井から吹き込んだ高温ガスが、
廃棄物の熱分解または燃焼により発生した熱分解ガス(可燃性ガス)と燃焼ガスとの上昇流と衝突して効果的に対向流場を形成し、淀み領域または上下方向の循環領域が広域にわたって生成されるようになる。これにより、該淀み領域または該循環領域において可燃性ガスの流れが緩やかになり安定した燃焼が行われ、火炎が平面状に定在し極めて安定した燃焼状態が保たれる。
【0016】
また、特許文献1の廃棄物焼却炉は、二次燃焼用空気を二次燃焼室に吹込む二次燃焼用空気吹込み手段を備え、燃焼室から排出されるガスに含まれる可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)を二次燃焼している。このように、燃焼室への高温ガスの吹込みにより燃焼を安定化し、さらに、二次燃焼室で未燃ガスを二次燃焼することにより、焼却炉から排出される排ガスの酸素、NOx、COの濃度を適正な範囲に制御し、CO,NOxなどの有害物質の排出を規制値以下とするようにしている。
【0017】
廃棄物焼却炉の実際の操業では標準的な操業基準で操業していても、焼却炉内の燃焼状況が変化し、排出される排ガス中の有害物質量が変動することがある。そこで、特許文献1の廃棄物焼却炉では、予め定めた一次燃焼用空気と高温ガスの供給量は維持したまま、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子に基づいて二次燃焼用空気供給量を増減するように調節することで排ガス中の有害物質量を所定範囲内とするように制御している。このような燃焼制御方法をとることにより、焼却炉内の燃焼状況が変化して有害物質の発生量が増大しても、最終的に廃棄物焼却炉から排出される排ガス中の有害物質量を所定範囲内とするように制御しやすくなり、さらに、焼却炉の燃焼制御系を簡単にすることができるとしている。ここで、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子としては、特許文献1では、例えば、燃焼室から排出される未燃ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域出口近傍又はボイラ出口における排ガス中の酸素濃度、CO濃度、NOx濃度のガス成分濃度とすることが好ましいとしている。
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載のような燃焼制御方法では、以下のような問題がある。すなわち、排ガス中のガス成分濃度をガス濃度計により計測するが、ガス濃度計の応答時間を要するため、焼却炉内の燃焼状況が変化した時刻と計測値を得る時刻との間に時間遅れが生じ、実際の焼却炉内の燃焼状況の変動に対して、タイムリーな二次燃焼用空気供給量の増減制御ができないことがある。
【0019】
本発明は、かかる事情に鑑み、炉天井から高温ガスを吹き込む火格子式廃棄物焼却炉において、廃棄物の燃焼を安定して行うことができ、CO、NOx等の有害物質の発生量を抑制でき、低空気比燃焼操業を問題なく行うことが可能であり、さらに、実際の焼却炉内の燃焼状況の変動に対して、タイムリーな燃焼制御を実現できる火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明において、上述の課題は、次のように構成される火格子式廃棄物焼却炉もしくは火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法により解決される。
【0021】
火格子式廃棄物焼却炉の燃焼室内での廃棄物燃焼の際、不完全燃焼が生じると一酸化炭素の発生量が増大し、排ガスを大気中に放散する際の規制値を超えてしまう。発明者等は、不完全燃焼時には燃焼室内で煤が発生していて炉外から燃焼室内の火炎の視認による燃焼状況の把握ができなくなることに着目し、適切かつ迅速な燃焼制御を実現できる火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を創案するに至った。
【0022】
<火格子式廃棄物焼却炉>
本発明の火格子式廃棄物焼却炉は、火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼室に連設されて燃焼室からの可燃性ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込手段と、燃焼室のガス出口に設けられ二次燃焼空気を吹き込む二次燃焼空気吹込手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、高温ガス吹込手段は、燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口と、高温ガス吹込口へ高温ガスを供給する高温ガス供給手段と、燃焼室内の火炎視認状況を監視する監視手段と、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき上記高温ガス吹込手段からの高温ガスにより供給する酸素量を制御する高温ガス吹込制御手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
かかる本発明においては、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき上記二次燃焼空気吹込手段からの二次燃焼空気により供給する酸素量を制御する二次燃焼空気吹込制御手段を、さらに備えるようにすることができる。
【0024】
かかる本発明においては、燃焼室内の火炎視認状況を監視する監視手段が、燃焼室内の燃焼状況を撮像する撮像手段であって、火炎視認状況信号が撮像手段からの画像信号を数値化し所定値と比較した差分であるようにすることができる。
【0025】
<火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法>
本発明の火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法は、火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼室に連設されて燃焼室からの可燃性ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込手段と、燃焼室のガス出口に設けられ二次燃焼空気を吹き込む二次燃焼空気吹込手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法において、燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口から高温ガスを燃焼室へ供給し、燃焼室内の火炎視認状況を監視手段により監視し、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき上記高温ガス吹込手段からの高温ガスにより供給する酸素量を制御することを特徴とする。
【0026】
かかる本発明において、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき、記二次燃焼空気吹込手段からの二次燃焼空気により供給する酸素量を制御することができる。
【0027】
かかる本発明において、燃焼室内の火炎視認状況を監視する監視手段が、燃焼室内の燃焼状況を撮像する撮像手段であって、火炎視認状況信号が撮像手段からの画像信号を数値化し所定値と比較した差分であるようにすることができる。
【0028】
このような本発明の火格子式廃棄物焼却炉そしてこれによる廃棄物焼却方法にあっては、監視手段により燃焼室内の火炎視認状況を監視し、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき、高温ガス吹込手段、また選択的にこれに加えて二次燃焼空気吹込手段により供給される酸素量が高温ガス吹込制御手段また二次燃焼空気吹込制御手段により制御される。
【0029】
さらに、燃焼室内の火炎視認状況を監視する監視手段が、燃焼室内の燃焼状況を撮像する撮像手段であって、火炎視認状況信号が撮像手段からの画像信号を数値化し所定値と比較した差分であるようにすることができる。撮像手段により燃焼室内の燃焼状況を撮像した画像を処理し、その明るさ、色彩、火炎形状等が数値化され、正常燃焼時の撮像で得られた所定値と比較されて、その差分にもとづき、高温ガス吹込制御手段また二次燃焼空気吹込制御手段により供給される酸素量が制御される。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、以上のように、燃焼室内の燃焼状況を燃焼室内の火炎視認状況を監視する監視手段により監視し、監視手段からの火炎視認状況信号に基づき、正常燃焼時の撮像で得られた所定値と比較して、吹き込まれる高温ガスあるいはこれに加え二次燃焼空気により供給される酸素量を制御することとしたので、適切かつ迅速に対応して供給酸素量を制御することができる、という効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉の概要構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を添付図面にもとづき説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0033】
以下、本発明の一実施形態の火格子式廃棄物焼却炉の基本構成、各構成装置そして作用について説明する。
【0034】
<火格子式廃棄物焼却炉の基本構成>
図1は本発明の一実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉の概要構成を示している。まず、本発明の一実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉の基本構成と焼却方法の概要を説明し、次いで各構成装置の詳細を説明する。この実施形態において、燃焼室内での廃棄物の移動方向(炉長方向)における燃焼室の上流側(図1にて左側)を前部、下流側を後部という。
【0035】
本実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉1は、燃焼室2と、この燃焼室2の廃棄物の流れ方向の上流側(図1の左側)上方に配置され、廃棄物を燃焼室2内に投入するための廃棄物投入口3と、燃焼室2の廃棄物の流れ方向の下流側(図1の右側)の上方に連設される廃熱ボイラ4とを備える火格子式廃棄物焼却炉である。
【0036】
燃焼室2の底部には、廃棄物を移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)5が設けられている。この火格子5は、廃棄物投入口3に近い方から、すなわち、上流側から乾燥火格子5a、燃焼火格子5b、後燃焼火格子5cの順に設けられていて、乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの上に廃棄物層Wが形成されている。
【0037】
乾燥火格子5aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子5bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、熱分解により発生した可燃性ガスと固形分の燃焼が行われ、可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成する。後燃焼火格子5c上では、残った廃棄物中の固形分の未燃分を完全に燃焼させる。廃棄物中の固形分が燃焼する際には火炎は発生せず熾燃焼する。完全に燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。
【0038】
このような本実施形態の火格子式廃棄物焼却炉では、燃焼室2内の空間に、廃棄物層の直上の空間に、下記のような諸領域が形成される。
【0039】
乾燥火格子5aの直上方で廃棄物投入口3の下方に対応して位置する、該乾燥火格子5aの廃棄物の流れ方向の上流側範囲(前部)の上方には乾燥領域が形成される。
【0040】
乾燥火格子5aの下流側範囲(後部)から燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)の上方には燃焼開始領域が形成される。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、上流側範囲で乾燥され、下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。
【0041】
燃焼火格子5b上の廃棄物はここで熱分解そして部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する。廃棄物はこの燃焼火格子5b上で実質的に殆んど燃焼される。こうして、上記燃焼火格子5bの上方に主燃焼領域が形成される。
【0042】
しかる後、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分が後燃焼火格子5c上で完全に燃焼される。この後燃焼火格子5cの上方に後燃焼領域が形成される。
【0043】
廃棄物が焼却される場合、まず水分の蒸発が起こり、次いで熱分解と部分酸化反応が起こり、可燃性ガスが生成し始める。燃焼開始領域で廃棄物の燃焼が始まり、廃棄物の熱分解、部分酸化により可燃性ガスが生成し始める。主燃焼領域で廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼しているとともに廃棄物の固形分が燃焼する。主燃焼領域は火炎を伴う燃焼が完了する点(燃切点)までの領域である。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分が燃焼する熾燃焼領域(後燃焼領域)となる。
【0044】
上記燃焼室2内の乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cの下部には、それぞれ風箱7a,7b,7cが設けられている。ブロワ8により供給される燃焼用一次空気Pは、燃焼用一次空気供給管9を通って前記各風箱7a,7b,7cに供給され、各火格子5a,5b,5cを通って燃焼室2内に供給される。なお、火格子下から供給される燃焼用一次空気Pは、火格子5a,5b,5c上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子5a,5b,5cの冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
【0045】
上記燃焼室2の下流側における出口には廃熱ボイラ4が連設され、廃熱ボイラ4の入口近傍が燃焼室2から排出されるガス中の可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)を燃焼する二次燃焼室10となっている。廃熱ボイラの一部である二次燃焼室10内で二次燃焼用ガスを吹き込み、未燃ガスを二次燃焼し、この二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラから排出された燃焼排ガスは、図示しない排ガス処理装置系で消石灰等による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着
が行われ、さらに図示しない除塵装置に送られ、中和反応生成物、活性炭、ダストなどが回収される。前記除塵装置で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、図示しない誘引ファンにより誘引され、煙突から大気中に放出される。また、除塵装置で除塵された後の燃焼排ガスの一部が、後述する返送排ガスとして用いられる。
【0046】
このような基本構成である火格子式廃棄物焼却炉において、本実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉1は、以下のように燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込手段と、燃焼室の天井に炉長方向で複数位置に高温ガス吹込口を備え高温ガスをこの高温ガス吹込口から下向きに吹き込む高温ガス吹込手段と、燃焼室の天井に炉長方向で複数位置に返送排ガス吹込口を備え返送排ガスをこの返送排ガス吹込口から下向きに吹き込む返送排ガス吹込手段と、さらには廃熱ボイラの入口部に設けられた二次燃焼室へ二次燃焼空気を吹き込む二次燃焼空気吹込手段とを具備している。上記高温ガス吹込手段は高温ガス吹込制御装置により、そして二次燃焼空気吹込手段は二次燃焼空気吹込制御装置によりそれぞれ吹込み量が制御されている。
【0047】
<一次空気吹込手段>
本実施形態では、火格子式廃棄物焼却炉1は、燃焼用空気となる一次空気の一次空気吹込手段を備えている。一次空気吹込手段は、空気供給源からの一次空気Pを燃焼用一次空気供給管9を経て、乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cのそれぞれの風箱7a,7b,7cに分岐供給管から送り込むようになっており、上記燃焼用一次空気供給管9には、ブロワ8そして流量調整機構としてのダンパ11が設けられている。
【0048】
燃焼用の一次空気Pは、ブロワ8から燃焼用一次空気供給管9を通って乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cのそれぞれの下部に設けられた風箱7a,7b,7cに供給された後、各火格子5a,5b,5cを通って燃焼室2内に供給される。燃焼室2内に供給される燃焼用一次空気Pの流量は、燃焼用一次空気供給管9に設けられた流量調整用のダンパ11により調整される。また、風箱7a,7b,7c及び燃焼用一次空気Pを供給するための燃焼用一次空気供給管9等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
【0049】
<高温ガス吹込手段>
本実施形態では、火格子式廃棄物焼却炉1は、高温ガスを上記燃焼室2の天井2Aから下向きに吹き込む高温ガス吹込装置21を備えている。高温ガス吹込装置21は、流量調整機構としてのダンパ23を介して、火格子5上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井2Aに高温ガス吹込口13a,13bに接続されている。
【0050】
高温ガス吹込口13aは乾燥火格子5aの上方位置に、他方の高温ガス吹込口13bは燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)の上方位置に設けられている。
【0051】
高温ガス吹込装置21は、後に詳説するように、高温空気HAと返送排ガスEとを受け、これらを混合して高温ガスHとして、ダンパ23による流量調整のもとに、上記高温ガス吹込口13a,13bから炉内へ吹き込むようになっている。
【0052】
高温ガス吹込装置21は、返送排ガスEと高温空気HAとを混合して高温ガスを調製し、該高温ガスHを高温ガス吹込口13a,13bから炉内へ吹き込む。ここで、「返送排ガス」とは、焼却炉から排出された排ガスを排ガス処理系で中和処理し除塵装置で除塵した後の排ガスの一部である。また、上記「高温空気」は、空気を加熱器により加熱して生成される。高温ガス吹込装置21は、返送排ガスEと高温空気HAのそれぞれの流量を調整することにより混合割合を調整して高温ガスの温度、酸素濃度を調整する。また、高温ガス吹込装置21は、高温空気HAのみ又は返送排ガスEのみを高温ガスHとして供給してもよい。
【0053】
本実施形態では、上記高温ガス吹込装置21で返送排ガスEと高温空気HAを混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガスEと高温空気HAのそれぞれの流量を調整することにより混合割合を調整して高温ガス中の酸素濃度を調整すること、上記ダンパ23で高温ガスの流量を調整することのうち少なくとも一つにより、燃焼室2内へ高温ガスにより供給される酸素量を調整できる。
【0054】
<返送排ガス吹込手段>
また、火格子式廃棄物焼却炉1は、排ガス管4aから排出された除塵後の排ガスの一部を返送する返送排ガス吹込装置22を備えている。返送ガス吹込装置22は流量調整機構としてのダンパ24を介して返送ガス吹込口14a,14bに接続されている。
返送ガスの吹込口14aは上記燃焼火格子5bの下流側範囲(後部)の上方位置に、他方の返送ガス吹込口14bは後燃焼火格子5cの上方位置に設けられている。
【0055】
返送排ガス吹込装置22は排ガス管4aから排出され集塵装置(図示せず)で除塵された排ガスの一部を受け、ダンパ24による流量調整のもとに、返送排ガス吹込口14a,14bから炉内へ吹き込むようになっている。
【0056】
<二次燃焼用ガス供給手段>
また、本実施形態の火格子式廃棄物焼却炉1は、二次燃焼用空気を廃熱ボイラ4の入口近傍に相当する二次燃焼室10の上流側に吹き込む二次燃焼用空気供給系を備えている。二次燃焼用空気供給系は、二次燃焼空気供給源からの二次燃焼空気Qを管路12を経て、二次燃焼室10の上流側に設けられた二次燃焼空気吹込口17に送り込むようになっており、上記管路12には、ブロワ18そして流量調整機構としてのダンパ19が設けられている。二次燃焼空気吹込口17は、廃熱ボイラ4の入口近傍にある二次燃焼室10の上流側に二次燃焼空気Qを吹き込むように、燃焼室2のガス出口に設けられている。燃焼室2内で発生した可燃性ガスはそのほとんどが燃焼室2内で燃焼され、残存する未燃ガスは、後燃焼火格子5cの上方に連接される廃熱ボイラ4の入口近傍に相当する二次燃焼室10に流入し、ここで二次燃焼空気により二次燃焼される。二次燃焼空気Qを二次燃焼空気吹込口17から水平方向に吹き込むことにより、未燃ガス二次燃焼空気Qとの混合攪拌が促進され、未燃ガスの燃焼が確実に行われるので、吹き込み方向をこのように定めることが好ましい。
【0057】
なお、本発明において、上記燃焼用一次空気、高温ガス、返送排ガスそして二次燃焼空気を供給するための管路等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
【0058】
<高温ガス吹込制御装置及び二次燃焼空気吹込制御装置>
本実施形態では、高温ガス吹込制御装置20と二次燃焼空気吹込制御装置30とを有していて、高温ガス吹込制御装置20は高温ガス吹込装置21へ高温空気HAと返送排ガスEとの混合比の調整のための指令を発することと、ダンパ23での流量調整のための指令を発することとの少なくとも一つを行う。一方、二次燃焼空気吹込制御装置30は、二次燃焼室10に設けられた二次燃焼空気吹込口17から吹き込まれる二次燃焼空気の吹込量を調整すべくダンパ19に指令を発する。
【0059】
本実施形態では、燃焼室2の後壁に監視窓32が設けられていて、炉外には該監視窓32を透して燃焼室2内の燃焼状況を撮像して火炎視認状況を監視する監視手段としてのカメラ31が配設されており、該カメラ31はその撮像を画像処理し画像情報としての明るさ、色彩、火炎形状等を数値化する手段に接続もしくは該手段を具備していて数値化処理された画像情報信号を発する。この画像処理及び数値化処理は後述の高温ガス吹込制御装置20そして二次燃焼空気吹込制御装置30で行ってもよい。この画像情報信号が火炎視認状況信号として用いられる。
【0060】
上記監視手段は、上述の高温ガス吹込制御装置20と二次燃焼空気吹込制御装置30へ上記火炎視認状況信号を送るように接続されている。高温ガス吹込制御装置20と二次燃焼空気吹込制御装置30は、燃焼室2内での燃焼が正常な状態、すなわち煤が発生せず火炎が視認可能な状況における撮像をもとに得られた火炎視認状況信号の所定値をそれぞれ有しあるいは共有していて、監視手段からの時々刻々変化する実際の燃焼状態の撮像から得れる火炎視認状況信号の数値と比較して、その差分にもとづいて高温ガス吹込制御装置20は高温ガス吹込装置21とダンパ23を制御し、二次燃焼空気吹込制御装置30は後述の管路12のダンパ19を制御する。これらの制御要領は後述する。
【0061】
次に、このように構成される本実施形態の装置での焼却状況の概要、高温ガス吹込制御及び二次燃焼空気吹込制御について順次説明する。
【0062】
<焼却状況の概要>
先ず、廃棄物投入口3へ廃棄物を投入すると、落下した廃棄物は図示しない廃棄物供給装置により燃焼室2内に供給され、乾燥火格子5a上に堆積され、各火格子5a〜5cの動作により、燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと移動し、各火格子上に廃棄物Wの層を形成する。各火格子は、風箱7a,7b,7cを経て、燃焼用の一次空気を受けており、これにより各火格子の廃棄物は乾燥そして燃焼される。
【0063】
乾燥火格子5a上では主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、乾燥火格子5aの上流側範囲で乾燥され、乾燥火格子5aの下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。燃焼火格子5b上では主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼するとともに、廃棄物中の固形分の燃焼が行われる。燃焼火格子5b上において廃棄物の燃焼は実質的に完了する。後燃焼火格子5c上では、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分を完全燃焼させる。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分(チャー)が燃焼され、完全燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。
【0064】
既述のごとく、燃焼室2の出口に、廃熱ボイラ4が連設されていて、廃熱ボイラ4の入口近傍が二次燃焼室10となっている。したがって、燃焼室2内で発生した未燃ガスは、二次燃焼室10に導かれ、そこで二次燃焼空気Qと混合・攪拌され、二次燃焼する。二次燃焼の後に排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ4から排出された排ガスは、消石灰等による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに除塵装置(図示せず)に送られ、中和反応生成物、活性炭、ダストなどが回収される。上記除塵装置で除塵され、無害化された後の排ガスは、誘引ファン(図示せず)により誘引され、煙突から大気中に放出される。なお、上記除塵装置としては、例えば、バグフィルタ方式、電気集塵方式等の除塵装置を用いることができる。また、除塵装置で除塵された後の排ガスの一部が、返送排ガスEとして用いられる。
【0065】
<高温ガス吹込制御及び二次燃焼空気吹込制御>
火格子式廃棄物焼却炉の燃焼室内の燃焼状況を撮像するカメラ31により得られ数値化された火炎視認状況信号に基づき、燃焼室内の燃焼を良好な状態とするように、すなわち、不完全燃焼が生じないように、高温ガス吹込制御装置20そして二次燃焼空気吹込制御装置30により次の要領のもとで、高温ガスそして二次燃焼空気の供給量を制御する。
【0066】
火格子式廃棄物焼却炉の燃焼室内での廃棄物燃焼の際、不完全燃焼が生じると一酸化炭素の発生量が増大し、排ガスを大気中に放散する際の規制値を超えてしまう。不完全燃焼時には燃焼室内で煤が発生していて炉外から燃焼室内の火炎の視認による燃焼状況の把握ができなくなる。
【0067】
本発明では、燃焼室内のこのような燃焼状況をカメラ31で直接撮像し、その撮像を画像処理し画像情報としての明るさ、色彩、火炎形状等を数値化してその火炎視認状況を示す数値を、正常燃焼時の撮像で得られた所定値と比較して、その差分にもとづき、吹き込まれる高温ガスあるいはこれに加え二次燃焼空気の供給量を制御する。
【0068】
瞬時の実際の燃焼状況においてカメラ31で得られる撮像は、判定しやすいように、明るさ、色彩、火炎形状等で数値化し、例えばその時間平均値を算出し、火炎視認状況を示す数値として、予め正常燃焼時に撮像して得られた基準値と比較し、その差分が許容範囲内にあるかどうかを判定する。例えば、不完全燃焼で煤(煙)が多く発生していれば暗い画像が得られるので、その場合、上記数値が基準値範囲に収まるまで、その差分にもとづいて高温ガスの供給量を増加し、例えば通常状態の1.2〜1.5倍に増加し、あるいはこれとともに、二次燃焼空気の供給量をも増加し、例えば通常状態の1.5〜3倍に増加する。
【0069】
火炎視認状況を示す数値と基準値と比較した差分が許容範囲内になれば、燃焼室内での燃焼状況が改善され正常燃焼状態となったと判定して、高温ガス及び二次燃焼空気の供給量を通常状態に戻すように制御する。
【0070】
このように、火格子式廃棄物焼却炉への廃棄物の供給量や質の変動により燃焼室内での燃焼状況が変動した場合、カメラ撮像から得る画像の明るさや色彩も変わってくるので、画像情報を数値化した数値を所定の基準値と比較判定して、高温ガス及び二次燃焼空気の供給量を加減して、燃焼を好ましい状態とするように制御する。
【0071】
また、燃焼室内の燃焼状況をカメラで撮像し、撮像した画像から火炎視認状況を示す情報を得て、高温ガス及び二次燃焼空気の供給量を制御することの代わりに、カメラで撮像した画面を運転員が監視し火炎を視認できない状況になったと判定したときに、高温ガス及び二次燃焼空気の供給量を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 火格子式廃棄物焼却炉
2 燃焼室
2A 天井
7a〜7c 一次空気吹込手段(風箱)
9 一次空気吹込手段(燃焼用一次空気供給管)
10 二次燃焼室
12 二次燃焼空気吹込手段(管路)
13a,13b 高温ガス吹込口
17 二次燃焼空気吹込手段(二次燃焼空気吹込口)
20 高温ガス吹込制御装置
30 二次燃焼空気吹込制御装置
図1