特許第6465388号(P6465388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6465388-乳化分散剤及び乳化組成物 図000031
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465388
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】乳化分散剤及び乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/14 20060101AFI20190128BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20190128BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20190128BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20190128BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20190128BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20190128BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20190128BHJP
   B01F 17/56 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B01F17/14
   A23L2/00 B
   A23L2/00 L
   A23L27/00 Z
   A23L27/60 A
   A23L29/10
   A23L29/20
   B01F17/56
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-507718(P2014-507718)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2013057521
(87)【国際公開番号】WO2013146387
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年12月18日
【審判番号】不服-13950(P-13950/J1)
【審判請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-75026(P2012-75026)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】原田 史子
(72)【発明者】
【氏名】眞下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 修
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】山口 進
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 川端 修
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−074909(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035978(WO,A1)
【文献】 特表2007−501628(JP,A)
【文献】 特開平11−060407(JP,A)
【文献】 特開2005−261330(JP,A)
【文献】 特開2006−280386(JP,A)
【文献】 筒井喬紘、リン脂質ラメラ液晶を用いた新規な三相乳化系とその物性に関する研究、神奈川大学ハイテク・リサーチ・センター、研究成果初年度報告書、2002.03.31、第405頁〜第408頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/14
A23L 29/10
A23L 29/20
A23L 27/00 − 27/60
B01F 17/56
B01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性物質及び電解質を含有し、該両親媒性物質が2以上の層を形成し、当該層が外となる小胞体を形成し、該小胞体は該電解質を含有していることを特徴とする、乳化分散剤であって、
両親媒性物質が大豆レシチン及び/又はHLBが7〜16であり、構成脂肪酸の脂肪酸鎖長が14〜18であり、分子内エステル化度が1〜3であるショ糖脂肪酸エステルであり、
電解質が、有機酸及び/又は金属塩であり、
乳化分散剤が大豆レシチンを含有する場合、大豆レシチンの含有量が、乳化分散剤の全量において、0.5〜5重量%であり、
乳化分散剤がショ糖脂肪酸エステルを含有する場合、ショ糖脂肪酸エステルの含有量が、乳化分散剤の全量において、0.5〜5重量%であり、
三相エマルションの形成用である、乳化分散剤。
【請求項2】
小胞体が油滴表面に付着することを特徴とする、請求項1に記載の乳化分散剤。
【請求項3】
小胞体の粒子径が8〜800nmである、請求項1又は2に記載の乳化分散剤。
【請求項4】
電解質の含有量が0.01〜0.8Mである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳化分散剤。
【請求項5】
有機酸が、クエン酸、リンゴ酸及びアスコルビン酸からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳化分散剤。
【請求項6】
金属塩が塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びグルタミン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳化分散剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の乳化分散剤と油性成分とを含有する、乳化組成物。
【請求項8】
乳化粒子径が0.5〜60μmである、請求項7に記載の乳化組成物。
【請求項9】
増粘された水相を含有する、請求項7又は8に記載の乳化組成物。
【請求項10】
油性成分が機能性成分を含有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の乳化組成物。
【請求項11】
油性成分がカプシノイド類を含有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の乳化組成物。
【請求項12】
油性成分が香料を含有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の乳化組成物。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の乳化組成物を添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
【請求項14】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の乳化組成物を含有する、飲食品。
【請求項15】
電解質の含有量が1μM〜0.1Mである、請求項14に記載の飲食品。
【請求項16】
電解質が酸又は塩である、請求項15に記載の飲食品。
【請求項17】
増粘された水相を含有する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項18】
飲料、液体食品、又はゲル状食品である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項19】
液体食品の水分活性が0.6以上である、請求項18に記載の飲食品。
【請求項20】
両親媒性物質及び電解質を含む成分を配合した後、該配合物を攪拌し、−20〜40℃で10分〜2日間冷却する工程を含む、該両親媒性物質が2以上の層を形成し、当該層が外となる小胞体を形成し、該小胞体は該電解質を含有している乳化分散剤の製造方法であって、
両親媒性物質が大豆レシチン及び/又はHLBが7〜16であり、構成脂肪酸の脂肪酸鎖長が14〜18であり、分子内エステル化度が1〜3であるショ糖脂肪酸エステルであり、
電解質が、有機酸及び/又は金属塩であり、
大豆レシチンを配合する場合、大豆レシチンの量が、乳化分散剤の全量において、0.5〜5重量%であり、
ショ糖脂肪酸エステルを配合する場合、ショ糖脂肪酸エステルの量が、乳化分散剤の全量において、0.5〜5重量%であり、
乳化分散剤が、三相エマルションの形成用である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化分散剤及びこれを含有する乳化組成物に関する。また、本発明は、当該乳化組成物を含有する飲食品及びその製造方法、並びに当該乳化分散剤を利用した三相エマルションの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油溶性機能性成分を液体食品に分散できるように加工した乳化組成物(例えば、乳化香料や乳化製剤)においては、油溶性機能性成分を可能な限り多く、且つ安定的に配合可能な乳化組成物を調製できる技術があればコスト面で有利である。
【0003】
一方で、油溶性成分の配合比率が高い乳化組成物においては油水界面の面積総和が増加し、それにともない界面エネルギーが増加する。一般に、乳化安定性の原理としては油水界面の界面エネルギーを低下させることが基本であるため、このような乳化組成物を安定的に得ようとする場合には多量の乳化剤が必要となる。しかし、食品用乳化剤は、原料の脂肪酸に起因した独特な異風味及び苦味があり、多量に使用すると官能上の問題が生じることになる。
【0004】
また、食品への添加を目的とした乳化組成物においては、食品中に含まれる電解質などの成分により乳化不安定化が生じることが知られている。これまでに、食品中の電解質の影響を受けずに多量の油を乳化できる技術が提案されている(特許文献1)。しかし、かかる乳化組成物を水に添加した際の乳化安定性は1時間後しか評価されておらず、その安定性は必ずしも十分とは言えない。そのため、当該技術の産業上の利用は実際には困難であると考えられる。
【0005】
ところで、リン脂質は、生物の細胞や血液などの生体膜中に存在する代表的な脂質であり、生分解性、生理的温和性、乳化力に優れているため、食品のみならず、医薬品、農薬、化粧料などの分野でも活用されている。リン脂質は有機溶媒に可溶性であり、水に不溶性である。これを水に分散させると、親水基部位と疎水基部位とが規則正しく配向したリオトロピック液晶となり、ラメラ構造をとることが知られている。また、このリン脂質の二分子膜は乳化剤として利用され、超音波や溶媒置換などを行うとベシクルと呼ばれる球状の小胞体に変化する(非特許文献1)。この小胞体を乳化分散剤として利用した乳化法(三相乳化法)が提案されている(特許文献2、3)。
【0006】
三相乳化法では、油/両親媒性化合物/水の系の中で独立相として存在する両親媒性化合物の小胞体をファンデルワールス力によって油滴(油相)表面に付着させることで乳化が行われている。三相乳化法は、油水界面の界面張力が大きいことが小胞体の付着に重要であり、従来の乳化法における安定性の原理とは逆の関係となる。また、付着した小胞体は油水界面から離脱しにくい。よって、三相乳化法を利用すれば、多量の乳化剤を使用せずとも安定的な乳化組成物を得ることができる。
【0007】
上記三相乳化法について、乳製品(特に、乳含有飲料)の場合には、上記リン脂質に代えてポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化分散剤に用いた乳化技術が開示されており、高い乳化安定性が得られている(特許文献4)。しかし、当該乳化技術では、飲料に添加した後に高圧ホモジナイザー処理が行われており、乳化組成物の再分散が必要とされている。これについて、乳化組成物を様々な飲食品に添加することを企図した場合、実際には高圧ホモジナイザーのような強力な均質化装置は使用できないことが多い。そのため、最終製品への添加後は均質化処理等の操作を必要としない乳化組成物を提供することが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開2011/0033413号明細書
【特許文献2】特許第3855203号公報
【特許文献3】特許第4552198号公報
【特許文献4】特開2011-234697号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本油化学会編 現代界面コロイド化学の基礎 丸善
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少量の使用でも多量の油を安定的に分散できる乳化分散剤及びこれを含有する乳化組成物を提供することを目的とし、さらに、電解質を含む飲食品に添加した際にも、高い乳化安定性を有し、且つ煩雑な操作を必要とせずに最終製品に利用可能な乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、少量の使用でも多量の油を安定化できる乳化法として、リン脂質とショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)とがラメラ構造を形成している小胞体を、乳化分散剤として使用する乳化法を検討した。しかしながら、得られた乳化組成物を電解質含有食品に添加したところ、油浮きが生じ、安定的に油が分散されないことが判明した。
【0012】
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、乳化分散剤の調製時にあらかじめ電解質を加えておくことによって、電解質含有食品において乳化が安定的に行われることを見出し、さらに研究を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕両親媒性物質及び電解質を含有し、該両親媒性物質が2以上の層を形成していることを特徴とする、乳化分散剤。
〔2〕小胞体を形成することを特徴とする、〔1〕に記載の乳化分散剤。
〔3〕小胞体が油滴表面に付着することを特徴とする、〔2〕に記載の乳化分散剤。
〔4〕小胞体の粒子径が8〜800nmである、〔2〕又は〔3〕に記載の乳化分散剤。
〔5〕電解質の含有量が0.01〜0.8Mである、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の乳化分散剤。
〔6〕電解質が酸である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の乳化分散剤。
〔7〕酸が有機酸である、〔6〕に記載の乳化分散剤。
〔8〕有機酸が、クエン酸、リンゴ酸及びアスコルビン酸からなる群より選択される少なくとも一つである、〔7〕に記載の乳化分散剤。
〔9〕電解質が塩である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の乳化分散剤。
〔10〕塩が塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びグルタミン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一つである、〔9〕に記載の乳化分散剤。
〔11〕両親媒性物質がリン脂質及び/又は脂肪酸エステルである、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の乳化分散剤。
〔12〕三相エマルションの形成用である、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の乳化分散剤。
〔13〕〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の乳化分散剤と油性成分とを含有する、乳化組成物。
〔14〕乳化粒子径が0.5〜60μmである、〔13〕に記載の乳化組成物。
〔15〕増粘された水相を含有する、〔13〕又は〔14〕に記載の乳化組成物。
〔16〕油性成分が機能性成分を含有する、〔13〕〜〔15〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔17〕油性成分がカプシノイド類を含有する、〔13〕〜〔16〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔18〕油性成分が香料を含有する、〔13〕〜〔16〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔19〕〔13〕〜〔18〕のいずれかに記載の乳化組成物を添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
〔20〕〔13〕〜〔18〕のいずれかに記載の乳化組成物を含有する、飲食品。
〔21〕電解質の含有量が1μM〜0.1Mである、〔20〕に記載の飲食品。
〔22〕電解質が酸又は塩である、〔21〕に記載の飲食品。
〔23〕増粘された水相を含有する、〔20〕〜〔22〕のいずれかに記載の飲食品。
〔24〕飲料、液体食品、又はゲル状食品である、〔20〕〜〔23〕のいずれかに記載の飲食品。
〔25〕液体食品の水分活性が0.6以上である、〔24〕に記載の飲食品。
〔26〕両親媒性物質及び電解質を含む成分を配合した後、該配合物を攪拌し、冷却する工程を含む、乳化分散剤の製造方法。
〔27〕乳化分散剤が、三相エマルション形成用である、〔26〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乳化分散剤によれば、少量の使用でも多量の油を安定的に分散することが可能となる。本発明により得られた乳化組成物は、電解質を含む飲食品に添加した場合でも電解質の影響を受けにくく、高い乳化安定性を示す。また、本発明により得られた乳化組成物は、高圧ホモジナイザー処理等のような煩雑な操作を必要とすることなく最終製品に利用することができる。本発明は、電解質含有飲食品における油浮きの生成抑制に効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、三相乳化法による乳化組成物の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の乳化分散剤は、電解質を含有することを特徴とする。本発明において「電解質」とは、溶媒中に溶解した場合に、陽イオンと陰イオンとに分離する物質をいう。このような電解質としては、例えば、酸、塩基、及び塩等が挙げられる。本発明では、電解質は好ましくは酸及び塩である。より好ましくは、電解質は酸である。
【0017】
本発明の乳化分散剤に含まれる酸としては、例えば、塩酸、リン酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、ホウ酸等の無機酸、及びクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酢酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、安息香酸、ソルビン酸、アジピン酸、シュウ酸、プロピオン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グアニル酸、イノシン酸、脂肪酸等の有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。用いられる酸は単独であってもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。酸は、好適には市販品が使用可能であるが、自体公知の方法又はこれに準じた方法により製造されたものを用いることもできる。本発明においては、酸は、好ましくは有機酸である。有機酸は、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸である。
【0018】
本発明の乳化分散剤に含まれる塩としては、特に限定されないが、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。用いられる塩は単独であってもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。塩は、好適には市販品が使用可能であるが、自体公知の方法又はこれに準じた方法により製造されたものを用いることもできる。本発明では、塩は好ましくは金属塩である。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等の周期律表第1族金属塩(アルカリ金属塩);カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の周期律表第2族金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。第1族金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、第2族金属塩の具体例としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。本発明では、その中でも塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムまたは塩化マグネシウムが好ましい。
【0019】
本発明の乳化分散剤に含有される電解質は、飲食品等に含まれる電解質の種類に対応させることができる。例えば、飲食品等に含まれる電解質が酸であれば、本発明の乳化分散剤に含有される電解質は酸とすることができる。本発明の乳化分散剤に含有される電解質は、飲食品等に含まれる電解質と種類が異なってもよい。
【0020】
本発明の乳化分散剤における電解質の含有量は、特に限定されないが、通常、乳化分散剤全体において0.01M以上、好ましくは0.1M以上である。また、電解質の含有量は、特に限定されないが、通常、乳化分散剤全体において0.8M以下、好ましくは0.6M以下である。当該含有量が上記範囲内であれば、飲食品等に含まれる電解質の影響を受けずに安定的に油性成分を分散できる傾向にある。また、当該含有量を0.8M以下とすることにより、乳化分散剤の製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
本発明の乳化分散剤はまた、両親媒性物質を含有する。ここで、本発明において「両親媒性物質」とは、親水基及び疎水基の両方を有する分子を意味する。
【0022】
両親媒性物質の含有量としては、本発明の乳化分散剤の全量において、通常0.005〜45重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0023】
本発明における両親媒性物質の好適な例として、リン脂質が挙げられる。本発明において「リン脂質」とは、化学構造中にリン酸エステル部位を有する脂質をいう。リン脂質は、天然物より抽出及び精製されたものであってもよく、人工的に化学合成されたものであってもよい。リン脂質は、好適には市販品を用いることができる。
【0024】
本発明の乳化分散剤に含まれるリン脂質としては、特に限定されないが、具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等が例示される。用いられるリン脂質は単独であってもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。本発明では、これらの中でもホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンが好ましい。
【0025】
また、本発明においてリン脂質は、上記に例示されるような具体的な化合物が、単独で、或いは二種類以上で含有される物質であってもよい。このようなリン脂質としては、例えばレシチン等が挙げられる。レシチンの原料となる天然物としては、例えば、大豆、卵黄、コーン、ヒマワリ、ナタネ、ゴマ、牛等が挙げられ、本発明では二種類以上の天然物から得られたレシチンを併用することも可能である。本発明では、これらの中では大豆レシチンが特に好ましい。
【0026】
リン脂質の含有量としては、本発明の乳化分散剤の全量において、通常0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。リン脂質の含有量が上記範囲内であることにより、多量の油を安定的に水中に分散することが容易となる。
【0027】
また、上記電解質とリン脂質との重量比は、通常、電解質:リン脂質=0.01:1〜10:1であり、好ましくは0.05:1〜6:1、より好ましくは0.1:1〜3:1である。両者の重量比が上記範囲内であることにより、飲食品等に含まれる電解質の影響を受けにくくすることができる。
【0028】
本発明の乳化分散剤に含まれる両親媒性物質の別の好適な例としては、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が例示される。これらの中では、ショ糖脂肪酸エステルが最も好ましい。脂肪酸エステルは、所定の水溶性を有していることが好ましい。水溶性が高すぎる場合、水に溶解してしまうため、本発明の乳化分散剤の構造を形成しない傾向がある。一方、水溶性が低すぎる場合、水への分散性が悪化するため、本発明の乳化分散剤の構造を形成しない傾向がある。脂肪酸エステルの水溶性の指標としては、例えば、HLB、構成脂肪酸の脂肪酸鎖長、分子内のエステル化度、親水基の重合度等が挙げられる。具体的には、HLBは7〜16が好ましく、構成脂肪酸の脂肪酸鎖長は14〜18が好ましく、分子内のエステル化度は1〜3が好ましい。本発明では、脂肪酸エステルは単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、脂肪酸エステルは、好ましくは上記リン脂質と組み合わせて用いられる。脂肪酸エステルは、好適には市販品が使用可能であるが、自体公知の方法又はこれに準じた方法により製造されたものを用いることもできる。
【0029】
脂肪酸エステルの含有量としては、本発明の乳化分散剤の全量において、通常0.005〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。当該含有量が上記範囲内であることにより、効率よく多量の油を水中に分散することができるようになる。
【0030】
また、上記電解質と脂肪酸エステルとの重量比は、通常、電解質:脂肪酸エステル=0.007:1〜6:1であり、好ましくは0.03:1〜4:1、より好ましくは0.07:1〜1:1である。両者の重量比が上記範囲内であることにより、飲食品に含まれる電解質の影響を受けにくくすることができる。
【0031】
本発明の乳化分散剤に含まれる両親媒性物質としては、その他に脂肪酸塩等が挙げられる。また、本発明の乳化分散剤には、その他の成分として、水;グリセリンやエタノール等のアルコール類;ショ糖等の糖類;マルチトールやソルビトール等の糖アルコール類;キサンタンガムや寒天等の増粘多糖類;調味料;保存料;香料;色素;抗酸化剤等がさらに含有され得る。
【0032】
本発明の乳化分散剤において、両親媒性物質は2以上の層を形成することを特徴とする。両親媒性物質が層を形成する場合、特に制限されないが、両親媒性物質の疎水基が対向する形態で層が形成され得る。そのため、本発明における層の数は偶数であり得、2、4、6、8、10、又はそれ以上の偶数となり得る。また、本発明における層の数は、特に限定されないが、好ましくは100以下の偶数である。両親媒性物質の二分子膜の厚さ(長面間隔)は、両親媒性物質の種類や添加剤に依存するため特に限定されないが、例えば20nm以下である。両親媒性物質としてリン脂質と脂肪酸エステルとの混合物を用いた場合では、通常3〜10nm程度である。両親媒性物質の二分子膜層の厚さはTEM観察やX線回折装置により測定できる。尚、両親媒性物質が形成する層のモデルは、図1において示されている。
【0033】
本発明において、両親媒性物質は2以上の層を形成すると同時に、当該層が外殻となる小胞体(ベシクル)を形成し得る。本発明では、小胞体は、両親媒性物質の層が外殻を構築するため、閉鎖小胞体とも称される。特に限定されないが、両親媒性物質は自発的に小胞体を形成し得る。本発明において、電解質は、例えば、小胞体の調製時等に含有され得る。小胞体の内部(内包物)には、特に限定されないが、上述したその他の成分(水等)が含まれ得る。
【0034】
上記小胞体は、油滴(油相)の表面に付着することができる。ここで、本明細書において「付着」とは、小胞体と油滴表面とが接触している状態を意味し、かかる付着は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察することにより確認することができる。小胞体の油滴表面への付着は、特に限定されないが、通常はファンデルワールス力に基づく相互作用により行われる。また、小胞体の表面は、特に限定されないが、両親媒性物質の親水基であり、かかる親水基が油滴の表面に付着する。上記小胞体は、本発明の乳化分散剤の使用時において油相を乳化する(水中に分散する)際、油滴表面に付着して乳化作用を発現することを特徴とする。
【0035】
上記小胞体の粒子径は、特に限定されないが、通常8〜800nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは80〜300nmである。当該粒子径が上記範囲内であることにより、小胞体が油滴表面に効率よく付着することができる。尚、小胞体はエマルション形成の工程で細粒化される可能性があるため、当該粒子径は、本発明の乳化分散剤の調製時には200〜800nmとすることができる。そうすることによって、エマルション形成時において小胞体の粒子径を好ましい範囲とすることができる。その場合、全ての小胞体が200〜800nmの粒子径を有する必要はなく、分散液中の濃度範囲として5〜20重量%の小胞体が当該範囲の粒子径を有していればよい。
【0036】
小胞体の粒子径は、適当な透過率になるよう小胞体分散液を希釈し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、HORIBA製)により測定することができる(相対屈折率:120A000I)。粘性があり気泡を含むサンプルについては、測定誤差を小さくするため、超音波処理を3分間行い脱気した後に測定することができる。
【0037】
本発明の乳化分散剤の製造方法は、上述した各種成分を適宜配合した後、当該配合物を攪拌する工程を含む。調製時の乳化分散剤の温度は、特に限定されないが、通常40〜90℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜70℃である。各種成分の攪拌は、特に限定されないが、通常300〜15000rpm、好ましくは500〜12000rpm、より好ましくは1000〜10000rpmで行われ、市販の攪拌装置を使用することができる。また、攪拌時間は、特に限定されないが、通常1〜30分間、好ましくは5〜20分間、より好ましくは10〜15分間である。
【0038】
上記の通り攪拌した後は、冷却を行う。当該冷却は、所定温度で冷却することが好ましい。温度条件としては、特に限定されないが、通常−20〜40℃、好ましくは0〜30℃、より好ましくは5〜25℃である。また、冷却と昇温を数回繰り返してもよい。具体的な冷却方法は特に限定されず、例えば、適当な攪拌機で撹拌しながら冷却してもよく、又は、静置し放冷してもよい。冷却する時間は、温度条件、冷却方法等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、通常10分〜2日間、好ましくは30分〜1日間、より好ましくは3時間〜12時間である。
【0039】
電解質を乳化分散剤の各種成分に配合する時期としては、(1)各種成分を撹拌する前、(2)撹拌した後であって、冷却する前、(3)冷却した後であって、乳化する前等が挙げられるが、好ましくは(1)各種成分を攪拌する前である。
【0040】
本発明の乳化分散剤は、三相乳化法において好適に利用可能である。三相乳化法とは、水及び油を含む溶液中において、水相、乳化分散剤相及び油相の三相構造を形成することにより乳化を行う方法である。乳化分散剤相は、具体的には、乳化分散剤に含まれる両親媒性物質の小胞体として形成される。そして、当該小胞体がファンデルワールス力により油滴の表面に付着して、油滴を覆い囲むようにして油の粒子が形成され、油が水中に分散されるようになる。三相乳化法による乳化組成物の構成としては、図1のように例示される。
【0041】
三相乳化法を利用することにより、従来使用される界面活性剤とは異なって、相溶性による界面エネルギーを低下させることなく、熱衝突による合一を起こりにくくして乳化物の長期安定化を図ることができる。また、上記の三相構造に基づき、少量の乳化剤によってエマルションを形成することが可能となる。
【0042】
上記の通り、本発明の乳化分散剤は三相乳化法への利用に好適であることから、当該乳化分散剤は三相エマルションの形成用途として好適である。本発明において「三相エマルション」とは、三相乳化法により得られる、水相、乳化分散剤相及び油相の三相構造を有するエマルションを意味する。尚、上述したリン脂質は、水に分散させた場合に親水基部位と疎水基部位とが規則正しく配向したリオトロピック液晶となり、ラメラ構造を形成することができるため、本発明の乳化分散剤において特に好適な材料であり得る。
【0043】
本発明はまた、本発明の乳化分散剤と油性成分とを含有する乳化組成物を提供する。上述した通り、本発明の乳化分散剤は小胞体を形成し得、かかる小胞体が油性成分の表面を被覆して、当該油性成分を水中(水相)に分散させ得る。
【0044】
本発明の乳化分散剤の含有量は、当該乳化組成物の全量において、通常10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%である。当該含有量が上記範囲内であることにより、多量の油(油性成分)を安定的に分散することが容易になる。
【0045】
本発明の乳化組成物における水相は、特に限定されないが、増粘されていることが好ましい。水相が増粘されていることにより、本発明の乳化分散剤及び油性成分を含有する乳化粒子の浮上を抑制することができる。例えば、乳化粒子が浮上して空気に接触した場合、乳化粒子を構成する乳化分散剤相において脱水和が生じて、乳化分散剤相が分解(崩壊)するおそれがある。その場合、乳化分散剤相に被覆されている油滴の表面が露出することとなり、他の露出した油滴との合一が生じて結果的に油浮きが生じる可能性がある。増粘された水相の使用目的が上記の通りであるため、このような水相の粘性は、本発明の乳化組成物のみならず、本発明の乳化組成物が含有される物質(例えば、後述の飲食品等)にも適用され得る。
【0046】
当該水相の粘度は、特に限定されないが、通常0.8mPa・s〜100Pa・s、好ましくは10mPa・s〜100Pa・s、より好ましくは80mPa・s〜100Pa・s、さらに好ましくは400mPa・s〜10Pa・s、さらにより好ましくは800mPa・s〜3Pa・sである。尚、水相の粘度は、動的粘弾性測定装置ARES(TA INSTRUMENTS製)により測定することができる(Geometry Cone 50mm, Cone Angle 0.00394radians,Shear Rate 50 1/s)。
【0047】
本発明の乳化組成物における水相の粘度は、本発明の乳化分散剤に含まれる水に粘性を持たせることによって調整してもよく、或いは粘性を有する水分を本発明の乳化組成物に別途添加して調整してもよい、当該水相の粘度を上げる方法としては、特に限定されないが、例えば、増粘剤を水相に添加すること等が挙げられる。使用され得る増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ガティガム、ペクチン、寒天、カラギナン、キトサン、デンプン、加工デンプン、デキストリン、セルロース、セルロース誘導体等の多糖類およびその誘導体;またはゼラチン、ポリグルタミン酸などのタンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明の乳化組成物における乳化粒子径は、特に限定されないが、通常0.2〜60μm、好ましくは0.5〜60μm、より好ましくは0.5〜51μm、特に好ましくは0.5〜20μm、最も好ましくは0.5〜8μmである。乳化粒子径を小さくすることにより、乳化粒子の浮上抑制を図ることができる。これは、上述した通り、結果として生じる油浮きを防ぐためである。一方、乳化粒子径を小さくし過ぎると油水界面の比表面積が大きくなり、油性成分又は油溶性物質と、酸素、水又は水溶性成分との反応性が増し、分解反応、劣化反応などが起こりやすい傾向がある。本発明の乳化組成物における乳化粒子径は、特に限定されないが、例えば、乳化機の種類や乳化条件を調整したり、所定の孔径を有するフィルターに通したりすること等により調整することができる。本発明の乳化組成物における乳化粒子径は、適当な透過率になるよう乳化組成物を希釈し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、HORIBA製)により測定することができる(相対屈折率:120A000I)。油浮きが一部生じているサンプルについては、測定誤差を小さくするため、手で上下に軽く振って均一化した後、自然に浮いてくる油滴を避けてサンプル中心部より静かにサンプリングすることができる。また、3回測定した平均値により判断され得る。
【0049】
本発明の乳化組成物に含有される油性成分としては、例えば、大豆油、ヤシ油、コメ油、コーン油、パーム油、紅花油、菜種油(例、キャノーラ油等)、オリーブ油等の植物性油脂;炭素数6〜10の飽和脂肪酸(例えば、カプリン酸、カプリル酸等)を主要な構成成分とした脂肪酸とグリセリンとから構成される中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド(以下、「MCT」ともいう。);牛脂、豚脂、鶏脂、及び魚油等の動物油脂類;オレイン酸などの脂肪酸;並びにこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。また、比重調整剤としてスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)なども添加され得る。用いられる油性成分は単独であってもよく、二種類以上を組み合わせてもよい。油性成分は、好適には市販品が使用可能であるが、自体公知の方法又はこれに準じた方法により製造されたものを用いることもできる。本発明では、油性成分は好ましくはMCT、MCTとSAIBとの混合物または植物性油脂(より好ましくは菜種油、特に好ましくはキャノーラ油)である。
【0050】
油性成分の含有量は、本発明の乳化組成物の全量において、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%である。当該含有量が上記範囲内であることにより、本発明の乳化分散剤により安定的に分散され得る。
【0051】
本発明では、油性成分は油溶性物質を含有するものであってもよく、又は油溶性物質を含有しないものであってもよいが、好ましくは油溶性物質を含有する。用いられる油溶性物質としては、特に限定されないが、飲食品、医薬品、化粧料等において有効成分となり得る機能性成分が好ましい。ここで、「機能性成分」とは、(i)生体へ適用した場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る成分、(ii)感覚器で知覚され得る色、味、香り、風味、触感などを付与する成分、並びに、(iii)油性成分の物理的性質又は化学的性質を改質する成分をいう。具体的には、機能性成分としては、カプシノイド類;肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンD、ビタミンB酪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、天然ビタミンE混合物、ビタミンK等の油溶性ビタミン類;パプリカ色素、アナトー色素、トマト色素、マリーゴールド色素、β−カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リコピン、クロロフィル等の油溶性色素類;オレンジ油、ペパーミント油、スペアミント油、シンナモン油等の香料類;リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、l−メントール、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、バニリン、γ−ウンデカラクトン等の植物精油類;コエンザイムQ10;α−リポ酸;α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等のω−3系脂肪酸;リノール酸、γ−リノレン酸等のω−6系脂肪酸;植物ステロール等の生理活性成分;ネギ油、チキンオイル、ガーリックオイル、唐辛子風味オイル等の風味油;ビーフ味、ポーク味、チキン味等の各種調味油成分;医療用薬剤、化粧料成分等が例示されるが、これらに限定されない。油溶性物質は、好適には市販品が使用可能であるが、自体公知の方法又はこれに準じた方法により製造されたものを用いることもできる。本発明では、油溶性物質は好ましくはカプシノイド類;ビタミンA、アスコルビン酸脂肪酸エステルなどの油溶性ビタミン類;リモネン等の植物精油類;ω−3系脂肪酸である。カプシノイド類としては、例えば、カプシエイト、ジヒドロカプシエイト(例、特表2008-529475号公報に記載の方法又は該方法に準ずる方法で合成され得る、合成ジヒドロカプシエイト等)、ノルジヒドロカプシエイト、バニリルデカノエイト、バニリルノナノエイト、バニリルオクタノエイト等が挙げられ、特に限定されないが、特開2011−132176号公報に記載の物質及び唐辛子からの抽出物(例、国際公開第2006/043601号パンフレットに記載の方法又は該方法に準ずる方法で調製され得る、精製唐辛子油等)等を利用することができる。
【0052】
油溶性物質の含有量は特に限定されず、使用される物質の種類に応じて適宜設定することができる。一例として、当該含有量は、本発明の乳化組成物の全量において、0.01〜90重量%、好ましくは0.03〜50重量%、より好ましくは0.1〜13重量%である。
【0053】
本発明の乳化組成物の製造方法は特に限定されず、当該乳化組成物に含有される各種成分(本発明の乳化分散剤、油性成分等)を適宜配合の上、攪拌することにより調製することができる。油溶性物質を用いる場合は、あらかじめ油性成分に当該油溶性物質を溶解させておくことが好ましい。調製時における乳化組成物の温度は、特に限定されないが、通常10〜60℃、好ましくは15〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。各種成分の攪拌は、特に限定されないが、通常500〜12000rpm、好ましくは2000〜10000rpm、より好ましくは3000〜6000rpmで行われ、ホモミキサーやナウターミキサーなどの市販の攪拌装置を使用することができる。また、攪拌時間は、特に限定されないが、通常3〜60分間、好ましくは4〜30分間、より好ましくは5〜15分間である。また、高圧ホモジナイザーや超音波乳化機などの市販の乳化装置を使用することができる。
【0054】
本発明の乳化組成物は、特に限定されないが、飲食品に対して利用することができる。従って、本発明は、上述した本発明の乳化組成物を添加する工程を含む、飲食品の製造方法を提供する。また、本発明は、上述した本発明の乳化組成物を含有する飲食品を提供する。
【0055】
本発明の乳化組成物が利用可能な飲食品は、電解質を含有していることが好ましい。電解質を含有する飲食品が利用対象であれば、油性成分の分散において、本発明の乳化組成物に含有される乳化分散剤がより有効に作用することができる。飲食品に含有される電解質は、酸、塩基、塩等であり、好ましくは酸及び塩であり、より好ましくは酸である。尚、酸及び塩の例示は本発明の乳化分散剤で説明したものと同様である。
【0056】
本発明の乳化組成物が利用可能な飲食品のpHは特に限定されず、例えばpH3〜8、好ましくはpH3〜7である。
【0057】
飲食品に電解質が含まれる場合、電解質の含有量は、飲食品全体において通常1μM〜3M、好ましくは1μM〜0.2M、より好ましくは1μM〜0.1Mである。ここで、飲食品中の電解質の含有量は、本発明の乳化組成物に含まれる電解質の量も含むものである。
【0058】
また、飲食品における電解質の含有量は、本発明の乳化分散剤における電解質の含有量との比率によって調整することもできる。そのような場合、両者の比率は、モル比として、例えば、本発明の乳化分散剤中の電解質:飲食品中の電解質=0.0003:1〜900:1、好ましくは0.025:1〜800:1、より好ましくは0.1:1〜100:1である。上述したように、飲食品における電解質の含有量は、本発明の乳化組成物に含まれる電解質の量も含むものである。
【0059】
本発明の乳化組成物が含有される飲食品としては、特に限定されないが、乳化技術が利用され得る飲食品が好ましく、本発明の乳化組成物は、具体的には、飲料、液体食品、及びゲル状食品に好適である。尚、本発明において「液体食品」とは、常温(例えば、15〜25℃)において液体状の食品をいう。また、前記「液体状」の用語にはスラリー状の概念も包含される。本発明では、特に限定されないが、液体食品の水分活性は好ましくは0.6以上、より好ましくは0.85以上、さらにより好ましくは0.9以上である。また、液体食品の水分活性は、特に限定されないが、通常1.0以下である。当該水分活性が上記範囲内であることにより、乳化安定性をより向上させることが可能となる。尚、当該水分活性は、ロトロニック水分活性測定システムAw−プロ(AWVC−DIO型、株式会社GSI Creos製)を用いて25℃条件下で測定することができる。本発明の乳化組成物が含有される飲食品は、乳化組成物を添加する工程を含む製造方法により製造されるものであってもよく、又は、本発明の乳化組成物自体がそのまま飲食品として用いられるものであってもよい。
【0060】
本発明の乳化組成物が利用可能な飲食品としては、例えば、果汁、ビタミン類、アミノ酸類、香料、糖類、酸、塩基、塩類等を添加した清涼飲料又は炭酸飲料、茶飲料、コーヒー飲料、乳、ミネラルウォーターなどの飲料;ゼリー、ゼリー飲料、プリン、ヨーグルト、クリーム、ジャムなどのゲル状食品;だしの素、コンソメなどの風味調味料;ドレッシング、ソース、マヨネーズなどの液体調味料;スープなどの加工食品;アイスクリーム、アイスキャンディーなどの冷菓;ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディ、チューイングガムなどの菓子類などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの他にも、本発明の乳化組成物は、ベーカリー類、水産加工食品、畜肉加工食品、レトルト食品、冷凍食品等に利用可能である。また、本発明の乳化組成物は、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品;栄養補助食品;医療用食品等の分野にも利用可能である。さらに、本発明の乳化組成物は、乳児食及び幼児食にも利用可能である。
【0061】
本発明の乳化組成物を飲食品に添加及び混合する方法及び条件は特に限定されず、飲食品の種類等に応じて適宜設定することができる。本発明の乳化組成物の添加は、通常、飲食品の製造中に行われるが、飲食品を製造した後で行ってもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に述べる。なお、以下の実施例は、本発明の一例について具体的に説明するものであって、本発明をこれに限定するものではない。
【0063】
[使用した原料]
いずれも食品グレード又は食品添加物グレードの原料を使用した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
3.水
純水製造装置(Auto Still WG259、Yamato社製)で精製したイオン交換水を用いた。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
6.精製唐辛子油の調製
表3に記載の精製唐辛子油は、国際公開第2006/043601号パンフレットに記載の方法に準じて調製した。
【0070】
試験例1.乳化分散剤に添加する電解質の濃度検討
乳化分散剤に添加する電解質の濃度を検討した。電解質としては、飲料によく用いられるクエン酸を用いて、0〜0.8Mの範囲で添加した。その配合内容を下表5に示す。
後述のとおり、乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製、及び乳化粒子径の調整(膜処理)を行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、クエン酸・炭酸水素ナトリウムバッファー(クエン酸0.1M溶液を炭酸水素ナトリウムでpH3.2に調整したもの)で0.3重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、乳化粒子径のメジアン径増加率の算出のため、バッファーの代わりにイオン交換水で希釈したサンプルも調製した。その際、バッファーの方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水とバッファーとのいずれにもショ糖を加えて比重を合わせるよう調整した(比重測定値は記録せず)。各サンプルを100mlガラス瓶に60g充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを室温で9日間静置した後、後述の方法で乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
乳化分散剤のメジアン径と乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した結果とを下表7に示す。
クエン酸濃度が0.01〜0.8Mである実施例1〜5は、コントロール(比較例1)に比べ、メジアン径増加率が小さく、乳化安定化効果があった。
【0074】
【表7】
【0075】
試験例2.乳化分散剤に添加する電解質の種類検討1
乳化分散剤に添加する電解質の種類を検討した。電解質としては、飲料によく用いられる電解質(酸及び塩)を選定した。これらを添加し、乳化分散剤(比較例2、実施例6〜9)を調製した。その配合内容を下表8に示す。
後述のとおり、乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製、及び乳化粒子径の調整(膜処理)を行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、各電解質の溶液で0.3重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、乳化粒子径のメジアン径増加率の算出のため、各電解質の溶液の代わりにイオン交換水で希釈したサンプルも調製した。その際、各電解質の溶液の方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水の方にはショ糖を加えて比重が1.007となるように調整した。各サンプルを100mlガラス瓶に50g充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを室温で6日間静置した後、後述の方法で乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】
乳化分散剤のメジアン径と乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した結果とを下表10に示す。
クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸又は塩化マグネシウムを添加した実施例6〜9は、コントロール(比較例2)に比べ、メジアン径増加率が小さく、乳化安定化効果があった。
【0079】
【表10】
【0080】
試験例3.乳化分散剤に添加する電解質の種類検討2
乳化分散剤に添加する電解質の種類を検討した。電解質としては、飲食品で使用される頻度が高いグルタミン酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを選定した。これらを添加し、乳化分散剤を調製した。その配合内容を下表11に示す。
後述のとおり、乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製を行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、グルタミン酸ナトリウム0.1M溶液で0.5重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、乳化粒子径のメジアン径増加率の算出のため、グルタミン酸ナトリウム溶液の代わりにイオン交換水で希釈したサンプルも調製した。その際、グルタミン酸ナトリウム溶液の方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水の方にはショ糖を加えてグルタミン酸ナトリウム溶液と同じ比重(1.053)となるように調整した。各サンプルを100mlガラス瓶に100g充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを室温で7日間静置した後、乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
乳化分散剤のメジアン径と乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した結果とを下表13に示す。
グルタミン酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はクエン酸を添加した実施例10〜12は、コントロール(比較例3)に比べ、メジアン径増加率が小さく、乳化安定化効果が認められた。
【0084】
【表13】
【0085】
試験例4.乳化組成物を添加する液体食品の電解質濃度の検討
液体食品が含有する電解質の濃度によって、乳化安定性が変化するかどうかを検討した。液体食品のモデルとしてクエン酸・炭酸水素ナトリウムバッファー(クエン酸0〜0.1M溶液を炭酸水素ナトリウムでpH3.2に調整したもの)を用いた。その配合内容を下表14に示す。
乳化組成物は、クエン酸0.1Mを予め含有させた乳化分散剤(実施例2の乳化分散剤)を用いて調製した。その配合内容を下表15に示す。乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製、及び乳化粒子径の調整(膜処理)は、後述の方法で行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、下表14に示した実施例14及び15のバッファーで0.3重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、電解質を含まない液体食品として、バッファーの代わりにイオン交換水(実施例13)で希釈したサンプルも調製した。その際、バッファーの方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水とバッファーとのいずれにもショ糖を加えて比重を合わせるよう調整した(比重測定値は記録せず)。各サンプルを100mlガラス瓶に60g充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを室温で9日間静置した後、後述の方法で外観の評価(目視確認)を行った。また、乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
外観評価の結果及びメジアン径増加率を算出した結果を下表16に示す。
希釈液中にクエン酸(0.01M又は0.1M)を添加した実施例14及び15、並びに、クエン酸を添加しない実施例13のいずれも、メジアン径増加率はほぼ100%であり、乳化安定化効果が維持された。
【0089】
【表16】
【0090】
試験例5.乳化組成物の粒子径の検討1
同一の配合内容の乳化組成物を用いて、乳化安定性が高い乳化粒子径を検討した。
乳化分散剤の調製及び油相の調製は、後述の方法で行った。乳化組成物の配合内容と乳化方法の概略とを下表17及び18にそれぞれ示す。乳化粒子径は、乳化機及び乳化条件を変更することで、同一の配合内容でも異なる乳化粒子径(0.5μm、8μm)を調整した。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、液体食品のモデルとしてpH3.5モデル飲料を加えて0.3重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。pH3.5モデル飲料の配合内容は下表19に示す。各サンプルは、100mlガラス瓶に充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを55℃で7日間静置した後、後述の方法で外観の評価(目視確認)を行った。
【0091】
【表17】
【0092】
【表18】
【0093】
【表19】
【0094】
外観評価の結果を下表20に示す。
乳化組成物の乳化粒子径(メジアン径)が0.5μm、8μmのいずれであっても、本発明の乳化組成物はpH3.5モデル飲料中で乳化安定であった。
【0095】
【表20】
【0096】
試験例6.乳化組成物の粒子径の検討2
同一の配合内容の乳化組成物を用いて、乳化安定性が高い乳化粒子径を検討した。
乳化分散剤の調製及び油相の調製は、後述の方法で行った。乳化組成物の配合内容及び乳化方法の概略は、上述の表17及び下表21にそれぞれ示す。乳化粒子径は、乳化方法及び乳化条件を変更することで、同一の配合でも異なる乳化粒子径(メジアン径15、20、30、42、51μm)を調整した。
【0097】
【表21】
【0098】
乳化組成物を計りとり、0.3重量%となるようにpH3.5モデルゼリーと混合し、均一化した。pH3.5モデルゼリーは、試験例7(後述)で用いたものと同一の配合及び製造方法で調製した。乳化組成物を混合したゼリーを44℃で14日間静置した後、後述の方法で外観の評価(目視確認)を行った。
【0099】
外観評価の結果を下表22に示す。
乳化組成物の乳化粒子径(メジアン径)が、15μm、20μm、30μm、42μm、51μmのいずれであっても、本発明の乳化組成物はpH3.5モデルゼリー中で乳化安定であった。
【0100】
【表22】
【0101】
試験例7.乳化組成物を添加する飲食品の粘性の検討(ゲル状食品)
同一の配合内容の乳化組成物を用いて、乳化安定性が高い飲食品を検討した。一般に、乳化安定性は粘性の高い食品において向上する傾向にあることから、ゲル状食品に乳化組成物を添加し、飲料への添加との比較を行った。
乳化分散剤の調製、油相の調製、及び乳化組成物の調製は、後述の方法で行った(乳化粒子径の調整(膜処理)は行わなかった)。使用した乳化組成物の配合内容は下表23に示す。
【0102】
【表23】
【0103】
合成ジヒドロカプシエイトは、特表2008-529475号公報に記載の方法に準じて、バニリルアルコールと8-メチルノナン酸とを固定化酵素を用いて脱水縮合することにより合成し、精製した。
【0104】
乳化組成物を計りとり、0.3重量%となるように、pH3.5モデル飲料(配合内容は上記の通り)、マヨネーズ(「ピュアセレクト こくうま」、味の素社製)、及びpH3.5モデルゼリーとそれぞれ混合し、均一化した。
pH3.5モデル飲料のサンプルは100mlガラス瓶に充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で室温まで冷却した(実施例23)。
マヨネーズは、乳化組成物と併せてビニルパウチに入れ、密封した後、手でよくもみこんで均一混合した(実施例24)。
pH3.5モデルゼリーは、クエン酸0.01M・炭酸水素ナトリウムバッファー(pH3.5)にソルビン酸カリウムを加え、90〜95℃に加温し、スリーワンモーターを用いて400〜600rpmで撹拌しながら寒天を加え、80〜95℃で10分間保温し、寒天を溶解させて調製した。尚、加温前後の重量差を測定し、蒸発した分だけ加水し、混合した。得られたゼリー液は、スリーワンモーターを用いて300〜600rpmで撹拌しながら40〜50℃まで冷却した。乳化組成物を計りとっておいた50mlプラスチックチューブにゼリー液を99.3重量%となるように充填及び密栓し、手で激しく撹拌した後、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌し、均一化した(実施例25)。pH3.5モデルゼリーのサンプルの配合内容は、下表24に示す。
上記3種の飲食品を44℃で14日間静置した後、後述の方法で外観の評価(目視確認)を行った。
【0105】
【表24】
【0106】
外観評価の結果を下表25に示す。
pH3.5モデル飲料中で、乳化組成物は乳化安定で外観良好であった。2.07Pa・s(44℃条件下における粘度)のマヨネーズ中で、乳化組成物は乳化安定で外観最良であった。0.82Pa・s(44℃条件下における粘度)のpH3.5モデルゼリー中で、乳化組成物は乳化安定で外観最良であった。
【0107】
【表25】
【0108】
試験例8.乳化組成物に使用する油性成分の種類の検討
乳化組成物に使用する油性成分の種類を検討した。油性成分としては、中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:MT-N)とキャノーラ油とを用いた。その配合内容を下表26に示す。
後述のとおり、乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製を行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、クエン酸0.1M溶液で0.5重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、乳化粒子径のメジアン径増加率の算出のため、クエン酸溶液の代わりにイオン交換水で希釈したサンプルも調製した。その際、クエン酸溶液の方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水の方にはショ糖を加えてクエン酸溶液と同じ比重(1.013)となるように調整した。各サンプルを100mlガラス瓶に100g充填及び密栓し、微生物が増殖しないよう85℃で10分間加熱殺菌した後、流水で冷却した。これらを室温で7日間静置した後、後述の方法で乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0109】
【表26】
【0110】
乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した結果を下表27に示す。
MT-N又はキャノーラ油を使用した実施例26及び27の乳化組成物は、クエン酸0.1M溶液中でメジアン径増加率が小さくなり、乳化安定化効果があった。
【0111】
【表27】
【0112】
試験例9.油溶性物質を含まない油相、又は香料を含む油相の検討
油相中に油溶性物質を含まない乳化組成物、及び、油溶性物質として香料(リモネン)を含む乳化組成物について検討した。
後述のとおり、乳化分散剤の調製、油相の調製、乳化組成物の調製を行った。得られた乳化組成物をビーカーに計りとり、クエン酸0.1M溶液で0.5重量%となるように希釈し、スターラーで撹拌しながら混合した。また、乳化粒子径のメジアン径増加率の算出のため、クエン酸溶液の代わりにイオン交換水で希釈したサンプルも調製した。その際、クエン酸溶液の方がイオン交換水に比べて比重が高く、乳化安定性に悪影響を与える可能性があると考えられたため、イオン交換水の方にはショ糖を加えてクエン酸溶液と同じ比重(1.013)となるように調整した。各サンプルを100mlガラス瓶に100g充填及び密栓した。これらを室温で7日間静置し、後述の方法で乳化粒子径(メジアン径)を測定し、乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した。
【0113】
【表28】
【0114】
乳化粒子径のメジアン径増加率を算出した結果を下表29に示す。
油溶性物質を含まない乳化組成物、又は油溶性物質として香料(リモネン)を含む乳化組成物は、クエン酸0.1M溶液中でメジアン径増加率が小さくなり、乳化安定化効果があった。
【0115】
【表29】
【0116】
[乳化分散剤の調製]
大豆レシチン、シュガーエステル、各種電解質、及び60〜70℃のイオン交換水を所定の重量分率となるように容器に加え、分散した。各種成分の分散は、T.K.ホモミキサー(MARK II 2.5型、プライミクス社製)を用いて5,000〜10,000rpmで5分間撹拌し、これを2回繰り返して行った。その後、得られた乳化分散剤を常温で半日静置して冷却した。
【0117】
[油相の調製]
油性成分と油溶性物質とを所定の重量分率となるように容器に加え、スターラーで撹拌し、均一化した。
【0118】
[乳化分散剤のメジアン径の測定]
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-920、HORIBA製)で適当な透過率になるよう乳化分散剤液を希釈した後に測定した(相対屈折率:120A000I)。なお、粘性があり気泡を含むサンプルについては、測定誤差を小さくするため、超音波処理を3分間行い脱気した後に測定した。
【0119】
[乳化組成物の調製]
乳化は、特に記載のない限りは、以下の方法で実施した。
油相と乳化分散剤とを1:1の重量比で容器に加え、水と油が二相分配した状態を確認してからT.K.ホモミキサーを用いて10,000rpmで5分間撹拌し、乳化を行った。
上記方法で得られた乳化組成物は、手技や配合の影響で乳化粒子径にばらつきが見られた(8μm〜15μm)。精緻に乳化安定性を比較するためには、乳化粒子径のばらつきを極力抑える必要がある。そこで、下記方法で乳化粒子径の調整を行った。
【0120】
[乳化粒子径の調整(膜処理)]
上記方法で得られた乳化組成物を10mlディスポーザブルシリンジに入れ、ディスポーザブルタイプフィルターユニット(DISMIC-25CS、孔径0.80μm、セルロースアセテート素材、ADVANTEC社製)を装着した。シリンジポンプにセットし、乳化組成物を流速1ml/分でフィルターに通した。
この方法で、乳化粒子径(メジアン径)が4〜5μmに揃った乳化組成物を得た。
【0121】
[乳化安定性の評価]
乳化安定性の評価は以下の方法で行った。
【0122】
[目視確認]
明らかに油浮き量に差がある場合は目視で油浮きの多さを評価した。乳化粒子がフロキュレーションしている場合は軽く手で振って再分散させてから評価した。
また、油浮き量の差がわずかで判別がつかない場合は、下記方法で乳化粒子径(メジアン径)増加率を算出して乳化安定性を評価した。
【0123】
[乳化粒子径(メジアン径)増加率の算出]
基本的に比較例1のような従来の乳化組成物は、イオン交換水に希釈した際は油浮きがなく、乳化粒子径も変化しない。すなわち乳化安定である。一方で、電解質を多く含む液に希釈した際には、油浮きが生じる前兆として、乳化粒子径の増大がみとめられる。このことを利用し、イオン交換水で希釈したサンプルのメジアン径を100%として、電解質を含む液で希釈したサンプルのメジアン径の比率を算出した。すなわち、比率が100%に近いほど乳化安定である。
本検討では、コントロール(乳化分散剤調製時に電解質を添加しないもの)より乳化粒子径の増加率が小さければ乳化安定化効果あり、それ以上であれば乳化安定化効果なしと判定した。
【0124】
[乳化粒子径(メジアン径)の測定]
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-920、HORIBA製)で適当な透過率になるよう乳化組成物を希釈した後に測定した(相対屈折率:120A000I)。なお、油浮きが一部生じているサンプルについては、手で上下に軽く振って均一化した後、自然に浮いてくる油滴を避けてサンプル中心部より静かにサンプリングした。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の乳化分散剤を用いることにより、電解質を含有する水性媒体において、煩雑な操作を必要とせずに多量の油性成分を安定的に分散することが可能となる。飲食品、医薬品、化粧料等では、pH調整等のために電解質が多用されており、効率よくエマルション形成を行う技術が求められている。よって、本発明の乳化分散剤等は、飲食品、医薬品、化粧料等の分野において特に有用である。
【0126】
本出願は、日本で出願された特願2012-075026(出願日:2012年3月28日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
図1