(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共通端子と第1端子との間に直列に接続された1または複数の直列共振器と、前記共通端子と前記第1端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振器と、を有し、
前記1または複数の直列共振器と前記1または複数の並列共振器は、圧電基板上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指が交叉する交叉領域内で前記電極指の延伸方向に第1領域と前記複数の電極指のうち少なくとも一部の電極指の太さが前記第1領域より大きい第2領域とが交互に設けられたIDTを有し、
前記1または複数の並列共振器および前記1または複数の直列共振器の一部の共振器は、他の共振器より前記第2領域の個数が多い第1フィルタと、
前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより通過帯域が高い第2フィルタと、
を具備するマルチプレクサ。
共通端子と第1端子との間に直列に接続された1または複数の直列共振器と、前記共通端子と前記第1端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振器と、を有し、
前記1または複数の直列共振器と前記1または複数の並列共振器は、圧電基板上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指が交叉する交叉領域内で前記電極指の延伸方向に第1領域と前記複数の電極指のうち少なくとも一部において前記電極指上に設けられた付加膜の厚さが前記第1領域より大きい第2領域とが交互に設けられたIDTを有し、
前記1または複数の並列共振器および前記1または複数の直列共振器の一部の共振器は、他の共振器より前記第2領域の個数が多い第1フィルタと、
前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより通過帯域が高い第2フィルタと、
を具備するマルチプレクサ。
共通端子と第1端子との間に直列に接続された1または複数の直列共振器と、前記共通端子と前記第1端子との間に並列に接続された1または複数の並列共振器と、を有し、
前記1または複数の直列共振器と前記1または複数の並列共振器は、圧電基板上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指が交叉する交叉領域内で前記電極指の延伸方向に第1領域と前記第1領域より音速が遅い第2領域とが交互に設けられたIDTを有し、
前記1または複数の並列共振器および前記1または複数の直列共振器の一部の共振器は、他の共振器より前記第2領域の個数が多い第1フィルタと、
前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第1フィルタより通過帯域が高い第2フィルタと、
を具備するマルチプレクサ。
前記一部の共振器は、前記1または複数の並列共振器であり、前記他の共振器は前記1または複数の直列共振器である請求項1から3のいずれか一項記載のマルチプレクサ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
弾性表面波共振器の構造について説明する。
図1(a)は、比較例および実施例に係る弾性表面波共振器の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、圧電基板10上にIDT21および反射器22形成されている。IDT21および反射器22は、圧電基板10に形成された金属膜12により形成される。IDT21は、対向する一対の櫛型電極20を備える。櫛型電極20は、複数の電極指14と、複数の電極指14が接続されたバスバー18を備える。一対の櫛型電極20は、電極指14がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。
【0018】
一対の櫛型電極20の電極指14が交叉する領域が交叉領域15である。交叉領域15において電極指14が励振する弾性波は、主に電極指14の配列方向に伝搬する。電極指14の周期がほぼ弾性波の波長λとなる。一方の櫛型電極20の電極指14の先端と他方の櫛型電極20のバスバー18との間の領域がギャップ領域17である。ダミー電極指が設けられている場合、ギャップ領域は電極指の先端とダミー電極指の先端の間の領域である。弾性波の伝搬方向をX方向、伝搬方向に直交する方向をY方向(電極指14の延伸方向)とする。X方向およびY方向は、圧電基板10の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板10は、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。金属膜12は、例えばアルミニウム膜または銅膜である。金属膜12は、Al、Au、Cu、Cr、Ti、Ru、Mo、W、Ni、Ag、Ta、ZnもしくはPt、これらの合金、または積層膜でもよい。
【0019】
以下の説明では、異方性係数γが正の場合について説明する。異方性係数γは圧電基板10の材料、IDT21の材料、膜厚およびピッチにより定まる。例えば、圧電基板10として回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板を用いると異方性係数γは正となる。圧電基板10として回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板を用いると異方性係数γは負となる。回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板を用い、IDT21を重い材料とし、かつ膜厚を大きくすると異方性係数γが正となることもある。
【0020】
[共振器R]
図2(a)は、共振器Rに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図2(b)は、各領域における音速を示す図である。
図2(b)の音速はY方向に伝搬する弾性波の音速である。しかし、X方向に伝搬する弾性波の音速とY方向に伝搬する弾性波の音速はほぼ比例しているため、
図2(b)の音速をX方向に伝搬する弾性波の音速としてもよい。以下の図も同様である。交叉領域15の音速v1に比べギャップ領域17の音速v0を早くする。これにより、弾性波が交叉領域15内に閉じ込められる。しかしながら、交叉領域15内にY方向に伝搬する弾性波の定在波が形成されると横モードスプリアスとなる。定在波の次数に応じ周波数に対し周期的な横モードスプリアスが生じる。
【0021】
タンタル酸リチウム基板上に酸化シリコン膜のような音速の遅い物質を付加することで、弾性表面波の音速を横波より遅くする。これにより、バルク波に変換される損失を理論上ゼロにでき、損失が抑制できる。しかしながら、弾性表面波の音速を下げると横モードスプリアスが発生してしまう。
【0022】
バンド28A(送信帯域:703MHzから733MHz:受信帯域:758MHzから788MHz)用の送信フィルタを想定し、共振器Aから共振器Cを作製した。送信フィルタは直列共振器と並列共振器を備えるラダー型フィルタとし、共振器AからCは送信フィルタの並列共振器を想定した。
【0023】
[共振器A]
図3(a)は、共振器Aに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図3(b)および
図3(c)は交叉領域における音速および弾性波の振幅を示す図である。
図3(a)に示すように、第1領域30と第2領域32がY方向に交互に設けられている。第2領域32の個数は6個である。Y方向の最も外側は第1領域30aである。第1領域30、30aおよび第2領域32のY方向の幅はそれぞれ幅W1、W1aおよびW2である。第1領域30および30aにおける電極指14の太さW3であり、第2領域32における電極指14の太さW4である。太さW4は太さW3より大きい。
【0024】
図3(b)に示すように、電極指14が太いと弾性波の音速は小さくなる。よって、第2領域32の音速v2は第1領域30および30aの音速v1より遅くなる。このように、交叉領域15内に音速の大きい第1領域30と音速の小さい第2領域32とが交互に設けられる。
図3(c)に示すように、弾性波は音速の小さい第2領域32に集中しようとする。このため、実線のように、第2領域32においては定在波の腹となろうとする。これにより、第2領域32の個数である6個の腹を有する定在波が形成され、その他の次数の定在波は形成されない。
【0025】
以下に共振器Aの作製条件を示す。
圧電基板10:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
IDT21のピッチλ:4.4μm(共振周波数が約700MHzに相当)
IDT21の材料:銅
IDT21の膜厚:0.1λ
第1領域30のデュティ比:40%(W3=1.76λ)
第2領域32のデュティ比:63%(W4=2.772λ)
第1領域30の幅W1:1.4λ
第1領域30aの幅W1a:0.625λ
第2領域32の幅W2:1.48λ
【0026】
図4は、共振器Aの周波数に対するアドミッタンスを示す図である。
図4において上側の曲線はアドミッタンスの絶対値|Y|を示し、下側の曲線はアドミッタンスのコンダクタンス成分Re(Y)を示す。実線は共振器Aのアドミッタンスを示し、破線は第2領域を設けない共振器Rにおけるアドミッタンスを示す。送信帯域60および受信帯域62を示す。
【0027】
図4に示すように、ピーク50は共振周波数に対応する。共振器AおよびRの共振周波数はほぼ同じである。共振器Rでは、共振周波数と反共振周波数との間付近に複数の横モードスプリアス54が観察される。複数の横モードスプリアス54はそれぞれ定在波の次数が異なる。共振器Aでは、共振周波数の近傍に横モードスプリアスはほとんど観察されない。受信帯域62の高周波数側近傍に強調モード52が観察される。強調モード52は、
図3(c)の定在波に相当するモードである。
【0028】
共振器Aでは、
図3(c)のように、定在波の次数が固定されるため
図4のように、固定の周波数に単一の強調モードが現れる。強調モード以外の定在波は存在し難くなるため強調モード以外の横モードスプリアスはほとんど現れない。よって、横モードスプリアスが抑制できる。しかしながら、強調モード52が受信帯域62に近いため、受信帯域62に影響する。
【0029】
[共振器B]
図5(a)は、共振器Bに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図5(b)および
図5(c)は交叉領域における音速および弾性波の振幅を示す図である。
図5(a)および
図5(b)に示すように、第2領域32が7個設けられている。
図5(c)に示すように、第2領域32の個数である7個の腹を有する定在波が形成され、その他の次数の定在波は形成されない。
【0030】
以下に共振器Bの作製条件を示す。
圧電基板10:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
IDT21のピッチλ:4.4μm(共振周波数が約700MHzに相当)
IDT21の材料:銅
IDT21の膜厚:0.1λ
第1領域30のデュティ比:30%(W3=1.32λ)
第2領域32のデュティ比:53%(W4=2.332λ)
第1領域30の幅W1:1.7λ
第1領域30aの幅W1a:0.625λ
第2領域32の幅W2:1.7λ
【0031】
図6は、共振器Bの周波数に対するアドミッタンスを示す図である。
図6に示すように、共振器Bの共振周波数は共振器Aとほぼ同じである。共振器Bの強調モード52の周波数は共振器Aより高周波側に移動し、受信帯域62より離れている。共振器Bの共振周波数近傍の横モードスプリアス54aは共振器Aよりやや大きくなる。
【0032】
[共振器C]
図7(a)は、共振器Cに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図7(b)および
図7(c)は交叉領域における音速および弾性波の振幅を示す図である。
図7(a)および
図7(b)に示すように、第2領域32が8個設けられている。
図7(c)に示すように、第2領域32の個数である8個の腹を有する定在波が形成され、その他の次数の定在波は形成されない。
【0033】
以下に共振器Cの作製条件を示す。
圧電基板10:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
IDT21のピッチλ:4.4μm(共振周波数が約700MHzに相当)
IDT21の材料:銅
IDT21の膜厚:0.1λ
第1領域30のデュティ比:30%(W3=1.32λ)
第2領域32のデュティ比:65(W4=2.86λ)
第1領域30の幅W1:1.25λ
第1領域30aの幅W1a:0.625λ
第2領域32の幅W2:1.25λ
【0034】
図8は、共振器Cの周波数に対するアドミッタンスを示す図である。
図6に示すように、共振周波数は共振器AおよびBとほぼ同じである。強調モード52の周波数は共振器Bよりさらに高周波側に移動し、受信帯域62よりさらに離れている。横モードスプリアス54aが共振器Bより大きくなる。
【0035】
共振器AからCのように、第2領域32の個数を増やすと強調モード52の周波数を高くすることができる。しかし、横モードスプリアスが大きくなる。なお、共振器AからCの間では、作製上の都合により、第2領域32の個数以外にデュティ比、幅W1およびW2が異なっている。強調モード52および横モードスプリアス54aは交叉領域15内の定在波に起因する。このため、デュティ比、幅W1およびW2は強調モード52および横モードスプリアス54aにあまり影響しない。
【0036】
図9は、作製した共振器の第2領域近傍の平面図である。
図9に示すように、共振器AからCを作製すると、電極指14の角は丸くなる。電極指14の幅はY方向に対し連続的に変化する。このように、第1領域30、30aと第2領域32との間の電極指14幅の遷移は、
図3(a)のように不連続でなくともよい。
【実施例1】
【0037】
共振器AからCの知見に基づき、実施例に係るデュプレクサについて説明する。
図10は、実施例1に係るデュプレクサの回路図である。
図10に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。共通端子Antにはアンテナ44が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力した高周波信号のうち送信帯域の信号を共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力した高周波信号のうち受信帯域の信号を受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。
【0038】
送信フィルタ40はラダー型フィルタであり、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3を有している。直列共振器S1からS4は共通端子Antと送信端子Txとの間に直列に接続されている。並列共振器P1からP3は共通端子Antと送信端子Txとの間に並列に接続されている。受信フィルタ42は、1ポート共振器R0、多重モードフィルタDMS1およびDMS2を有する。共通端子Antと受信端子Rxとの間に、共通端子側から共振器R0、DMS1およびDMS2が接続されている。
【0039】
[デュプレクサD]
送信フィルタ40の並列共振器P1からP3を第2領域32の個数が7個の共振器Bとし、直列共振器S1からS4を第2領域32の個数を6個の共振器AとしたデュプレクサDについて通過特性をシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
直列共振器S1からS4
IDTのピッチλ:4.4μm
第1領域30のデュティ比:35%
第2領域32のデュティ比:60%
第2領域32の個数:6個
その他の条件は共振器Aと同じである。
並列共振器P1からP3
IDTのピッチλ:4.4μm
第1領域30のデュティ比:35%
第2領域32のデュティ比:65%
第2領域32の個数:7個
その他の条件は共振器Bと同じである。
受信フィルタ42:
図11の通過特性が得られるようなフィルタを用いた。
【0040】
図11は、デュプレクサDにおける並列共振器、直列共振器、送信フィルタおよび受信フィルタの通過特性を示す図である。
図11において、細実線および細破線はそれぞれ並列共振器P1からP3および直列共振器S1からS4の通過特性を示す。実線は送信フィルタ40の送信端子Txから共通端子Antへの通過帯域を示す。破線は横モードスプリアスおよび強調モードを考慮しないときの送信フィルタの送信端子Txから共通端子Antへの通過帯域を示す。点線は受信フィルタ42の共通端子Antから受信端子Rxへの通過特性を示す。ハッチング範囲64は、送信フィルタ40とスプリアスを考慮しない場合の差である。
【0041】
図11に示すように、並列共振器P1からP3の共振周波数は直列共振器S1からS4の共振周波数より低い。送信フィルタ40および受信フィルタ42は、それぞれ送信帯域60および受信帯域62が通過帯域となる。範囲64のように、送信フィルタ40はスプリアスを考慮しない場合に比べ、受信帯域62の高周波数側で減衰特性が劣化している。範囲64は、共振器Bの強調モード52に起因するものと考えられる。
【0042】
例えば送信フィルタ40の並列共振器P1からP3として共振器Aを用いると、強調モード52に起因した範囲64がより低周波数側となり受信帯域62内の送信フィルタ40の減衰特性が劣化してしまう。このように、並列共振器P1からP3として共振器Bを用いることにより、送信フィルタ40の受信帯域62における減衰特性を改善できる。直列共振器S1からS4の共振周波数は並列共振器P1からP3より高い。このため、直列共振器S1からS4として共振器Aを用いても強調モード52は受信帯域62に影響しない。一方、直列共振器S1からS4として共振器Bを用いると、横モードスプリアス54aが大きくなる。デュプレクサDでは、並列共振器P1からP3として共振器Bを用い直列共振器S1からS4として共振器Aを用いることで、受信帯域の減衰特性の向上かつ横モードスプリアスの抑制が可能となる。
【0043】
[デュプレクサE]
送信フィルタ40の並列共振器P1からP3を第2領域32の個数が8個の共振器
Cとし、直列共振器S1からS4を共振器Aとしたデュプレクサ
Eについて通過特性をシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
直列共振器S1からS4
IDTのピッチλ:4.4μm
第1領域30のデュティ比:35%
第2領域32のデュティ比:60%
第2領域32の個数:6個
その他の条件は共振器Aと同じである。
並列共振器P1からP3
IDTのピッチλ:4.4μm
第1領域30のデュティ比:30%
第2領域32のデュティ比:65%
第2領域32の個数:8個
その他の条件は共振器Cと同じである。
【0044】
図12は、デュプレクサEにおける並列共振器、直列共振器、送信フィルタおよび受信フィルタの通過特性を示す図である。
図12に示すように、並列共振器P1からP3および直列共振器S1からS4の共振周波数はデュプレクサDとほぼ同じである。範囲64はデュプレクサDより高周波数側となる。これには、共振器Cの強調モードが共振器Bの強調モード52より高周波数側に形成されるためである。デュプレクサEではデュプレクサDに比べ受信帯域における送信フィルタ40の減衰特性をより向上できる。
【0045】
送信フィルタ40(第1フィルタ)が共通端子Antと送信端子Txとの間に接続され、受信フィルタ42(第2フィルタ)が共通端子Antと受信端子Rxとの間に接続されている。このようなデュプレクサにおいて、送信フィルタ40の直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3の強調モード52が受信フィルタ42の受信帯域62付近に位置すると、送信フィルタ40の受信帯域62付近での減衰特性が劣化してしまう。
【0046】
そこで、実施例1によれば、送信フィルタ40において、直列共振器S1からS4と並列共振器P1からP3は、交叉領域15内でY方向に第1領域30と第2領域32とが交互に設けられたIDTを有する。並列共振器P1からP3および直列共振器S1からS4の一部の共振器は、他の共振器より第2領域32の個数より多い。これにより、受信帯域62付近に強調モード52生じる一部の共振器の第2領域32の個数を増やし、強調モード52を高周波数側にシフトさせる。これにより受信帯域62内での強調モード52に起因する減衰特性の劣化を抑制できる。受信帯域62付近に強調モード52生じない他の共振器の第2領域32の個数は増やさない。これにより、第2領域32の個数が増えた場合に生じる横モードスプリアス54aを抑制できる。
【0047】
ラダー型共振器では、並列共振器P1からP3の共振周波数は直列共振器S1からS4より低い。よって、並列共振器P1からP3の強調モード52が受信帯域62付近の減衰特性に影響しやすい。そこで、並列共振器P1からP3の少なくとも1つの第2領域32の個数を他より多くする。これにより、受信帯域62付近での減衰特性の劣化に影響する共振器の強調モード52を高周波数側にシフトさせることができる。よって、強調モード52に起因する減衰特性の劣化をより抑制できる。
【0048】
第2領域32の個数を多くするとスプリアス54aが発生しやすくなる。そこで、並列共振器P1からP3の一部の共振器においての第2領域32の個数を、並列共振器P1からP3の他の一部の共振器より多くする。これにより、並列共振器のうち強調モードが受信帯域に影響する共振器のみ第2領域32の個数を増やすことができる。他の共振器の第2領域32の個数を減らすことで、スプリアス54aの影響を小さくできる。
【0049】
また、並列共振器P1からP3の共振周波数が異なる場合、最も共振周波数の低い共振器の強調モード52が受信帯域62付近の減衰特性に影響しやすい。そこで、第2領域32の個数を増やした共振器は、並列共振器P1からP3のうち最も共振周波数の低い共振器を含むことが好ましい。また、最も共振周波数の高い共振器の強調モード52は受信帯域62付近の減衰特性に影響しにくい。そこで、第2領域32の個数を減らした共振器は、並列共振器P1からP3のうち最も共振周波数の高い共振器を含むことが好ましい。
【0050】
さらに、第2領域32の個数の多い共振器の強調モードは受信フィルタ42の通過帯域より高周波側に位置する。これにより受信帯域62内での強調モード52に起因する減衰特性の劣化を抑制できる。
【0051】
並列共振器P1からP3の中で第2領域32の個数が異なっていてもよい。直列共振器S1からS4の中で第2領域32の個数が異なっていてもよい。並列共振器P1からP3は第2領域32の個数が同じであり、直列共振器S1からS4は第2領域32の個数が同じでもよい。
【0052】
複数の電極指14のうち一部の電極指14において、第2領域32の電極指14が第1領域30および30aの電極指14より太ければよい。複数の電極指14のうち50%以上の電極指14において、第2領域32の電極指14が第1領域30および30aの電極指14より太いことが好ましい。複数の電極指14すべてにおいて、第2領域32の電極指14が第1領域30および30aの電極指14より太いことがより好ましい。
【実施例2】
【0053】
図13(a)は、実施例2における共振器Fに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図13(b)は、
図13(a)のA−A断面図である。
図13(a)および
図13(b)に示すように、第2領域32の個数は6個である。第2領域32において電極指14上に付加膜16が設けられる。第1領域30および30aにおいて電極指14上には付加膜16は形成されていない。電極指14上に付加膜16が形成されると、弾性波の音速は小さくなる。よって、第1領域30および30a並びに第2領域32の音速および弾性波の振幅は
図3(b)および
図3(c)と同じとなる。付加膜16の材料としては、銅、クロム、タングステン、アルミニウムまたはルテニウム等の金属材料、または窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウムまたは酸化タンタル等の絶縁材料を用いることができる。付加膜16と電極指14との材料は同じでもよい。その他の構成は実施例1における共振器Aと同じであり説明を省略する。
【0054】
図14(a)は、実施例2における共振器Gに係る弾性波共振器の一部の平面図、
図14(b)は、
図14(a)のA−A断面図である。
図14(a)および
図14(b)に示しように、第2領域32の個数は8個である。第1領域30および30a並びに第2領域32の音速および弾性波の振幅は
図5(b)および
図5(c)と同じとなる。その他の構成は共振器Fと同じであり説明を省略する。
【0055】
実施例1と同様に、デュプレクサEの並列共振器P1からP3を共振器Gとし、直列共振器S1からS4を共振器Fとする。これにより、実施例1のデュプレクサEと同様の特性を得ることができる。
【0056】
実施例2のように、直列共振器S1からS4と並列共振器P1からP3は、交叉領域15内でY方向に第1領域30と電極指14上に設けられた付加膜16の膜厚が第1領域30より大きい第2領域32とが交互に設けられたIDTを有する。並列共振器P1からP3および直列共振器S1からS4の一部の共振器は、他の共振器より第2領域32の個数が多い。これにより、実施例1と同様に、横モードスプリアスを抑制しかつ強調モードの影響を抑制することができる。
【0057】
実施例2において、複数の電極指14のうち一部の電極指14において、第2領域32の電極指14上の付加膜16の膜厚が第1領域30および30aの電極指14上の付加膜16の膜厚より大きければよい。複数の電極指14のうち50%以上の電極指14において、第2領域32の電極指14上の付加膜16の膜厚が第1領域30および30aの電極指14上の付加膜16の膜厚より大きいことが好ましい。複数の電極指14の全てにおいて、第2領域32の電極指14上の付加膜16の膜厚が第1領域30および30aの電極指14上の付加膜16の膜厚より大きいことがより好ましい。
【0058】
実施例1および2以外の方法で、第2領域32の音速を第1領域30および30aより遅くしてもよい。
【0059】
実施例1および2において、直列共振器S1からS4の個数は1または複数であり、任意に設定できる。並列共振器P1からP3の個数は1または複数であり、任意に設定できる。第1フィルタおよび第2フィルタとしてそれぞれ送信フィルタおよび受信フィルタを例に説明したが、第1フィルタおよび第2フィルタはそれぞれ受信フィルタおよび送信フィルタでもよい。バンド28A用のフィルタを例に説明したが、バンド28B(送信帯域:718MHzから748MHz、受信帯域:773MHzから803MHz)等の他のバンド用フィルタでもよい。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0060】
第1領域30の幅W1は同じであり、第2領域32の幅W2は同じである例を説明したが、第1領域30の幅は互いに異なっていてもよい。第2領域32の幅W2は互いに異なっていてもよい。電極指14の最も外側に第1領域30aを設ける例を説明したが、第1領域30aは設けなくてもよい。すわなち、最も外側が第2領域32でもよい。
【0061】
圧電基板10としてタンタル酸リチウム基板を例に説明したが、ニオブ酸リチウム基板等の他の圧電基板でもよい。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。