【実施例1】
【0015】
本発明における実施例1を説明する。
図1は、本発明の実施例1における杭抜き機のチャッキング機構を説明する図である。そして、
図1(a)は、ケーシングの最下方を説明する側面図であり、
図1(b)は、ケーシングの底面図である。
図2は、本発明の実施例1における杭抜き機のチャッキング機構の動作を説明する図である。特に、
図2(a)は、油圧シリンダが圧縮した状態を示し、
図2(b)は、油圧シリンダが伸長した状態を示している。
図3は、本発明の実施例1における上爪及び下爪部分の機構を説明する図であり、
図2(a)を側面からみた図である。
図4は、本発明の実施例1における準備工程を説明する図である。
図5は、本発明の実施例1におけるケーシング引抜き工程の前半を説明する図である。
図6は、本発明の実施例1におけるケーシング引抜き工程の後半を説明する図である。
【0016】
(チャッキング機構)
本発明における実施例1は、
図4に示すように、キャタピラ移動が可能で組立が容易なテレスコクローラ式の杭抜き機10により、地中に埋設されている既設杭Pを引抜くものである。このテレスコクローラ式の杭抜き機10は、円筒状の分割ケーシングを5個継合させた円筒状のケーシング3を備える。各分割ケーシングはそれぞれボルトで継合されている。
【0017】
なお、実施例1においては、分割ケーシングの数を5個としたが、必ずしもこれに限定されず、既設杭の長さ等の都合により適宜変更が可能である。例えば、4個以下としてもよいし、6個以上としてもよい。
【0018】
地中に埋設されている既設杭Pは、おおよそ直径が150mmφ〜650mmφ、長さが6m〜22mであり、材質は、セメント(PC杭)、松(松杭)、鋼管(鋼管杭)等である。ケーシング3は既設杭の直径や長さに合わせて選択される。すなわち、ケーシング3の内径が既設杭Pの直径より大きく、長さが既設杭Pの長さより長いものとする。
【0019】
なお、本発明においては、
図1、
図2に示すDの方向をケーシングの先端方向Dと定義する。
【0020】
図1、
図2に示すように、ケーシング3の先端付近の外周に同芯に外側円筒部4が設けられている。この外側円筒部4の外周壁には180°毎に上爪固定軸取付け部12(12a、12b)を備え、上爪1(1a、1b)の一方の端部が上爪固定軸5(5a、5b)によりケーシングの先端方向Dと直交する方向に軸支されている。また、外側円筒部4より下方におけるケーシング3の外周壁部には、上爪1(1a、1b)とほぼ同じ円周上の位置に下爪固定軸取付け部13(13a、13b)を備え、下爪2(2a、2b)の一方の端部が下爪固定軸6(6a、6b)によりケーシング3の先端方向Dと直交する方向に軸支されている。さらに、上爪1(1a、1b)の他方の端部と下爪2(2a、2b)の他方の端部が可動軸7(7a、7b)によりケーシング3の先端方向Dと直交する方向に軸支されている。
【0021】
ケーシング3の最下端部には、掘削刃11が複数設けられ、ケーシング3を地中に埋め込む際に、この掘削刃11で土を掘削して地中に向かって掘り進むことができる。また、外側円筒部4の上部には、2個の油圧シリンダから延びる油圧シリンダ8(8a、8b)のロッド先端が取り付けられており、油圧シリンダ8(8a、8b)が伸長することにより、外側円筒部4をケーシング3の先端方向Dにケーシング3に対してその外周に沿って移動させることができる。また、油圧シリンダ8(8a、8b)を圧縮させることにより、外側円筒部4をケーシング3の先端方向Dと逆方向にケーシング3に対してその外周に沿って移動させることができる。
【0022】
上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)の構造と動きについて詳しく説明する。
図2は、本発明の実施例1における杭抜き機のチャッキング機構の動作を説明する図であり、外側円筒部4のある部分のケーシング3の長手方向の断面を示している。
図2(a)は、油圧シリンダ8が圧縮し、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)がケーシング3の内周壁3N側に倒伏している状態を示している。また、
図3は油圧シリンダ8が圧縮しているときの上爪1及び下爪2を側面(
図2の側面)からみた図である。
【0023】
図3に示すように、上爪1(1a、1b)は側面視で一部がくり抜かれたコの字型をしていて、このくり抜かれた個所に下爪2(2a、2b)が入り込む構成となっている。上爪1(1a、1b)の一方の端部は上爪固定軸取付け部12(12a、12b)において上爪固定軸5(5a、5b)によりケーシング3の長手方向と直交する方向に軸支されている。また、下爪2(2a、2b)の一方の端部は下爪固定軸取付け部13(13a、13b)において下爪固定軸6(6a、6b)によりケーシング3の長手方向と直交する方向に軸支されている。そして、
図2に示すように、上爪固定軸取付け部12(12a、12b)は、外側円筒部4の下端部に設けられており、下爪固定軸取付け部13(13a、13b)は、外側円筒部4より下方(ケーシング先端方向)におけるケーシング3の外周壁部に設けられている。つまり、上爪1(1a、1b)は、上爪固定軸5により外側円筒部4の下端部に軸支され、下爪2は、下爪固定軸6により外側円筒部4より下方のケーシング3の外周壁部に軸支されている。さらに、上爪1(1a、1b)のくり抜かれた個所において、可動軸7(7a、7b)により上爪1(1a、1b)と下爪2(2a、2b)のそれぞれの他方の端部が軸支されている。
【0024】
ここで、上爪1(1a、1b)の長さは、下爪2(2a、2b)よりも短く構成されている。このため、後述するように、上爪1(1a、1b)は、ケーシング3の先端方向Dに対してほぼ直交する方向に起立させることができるとともに、上爪1(1a、1b)をサポートする位置に下爪2(2a、2b)を起立させることができる(
図2(b)参照)。
【0025】
上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)は鉄を主材料として構成され、引抜く既設杭Pの重量に耐えられ、既設杭Pに当接する寸法を有している。実施例1においては、長さは200〜300mm、幅は100mm、厚みは50mm程度を有している。
【0026】
上爪固定軸取付け部12(12a、12b)において、上爪1(1a、1b)が規定以上に倒伏しないようにストッパであるピン9が設けられている。この位置は、上爪1(1a、1b)が倒伏限界にまでならない位置で上爪1(1a、1b)を規制できればよく任意の位置に設けることができる。このピン9によって、規定以上に外側に上爪1(1a、1b)が倒伏することを防止することができるとともに、上爪1(1a、1b)に軸支された下爪2(2a、2b)についても規定以上に外側に倒伏することを防止することができる。
【0027】
ここで、上爪1(1a、1b)が倒伏限界とならない位置とは、可動軸7(7a、7b)が、上爪固定軸5(5a、5b)と下爪固定軸6(6a、6b)を結ぶ直線より内部、つまりケーシング3の断面中心側に存在する位置である。
【0028】
油圧シリンダ8が圧縮すると、
図2(a)に示すように、外側円筒部4をケーシング3の先端方向Dと逆方向に移動させて、上爪1(1a、1b)が内周壁3N側に倒伏する。そして、上爪1(1a、1b)が内周壁3N側に倒伏することにより、上爪1(1a、1b)の他方の端部に下爪2(2a、2b)の他方の端部が軸支されていることにより、下爪2(2a、2b)も内周壁3N側に倒伏する。
【0029】
なお、実施例1においては、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が、内周壁3N側に倒伏するように構成したが、より好ましくは、内周壁3Nより外側に倒伏するように構成するとよい。これにより、後述するケーシング埋込工程において、土圧の影響を軽減でき、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が必要以上に外側に倒伏することを防止できるため、油圧シリンダ8(8a、8b)が伸長した際に上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が内側ではなく外側に起立してしまうことや起立しにくくなることを防げる。
【0030】
また、本発明の実施例1においては、前述のように、油圧シリンダ8(8a、8b)が圧縮した際に上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が規定以上に外側に倒伏してしまうことを防止するために、上述のようにストッパとなるピン9(9a、9b)を設けている。
【0031】
なお、実施例1においては、上爪固定軸取付け部12(12a、12b)にストッパとしてピン9(9a、9b)を設けるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ピン9(9a、9b)に替えてブロック状の部材を上爪固定軸取付け部12(12a、12b)等の外側円筒部4に設けてもよい。また、ケーシング3に下爪2(2a、2b)の倒伏位置を規制するためのストッパとしてのピンやブロック状の部材を設けてもよいし、外側円筒部4及びケーシング3の両方に適宜ストッパを設けるように構成してもよい。
【0032】
図2(b)は、油圧シリンダ8が伸長し、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)がケーシング3の断面中心側に起立している状態を示している。つまり、油圧シリンダ8が伸長して外側円筒部4をケーシング3の先端方向Dに移動させることによって、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)はケーシング3に貫通して設けたケーシング窓3Wを利用してケーシング3の内周壁3Nより内側に起立する。このとき、下爪2(2a、2b)の下方端部は、ケーシング窓Wの下端部における面取り部Cに当接して、既設杭Pの重量により耐えるように構成している。
【0033】
なお、実施例1においては、上爪及び下爪の数を2個としたが、必ずしもこれに限定されず引抜く既設杭の重量等に応じて適宜変更が可能である。例えば、上爪及び下爪の数をそれぞれ3個以上としてもよい。また、実施例1では油圧シリンダを2個備えるようにしたが、必ずしもこれに限定されず、既設杭の重量等により適宜変更が可能である。例えば、上爪及び下爪の数にあわせて油圧シリンダを3個以上としてもよい。
【0034】
また、実施例1においては、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)における可動軸7(7a、7b)により軸支されている側の端部を丸く形成しているが(
図1、
図2参照)、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、先端を鋭角に形成して、既設杭Pを保持可能又は破砕可能に構成してもよい。
【0035】
(杭引抜工法)
まず、先端近傍に外側円筒部4を同芯に設けた円筒状のケーシング3を準備する準備工程を実行する。この準備工程では、複数の分割ケーシングを継合し、かつ最下端の分割ケーシングに複数の掘削刃11を有したケーシング3を準備する。詳しく説明すると、
図4に示すように、キャタピラ移動が可能で組立が容易なテレスコクローラ式の杭抜き機10を準備する。このテレスコクローラ式の杭抜き機10は、分割ケーシングを5個継合させたケーシング3を備える。各分割ケーシングはそれぞれボルトで継合されており、最下方の分割ケーシングの下端近傍には2個の上爪1(1a、1b)を軸支した外側円筒部4を有し、また、2個の下爪2(2a、2b)をケーシング3に軸支するとともに、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)の他方の端部同士を軸支した構成を有している。そして上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)はケーシング3の断面中心側に起立又は内周壁3N側に倒伏可能に構成されている(
図2参照)。
【0036】
なお、実施例1においては、テレスコクローラ式の杭抜き機を用いる構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ラフタークレーン式の杭抜き機を用いる構成としてもよい。また、キャタピラ移動が可能な杭抜き機でなくてもよい。さらに。分割ケーシングの数を5個としたが、必ずしもこれに限定されず、既設杭の長さ等の都合により適宜変更が可能である。例えば、4個以下としてもよいし、6個以上としてもよい。
【0037】
地中には、既設杭Pが埋設されている。既設杭Pは、おおよそ直径が150mmφ〜650mmφ、長さが6m〜22mであり、材質は、セメント(PC杭)、松(松杭)、鋼管(鋼管杭)等である。ここで、本発明では、
図4に示すように、既設杭Pの地中側の先端を先端P1とし、地表に近い方の端部を端部P2と定義する。
【0038】
ケーシング3は既設杭の直径や長さに合わせて選択される。すなわち、ケーシング3の内径が既設杭Pの直径より大きく、長さが既設杭Pの長さより長いものを用意する。既設杭Pの地表に近い方の端部P2が見えるように予め土を掘削しておく。
【0039】
次に、油圧シリンダ8を圧縮させて外型円筒部4をケーシング3の先端方向Dとは逆方向に移動させ、外側円筒部4の外周壁に軸支された上爪1(1a、1b)及びケーシング3の外周壁部に軸支された下爪2(2a、2b)を内周壁3N側に倒伏させる上下爪倒伏工程を実行する。このとき、ストッパであるピン9により上爪1(1a、1b)が規定以上に外側に倒伏することを防げる。上爪1(1a、1b)が規定以上に外側に倒伏すると、後述の上下爪起立工程において、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)がケーシング3の断面中心側に起立することができない場合があるが、ピン9によりこれを防止できる。
【0040】
そして、既設杭Pの周囲に位置するように前記ケーシング3を既設杭Pよりも深く地中に埋め込むケーシング埋込み工程を実行する。詳しく説明すると、まず、
図5(a)に示すようにケーシング3を既設杭Pの周囲に位置決めした後、ケーシング3を正回転させながら複数の掘削刃11で土を掘り、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が既設杭Pの先端P1よりも深くなるように埋め込む。このとき、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)はケーシング3の内周壁3N側に倒伏しているので、土の抵抗が少なくスムーズに埋め込むことができる。また、仮に、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が土圧の影響を受けて外側に押されることがあっても上爪1(1a、1b)がピン9に当接することによりそれ以上に外側に倒伏することを防止できる。
【0041】
次に、上下爪起立工程を実行して、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)をケーシング3の断面中心側に起立させる(
図5(a)において長円を記した部分である。)。つまり、油圧シリンダ8を伸長させて外型円筒部4をケーシング3の先端方向Dに移動させ、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)をケーシング3の断面中心側に起立させる。このとき、上爪1(1a、1b)の長さが下爪2(2a、2b)よりも短く構成されているので、上爪1(1a、1b)の方が大きく起立し、ケーシング3の長さ方向Dにほぼ直交する方向にまで起立させることができる。また、下爪2(2a、2b)は、ケーシング3の長さ方向Dにほぼ直交する方向にまで起立した上爪1(1a、1b)を支持するように起立するとともに、その下方端がケーシング窓3Wの下端部の面取り部Cに当接する。これによって、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が、既設杭Pを支持することができる。
【0042】
そして、ケーシング引抜き工程を実行してケーシング3とともに既設杭Pを引抜く(
図5(b)、
図5(c)参照)。つまり、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)をケーシング3の断面中心側に起立させたままケーシング3を引抜くと、起立した上爪1(1a、1b)が既設杭Pを支持し、またケーシング窓3Wの下端部の面取り部Cに下方端が当接した下爪2(2a、2b)が上爪1(1a、1b)を支持して既設杭Pの重量に耐えて既設杭Pが引抜かれる。
【0043】
このように、既設杭Pの先端P1を上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が支持してケーシング3を引抜くことにより、仮に既設杭Pが途中で折れていても既設杭P全部をケーシング3とともに引抜くことができる。
【0044】
最後に、上下爪倒伏工程を再度実行して、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)をケーシング3の内周壁3N側に倒伏させて、既設杭Pの先端P1に対する支持を解除することにより、既設杭Pを落下させて着地させる。具体的には、
図6(a)に示すように、既設杭Pを降ろす場所において、油圧シリンダ8を圧縮させて上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)を倒伏させて、ケーシング3を引き上げることにより、既設杭Pを地面に降ろして既設杭Pの引抜きを完了する(
図6(b)参照)。
【0045】
なお、実施例1においては、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)の起立、倒伏動作に油圧シリンダ8を用いたが必ずしもこれに限定されず都合により適宜変更が可能である。例えば、油圧シリンダ8に頼らずケーシング3の正転、逆転により上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)を倒伏、起立させるような機構を備えてもよい。その場合、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)を起立させてケーシング3の断面中心側に位置させる場合は、ケーシング3を逆転させ、また上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)をケーシング3の内周壁3N側に倒伏させる場合は、ケーシング3を正転させるように構成すればよい。少なくとも起立時に上爪1(1a、1b)がケーシング3の先端方向Dと直交する方向に起立し、下爪2(2a、2b)が上爪1(1a、1b)をサポートするように起立させればよい。これによって、重い既設杭Pでもその重量に耐えて引抜くことができる。
【0046】
また、実施例1においては、ケーシング窓3Wの下端部の面取り部Cに下方端が当接した下爪2(2a、2b)が上爪1(1a、1b)を支持するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ケーシング窓3Wの下端部に面取り部Cを設けずに下爪2(2a、2b)を下爪固定軸6(6a、6b)のみで上爪1(1a、1b)を支持するように構成してもよい。この場合は、より太い下爪固定軸6(6a、6b)を用いることで実現できる。
【0047】
さらに、実施例1においては、ケーシング埋込み工程にてケーシング3を、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)が既設杭Pの先端P1よりも深くなるように埋め込むようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、既設杭Pの先端P1よりも浅いところで、上下爪起立工程を実行して既設杭Pの途中(先端P1と端部P2との間)を支持してケーシング引抜き工程を実行するようにしてもよい。この場合は、上爪1(1a、1b)及び下爪2(2a、2b)における可動軸7(7a、7b)により軸支されている側の端部を鋭角に形成しておくとよい。
【0048】
このように、本発明における実施例1においては、既設杭を引き抜く杭抜き機のチャッキング機構であって、
外側円筒部を同芯に設けた円筒状のケーシングと、
前記外側円筒部の外周壁下端部に一方の端部が上爪固定軸により軸支された上爪と、
前記外側円筒部より下方の前記ケーシング外周壁部に一方の端部が下爪固定軸により軸支された下爪と、
前記上爪の他方の端部と前記下爪の他方の端部とを軸支する可動軸と、
前記外側円筒部を前記ケーシングに沿って移動させる油圧シリンダと、
前記上爪及び前記下爪が規定以上に外側へ倒伏することを防止するストッパと、を備え、
前記油圧シリンダを伸長させることにより前記外側円筒部がケーシング先端方向に移動して前記上爪及び前記下爪が前記ケーシングの断面中心側に起立するとともに、前記油圧シリンダを圧縮させることにより前記外側円筒部がケーシング先端方向と逆方向に移動して前記上爪及び前記下爪が前記ケーシングの内周壁側に倒伏することを特徴とする杭抜き機のチャッキング機構により、重い既設杭でも引抜くことができる。
【0049】
また、本発明における実施例1においては、既設杭を引き抜く杭引抜工法であって、外側円筒部を同芯に設けた円筒状のケーシングを準備する準備工程と、
油圧シリンダを圧縮させて、前記外側円筒部の外周壁下端部に一方の端部を軸支された上爪を前記ケーシングの内周壁側に倒伏させるとともに、前記上爪の他方の端部に他方の端部が軸支され一方の端部が前記外側円筒部より下方のケーシングの外周壁部に軸支された下爪を前記ケーシングの内周壁側に倒伏させる上下爪倒伏工程と、
前記ケーシングを既設杭の周囲に位置するように地中に埋め込むケーシング埋込工程と、
前記油圧シリンダを伸長させて、前記上爪及び前記下爪を前記ケーシングの断面中心側に起立させる上下爪起立工程と、
前記ケーシングを引抜くことにより、既設杭を前記上爪及び前記下爪が支持して引抜くケーシング引抜き工程と、を備え、
前記上下爪倒伏工程及び前記ケーシング埋込工程において、ストッパにより前記上爪及び前記下爪が規定以上に外側に倒伏することが防止可能であることを特徴とする杭引抜工法により、重い既設杭でも引抜くことができる。