特許第6465513号(P6465513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465513
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20190128BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   E04F15/00 G
   E04F15/02 101Z
   E04F15/02 D
   E04F15/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-105762(P2017-105762)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-199973(P2018-199973A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2017年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 仁
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋一
(72)【発明者】
【氏名】水津 裕行
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 智美
(72)【発明者】
【氏名】谷野 祐太
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍人
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−020502(JP,A)
【文献】 特開2001−241170(JP,A)
【文献】 特開2005−264562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物側から屋外側に延出する床構造であって、
前記建物側の端部に近接する位置に上方へ突出する突起部が形成されたパネル敷設面材と、
外周縁の一部に連結部を有し、互いに連結して前記パネル敷設面材の上に敷き詰められる複数の床パネルと、を備え、
前記床パネルのうち前記突起部の上に配置される床パネルの下面に当該突起部を囲う規制部が形成され
前記床パネルは、下面に、前記床構造の延出方向に沿って平行な複数の第一リブと、当該第一リブに直交する複数の第二リブとが形成されており、
前記規制部は、前記突起部を囲うように配置される前記第一リブ及び前記第二リブであることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記規制部は前記突起部の床構造の延出方向と直交する方向の両側面から所定距離を開けた位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記規制部は前記突起部の建物側の側面に当接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床構造。
【請求項4】
前記規制部は前記突起部の屋外側の側面から離間することを特徴とする請求項3に記載の床構造。
【請求項5】
前記建物には屋内から前記床構造に出入り可能な開口部が形成されており、
前記屋内の床面と前記床パネルとの間に段差がないフラット構造であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ、バルコニー、又はテラスなどの屋外部の床を形成する床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ベランダ、バルコニー、又はテラスなどの屋外部の床構造は、例えばコンクリート床や鋼製の折板などのパネル敷設面材の上に化粧材としての床パネルを複数枚並べて置敷きして形成されている(例えば特許文献1から特許文献3)。
【0003】
このような床パネルの外周縁には、連結穴が設けられた雌連結部と、連結孔に挿入される雄連結部とが形成されており、互いに隣接する床パネル同士が連結されている。これらの床パネルの中には、床パネルがパネル敷設面材上で水平方向にずれることを抑制する床材ズレ防止具をパネル敷設面材に固定する発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−271480号公報
【特許文献2】特開2009−114802号公報
【特許文献3】特開2009−84778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば樹脂系の床パネルのように、床パネルが熱伸縮する場合に、パネル敷設面材に床パネルが完全に拘束されていると、床パネルの一部が浮く又はパネル敷設面材に対して反るなどの問題が発生する可能性がある。しかし、日常の歩行によって床パネルが水平方向にずれることを防ぐためには床パネルの動きを規制する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は床パネルの熱伸縮に対応できるとともに、床パネルのずれを防止することができる床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の床構造は、建物側から屋外側に延出する床構造であって、前記建物側の端部に近接する位置に上方へ突出する突起部が形成されたパネル敷設面材と、外周縁の一部に連結部を有し、互いに連結して前記パネル敷設面材の上に敷き詰められる複数の床パネルと、を備え、前記床パネルのうち前記突起部の上に配置される床パネルの下面に当該突起部を囲う規制部が形成され、前記床パネルは、下面に、前記床構造の延出方向に沿って平行な複数の第一リブと、当該第一リブに直交する複数の第二リブとが形成されており、前記規制部は、前記突起部を囲うように配置される前記第一リブ及び前記第二リブであることを特徴としている。
【0008】
本発明の床構造は、前記規制部は前記突起部の床構造の延出方向と直交する方向の両側面から所定距離を開けた位置に形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の床構造は、前記規制部は前記突起部の建物側の側面に当接することを特徴としている。
【0010】
本発明の床構造は、前記規制部は前記突起部の屋外側の側面から離間することを特徴としている。
【0011】
本発明の床構造は、前記建物には屋内から前記床構造に出入り可能な開口部が形成されており、前記屋内の床面と前記床パネルとの間に段差がないフラット構造であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床構造によると、パネル敷設面材の建物側の端部に近接する位置に上方の突出する突起部が形成されており、この突起部が床パネルの下面に形成された規制部が突起部を囲うように配置されるので、床パネルにパネル敷設面材上で水平方向にズレる外力が加わった場合でも、規制部が突起部に規制されて床パネルの過度なズレを防止することができる。突起部はパネル敷設面材の建物側の端部に近接する位置に形成されているので、床パネルは建物側の端部付近が最もずれ難いので、床パネルと建物との間に隙間ができることを防止することができ、建物の屋内側と床パネル側との間で移動する際に、隙間に足指を詰めることや足が引っ掛かることを防止することができる。また、全ての床パネルの動きを規制するのではなく、突起部の上に配置される床パネルの動きのみを突起部が規制しているので床パネルが熱伸縮した場合にも、建物から離れる側の床パネルが熱伸縮に応じて水平方向に移動できるので、熱伸縮を吸収することができ、パネルの浮きや反りを防止することができる。そして、床パネルの下面に、平行な複数の第一リブと、当該第一リブに直交する複数の第二リブとが形成されており、突起部はこれら第一リブ及び第二リブによって形成されているので、もともと床パネルが有していた下面のリブを用いて規制部を形成しており、新たに突起部を囲う部材を成形する必要がない。
【0014】
本発明の床構造によると、前記突起部の床構造の延出方向と直交する方向の両側面から所定距離を開けた位置に規制部が形成されているので、床パネルはパネル敷設面材に対して床構造の延出方向と直交する方向に所定距離分移動することが可能であり、パネルの床構造の延出方向と直交する方向への熱伸縮などを吸収することができ、パネルの浮きや反りを防止することができる。
【0015】
本発明の床構造によると、規制部が突起部の建物側の側面に当接するので、最も建物側の床パネルが床構造の延出方向に移動することを確実に防止でき、床パネルと建物との間に隙間ができることを防止して、建物の屋内側と床パネル側との間で移動する際に、隙間に足指を詰めることや足が引っ掛かることを防止することができる。
【0016】
本発明の床構造によると、規制部は突起部の屋外側の側面から離間しているので、床パネルをパネル敷設面材に置敷きする際に、突起部を規制部で囲まれた空間内に配置しやすくすることができ、突起部の建物側の側面は規制部に当接しているので、床パネルと建物との間の隙間の発生を防止しつつ施工性を高めることができる。
【0017】
本発明の床構造によると、建物には屋内から床構造に出入り可能な開口部が形成されており、屋内の床面と床パネルとの間に段差がないフラット構造であるので、開口部の下枠と床パネルとの間に隙間が発生しないことで、屋内の床面から床パネルまでの移動がスムーズであり、隙間の発生によって足指を詰めることや足が引っ掛かることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】床構造の全体構成を説明する断面図。
図2図1のA部分拡大図。
図3】床パネルの下面形状を説明する斜視図。
図4】パネル敷設面材上に床パネルを敷き詰める状態を説明する図。
図5】床パネル裏面と突起部との位置関係を説明する図。
図6図5のI部分及びII部分拡大図。
図7】床パネル同士を連結する雄連結部及び雌連結部の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の床構造1の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本実施形態の床構造1は、図1に示すように、建物側Bから屋外側Oに延出する片持ちのバルコニーである。床構造1は、片持ちのバルコニーに限定されるものではなく、例えばベランダ、バルコニー、又はテラスなどの屋外部の床構造1であり、建物側Bから屋外側Oに延出する構造であればどのような床構造1であっても良い。なお、本実施形態において、「建物側」は床構造1から見て水平方向に建物の開口部2が設けられている側をいい、「屋外側」は床構造1から見て当該建物側Bの反対側をいう。
【0021】
図1に示すように、床構造1は、建物の躯体に固定された受けプレート11によって支持される床フレーム12と、床フレーム12の上に固定される勾配床ユニット13と、勾配床ユニット13の上に床構造1の延出側の端部と建物側Bの端部とにそれぞれ設けられる大引き14と、大引き14の上に架設されるパネル敷設面材3と、パネル敷設面材3の上に敷き詰められる複数の床パネル4とを備えた2重床である。
【0022】
なお、本発明における「床構造」は2重床のものに限られるものではなく、勾配床の上に床パネル4が直接敷き詰められる1重の床構造であっても良い。このような1重の床構造においては勾配床が本発明におけるパネル敷設面材を構成している。
【0023】
パネル敷設面材3は本実施形態においては山と谷とが交互に形成される鋼製の折板である。パネル敷設面材3は大引き14にそれぞれビスで固定されている。パネル敷設面材3は床構造1の建物側Bの端部に近接する位置に上方に突出する突起部5が形成されている。突起部5は、図2図4、及び図5に示すように、円柱形状であり、突出する高さは床パネル4の規制部6の間に挿入した場合に上端が床パネル4に接触しない高さであり、突起部5の径は、床パネル4の規制部6の間に挿入可能な寸法である。
【0024】
床パネル4は、図3及び図4に示すように、上面が僅かな凹凸を有する装飾面であり、下面に床構造1の延出方向に沿って平行な複数の第一リブ7と、当該第一リブ7に直交する複数の第二リブ8とが形成される樹脂製の矩形の面材である。図5及び図6(I)に示すように、床パネル4のうち最も建物側Bの床パネル4の下面に形成される第一リブ7及び第二リブ8が突起部5を囲う規制部6を構成している。図5に示すように、突起部5は最も建物側Bの床パネル4の建物側Bから数えて2番目の第二リブ8と3番目の第二リブ8の間に配置されている。突起部5の位置はこれに限定されるものではなく、少なくとも最も建物側Bの床パネル4の少なくとも中心線よりも建物側Bに形成されていることが好ましい。
【0025】
図6(I)に示すように、規制部6は2本の第一リブ7と2本の第二リブ8とによって矩形に形成されている。規制部6の第一リブ7は、突起部5の床構造1の延出方向と直交する方向の両側面から所定距離L1を開けた位置に配置されている。本実施形態においては突起部5から規制部6の両側の第一リブ7までの距離L1は9mmずつである。このように規制部6の第一リブ7と突起部5との間に距離L1が開けられていることで、床パネル4が熱伸縮によって床構造1の延出方向と直交する方向に伸縮した場合であっても、第一リブ7と突起部5の間の隙間が熱伸縮による床パネル4の移動を吸収することで、パネル敷設面材3に対する床パネル4の反りや浮きを抑制できる。
【0026】
また、規制部6の第二リブ8にうち突起部5の建物側Bに配置される第二リブ8は突起部5の側面に当接するように配置されている。このように建物側Bの第二リブ8が突起部5と当接することで、床パネル4が床構造1の延出方向に移動して、当該床パネル4と建物との間に隙間ができることを防止することができるので、建物の屋内側と床パネル4側との間で移動する際に、隙間に足指を詰めることや足が引っ掛かることを防止することができる。そして、規制部6の第二リブ8のうち突起部5の屋外側Oに配置される第二リブ8は突起部5の側面から距離L2を開けて離間するように配置されているので、床パネル4を敷設する際に、規制部6に囲まれた空間内に突起部5が簡単に挿入されるので施工性に優れる。
【0027】
なお本発明の床パネル4は樹脂製に限定されるものではなく、例えば上面が磁器タイル、天然石、木材などで形成されていても良い。床パネル4の下面には第一リブ7と第二リブ8との対角線の一部に第一リブ7及び第二リブ8よりも突出長さの短い斜線リブ9が形成されている。第一リブ7、及び第二リブ8は、床パネル4をパネル敷設面材3に載置したときに、当該パネル敷設面材3の上面に当接する凸部21と、雨水等がパネル敷設面材3上を流れる際に水の流路となるように窪んだ凹部22とが、それぞれ形成されている。
【0028】
また、床パネル4の外周縁のうち隣り合う2辺には上下方向に貫通する環状に形成された雌連結部10aが側方に延びて形成されている。また、残りの2辺の雌連結部10aに対応する位置には雄連結部10bが下方に突出して形成されている。雌連結部10aに雄連結部10bが挿入されることで、隣接する床パネル4同士は連結される。本発明における「連結部」は雌連結部10a及び雄連結部10bがいずれも該当する。
【0029】
床構造1が延出する建物は当該床構造1に隣接する位置に開口部2が形成されており、開口部2を通じて建物の屋内から床構造1に出入り可能となっている。開口部2は、本実施形態においては引き違いの掃き出し窓であるが、これに限られるものではなく、開き戸や折れ戸などであっても良く、屋内から床構造1に出入り可能であればどのような開口部2であっても良い。本実施形態においては屋内の床面15と床パネル4との間に段差がないフラット構造となっている。すなわち、屋内の床面15及び床パネル4の上面の高さが略面一であり、開口部2の下枠2aが屋内の床面15及び床パネル4の上面の高さからほとんど突出しない形状に形成されている。このようなフラット構造とすることで、子供等でも簡単に屋内から床構造1に出入りすることができるが、前述のように突起部5と突起部5の建物側Bの第二リブ8とが当接して、床パネル4と建物との間に隙間ができることを防止しているので、隙間に足指を詰めることや足が引っ掛かることを防止することができる。
【0030】
床パネル4をパネル敷設面材3の上に敷き詰めるときには、図4に示すように、床パネル4のうち最も建物側Bの床パネル4を当該床パネル4の下面に第一リブ7及び第二リブ8によって形成されている規制部6に囲われた空間に突起部5が挿入されるように、当該床パネル4をパネル敷設面材3上に載置する。そして、最も建物側Bの床パネル4に隣接するように更に床パネル4をパネル敷設面材3上に載置する。このとき、図6(II)及び図7に示すように床パネル4の雌連結部10aに隣接する床パネル4の雄連結部10bが挿入されて隣接する床パネル4同士は連結される。雌連結部10a及び雄連結部10bの連結部は、雌連結部10aの孔が雄連結部10bよりも大きく形成されており、挿入された雄連結部10bと雌連結部10aの内側面との間に遊びしろPとなる間隔を有している。これによって、隣接して連結される床パネル4同士は互いに当該遊びしろPの範囲で接近及び離反可能に連結される。
【0031】
したがって、床パネル4の熱伸縮をこの雄連結部10bと雌連結部10aとの間の遊びしろPでも吸収することができ、床パネル4が置敷された床構造1の周縁に大きな隙間ができることを防止することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は上述の実施形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る床構造1は、例えばバルコニー、ベランダ、テラスなどの屋外部の床を構成する床構造1として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 床構造
2 開口部
3 パネル敷設面材
4 床パネル
5 突起部
6 規制部
7 第一リブ
8 第二リブ
10a 雌連結部(連結部)
10b 雄連結部(連結部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7