【実施例】
【0040】
以下、本発明の一実施例に係る断層像撮影装置について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1には断層像取得部100の詳細構成を示す。
【0041】
図1に示すように、断層像取得部100では被検眼Eの眼底部(眼底網膜)Er上に測定光を照射することにより、眼底部Erの三次元断層像を撮影する。本実施形態では、時間的に波長を変化させて走査する波長掃引光源101を用いたフーリエドメイン(光周波数掃引)方式が採用されている。
【0042】
そして、取得した干渉信号の制御装置200のADボード201への取込み開始トリガ(Aトリガ)は、波長掃引光源101の光の一部をFBG(Fiber Bragg Grating)に入力し予めした特定の波長の反射光を受光素子にて検出してAトリガを生成するAトリガ生成部121から生成するようになっている。また、取得した干渉信号の制御装置200のADボード201への取込みタイミングクロックは、干渉系などを用いて等光周波数間隔なクロック(k-clock)を生成するk-clock生成部120から生成されるようになっている。
【0043】
波長掃引光源101から出力された光は光ファイバを通して、まず最初に、第1のファイバーカプラ118に入力され、この第1のファイバーカプラ118において、例えば99:1の比率で測定干渉系へ入力される光と上記Aトリガ及びk-clockを生成するための光とに分波されて出力される。そして、Aトリガ及びk-clockを生成するための光は、光ファイバを通して第2のファイバーカプラ119に入力され、この第2のファイバーカプラ119において、例えば50:50の比率で、k-clock生成部120とAトリガ生成部121とに分波されて出力される。
【0044】
第1のファイバーカプラ118において測定干渉系へ入力された光は、光ファイバを通して偏波コントローラ102及びアイソレータ103に入力しその後光ファイバを通して第3のファイバーカプラ104に入力され、この第3のファイバーカプラ104において、例えば10:90の比率で、参照光と測定光とに分波されて出力される。そのうち参照光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ112に入力し、ディレイラインユニット113に入射される。ディレイラインユニット113は眼底の網膜上に参照光路を合わせる光路長調整用のユニット部であり、OCT断層像を測定する前に、測定光路長と参照光路長を合わせる。
【0045】
そして、ディレイラインユニット113から放射された参照光はコリメータレンズ114から光ファイバを通り偏波コントローラ115に入力しその後光ファイバを通して第4のファイバーカプラ116の第1の入力部に入力される。
【0046】
一方、前記第3のファイバーカプラ104から出力された測定光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ105に入力し、ガルバノミラーユニット106に入力される。ガルバノミラーユニット106は、測定光を走査させるためのもので、ガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106は測定光を被検眼の眼底面において水平方向に及び垂直方向に走査されるようになっている。
【0047】
前記ガルバノミラーユニット106から出力された測定光はレンズ108を通り、対物レンズ109を通して図示しない検査窓から出射され、被検眼Eに入射される。被検眼Eに入射された測定光は、眼底部Erの各組織部分(網膜、脈絡膜等)にて反射し、その反射光が、検査窓から入射され、上記と逆に、対物レンズ109、レンズ108、ガルバノミラーユニット106を通って、コリメータレンズ105に入力される。そして、その反射光は、光ファイバを通って前記第3のファイバーカプラ104を通った後、光ファイバを通して第4のファイバーカプラ116の第2の入力部に入力される。
【0048】
この第4のファイバーカプラ116において、眼底部Erからの反射光と、前記光ファイバを通って入力された参照光とが、例えば50:50の比率で合波され、その信号が光ファイバを介して差動増幅検出器117に入力される。検出器117においては、波長毎の干渉が計測され、計測された干渉信号が、制御装置200に設けられたADボード201に入力される。さらに、制御装置200に設けられた演算部202において、干渉信号に対するフーリエ変換などの処理が行われ、もって走査線に沿う眼底網膜Erの断層像が取得されるのである。(
図2)
【0049】
このとき、詳しくは後述するように、前記ガルバノミラーユニット106による測定光のスキャンパターン、言い換えると走査線(Bスキャン)の方向は、制御装置200において設定されるようになっている。そして、制御装置200(演算部202)からの指令信号に基づいてガルバノドライバ107がガルバノミラーユニット106を制御するようになっている。尚、得られた眼底部Erの断層像のデータは、記憶部203に記憶される。(
図2)
【0050】
また、計測された干渉信号の制御装置200に設けられたADボード201への取込みは、上述のように、Aトリガ生成部121で生成されたAトリガで開始され、k-clock生成部120で生成されたk-clockのタイミングで取りこまれる。
【0051】
次に
図3〜
図5を参照しながら、3次元断層像の取得方法について説明する。
図3はBスキャン像撮像から三次元断層像構築までの、本発明の断層像撮影装置の一連の処理フローを示したものである。
【0052】
OCTにて撮影を開始する前に、ディレイラインユニット113内にある参照鏡を移動し、測定光路長と参照光路長を一致させる(ステップ301)。その後、断層像取得部100にて、断層像(Bスキャン像)を取得する(ステップ302)。そして、ステップ303で取得したBスキャン像(複数のAスキャン信号)をAトリガとk-clockによりADボード201に取込まれる。
【0053】
図4は、断層像取得部100による断層像(Bスキャン像)を取得する様子を示したものである。
図4(a)は被検眼Eの眼底網膜の一例を、
図4(b)は断層像取得部100から取得して得られた眼底網膜401の複数の2次元断層像(Bスキャン像)の例を示している。そして、
図4(c)は本実施例にて生成された眼底部の3次元断層像の例を示している。尚、
図4(a)〜(c)のx軸はBスキャンのスキャン方向を、y軸はCスキャンの方向を示す。更に、
図4(b)、(c)のz軸はAスキャン信号の奥行き方向、つまり眼底部の深さ方向を示す。
【0054】
図4(b)の404は取得した2次元断層像であり、ガルバノミラーユニット106をx方向にスキャンさせながら、演算部202がAスキャン信号403を再構築して作成される。この2次元断層像がBスキャン像であり、眼底網膜401に対する奥行き方向(z方向)と直交するx方向の2次元の断面、すなわち
図4(b)におけるx軸及びz軸で規定される平面における2次元断層像である。
図4(a)の402は2次元断層像404の撮影位置を示す。
【0055】
ステップ303で取り込まれたBスキャン像には固定パターンノイズが含まれているので、ステップ304で固定パターンノイズ(FPN)の除去を実施する。
【0056】
ここで実施する固定パターンノイズ除去は、特許文献1で開示されているような、通常実施されている方法でもよい。すなわち、Bスキャンにより取得した複数のAスキャン信号(干渉信号)を平均することで固定パターンノイズを抽出し、これを入力した干渉信号から減算して固定パターンノイズを除去する。
【0057】
固定パターンノイズ除去処理した後に、ステップ305でBスキャンにより取得した複数のAスキャン信号(干渉信号)をフーリエ変換して、Bスキャン断層像を取得する。
【0058】
図5(a)は固定パターンノイズ(FPN)の除去を実施していない場合のBスキャン断層像の、(b)は固定パターンノイズ(FPN)の除去を実施した場合のBスキャン断層像を模式的に表現した一例である。図中のA〜Cは断層像の中のいくつかの境界面を示す。例えば(境界面)Aは外境界膜、(境界面)BはIS−OSライン、(境界面)Cは網膜色素上皮を示している。その他、錐体外節の終末端やCSI(脈絡膜と強膜の境界)なども存在するが、
図5では省略されている。
【0059】
固定パターンノイズ(FPN)の除去を実施しないと、例えば、
図5(a)のBスキャン断層像501のように、境界面Cの下方(深い方向)に固定パターンノイズ504が現れる。そこで、ステップ304の固定パターンノイズ除去処理を実施することで、
図5(b)のように、固定パターンノイズ504が排除されるのである。
【0060】
ところが、実際にはステップ303で、ステップ302で取得した複数のAスキャン信号を取込む際、取込み開始信号であるAトリガのタイミングとADボードに取込むk-clockのタイミングが一定ではないため、取り込まれた各Aスキャンデータには位置ずれ(位相ずれ)が生じ、各Aスキャンデータに含まれる固定パターンノイズの位置が各Aスキャンデータ間でずれてしまい、ステップ304の固定パターンノイズ除去処理を実施しても
図5(c)のBスキャン断層像503のように固定パターンノイズ504′が残ってしまうことがある。
【0061】
そこで、本発明では、この残った固定パターンノイズ504′をステップ307でFPN評価値として定量的に求め、ステップ310で、求めたFPN評価値が予め設定した値(例えば、断層像として許容できるレベルの固定パターンノイズ)と比較する。そして、求めたFPN評価値が予め設定した値以上の場合は、固定パターンノイズは適切に除去されていないと判断し、ステップ314でAトリガのディレイを制御して、Aトリガのタイミングとk-clockのタイミングの関係を変更した後、ステップ302に戻りBスキャン像を再度取得する。求めたFPN評価値が予め設定した値より小さければ、固定パターンノイズは有効に除去されたものと判断し、ステップ309に進み、Y軸方向に所定の距離分スキャン(Cスキャン)する。
【0062】
ステップ310で、Cスキャンで所定のY軸方向の距離分移動したかどうかを判断し、Y軸方向の移動距離が所定のY軸方向の距離分移動していない場合はステップ302に戻る。Y軸方向の移動距離が所定のY軸方向の距離分移動した場合はCスキャンが終了したものと判断して、次のステップ311に進む。
【0063】
Cスキャンが終了したら、ステップ311で取得した複数のBスキャン断層像に対してシフトアベレージ処理を行う。シフトアベレージ処理は隣り合った1つ以上のBスキャン断層像の加算平均処理を行い、画像のノイズ成分を除去する処理のことである。その後、ステップ312でBスキャン断層像を重ね合わせて3次元断層像(ボリュームデータ)に再構築する。
図4(b)は各撮影位置における複数のBスキャン画像を取得する様子を示したものであり、
図4(c)は、複数のBスキャン画像から生成された3次元断層像(ボリュームデータ)を示す。
【0064】
ステップ312で生成された3次元断層像(ボリュームデータ)はステップ313で記憶部203に記憶される。
【0065】
ここで、
図6を参照して、ステップ307におけるFPN評価値の算出方法について説明する。
図6(a)のBスキャン断層像601は固定パターンノイズ除去を行っていない断層像の模式図の例である。固定パターンノイズ除去を行わないと、固定パターンノイズ602が断層像601の一定の深さ位置にX方向全域に渡って現れる。そこで、
図6(a)に示す複数の矢印のように同じ深さ位置における画素値をX方向に加算して得られた画素値の総和を深さ位置に対してプロットしたのが
図6(b)である。
図6(b)に示すように、固定パターンノイズが現れる位置P(Z)にピークが得られるので、ピーク位置P(Z)を記憶する。
【0066】
そして、ステップ307においては
図6(c)のように固定パターンノイズ処理を実施したBスキャン断層像603に対し、深さ位置P(Z)に対し所定の範囲(P(Z)±Δ)におけるBスキャン断層像の範囲(点線の枠に囲まれた領域604)の画素値の総和値を算出して、その総和値をFPN評価値とする。
【0067】
図6(c)では画素値の総和値を点線の枠に囲まれた領域604のように、X方向全域に対して算出しているが、勿論、これに限るわけではない。例えば、固定パターンノイズが現れる付近に特徴ある部位が存在しているような場合は、ステップ314でAトリガのタイミング位置をいくら変化させてもFPN評価値は所定の値より小さくならないことがある。そのような場合は、特徴ある部位を避けた領域に限定して画素値の総和値を求めてFPN評価値としたり、又は、X方向で複数の領域に等分に分割して、それぞれの領域で画素値の総和値を求め、他の領域に比べ極端に値が大きいものを排除し、残った領域の画素値の総和値の和をFPN評価値としてもよい。
【0068】
固定パターンノイズが現れる位置P(Z)を求める方法は
図6(a)、(b)に示した方法に限らない。
図7はステップ304での固定パターンノイズを除去における手順の一部である。
図7(a)はAスキャンデータ(干渉信号)であり、(b)は複数のAスキャンデータからなるBスキャン像(フーリエ変換前の干渉データの集まり)である。
図7(b)に図示する矢印方向に同じ位置のピクセルで平均化すると被測定物の干渉信号はキャンセルされ、
図7(c)に示す固定パターンノイズにかかる周波数信号(FPN成分)が検出される。固定パターンノイズ除去は各AスキャンデータからこのFPN成分を引いて、Bスキャン像から固定パターンノイズの除去を実施する。そこで、このFPN成分をフーリエ変換すると、
図7(d)のように深さ位置に対して信号強度をプロットしたデータが得られる。
図7(d)における信号強度のピークの深さ位置が上記
図6(a)、(b)で求めたP(Z)と同等なものとなり、
図7に示す方法で求めたP(Z)を用いてFPN評価値を算出してもよい。
【0069】
次に、本発明によるAスキャン信号のADボード201への取込方法について、
図8及び9を参照して説明する。
【0070】
図8(a)は
図2における演算部202の詳細を示した図である。Aトリガ生成部121で生成されたAトリガ信号はコンパレータ210で矩形波に変換され、ディレイライン211に入力する。そして、Aトリガ信号はAトリガクロックとして、ディレイライン211で所定の時間遅延処理がなされて演算処理部212に入力する。一方、測定信号であるAスキャン信号はADボード201に入力され、k-clock生成部120で生成されたk-clockのクロックタイミング、例えば、k-clockの立ち上がりのタイミングで取り込まれてデジタル信号として演算処理部212に入力する。演算処理部212では、入力されたAトリガクロックのタイミング、例えば、Aトリガクロックの立ち上がりのタイミングで入力されたデジタル信号に変換したAスキャンデータ(デジタル処理前のAスキャン信号と区別するため、デジタル信号処理後のAスキャン信号をAスキャンデータと記載する)を断層像用の信号として取込み、記憶部203に記憶する。記憶された複数のAスキャンデータからBスキャン像が得られるのである。
【0071】
図8(b)は
図1におけるAトリガ生成部121及びk-clock生成部120の詳細を示した図である。上述のように、k-clockはAスキャン信号をADボードに取込むための信号であり、AトリガはAスキャンデータの演算処理部212への取込を開始するための信号である。ここで、Aトリガやサンプリングクロックであるk-clockの生成に関する以下で説明する構成は一例に過ぎず、ADボードへの取込みや演算処理部212への取込を開始できるクロック信号が生成可能であれば、他の構成で生成してもよい。
【0072】
図8(b)に示すように、Aトリガは波長掃引光源101の一部の光をFBG(Fiber Bragg Grating)に入力して生成する。FBGは特定の波長だけを反射する回折格子を持つファイバであり、波長掃引光源101が掃引する波長範囲にある予め設定した特定の波長の光のみ受光素子PDで検出することで、波長掃引毎に同じタイミング(同じ波長)の信号を得ることができる。この信号をコンパレータ210に入力することで、波長掃引毎に同じタイミングの矩形波が得られ、この矩形波をAトリガ信号としてAスキャンデータの演算処理部212への取込開始に用いるのである。また、k-clockは波長掃引光源101の一部の光をマッハツェンダ干渉系に入力し、得られた干渉光をバランス型受光素子BPDで受光し、コンパレータで矩形波に変換して生成する。k-clockの周波数はマッハツェンダ干渉系内の一方の光路中にあるディレイラインDを調整することで可変可能である。これも、マッハツェンダ干渉系に限ったものではなく、ミラーやプリズムなどを用いたマイケルソン干渉系を採用してもよい。このように、波長掃引光源101の光をマッハツェンダ干渉系などを用いることで、等光周波数間隔なクロックであるk-clockが生成できるのである。
【0073】
また、波長掃引光源101の波長掃引特性が時間に対して直線性を保証されているのであれば、上記のように波長掃引光源101の光と干渉系を用いないで、電気的な回路だけで(等時間間隔な)サンプリングクロックを生成して用いてもよい。さらに、たとえ直線性が保証されていない場合でも、リスケーリングなどの補正処理を行えば、電気的な回路だけで生成したサンプリングクロックを採用することが可能である。
【0074】
図9は、本発明にかかる、Aトリガ、k-clock及び干渉信号(Aスキャン信号)のタイミングチャートである。Aトリガの立ち上がりでAスキャン信号の演算処理部212へのサンプリング(取込み)が開始され、k-clockの立ち上がりのタイミングで予め決められた所定のAスキャン信号の範囲を取り込むようになっている。矢印で示された範囲のAスキャン信号から取得した複数のAスキャンデータを演算処理部212内で画像処理などを実施してBスキャン断層像や3D断層像を取得し、モニタなどの表示部に表示されるのである。
【0075】
ところが、Aトリガやk-clockのタイミングは常に一定ではない。つまり、波長掃引光源101の波長掃引には揺らぎが存在するため、その光源を用いて生成したAトリガやk-clockのタイミングにも揺らぎが存在する。
【0076】
図10はAトリガの揺らぎによる演算処理部212内に取り込まれるAスキャンデータの影響の一例を説明した図である。(a)はAトリガの立ち上がりのタイミングとk-clockのタイミングが一定の場合のそれぞれのタイミングチャートを示す。Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりの時間差ΔT1及びΔT2が同じであるため、随時取り込まれるAスキャンデータ(n)、Aスキャンデータ(n+1)・・・の取込み開始タイミングが一定であり、各Aスキャンデータ間には位相ずれが抑制される。そのため、取り込まれた複数のAスキャンデータからなるBスキャン像も位相ずれが抑制され、Bスキャン像をフーリエ変換することで、鮮明なBスキャン断層像が得られるのである。そして、複数のBスキャン断層像からなる3D断層像も結果的に鮮明なものが取得できるのである。
【0077】
図10(b)はAトリガの立ち上がりのタイミングとk-clockのタイミングがずれた場合のそれぞれのタイミングチャートを示す。Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりの時間差(図では、ΔT1とΔT2など)が異なるため、随時取り込まれるAスキャンデータ(n)、Aスキャンデータ(n+1)・・・の取込み開始タイミングにずれが生じ、各Aスキャンデータ間に位相ずれは生じる。
図10(b)から取り込まれるAスキャンデータ(n)とAスキャンデータ(n+1)に位相ずれが生じていることがわかる。そのため、取り込まれた複数のAスキャンデータからなるBスキャン像にも位相ずれが生じ、Bスキャン像をフーリエ変換すると、鮮明なBスキャン断層像が得られない恐れがある。
【0078】
ここで、
図11を参照して、取り込まれるAスキャン信号について説明する。
図11(a)のように、Aスキャン信号は被測定物(例えば、眼底部)の干渉信号(測定干渉光学系から取得した干渉信号)に、例えば受光素子部における光の反射などで生じる、いわゆる固定パターンノイズ(FPN)の周波数信号が合わさった信号となる。上述のように、固定パターンノイズを含んだ干渉信号を取込み、フーリエを行い、Bスキャン断層像を取得すると、
図11(b)に示すように、一定の深さ位置に固定パターンノイズに起因する固定パターンノイズ像が現れる。
【0079】
ところが、上述の
図10(b)で説明したように、Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定でないと、取込んだAスキャン信号の中の固定パターンノイズにも位相ずれが生じる。
図12は取込んだAスキャンデータの中のFPNデータを示したものである。
図12(a)はAトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定で、各Aスキャンデータの位置ずれ(位相ずれ)がない場合で、
図12(b)はAトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定でなく、各Aスキャンデータの位置ずれ(位相ずれ)がある場合の各FPNデータを加算平均したFPNデータを示す。
【0080】
各Aスキャンデータを加算平均すると、測定干渉データはAスキャンデータ毎に異なるためキャンセルされ、加算平均後のデータは固定パターンノイズ(FPN)データのみのデータが得られる。Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定の場合は、加算平均のFPNデータ(a)は各Aスキャンデータの中のFPNデータと同じであるため、各Aスキャンデータに対して加算平均のFPNデータ(a)を差し引くと、FPNは完全に除去され、Bスキャン断層像1201のように、FPNのない断層像が得られる。ところが、Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定でない場合は、加算平均のFPNデータ(b)は各Aスキャンデータの中のFPNデータと異なるため、各Aスキャンデータに対して加算平均のFPNデータ(b)を差し引いても、Bスキャン断層像1202のように、FPNが残る。
【0081】
そこで、Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定になるように、Aトリガのディレイライン211(
図8)を制御する。逆に言えば、上述で説明したFPN評価値が所定の値以下になる(ステップ308)ようにAトリガのディレイライン211を制御する(ステップ314)ことで、Aトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりのタイミングが一定になり、FPNのないBスキャン断層像が得られるのである。
【0082】
図13はモニタに表示されるFPN除去前のBスキャン断層像1303とFPN除去後のBスキャン断層像1304を示したもので、切替ボタン(図中のFPN除去1304と戻り1305)により、モニタに表示するBスキャン断層像を切替できるようにした一例を示したものである。例えば、最初の画面1301にはFPN除去前のBスキャン断層像1303を表示し、FPN除去ボタン1304を押すと、FPN除去が実施され、FPN除去後の画面1302が表示される。この画面で戻りボタン1305を押すと、FPN除去前の画面1301に切り替わるようになっている。
【0083】
図14はモニタ画面1401にFPN除去前のBスキャン断層像1402とFPN除去後のBスキャン断層像1403を同時に表示するようにした一例を示したものである。同時に表示することにより、上述の
図13の場合に比べ、FPN除去前のBスキャン断層像1402とFPN除去後のBスキャン断層像1403の比較が容易にできる。戻りボタン1404は、例えば通常画面に戻るためのボタンである。
【0084】
図13や
図14のように、FPN除去前のBスキャン断層像とFPN除去後のBスキャン断層像を比較可能にすることにより、FPN除去後のBスキャン断層像を評価できる。例えば、FPN除去後のBスキャン断層像に表示されている画像中にノイズらしきものが存在している場合、それがノイズなのかそれとも被測定物の像なのか判断可能になる。また、固定パターンノイズが被測定物の像付近に存在する場合、FPN除去により被測定物の像まで除去してしまうこともある。この場合、FPN除去前のBスキャン断層像とFPN除去後のBスキャン断層像を比較することで、その判断が可能になるのである。
【0085】
上記のように、FPN除去前のBスキャン断層像とFPN除去後のBスキャン断層像を比較した結果、FPN除去が未完全であったり、また、被測定物の像まで除去してしまっている場合の対処方法として、FPN評価値の判断基準を変更したり、又は、FPN除去方法の変更が考えられる。
図15にその一例を示す。FPN評価値ボタン(+ボタンとーボタン)1504はステップ308でFPN評価値を判定する所定値を変更するためのボタンである。+ボタンとーボタンでFPN評価値を判定する所定値を変更できる。さらに、FPN除去方法ボタン1505は、FPN除去方法を変更するためのボタンで、上記実施例では、各Aスキャンデータのデータ値の平均値を算出して、平均Aスキャンデータを求めて、元の各Aスキャンデータから平均Aスキャンデータを差し引いてFPN除去を実施しているが、他の方法も実施できるようにこのボタンで選択できるようになる。他の方法の一例としては、各Aスキャンデータのデータ値のメディアン(中央値)を算出して、中央値Aスキャンデータを求めて、元の各Aスキャンデータから中央値Aスキャンデータを差し引く方法も用いてもよい。
図15では、FPN評価値ボタン1504とFPN除去方法ボタン1505を同一画面に両方備えているが、これも、必ずしも両方必要なわけではなく、いずれか1つであってもよい。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0087】
上記実施例では、FPN評価値を算出し、FPN評価値が所定の値以下になるようにAトリガのディレイライン211を制御してAトリガのタイミングを調整しているが、FPN評価値を必ずしも求める必要はない。例えば
図10に示すAトリガの立ち上がりとk-clockの立ち上がりの時間差ΔT(ΔT1やΔT2)を直接検出して、時間差ΔTが一定になるようにAトリガのディレイライン211を制御してもよい。
【0088】
また、上記実施例ではAトリガのディレイライン211を制御しているが、k-clock生成部120内のディレイDを調整してk-clockの周波数を制御してもよいし、さらに、k-clock生成部120内にディレイラインを設けて、ディレイラインを制御してk-clockのタイミングを調整してもよいし、Aトリガの制御とk-clockの制御を組み合わせて実施することも可能である。Aトリガの制御とk-clockの制御を組み合わせることにより、より厳密な制御が可能になる。
【0089】
また、操作フローは
図3で参照したものに限らない。例えば、
図16のように、まずCスキャンまで実施し、その後全てのAスキャンデータに対してFPN除去(ステップ1606)を実施し、FPN除去後全てのAスキャンデータをフーリエ変換し(ステップ1607)、全てのデータ(断層像データ)からFPN評価値を算出(ステップ1608)してもいい。この場合、一度にAトリガのディレイ制御を実施するため、
図3の方法に比べて短時間で実施可能となる共に、全ての断層像データからFPN評価値を算出するため、より精度の高いFPN除去が可能になる。