(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空打ち動作の1回当たりの空気放出量は、前記成分放出動作の1回当たりの空気放出量より小であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の香り成分放出方法。
前記成分放出動作を行う際、前記可動部材は、前記空気室の内容積を膨張させる方向に移動した後、前記空気室の内容積を収縮させる方向に移動することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の香り成分放出方法。
前記成分放出動作を行う際、前記可動部材は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に移動するときには、前記空気室の内容積を膨張させる方向に移動するときより、移動速度が速いことを特徴とする請求項5に記載の香り成分放出方法。
前記成分放出動作を行う際に前記リニアアクチュエータに印加される駆動電圧は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に前記可動部材を移動させるときには、前記空気室の内容積を膨張させる方向に前記可動部材を移動させるときより、時間的変化が大であることを特徴とする請求項6に記載の香り成分放出方法。
前記駆動電圧は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に前記可動部材を移動させるとき、および前記空気室の内容積を膨張させる方向に前記可動部材を移動させるときのいずれにおいても、時間的変化が直線的であることを特徴とする請求項7に記載の香り成分放出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の構成では、香りを放出した後も、空気室に香り成分が残るため、香り成分放出装置からいつまでも香りが発生するという問題点がある。また、香り成分を放出した後、別の香り成分を放出する際、香りが混ざってしまうことがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、香り成分を放出した以降の香りの不要な拡散を抑制することのできる香り成分放出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、
本発明は、放出口に連通する空気室と、前記空気室に成分供給口を介して連通し、香り成分を発生させる香り成分発生源が収容された発生源収容室
と、前記空気室において前記放出口から離間する壁面を構成する可動部材と、該可動部材を前記空気室の内容積が膨張する方向および収縮する方向に駆動して前記放出口から空気を放出させるリニアアクチュエータと、前記成分供給口を開閉するためのシャッター部材と、前記シャッター部材を駆動して前記成分供給口を開閉するシャッター部材駆動装置と、
を有する香り成分放出装置における香り成分放出方法であって、前記発生源収容室が複数設けられているとともに、前記成分供給口は、前記複数の発生源収容室の各々が前記空気室と個別に連通可能に複数設けられ、前記複数の発生源収容室には、少なくとも、前記香り成分発生源として、第1香り成分発生源が収容された発生源収容室と、前記第1香り成分発生源とは異なる第2香り成分発生源が収容された発生源収容室とが含まれており、前記複数の発生源収容室のうち、前記第1香り成分発生源が収容された発生源収容室に対応する前記成分供給口を開状態にした状態で、前記リニアアクチュエータが前記可動部材を駆動して前記放出口から空気とともに前記第1香り成分を放出する前回の成分放出動作と、前記第2香り成分発生源が収容された発生源収容室に対応する前記成分供給口を開状態にした状態で、前記リニアアクチュエータが前記可動部材を駆動して前記放出口から空気とともに前記第2香り成分を放出する今回の成分放出動作との間では、前記シャッター部材が
複数の前記成分供給口を閉状態にした状態で、前記リニアアクチュエータが前記可動部材を駆動して前記放出口から空気を放出する空打ち動作を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明において、成分放出動作では、シャッター部材が成分供給口を開状態とし、リニアアクチュエータが可動部材を駆動して空気室の内容積を収縮させると、発生源収容室で香り成分発生源から発生した香り成分が空気室に引き込まれる結果、香り成分が空気とともに放出口から放出される。また、成分放出動作を行った後、シャッター部材によって成分供給口を閉状態とし、この状態で、空打ち動作を行う。このため、空気室に残っていた香り成分を減らすことができる。従って、香り成分を放出した以降の香りの不要な拡散を抑制することができる。
それ故、第1香り成分発生源から発生した香りを放出した前回の成分放出動作の後、第2香り成分発生源から発生した香りを放出する今回の成分放出動作を行う前に空打ち動作を行うことにより、今回の成分放出動作において、第1香り成分発生源から発生した香りが混ざることを抑制することができる。
【0008】
本発明において、前回の前記成分放出動作と今回の前記成分放出動作との間において、前記空打ち動作を複数回、行うことが好ましい。かかる構成によれば、空気室に残っていた香り成分をより減らすことができるので、成分放出動作を行った以降、香りの不要な拡散をより抑制することができる。
【0009】
本発明において、
前記複数の発生源収容室は、前記空気室のうち、前記放出口側に位置する空気通路の周りで仕切り壁を介して周方向で隣り合うように配置され、前記複数の発生源収容室は各々、前記空気通路の径方向で前記成分供給口を介して前記空気通路と連通可能である態様を採用することができる。
【0010】
本発明では、前記空打ち動作の1回当たりの空気放出量は、前記成分放出動作の1回当たりの空気放出量より小であることが好ましい。かかる構成によれば、空打ちの空気流が遠くまで届くことを抑制することができる。また、空打ち時の動作音も減少できる。
【0011】
本発明において、前記成分放出動作を行う際、前記可動部材は、前記空気室の内容積を膨張させる方向に移動した後、前記空気室の内容積を収縮させる方向に移動することが好ましい。かかる構成によれば、空気を勢いよく放出することができるとともに、香り成分を多量に放出することができる。この場合、前記成分放出動作を行う際、前記可動部材は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に移動するときには、前記空気室の内容積を膨張させる方向に移動するときより、移動速度が速いことが好ましい。かかる構成によれば、空気を勢いよく放出することができるとともに、香り成分を多量に放出することができる。例えば、前記成分放出動作を行う際に前記電磁リニアアクチュエータに印加される駆動電圧は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に前記可動部材を移動させるときには、前記空気室の内容積を膨張させる方向に前記可動部材を移動させるときより、時間的変化が大であることが好ましい。また、前記駆動電圧は、前記空気室の内容積を収縮させる方向に前記可動部材を移動させるとき、および前記空気室の内容積を膨張させる方向に前記可動部材を移動させるときのいずれにおいても、時間的変化が直線的であることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記空気を前記放出口から環状の渦輪として放出することが好ましい。かかる構成によれば、香り成分を含む空気を遠くまで放出することができる。
【0013】
本発明において、前記香り成分発生源は、固形状であることが好ましい。かかる構成によれば、香り成分発生源の取り扱いが容易である。
【0014】
本発明において、前記可動部材および前記リニアアクチュエータは、スピーカーとして構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、1台で音声の再生と香り成分の放出とを行うことができる。
【0015】
前記空気室、前記発生源収容室、前記可動部材、前記リニアアクチュエータ、前記シャッター部材、および前記シャッター部材駆動装置をアミューズメント機器に搭載し、前記アミューズメント機器から香り成分を放出する構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、成分放出動作では、シャッター部材が成分供給口を開状態とし、リニアアクチュエータが可動部材を駆動して空気室の内容積を収縮させると、発生源収容室で香り成分発生源から発生した香り成分が空気室に引き込まれる結果、香り成分が空気とともに放出口から放出される。また、成分放出動作を行った後、シャッター部材によって成分供給口を閉状態とし、この状態で、空打ち動作を行う。このため、空気室に残っていた香り成分を減らすことができる。従って、香り成分を放出した以降の香りの不要な拡散を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の香り成分放出装置および香り成分放出方法を説明する。なお、以下に説明する香り成分放出装置を配置する際、その向きが限定されているものではないが、以下の説明では、便宜上、放出口が向いている側(空気および香り成分が放出される側)を「前側」とし、放出口が向いている側とは反対側を「後側」として説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した香り成分放出装置を放出口の側からみた説明図であり、
図1(a)、(b)、(c)は、香り成分放出装置の斜視図、ケース部材を取り外した状態の分解斜視図、およびさらにリニアアクチュエータ等を取り外した状態の分解斜視図である。
図2は、本発明を適用した香り成分放出装置を放出口とは反対側からみた説明図であり、
図2(a)、(b)、(c)は、香り成分放出装置の斜視図、リニアアクチュエータ等を取り外した状態の分解斜視図、およびさらにケース部材等を取り外した状態の分解斜視図である。
図3は、本発明を適用した香り成分放出装置の断面構成を示す説明図であり、
図3(a)、(b)、(c)は、香り成分放出装置の断面図、ケース部材を取り外した状態の断面図、および放出口を拡大して示す断面図である。
【0020】
図1、
図2および
図3に示す香り成分放出装置1は、香り成分(放出成分)を含む空気を環状の渦輪Aとして放出する空気砲である。香り成分放出装置1は、ケース部材3および隔壁部材4からなるハウジング部材10を有しており、ケース部材3と隔壁部材4との間には、香り成分(放出成分)を発生させる香り成分発生源17が収容されている。本形態において、香り成分発生源17は、複数配置されており、かかる複数の香り成分発生源17は、後述する複数の発生源収容室19の各々に配置されている。
【0021】
香り成分発生源17は、香り成分を樹脂等と一緒に成形した固形状であり、発生源収容室19の内部で気体状の香り成分を発生させる。本形態において、香り成分発生源17は、複数配置されており、複数の香り成分発生源17は、形状やサイズが同一の板状である
。なお、固形状の香り成分発生源17としては、多孔性部材に香り成分を充填したものを用いてもよいし、香り成分を有するセルロースであってもよい。
【0022】
香り成分放出装置1は、ハウジング部材10の後側に、環状のスペーサ12と、スペーサ12を介してハウジング部材10に外周部分がボルト14によって固定された可動部材5と、可動部材5の中央部分を前後方向に駆動するリニアアクチュエータ6とを順に有している。以下、可動部材5の中央部分を通って前後方向に延在する線を軸線Lとして説明する。なお、軸線L方向の前側にはL1を付し、軸線L方向の後側にはL2を付してある。
【0023】
ハウジング部材10において、ケース部材3は、中央に円形の放出口30が形成された前板部31と、前板部31の外縁から後側L2に突出した胴部32とを有している。本形態において、放出口30は、軸線L上で前板部31に形成された穴からなり、放出口30の前縁は、ハウジング部材10の前面(前板部31の前面)から前側L1に突出していない。なお、放出口30の内周面には、周方向に延在する周溝33(
図3(c)参照)が全周にわたって形成されている。
【0024】
このように構成したケース部材3において、胴部32にスペーサ12を介して可動部材5を固定すると、ケース部材3と可動部材5との間には、放出口30に連通する空気室15が構成され、可動部材5は、放出口30から離間する位置で空気室15の後側L2の壁面を構成する。従って、放出口30と可動部材5とは、空気室15を介して前後方向(リニアアクチュエータ6による駆動方向)で対向する。
【0025】
図3に示すように、可動部材5およびリニアアクチュエータ6はスピーカー50として構成されている。すなわち、可動部材5は、円錐面を有しており、円錐面は、スピーカー50のコーン51からなる。コーン51の後側にはダンパー56が構成されている。また、可動部材5の後端部には、リニアアクチュエータ6のボイスコイル61が設けられており、ボイスコイル61の周りにはリニアアクチュエータ6の磁石62が設けられている。つまり、リニアアクチュエータ6は、電磁式のリニアアクチュエータ6である。このため、ボイスコイル61に駆動電流を供給すると、可動部材5の中央部分は、前側L1および後側L2に駆動される。従って、可動部材5は、リニアアクチュエータ6によって前側L1(放出口30に接近する方向)に駆動されると、空気室15を収縮させ、後側L2(放出口30から離間する方向)に駆動されると、空気室15を膨張させる。なお、リニアアクチュエータ6は、ピエゾ素子からなるリニアアクチュエータであってもよい。
【0026】
(発生源収容室19等の構成)
図4は、本発明を適用した香り成分放出装置1のハウジング部材10等を放出口の側からみた説明図であり、
図4(a)、(b)は、ケース部材3と隔壁部材4とを分離させた状態の分解斜視図、およびさらにシャッター部材等を分離させた状態の分解斜視図である。
図5は、本発明を適用した香り成分放出装置1のハウジング部材10等を放出口とは反対側からみた説明図であり、
図5(a)、(b)は、ケース部材3と隔壁部材4とを分離させた状態の分解斜視図、およびさらにシャッター部材等を分離させた状態の分解斜視図である。
【0027】
図4および
図5において、ハウジング部材10は、隔壁11を有しており、かかる隔壁11によって、ハウジング部材10の内側には、空気室15と仕切られた発生源収容室19が区画されている。隔壁11は、放出口30と可動部材5とを対向させる穴110が形成された筒状隔壁部111と、筒状隔壁部111から径方向外側に延在する板状隔壁部112とを備えており、筒状隔壁部111の径方向外側において板状隔壁部112に対して放出口30が位置する前側L1に発生源収容室19が設けられている。
【0028】
筒状隔壁部111には、発生源収容室19と空気室15とを連通させる成分供給口118が形成されている。本形態において、筒状隔壁部111の径方向外側には周方向に複数の発生源収容室19が区画されている。このため、隔壁11は、周方向で隣り合う発生源収容室19同士を仕切る仕切り壁113を有しており、筒状隔壁部111には、周方向で離間する複数個所に、複数の発生源収容室19を各々、空気室15と連通させる複数の成分供給口118が形成されている。本形態において、筒状隔壁部111の径方向外側には周方向に4つの発生源収容室19が区画されているため、筒状隔壁部111には周方向の4個所に成分供給口118が形成されている。
【0029】
ここで、4つの発生源収容室19は、周方向で等角度間隔に形成されており、4つの発生源収容室19には、1つおきに、同一種類の香り成分を発生させる香り成分発生源17(
図1参照)が配置されている。すなわち、4つの香り成分発生源17は、周方向において、第1香りを発生させる第1香り成分発生源17a、第1香りと異なる第2香りを発生させる第2香り成分発生源17b、第1香りを発生させる第1香り成分発生源17a、および第2香りを発生させる第2香り成分発生源17bが順に配置されている。
【0030】
本形態において、隔壁11は、ハウジング部材10を構成するケース部材3と隔壁部材4とによって構成されている。より具体的には、
図4に示すように、隔壁部材4は、中央に穴110が形成された板状隔壁部112を構成する底板部41と、底板部41の内縁から前側L1に突出して筒状隔壁部111の一部を構成する円環状凸部42と、底板部41の外縁から前側L1に突出した側板部43とを有しており、円環状凸部42の内側は、空気室15の一部を構成している。
【0031】
底板部41の前側L1の面には、円環状凸部42の周方向の4箇所から径方向外側に向けて突出した凸部44が形成されており、かかる凸部44には、成分供給口118の一部を構成する溝45が形成されている。また、底板部41の前側L1の面には、凸部44に対して周方向でずれた4箇所で円環状凸部42と側板部43とを直線的に繋いで仕切り壁113の一部を構成する板状の凸部46が形成されている。
【0032】
また、
図5に示すように、ケース部材3の前板部31の後側L2の面には、隔壁部材4の側板部43に径方向内側で重なる側板部313が形成されており、側板部313に対して隔壁部材4がネジ(図示せず)によって固定されている。また、ケース部材3の前板部31の後側L2の面には、放出口30の内縁から後側L2に突出した内側円環状凸部312が形成されており、かかる内側円環状凸部312は、隔壁部材4の円環状凸部42と重なって円環状凸部42とともに筒状隔壁部111を構成している。ここで、ケース部材3の前板部31の後側L2の面には、内側円環状凸部312の周方向の4箇所から径方向外側に向けて突出した凸部314が形成されており、かかる凸部314には溝315が形成されている。かかる凸部314は、ケース部材3の前板部31の後側L2の面に隔壁部材4を固定した際、隔壁部材4の凸部44と重なる。その結果、溝315と凸部44の溝45とが重なって成分供給口118が構成される。
【0033】
また、ケース部材3の前板部31の後側L2の面には、凸部314に対して周方向でずれた4箇所で内側円環状凸部312と側板部313とを直線的に繋ぐ板状の凸部316が形成されており、かかる凸部316は、ケース部材3の前板部31の後側L2の面に隔壁部材4を固定した際、隔壁部材4の凸部46と重なって仕切り壁113を構成している。ここで、凸部316の後側L2の面には溝319が形成されており、隔壁部材4の板状の凸部46が嵌っている。このため、仕切り壁113(封止部分)では封止性能が高い。また、溝319の内部にはグリスまたはオイルからなる封止材G(
図5(b)参照)が塗布されている。このため、仕切り壁113(封止部分)を介して、香り成分が漏れることを
防止することができるので、異なる香り成分が混ざることを防止することができる。
【0034】
なお、ケース部材3の前板部31の後側L2の面には、周方向で隣り合う凸部316の間には、
図1等に示す香り成分発生源17を支持する凸部317が2つずつ形成されている。
【0035】
(シャッター部材8およびシャッター部材駆動装置9の構成)
本形態の香り成分放出装置1では、成分供給口118を開閉するためのシャッター部材8と、シャッター部材8を駆動して成分供給口118を開閉するシャッター部材駆動装置9とが設けられている。本形態において、シャッター部材8は、筒状隔壁部111の内側で周方向に延在する円筒状の筒部81と、筒部81の後側L2の端部で拡径する略円形のフランジ部82とを有しており、フランジ部82は、隔壁部材4の底板部41の後側L2の面に重なっている。このため、シャッター部材8は、前側L1の移動が阻止されている。また、筒部81の外径は、筒状隔壁部111の内径と略等しく、シャッター部材8は、筒部81が筒状隔壁部111の内面に摺動することによって軸線L周りに回転可能である。かかるシャッター部材8では、筒部81の内側は、空気室15の一部になっており、空気室15において放出口30から空気が放出される際の空気通路となる。
【0036】
シャッター部材8の筒部81には、成分供給口118を開状態とする切り欠き83が形成されている。ここで、成分供給口118は、周方向の4箇所に形成されており、シャッター部材8は、4つの成分供給口118を選択的に開閉する。但し、4つの発生源収容室19には、周方向において、第1香り成分発生源17a、第2香り成分発生源17b、第1香り成分発生源17a、および第2香り成分発生源17bが順に配置されていることから、シャッター部材8は、同一の香り成分発生源に対応する2つの成分供給口118を同時に開閉する。このため、シャッター部材8において、切り欠き83は、周方向において等角度間隔の2個所に形成されている。ここで、切り欠き83の周方向の中央部分には、フランジ部82から放出口30の内側まで突出して先端が周溝33内に向けて突出した係合爪84が形成されている。このため、シャッター部材8は、簡素な構成で後側L2の移動が阻止されている。また、筒部81には、2つのスリットによって挟まれた個所にも、フランジ部82から放出口30の内側まで突出して先端が周溝33内に向けて突出した係合爪84が形成されている。
【0037】
なお、フランジ部82には、周方向に延在する切り欠き825が約90°の角度範囲にわたって形成され、かかる切り欠き825の内側には、隔壁部材4の底板部41から後側L2に突出したストッパ用凸部415が嵌っている。このため、シャッター部材8が回転可能な角度範囲は約90°である。
【0038】
このように構成したシャッター部材8に対しては、必要に応じて、筒状隔壁部111との間にグリスまたはオイルからなる封止材(図示せず)を塗布し、香り成分の漏れを抑制する。
【0039】
シャッター部材駆動装置9は、隔壁部材4の底板部41(板状隔壁部112)の後側L2に設けられている。本形態において、シャッター部材駆動装置9は、隔壁部材4の凸部411に固定されたモータ91と、モータピニオン911に噛合する大径歯車921を備えた減速歯車92とを有しており、減速歯車92の小径歯車922は、シャッター部材8のフランジ部82の外周面に形成された歯車820と噛合している。減速歯車92は、隔壁部材4の底板部41の後側L2の面に形成された支軸412に回転可能に支持されている。本形態において、モータ91は、ステッピングモータからなる。
【0040】
(香り成分放出方法)
図6は、本発明を適用した香り成分放出装置において、リニアアクチュエータに印加される駆動電圧の説明図である。本形態の香り成分放出装置1を用いた香り成分放出方法では、シャッター部材8が成分供給口118を開状態にした状態で、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して放出口30から空気とともに香り成分発生源17から発生した香り成分を放出する成分放出動作を行った後、シャッター部材8が成分供給口118を閉状態にした状態で、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して放出口30から空気を放出する空打ち動作を行う。
【0041】
より具体的には、まず、待機状態では、4つの成分供給口118はいずれもシャッター部材8によって閉状態にある。また、4つの発生源収容室19の内部では、香り成分発生源17を収容しても隙間が空いているので、発生源収容室19の内部では、香り成分発生源17から香り成分が発生している。
【0042】
次に、第1香り成分を放出する第1成分放出動作では、シャッター部材8を駆動して、第1香り成分発生源17aが収容されている発生源収容室19と空気室15とを連通させる成分供給口118を開状態とする。この状態で、第2香り成分発生源17bが収容されている発生源収容室19と空気室15とを連通させる成分供給口118は閉状態にある。
【0043】
次に、リニアアクチュエータ6は、可動部材5の中央部分を後側L2に駆動する。その結果、空気室15の内容積が膨張するので、第1香り成分発生源17aが収容されている発生源収容室19から第1香り成分が空気室15に引き込まれる。
【0044】
次に、リニアアクチュエータ6は、可動部材5の中央部分を前側L1に駆動する。その結果、空気室15の内容積が収縮するので、空気室15の空気は、第1香り成分とともに、筒状隔壁部111の内側(シャッター部材8の筒部81の内側)を通って放出口30から放出される。また、成分供給口118の内側を通過する気流によって、第1香り成分発生源17aが収容されている発生源収容室19から第1香り成分が引き込まれ、空気とともに放出口30から放出される。かかる第1成分放出動作では、空気とともに第1香り成分を放出する動作を1回、あるいは連続して複数回行う。
【0045】
その際、空気流は軸線Lに沿って流れる。その際、空気流は、径方向外側では筒状隔壁部111の内側(シャッター部材8の筒部81の内側)や放出口30との間の抵抗を受けて流速が低いのに対して、径方向内側では流速が高い。しかも、放出口30の前縁は、ハウジング部材10の前面(前板部31の前面)から前側L1に突出しておらず、放出口30の内周面は、軸線L方向の寸法が短いため、空気流と放出口30との間の抵抗が小さい。このため、放出された空気は、
図1に矢印A1で示す渦を形成しながら放出される結果、空気は、環状の渦輪Aとして放出される。このため、指向性をもって遠くまで到達する。
【0046】
次に、空打ち動作を行う。具体的には、シャッター部材8が全ての成分供給口118を閉状態にした状態で、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して放出口30から空気を放出する。空打ち動作では、空気を放出する動作を1回、あるいは連続して複数回行う。ここで、空気室15に残る第1香り成分を除去するという観点からすれば、空打ち動作を連続して複数回行うことが好ましい。
【0047】
次に、第2香り成分を放出する第2成分放出動作では、シャッター部材8を駆動して、第2香り成分発生源17bが収容されている発生源収容室19と空気室15とを連通させる成分供給口118を開状態とする。この状態で、第1香り成分発生源17aが収容されている発生源収容室19と空気室15とを連通させる成分供給口118を閉状態とする。
【0048】
次に、リニアアクチュエータ6は、可動部材5の中央部分を後側L2に駆動した後、可動部材5の中央部分を前側L1に駆動する。その結果、空気室15の内容積が膨張した後に収縮するので、空気室15の空気は、第2香り成分とともに、筒状隔壁部111の内側(シャッター部材8の筒部81の内側)を通って放出口30から放出される。また、成分供給口118の内側を通過する気流によって、第2香り成分発生源17bが収容されている発生源収容室19から第2香り成分が引き込まれ、空気とともに放出口30から放出される。かかる第2成分放出動作では、空気とともに第1香り成分を放出する動作を1回、あるいは連続して複数回行う。
【0049】
次に、空打ち動作を行う。具体的には、シャッター部材8が全ての成分供給口118を閉状態にした状態で、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して放出口30から空気を放出する。空打ち動作では、空気を放出する動作を1回、あるいは連続して複数回行う。ここで、空気室15に残る第2香り成分を除去するという観点からすれば、空打ち動作を連続して複数回行うことが好ましい。かかる成分供給口118の開閉を行うにあたって、本形態では、モータ91としてステッピングモータが用いられている。このため、切り欠き825の端部がストッパ用凸部415に当接した状態を原点位置とし、モータ91に対する駆動パルスのステップ数によってシャッター部材8の駆動を制御することができる。従って、センサ等を用いなくても、成分供給口118の開閉を正確に行うことができるので、成分放出装置1のコストを低く抑えることができる。
【0050】
このような香り成分放出方法において、空打ち動作の1回当たりの空気放出量は、成分放出動作の1回当たりの空気放出量より小である。例えば、空打ち動作の1回当たりの空気放出量は、成分放出動作の1回当たりの空気放出量の70%程度である。従って、空打ちの空気流が遠くまで届くことを抑制することができる。また、空打ち時の動作音も減少できる。
【0051】
また、成分放出動作を行う際、可動部材5は、空気室15の内容積を膨張させる方向に移動した後、空気室15の内容積を収縮させる方向に移動する。このため、空気を勢いよく放出することができるとともに、香り成分を多量に放出することができる。また、成分放出動作を行う際、可動部材5は、空気室15の内容積を収縮させる方向に移動するときには、空気室15の内容積を膨張させる方向に移動するときより、移動速度が速い。より具体的には成分放出動作を行う際にリニアアクチュエータ6に印加される駆動電圧は、
図6に示す波形を有している。
図6において、成分放出動作の1サイクルは、空気室15の内容積を膨張させる膨張区間T1、空気室15の内容積を収縮させる収縮区間T2、および空気室15の内容積を初期状態に戻す復帰区間T3が順に設定されている。ここで、空気室15の内容積を収縮させる方向に可動部材5を移動させる収縮区間T2では、空気室15の内容積を膨張させる方向に可動部材5を移動させる膨張区間T1より、駆動電圧の時間的変化が大であり、電圧が急峻に変化する。本形態において、駆動電圧は、膨張区間T1、収縮区間T2、および復帰区間T3のいずれにおいても、電圧値の時間的変化が直線的である。なお、成分放出動作を行う際、可動部材5は、空気室15の内容積を収縮させる方向のみに移動させ、空気の放出量を調整してもよい。また、待機状態から第1成分放出動作までの間に、空打ち動作を行ってもよい。すなわち、最初の動作時から空打ち−放出−空打ちを行ってもよい。また、膨張区間T1、収縮区間T2、および復帰区間T3のいずれか、あるいは全てにおいて、電圧値の時間的変化を曲線的にして空気の放出量を調整してもよい。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の香り成分放出装置1では、成分放出動作では、シャッター部材8が成分供給口118を開状態とし、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して空気室15の内容積を収縮させると、発生源収容室19で香り成分発生源17から発
生した香り成分が空気とともに放出口30から放出される。また、成分放出動作を行った後、シャッター部材8によって全ての成分供給口118を閉状態とし、この状態で、空打ち動作を行う。このため、空気室15に残っていた香り成分を減らすことができる。従って、香り成分を放出した以降の香りの不要な拡散を抑制することができる。
【0053】
また、第1香り成分発生源17aから発生した香りを放出する第1成分放出動作と、第2香り成分発生源17bから発生した香りを放出する第2成分放出動作との間で空打ち動作を行うため、第2香り成分発生源17bから発生した香りを放出する際、第1香り成分発生源17aから発生した香りが混ざることを抑制することができる。
【0054】
また、香り成分放出装置1では、シャッター部材8が成分供給口118を開状態としたときに、リニアアクチュエータ6が可動部材5を駆動して空気室15の内容積を収縮させると、発生源収容室19で香り成分発生源17から発生した気体状の香り成分(放出成分)が空気とともに放出口30から放出される。このため、空気通路に液状の香り成分を供給する場合と比較して、放出した空気に含まれる気体状の香り成分の量を制御することができる。また、シャッター部材8は、空気室15内で成分供給口118を開閉するため、香り成分放出装置1の小型化を図ることができる。
【0055】
また、放出口30と可動部材5とは、空気室15を介して対向し、リニアアクチュエータ6は、可動部材5を放出口30に接近する方向および放出口30から離間する方向に駆動して空気室15の内容積の膨張、および収縮を行う。このため、放出口30から空気を勢いよく放出することができる。また、空気は、放出口30から環状の渦輪Aとして放出される。このため、狙った方向に空気を遠くまで放出することができる。
【0056】
また、ハウジング部材10の隔壁11によって発生源収容室19と空気室15を区画している。また、隔壁11は、放出口30と可動部材5とを対向させる穴110が形成された筒状隔壁部111と、筒状隔壁部111から径方向外側に延在する板状隔壁部112とを備え、筒状隔壁部111の径方向外側において板状隔壁部112に対して放出口30が位置する側に発生源収容室19が設けられている。このため、ハウジング部材10の内部に空気室15、発生源収容室19、およびシャッター部材8を設けることができるので、香り成分放出装置1の小型化を図ることができるとともに、放出成分の放散や異種放出成分の混合を防ぐことができる。また、隔壁11は複数の発生源収容室19を形成しているため、複数種類の香り成分発生源17を設けることができる。
【0057】
また、シャッター部材駆動装置9は、板状隔壁部112(隔壁部材4)に支持されているため、シャッター部材駆動装置9をハウジング部材10の内部に設けることができる。従って、香り成分放出装置1の小型化を図ることができる。また、シャッター部材駆動装置9は、空気室15に配置されているため、シャッター部材駆動装置9を設ける場所を別途設ける必要がないので、香り成分放出装置1の小型化を図ることができる。
【0058】
また、香り成分発生源17は、固形状であるため、香り成分発生源17の取り扱いが容易である。また、一般的に固形状の成分発生源17は液体状の成分発生源と比較して、香りの持続時間が長いため、成分発生源17の交換の手間を抑えられるとともに、コストも低く抑えることができる。また、シャッター部材8と筒状隔壁部111との間にはグリスが塗布されている。また、ケース部材3と隔壁部材4とが重なった封止部分のうち、仕切り壁113を構成する部分では、隔壁部材4から突出した凸部46が、ケース部材3の凸部316に形成された溝319に嵌っている。また、溝319内にはグリスが塗布されている。従って、香り成分(放出成分)の漏れを抑制することができる。
【0059】
また、可動部材5は、外周端部が固定された振動板であって、リニアアクチュエータ6
は、可動部材5(振動板)の中央を放出口30に接近する方向および放出口30から離間する方向に駆動する。このため、可動部材5およびリニアアクチュエータ6によってスピーカーを構成することができる。従って、1台の香り成分放出装置1によって音声の再生と成分の放出とを行うことができる。
【0060】
[アミューズメント機器]
図7は、本発明を適用した香り成分放出装置1を搭載したアミューズメント機器の説明図である。本発明を適用した香り成分放出装置1は、例えば、
図7に示すパチンコ台等のアミューズメント機器100に1台あるいは複数台を搭載することができる。本発明におけるアミューズメント機器とは、パチンコ遊技機、アレンジボール遊技機、雀球遊技機、回胴式遊技機等の遊技場に設置される遊技機の他、アーケードゲームと呼ばれるゲームセンターや遊園地などのアミューズメントスポットに設置される業務用の遊技機を含む意味である。かかる構成によれば、遊技中に発生したイベントの内容や遊技者の指示によって、香りを遊技者に向けて放出することができる。このことによって、遊技者には、視覚や聴覚だけでなく、香りによる嗅覚や、渦輪による風圧による多彩な感覚を与えることができる。よって、遊技者は、さらに特別感や幸福感、驚きを得ながら遊技を楽しむことができる。その場合でも、成分放出装置1から出射される空気は指向性を有するため、隣の遊技者に空気が吹き付けられることを防止することができる。その際、渦輪を単発で発生させることもできるとともに、連発で発生させることもできる。さらに、渦輪の量を制御することで香りの量も制御できる。また、空打ち動作の1回当たりの空気放出量は、成分放出動作の1回当たりの空気放出量より小であり、遊技者に届かない程の空気放出量とすれば、遊戯者に無駄な演出を与えることを防止することができる。また、空打ち動作の1回当たりの空気放出量も成分放出動作の1回当たりの空気放出量と同じにして、遊技者に特別感や幸福感、驚きを与える演出として利用してもよい。
【0061】
また、本形態では、香り成分放出装置1に用いた可動部材5およびリニアアクチュエータ6はスピーカーとして構成されているため、アミューズメント機器100において、香り成分放出装置1から音声および空気を放出することができる。その際、香り成分放出装置1から音声の放出を休止するタイミングで空気を放出してもよいし、香り成分放出装置1から音声と空気を同時に放出してもよい。
【0062】
[放出成分の他の構成例]
上記実施の形態では、香り成分発生源17が固形状であったが、液状であってもよい。また、香り成分発生源17が液状である場合、放出成分をパック詰めやボトル詰めにして、発生源収容室19に収容してもよい。
【0063】
上記実施の形態では、発生源収容室19がハウジング部材10の内側に設けられていたが、発生源収容室19がハウジング部材10の外側に設けられていてもよい。
【0064】
また、香り成分放出装置1に揺動装置を設け、香り成分放出装置1を揺動させて香り成分放出装置1の向きを変えることにより、香り成分放出装置1からの空気の放出方向を切り換えてもよい。