【文献】
Homo sapiens mRNA for hypothetical protein LOC112476 variant,clone:FCC131H12,Accession no:GenBank:AK225785.1,2006年 7月22日,[online][retrived from internet],[検索日:2018/06/25],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AK225785.1/>
【文献】
American Journal of Medical Genetics Part A,2007年,143A,p.1462-1471
【文献】
The American Journal of Human Genetics,2012年,vol.90,p.152-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象の罹患した親又は血縁者にも存在するPRRT2遺伝子中の変化が前記対象にも存在することによって、前記対象において障害の可能性が非常に高いことを示す診断又は予測が確証される、請求項1に記載の方法。
発作障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象を特定する方法であって、前記対象において、PRRT2遺伝子中の変化の存在を検出するために、前記対象由来の生体試料についてアッセイを行うことを含み、
前記PRRT2遺伝子中の変化が、c.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A、及びc.950G>Aからなる群から選択され、前記PRRT2遺伝子中の変化が存在することによって、発作障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象として前記対象が特定され、前記発作障害が、良性家族性乳児てんかん(BFIE)、又は、乳児痙攣及び舞踏病アテトーゼ(ICCA)症候群である、前記方法。
対象の罹患した親又は血縁者にも存在するPRRT2遺伝子中の変化が前記対象にも存在することによって、発作障害になりやすい子孫をもつ可能性が非常に高い対象として前記対象が特定される、請求項3に記載の方法。
アッセイが、DNAシーケンシング、DNAハイブリダイゼーション、高速液体クロマトグラフィー、電気泳動アッセイ、SSCP分析、RNaseプロテクション、DGGE、酵素アッセイ、MLPA及びイムノアッセイからなる群から選択される、請求項1又は3に記載の方法。
PRRT2の変化が、両方ともPRRT2中のエキソン2中のフレームシフト変異であるc.629−630insC又はc.649−650insCである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
フレームシフト変異が、PRRT2遺伝子のコーディング配列の位置629のヌクレオチド残基の後ろに、シトシン(C)ヌクレオチド残基が挿入された結果であるc.629−630insCであり、前記PRRT2遺伝子のコーディング配列が配列番号9に記述される、請求項6に記載の方法。
フレームシフト変異が、配列番号2に記述されるアミノ酸配列からなるトランケートされたPRRT2ポリペプチド(p.P210fsX224)をコードする、請求項7に記載の方法。
フレームシフト変異が、PRRT2遺伝子のコーディング配列の位置649のヌクレオチド残基の後ろに、シトシン(C)ヌクレオチド残基が挿入された結果であるc.649−650insCであり、前記PRRT2遺伝子のコーディング配列が配列番号9に記述される、請求項6に記載の方法。
フレームシフト変異が、配列番号4に記述されるアミノ酸配列からなる、トランケートされたPRRT2ポリペプチド(p.R217fsX224)をコードする、請求項10に記載の方法。
PRRT2の変化が、両方ともPRRT2のイントロン2中のスプライス部位変異であるIVS2+1G>T又はIVS2+5G>Aである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
スプライス部位変異が、PRRT2のイントロン2の位置+1でのグアニン(G)からチミン(T)へのヌクレオチド置換の結果であるIVS2+1G>Tであり、イントロン2のヌクレオチド配列が配列番号11で表される、請求項12に記載の方法。
スプライス部位変異IVS2+5G>Aが、PRRT2のイントロン2の位置+5でのグアニン(G)からアデニン(A)へのヌクレオチド置換の結果であり、イントロン2のヌクレオチド配列が配列番号11で表される、請求項12に記載の方法。
変異c.950G>Aが、PRRT2遺伝子のコーディング配列の位置950でのグアニン(G)からアデニン(A)へのヌクレオチド置換の結果であり、前記PRRT2遺伝子のコーディング配列が配列番号9に記述される、請求項17に記載の方法。
ミスセンス変異が、アミノ酸位置317でのセリン(S)からアスパラギン(N)へのアミノ酸置換(p.S317N)を含むPRRT2ポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドが配列番号8に記述されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の方法。
PRRT2遺伝子のフラグメント又はその相補体を含む核酸プローブであって、前記核酸プローブがPRRT2配列中に変異を含む核酸分子を含み、前記変異が、c.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>Aからなる群から選択され、前記核酸プローブが、前記変異を含むPRRT2配列に特異的に結合する、前記核酸プローブ。
対象の発作障害を診断若しくは予測するための、又は発作障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象を特定するためのキットであって、前記対象のPRRT2遺伝子中の変化の存在について検査するための1又は2以上の構成要素を含み、
前記PRRT2遺伝子中の変化が、c.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A、及びc.950G>Aからなる群から選択され、前記PRRT2遺伝子中の変化が存在することによって、前記対象における発作障害の可能性が高いことを示し、前記発作障害が、良性家族性乳児てんかん(BFIE)、又は、乳児痙攣及び舞踏病アテトーゼ(ICCA)症候群であり、
前記1又は2以上の構成要素が、
請求項21〜26のいずれかに記載の核酸プローブ
からなる群から選択される、前記キット。
【発明を実施するための形態】
【0051】
前述のように、本発明者らは発作障害及び運動障害で変異した遺伝子を同定した。特に、良性家族性乳児てんかん(BFIE)をほぼ確実に罹患する若しくは罹患する可能性のある、又は乳児痙攣及び舞踏病アテトーゼ(ICCA)を罹患する家族からの罹患者の分析を通して、本発明者らは、コードされるPRRT2ポリペプチドに変化をもたらす又は変化をもたらす可能性がある、PRRT2遺伝子中の変異を特定した。
【0052】
PRRT2遺伝子に関する情報は、国立バイオテクノロジー情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov)のGenBankデータベースで見出すことができる。例えばヒトPRRT2の遺伝子ID番号は112476であり、このGenBank記録の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。PRRT2は、機能未知の340アミノ酸プロリンリッチ膜貫通タンパク質をコードする。ヒト組織のメッセンジャーRNA発現データ(ensembl)によって、主として脳でのPRRT2の発現が示され、大脳皮質及び小脳で高発現しており(GeneNote)、この発現は、BFIE、及びICCAの症状発現である発作性運動誘発性舞踏病アテトーゼ(PKC)の臨床的発現と関連している可能性が高い。その生物学的役割への手がかりは酵母ツーハイブリッド試験によるものであり、これは、PRRT2がシナプトソーム関連タンパク質25Da(SNAP25)と相互作用することを示すものである。SNAP25は、シナプス小胞からの神経伝達物質放出に関与するシナプス前原形質膜結合タンパク質である。理論に拘束されることを望むものではないが、その結合パートナーであるPRRT2は、このプロセスを調節する可能性がある。
【0053】
本発明者らは、BFIEを罹患する家族及びICCAを罹患する家族で5つの異なるPRRT2変異を特定した。さらに本発明者らは、散発性乳児発作を罹患する個体においてPRRT2中のデノボ変異を特定した。まとめると、変異は以下を含む:
− 2つのフレームシフト変異、すなわち(配列番号1及び2によって代表される)c.629−630insC、p.P210fsX224及び(配列番号3及び4によって代表される)c.649−650insC、p.R217fsX224、
− タンパク質トランケーションを引き起こすことがそれぞれ予想される(
図2を参照されたい)、2つのスプライス部位変異、すなわち(配列番号5によって代表される)IVS2+1G>T及び(配列番号6によって代表される)IVS2+5G>A、並びに
− ミスセンス変異、すなわち(配列番号7及び8によって代表される)c.950G>A、S317Nであって、ヒトからゼブラフィッシュまで進化的に保存されている膜貫通ドメイン中のアミノ酸残基を変化させ、このタンパク質は脊椎動物のみに見出される、ミスセンス変異。各変異の種類の決定では、野生型のPRRT2ヌクレオチド及びアミノ酸配列に対して配列比較を行った。野生型のPRRT2ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれGenBank Accession No. NM_145239及びNP_660282に包含され、配列番号9、10及び11に記述される(説明のために表1を参照されたい)。
【0054】
したがって本発明は、上記で特定したものを含めたPRRT2中の変化/変異の存在の検査に基づく、(BFIE並びに他の新生児及び乳児てんかんを含めた)てんかん及びICCAなどの発作障害及び運動障害を診断又は予測する方法を可能にする。
【0055】
したがって第一の態様では、本発明は、対象の、発作及び/又は運動障害を診断又は予測する方法であって、前記対象の、PRRT2遺伝子中の変化の存在について検査することを含む方法を提供する。
【0056】
本明細書で使用する場合、単語「診断」は、疾患、障害若しくは状態を識別すること若しくは特定すること、又は特定の疾患、障害若しくは状態を罹患する対象を識別すること若しくは特定することを指す。本明細書で使用する用語「予測」は、変化が、特定の疾患、障害又は状態の発生に関して有するほぼ確実な転帰の予想を指す。今回は、疾患、障害又は状態は発作及び/又は運動障害である。
【0057】
本発明をヒト「対象」と関連して記載してきたが、本発明はそのようには限定されない。したがって本明細書で使用する場合、用語「対象」は、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、ブタ、げっ歯類並びに発作障害及び/又は運動障害を示すことが知られているいかなる他の動物も含めた、いかなる動物も(例えば哺乳動物)指すと解釈されるべきである。したがって、ヒトPRRT2ヌクレオチド及びアミノ酸配列について本明細書で言及してきたが、本発明の方法はヒトに限定されないことを理解されたい。様々な種の関連するPRRT2の核酸及びアミノ酸配列の詳細は、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov)及びUniProt(www.uniprot.org)データベースから容易にアクセスすることができる。例えば、マウスPRRT2の遺伝子ID番号は69017であり、マウスPRRT2のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれGenBank Accession No. NM_001102563.1及びNP_001096033に包含される。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「発作障害」は、結果が中枢神経系中のニューロン集団の異常な興奮によって引き起こされる突発性の行動の変化である障害を意味すると解釈される。これは、様々な程度の不随意性筋収縮をもたらし、意識消失をもたらすことが多い。発作障害の例としては、これらに限定されないが、(乳児てんかん、例えば良性家族性乳児てんかん−BFIEを含めた)てんかんが挙げられる。全てのてんかん性症候群に共通しているただ1つの特色は、不定期且つ予測不可能に発作として発現するニューロンの興奮性が持続的に増大することである。本明細書で使用する用語「運動障害」は、運動制御及び筋緊張に影響を及ぼす神経学的な状態を指すと解釈される。運動障害の例としては、これらに限定されないが、(本明細書で発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)とも呼ぶ発作性運動誘発性舞踏病アテトーゼ(PKC)を含めた)ジスキネジア、パーキンソン症候群、ジストニア、ミオクローヌス、舞踏病、チック及び振戦が挙げられる。障害の中には、発作障害及び運動障害の両方を構成すると見なすことができるものもある。例としては、乳児痙攣及び舞踏病アテトーゼ(ICCA)症候群が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用する場合、PRRT2中の「変化」又は「変異」という用語は、同義であると解釈される。すなわち、PRRT2中の「変化」又は「変異」は、野生型PRRT2のヌクレオチド若しくはアミノ酸配列、又は発作若しくは運動障害を罹患していない個体のPRRT2のヌクレオチド若しくはアミノ酸配列と比較した場合の、PRRT2のヌクレオチド又はアミノ酸配列中の変化に対する言及である。前述のように、野生型ヒトPRRT2のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれGenBank Accession No. NM_145239及びNP_660282に包含され、それぞれ配列番号9及び10に記述される。PRRT2遺伝子を含むゲノムDNAも、配列番号11に記述され、
図3に示される。
【0060】
PRRT2のヌクレオチド配列中の変化に関しては、変化は、PRRT2ポリペプチドをコードするヌクレオチド残基だけで起こり得るのではなく、コーディング領域に付随するゲノムヌクレオチド配列でも起こり得る。そうしたゲノムヌクレオチド配列には、調節領域(例えばプロモーター領域)、イントロン、非翻訳領域並びにコーディング領域に付随する他の機能的及び/又は非機能的な配列領域が含まれる。
【0061】
以下に詳述するように、PRRT2遺伝子中の変化についてスクリーニングした家族のうち、発作障害(この場合BFIE)を罹患するスクリーニングした24家族のうちの19家族(79%)がPRRT2中に変異を有しており、運動障害(この場合ICCA)を罹患するスクリーニングした家族の10/11(91%)がPRRT2中に変異を有していた。したがって、一実施形態では、PRRT2遺伝子中の変化の存在によって、対象において障害の可能性が高いことを示す診断又は予測が確証される。
【0062】
発作障害及び運動障害を罹患する家族の分析を通して、本発明者らは、対象における特定のPRRT2の変化の存在が前記対象の罹患血縁者にも見出されることを発見した。したがって、本発明の第一の態様の幾つかの実施形態では、前記対象の罹患した親又は血縁者にも存在する、前記対象におけるPRRT2遺伝子中の変化によって、前記対象において障害の可能性が非常に高いことを示す診断又は予測が確証される。
【0063】
さらに、発作及び/又は運動障害がほぼ確実又は可能性があると以前に臨床的に診断された対象においてPRRT2の変化を特定することによって、前記対象が障害を有する可能性が増大する。またさらに、てんかん(特にBFIE)に関しては、BFIE又は他の関連する家族性てんかん症候群の診断を示唆するのに使用することができる発症年齢に関する情報は、PRRT2の変化を特定することができないことによって除外される可能性がある。この情報は対象にとって正しい治療計画を開始するために重要であり、この情報によって、前記対象にとって不必要な検査及び付随する外傷が回避される。
【0064】
PRRT2遺伝子中の変異の遺伝によって、その遺伝的保因状態を確定するために対象をスクリーニングすることが可能になる。疾患、障害又は状態の遺伝的保因者である対象は、遺伝性の遺伝形質又は変異を有する対象であるが、その形質を示さないか疾患、障害若しくは状態の症状を示すいずれかの対象、又は過去に疾患、障害若しくは状態の症状を現したことに気づいていない対象である。しかし前記対象は、遺伝形質又は変異をその子孫に伝えることができ、次にその子孫が、その疾患、障害又は状態を発生する可能性がある。保因状態を確定することは、例えば、子供を持とうと考えている夫婦にとって有用である。
【0065】
したがって、第二の態様では、本発明は、発作及び/又は運動障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象を特定する方法であって、前記対象において、PRRT2遺伝子中の変化の存在について検査することを含む方法を提供する。このことによって、前記対象にPRRT2遺伝子中の変化が存在することによって、発作及び/又は運動障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象として前記対象が特定されることになる。さらに、前記対象の罹患した親又は血縁者にも存在するPRRT2遺伝子中の変化が前記対象にも存在することによって、発作及び/又は運動障害になりやすい子孫をもつ可能性が非常に高い対象として前記対象が特定される。
【0066】
PRRT2遺伝子中の変化の種類は、全ての形態の遺伝子配列のバリエーションを包含することができ、これらには、コーディング領域、及びプロモーター、イントロン又は非翻訳領域などの非コーディング領域中の欠失、挿入、再構成及び点変異が含まれる。欠失は遺伝子全体のもの、又は遺伝子の一部のみの可能性があるが、点変異及び挿入は終止コドンの導入、フレームシフト又はアミノ酸置換をもたらす可能性がある。PRRT2遺伝子中のフレームシフトは、不安定である場合もあればそうでない場合もあるトランケートされたPRRT2ポリペプチドの翻訳を導く可能性があり、又はほとんど若しくは全くPRRT2タンパク質の翻訳をもたらさない可能性がある。プロモーター中などのPRRT2の調節領域中に起こる点変異は、PRRT2のmRNAの発現を喪失若しくは低下させる可能性があり、又は適切なmRNAプロセシングを無効にし、これによりmRNAの安定性若しくは翻訳効率を低下させる可能性がある。
【0067】
本発明の前述の態様の幾つかの実施形態では、方法は、PRRT2遺伝子中の変化の存在について検査するための、及び変化の種類を特定するための1又は2以上のアッセイを実施することを含む。
【0068】
幾つかの実施形態では、方法は、PRRT2遺伝子中の変化の存在について検査するための1又は2以上のアッセイを実施すること、及びその結果がPRRT2遺伝子中の変化の存在を示す場合は、PRRT2の変化の種類を特定するための1又は2以上のアッセイを実施することを含む。
【0069】
幾つかの実施形態では、対象におけるPRRT2遺伝子中の変化の存在は、前記対象から採取した生体試料の分析から判定する。用語「試料」には、生体試料、例えば細胞(血液又は頬に存在するものを含める)、組織(組織生検材料、外科標本又は剖検材料を含める)、エキソソーム及び体液が含まれることが意図される。「体液」には、これらに限定されないが、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、胸膜液、涙、ラクタール(lactal)管液、リンパ液、痰、尿、羊水及び精液が含まれ得る。試料には、「無細胞」体液が含まれ得る。「無細胞体液」は、約1%(w/w)未満の全細胞物質を含む。血漿又は血清は、無細胞体液の一例である。加えて、胎児細胞、胎盤細胞又は羊水を検査することによって、出生前検査を達成することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、核酸又はタンパク質を試料から最初に単離してから、PRRT2遺伝子中の変化の存在について検査する。核酸(DNA又はRNA)又はタンパク質は、当業者に周知のいかなる方法によっても試料から単離することができ、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000)を参照されたい。
【0071】
当業者なら理解するように、PRRT2の変化の存在について検査するために、及び変化の種類を判定するために使用することができる幾つかのアッセイ系が存在し、本発明は、以下に提供する例によって制限されない。
【0072】
例えば一実施形態では、用いるアッセイ系は、対象から採取される試料中のPRRT2核酸を野生型PRRT2核酸と比較して分析することに依拠し得る。幾つかの実施形態では、ゲノムDNAを分析に使用することができ、ゲノムDNAは上記のような幾つかの供給源から得ることができる。ゲノムDNAは、単離してアッセイに直接使用することができ、又は分析前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR, polymerase chain reaction)によって増幅することができる。同様に、mRNA又はcDNAを、PCR増幅の有無にかかわらず使用することもできる。
【0073】
一実施形態では、核酸ハイブリダイゼーションアッセイを用いることができる。そうしたアッセイの1つでは、1又は2以上の制限酵素で消化されたDNAの一連のサザンブロットを調べることができる。各ブロットは、正常な個体由来の一連の消化されたDNA試料及び1又は2以上の被検対象由来の一連の消化されたDNA試料を含有することができる。PRRT2遺伝子近傍又はPRRT2遺伝子を含む配列でプローブした時に、正常なDNAとは長さが異なるハイブリダイゼーションフラグメントを示す試料は、PRRT2変異の可能性を示す。非常に大きな制限フラグメントをもたらす制限酵素を使用する場合は、次いでパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE, pulsed field gel electrophoresis)を用いることができる。
【0074】
PRRT2遺伝子のエキソンに対して特異的なハイブリダイゼーションアッセイも用いることができる。プローブベースのこのタイプのアッセイは、野生型形態のPRRT2遺伝子のエキソンへ特異的且つ選択的にハイブリダイズする少なくとも1種のプローブを利用する。したがって、核酸プローブを含有する二本鎖核酸ハイブリッドの形成がないことは、遺伝子中に変異が存在することを指し示している。プローブベースの検査は特異性が高いために、いかなる陰性の結果も変異の存在を高く指し示しているが、さらに以下に記述するように、さらなる調査的アッセイを用いて変異の種類を特定するべきである。
【0075】
前述のアッセイに使用するPRRT2エキソン特異的プローブは、(1)各エキソンに隣接するイントロン特異的プライマーを使用する、PRRT2遺伝子の各エキソンのPCR増幅物、(2)各エキソンに対して特異的なcDNAプローブ、又は(3)調査中のエキソンに集団的に相当する一連のオリゴヌクレオチドに由来し得る。PRRT2遺伝子のゲノム構造を
図2(コーディングエキソンに関しては、エキソン2〜4)に示し、PRRT2の各エキソン及びイントロンのヌクレオチド配列を
図3及び配列番号11に示す。
【0076】
さらなる実施形態では、ヘテロ二本鎖形成を分析するためのアッセイを用いることができる。変性させた野生型PRRT2 DNAを対象由来のDNA試料と混合することによって、2つの試料の間のPRRT2配列のいかなる変化も、ヘテロ二本鎖とホモ二本鎖の混合集団をDNAの再アニーリング中に形成させる。この混合集団の分析は、部分的変性温度下で実施する、高速液体クロマトグラフィー(HPLC, high performance liquid chromatography)のような技法の使用によって達成することができる。この方式では、ヘテロ二本鎖は、その低下した融解温度のために、ホモ二本鎖より早くHPLCカラムから溶出する。
【0077】
さらなる実施形態では、患者の核酸試料は、電気泳動ベースのアッセイにかけることができる。例えば、PRRT2フラグメントの長さの違いを測定する電気泳動アッセイを用いることができる。被検対象由来のゲノムDNAフラグメントを、PRRT2遺伝子のイントロン特異的プライマーで増幅する。したがって、遺伝子の増幅領域は、所望のエキソン、エキソン/イントロン境界のスプライス部位接合部、及び増幅産物の両端にある短いイントロン部分を含む。増幅産物は電気泳動のサイズ分離ゲルで泳動することができ、野生型遺伝子由来の既知の及び期待される標準長と増幅フラグメントの長さを比較して、挿入又は欠失変異が患者の試料に見出されるかどうかを判定する。この手順は、有利には「多重化」型式で使用することができ、この場合、複数のエキソンに対するプライマーを同時に増幅し、単一の電気泳動ゲルで同時に評価する。これは、各エキソンに対するプライマーを慎重に選択することによって可能になる。各エキソンにわたる増幅フラグメントは、異なるサイズになるように設計されるので、電気泳動/サイズ分離ゲルで識別可能である。本技法の使用は、ヘテロ接合個体において正常アレル及びミュータントアレルの両方を検出するという利点を有する。
【0078】
さらなる電気泳動アッセイを用いることができる。これらには、一本鎖高次構造多型(SSCP, single-stranded conformational polymorphism)法(Orita et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 2766-70)が含まれ得る。前述のように、遺伝子の個々のエキソンが増幅され、個々に分析できるように、対象のゲノムDNAフラグメントをPRRT2遺伝子のイントロン特異的プライマーでPCR増幅する。次いで、DNAフラグメントが、その配列組成によって決まるコンフォメーションに基づいてゲルを通って移動するように、エキソン特異的なPCR産物を非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかける。野生型配列と配列が異なるエキソン特異的なフラグメントは、異なる二次構造コンフォメーションを有するので、別々にゲルを通って移動する。異常に移動する、患者の試料のPCR産物は、エキソン中の変化を指し示しており、DNAシーケンシングなどのアッセイでさらに分析して、変化の種類を特定するべきである。
【0079】
用いることができるさらなる電気泳動アッセイには、RNaseプロテクションアッセイ(Finkelstein et al., 1990, Genomics 7: 167-172; Kinszler et al., 1991, Science 251: 1366-1370)及び変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE, denaturing gradient gel electrophoresis)(Wartell et al., 1990, Nucleic Acids Res. 18: 2699-2705; Sheffield et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 232-236)が含まれる。RNaseプロテクションは、ミュータントポリヌクレオチドを2つ以上のより小さいフラグメントに切断することを含み、一方DGGEは、変性グラジエントゲルを使用して、野生型配列と比較した際のミュータント配列の移動速度の違いを検出する。
【0080】
RNaseプロテクションアッセイでは、野生型PRRT2遺伝子のコーディング配列と相補的な標識リボプローブを患者から単離されたmRNA又はDNAのいずれかとハイブリダイズさせ、続いて、二本鎖RNA構造中のある種のミスマッチを検出することができるRNaseA酵素で消化する。ミスマッチがRNaseAによって検出される場合、RNaseAはそのミスマッチ部位で切断する。したがって、RNaseAによってミスマッチが検出され切断される場合、アニーリングしたRNA調製物が電気泳動ゲルマトリックスで分離される時に、リボプローブ及びmRNA又はDNAについて、完全長二本鎖RNAよりも小さいRNA産物が認められることになる。リボプローブは調査中のmRNA又は遺伝子の完全長である必要はなく、いずれかのセグメントでもよい。リボプローブがmRNA又は遺伝子のセグメントのみを含む場合は、幾つかのこうしたプローブを使用して、mRNA配列全体をミスマッチについてスクリーニングすることが望ましい。
【0081】
さらなる実施形態では、酵素ベースのアッセイを本発明の方法で使用することができる。そうしたアッセイには、S1ヌクレアーゼ、RNA分解酵素、T4エンドヌクレアーゼVII、MutS(Modrich, 1991, Ann. Rev. Genet. 25: 229-253)、Cleavase及びMutYの使用が含まれる。MutSアッセイでは、このタンパク質は、ミュータント配列と野生型配列の間のヘテロ二本鎖中にヌクレオチドミスマッチを含有する配列のみに結合する。
【0082】
発作又は運動障害がPRRT2遺伝子の異常な発現と関連する場合は、代替のアッセイが必要になる。第一に、PRRT2発現についての正常な又は標準のプロファイルを確立する。これは、ハイブリダイゼーション又は増幅に適した条件下で、正常な対象から採取した体液又は細胞抽出物を、PRRT2遺伝子をコードする配列又はそのフラグメントと混ぜ合わせることによって達成することができる。標準ハイブリダイゼーションは、正常な対象から得た値を、実質的に精製された既知の量のポリヌクレオチドが使用される実験由来の値と比較することによって定量化することができる。発現に対する正常な又は標準のプロファイルを特定するための別の方法は、定量RT−PCR試験による。正常な対象の体細胞から単離したRNAを逆転写し、PRRT2に対して特異的なオリゴヌクレオチドを使用するリアルタイムPCRを行い、遺伝子の正常な発現レベルを定める。これら両方の例から得られる標準値を、障害の徴候を示す患者由来の試料から得た値と比較することができる。標準値からの偏差を使用して、障害の存在を確証する。
【0083】
遺伝子の発現レベルを測定する方法は、一般に、当技術分野で既知である。技法には、これらに限定されないが、ノーザンブロット法、RNAインサイチュハイブリダイゼーション、逆転写PCR(RT−PCR, reverse-transcriptase PCR)、リアルタイム(定量)RT−PCR、マイクロアレイ又はSAGE(遺伝子発現の逐次分析、serial analysis of gene expression)などの「タグベースの」技術が含まれ得る。マイクロアレイ及びSAGEを使用して、1つより多くの遺伝子の発現を同時に定量化することができる。プライマー又はプローブは、PRRT2遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。Paik et al., 2004(NEJM 351(27): 2817-2826)又はAnderson et al., 2010(J. Mol. Diagnostics 12(5): 566-575)に開示されているものに類似している方法論を使用して、PRRT2遺伝子の発現を測定することができる。多くの方法が、Sambrook et al.(Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000)などの標準的な分子生物学の教科書にも開示されている。
【0084】
RT−PCRに関しては、第一ステップは典型的には、調査中の対象から得た試料から全RNAを単離することである。続いて、メッセンジャーRNA(mRNA, messenger RNA)を全RNA試料から精製することができる。次いで適切な逆転写酵素を使用して、全RNA試料(又は精製されたmRNA)をcDNAに逆転写する。逆転写ステップは典型的には、RNA鋳型に応じて、オリゴdTプライマー、ランダムヘキサマー又はPRRT2遺伝子に対して特異的なプライマーを使用してプライムする。次いで、逆転写反応に由来するcDNAを、典型的なPCR反応の鋳型として供する。その際、PRRT2遺伝子に対して特異的な2つのオリゴヌクレオチドPCRプライマーを使用してPCR産物を生成する。他の2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計された第三のオリゴヌクレオチド又はプローブもPCR反応に使用する。プローブは、PCR反応で使用するTaq DNAポリメラーゼ酵素よって伸長することができず、且つレポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素で標識される。2つの色素がプローブ上にあるので、それらが近くに位置する時に、レポーター色素からのいかなるレーザー誘起放射もクエンチング色素によってクエンチされる。PCR増幅反応中に、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的様式でプローブを切断する。得られたプローブフラグメントは溶液中で解離し、遊離レポーター色素からのシグナルは、第二のフルオロフォアのクエンチング作用から免れている。レポーター色素の一方の分子は、合成される新しい各分子から遊離しており、クエンチされていないレポーター色素の検出によって、データの定量的な解釈に対する根拠がもたらされる。
【0085】
リアルタイムRT−PCRでは、PCR反応で形成される産物の量及び産物が形成されるタイミングは、出発鋳型の量に相関する。RT−PCR産物は、標準又は「正常な」試料と比較してmRNAレベルが高い試料においてより急速に蓄積する。リアルタイムRT−PCRは、PCR合成産物中にSybr Greenなどの色素をインターカレートしているDNAの蛍光を測定するか、又は二重標識された蛍光発生プローブ(すなわちTaqManプローブ)を通してPCR産物の蓄積を測定することができる。RT−PCR反応の進行は、産物の蓄積をリアルタイムに測定するPCR装置、例えばApplied Biosystems社のPrism 7000又はRoche社のLightCyclerなどを使用してモニターすることができる。リアルタイムRT−PCRは、定量的競合PCR及び定量的比較PCRの両方に対応する。前者は、各標的配列に対する内部コンペティターを標準化のために使用し、一方後者は、試料内に含有される標準化遺伝子又はRT−PCR用のハウスキーピング遺伝子を使用する。
【0086】
PRRT2遺伝子の発現レベルを測定するためのマイクロアレイの製品及びアプリケーションを使用することができ、これらは当技術分野で周知である。一般にマイクロアレイでは、PRRT2遺伝子の一部又は全てに相当するヌクレオチド配列(例えば、オリゴヌクレオチド、cDNA又はゲノムDNA)が、基盤上の既知の位置を占有する。次いで、所望の対象から得た核酸標的試料(例えば全RNA又はmRNA)をマイクロアレイにハイブリダイズし、アレイ上の各プローブにハイブリダイズした標的核酸の量を定量化し、標準又は「正常な」試料に対して起こるハイブリダイゼーションと比較する。1つの例示的な定量化方法は、共焦点顕微鏡及び蛍光標識を使用することである。Affymetrix GeneChip(商標)アレイシステム(Affymetrix社、Santa Clara、Calif.)及びAtlas(商標)ヒトcDNA発現アレイシステムは、ハイブリダイゼーションを定量化するのに特に適する。しかし、いかなる類似のシステム又は他の事実上同等の検出方法も使用できることは、当業者には明らかであろう。蛍光標識されたcDNAプローブは、核酸標的試料にも相当し得る。そうしたプローブは、被検対象の試料から抽出した全RNA又はmRNAの逆転写中に、蛍光性ヌクレオチドの取り込みを通して生成することができる。マイクロアレイに適用する標識cDNAプローブは、アレイ上の対応するDNAスポットと特異性をもってハイブリダイズする。配列された各エレメントのハイブリダイゼーションを定量化することによって、標準又は「正常な」試料で観察された存在量と比較して、対応するmRNAの試料中の存在量を評価することが可能になる。二色蛍光を使用して、2つのRNA供給源から生成された別々に標識されたcDNAプローブをペアでアレイにハイブリダイズする。したがって、2つの供給源由来の、PRRT2遺伝子に対応する転写産物の相対的存在量を同時に測定する。そうした方法は、発現レベルの少なくともほぼ2倍の差を検出するのに必要な感度を有することが示されている。
【0087】
PRRT2遺伝子中の変化を特定するのに使用することができる別のアッセイは、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA, Multiplex Ligation-Dependent Probe Amplification)アッセイである。MLPAは、単一のプライマーペアのみで多数の標的の増幅を可能にする多重ポリメラーゼ連鎖反応の変形である。このアッセイに使用する各プローブは、PRRT2 DNA上の隣接する標的部位を認識する2つのオリゴヌクレオチドからなる。プローブオリゴヌクレオチドが標的配列に正確にハイブリダイズする時に、これらは熱安定性のリガーゼによってライゲーションさせられ、完全なプローブを形成する。プローブを2つの領域に分割する利点は、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドだけがPCR反応中に増幅され、未結合プローブオリゴヌクレオチドは増幅されないことである。それぞれの完全なプローブは長さが特有であり、その結果、その生成アンプリコンは分離することができ、キャピラリー電気泳動によって特定することができる。これによって、多重PCRの分解能の限界が回避される。プローブオリゴヌクレオチドのうちの一方が蛍光色素で標識されるならば、各アンプリコンは、キャピラリーシーケンサーによって検出することができる蛍光ピークを発生する。所与の試料について得られたピークパターンが参照試料(例えば野生型PRRT2遺伝子由来の試料)に関して得られたピークパターンと違うことは、完全なプローブ中の変化の存在(すなわちPRRT2遺伝子中の変化)を示す。
【0088】
PRRT2遺伝子中の変化の存在を特定するための、及び/又は変異の種類を特定するための最も決定的なアッセイは、DNAシーケンシングである。野生型PRRT2のヌクレオチド配列と被検対象由来のPRRT2ヌクレオチド配列との比較は、高い特異性及び高い感度の両方を提供する。用いる一般的方法論は、上記のように、PRRT2遺伝子のDNAフラグメントを(例えばPCRを使用して)対象のDNAから増幅することと、増幅したDNAを、増幅プライマーと同一でもよいし異なってもよいシーケンシングプライマーと混ぜ合わせることと、正常なヌクレオチド(A、C、G及びT)及び一旦組み込まれるとプライマーのさらなる伸長を妨げる読み終りヌクレオチド、例えばジデオキシヌクレオチドなどの存在下でシーケンシングプライマーを伸長させることと、得られた伸長フラグメントの長さについて産物を分析することとを含む。Sanger et al., 1977(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467)によって開示された最初のジデオキシシーケンシング法に基づくそうした方法は、本発明で有用ではあるが、最終的なアッセイは、そうした方法に限定されない。例えば、PRRT2遺伝子の配列を決定するための他の方法も用いることができる。代替方法には、Maxam and Gilbert, 1977(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 560-564)によって述べられている方法、及びジデオキシ法の変形、並びに参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,971,903号明細書に開示される方法などの読み終りヌクレオチドに全く依拠しない方法が含まれる。他の代替方法には、ピロシーケンシング(Pyrosequencing社、 Westborough、Mass.)が含まれ、そのプロトコルはAlderborn et al., 2000(Genome Res. 10: 1249-1265)に見出すことができる。ジデオキシチェーンターミネーション法によるシーケンシングは、Thermo Sequenase(Amersham Pharmacia社、Piscataway、NJ)、US Biochemicals社のSequenase試薬、又はSequathermシーケンシングキット(Epicenter Technologies社、Madison、Wis.)を使用して実施することができる。シーケンシングは、PE Applied Biosystems社(製品番号403044、Weiterstadt、ドイツ)の「RR dRhodamineターミネーターサイクルシーケンシングキット」、Taq DyeDeoxy(商標)ターミネーターサイクルシーケンシングキット及び方法(Perkin-Elmer社/Applied Biosystems社)によって、Applied Biosystems社のModel 373 A DNAを使用して、又はダイターミネーターCEQ(商標)ダイターミネーターサイクルシーケンシングキット(Beckman社608000)の存在下で、二方向で行うこともできる。野生型配列のものと比較した時の被検対象のエキソンにおける(良性の多型以外の)いかなる配列の違いも、潜在的な病因性変異を示す。
【0089】
一実施形態では、用いるアッセイ系は、野生型PRRT2ポリペプチドと比較する、対象のタンパク質試料から得たPRRT2ポリペプチドの分析でもよい。例えば、野生型PRRT2と比較した場合の、ミュータントPRRT2ポリペプチドの電気泳動移動度のいかなる違いも、変異したPRRT2ポリペプチドを同定する根拠として活用することができる。そうした手法は、電荷置換が存在するミュータント、又は挿入、欠失、トランケーション若しくは置換によって生じたタンパク質の電気泳動的移動が有意に変化したミュータントを同定する際に特に有用である。抗体(又はそのフラグメント)も、特に抗体(又はそのフラグメント)がミュータントPRRT2ポリペプチドに特異的にハイブリダイズすることができ、野生型PRRT2ポリペプチドにはハイブリダイズしないならば、ミュータントPRRT2ポリペプチドを同定する際に有用であり得る。或いは、トランケートされたPRRT2ポリペプチドの存在を検出する抗体(又はそのフラグメント)は、トランケートされた領域に結合し、その結果、事実上野生型PRRT2ポリペプチドのみを認識し、野生型PRRT2ポリペプチドのみに結合する抗体であり得る。他の実施形態では、正常PRRT2ポリペプチドとミュータントPRRT2ポリペプチドのタンパク質分解的切断パターンの違いを測定することができ、又は種々のアミノ酸残基のモル比の違いを測定することができる。アミノ酸配列の決定も、対象試料から得たPRRT2ポリペプチドと野生型PRRT2ポリペプチドを比較するのに使用することができる。
【0090】
前述のように本発明者らは、発作障害及び運動障害(BFIE及びICCA)の原因となる特異的な5つの変異をPRRT2遺伝子中に特定した。これらは、エキソン2での2つのフレームシフト変異(c.629−630insC及びc.649−650insC)、2つのスプライス部位変異(IVS2+1G>T及びIVS2+5G>A)、及び1つのミスセンス変異(c.950G>A)を含む。したがって、本発明の第一及び第二の態様の一実施形態では、これらの特異的な変異は、対象にこれらの変異のみが存在することについて検査するアッセイの根拠になり得る。例えば、c.649−650insC変異は、異なる家族からの多数の罹患者に存在することが発見されており、こうした個体は血縁であることは疑われない。したがって、c.649−650insC変異は、より広範な集団において又は被検対象における主要な初回通過変異スクリーニングとして検査された、PRRT2変異の一例であり得る。
【0091】
上記で言及したアッセイは、対象におけるこれら5つの変異の存在について検査するのに使用することができる。しかし、変異の種類が既知ならば、さらなるアッセイを用いることもできる。既知のPRRT2変異に基づくアッセイには、アレル特異的なプライマー及びプローブを利用するアッセイ、例えば、検査されるPRRT2変異に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するPCRベースの手法が含まれる。標的配列中の単一ヌクレオチドのバリエーションを検出するそうしたオリゴヌクレオチドは、「アレル特異的なプローブ」又は「アレル特異的なプライマー」のような用語で言及され得る。既知の配列のバリエーションを検出するためのアレル特異的なプローブ(今回はPRRT2中)の設計及び使用は、例えば、Mutation Detection A Practical Approach, ed. Cotton et al. Oxford University Press, 1998; Saiki et al., 1986(Nature, 324: 163-166)、欧州特許第235726号明細書、及び国際公開第89/11548号パンフレットに記載されている。一例を挙げると、プローブ又はプライマーは、PRRT2標的DNAのセグメントにハイブリダイズし、その結果、PRRT2中の変異部位がプローブ又はプライマーの5’最末端又は3’最末端のいずれかと整列するように設計することができる。ある種のアッセイでは、増幅は標識プライマーを含むことができ、それによって、そのプライマーの増幅産物を検出できるようになる。一例を挙げると、増幅は、多様な標識プライマーを含むことができ、典型的には、そうしたプライマーは識別可能に標識され、多数の増幅産物を同時に検出できるようになる。
【0092】
あるタイプのPCRベースアッセイでは、アレル特異的なプライマーは、変異部位(例えばc.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>A)とオーバーラップする、標的PRRT2核酸分子上の領域にハイブリダイズし、完全な相補性を示す対立遺伝子型の増幅のみをプライムする(Gibbs, 1989, Nucleic Acid Res. 17:2427-2448)。典型的には、プライマーの最も3’側のヌクレオチドは標的核酸分子の変異部位と整列し、且つその変異部位と相補的である。このプライマーは、遠位部位でハイブリダイズする第二のプライマーと併せて使用される。増幅はこれら2つのプライマーから進み、対立遺伝子型が被検試料中に存在することを示す検出可能な産物を生成する。コントロールは、第二のプライマーペアを使用して通常実施され、プライマーペアの一方は変異部位で一塩基ミスマッチを示し、他方は遠位部位に完全な相補性を示す。一塩基ミスマッチは、増幅を妨げるか実質的に増幅効率を低下させ、その結果、検出可能な産物が形成されないか、検出可能な産物がより少ない量又はより遅いペースで形成される。この方法は一般に、ミスマッチがオリゴヌクレオチドの最も3’側の位置にある(すなわちオリゴヌクレオチドの最も3’側の位置が標的変異位置と整列する)時に、最も効率的に機能する。なぜならば、この位置は、プライマーからの伸長に対して最も不安定であるからである(例えば、国際公開第93/22456号パンフレットを参照されたい)。上記で言及したc.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>AのPRRT2変異、又は将来的に特定される任意の他のPRRT2変異を検出するためのアレル特異的なプライマー配列は、当業者なら容易に設計できるであろう。
【0093】
一例を挙げると、プライマーが、プライマーの3’最末端にある3つのヌクレオチド位置のうちの1つにミスマッチヌクレオチドを有し、その結果、ミスマッチヌクレオチドが変異部位で特定のアレルと塩基対を作らないことを除いて、プライマーは、変異を含有する標的核酸分子のセグメントに実質的に相補的な配列を含有する。プライマー中のミスマッチヌクレオチドは、プライマーの最も3’側の位置の最後のヌクレオチドから一番目、二番目又は三番目のヌクレオチドであり得る。幾つかの例では、プライマー及び/又はプローブは検出可能な標識で標識される。
【0094】
代替の手法では、PRRT2中の既知の変異を検出するのに、タグされたアレル特異的プライマーペアを使用することができる(Strom et al., 2005, Genet. Med. 7:633-63)。一例を挙げると、2つのタグされたアレル特異的なプライマーは標的DNA中の変異部位にオーバーラップするが、正確にハイブリダイズしたプライマー(複数可)のみが伸長して、標識産物(複数可)を生成する。非相補的プライマーは、3’側のミスマッチ塩基が原因で伸長しないか標識されない。標識された伸長産物は、検出可能な標識に基づいて検出することができる。タグされた伸長プライマーは、抗タグ配列に連結された、ビーズなどの固体支持体上で捕獲することもできる。固定化された伸長プライマー産物は、Luminex 100 LabMAP(商標)(Luminex Corporation社、Austin TX)などの市販品として入手可能な手段によって検出することができる。
【0095】
本明細書に収載されるものを含めた以前に特定されたPRRT2ポリペプチド変異を検出するアッセイも、当技術分野で既知である。例えば、対象の試料から得たタンパク質集団におけるミュータントPRRT2ポリペプチドの検出は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS PAGE, SDS polyacrylamide gel electrophoresis)によるタンパク質の分離、それに続く適切な染色剤、例えば、クマシーブルーによるタンパク質染色によってできる。変異を有するPRRT2ポリペプチド及び変異を有さないPRRT2ポリペプチドは、その分子量及びSDS PAGEでの移動に基づいて、互いに及び他のタンパク質からも区別することができる。
【0096】
PRRT2ポリペプチド中における既知の変異の存在の検出は、例えば、抗体、アプタマー、リガンド/基質、他のタンパク質若しくはタンパク質フラグメント、他のタンパク質結合剤、又はフラグメントの質量分析によっても達成することができる。好ましくは、タンパク質検出剤は変異PRRT2ポリペプチドに対して特異的であり、したがって、変異タンパク質と野生型タンパク質又は別のバリアント型とを判別することができる。一般にこれは、例えば、バリアントと野生型タンパク質で異なるタンパク質領域に結合する検出剤を選択又は設計することによって達成することができる。
【0097】
変異PRRT2ポリペプチドを検出するための好ましい薬剤の1つは、変異PRRT2ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体である。野生型と変異PRRT2ポリペプチドを区別できる抗体は、当技術分野で既知の任意の適切な方法によって作製することができる(以下を参照されたい)。抗体は、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、単鎖若しくは二本鎖のキメラ若しくはヒト化の抗体、又は前記抗体のフラグメント(すなわち、PRRT2の抗原結合領域を含有する免疫グロブリン分子の一部)でもよい。
【0098】
本発明者らによって同定されたトランケートされたPRRT2ポリペプチド(すなわち、p.P210fsX224又はp.R217fsX224)の存在を検出するのに有用な抗体又はそのフラグメントは、欠失させられたポリペプチド領域(すなわち、PRRT2のアミノ酸217〜340)を認識し且つその領域に結合し、その結果、事実上野生型PRRT2ポリペプチドのみを認識し且つそのポリペプチドのみに結合する、抗体又はそのフラグメントでもよい。
【0099】
既知のPRRT2ポリペプチド変異を検出するためのインビトロでの方法には、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA, enzyme linked immunosorbent assay)、ラジオイムノアッセイ法(RIA, radioimmunoassay)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、免疫蛍光法及びプロテインアレイ/チップ法(例えば、抗体又はアプタマーのアレイ)も含まれる。イムノアッセイ法及び関連するタンパク質検出法に関するさらなる情報については、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, N.Y;及びHage, 1999, Anal. Chem. 15; 71(12): 294R-304Rを参照されたい。アミノ酸バリアントを検出するさらなる方法には、これらに限定されないが、電気泳動移動度の変化(例えば二次元電気泳動)、トリプシンペプチド消化の変化、細胞ベースアッセイ又は細胞フリーアッセイでのHEXA活性の変化、リガンド又は抗体結合パターンの変化及び等電点の変化が含まれる。
【0100】
ウェスタンブロット分析によって、変異を有するPRRT2ポリペプチド及び変異を有さないPRRT2ポリペプチドを互いに及び他のタンパク質から区別することができる。ウェスタンブロットの方法は当技術分野で周知であり、例えば、Burnette, 1981(Anal. Biochem.112 (2): 195-203)に記載されている。簡単に述べると、標準的な技法を用いて対象から得た試料からタンパク質を抽出し、次いでSDS PAGEにかける。このタンパク質試料はPRRT2ポリペプチドを含むはずである。ゲル電気泳動後に、タンパク質試料中のタンパク質を、ニトロセルロース又はフッ化ポリビニリデン(PVDF, polyvinylidene fluoride)膜にトランスファーする。この膜を適切なブロッキング剤でブロッキングして、後に抗体が非特異的に膜へ結合するのを防止する。適切なブロッキング剤には、ウシ血清アルブミン及び脱脂粉乳が含まれる。ブロッキングし、適切なバッファーで何回か洗浄した後に、検査されるPRRT2変異に特異的に結合する抗体、欠失させられたPRRT2ポリペプチド領域を認識し且つその領域に結合する抗体、及び/又は野生型PRRT2に特異的に結合する抗体は、膜へトランスファーされた所望のタンパク質試料に結合することができる。一次抗体が膜に結合した後に、過剰な抗体を適切なバッファーで洗い流す。次いで、一次抗体に結合することができる、検出可能な程度に標識された適切な二次抗体を加える。次いで、過剰な二次抗体を適切なバッファーで洗い流し、二次抗体の検出可能な標識を検出する。二次抗体の検出可能な標識の検出は、所望のミュータント又は野生型のタンパク質の存在を示す。特定のミュータントPRRT2ポリペプチドに対して特異的な一次抗体を使用するならば、その時は、ミュータントポリペプチドが同定される。
【0101】
ミュータントPRRT2ポリペプチドの存在を測定するためのさらなる種々のアッセイも使用することができる。そうしたアッセイには、解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA, dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay))、プロテオミクス法、表面プラスモン共鳴法、化学発光法、蛍光偏光法、燐光法、免疫組織化学法、国際公開第2009/004576号パンフレットに記載されているようなマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS, matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry)(表面エンハンス型レーザー脱離イオン化質量分析法(SELDI−MS, surface enhanced laser desorption/ionization mass spectrometry)、特に、表面エンハンス型親和性捕獲法(SEAC, surface-enhanced affinity capture)、表面エンハンス型ニードデソープション(SEND, surface-enhanced need desorption)又は表面エンハンス型光標識アタッチメントアンドリリース(SEPAR, surface-enhanced photo label attachment and release)を含める)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF, matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight)質量分析法、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡観察、蛍光標識細胞分取法(FACS, fluorescence activated cell sorting)及びフローサイトメトリーが含まれる。
【0102】
PRRT2中の変異を検査するのに利用可能な様々なアッセイに基づいて、さらなる実施形態では、PRRT2遺伝子中における発作又は運動障害に関連する変異、例えばBFIE又はICCAに関連する変異について対象を検査する方法であって、
(1)増幅される各エキソンに隣接するイントロン領域に相補的なプライマーを使用して、PRRT2遺伝子の少なくとも1つのエキソンを前記対象から得た試料から定量的に増幅するステップと、
(2)増幅される各エキソンに関する増幅産物の長さを、同一のプライマーを使用して野生型PRRT2遺伝子を増幅する時に得られる増幅産物の長さと比較するステップと
を含み、
試料の増幅エキソンと対応する野生型の増幅エキソンとの長さの違いが、試料のPRRT2遺伝子中におけるトランケート変異の出現を示す方法が提供される。
【0103】
一実施形態では、方法は、トランケート変異の核酸配列を決定することをさらに含む。
【0104】
さらなる実施形態では、PRRT2遺伝子中における発作又は運動障害に関連する変異、例えばBFIE又はICCAに関連する変異などについて対象を検査する方法であって、
(1)増幅される各エキソンに隣接するイントロン領域に相補的なプライマーを使用して、PRRT2遺伝子の少なくとも1つのエキソンを前記対象から得た試料から定量的に増幅するステップと、
(2)(1)由来のフラグメントを、野生型PRRT2遺伝子の同一エキソンの増幅によって生成したフラグメントとハイブリダイズさせるステップと
を含み、
対応する野生型のフラグメントにハイブリダイズしないか、それとミスマッチヘテロ二本鎖を形成する、前記対象から増幅したエキソンが、増幅したエキソン中おける変異の出現を示す方法が提供される。
【0105】
一実施形態では、方法は、変異エキソンの核酸配列を決定することをさらに含む。
【0106】
前述のように、本発明者らは、PRRT2遺伝子中の変異の特定を通して、PRRT2遺伝子は、BFIE及びICCAを含めた発作障害及び運動障害に関連すると判断した。
【0107】
したがって第三の態様では、本発明は、PRRT2遺伝子中に変化を含む単離核酸分子であって、前記変化が発作及び/又は運動障害の表現型をもたらす単離核酸分子を提供する。幾つかの実施形態では、変化は、フレームシフト変異、スプライス部位変異又はミスセンス変異である。例えば幾つかの実施形態では、変異は、上で詳述されているc.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>Aのうちの1つでもよい。その際、核酸分子は、配列番号1、3、5、6及び7のうちの1つに記述される配列を含む。
【0108】
本発明は、配列番号1、3、5、6及び7の核酸フラグメントも意図する。但し、フラグメントが関連する変異を含むことを条件とする。核酸フラグメントは、配列番号1、3、5、6及び7のうちの1つに対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%のヌクレオチド配列同一性を含むことができ、且つ関連する変異を含有する。核酸フラグメントは、配列番号1、3、5、6及び7のうちの1つの少なくとも約20個連続するヌクレオチドを含むことを条件として、いかなる長さでもよい。
【0109】
したがって第四の態様では、本発明は、PRRT2遺伝子のフラグメントを含む単離核酸分子であって、前記核酸分子がPRRT2中に変異を含み、前記変異がc.629−630insC、c.649−650insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>Aからなる群から選択される単離核酸分子を提供する。
【0110】
幾つかの実施形態では、核酸分子は、(1)配列番号1の少なくとも約20個連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一のヌクレオチド配列であり、且つc.629−630insC変異を含む配列、(2)配列番号3の少なくとも約20個連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一のヌクレオチド配列であり、且つc.649−650insC変異を含む配列、(3)配列番号5の少なくとも約20個連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一のヌクレオチド配列であり、且つIVS2+1G>T変異を含む配列、(4)配列番号6の少なくとも約20個連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一のヌクレオチド配列であり、且つIVS2+5G>A変異を含む配列、又は(5)配列番号7の少なくとも約20個連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一のヌクレオチド配列であり、且つc.950G>A変異を含む配列を含む。
【0111】
これらのPRRT2フラグメントの任意の1又は2以上を、調査中の対象のPRRT2遺伝子中に変化が存在することについて検査するための前述のアッセイで使用することができる。
【0112】
第五の態様では、本発明は、ポリペプチドが、変化を含むPRRT2ポリペプチドであり、前記変化が発作及び/又は運動障害の表現型をもたらす、単離ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態では、変化は、トランケーション変異又はアミノ酸置換変異である。例えば幾つかの実施形態では、変異は、上で詳述されているp.P210fsX224、p.R217fsX224及びp.S317Nのうちの1つでもよい。その際ポリペプチドは、配列番号2、4及び8のうちの1つに記述される配列を含む。
【0113】
本発明は、配列番号2、4及び8のポリペプチドフラグメントも意図する。但し、フラグメントが関連する変異を含むことを条件とする。ポリペプチドフラグメントは、配列番号2、4及び8のうちの1つに対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%のアミノ酸配列同一性を含むことができ、且つ関連する変異を含有する。前記ポリペプチドフラグメントは、配列番号2、4及び8のうちの1つの少なくとも約20個連続するアミノ酸残基を含むことを条件として、いかなる長さでもよい。
【0114】
したがって、第六の態様では、本発明は、PRRT2ポリペプチドのフラグメントを含む単離ポリペプチドであって、PRRT2中に変異を含み、前記変異が、IVS2+1G>T変異(p.P210fsX224)によってコードされるトランケートされたPRRT2ポリペプチド、IVS2+5G>A変異(p.R217fsX224)によってコードされるトランケートされたPRRT2ポリペプチド及びS317Nからなる群から選択される、単離ポリペプチドを提供する。
【0115】
幾つかの実施形態では、ポリペプチドは、(1)配列番号8の少なくとも約20個連続するアミノ酸と少なくとも95%同一のアミノ酸配列であり、且つS317N変異を含む配列、及び(2)配列番号2又は配列番号4と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するトランケートされたPRRT2ポリペプチドを含む。
【0116】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む、遺伝子改変(ノックアウト、ノックイン及び遺伝子組換え)非ヒト動物モデルの作製を提供する。したがって第七の態様では、本発明は、本発明の第三又は第四の態様による核酸分子を含む遺伝子改変非ヒト動物を提供する。
【0117】
遺伝子改変動物は、PRRT2遺伝子機能の研究に、本発明のPRRT2変異が発作障害及び運動障害を引き起こす機構の研究に、組織発生におけるPRRT2変異の影響の研究に、医薬化合物の候補のスクリーニングに、ミュータントを発現する外植された哺乳類細胞培養物の作製に、及び可能性のある治療介入の評価に有用である。
【0118】
本発明の動物モデルに使用するのに適する動物種には、これらに限定されないが、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ並びにサル及びチンパンジーなどの非ヒト霊長類が含まれる。初期の研究のためには、遺伝子改変されたマウス及びラットが、ノックイン、ノックアウト又は遺伝子組換え体を作製するのが比較的容易であり、管理が容易であり、寿命が短いため、非常に望ましい。特定の研究のためには、遺伝子組換えの酵母又は無脊椎動物が適切且つ好ましい場合がある。なぜならば、これらは、迅速なスクリーニングを可能にし、取扱いがより容易になるからである。より長期間の研究のためには、非ヒト霊長類が、ヒトとのその類似性のために所望される場合がある。
【0119】
本発明のミュータントPPRT2遺伝子の動物モデルを作製するために、幾つかの方法を用いることができる。これらには、限定はされないが、相同な動物遺伝子での特定のPPRT2変異の作製、ミュータントヒトPRRT2遺伝子及び/若しくはヒト化動物PRRT2遺伝子の相同組換えによる挿入、野生型、ミュータント若しくは人工のプロモーターエレメントを使用する、ゲノム若しくはミニ遺伝子のcDNA構築物としてのミュータントヒトPPRT2遺伝子の挿入、又は内在性遺伝子の人工的に改変されたフラグメントの相同組換えによる挿入が含まれる。改変には、ミュータント終止コドンの挿入、DNA配列の欠失、又はCreリコンビナーゼなどの酵素によって認識される組換えエレメント(lox p部位)の包有が含まれる。
【0120】
インビボで遺伝子機能獲得型研究を行う目的で遺伝子組換えマウスを作製するためには、本発明のいかなるミュータントも、卵母細胞マイクロインジェクションなどの標準的な技法を使用してマウスの生殖系列に挿入することができる。遺伝子機能獲得は、遺伝子及びそのタンパク質産物の過剰発現、又は調査遺伝子の変異の遺伝的相補を意味し得る。卵母細胞注入のためには、1又は2コピー以上のミュータント遺伝子を、受精直後のマウス卵母細胞の前核へ挿入することができる。次いで、この卵母細胞を偽妊娠の里親に再移植する。次いで、生きて生まれたマウスを、関連するヒト遺伝子配列の存在について尾のDNAを分析することによって、組み込み体についてスクリーニングすることができる。導入遺伝子は、YAC、BAC、PAC若しくは他の染色体DNAフラグメントとして注入された完全なゲノム配列、天然プロモーター若しくは異種プロモーターのいずれかを有するcDNA、又はコーディング領域全体及び最適な発現に必要であることが分かっている他のエレメントを含有するミニ遺伝子のいずれかであり得る。
【0121】
ノックアウトマウス又はノックインマウスを作製するためには、マウス胚性幹(ES, embryonic stem)細胞での相同組換えによる遺伝子ターゲティングを適用することができる。ノックアウトマウスは、インビボで遺伝子機能の喪失を研究するために(例えばトランケート変異の影響を研究するために)作製される。一方で、ノックインマウスは、機能獲得の研究又は特定の遺伝子変異の影響の研究を可能にする。ノックインマウスは、遺伝子組換えマウスと類似しているが、前者では、組み込み部位及びコピー数が確定される。
【0122】
ノックアウトマウスの作製に関しては、マウスゲノム中のPRRT2遺伝子のタンパク質コーディング配列を破壊する(ノックアウトする)ように、遺伝子ターゲティングベクターを設計することができる。この破壊は、典型的にはマウスの胚性幹細胞で相同組換え(Joyner, 2000, Gene Targeting: A Practical Approach, Oxford University Press)を介するか、関連する遺伝子を標的にするsiRNAベクター(Kunath et al., 2003, Nature Biotechnol. 21: 559-561)などの他の技術を介することができる。ノックアウト動物は、遺伝子が生物学的に活性な産物を発現しないような、PRRT2遺伝子の機能的破壊を含むはずである。遺伝子によってコードされる少なくとも1つの機能活性が実質的に欠ける可能性がある。遺伝子によってコードされるポリペプチドの発現は、実質的にない(すなわち基本的に検出不可能な量が作られる)可能性があり、又は遺伝子産物の一部のみが産生される場合など、活性が欠けている場合がある。それとは対照的に、ノックインマウスは、ミュータントPRRT2遺伝子を含有する遺伝子ターゲティングベクターをマウスゲノム中の決められた遺伝子座に組み込まれ得ることによって作製することができる。両方の適用に関して、相同組換えは、相同なDNA配列を認識し、二重交差によって交換する特異的なDNA修復酵素によって触媒される。
【0123】
遺伝子ターゲティングベクターは、通常、エレクトロポレーションを使用してES細胞に導入する。次いで、ES細胞の組み込み体をターゲティングベクター上に存在する抗生物質耐性遺伝子を介して単離し、続いてジェノタイピングして、調査中の遺伝子が所望の座位に組み込まれているES細胞クローンを同定する。次いで適切なES細胞を生殖系列を通して伝えて、新規なマウス系統を作製する。
【0124】
遺伝子削除が早期の胚性致死をもたらす場合は、条件的遺伝子ターゲティングを用いることができる。これは、時間的及び空間的な制御様式で遺伝子を欠失させることができる。上記のように、適切なES細胞を生殖系列を通して伝えて新規なマウス系統を作製するが、実際の遺伝子欠失は、成体マウスにおいて、組織特異的な又は時間制御的な様式で実施される。条件的遺伝子ターゲティングは、cre/loxシステムの使用によって最も一般的に達成される。cre酵素は、34塩基対のloxP配列を認識することができ、その結果、creによってloxPに隣接する(又はloxPが導入された)DNAが認識され、切り取られる。遺伝子組換えマウスでの組織特異的なcreの発現によって、遺伝子ターゲティングされたloxPが導入されたマウスをcre遺伝子組換えマウスと交配することによる組織特異的なノックアウトマウスの作製が可能になる。ノックアウトは、「欠失」マウスを使用して、若しくは誘導性cre遺伝子を有する遺伝子組換えマウス(テトラサイクリン誘導性cre遺伝子を有するものなど)を使用して、あらゆる組織で行うことができ(Schwenk et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23: 5080-5081)、又はノックアウトは、例えばCD19−creマウスの使用による組織特異的でもよい(Rickert et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25: 1317-1318)。
【0125】
一旦ノックイン動物が作製されると、続いて、それらは、疾患の程度及び機構を研究するのに使用することができ、並びに遺伝的背景の変化が有する、動物の表現型に対する影響を検査するのに使用することができる。これは、例えば、本発明のノックインマウスを異なる遺伝的背景を含むマウス、例えばDBA/2J、C3H/HeJ又はFrings系統のマウスとかけ合わせることによって、マウスで達成することができる。
【0126】
当技術分野で周知の方法を使用して、ミュータントポリペプチドに対して特異的な抗体を産生するために、又はミュータントポリペプチドに結合する医薬品を同定するための医薬品ライブラリーをスクリーニングするために、本発明のミュータントPRRT2ポリペプチドを使用することができる。さらに、本発明のミュータントPRRT2ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、アンタゴニスト若しくはモジュレーターとして直接的に、又はミュータントポリペプチドを発現する細胞若しくは組織に医薬品を運ぶためのターゲティング若しくは送達機構として間接的に使用することができる。
【0127】
したがって第八の態様では、本発明は、本発明の第五又は第六の態様によるポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0128】
さらに第九の態様では、本発明は、本発明の第五又は第六の態様によるポリペプチドを検出する抗体又はそのフラグメントであって、前記ポリペプチドがトランケーション変異を含み、前記ポリペプチドのトランケートされた領域に結合する、抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0129】
本発明の本態様で意図されるそうした抗体には、これらに限定されないが、当業者なら理解するように、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体及び単鎖抗体が含まれ得る。抗体の産生のためには、ウサギ、ラット、ヤギ、マウス、ヒトなどを含めた種々の宿主を、記載のミュータントポリペプチド又は免疫原性の特性を有するそれらの任意のフラグメント若しくはオリゴペプチドの注射によって、免疫化することができる。種々のアジュバントは、免疫学的応答を増大させるのに使用することができ、アジュバントには、これらに限定されないが、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、及びリゾレシチンなどの表面活性物質が含まれる。ヒトで使用するアジュバントには、BCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacilli Calmette-Guerin))及びコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が含まれる。
【0130】
本発明のミュータントPRRT2ポリペプチドに対する抗体を誘導するのに使用するPRRT2のオリゴペプチド、ペプチド又はフラグメントは、少なくとも5アミノ酸、より好ましくは少なくとも10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有することが好ましい。こうしたオリゴペプチド、ペプチド又はフラグメントは、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、且つ天然に存在する小分子のアミノ酸配列全体を含有することも好ましい。本発明のポリペプチド由来のアミノ酸の短いストレッチをKLHなどの別のタンパク質の短いストレッチと融合することができ、そのキメラ分子に対する抗体を産生することができる。
【0131】
本発明のミュータントPRRT2ポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養における連続細胞株によって抗体分子を産生する任意の技法を使用して調製することができる。これらには、限定はされないが、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法及びEBV−ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al., 1975, Nature 256: 495-497; Kozbor et al., 1985, J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030;及びCole et al., 1984, Mol. Cell Biochem. 62: 109-120を参照されたい)が含まれる。
【0132】
抗体は、リンパ球集団でのインビボ産生を誘導することによって、又は免疫グロブリンライブラリー若しくは文献(例えば、Orlandi et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837;及びWinter and Milstein, 1991, Nature 349: 293-299を参照されたい)に開示されているような非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって産生することもできる。
【0133】
本発明のミュータントPRRT2ポリペプチドに対する特異的結合部位を含有する抗体フラグメントを作製することもできる。例えば、そうしたフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFabフラグメントが含まれる。或いは、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速且つ容易な同定を可能するために、Fab発現ライブラリーを構築することができる(例えば、Huse et al., 1989, Science 246: 1275-1281を参照されたい)。
【0134】
所望の特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニング目的で、種々のイムノアッセイを使用することができる。特異性が確証されたポリクローナル又はモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合的結合アッセイ又は免疫放射線アッセイに関する多数のプロトコルが当技術分野で周知である。そうしたイムノアッセイは、典型的には、タンパク質とその特異的抗体の間での複合体形成を測定することを含む。2つの非干渉性エピトープに対して反応性の抗体を利用する、モノクローナルベースの二部位イムノアッセイが好ましいが、競合的結合アッセイも用いることができる。
【0135】
PRRT2遺伝子と発作障害及び運動障害との関連が確証されたので、本発明によって、そうした障害のための治療的適用が可能になる。例えば、本発明者らによって同定されたPRRT2ポリペプチドミュータントを含めたミュータントPRRT2ポリペプチドを、(上記のように)ミュータントポリペプチドに対して特異的な抗体を産生するのに、又はミュータントポリペプチドに結合する医薬品を同定するために医薬品ライブラリーをスクリーニングするのに(以下を参照されたい)、使用することができる。
【0136】
一実施形態では、本発明のミュータントに特異的に結合する抗体は、アンタゴニスト若しくはモジュレーターとして直接的に、又はミュータントポリペプチドを発現する細胞若しくは組織に医薬品を運ぶためのターゲティング若しくは送達機構として間接的に使用することができる。
【0137】
発作障害及び/又は運動障害に関与する遺伝子としてPRRT2を同定することによって、BFIE又はICCAを含めたそうした障害を治療する方法が可能になる。機能的なPRRT2遺伝子発現又は機能的なPRRT2ポリペプチドの回復は、治療上有効であり得る。したがって本発明のさらなる態様は、機能的なPRRT2遺伝子及び/又はタンパク質の発現及び/又は活性を回復させることに関する。遺伝子及びタンパク質の発現及び活性を回復させるための多数の方法が存在する。例えば、野生型PRRT2核酸を発現させるベクターを、そうした治療を必要としている対象に投与することができる。細胞又は組織中にベクターを導入するための多くの方法が利用可能であり、それぞれインビボ、インビトロ及びエクスビボでの使用に同様に適する。エクスビボでの療法に関しては、患者から採取した幹細胞にベクターを導入し、クローン的に増殖させて、それを同一患者へ戻す自家移植をすることができる。トランスフェクション、リポソーム注入又はポリカチオン性アミノポリマーによる送達は、当技術分野で周知の方法を使用して達成することができる。
【0138】
本発明のさらなる態様は、罹患対象においてミュータントPRRT2遺伝子をサイレンシングすることによる、BFIE又はICCAを含めた発作及び/又は運動障害の治療に関する。一手法は、本発明者らによって同定されたPRRT2核酸ミュータントのうちのいずれか1つの相補体を含めた、ミュータントPRRT2核酸の相補体(アンチセンス)であるDNA分子、及びミュータントPRRT2によってコードされるmRNAにハイブリダイズするRNA分子である、又はそのRNA分子をコードする分子を、そうした治療を必要としている対象に投与することを含む。
【0139】
典型的には、ミュータントPRRT2核酸の相補体(アンチセンス)を発現させるベクターを、そうした治療を必要としている対象に投与することができる。細胞又は組織中にベクターを導入する方法を上に記載する。
【0140】
さらなるアンチセンス又は遺伝子ターゲティング性のサイレンシングストラテジーには、これらに限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNAの注入、アンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクション、及びRNA干渉(RNAi, RNA interference)又は低分子干渉RNA(siRNA, short interfering RNA)の使用が含まれ得る。またさらに、遺伝子サイレンシングのために、DNAザイム及びリボザイムなどの触媒性核酸分子を使用することができる。これらの分子は、従来のアンチセンス手法のように単に標的mRNA分子に結合するのではなく、その標的mRNA分子を切断することによって機能する。
【0141】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明者らによって特定された特定のPRRT2核酸及びポリペプチドの変異、並びにこれらを発現する細胞を含めた、ミュータントPRRT2核酸又はポリペプチドは、医薬品候補、特にBFIE及びICCAなどの発作又は運動障害を治療するための医薬品候補をスクリーニングするのに有用である。
【0142】
本発明に従ってスクリーニングすることができる薬剤には、これらに限定されないが、ペプチド(可溶性ペプチドなど)、リンペプチド及び小さな有機分子又は無機分子(天然物又は合成化合物ライブラリー及びペプチドミメティックなど)が含まれる。
【0143】
一実施形態では、スクリーニングアッセイは、競合的結合アッセイにおいて、ミュータントPRRT2ポリペプチドを発現させる組換え分子で安定的に形質転換された真核性又は原核性の宿主細胞を利用する細胞ベースアッセイを含むことができる。結合アッセイ(例えばELISAベースのアッセイ又は競合ベースのアッセイ)は、特定のミュータントPRRT2ポリペプチドと被検薬の間の複合体形成を測定するか、被検薬が特定のミュータントPRRT2ポリペプチドとその相互作用物質又はリガンドの間の複合体形成を阻害する又は回復させる程度を測定する。好ましくは(例えばマイクロプレートリーダーによる又はフローサイトメーターの使用による)検出ステップの自動化又は部分的自動化を提供する、分光光度的、蛍光定量的、熱量測定的又は化学発光的手段を含めた標準的な方法を使用することによって、活性の変化をこうしたアッセイで観察することができる。
【0144】
非細胞ベースアッセイも、本発明者らによって同定されたミュータントを含めたミュータントPRRT2ポリペプチドと相互作用物質の間の結合を阻害する又は回復させることができる薬剤を同定するのに使用することができる。そうしたアッセイは当技術分野で既知であり、例えば、AlphaScreen technology(PerkinElmer Life Sciences社、MA、USA)が含まれる。この適用は、各相互作用パートナーが離れたビーズに抗体を介して結合しているようなビーズの使用に依拠する。各パートナーの相互作用によってビーズが接近し、その結果レーザー励起によって、光シグナルを放射するフルオロフォアを最終的に導く幾つかの化学反応が惹起される。ミュータントとその相互作用物質の結合を阻害する候補薬剤は光放射の喪失をもたらし、一方で、ミュータントと相互作用物質の結合を回復させる候補薬剤は、陽性の光放射をもたらす。これらのアッセイによって、候補薬剤の同定及び単離が最終的に可能になる。
【0145】
ハイスループット薬物スクリーニング法は、国際公開第84/03564号パンフレット及びPirogova et al., 2011(Curr. Pharm. Biotechnol. 12: 1117-1127)などに記載されている方法を用いることもできる。例えば、コンビナトリアルケミストリー、ハイスループットスクリーニング(HTS, highthroughput screening)、バーチャルスクリーニング、デノボ設計及び構造ベースの薬物設計などの効率的な技術は、治療法の候補を同定するための効率的な手段を提供することができるので、本発明に関連する。より具体的な例としては、固体基盤上で合成された低分子ペプチド被検薬を、ミュータントポリペプチドの結合についてアッセイすることができる。次いで、結合したミュータントPRRT2ポリペプチドを、当技術分野で周知の方法によって検出する。本技法の変形では、精製されたミュータントPRRT2ポリペプチドをプレート上に直接コーティングして、相互作用する被検薬を同定することができる。
【0146】
本発明は、ミュータントPRRT2ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、そのポリペプチドとの結合について被検薬と競合する、競合薬物スクリーニングアッセイの使用も意図する。この方式では、抗体を使用して、ミュータントの1又は2以上の抗原決定基を共に有するいかなるペプチドの存在も検出することができる。
【0147】
本発明者らによって同定されたミュータントを含めたミュータントPRRT2ポリペプチドは、コンビナトリアルライブラリー法の結果として開発された薬剤をスクリーニングするのにも使用することができる。これは、ポリペプチドの活性をモジュレートする能力について、多数の異なる物質を検査する方法を提供する。ポリペプチド機能のモジュレーターとして同定された薬剤は、実際はペプチドでも非ペプチドでもよい。非ペプチドの「小分子」が、多くのインビボでの医薬的適用に関して好ましいことが多い。加えて、その物質のミミック又はミメティックを、医薬的使用のために設計することができる。医薬として活性な既知の化合物(「リード」化合物)に基づくミメティックの設計は、新規の医薬品を開発するための一般的な手法である。これは、最初の活性な薬剤が合成困難であるか合成に費用がかかる場合、又はその最初の活性な薬剤が不適切な投与方法をもたらす場合に、望ましいことが多い。ミメティックの設計では、標的の性質を決定する際に重要な、最初の活性な薬剤の特定の部分を特定する。薬剤の活性領域を構成するこうした部分又は残基は、ファルマコフォアとして知られる。ファルマコフォア構造は、一旦発見されれば、X線回折データ及びNMRを含めた様々な供給源からのデータを使用して、その物理的特性に従ってモデル化される。次いで、ファルマコフォアをミミックする化学基を付加できる鋳型分子を選択する。選択は、ミメティックが合成しやすく、薬理学的に許容される可能性が高く、インビボで分解せず、且つリード化合物の生物活性を保持するように行うことができる。インビボ又は臨床の検査に有用な1又は2以上の最終的なミメティックを選択するために、さらなる最適化又は改変を行うことができる。
【0148】
薬物スクリーニングのための別の代替方法は、構造ベースの合理的薬物設計に依拠する。本発明者らによって同定されたミュータントを含めた、ミュータントPRRT2ポリペプチドの三次元構造の決定によって、生物学的に活性なリード化合物を同定するための、構造ベースの薬物設計が可能になる。
【0149】
三次元構造モデルは、幾つかのアプリケーションによって作成することができ(それらの幾つかはX線結晶解析及びNMRなどの実験的モデルを含む)、及び/又はタンパク質データバンク(PDB, Protein Databank)などの構造データベースのインシリコ研究から作成することができる。加えて三次元構造モデルは、ポリペプチドの一次配列に基づく幾つかの既知のタンパク質構造予想法(例えばSYBYL、Tripos Associated社、St. Louis、MO)、デノボタンパク質構造設計プログラム(例えばMODELER、MSI Inc.社、San Diego、CA、又はMOE、Chemical Computing Group社、Montreal、カナダ)又はアブイニシオ法(例えば米国特許第5331573号明細書及び第5579250号明細書を参照されたい)を使用して決定することができる。
【0150】
ポリペプチドの三次元構造が一旦決定されれば、こうした三次元構造に基づいて生物学的に活性な薬剤を設計するために、構造ベースの創薬法を用いることができる。そうした技法は、当技術分野で既知であり、それにはDOCK(University of California、San Francisco)又はAUTODOCK(Scripps Research Institute、La Jolla、California)などの例が含まれる。コンピューターによるドッキングプロトコルは、活性部位又は予測タンパク質モデルに基づいてタンパク質の活性に重要であると見なされる部位を特定する。次いで、タンパク質モデルを補完する分子について、市販化学薬品一覧(ACD, Available Chemicals Directory)などの分子データベースをスクリーニングする。
【0151】
これらの方法などの方法を使用して、可能性のある臨床的薬物候補を同定することができ、典型的な「ウェットラボ」の薬物スクリーニング法に付き物の時間及び費用を軽減するために、コンピューターによってランク付けすることができる。上記で言及したスクリーニング法に関するコントロール反応には、被検薬への暴露がない前記細胞又は動物において検出されるベースライン応答が含まれ得、又は、代わりに、コントロール反応は、正常若しくは野生型の完全なPRRT2コード配列を含む細胞若しくは動物における被検薬への暴露後の反応でもよい。被検薬又は薬物候補は、既知の及び新規の化合物、複合体並びに他の物質から選択することができ、これらは、例えば、私的又は公的に利用できる薬剤ライブラリー(例えば、Queensland Compound Library(Griffith University、Nathan、QLD、オーストラリア)及びMolecular Libraries Small Molecule Repository(NIH Molecular Libraries、Bethesda、MD、USA)から供給され得る。したがって被検薬は、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド(例えば組換えにより発現させられたPRRT2遺伝子、タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらの機能的フラグメント若しくは機能的バリアント)、又はそれらのミメティック(いわゆる合成核酸ミミック、ペプトイド及びレトロインベルソペプチドを含める)を含むことができるが、より好ましくは、有機小分子、特に「薬らしさ」に関するリピンスキーのルールオブファイブ(Lipinski, CA et al., 2001, Adv. Drug. Del. Rev. 46: 3-26)に従うか実質的に従う有機小分子を含む。被検薬はまた、既知の若しくは新規の化合物の構造的な分析に基づいて選択することができ、又は別の方法では、PRRT2結合部位のさらなる構造的な分析に続いて設計することができる。
【0152】
上記のスクリーニング手順を通して同定された薬剤及び本発明者らによって同定されたミュータントを含めた、ミュータントPRRT2核酸分子又はポリペプチドの使用に基づく薬剤は、これら及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物がそうであるように本発明の一部を形成する。
【0153】
本発明はまた、本発明の第一又は第二の態様の方法を実施するために使用することができるキットを提供する。例えばキットは、少なくとも1アッセイに十分な量で、野生型及びミュータントPRRT2核酸又はPRRT2ポリペプチドに対して特異的な、ハイブリダイゼーションアッセイプローブ、増幅プライマー及び/又は抗体を含有することができる。これらの構成要素は、上で詳述されている。典型的には、キットは、被検試料中のミュータントPRRT2核酸又はミュータントPRRT2ポリペプチドの存在を判定するための検出アッセイにおいてパッケージ化されたプローブ、プライマー及び/又は抗体を使用するための、(例えば、紙又は電子媒体上に含有される)有形形態で記録された説明書も含む。
【0154】
したがって第十の態様では、本発明は、対象において発作及び/若しくは運動障害を診断若しくは予測するための、又は発作及び/若しくは運動障害になりやすい子孫をもつ可能性が増大している対象を特定するためのキットであって、前記対象においてPRRT2遺伝子中の変化の存在について検査するための1又は2以上の構成要素を含むキットを提供する。
【0155】
一実施形態では、1又は2以上の構成要素は、以下からなる群から選択される:(i)本発明の第五又は第六の態様によるポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそのフラグメント、(ii)本発明の第五又は第六の態様によるポリペプチドを検出し、前記ポリペプチドがトランケート変異を含み、前記ポリペプチドのトランケートされた領域に結合する、抗体又はそのフラグメント、及び(iii)本発明の第三又は第四の態様による核酸分子に特異的にハイブリダイズする核酸分子。
【0156】
キットの種々の構成要素は、種々の形態で提供することができる。例えば、必要とされる酵素、ヌクレオチド三リン酸、プローブ、プライマー及び/又は抗体は、凍結乾燥試薬として提供することができる。こうした凍結乾燥試薬は、再構成時に、適切な比で各構成要素を含む、アッセイで直ぐに使える状態の完全な混合物を形成するように、前もって混合してから凍結乾燥することができる。加えて、キットは、キットの凍結乾燥試薬を再構成するための再構成試薬を含有することができる。
【0157】
一例を挙げると、キットは、PRRT2核酸の一部をPCR増幅するためのプライマーペア及び作製されたアンプリコンにハイブリダイズすることができる検出可能な程度に標識されたプローブを含めた、少なくとも3種の凍結乾燥オリゴヌクレオチドを含むことができる。ある種のキットでは、少なくとも3種の凍結乾燥オリゴヌクレオチドは、セミネステッドPCRによってPRRT2核酸の少なくとも一部を増幅するためのプライマーである。
【0158】
ある種のキットは、所望の核酸を固体支持体上に固着するための固体支持体をさらに含むことができる。標的核酸は、固体支持体に固着された捕捉プローブを通して直接的に又は間接的に固体支持体へ固着することができ、所望の核酸にハイブリダイズすることができる。そうした固体支持体の例としては、これらに限定はされないが、ビーズ、微粒子(例えば、金及び他のナノ粒子)、マイクロアレイ、マイクロウェル及びマルチウェルプレートが挙げられる。固体表面は、結合ペアの第一メンバーを含むことができ、捕捉プローブ又は標的核酸は、結合ペアの第二メンバーを含むことができる。結合ペアメンバーの結合は、捕捉プローブ又は標的核酸を固体表面に固着する。そうした結合ペアの例としては、これらに限定されないが、ビオチン/ストレプトアビジン、ホルモン/受容体、リガンド/受容体及び抗原/抗体が挙げられる。
【0159】
他のキットでは、PRRT2の野生型及びミュータントポリペプチドに対する凍結乾燥抗体を提供することができる。ある種のキットでは、一次/二次抗体ペアを提供することができる。ある種のキットは、PRRT2の野生型及びミュータントポリペプチドを固着するための固体支持体をさらに含むことができる。そうしたPRRT2の野生型及びミュータントポリペプチドの固着は、上記のように、ビオチン/ストレプトアビジン及び抗原/抗体の相互作用を介することができる。
【0160】
典型的な包装材料には、ハイブリダイゼーションアッセイプローブ及び/又は増幅プライマーを一定の範囲内に保持することができる、ガラス、プラスチック、紙、ホイル、微粒子などの固体マトリックスが含まれ得る。したがって、例えば、包装材料は、サブミリグラム(例えばピコグラム又はナノグラム)量の意図されるプローブ、プライマー若しくは抗体を含有するために使用されるガラスバイアルを含むことができ、又は包装材料は、プローブ、プライマー若しくは抗体が作動可能に付着させられた、すなわち増幅及び/若しくは検出方法に関与できるように連結されているマイクロタイタープレートウェルであり得る。
【0161】
キットは、試薬及び/又は試薬濃度及び少なくとも1つのアッセイ方法のパラメーター(例えば、試料量あたりに使用する試薬の相対量でもよい)を指示する説明書を含むことができる。加えて、管理、期間、温度及びバッファー条件のような詳細も含まれ得る。
【0162】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprised)」又は「含む(comprising)」を本明細書(特許請求の範囲を含める)で使用する場合は、それらは、記載した特色、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するものであり、1若しくは2以上の他の特色、整数、ステップ若しくは構成要素又はそれらの群の存在を排除するものではないと解釈すべきである。
【0163】
値の範囲を表す場合は、この範囲は、範囲の上限及び下限、並びにこれらの限界値の間の全ての値を包含することが明確に理解されることに留意されたい。
【0164】
さらに本明細書で使用する用語「約」は、ほぼ又はおおよそを意味し、本明細書に記述される数値又は範囲において、列挙される又は主張される数値又は範囲の、及びその数値又は範囲から+/−10%以下、+/−5%以下、+/−1%以下、又は+/−0.1%以下の変動を包含することを意味する。
【0165】
本発明を、明確さ及び理解の目的である程度詳細に説明してきたが、本明細書で開示される本発明の概念の範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態及び方法に対して種々の改変及び変更を行い得ることは当業者には明らかであろう。
【0166】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。実施例は特定の実施形態のみを説明することを目的とし、上記の記載について制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0167】
発作障害及び運動障害の原因遺伝子の同定
以下の研究は、発作障害及び運動障害の原因となる遺伝子を同定するために行った。てんかん(良性家族性乳児てんかん)及び/又は発作障害(ICCA)を罹患する家族(及びその家族内の対象)が、研究の根拠となった。
【0168】
患者及びコントロール
本研究は、Austin Health and the Women's and Children's Hospitalのヒト研究倫理委員会によって承認された。有効な発作アンケートを使用して、個々について詳細なフェノタイピングを行った。入手可能な全ての以前の医療記録、EEG及び神経画像データを取得した。オーストラリア人のコントロール試料は、匿名の血液ドナーとした。イスラエル人のコントロール試料は、てんかんの遺伝的原因に関する研究のために動員された罹患していない、血縁でない家族の一員とした。
【0169】
ジェノタイピング
BFIE連鎖領域でのマイクロサテライトマーカーを、変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動とそれに続くオートラジオグラフィー、GelScan 3000(Corbett Research社、Sydney、オーストラリア)を使用する変性ゲル電気泳動、又はGenescan 400D ROXで標識されたサイズ標準(Applied Biosystems社、Carlsbad、CA)を用いるABI 3100 Avant DNA analyserを使用するキャピラリー電気泳動のいずれかによってジェノタイピングした。後者の2つの方法については、各ペアのフォワードプライマーをHEX又はFAMのいずれかで標識した。マイクロサテライトマーカーに対するプライマー配列は、UniSTSからであった。LODスコアは、FASTLINKプログラムを使用して計算した。
【0170】
連鎖
BFIE又はICCAを罹患する家族1〜9、11及び12について連鎖分析を実施した(
図1)。本分析によって、家族1、2及び5のそれぞれに関して、第16染色体の3.27、3.0及び2.71座位について最大のLODスコアが得られた。家族3、4、6〜9、11及び12は、第16染色体への連鎖と一致していた。第1染色体座位への連鎖は、家族1、3、5〜7、9及び11について除外された。第19染色体座位への連鎖は、家族1、3及び6〜9及び11について除外された。良性家族性新生児−乳児発作の重複症候群に関する遺伝子であるSCN2Aへの連鎖は、家族1、6〜9及び11〜13について除外された。これは、第16染色体p11.2〜q12.1のBFIE領域に属する、これらの家族における原因遺伝子と一致している。
【0171】
第16染色体連鎖区間での遺伝子同定
D16S3093とD16S411の間の第16染色体連鎖区間中のコーディング配列、ミニマルプロモーター配列及びマイクロRNAを捕獲するために、シーケンスキャプチャーアレイを設計した。捕獲配列のシーケンスキャプチャー及び増幅は、Roche-Nimblegen社(Madison、WI)によって実施された。捕獲され増幅されたDNAの超並列シーケンシング(MPS, massively parallel sequencing)は、Illumina社のGenome Analyzer IIを使用してGeneWorks社(Adelaide、オーストラリア)によって実施された。リピートマスクバージョンのヒトゲノム(UCSCゲノムブラウザー、hg18)にMosaik 1.0.1388を使用して配列をマップした。10リード以上のシーケンス深度に対するバリアントであって、参照配列と15〜85%の不一致である全てのバリアントを、Consed v19を使用して同定した。SeattleSeqを使用して、バリアントを機能的にアノテートした。
【0172】
超並列シーケンシング(MPS)を、第16染色体のBFIE領域に連鎖を示した家族1及び5のそれぞれの1個体について実施した。本シーケンシングによって、脳で発現する遺伝子であるA2LP、ARMC5及びBCKDKの特有のバリアントが家族5の個体で同定された。ARMC5及びBCKDKのバリアントは、これらの家族で表現型とともに分離し、これらの遺伝子を、第16染色体への連鎖と一致しているBFIE家族のさらなる10人の患者で、サンガーシーケンシング法によってスクリーニングした。さらなる特有のコーディングバリアントが1つだけしか同定されなかったので、これらの遺伝子のいずれもBFIEの原因遺伝子ではないと結論した。MPSは既定の判断基準を使用して病原性変異を特定できなかったことから、本技術を使用して捕獲及びシーケンシングするのが困難であると予測された配列に分析を移した。PRRT2の一部は、このカテゴリーに入る。
【0173】
PRRT2バリアントのシーケンシング及びスクリーニング
BFIE又はICCAを罹患する23家族の発端者を、PRRT2(NM_145239.2)のコーディング領域についてダイレクトサンガーシーケンシング法によってシーケンシングした。23家族のうちの19家族(83%)から変異を特定した。変異は、2つのフレームシフト(c.629−630insC、p.P210fsX15、及びc.649−650insC、p.R217fsX8)及び2つのスプライス部位変異(IVS2+1G>T、IVS2+5G>A)を含んでおり、これらの変異はそれぞれ、タンパク質トランケーションを引き起こすことが予想される(
図2)。第五の変異はミスセンス変異のc.950G>A、p.S317Nであり、この変異は、ゼブラフィッシュからヒトまで進化的に保存されているPRRT2膜貫通ドメインのアミノ酸残基を変化させ、PRRT2タンパク質は脊椎動物のみに見出される。このミスセンス変異の病原性は、PolyPhen-2によっておそらく損傷を与えると予想され、ソーティングトレラントフロムイントレラント(SIFT, Sorting Tolerant from Intolerant)アルゴリズム(http://sift.jcvi.org/)によってトレラントでないと予想される、p.S317N置換によって支持される。
【0174】
家族員及びコントロールを、c.629−630insC及びc.649−650insC変異についてダイレクトシーケンシングによって分析した。IVS2+1及びIVS2+5変異に関するコントロール及び家族員を、LightScanner(登録商標)(Idaho Technology社、Salt Lake City、Utah)を使用して、高解像度融解(HRM, High-Resolution Melting)分析によってスクリーニングした。c.950G>A変異に関するコントロールをLightScannerによってスクリーニングし、家族員を、サンガー法でシークエンシングした。PRRT2変異は、BFIE又はICCA(BFIE及びPKC)表現型とともに19家族のそれぞれで分離し(
図1、表2)、92のコントロール又はdbSNP中には存在しなかった。サンガーシーケンシング及びスクリーニングに使用したプライマー配列及びPCR条件は、請求に応じて入手可能である。
【0175】
【表2】
【0176】
PRRT2変異が分離している19家族で、合計で、変異を有するBFIE又はICCAを罹患する77個体が存在した。加えて、見かけ上は罹患していない変異保因者が23存在した(
図1)。しかし、乳児発作の出現に関する正確な病歴が高齢の家族員から必ずしも得ることができたとは限らず、このことによって、正確な変異浸透レベルを測定するのが困難になった。乳児発作を罹患するわずか1個体(4−III−1)のみが家族性のPRRT2変異を欠いていたため、この個体は表現型模写と考えられた。本発明者らは、コントロールでの2つの非同義PRRT2配列バリアント、すなわち6/115(5.2%)のオーストラリア人のコントロール及び1患者におけるc.647C>T、P216L(rs76335820)、並びに1/97(1%)のセファルディ系ユダヤ人のコントロールにおけるc.644C>G、P215Rも観察した。上記のように、第16染色体連鎖区間のシーケンスキャプチャー及び超並列シーケンシングによって、いかなる他の潜在的に有害な変異も家族1及び5で特定されなかった。
【0177】
本発明者らの結果は、PRRT2中の変異がBFIEを引き起こすことを示す。本発明者らは、2つの異なる障害、BFIE及びICCAは対立形質であること、すなわち、同一遺伝子中の変異によって引き起こされることも示した。BFIE家族の14/17(82%)及びICCA家族の5/6(83%)でのPRRT2変異の検出は、この遺伝子の変異がこれらの特異なてんかん症候群の最も一般的な原因であることを示す。変異陽性19家族のうちの15家族(79%)は、同一変異、c.649−650insCを保有し、この変異はBFIE12家族及びICCA3家族で見られる。家族の多様な民族起源(オーストラレーシア人/西欧人(12)、スウェーデン人(1)及びセファルディ系ユダヤ人のイスラエル人(2))を考えれば、この変異は、少なくとも幾つかの家族で独立に生じることが最も可能性が高い。さらに、家族5〜8(オーストラリア人)並びに10及び11(セファルディ系ユダヤ人の)におけるPRRT2に密接に連鎖した3つのマイクロサテライトマーカーのジェノタイピングは、いかなる共通のハプロタイプも示さなかった。
【0178】
c.649−650insC変異に関しては、このフレームシフト変異は、それが起こる配列構成が原因である可能性が高い。シトシン塩基の挿入は、4つのグアニン(G)に隣接する9つのシトシン(C)塩基のホモポリマー中に起こる。このDNA配列は、ヘアピンループ構造を形成する可能性があり、これは、DNA複製の間にDNAポリメラーゼスリッページ及び余分なシトシンの挿入をおそらく導く。興味深いことに、この配列中に見られた2つの置換多型のうちの1つ、c.647C>T、P216Lは、患者よりもコントロールについてより高い割合で存在していた。この多型を保有するアレルは、この多型がポリシトシン域を変化させ、そのサイズを9から6塩基対に縮小させるので、挿入変異に対して保護されている可能性がある。
【0179】
家族1及び5での変異は、第16染色体のBFIE領域由来の配列の濃縮に使用したキャプチャーアレイ上でのPRRT2のカバー度にもかかわらず、超並列シーケンシングによって検出されなかった。家族5における共通の挿入変異を含有するリードの割合は、変異呼び出しのために設定した閾値未満であった。さらに、ホモポリマー域に対するリードは様々な数のシトシンを示した。これは、MPSは、特にホモポリマー域又はG/Cリッチ領域などの「困難な」配列において、必ずしも変異検出の確固たる方法とは限らないことを説明する。
【0180】
BFIEでのPRRT2変異の発見は、PRRT2タンパク質がてんかんに関与することを明らかにする。3つの異なる変異がICCAを罹患する家族で検出されたので、この症候群は共通の挿入変異に起因するだけではない。なぜ家族内において、1個体が、BFIE若しくはPKCのいずれか又はこれらの表現型の両方を経験しなければならないのか不明のままである。発症年齢及び解剖学的基質の点から、その多面発現は注目すべきである。遺伝的背景又は単一変異の表現型発現を改変する第二のPRRT2アレルの影響は、考えられる説明である。そうした可変性の発現度の根底にある機構は、まだ分かっていない。最近、血族のイラン人家族でのPRRT2のホモ接合性フレームシフト変異が、知的障害(ID, intellectual disability)を有する個体において報告された。表現型異種性はてんかんに関与する遺伝子にとって珍しくないが、異なる神経回路網を係合するてんかん及び運動障害を考える場合、むしろ稀である。本発明者らは、てんかん及び認知機能障害は、発作に関連する脳領域でのPRRT2の初期の発現及び運動に関連する領域での後期の発現から生じる可能性があると推測する。
【0181】
PRRT2変異を有する一部の個体で、乳児発作又はPKCのいずれかは出現するが両方の障害は発現しないことは、表現型を現す発達段階のうちの1つでの不完全な変異浸透度に起因する可能性がある。てんかんと運動障害の遺伝的重複は、発作性の運動誘発性ジスキネジアとてんかんの両方が家族及び個体で同時に起こる1型グルコース輸送体欠損症候群で最近認識されている。PRRT2の同定によって、幼児期のてんかんについての分子基盤に関する本発明者らの知識が著しく拡大し、てんかんの発病における非イオンチャネル遺伝子の役割の重要性が拡大し続けている。この発見はまた、診断、治療及び予測を方向づけるための分子ベースの明確な分類フレームワークを完成させるのに役立つ。
【実施例2】
【0182】
PRRT2遺伝子のさらなる変異スクリーニング
実施例1に記載されているものと同一の変異検出法を使用して、さらなる対象及び家族をPRRT2遺伝子中の変異についてスクリーニングした。本スクリーニングは、10の散発性乳児発作症例、ICCA5家族、BFIE7家族、PKC5家族及び所与の表現型を有さない3家族を含んでいた。12家族のうちの11家族の系図を
図4に示す。
【0183】
変異スクリーニングによって、BFIE7家族のうちの5家族における対象、及びICCA5家族の全てがPRRT2遺伝子中の変異を有していることが確証された。全てがc.649−650insC変異を有していた。
【0184】
まとめると、現在までに実施した変異スクリーニングは、発作障害及び運動障害を罹患する個体において、PRRT2遺伝子中に5つの変異を特定した。最も共通する変異は、トランケートされたPRRT2ポリペプチド(p.R217fsX224)を生じさせるc.649−650insC変異であった。この変異は、遺伝子中に変異を保有する対象の86%で特定されたので、この変異は、対象の発作若しくは運動障害を診断若しくは予測する、又は変異の保因者を特定するための決まりきったスクリーニングアッセイの根拠になり得る変異を意味する。
【実施例3】
【0185】
発作又は運動障害を罹患する個体を特定するための診断的アッセイ
前述のように、最も共通するPRRT2遺伝子変異(c.649−650insC)の存在に関するスクリーニングは、てんかんなどの発作障害又はPKDなどの運動障害を個体において診断するためのアッセイの根拠になり得る。一例を挙げると、PRRT2のc.649−650insC変異は、オリゴヌクレオチドプライマーの5'-TCACTCACCACCCTCAAA-3'(配列番号12)及び5'-CATTCGATCCTCCTCAAC-3'(配列番号13)であって、プライマーのうちの1つがHEXなどの蛍光標識を保持するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するPCR増幅、それに続く、ABI genetic analyser又は類似のものを使用するキャピラリー電気泳動によってスクリーニングすることができる。PCR増幅は、c.649−650insC変異を保有しない個体で、85塩基対の産物を生成する。85塩基対の産物の配列を以下に示し、及び配列番号14で表される。
5'-TCACTCACCACCCTCAAAAAAATCCCCCCCAGCCAATGGGGCC
CCCCCCCGAGTGCTGCAGCAGCTGGTTGAGGAGGATCGAATG-3'
【0186】
PRRT2遺伝子のこの領域のいかなる挿入又は欠失も、当技術分野で既知の決まりきった手順(キャピラリー電気泳動など)によって検出されるPCR産物長の変化として見られる。検出されたPCR産物長のいかなる変化も、変異の種類を特定するために、PCR産物をシーケンシングすることによってさらに調査することができる。
【0187】
発作又は運動障害を罹患する個体についてスクリーニングするための診断的アッセイにおけるPRRT2遺伝子の使用は、c.649−650insC変異を含有するPRRT2領域に焦点を合わせる必要はない。実施例1で示すように、本発明者らによってPRRT2遺伝子中に4つの他の変異、すなわちc.629−630insC、IVS2+1G>T、IVS2+5G>A及びc.950G>Aが発見された。上記のようなPCRベースアッセイを利用して、1又は2以上のこれらの変異を特異的に特定することもできる。
【0188】
診断目的で用いることができるさらなるアッセイは、上で詳述されている、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)アッセイである。このアッセイを使用して、PRRT2遺伝子の特定の領域で、又はPRRT2遺伝子全体にわたって欠失及び部分的な重複を検出することができる。例えば、表3に収載されるプローブを参照プローブ混合物(MRC-Holland社のSALSA MLPA probemix P300-A2 Human DNA Reference-2)と併せて使用して、PRRT2のいかなる領域にも影響を及ぼす大きな欠失及び重複を検出することができる。プローブ混合物及びMLPAの調製は、MRC-Holland社の「合成MLPAプローブの設計」及び「多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA(登録商標))一般プロトコル」中に提供されるプロトコルに従って行うことができる。
【0189】
【表3】
【実施例4】
【0190】
PRRT2変異の機能解析
タンパク質機能及び最終的には細胞機能に対して特定のPRRT2変異が有する影響を測定するために、様々な方法を用いることができる。それらの方法のうちの1つは、分析される特定のPRRT2変異を内部に有する、遺伝子改変マウスなどの遺伝子改変動物の作製を含む。遺伝子改変動物の作製方法は、上で詳述されている。
【0191】
本明細書に記載の本発明は、明確に記載されているもの以外は、変形及び修正を受けやすいことを当業者なら理解するであろう。本発明は、全てのそうした変形及び修正を含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書で個々に又はまとめて言及される又は示される全てのステップ、特色、組成物、及び化合物、並びに任意の2つ以上のステップ又は特色の全ての組合せを含む。