(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465664
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
B65D1/02 232
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-9903(P2015-9903)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132489(P2016-132489A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 修二
【審査官】
田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−159380(JP,A)
【文献】
特開昭54−031379(JP,A)
【文献】
特許第5286497(JP,B1)
【文献】
特表2013−520371(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0049083(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第02807185(DE,A1)
【文献】
特開昭53−108174(JP,A)
【文献】
特開2004−123103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に、環状の脚部と、脚部に囲まれた上げ底部とを有する合成樹脂製の容器であって、
上げ底部は、脚部の先端よりも上方に位置して、中央山部と環状山部とを有しており、
中央山部は、上げ底部の中央部に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出しており、
環状山部は、中央山部の外周部と脚部の内周部との間に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出しており、
中央山部と環状山部との境界部分における上げ底部の外面に、容器の内側に向かって窪んだ環状谷部が形成され、
中央山部の曲率半径が環状山部の曲率半径よりも大きく、
上げ底部に、中央部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の溝が形成され、
溝は、中央山部に形成された第1溝部と、環状山部に形成された第2溝部とを有し、
第1および第2溝部はそれぞれ周方向の一方において円弧状に湾曲しており、
第1溝部の曲率半径が第2溝部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする容器。
【請求項2】
環状谷部上の少なくとも1カ所に、容器の内側に向かって窪んだ凹部が形成され、
環状谷部は周方向において凹部により分断されていることを特徴とする請求項1記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の容器としては、
図11(A)に示すように、容器の底部101に、円環状の脚部102と、脚部102に囲まれた上げ底部103とを有するものがある。上げ底部103は、脚部102の先端よりも上方に位置し、中央厚肉部104と複数の環状湾曲部105,106,107とを有している。
【0003】
中央厚肉部104は上げ底部103の中央部に形成された平坦部である。また、環状湾曲部105,106,107はそれぞれ、中央厚肉部104の外周部と脚部102の内周部との間に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出している。
【0004】
これによると、温度が高い状態で内容物(液)を容器内に充填して密封した後、温度が低下して容器内が減圧状態になったとき、
図11(C)(D)に示すように、上げ底部103の中心側の環状湾曲部105から外周側の環状湾曲部107にかけて、上げ底部103の位置が容器108の内方にせり上がることで、上げ底部103の移動が緩やかになるとともに、上げ底部103を上方に移動させることができ、内圧変化に対応し得る。
【0005】
尚、
図11(A)は容器が空の状態を示し、(B)は容器に高温の内容物を充填した直後の状態を示し、(C)(D)は充填後の減圧状態を示し、(E)は上記(A)〜(D)を重ねた図である。上記のような合成樹脂製の容器は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5286497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、
図11(C)(D)に示すように、容器内が減圧状態になったとき、中央厚肉部104は容器の内方にせり上がるが、肉厚であるため、環状湾曲部105,106,107と比べて中央厚肉部104自体は変形し難い。また、各環状湾曲部105,106,107の曲率半径が小さいため、各環状湾曲部105,106,107自体も変形し難い。このように中央厚肉部104自体および各環状湾曲部105,106,107自体はそれぞれ変形し難いため、内圧の大きな変化に対応しようとする場合、上げ底部103の位置が容器108の内方にせり上がる際のせり上がり量を増大させる必要がある。しかしながら、このようなせり上がり量の増大には限度があるため、内圧の大きな変化に対応することは困難であるといった問題がある。
【0008】
本発明は、内圧の大きな変化に対応することが可能な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明は、底部に、環状の脚部と、脚部に囲まれた上げ底部とを有する合成樹脂製の容器であって、
上げ底部は、脚部の先端よりも上方に位置して、中央山部と環状山部とを有しており、
中央山部は、上げ底部の中央部に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出しており、
環状山部は、中央山部の外周部と脚部の内周部との間に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出しており、
中央山部と環状山部との境界部分における上げ底部の外面に、容器の内側に向かって窪んだ環状谷部が形成され、
中央山部の曲率半径が環状山部の曲率半径よりも大き
く、
上げ底部に、中央部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の溝が形成され、
溝は、中央山部に形成された第1溝部と、環状山部に形成された第2溝部とを有し、
第1および第2溝部はそれぞれ周方向の一方において円弧状に湾曲しており、
第1溝部の曲率半径が第2溝部の曲率半径よりも大きいものである。
【0010】
これによると、中央山部の曲率半径が環状山部の曲率半径よりも大きいため、中央山部の方が、環状山部よりも、容器の内側へ変形し易くなる。従って、容器内が減圧状態になった場合、上げ底部の中央山部の位置が容器の内方にせり上がるとともに、中央山部自体も上下方向に縮小して変形するため、容器の内圧の大きな変化に十分に対応することが可能である。
また、容器内が減圧状態になり、上げ底部の中央山部の位置が容器の内方にせり上がる際、溝が閉じるように変形することで、中央山部と環状山部とが容器の内側へ容易に変形する。このとき、第1溝部の曲率半径が第2溝部の曲率半径よりも大きいため、第1溝部の方が第2溝部よりも変形し易くなり、中央山部の方が環状山部よりもさらに変形し易くなる。これにより、容器内が減圧状態になって上げ底部の中央山部の位置が容器の内方にせり上がる際、中央山部自体が容易に変形するため、容器の内圧の大きな変化に十分に対応することが可能である。
【0011】
本第2発明における容器は、環状谷部上の少なくとも1カ所に、容器の内側に向かって窪んだ凹部が形成され、
環状谷部は周方向において凹部により分断されているものである。
【0012】
これによると、容器内が減圧状態になって上げ底部の中央山部の位置が容器の内方にせり上がる際、環状谷部に発生した応力は、環状谷部に沿って周方向に伝播しようとしても、凹部により断ち切られる。これにより、上げ底部が不正に変形するのを抑制することができ、特に、上げ底部の厚みが不均一な場合、上げ底部に不正な変形が発生し易いが、上記のような凹部を形成することによって、不正変形の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によると、容器内が減圧状態になった場合、上げ底部の中央山部の位置が容器の内方にせり上がるとともに、中央山部自体も変形するため、容器の内圧の大きな変化に十分に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における容器の図である。
【
図8】同、容器の底部の断面図であり、内部が減圧されて底部が変形した状態を示す。
【
図9】同、容器の底部の断面図であり、内部がさらに減圧されて底部がさらに変形した状態を示す。
【
図10】同、容器の底部の溝の断面図であり、溝が閉じる方向に変形した状態を示す。
【
図11】従来の容器の底部の断面図であり、内部が減圧されたときに底部が変形する様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜
図4に示すように、1は例えばポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の容器であり、この容器1は、円筒状の胴部2と、キャップ(図示省略)によって密封される口部4と、底部5とを有している。底部5には、円環状の脚部7と、脚部7に囲まれた円形状の上げ底部8とが備えられている。
【0018】
脚部7は、胴部2から連なる外周壁10と、径方向内側から外周壁10に対向する内周壁11と、外周壁10と内周壁11との先端部間に設けられた接地部12とを有している。
【0019】
上げ底部8は、脚部7の接地部12(先端)よりも上方に位置しており、中央山部14と環状山部15とを有している。中央山部14は、上げ底部8の径方向における中央部に形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出している。また、環状山部15は、中央山部14の外周部と脚部7の内周壁11の上端部との間に全周にわたり形成されて、下方に円弧状に湾曲して突出している。
【0020】
中央山部14と環状山部15との境界部分における上げ底部8の外面には、容器1の内側に向かって窪んだ環状谷部16が全周にわたり形成されている。
図4に示すように、中央山部14の曲率半径R1が環状山部15の曲率半径R2よりも大きい。尚、中央山部14の外面は曲率半径R1の球面の一部を成しているが、中央山部14の中央部分の円形の所定領域Aのみは平坦面14aとして形成されている。
【0021】
上げ底部8の外面には、中央部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の溝20が形成されている。各溝20はそれぞれ、
図6に示すように、断面が逆V形状の下方に開放された溝であり、中央山部14に形成された第1溝部21と、環状山部15に形成された第2溝部22とを有している。
図2,
図3に示すように、第1および第2溝部21,22はそれぞれ周方向の一方において円弧状に湾曲しており、第1溝部21の曲率半径r1が第2溝部22の曲率半径r2よりも大きい。尚、第1溝部21と第2溝部22とは環状谷部16の箇所で連通している。
【0022】
図3,
図5,
図7に示すように、環状谷部16上の複数箇所(
図3では四箇所)には、容器1の内側に向かって窪んだ凹部25が形成されている。各凹部25の窪み具合(容器1の内側への窪み深さDおよび径方向における窪み幅W)は環状谷部16の窪み具合(容器1の内側への窪み深さおよび径方向における窪み幅)よりも大きく、環状谷部16は周方向において凹部25により分断されている。
【0023】
以下、上記構成における作用を説明する。
図4に示すように、中央山部14の曲率半径R1が環状山部15の曲率半径R2よりも大きいため、中央山部14の方が、環状山部15よりも、容器1の内側へ変形し易くなる。
【0024】
温度が高い状態で内容液を容器1内に充填し、キャップを口部4に装着して容器1を密閉した後、シャワー水を容器1の外面に噴射して内容液を一定温度まで冷却する。このとき、内容液の温度が低下して容器1内が減圧状態となるが、
図8,
図9に示すように、中央山部14の位置が容器1の内側にせり上がるとともに、中央山部14自体も上下方向に縮小して変形するため、容器1の内圧の大きな変化に十分に対応することが可能である。尚、上記のように、中央山部14自体も上下方向に縮小して変形することにより、環状谷部16から中央山部14の頂部までの距離Hが縮小する。
【0025】
また、
図8,
図9に示すように、中央山部14の位置が容器1の内側にせり上がる際、
図10に示すように、各溝20が幅方向において閉じる方向Bに変形することで、中央山部14と環状山部15とが容器1の内側へ容易に変形する。このとき、溝20は直線に近いほど上記閉じる方向Bに変形し易く、
図3に示すように、第1溝部21の曲率半径r1が第2溝部22の曲率半径r2よりも大きいため、第1溝部21の方が第2溝部22よりも上記閉じる方向Bに変形し易くなる。これにより、中央山部14の方が環状山部15よりもさらに変形し易くなり、
図8,
図9に示すように、上げ底部8の中央山部14の位置が容器1の内方にせり上がる際、中央山部14自体が容易に変形するため、容器1の内圧の大きな変化に十分に対応することが可能である。
【0026】
さらに、中央山部14の位置が容器1の内側にせり上がる際、環状谷部16に発生した応力は、環状谷部16に沿って周方向に伝播しようとしても、凹部25により断ち切られる。これにより、上げ底部8が不正に変形するのを抑制することができ、特に、上げ底部8の厚みが不均一な場合、上げ底部8に不正な変形が発生し易いが、上記のような凹部25を形成することによって、不正変形の発生が抑制される。
【0027】
尚、その後、容器1内の圧力が減圧状態から増加した場合、
図8の実線から仮想線に示すように、中央山部14の位置が容器1の内側から外側に向かって膨出する。
上記実施の形態では、
図4に示すように、中央山部14は、中央部分に平坦面14aを有しているが、平坦面14aを有していなくてもよい。
【0028】
上記実施の形態では、
図3に示すように、溝20を6本、凹部25を四個形成しているが、これらの数に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 容器
5 底部
7 脚部
8 上げ底部
14 中央山部
15 環状山部
16 環状谷部
20 溝
21 第1溝部
22 第2溝部
25 凹部
R1 中央山部の曲率半径
R2 環状山部の曲率半径
r1 第1溝部の曲率半径
r2 第2溝部の曲率半径